東方酔迷録   作:puc119

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第動話~立ちはだかる年齢確認~

 

 

「それにしても、スカートってなんだか落ち着かないわね。この黒髪も変な感じがするし」

「いつのも格好じゃ、流石に目立つからね。それにその黒髪だって悪くはないんじゃない?」

 

 二人組の会話。どうやら私がいることなんて、もう気にしていないみたい。最初から気にしていなかった気もするけど。

 

 山を降りながら、ちらほらと聞こえてくる会話から、どうにもこの二人は普段私たちが生活している世界とは違う場所から来たように思える。まぁ、そういう遊びをしているだけとも考えられるけど、どうせなら本当に違う世界から来ていてほしい。

 

 だって、そっちのが楽しいもん。

 

「そう? 紫に染めろって言われたから染めてみたけれど……似合ってる?」

「似合っていると言うより……懐かしいかな」

「……懐かしい? どう言う意味?」

「さあ、どう言う意味だろうね?」

 

 二人の仲はかなり良いようで、先程からずっとこんな感じ、いちゃつくのなら他でやってほしい。

 嫌がらせか。

 はぁ、私も彼氏ほしいなぁ……

 

 この二人って姉弟じゃなくて、やっぱりカップルなのかな? まぁ、そんなことは聞けないけどさ。

 

 二人だけで会話をしているせいで、私は完全に蚊帳の外。そのことに不満はないけれど……できれば私にも話しかけてほしい。

 情けないことに、自分から話しかけるのは少しばかり気が引ける。人見知りなんです。知り合って間もない人に話しかけるの大変なんです。

 

 最初に、私から声をかけた時だって、精一杯の勇気を持って声に出したんだよ?

 

「まったく、貴方はすぐそうやって誤魔化すのね。それにしてもお腹が減ったわ……ねぇ、桜。あとどれくらいで着きそう?」

「あと、10分くらいかな~。そんなには遠くないよ」

 

 漸く話しかけてくれた。嬉しいです。まぁ、続きそうもない会話だけどさ。

 

 難しいよね。会話って。聞きたいことは沢山あるけれど、それを言葉にすることができなくて、次に口にすることもできない。友達相手ならそんなことないのになぁ。

 

 

 

 

 結局、その後も私は会話に参加することはできず、二人の会話に耳を傾けながら店へ向かった。

 はぁ、なかなか上手くはいかないね。せっかく、憧れていた物語を進めるチャンスなのに……

 

「おおー、見たこともない料理だらけだ。何この『お子様ランチ』って。旗立ってるよ。旗」

「美味しそうな料理が沢山……悩むわね」

 

 メニュー表を見ながら、嬉しそうに燥ぐ二人。

 ん~……そんなに珍しい料理があるわけじゃないんだけどな。あと黒くん、お願いだから『お子様ランチ』を頼むのはやめてください。恥ずかしいです。

 お昼にはまだ早いためか、店内にお客さんは少ない。それでも、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

 

「そう言えば、黒ってお金持ってるの? 私は持っていなけれど」

「うん? ああ……あっ、ヤバい。外の世界のお金はない……」

 

 不穏な言葉が聞こえた。

 こっそりと自分の財布の中身を確認。野口さんが一人。三人分払うのはちょっと厳しい。

 ど、どうしよう……

 

「紫からもらっておくべきだったわね……どうしましょうか?」

 

 今更、外へ出るのも気が引ける。

 はぁ、仕方が無い。二人のためだ。今日のお昼は我慢しよう。

 

「あっ、お金なら私が持っているから大丈夫だよ。沢山持っているわけじゃないから、選べる料理は少ないけど」

 

 それにしても、この二人は何処から来たんだろう? さっきの会話を聞くに、私たちと違う通貨を使っているってことだよね。でも、話す言葉は日本語だし……う~ん、どういうことだろうか?

