東方酔迷録   作:puc119

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新章プロローグ……的な感じでしょうか?




第閑章
第始話~非日常の物語~


 

 

 私には両親がいなかった。

 

 いや、いないことはないはずだから正確に言うと両親の記憶がなかった。そのことを友達なんかに話すと、皆はかわいそうな人を見るような目を向けてくれる。けれども、私は不幸だとは思っていなかったし、小さな頃から暮らした施設の人も仲間も皆優しく、そんな生活に充分満足していた。

 

 そんな、普通の人とは少しばかり違う生活を送ってきていた。

 だからなのか、私はもっともっと普通の人が送らないような生活に憧れた。誰もが知らない生活に憧れた。

 闇の組織とか、地球外生命体とか、幽霊とか、超能力者かと、妖怪とか……そんな普通じゃない何かと関わりたかった。

 

 そして、どうしてなのかわからないけれど、昔から私には他の人には見えない何かが見えたんです。

 

 それは、煙のように見えることもあったし、光の玉や大きな動物に見えることも、人間に見えることもあった。そんな得体の知れない何かが、私には見えた。

 

 そんな得体の知れない何かが見えることは、誰にも教えていない。親しい友人にも、施設の人にも。別にソイツらが私に危害を加えてくるわけではなかったし、他人に教えたところで信じてもらえないことくらいわかっていた。

 だからこのことは、私だけの秘密。他の人には見えない何かが私には見える。そんな少しばかり優越感が心地良い。きっと私の見ている何かは、幽霊とか妖怪とかそう言う類なんだろうけれど、それらを眺めるのが私の小さな幸せ。

 

 そう、眺めるだけしか私にはできなかった。あと、もう一歩が踏み出せなかった。

 

 

 そんな私にとってそれは、幻想のような物語。

 憧れていた物語。

 

 けれども、あの不思議な二人組と出会ってから、そんな幻想が少しだけ現実へと近づいた。

 

 始まりは私がよく訪れる、名前も知らないボロっちい神社だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 私の住んでいる地域の山の上に、その神社はあった。

 獣道にしか見えないような山道を進むと、随分とボロい神社がある。聞いたり調べたりしてみたけれど、誰もその神社の名前は知らなかったし、どんな本にもその神社のことは書いてなかった。

 

 まるで、皆から忘れられてしまったような神社。

 

 そんな不思議な神社だけど、何故かそこにはソイツらがよく集まる。だから、私は毎日のようにその神社へ行き、ただただボーっと眺めているのが好きだった。

 

 

 今日は休日。一人ぽっちの家に居ても寂しいだけ。だから私は今日も神社へ向かった。梅雨も明け、天気の良い日々が続く。外へ出なければもったいないのだ。

 いつものように獣道を進み、山の上の神社へ着くと、何故か今日は得体の知れない奴らがやたらと多かった。

 

 多くの光の玉が、まるで遊んでいるかのように、ボロボロの境内を飛び回っていた。

 

「すごい……」

 

 此処は他の場所と比べて見える場所ではあったけれど、此処まで多く見えたのは初めて。

 おかしいとは思ったけれど、別に不安だとか怖いとか思わない。ただただ、その光景に見蕩れた。

 

 

 そして―――境内の中心にあの二人組が突然現れた。

 

 

「むぎゃ。痛い……」

「全く、どんくさいわねぇ」

 

 突然、何もない空間から現れた二人組。

 下敷きにされた黒髪の少年の苦しそうな声と、その少年を踏んづけている呆れるような黒髪の少女の声。

 

 何が……起きたの?

