イッセーは、夢の中にいた。
親友三人が何か叫んでいる。悔し涙を流しながら、怨嗟のこもった罵詈雑言を投げている。
何がなんだかわからない。
よく見ると、自分の服装が結婚式で新郎が着るようなタキシードを着ている。
そしていつの間にか隣には、純白のウエディングドレスに身を包んだリアスの姿が。
よく見れば教会の中で、後ろの席には感動で涙ぐむ両親や親戚、クラスメイト達までいる。
そして自分とリアスの薬指には、プラチナカラーの指輪がはまっている。
どこからどう見ても結婚式。それも、自分とリアスの。
混乱するイッセーをよそに、式はどんどん進行していく。
そしてついに来た。
誓いの口づけの時が。
いま、目の前にあるのはヴェールを被ったリアスの端正な顔と、自分に向けられたその形の良い唇。
いっていいんだよな。いいんだよな!?
そう、結婚すればその先にあるのは子作り!!yes!!KODUKURI!!
どうせそこまで行き着くのであれば、キスぐらいなんだ!!
漢だイッセー、漢を見せろ!!
会場にいる奴らよ、俺とリアスの愛の誓いの印をとくと見さらせい!!
さあ、唇同士が触れ合うまであと30cm、20cm、10cm、1cm、1mmィィィイイイ!!!
『随分と盛り上がってるじゃあないか、ええ?糞餓鬼。』
不意に野太い声が響き渡る。
すると、会場も、客も、リアスも全て暗闇の中に消える。
代わりに現れるのは、渦巻く炎と爛々と輝く双眸。
「今の声、どこかで……。」
『そう、俺はお前の中にいる。不服だがな。』
「だ、誰だ!?」
炎の勢いがさらに激しくなる。
『俺だ!俺はお前にずっと話しかけていた。だが、お前が弱小だったから声が届かなかっただけだ。……それなりに鍛えてはいるようだがな。だが、まだ遠い。』
「な、何を言ってるんだよ!?」
徐々に炎の中に何かいるのがわかってくる。
『挨拶をしておいたかっただけさ。これから共に戦うことになる“相棒”にな。まあ、お前の友の方が余程良い器だったようだがな。文句は言ってられん。』
「相棒って、お前は一体……!?」
『お前はもうわかっているはずだ。……そうだろう?我が相棒よ。』
刹那、左腕に激しい痛みが襲う。
自分の意思とは関係なく現れる神器。
そうだ、あいつは―――
*
ある平日の朝。
ダイスケは普段どおりに校門を潜る。
「ふわぁ~あ……ねみぃ。」
アーシアが眷属となって、既に一週間が過ぎた。根が純粋かつ愛らしい容姿のアーシアは、すぐさまクラス内に溶け込んでいった。
不安要素は松田と元浜だったが、アーシアの純粋オーラに圧倒されてエロい話題を振ってくることはなかった。それどころか普通に友達になっていった。女子のエロ巨塔である桐生もともいつの間にか仲良くなっていた。どうやったら清純な人間と不純な人間が仲良くなれるのか不思議だが、これも彼女の人徳ということか。
そしてここからが重要なのだが、アーシアはイッセーの家にホームステイという形で同居している。
そう、ひとつ屋根の下にいるのだ。
ダイスケがイッセーから聞いた話なのだが、当初イッセーの両親はアーシアの同居に反対だった。「イッセーという性欲の権化がいる限り、アーシアの身の安全は保障できない」というのが理由だった。このことを話していたイッセーは、「おれ、両親に今までどういうふうに思われて育ったのか、齢十六にして初めて知ったよ……」と遠い目をしていた。それを聞いたダイスケは「的を射てるんじゃ」と思ったが口にはしなかった。
だが、この提案をしてきたリアスがとんでもない解決方法を提示してきた。
それは、「このホームステイを花嫁修行と思ってはどうか」ということだった。それをイッセーの両親が花嫁修行=アーシアがイッセーの嫁に、というK点超えの誇大解釈をしたのだ。
そしてイッセーの両親は、孫の顔を拝めると言ってこれを快諾。まあ、アーシア自身の人当たりの良さもあって、今のところ問題はない。イッセーの方もチラシ配りを卒業し、悪魔家業に少しづつ慣れてきている。相変わらず、契約そのものはほぼ成功していないが。それでも、顧客対応の良さからお得意先が増えているのも確かだ。……なぜが変人が多いのが疑問だが。鎧甲冑姿の女子大生然り、自称魔法少女のミルたん(服装は魔法少女、肉体は世紀末覇王)然り。
