ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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最近読者数が少しづつ増えてきてくれてるみたいです。
この調子で平均調整に色がつくように頑張ります。



VS16  探し物は忘れた時によく出てくるから腹立つ

「天使・堕天使・悪魔の三つ巴の戦争に乱入して逆ギレたァねぇ……最強のドラゴンなのにバカなの?死ぬの?」

 

『だから今、こうして体をバラバラにされた上で封印されているんだ。若さの至りだったんだよ。』

 

「これが若さか……てか?お前、自分が赤だからって言っていいセリフじゃあないぞ?金色でもダメ。」

 

『……相棒よ、お前の友人が言っていることが理解できんのだが……。』

 

「ああ、それは無視してやって。本人もそれを分かって言ってるから。その分悪質なんだけど。」

 

「わかってるじゃないか。で、いずれライバルの『白い龍』と戦う運命と……終わったな。このままだと確実に死ぬわ、お前。赤いのってだいたい白いのに負けるもん。」

 

『それは言えてる。』

 

「そんなあっさり!?せめてもう少し強くなってからだと嬉しいんですけど!?ていうか、ガンダムネタ引っ張りすぎ!」

 

「あ、フラグ立った。こりゃ近いうちに確実に遭遇しますわ。良くてアクシズに乗って二人仲良く行方不明だ。」

 

『今回の目覚めは案外短かったな……。』

 

「なんでお前らそんなに息ピッタリなの!?」

 

木場と喧嘩別れをしてしまった次の日の放課後、オカルト研究部の部員に緊急招集がかかった。教会のエクソシストが、この駒王町を取り仕切っている悪魔であるリアスに会談を申し込んできたというのだ。

その部室へと至る道すがら、イッセーからドライグの事を聞いていた。そして昨日、帰宅すると家に二人のエクソシストが、それももう片方はイッセーのアルバムに写っていた子供が成長した紫藤イリナであっり、イッセーの母と談笑していたことも聞いていた。

 

「だけどさ、リアルにあるんだな。「お、お前女だったのか!?」ってやつ。」

 

「大抵そういうのってフラグだよな。っていうか、なんでお前にばっかりフラグが乱立してるんだよ。ユニオンじゃねえんだぞ。」

 

「いや、それフラッグね。ハムさんが大好きな方の。ていうか、本当にガンダム好きだな。」

 

そうして、二人は部室の扉を開く。

既に他のメンバーは揃っており、後は教会の人間が来るのを待つのみであった。

昨日喧嘩別れのように別れた木場もいる。しかし、心中穏やかではないだろう。自分が最も嫌う者たちがやってくるのだから、本人達がいなくとも腸が煮えくり返っているだろう。

 

「二人共来たわね。先方はあと十分後ぐらいに来る予定だから、くれぐれも衝突なんかしないようにね。特にダイスケ。あなたにはライザーの時の前科があるんだから。」

 

そのリアスの言葉に、ダイスケは「へーい」と適当に答える。ソファにドッカと座り込んで部室内にあった今日の新聞を広げているのは余裕があるからなのか、それとも空気が読めないだけなのか。

それとは反対に敵対勢力の者がやってくるということで、部室内は緊張に包まれる。

もう、その扉の向こうにいるかもしれない。そんな気の張った状況にさすがのダイスケもちょっとは気が引き締まる。

 

「そろそろね……。」

 

リアスの言う通り、時計は約束の時刻を告げる。

それと同時にエクソシストの少女が二人、部室内に入ってきたのだった。

 

 

 

 

 

 

やってきたのは先にイッセーの家にも現れたプロテスタントで亜麻色の髪をツインテールにした紫藤イリナとカトリックで緑のメッシュを入れた短髪のゼノヴィアだった。本当ならばもう一人カトリックのエージェントがいるそうだが、そちらは既に探索を開始しているとのことだった。

それらを説明した上で紫藤イリナはかのように語りだした。

 

「この町を訪れた神父が次々と惨殺されているのは既に聞いていますね?それに関する話なのですが……先日ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会に保管管理されていた聖剣『エクスカリバー』が奪われました。」