 

「なぁなぁ、桜ちゃん。あそこに貼ってある紙に書いてあるやつって頼めるの?」

 

 壁に貼られた紙を指差しながら黒くんが言った。

 指された方へ視線を向ける。

 

『来たれ挑戦者! 大盛りカレー! 制限時間までに食べ切れたら2万円!!』

 

 そんな張り紙があった。

 

「まぁ、頼めるけど。今までで成功した人は聞いたことないよ? それに失敗すると高くなるし……」

 

 確か、ご飯が1.5kgでルーが1kgだったかな。それでいて、制限時間は20分。失敗したら4人の野口さんと別れることになる。

 私の財布に野口さんはそんなにいない。

 

「ん~……まぁ、大丈夫だろ」

 

 いやいや、アレはやめておいた方が良い。それにどう見ても、黒くんがそんなに食べられるとは思わない。失敗した時のリスクが大きすぎる。

 だから、私が止めようとした時、黒くんがさらに言葉をつなげた。

 

「お前ならいけるだろ? 幽々子」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 料理が運ばれてきてから14分43秒。食べ切りやがった。

 ポカンと口を明けた店員さんの顔が面白い。

 

「大味ではあったけれど、なかなか美味しかったわ」

 

 苦しそうな顔ではなく、まだまだ余裕そうな西行寺さん。何者だよ、あんた。

 私はカツ丼定食を、黒くんは焼き魚定食を頼んだ。私たちはまだ食べ終わっていない。

 

 最初、私は注文しないでおこうかとも思ったけど、西行寺さんが食べきれなかったら、お金は足りない。だからもう、開き直ることにした。

 

「黒はあっちでも食べられそうな料理を選んだのね。ふふっ、まるでお年寄りみたい」

「まるでじゃなくて、年寄りだよ」

 

 最初、黒くんはやっぱり『お子様ランチ』を頼もうとした。全力で止めた。

 それにしても、西行寺さんのお腹はどうなっているんだろう? 体だって細い方だし、とても大食らいには見えない。食べている時も、テレビで見る大食いの人たちのような食べ方ではなく、品があった。

 

「むぅ、黒の料理も美味しそうね。少しいただける?」

「いやお前、アレだけ食べたんだから……ああ、もう。わかったよ、分けてやるから落ち着きなさい」

 

 箸を伸ばして、黒くんの魚を取ろうとする西行寺さん。

 まだ食べやがりますか、この人は。どうなってんだよ。

 

 

 

 

「貴方たちはこの後、どうするの? 何処か行きたい場所があれば案内するけど」

 

 私と黒くんも食べ終わり、食後のお茶。

 なんとかお酒を頼もうする二人を止めるなんてこともあったけど、わりと平和です。お酒は二十歳になってから。

 

「「お酒が飲みたい」」

 

 また二人の声が重なった。ホント仲良いな、この二人は。

 

「……いや、だからね。お酒は二十歳にならないと飲んじゃダメなの。貴方たちどう見ても、未成年だもの……流石に買えないよ」

 

「むぅ、桜は二十歳じゃないの?」

 

 黒くんが言った。

 失礼な。老けてるということかコノヤロー。張り倒すぞ。

 

「私はまだ、ピチピチの16歳! 花の女子高生です!!」

 

 JKですよ。JK。

 全く、なんということを言いやがりますか、この少年は。

 

「はぁ、貴方たちって何歳なの?」

「私は、1000歳くらいかしら」

「俺は1億数千万歳かな」

 

 どうやら、真面目に答える気はないらしい。

 

 西行寺さんは高校生だろうし、黒くんだってギリギリ高校生くらいにしか見えない。私より背低いし。

 

「ま、とりあえず。酒屋へ行けば買えるでしょ。お金もあるんだし」

「……そのお金は私の物よ。ふふっ、これでまた黒に借りができたわね」

 

 お酒を買うの、無理だと思うよ……

 言っても聞かないだろうけどさ。

 

 因みに、お昼代は西行寺さんが全て払ってくれた。ありがとう。ご馳走になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えと……年齢確認をしたいので、身分証明書をお願いします」

「身分……証明書?」

 

 場所は変わって近くのコンビニへ。

 どうやらこの二人はコンビニを見るのが初めてらしく、まず中へ入っただけで喜んだ。店員さんの視線が痛いです。

 そして、アレは何? これは何? と私に色々聞きながら、二人はお酒を見つけた。見つけてしまった。いや、まぁ、お酒を売っているってことでコンビニへ案内したんだけどさ。