ダイスケが悪魔家業の手伝いを続けていることも含め、取り敢えずそんなこんなで順調に順応しつつあるイッセー、アーシア、ダイスケの三人だった。
そんないつもと変わらない日常を過ごそうとしていたダイスケを、イッセーが待ち構えていた。
「ダイスケ、ちょっと来てくれ。」
いつにない真剣な面持ちだ。何かあったのかと、ダイスケは怪訝そうな顔になる。
「あ?なによ。」
「いいから。」
そうしてダイスケはとある空き教室に連れて行かれる。
「どうしたんだよ、こんなとこ連れてきて。」
「悪い。でも、お前にどうしても聞いて欲しい事があるんだ。」
幸い、ホームルームが始まるのにまだ三十分ほどある。それにこの部屋は滅多に人が来ない。他人には聞かれたくない話なのだろう。
「わかった。なんだよ、話って。」
「ああ、実はな……。」
イッセーが本題に入る前に一拍置く。
「昨日の晩、俺の部屋にリアス先輩が来たんだ。」
「……はい?」
「処女をもらってくれって言われた。」
「……はい?」
ダイスケの思考は停止した。
今コイツは何を言ったのか?
まさか薬物でもキメて、なにか見てはいけない何かでも見てしまったのか?
それともまた記憶が混乱して、ありもしない出来事を語ったのか?頭がおかしくなりそうだった。
「イッセー、ちょっといいか?」
「ん?なんだ?」
ややあって、ダイスケの指がイッセーの頬を思いっきり抓り上げる。
「いダダダダダダダダ!!!なにふゅんふぁよ!?」
「あー、夢を見ているじゃないのか。じゃあ、俺の頭がおかしくなったんだな。」
指を離したダイスケは、そのままコンクリートの柱に頭を打ち始める。
「ダイスケェェェェェ!?」
「目を覚ませェェェ!!今すぐ目を覚ませェェェェ!!あれ、なんで夢が覚めないんだ?死ね、俺ェェェェェ!!!」
「やめろ、ダイスケ!!なんか途中から方向性がおかしくなってるぞ!?……って、柱にヒビがァァァァァ!!」
イッセーの言う通り、柱に放射状のヒビが走り始める。おまけに粉がパラパラと零れ始めた。
「おい、マジでやめろ!!学校が壊れる!!」
そう言ってイッセーはダイスケを羽交い絞めにする。不思議なことに、その額には傷一つついていない。が、止めるのに必死でイッセーがそれに気づくことはなかった。
「お前が変な嘘を言うからだろ!」
「嘘じゃねぇって!!マジでリアス先輩に夜這いされたんだよ!!」
確かに嘘ついてまで語る内容の話ではない。それに無いとは言え、ダイスケがこのことを吹聴すれば学園中の生徒がイッセーを文字通り袋叩きにされるだろう。嘘をついてダイスケをおちょくるには高すぎるリスクだ。
「……まあ、それが真実だとして、最後まで行ったのか?」
「いや、いざ本番って時にリアス先輩の実家から銀髪のメイドさんが「話がある」って現れて、おじゃん。グレイフィアさんって人だった。」
「リアル銀髪メイドさんには興味があるけど……その後は?」
「そのグレイフィアさんと一緒に帰っていったよ。だけど、アーシアに見つからなくて良かったぜ。錯乱するかもしれないからな。」
「お前、言い方が二股バレるのを気にしている男みたいだぞ。」
そう言いながらも、ダイスケは考える。
リアスがイッセーに夜這いをかけた理由。
グレイフィアとやらの要件。
その銀髪メイドさんは美人かどうか。
フリーならば是非声をかけたい。勇気はないが。
そこである可能性にたどり着く。
「ひょっとしたら、部長の実家に関わる用件かもな。それも、お家存続に関わるような。」
「あ、そういえば部長って、グレモリー家の次期当主とかだっけ。……ありうるな。」
「この件を他に知っているのは?」
うーん、とイッセーは記憶をたどる。
「そういえば、朱乃さんが話に同伴するって言ってたな。女王は主のそばにいるもの、とかで。」
「なら、放課後に朱乃さんに聞くか。いずれにしろ、何かあるのは間違いないぜ。」
*
放課後。