 

「ちょっ、幽々子。そこ退いて。動けない」

「外の世界へ来るのは初めてだけど、聞いていた通りやっぱり空気は悪いわね」

「いいから、退きなさいよ」

 

 バタバタと暴れる少年。それを楽しそうに踏む少女。

 

 忘れることのできない非日常は、此処から始まった。

 

 

 

 

「あ、あのっ……貴方たちは?」

 

 勇気を持って、二人組に声をかける。

 少しだけ怖かったけれど、私の中の恐怖心よりも好奇心が勝って言葉が出た。

 

「おろ? 人がいる。むぅ、どうすっかな……あと、幽々子そこ退いて」

「別に今日一日いるだけなのだし、良いんじゃない? 初めまして。私は西行寺幽々子よ。こっちの下にいるのは黒。貴女は?」

 

 水色のブラウスに桜色のスカートがよく似合う。柔らかな物腰。綺麗な人……何故か、癖のある黒髪だけが少し浮いているようにも見えた。

 

「あっ、私は『桜』と言います。えと、貴方たちはどうやって此処へ? 急に現れたように見えたけれど」

「桜ちゃん、か。うん、良い名前。どうやって、ねぇ……ん~、スキマによってかな。さて、あんまりのんびりしていると時間も終わっちゃうし、そろそろ行こっか」

 

 相変わらず西行寺さんの乗られたままの黒くんが言った。

 スキマ? なんのこと?

 

「そうね。せっかく外の世界へ来たのだし。それじゃあ黒、道案内はよろしくね。何か美味しいものが食べたいわ」

 

 そう言って、漸く黒くんの上から退いた西行寺さん。

 この二人は姉弟……なのかな? あんまり似てないけど。

 

「え、えと。それに私もついて行って良い……ですか?」

 

 まだまだ聞きたいことが沢山あった。

 このまま別れちゃうのはもったいない。憧れていた物語を読み進めることができるチャンスなんだ。

 

「どうするの黒?」

「別に大丈夫だと思うよ。それに俺も外の世界のことはわからないことだらけだし、いてくれた方が助かるかな。うん、じゃあよろしくね。桜ちゃん」

 

 そう言って黒くんは笑った。うん、よろしく。

 

 外の世界……それじゃあ、貴方たちのいた世界はなんなの?

 そんなことを聞こうとした時、西行寺さんのお腹から『くぅ』と可愛らしい音が聞こえた。

 気が抜ける。

 

「あら、黒。恥ずかしいわよ?」

「はい? いや、今の幽々k……痛い! コラ、足を踏むな。んもう……桜ちゃん、何処か飯屋さんを紹介してくれないかな?」

 

「まぁ、良いけど……えと、何か食べたいものとかある?」

 

「「お酒が飲みたい」」

 

 二人の声が揃った。仲が良いことで。

 いや、貴方たちどう見ても未成年でしょうが……それは無理だよ。飲ませてくれる店がないもの。

 お酒は無理だけど、とりあえず定食屋さんにでも連れて行こうかな。

 メニューもそれなりに豊富で、値段も良心的。何より歩いていける距離にあるのが助かる。ちょっと脂っこい料理が多いけれど、まぁ、私でも食べられるんだ。たぶん大丈夫。

 

「お酒は無理だけど……定食屋さんでも良い?」

「私は何処でも良いわよ。それじゃ道案内、よろしくね」

 

 それにしても、この二人は何者なんだろうか? まぁ、食事のときにでも聞いてみればいっか。時間はあるのだから。

 

 そんなこんなで、二人を連れて山を降りようとしたけれど、黒くんがついて来ていない。

 西行寺さんは来ているのに、何をやっているのよ……

 

「黒。行くわよ」

 

 西行寺さんが黒くんに声をかけた。

 後ろを振り返り、黒くんを見ると、じっと名前も知らない神社を見つめていた。いつ崩れてもおかしくないような、ボロボロの神社を。

 

「ああ、うん。今行くよ」

 

 なんとなくだけど、黒くんならこの神社が何なのか知っている気がする。ただの勘でしかないけれど、こう言う時の勘はよく当たる。

 

 お昼を食べるのには少々早い時間。けれども、山を登って疲れた身体にはちょうど良いかもしれない。

 

 物語は始まったばかり。まだ焦る必要はないはず。

 

 






ちょっと短めっぽいですね
けれども、始まりはこんなもので良いのです
あんまり書くと疲れますし

と、言うことで第始話でした
幽々子さんと主人公の現代入りです
ずっと、店にいるのもアレですので幽々子さんと一緒に出てきてもらいました

主人公視点は少なめにする予定


次話はこの続きっぽいです
では、次話でお会いしましょう

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