 嬉しそうに黒くんは缶ビールを、西行寺さんはワンカップ酒を手に取った。チョイスが渋い! チューハイとかの甘いお酒を買うのかと思ってたよ。

 

 そして、意気揚々とレジへお酒を持っていった黒くん。まぁ、当たり前のように年齢確認されてるけど。だから言ったのに……

 年齢確認をされた黒くんを見て、西行寺さんは察してくれたらしく、苦笑いしながらお酒は棚に戻していた。うん、懸命な判断だと思う。

 

「えと……保険証や免許証などを……」

 

 店員さんも困り顔。店員さんだって、まさか黒くんみたいな少年が、どうどうと缶ビールを買おうとするとは思わなかったんだろうね。

 

「保険証……?」

 

 首を傾げながらこっちを見てくる黒くん。お願いだから私を見ないで。言ったもん。私は無理だって言ったもん。知り合いにこの場面を見られていたらどうしてくれる。

 

「ん~……よくわからないけど、その身分証明書ってのがないとお酒は買えないの?」

「も、申し訳ありませんが……」

 

 黒くんのため息が聞こえた。

 これでお酒を諦めてくれるかな? そうだと嬉しいけど。

 

「はぁ、お酒は諦めるよ。んじゃあ、この煙草を一つお願い」

 

 そう言って、黒くんは一箱のタバコを手に取った。

 んもう、どうしてこの人はそういう物ばかりっ!

 

「あ、あと、えと……その商品も年齢確認をしていただかないと……」

「コイツもかっ!?」

 

 ソイツもです。

 

 

 お酒もタバコも買えなかったからか、落ち込み気味の黒くん。そんな様子を西行寺さんは笑ってみていた。結局二人は、コンビニで何も買わずに外へ。

 私は流石に申し訳なかったから、ペットボトルのお茶を一つ買った。これで野口さんともお別れだ。また会えると良いね。

 

 はぁ……こんなに恥ずかしい思いをしたの初めてだ。きっと顔、真っ赤だよ。

 まぁ、これでお酒は諦めてくれただろうし、それはそれで良しとしよう。人生前向きに生きなきゃね。

 

 

 

 

 

 

 そんなふうに、私は思っていた。けれども、どうやらこの二人は諦めていなかったっぽい。

 そして、私が初めて体験した非日常の出来事のきっかけは、二人がお酒を飲みたかったからと言う、なんとも間の抜けた理由になった。

 

 

「幽々子。人払いは?」

「いつでも。けど幻想郷のように、上手くはいかないものね」

 

 何かを始めようとする二人。

 人払い? なんのこと?

 

「えっ、何をするつもり?」

 

 

「手の届くところに酒があるんだ。そいつを諦めるのはもったいないだろ?」

 

 

 黒くんのセリフ。意味は、よくわからない。

 

 そして西行寺さんが、何処からか扇を取り出しフワリと軽くそれを振った。

 

 ―――音が消えた。

 

 いや、そうじゃないか。音はする。でも車や鳥、そして人の声が急に消えたんだ。

 人払いってそう言う事なの?

 

「むぅ、やっぱりこの程度が限界か。あとはよろしくね、黒」

「上出来です。視覚結界張るぞ。たぶん、5分くらいしか持たないから、急いでくれよ」

 

 そう言って、黒くんはトンっと軽く足踏みを。

 そして視界が灰色になった。

 

「よしゃ、成功だ。急ぐぞ幽々子」

「了解~」

 

 腰が抜けたって奴なのかな。私はぺたりとその場に座り込んでしまった。足腰に力が入ってくれない。いきなりの非日常の出来事に身体がついて来てはくれないらしい。

 

 

 数分後、両手に酒が沢山詰められた袋を持ち、ホクホク顔の二人が出てきた。

 

 ああ、もう、意味わからないことだらけだし、私は全くついていけない。

 それでも、本当に楽しいな。このやろー。

 

 






視覚結界ってなんでしょうね?
響きが良いので書いてみました

と、言うことで第動話でした
東方キャラが幽々子さんだけと少々寂しいです

勇儀さんも連れて行こうとは考えていましたが、彼女角ありますもんね
諦めました

次話は続きっぽいです
酒も手に入ったことですし、どっかで飲むんじゃないでしょうか?

では、次話でお会いしましょう

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