イッセー、ダイスケ、アーシア、それに小猫と木場が一緒に部室のドアを開けた時、件のメイドがいた。
美人だった。
「出会って早々に失礼ですが、あなたに一目惚れしました!初恋です!俺と結婚を前提に付き合ってください!!」
告白した。90度のお辞儀をして。
「……お気持ちは嬉しいのですが、お断りさせていただきます。」
撃沈だった。
さながら、側面からの魚雷攻撃で轟沈した戦艦大和のように。
吐血して、卒倒した。
「ダイスケェェェ!!」
イッセーが崩れるダイスケを支える。
「い、イッセー……。」
「ダイスケ、しっかりしろ!!傷は深いぞ!」
「ダイスケさん!すぐに治しますから!」
アーシアがダイスケの胸に手をかざし、癒しの光を送る。
「アーシア、もういいんだ……。これは、お前の神器で治るようなモンじゃあない……。」
「で、でも……!」
涙ぐむアーシアをよそに、ダイスケは辞世の言葉を残そうとする。
「俺は満足さ。ほんの一瞬でも、生まれは初めて“恋”ってやつができたんだから。……それで、十分さ。」
「だ、ダイスケェ……。うぅ。」
「イッセー……最後に、俺が死んだら、俺のパソコンのハードディスクのデータ、処分しておいてくれ……たの、んだ……ぞ……ガクッ。」
ダイスケは、事切れた。
「ダイスケ?……ダイスケぇぇぇぇええええ!!」
「ダイスケさぁぁぁん!!」
イッセーとアーシアの悲しき叫びが部室を包む。
宝田大助。
人生の最後に愛を知り、死す。
~ハイスクールD×G《Reboot》、完~
「……もういいかしら?」
「「あ、はい。」」
リアスの一言で一瞬で素に戻るイッセーとアーシア。
そしてダイスケは、イッセーが急に立ち上がったせいでゴン!という音を立てて床に転げ落ちる。
その様子を見ていた他のメンバーは皆絶句している。
「まったく、アーシアまで乗るなんて。普段、教室でどういう風にしているの?」
「イッセーさんやダイスケさん達に、日常生活におけるボケとツッコミについて教えていただています。」
「なかなか飲み込みがいいんですよ、アーシアは。」
ハァ、と溜息をつくリアス。
だが、当のダイスケは未だに立ち上がらない。本当にショックだったのだろう。
「お嬢様、彼は?」
「この前言っていた神器の主よ。今はこの状態だけど、実力もあるし悪魔についても私から教えているわ。」
「なるほど、彼が……。」
既にダイスケのことを聞き及んでいたのか、グレイフィアは納得する。
「では、彼も含めて事情を説明してもよろしいのですね。あの状態ですが。」
「ええ、いいわ。あの状態だけど。」
まだ起きない。
「ダイスケくん、元気だしなよ。初恋なんて、往々にして破れるものなんだからさ。」
「先輩マジざまぁ。いやぁ、今日もメシがうまい。」
「あらあら、これでまたダイスケ君をいじるネタが増えましたわね。」
フォローをする木場と傷口に塩を塗る小猫、そして黒い笑みを浮かべる朱乃だが一向にダイスケの反応がない。本当に死んだのではないだろうか。
「……お嬢様、わたくしから説明いたしましょうか?」
「いいえ、私から説明するわ。実は……。」
リアスがそう言いかけた時、部室の空いているスペースに魔法陣が浮かび、赤い焔が立ち上がる。
その中に、ひとりのホスト風の男が立っている。
「フェニックス……。」
リアスが72柱の悪魔の名を口にする。ということは、この男は悪魔の貴族ということになる。
「ふぅ……人間界は久しぶりだ。会いに来たぜ、愛しのリアずァァァアアアア!!!???」
いつの間にか復活していたダイスケが、消化器の中身を男に向けてぶちまける。
「貴様、いきなり何を……って、のわぁぁぁあああ!!!」
ダイスケは消化器の中身が無くなった事を確認すると、今度は消火栓から男に向けて放水する。
「ふぅ、これで火は消えたな。」
消えたというか、原因となった男が消火剤と水をかけられていただけだ。火そのものは男が喋り出した時に消えている。
「なにが「火は消えた」だ!初対面の者にいきなり放水するか!?一般常識というものがないのか貴様!!!」
