俺が金剛をそのまま運び、彼女が鎮守府と言っていた場所に飛んで行った。
すると、建物の前に何人もの女の子が居た。
俺と金剛が降り立つと、
「金剛さーん!」
金剛にセーラー服の女の子たちが一気に寄ってきて囲んだ。何人かは泣いている。かなり慕われてるんだねえ。
「皆、泣かせちゃってsorryネ。ちょっと着替えてくるヨ。天龍、中島さんの案内を任せるネ。彼は私の命の恩人だから、丁重にネ~」
「オレかよ! こういうのは羽黒とか神通の方が向いてるだろ⁉」
天龍と呼ばれた眼帯を付けたオレっ娘がそう言う。なんか、雰囲気が某砲撃番長にそっくりだな。二人とも一人称オレだし。
「天龍は鬼だネ~。航海帰りの二人にお客さんの相手をさせるナンテ」
「……ったっく、分かったよ」
「色々中島さんには説明しないとダカラ、私もすぐに合流するヨ~。出来れば、羽黒と神通も参加してほしいネ」
「「分かりました」」
答えたのはおとなしそうな雰囲気の女の子二人。
それだけ伝えると金剛は囲まれてた女の子達に連れて行かれた。
そういや、皆見た目は違えど制服っぽいんだけど、金剛だけ制服っていうか巫女服だよなアレ。いやでも、広い意味で捉えれば制服になるのか?
そんな事を考えていると、さっき金剛が天龍と呼んでいた女の子が
「んじゃ、案内するぜ、中島さんとやら。羽黒、神通、お前らはどうするよ」
「私はお茶の用意だけしてから合流します。羽黒さんは金剛さんと一緒に少し休んでから来てください」
「だ、大丈夫ですよ、神通さん」
「いえ、航海の間、私達の負担を減らそうとにずっと集中なされていたから、疲れているはずです。少し休んでください」
「あー、オレも神通の言う通りだと思うぜ。チビ達と長期の護衛に出る時もいつもずっと気を張ってるじゃねえか。金剛も出来ればって言ってたんだし、休んでてもいいんだぜ?」
「……じゃあ、お言葉に甘えて金剛さんと一緒に後で合流します。では、お先に」
そう言って羽黒と呼ばれた女の子は金剛達の後を追っていった。
「じゃあ、行くか。あっ、そうだ神通。お茶なら、お前らが帰って来た時用に冷たい麦茶を作り置きしておいたから、それでも使ってくれ。冷蔵庫に入れてある」
「そう、ありがとう天龍。それじゃあ、すぐに淹れて行くわね。……中島さん」
「ん? 何?」
神通と呼ばれている女の子に呼びかけられたので返事をする。
「金剛さんを助けてくれてありがとうございます。あの人は、今の私達にとって、姉の様な人ですから」
「だな。あの人が色々引き受けてくれたから、オレ達はそこそこの生活が出来たと言ってもいい。そんな人を護ってくれたんだ。オレからも礼を言わせてくれ。ありがとう」
「俺としては俺自身の生き方に素直になっただけなんだが……まあ、その言葉受け取っておくよ」
感謝の気持ちを受け取らないってのは、その言った人の気持ちも無視する事だと思うから、たとえ、自分では貰うような事じゃ無いとしても受け止めるようにしている。
小さい子達だけじゃなくて、ここの皆に慕われているんだな、俺が助けたあの子は。
「さて、何処から話すベキカ……」
着替えて、少しだけ休んだ金剛とさっき羽黒と呼ばれていた女の子が俺等が居る部屋にやってきた。立ち話もなんだったから全員が座って、落ち着いて事情を聞くことになった。
「んじゃ、俺が質問していいか? あの黒いのなんだ?」
「オイオイ、深海棲艦を知らねえのか?」
「天龍、仕方ナイのデス。中島さんは平行世界の人らしいですカラ」
「「「平行世界⁉」」」
金剛の言葉に驚く三人。まあ、そりゃそうだよな。
「その辺は後で聞きマショウ。それで、あの黒いの深海棲艦については、正直、よく分かってイマセン。ただ、ある日海に現れて、制海権を人間から奪い取った。それだけデス。私達は深海棲艦に対抗する力を持った艦娘。大東亜戦争、戦後の方なら太平洋戦争の分かりやすいと思いマスガ、その戦争で戦った軍艦の生まれ変わりデス。まあ、一種の付喪神と思ってもらえれば良いと思いマス」
……なるほど、だからおおよそ女の子っぽくない名前だし、あんな自己紹介になったんだな。
「……な、中島さんは普通なんですね」
「どういう事? えーっと、羽黒さん」
「大本営に戻った大淀さんが言ってました。『艦娘に関わる人の大半は道具として扱うか、化け物のように見るかのどっちかだ』って」
なるほどね。人ってのは自分の理解できない物を恐れるものだしな。それを受け入れる人間ってのは結構貴重なんだよなあ。俺が一般人だったらここまで落着けてたか微妙な所だし。
「まあ、俺も君たちとは違うけど、人間じゃないけど人みたいな存在が知り合いに居るし、何より、金剛が無事に帰ってきて泣いて迎えた君たちを見たら、そんな事は些細な問題だと思うぜ?」
仕事中に潰した、人体実験をしていた違法研究所の研究員達の方が俺からしたら、この子達よりもよっぽど化け物だ。
生まれが違う? 人より力が強い? んなの、気にするほどの事じゃ無い。そんなの気にしてたら人外魔境の友人関係やってけないっての。あっ、人外魔境ってのは「戦闘力が」だから。
「……中島サンみたいな人が提督だったら良かったんですけどネー」
提督ってのは俺の知っている使われ方で良いのか? 管理局だと、本局(海)の将官クラスの人の事を指すんだけど。
でも、この規模で将官クラスってのは少し変だし……指揮官の総称みたいなもんか?