 

そこで、イッセーはある疑問を抱く。

キリスト教内にいくつかの派閥があるのは知っている。だが、エクスカリバーがなぜそれぞれの施設に保管されているのか?と。

 

「イッセー、エクスカリバーそのものは現存していないの。」

 

リアスがイッセーの心の中を見たかのようにその疑問に答える。

 

「ごめんなさいね、私の下僕に悪魔になりたての子がいるから。」

 

その言葉の意味を察したのか、イリナが説明をはじめる。

 

「イッセー君、エクスカリバーは大昔の三つ巴の戦争で折れたの。」

 

「今はこのような姿だ。」

 

そう言ってゼノヴィアは、傍らに立てかけている布に巻かれた長い物体を解き放つ。そこに現れたのはひと振りのロングソード。

 

「これが、エクスカリバーの七つになった片割れ、“破壊の聖剣《エクスカリバー・デストラクション》”だ。カトリック側が管理している。」

 

その瞬間、その場にいた悪魔が全員、生理的な嫌悪感と恐怖を感じた。

悪魔になったばかりのイッセーにも、それがいかに危険なものなのかが直感でわかった。

 

「戦争で砕け散った刃を集め、錬金術によって新たな姿となったのさ。」

 

自分の聖剣を紹介し終えたゼノヴィアは、再び布で剣を包む。

よく見ればその布には、何らかの呪文が記されている。どうやら普段はそうして封印しているようだ。

イリナも懐から長い紐を取り出す。すると、その紐は生きているかのようにうねうねと動き出した。そして皆の前で紐はその姿を日本刀へと姿を変える。

 

「私の方は“擬態の聖剣《エクスカリバー・ミミック》”。こんなふうに何にでも姿を変えられる超便利アイテムよ。こんなふうに、エクスカリバーはそれぞれに特殊能力を備えているの。こっちはプロテシタント側が管理しているわ。」

 

イッセーは先程と同様に、その剣に恐怖を感じる。

 

「イリナ……悪魔にわざわざ喋る事ではないだろう?」

 

「あら、ゼノヴィア。いくら悪魔だからといっても、今回は信頼関係を築くのが重要よ?この場ではしょうがないわ。それに、教えたからといって悪魔の皆さんに遅れを取るなんてことはないわ。」

 

相当腕に自信があるのだろう。これだけの悪魔を相手にしても、負けるはずがないというだけの修羅場をくぐってきたということだろうか。

だがそれよりも、イッセーには気掛かりな事が一つあった。木場のことだ。

あれだけエクスカリバーに恨みを持つ木場が、果たして今、この場で自分を制御で来るのだろうか。恐らく、木場にとってもここで二本ものエクスカリバーと遭遇しようとは夢にも思っていないだろう。

それが今目の前にある。今の木場の心中は、イッセーには察して余りあるものだろう。ただ、木場が軽率な行動を取らないよう祈るだけだ。

もし、万が一のことがあれば、犠牲を出さずに済む方法はないだろう。

 

「それで、奪われたエクスカリバーがどうしてこの町に関係があるのかしら?」

 

そのリアスの問いにゼノヴィアが答える。

 

「カトリック本部に残っているのは私のを含めて二本。プロテスタントのもとにも二本。正教会も二本。残る一本は三つ巴の戦争の末に行方不明。その内、各陣営にあるエクスカリバーが一本ずつ奪われた。奪った連中は日本に逃れ、この地に持ち込んだ、というわけさ。」

 

「……どうして、私の縄張りはイベントが多いのかしら。それで、その犯人は?」

 

額に手を当ててため息を吐くリアスにゼノヴィアは目を細め、答えた。

 

「“神の子を見張る者《グリゴリ》”の連中、それもその幹部のひとり、コカビエルだ。」

 

「今では偽書に認定されたとはいえ、聖書の一部にもその名が記された堕天使が犯人とはね……。」

 

その出てきた名に、リアスは苦笑する。

コカビエル。

最後の審判やノアの方舟の話が載っている『エノク書』。その6章にその名が刻まれている堕天使の内の一人。

エノク書によれば、人間に天体の兆し、つまり占星術を教えたのがコカビエルだという。

聖書に出てくる堕天使が犯人とは、もうかなり話が大きくなってきている。

ならば、教会側は何故グレモリー眷属とコンタクトを取ったのか?