「常識がないのはあんたでしょ。この旧校舎は木造なんだぞ。そんなところで火遊びしたら大火事だ。その際の弁償とかできるの、あんた?大体、人死にが出たらどうするんだよ。」
「移動用の陣から出る炎はものを燃やさないんだよ!!これだから下賎な人間は!」
「木造建築内で盛大に炎を上げるような、一般常識がない奴に言われてもね。」
「なんだとぉぉぉぉおおおお!?」
「……あの、この人誰なんですか?」
目の前のやり取り呆れたイッセーは、ショックで白目になっているグレイフィアに問う。
「……え!?え、ええ、この方はライザー・フェニックス様。純潔の悪魔であり、名門フェニックス家の御三男。」
「……この人が、ですか?」
イッセーは全身が消火剤と水にまみれた目の前の男を指差す。ダイスケといがみ合っている現状を見て、信じられないのは仕方ないだろう。
「……はい。そしてグレモリー家の“次期当主”の婿殿。つまり、リアスお嬢様のご婚約者様であらせられます。」
「……これで?」
「……はい。」
人間も悪魔も、認めたくない現実というものはある。だが、それを認めて初めて前に進んでいける。取り敢えず、イッセーはそういうことなのかと納得する。まあ、納得できないところもあるが。
そう、この軽薄そうな男がリアスの婚約者であるという事だ。
リアスもそうなのか、ライザーを不服そうに睨みつけていた。
*
「いやぁ~、リアスの女王が淹れてくれた茶は美味しいものだな。」
ライザーは既に濡れた服を自身の炎が放つ熱で乾かしていた。今はリアスの隣に腰掛けた上でその背中に腕を回し、空いた手で紅茶を飲んでいる。
無論、リアスは嫌悪感を顔に出しているがお構いなしだ。
「痛み入るお言葉ですわ。」
朱乃の対応はいつもと変わらないが、普段の彼女を見ているイッセーとダイスケには彼女が表面上でしか取り繕っていないことが手に取るようにわかる。
(こんなにいけすかねぇ野郎が、本当に部長の婚約者だっていうのかよ……!)
イッセーの怒りは正当なものだった。
明らかな嫌悪を表されているにもかかわらず、ライザーはしつこくリアスの髪を触り、あまつさえスカートから伸びる素足の肌に触れている。
(おさわりパブかなんかのつもりか、コイツ。)
ダイスケの思っていることは、イッセーの思っていることでもあった。
自分たちの主をこのように扱われ、怒りを感じないわけはない。
それを感じたのか、リアスはライザーの手を払うがごとく立ち上がる。
「いい加減にしてちょうだい。」
ライザーは驚いたような顔を見せる。
「ライザー、以前にも言ったはずよ。あなたとは結婚しないわ。」
「いよっ、さすが部長!俺たちの気持ちを見事に代弁してくれている!!」
「そこにシビれる、憧れるゥ!」
ダイスケとイッセーの囃し立てに、リアスは咎めることもなく胸を張ったVサインで答える。
だが、ライザーはそのやり取りを完全無視する。
「だが、リアス。君のところのお家事情は、君の我侭が通るほどの余裕はないはずだが?」
「家を潰すつもりはないわ。婿養子だって迎え入れるつもり。でも、それは私がともに生きたいと思う者よ。あなたではないわ。」
「先の大戦で失われた純潔悪魔の血を守るというのは、悪魔全体の問題でもある。君のお父様も魔王サーゼクス様も、悪魔の未来を考えてこの縁談を決めたんだ。」
その言葉で、リアスは手を強く握る。
「みんな急ぎすぎるのよ……。もう二度と言わないわ。ライザー、私はあなたとは結婚しない!」
はっきりと異議を述べるリアスだが、ライザーはそれに屈しない。それどころか、逆にリアスの顎を手に取り威圧してくる。
「俺だってなぁ、リアス……。フェニックス家の看板を背負ってここに来ているんだ。なんだったらここで、君の下僕たちを燃やしてても……君を冥界に連れ帰る。」
ライザーの体から、フェニックスの炎が吹き上がる。先の言葉は冗談ではない。本気だ。
しかし、グレイフィアがそれを止めようとする前にライザーの顔に何かが張り付く。
鶏の胸肉だった。
部室の冷蔵庫からイッセーとダイスケが先の口論のうちに取り出して、その顔面に投げつけていた。
「「焼くんだったらその肉でも焼いてろ、このブァーカ。」」
