東方転移記~transmigration of souls~ 作:yusaka
よろしくお願いします。
「……ったく、どこだ?ここ」
今、とある山、そこで一人の少年が遭難……いや、迷子になっている。そのことにもちろん少年も気づいている。
「だからこんな人の手の入っていない山に来るの嫌だったんだよ」
少年、
彼がこんな目にあっている理由は少し前まで遡る。原因は家族の一人、具体的には彼の母がとある山に行きたいと言い出した。なんと言う山だったかなどは幻能は覚えていない。なぜ母がそんなことを言い出したのかということも覚えていない。興味がなかったからだ。ただ、そのときは少し気になり調べてみた。すると、その山には人間の手が入っていないと言うことがわかった。そんな危険なところに行きたくはない、と少年は反対した。だが、彼の父と姉になし崩し的に説得されて、そして結局この状況である。
「……にしても、これからどうする?麓にでも戻るか?」
悪態をついていても仕方ないと思い誰にともなくそう言う。
そしてその考えが一番いいのではと思い、彼は山を降り始めた。
それから二時間後、彼はまだ山の中にいた。
(おかしい、さっきからずっと麓に向かって歩いているはずなのに、何で麓に着かない?上ったときは三十分程度しか歩いていなかったのだが)
幻能は自分の腕時計を確認し、そう思う。
「……あれは」
幻能はふと、足を止めた。彼の視線の先、そこにはいくつかの光が。
彼はそれを見て安堵した。彼はその光の方に人がいると考えたのだ。だが……
彼は少し考えるべきだった。
彼はほんの少し前、自分の腕時計を確認したのだ。そしてそこには今が『16:24』、午後四時二十四分だということを。
彼はもっと考えるべきだった。
今の季節は春、それなのに、何故、この夕方と呼べる時間帯にどうして、山の中だからと言うだけでは説明がつかないくらい・・・こんなにも
そうして、彼は光に向かって歩いた。光は移動する様子を見せない。その光にもう少しというところで・・・それを感じた。
(っ!……なんだ?何か……感じる。これは……懐かしい?)
そう、幻能は懐かしいというような感覚を感じた。彼にもその理由はわからない。ただ、そう感じたのだ。そして彼は気付く。先程まで目標としていた光がずいぶんと遠くに離れていることを。
(……追うか)
先程の感じたことをひとまず置いといて、光を追おうとする幻能。それしか自分に出来ることがないと彼は思った。
だが、光に向かい一歩を踏み出した瞬間、彼は何が起こったのかわからなかった。
(……えっ?)
彼は何かに包まれているような感覚を覚えた。だが、それが落下している感覚だと言うことに彼はすぐに気付いた。
(何で俺は落ちて・・・誰かの落とし穴にでも引っかかったか?こんな山で?……ありえない、か)
落下する浮遊感の中、彼は何故このようなことになっているかを考える。だが、何一つ思いつかないまま、落下し続ける。
幻能はどうしようもないと、いとも簡単に諦めた。
博麗神社の巫女、博霊 霊夢は普通に空を飛んでいた。気が乗ったこともあり、退屈しのぎに『幻想郷』の見回りをしていたのだ。だが……
「やっぱり、平和よねぇ」
彼女を退屈から引きずり出すような出来事は今日も起きなかった。
「まあ、それが一番と言えば一番なんだけどねぇ」
そんな当たり前のことを再確認する彼女。それと、当たり前と言えばもう一つ。
「よう霊夢、見回りか?」
人間の魔法使い、霧雨 魔理沙が箒に乗って霊夢の近くに飛んできた。
「ええ、まあ」
先程の魔理沙の問いに答える霊夢。
「そういうあんたは何しに来たの」
「いや、特にこれといって。ただ霊夢を見かけたから追ってきただけだぜ」
「そう。追ってきてくれて悪いけど、私はもう神社に戻るから」
「別に悪くはないけどな。私も行く予定だったし」
こうして、二人は博麗神社へと向かった。
「……ここは、どこだ?」
少年は地に背を向けながらそう言った。彼は先程までのことを思い出す。
(確か、さっきまでなんでか落ちていて、これは死ぬのかなと覚悟を決めていたら、いつの間にかこんな所に)
それが彼、孤全 幻能のこれまでのいきさつである。
彼はつい先程目を覚ました。その時彼は地べたにうつぶせに倒れていた。彼はまず、前方を見た。そこにはいつの間にか気を失う前にはなかった神社があった。軽く見て回ってみると賽銭箱の中が空だったり、鳥居がなぜか内側に向かって建っていたりと、少しおかしなところがあったが、大体普通の神社だった。
「……さて、これからどうしようか」
彼の今一番の問題はそれである。ここは見知らぬ土地、今出来ることと言えばここの神社の人が来るまで待つか、それともこの神社から出てみるか、それくらいだ。
「ん?あれは?」
ふと、空を見ている視界の中に、二つの黒い点が入ってきた。そしてその点は徐々にこの神社に向かって近付いている。
「なんだ?あれは」
口に出すと共にそう思い、何が起きても対処できるように立った。だが、その点の招待に気付いたとき、幻能は自分の目を疑った。
その点は、人間。紅白の巫女服のようなものを着た少女と、箒に乗った黒の目立つ魔法使いのような服装の少女だとわかったからである。
幻能が自らの目を疑うのも無理はない。幻能は今まで人間が空を飛んでいるところを見たことがない。飛べるとは思っていなかった。それが彼の、彼の世界の常識だから。だが彼は今、人間が空を飛んでいるところを目の当たりにしているのだ。
二人の少女は神社の境内に着地した。そして、巫女服の少女は幻能を見ながらこう言い放った。
「あんた、誰」