そのような身内の恥は、内々に処理しそうなものだが。

 

「実は、先日からこの町にエクソシストを秘密裏に送り込んでいたのだが……ことごとく始末されている。恐らく、コカビエルの手の者によるものだろう。」

 

ゼノヴィアのその言葉に、イッセーは驚いた。まさか自分たちの住む町で、そのような惨劇が裏で起こっていようとは。

 

「ちょっと待てよ、これ今日の新聞だけどどこにもこの地域で殺人があったなんて書いてないぞ。」

 

そういうダイスケが持つのは部室に置いてあった今朝の朝刊だ。

一面に『南極で発見されたリドサウルスの幼体、アメリカで行方不明』と書いてるその新聞には、確かにどこも駒王町で殺人が起きたことは載っていなかった。

 

「普通の殺人事件ならな。だが裏の世界の者が関わればどんな証拠も残らない。だから世の人間たちは神の存在を身近に感じることもない。」

 

「裏の世界に関わる表で起きた事件は決して明かされることはない……今回のようにね。」

 

ゼノヴィアとイリナの言葉がこの世界に入ってきたばかりの二人に響く。

ならばやはり、彼女らの求めているのは事件解決のための協力の要請だろうか。そのような事件の被害が一般人に及ぶようなことがあれば、土地を取り仕切るものとしてグレモリー眷属が動かざるを得ないだろう。

だが、彼女たちが求めているのは違っていた。

 

「私たちの依頼、いや、注文とは私たちと堕天使のエクスカリバー争奪の戦いに、この街に巣食う悪魔が一切介入してこないこと。つまり、そちらにはこの件に一切関わるな、と言いに来た。」

 

「あら、随分な言い様ね。牽制のつもり?まさかとは思うけど、教会側は私達が堕天使と組んで聖剣をどうこうしようとしているとでも考えているいるの?」

 

ゼノヴィアの注文に、さしものリアスも不機嫌になる。

わざわざ自分の領土にずかずかと土足で入ってきた敵が、「自分たちにやることに手を出すな。ついでに、他の組織と組んだら許さないよ?」と好き勝手に行っているのだ。

上級悪魔であるリアスに、喧嘩を売っているとしか思えない。

だが、ゼノヴィアはリアスの怒りの我関せず、とばかりに淡々と続ける。

 

「上は悪魔と堕天使を信用してはいない。聖剣を除ければ悪魔だって万々歳だろう?双方に利益があるんだ。手を組んでもおかしくはない。だからこそ先に牽制球を放つ。堕天使と組むものであれば、教会側はこの街にいる悪魔をひとり残らず完全に消滅させる。たとえ魔王の妹が相手でも。私の上司からの伝言さ。」

 

「……私が魔王の妹だと知っているのならば、あなたたちも相当上に通じている者たちのようね。ならハッキリと言わせてもらうわ。私は、悪魔は絶対に堕天使とは組まない。グレモリーの名にかけて誓うわ。そして、魔王の顔に泥を塗るような真似は、絶対にない!!!」

 

両者の強い視線が拮抗する。

だがゼノヴィアはフッと笑い、リアスとの間にできた緊張を解く。

 

「それが聞けてよかった。一応、この町にコカビエルが三本のエクスカリバーを持ち込んだいることを伝えておかねば、何か起きた時に私が、そして教会本部が各方面に恨まれる。三竦みの状況にだって影響を及ぼす。魔王の妹ならば尚更だ。」

 

その言葉で、リアスの表情は少々緩和される。

 

「正教会からの派遣は?」

 

リアスの問いに、ゼノヴィアが答える。

 