炎が収まる。
そしてライザーは無言で震え、顔に張り付いた生肉をはがして手の中で炎に包んで炭化させる。
「……もういい!!こうなれば決闘だ!俺とレーティングゲームで勝負しろ!!構いませんな、グレイフィア殿!?もともとここまで話がこじれたら、こうする予定だったのだから!!」
レーティングゲーム。
それは成熟した爵位持ちの悪魔たちが自分たちの眷属をチェスの駒に見立てて、ルールに則った上で行う闘い。
悪魔の駒がチェスをイメージしているしているのはこれが理由だ。
かつての大戦とやらで勢力を減退させた悪魔が、人間等を転生により強力な眷属を増やして且つ仲間を死ぬこともなく実戦経験を積める。よって現在最も推奨されている“競技”であり、実力主義の悪魔社会では成績が爵位や地位にまで大きく影響してしまう。
既にそれは、イッセー、アーシア、そしてダイスケも聞き及んでいる情報だった。
「ええ。そうするようにと、私も両家のご当主方から承っております。」
グレイフィアが止めずにいるということは、これは最初から仕組まれていたことだったのだろう。
リアスが家の命令に従わないのであれば、あえて決闘をさせて双方に納得のいく形で決着をつけようというのだ。
「だがなぁ、リアス。俺は公式戦に何度も出場し、勝利経験もある。しかし君は成人になってない関係上、一度も試合をしたことがないだろう?」
圧倒的な経験差。これほど不利な条件はない。
だが、それ以上の不利な要素がもう一つ。
「それにだ、今ここにいる面子……まあ、そこの慇懃無礼な天然パーマは人間だから除外するとしてこの五人しかいないんだろう?」
「ええ、そうよ。」
「ところがギッチョン、こちらは……。」
ライザーが指を鳴らす。
すると再び魔法陣が現れ、今度は複数の悪魔が現れる。
「15名!!フルメンバーだ!」
それぞれの主を合わせても7対16。
二倍以上の戦力差がある。
しかもライザーの眷属は全員女。おまけに全員が美女または美少女。
約2名の怒りを買うのに、十分な理由だった。
「あの野郎……リアス部長を手込めにしようとするどころか、自分のハーレムまで!?」
「許せねぇ……絶対に許せねぇ!!僻みとかじゃなく!!ああ、僻みとかじゃなく!!」
この真剣な雰囲気の中で、全く空気を読まずに私怨を募らせるイッセーとダイスケ。完全にただの僻みだ。他の眷属仲間も呆れた目で二人を見ている。
それを見たライザーは流石に困惑せずにはいられない。
「お、おい、リアス。あの二人、異様なまでに俺を睨みつけてきてるんだが。それもかなりの殺気を放っているぞ。」
「……私の兵士の方のイッセーの夢はハーレムを作ることなのよ。それに、天然パーマの方のダイスケは今しがた失恋したばかりよ。それも初恋。」
「そ、そういうことか……。」
リアスの説明に納得するライザー。
だが、納得してくれたからと言って目の前の不逞の輩を許す二人ではない。
「部長!!こんな羨まし……ゲフンゲフン、巫山戯た野郎にわざわざ勝負する必要ありませんよ!!今、ここでぶっ飛ばしてやる!!」
怒りに任せ、神器を展開するイッセー。
「イッセーに賛成だな。ストレートにここで戦ろうや。」
ダイスケもイッセーと同じく右手に神器を出し、拳を鳴らす。
「しょうがない……ミラ!」
ライザーにそう言われて出てきたのは和服を着た小さな少女。手には長い棒、棍が握られている。
「ミラは俺の眷属の中でももっとも弱い。彼女に敵わなければ決して勝てんぞ。」
ライザーはいやらしい笑みを浮かべ、二人を挑発する。
「ライザー様、どちらから先に行きましょうか。」
「二人同時に、というのもいいが……ここは俺に盛大な歓迎をしてくれたダイスケとやらの方から片付けろ。」
「はッ、すぐに始末いたします。」
返事と同時に飛びかかるミラ。棍を構え、ダイスケに向けて振るう。
「破ッ!!」
狙いは腹部への突き。普通の人間ならば全く反応できないほどの速さの突きである。
だが、この程度の突きは祖父の銃剣突きに比べれば蝸牛の歩みの速さだ。故に難なく避け、棍を両手で掴む余裕があった。
「何ですって!?」