「そういや、ここの指揮官は金剛なのか? さっきも皆を纏めてたし」
「違う。前の奴は逃げた。敵前逃亡って奴だな。金剛は仮の指揮官って訳だ」
軍隊に脱走は付き物か……。十年くらい前の俺もそうだったしな。しかし、本土からそこそこ離れている上に深海棲艦が居る海に護衛無しで出るってかなり無謀だと思うんだけど……。短慮だな。
「大本営の指示を仰ぐために大本営との連絡係の大淀さんとその護衛で私や羽黒さんは少しここを離れていたんです。だけど……」
「この感じだと、不首尾で終わったみたいデスネー」
「はい。人員がないそうで。現地徴用しろとまで言われました。ここは無人島なのに……」
おいおい、無茶ぶりだな。無人島でどうやって人を探せと? ……いやそれなら
「そういや、金剛に相談があるんだけど」
「何デスカ? 大体の事なら力になりマスヨ」
「俺はいきなりここに飛ばされてきたわけじゃん?」
「らしいデスネ」
「だから、住むところも無ければ、職も無いんだよ。仕事、紹介してくれねえ? 三食寝床付の」
四人はポカンとした表情。しかし、いち早く立て直した金剛が笑顔を作って、
「OK。それなら、いい仕事がありマース。それは、私達の指揮官デース。三食寝床付で美少女美女揃いの職場デスヨ。どうデスカ?」
「そんな良い職場紹介してくれんの? その話乗った!」
「デハ……welcome、中島テートク! 私はテートクの着任を祝福するネ!」
このやり取りを聞いていた三人は俺と金剛のやり取りを見終わって、少しした後、笑い出した。
「ははは、おもしれー提督だな。俺の名は天龍。よろしく頼むぜ」
「そうですね。私は川内型軽巡二番艦の神通です。よろしくお願いしますね、提督」
「だけど、優しい人ですね。え、えっと、妙高型重巡四番艦の羽黒です。よ、よろしくお願いします」
「皆の指揮官になった、中島大和だ。よろしく頼む、天龍、神通、羽黒」
この後、持ち帰った通信機を使って、俺が提督になる旨を伝えて、何枚か書類を書いて手続きは終わった。……いや、簡単すぎねえ?
こうして俺はここの鎮守府の指揮官になった。まずは、皆から信頼されるような存在にならねえとなあ。一応、皆に慕われている金剛を助けた事で、ハードルは下がっているはずだし、一丁頑張りますか。
本編で話す機会のなさそうな設定
二話の「艤装を仕舞う」についての補足
これはなのはで言う所のデバイスを待機状態に戻す感じです。待機状態が彼女達の衣装や装飾品になります。海に浮かんで行動するのはデフォルトの能力です。
艦娘=付喪神
つまり、開発資材が憑代となって、魂が宿った感じですかね。妖精さんはそれを降ろす巫女みたいな存在です。建造時の資材はお供え物です。
ちなみにドロップはこの降ろす儀式(建造)のさいの資材を省いたもので、深海棲艦から開発資材をゲットし、それを呼び起こします。
世界観的に同名艦は複数存在しますが、開発資材の段階で妖精さんたちはどの艦が来るか把握できるので、通常建造で同名艦は同じ鎮守府では来ず、ドロップの場合、改修という形でその船を強化します。
大和の階級
管理局的には二等空尉、海軍的には少佐相当官です。
次回は鎮守府のお仕事と方針決定のお話になると思います。