「奴らは今回はこの話を保留にした。仮に私とイリナともう一人のエクソシストが奪還に失敗した場合を想定して、最後に残った一本を死守するつもりなのだろう。」

 

「ではたったの三人で?三人だけでコカビエルを相手にするつもりということなの?無茶というより無謀ね。死ぬつもり?」

 

「ええ、そうよ。」

 

「私もイリナと同意見だ。できるだけ死にたくはないがな。」

 

そのイリナとゼノヴィアの言葉に、リアスは呆れ果てて嘆息を漏らす。

 

「―――っ。死ぬ覚悟でいるのいうの?自己犠牲もここまでくると自殺願望ね。」

 

「私たちの信仰をバカにしないで頂戴。ねぇ、ゼノヴィア。」

 

「まぁね。それに、上はエクスカリバーが堕天使に利用されるくらいなら、全て消滅してしまってもいいと決定した。私たちの役目は、最低でも堕天使の手からエクスカリバーを無くす事。そのためなら死んだっていい。それが我々の“殉教”だ。」

 

ダイスケはここまで黙って聞いていたが、正直彼女らの言葉を聴くのにうんざりしてきていた。

リアスの言うとおり、これは自己犠牲や殉教ではなく手の込んだ自殺だ。

相手は強力な堕天使の幹部。それをせいぜい十数年しか生きていない若造が聖剣を振り回して行っても、勝ち目はない。返り討ちにあうのがオチだ。恐らく、教会側も彼女らを捨て駒に送ってきたに違いない。作戦の成功も、あわよくばの域だろう。

そこへ来て、この二人の自己陶酔化した信仰心。

恐らくこの二人は、信仰のために死んで天国に行けるとでも考えているのだろうが、自殺はキリスト教にとっては大罪だ。天国に行ったつもりで地獄に堕ちればいいのに、とダイスケは心密かに思った。

 

「果たして、それは二人だけで可能なのかしら?」

 

「ご心配なく、リアス・グレモリー。ただで死ぬつもりはないさ。」

 

リアスの問いかけに、ゼノヴィアは不敵に笑う。

 

「あら、自信満々ね。秘密兵器でもあるのかしら?」

 

「それはそちらのご想像にお任せする。」

 

そのやり取りの後、しばしの間静寂が室内を支配する。

イリナがゼノヴィアにアイコンタクトを送ると、二人は立ち上がった。

 

「それではそろそろお暇させてもらう。」

 

「あら、お茶は飲んでいかないの?お茶菓子ぐらいは振舞わせてもらうわ。」

 

「いや、結構。」

 

リアスの厚意を受け取らず、二人はこの場を後にしようとする。が、二人の目がある一箇所に惹きつけられる。

 

「……兵藤一誠の家で見かけた時にもしやと思ったのだが……『魔女』アーシア・アルジェントか?」

 

ゼノヴィアの言葉に、アーシアは身を震わせる。イリナもそれに気づいたのか、アーシアをまじまじと見てくる。

 

「ああ、あなたが一時期噂になっていた『元』聖女の『現』魔女さん?悪魔をも癒す力を持っていたらしいわね?追放されて、どこかに流れたとは聞いていたけど、まさか悪魔にまで堕ちていたとは思いもしなかったわ。」

 

「……あ、あの、私は……。」

 

狼狽するアーシア。

 

「大丈夫よ。あなたのことは上には伝えないから安心して。でも、『聖女アーシア』の周囲にいた者が貴方の現状を知ったら相当ショックを受けるでしょうね。」

 

「しかし、転生悪魔か。『聖女』と祭り上げられていた者が、堕ちるところまで堕ちたな。まだ我らの神を信じているのか?」

 

「ゼノヴィア、悪魔になった彼女がまだ信仰を持っているわけがないでしょう?」

 

「いや、その者から信仰の匂い……いや、香りがする。抽象的な言い方だが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも、罪の意識を感じながら信仰心を捨てきれない者がいる。それと同じ匂いがするんだ。」