いとも容易く自分の突きが破られたことに驚くミラだが、その原因が自分の放った一撃が相手を見くびったが故の甘い一撃だったからということに気づいていない。
「仕掛けてきたってことは、逆に自分がやられる立場になりうるって覚悟したうえだよな?」
あくまで事後承諾だがダイスケは念を押す。そしてそのまま棍を上に突き上げるように一気に力を込める。するとミラは体制を崩し、重力と加えて横に倒される力に逆らいきれず倒されてしまう。
これは立技両手取り呼吸法における杖術に対する反撃方法である。この場合、ミラはすぐに棍を捨てるべきであった。だが反撃されることを全く想定していなかったことが災いし、素人のダイスケに一本取られることになってしまったのだった。
無論、ダイスケがこれで終わりにするはずがない。奪った棍を持ち直し、ミラが体制を整える前に―――
「ふんッ!!」
直下にあるミラの喉に真っ直ぐ突き立てる。
「―――ッ!?」
声を通る所をやられたせいで叫び声を出すこともままならない。それどころか筆舌し難い痛みのせいで患部を抑えることもできないでいた。
「……眷属悪魔の実力って言ってもこの程度か。」
ダイスケはつまらなそうに棍を捨て、足元で痙攣するミラをライザーへ向けて蹴り飛ばした。もはや女子に対する扱いではない。
「ミラ!……貴様よくも!」
「だから、仕掛けたのはそっちだろうが。えぇ?焼き鳥さんよ。」
完全に場が決裂した。
こうなれば、リアスの取る道は一つしかない。
「……受けるわ。この勝負。」
「リアス!?」
朱乃が驚く。普段の部長呼びも忘れる程に。彼女は眷属の中で最もリアスとの付き合いが長い。貴族としての自尊心が高いのは重々承知していたが、ここまで不利な条件の勝負を受けるとは流石に想定外だった。
そしてそのリアスの答えに、グレイフィアは頷いた。
「……承知致しました。今回は未成年のお嬢様が参戦されるということで、非公式戦になります。」
「グレイフィア殿、非公式の試合ならばそこの人間も出場できるよう調整できるのではないですかな?。戦いの場でここまで受けた借りを返したい。」
「なりません。非公式戦といえどもイレギュラーな参加者を入れるにはアジュカ様のお手を借りなければシステムに手を加えられないのはライザー様もご存じの筈です。」
ダイスケに対する意趣返しができないことを知ったライザーは忌々しげな顔になる。それを見たダイスケは一瞬おちょくってやろうかとも思ったが、こちらが不利であることを思い出してを出すのをやめる。
「構わないわ、グレイフィア。そもそも眷属でない彼まで巻き込むわけにはいかないもの。」
戦力比約1:3という絶望的戦力差、そして相手は競技とは言え百戦錬磨の相手であるという不利のなか、それでも眷属であるかそうでないかという分別をリアスはしっかりと付けている。
「解りました。では代わりと言ってはなんですが、十日間の猶予とダイスケ様の観戦の権利をつけましょう。」
リアスの実直な態度のおかげで奇跡的に準備できる時間的余裕は出来た。それに、戦いの経過がダイスケの預かり知らぬところで行われるということもない。問題はこの与えられた時間の中でいかに戦力差を実力で埋められるようになるか、であるがその前途多難さを吹き飛ばすようにリアスは言い放った。
「決まりね。待っていなさい、ライザー。あなたを消し飛ばしてあげる!!」
ということで今章ではダイスケはレーティングゲームには参加できません。
悪魔の駒を持っていない者が複雑なルールやシステムが存在するゲームに参加させようとしたら開発者の手を借りなければならないけれど、グレモリー、フェニックス両家の問題に他家の者、それも魔王が介入することは政治的に難しいだろうということで今回はこのようになりました。
まあ、主人公に参加できないフラストレーションを貯めさせて後で場揮発させるって目的もあるんですけど。
あと、今回はほぼ前作のコピーになってしまいました……あ、石投げないで。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!