 

「あら、そうなの?アーシアさんは悪魔に堕ちた今でも、主を本当に信じているのかしら?」

 

「……捨てきれない、だけです。ずっと、それしか知らなかったものですから……。」

 

そのアーシアの震える声を聞いてゼノヴィアは破壊の聖剣を解き放ち、アーシアの眼前に突き出す。

 

「そうか、それならば今ここで私たちに斬られるといい。神の名のもとに断罪してやろう。今ならば主も、罪深いお前に慈悲を与えてくださるだろう。」

 

その時、イッセーの中で形容し難いほどの怒りがこみ上げてくる。アーシアに近づくゼノヴィアの前に、イッセーは立ちはだかろうとする。

だが、そのイッセーの前に立ちものが一人。

 

「……いい加減にしろよ?この糞ビッチ共が。」

 

ダイスケだった。

 

「黙って聞いてりゃ、好き勝手言いやがって。アーシアがどうして魔女なのか言ってみろよ。先攻ぐらいは譲ってやらァ。」

 

「……悪魔は神と敵対する者。それを癒すということは、アーシア・アルジェントの力は主の『愛』の力によるものではない。よって、魔女と断罪するのだ。」

 

そのゼノヴィアの言葉を皮切りに、ダイスケの徹底口撃が始まる。

 

「ハッ!!キリスト教信者が聞いて呆れるな。アーシアの力が「主の『愛』の力によるものではない」?他人を癒す力そのものがアーシアの隣人愛を体現するものだろうが。その力の出処がなんであれ、アーシアが行ってきたことは『隣人愛』よる行動そのものだ。イエス・キリストが全人類の原罪を背負ったようにな。」

 

「悪魔を癒す力のどこが『隣人愛』だって言うのよ。」

 

よせばいいのにイリナも参戦する。

 

「そもそも、お前たちは悪魔の存在を誤解している。悪魔はな、神に仕える天使なんだぞ?いま、この現在でもな。」

 

その言葉に、ゼノヴィアとイリナは呆れる。

 

「悪魔は神の絶対的な敵対者だぞ?」

 

「あなたこそ私たちの信仰を理解していないんじゃあないの?」

 

「忘れたのか?主はこの世界の『創造主』だ。すべての存在が主によって生まれてきている。悪魔もその一つだ。おっと、悪魔は主の創造したものとは違うなんて言うなよ。そんなことを言ったら、主は『世界の創造主』じゃあなくなるぜ?」

 

言おうとしたことが阻まれ、二人は思わず口を閉じる。

 

「元々の悪魔の起源は、罪人を地獄に追い立てる天使だ。その姿を醜悪にしたため、彼らに対する生理的な嫌悪感が生まれるようになったんだ。そうしていくうち、いつの間にか彼らは神と敵対し、人を堕落させる『悪魔』になった。神の権威を高めるためにな。そして、神と悪魔が敵対関係になった最大の原因は、キリスト教が勢力圏を広げ始めたからだ。」

 

リアスたちも、思わずその話に聞き入っている。これまでの長い歴史の中で築き上げられてきた自分たちのルーツを垣間見たような気がしたからだ。

 

「キリスト教徒たちは自分たちの信仰を広め、かつ正当性を得て他の土地に根を下ろす時、その土地の土着信仰を異端とし、祀られていた神々を『悪魔』とした。サタンなんかがいい例だな。もともとはギリシャの豊饒神のサターンだ。そうして、それらを弾劾することによってキリスト教徒たちは自分たちの正当性を打ち上げ、『救われたければ我らの神を信仰しろ』と迫るわけだ。」

 

イッセーも、その話は歴史の本で読んだことがあった。だが、ここまでの話は聞いたことがない。

 

「そして、悪魔の力はより強大になっていく。絶対の創造者である神に近づくことによって、自然とそれを制する神も力を増す。だが、あっさり神が勝ってはその権威は下がる。かといって神に匹敵する存在になってはいけない。その点にキリスト教の脆弱な点がある。ゾロアスター教のような完全な二元論なら、こんなことは起きないんだろうがな。」

 

そのことを踏まえた上で、とダイスケは続ける。

 

「アーシアが行なってきた癒しの行為は、どんな者も平等に行われていた。お前達も知っている通り、悪魔にもその力は振るわれた。文字どおりの『隣人愛』の体現だ。そのことが一体どう信仰に反する?それに対してお前たちはどうだ。悪魔だがら、魔女だから断罪する。馬鹿の一つ覚えみたいにそれしか言わない。やってることはヤクザ同士の抗争、いや、チンピラの喧嘩だ。お前らと比べれば、アーシアの方がよっぽどより良い信仰者の姿だ。」

 

自分たちが知っている以上のことを言われ、なにも反論できなくなってしまったゼノヴィアとイリナ。だが、ダイスケの口撃は止まらない。

 

「そもそも、お前らは俺たちに手を出すなと言いに来たんだろ?それなのにアーシアを殺そうとする?自己矛盾も甚だしいな。自分に都合のいいことだけ正当化しようなんて、信仰者以前に人として終わってるわ。いい加減、死ねよお前ら。ていうか、今すぐ死ね。」

 

あまりにも散々な言われように、思わず二人は目頭に涙が溜まってくる。

先程まで彼女らに怒りを感じていたイッセーまで、二人に同情してしまっている。

これと同じ状態になったのが、以前に起きた『女子グループ逆説教事件』だ。まるであの時の顛末を見ているようだ、とイッセーは思ってしまう。

アーシアもダイスケを止めようとするが、初めて見るダイスケの一面に戸惑い、先程以上に狼狽している。

 

「……私たちの信仰心を……よくも!!」

 

先程まで冷静だったはずのゼノヴィアは怒りを顕にし、イリナも顔を真っ赤に染め上げて身を震わせている。

 

「何が信仰心だ。自己陶酔と狂信の塊が。言っとくがな、お前らのやろうとしていることは信仰のための自己犠牲でも、殉教でもない。自棄っぱちの自殺だ。あ、そういやキリスト教じゃあ自殺は大罪だったか。お前ら揃ってゲヘナでもハデスでもどっちでもいいから地獄に堕ちればいいのに。」

 

そのダイスケの言葉がトリガーになったのか、とうとう二人の怒りが爆発した。

 

「悪魔側との衝突は避けるようにとの通達だったが……貴様だけは絶対に許さん!!!!」

 

「神に代わって、この異端者に神罰を与えてあげるわ!!アーメン!!」

 

とうとう戦闘態勢をとる二人。

 

「おーおー、口喧嘩で負けたと思ったらリアルファイトですか。それが敬虔な信徒のやる事なんだね。初めて知ったわ。」

 

ここまで追い込んでおいてまだ刺激するダイスケ。

それをリアスが制しようとする。

 

「ダイスケ、いい加減に―――」

 

ダイスケを止めようと動くリアスだったが、そこに木場が介入してきた。

 

「ちょうどいい。僕も相手になろう。」

 

これまで見せたことのないような特大の殺気を放ち、木場は魔剣を携える。

 

「誰だ?君は。」

 

「君たちの先輩だよ。もっとも、僕は失敗作だそうだけどね。」

 

 

 

 

 

 

「なんでこうなっちゃうんですか。」

 

思わずイッセーはリアスに問う。

さっきまで自分たちは、部室内で教会のエクソシスト二人との会談をしていたはずだった。なのに、何をどうしたら自分の親友と仲間がその二人を相手に喧嘩をしないといけないのだろう。

 

「それはダイスケと祐斗に言いなさい……。」

 

今、彼らは運動場の一角に結界を張り、そこをバトルフィールドとしている。

その中央には聖剣を構えるゼノヴィアとイリナ、そして魔剣を携える木場と神器を展開したダイスケがいる。

先刻のダイスケによる言葉の絨毯爆撃によって自尊心をずたずたにされた二人が、ダイスケに喧嘩を売った。それにエクスカリバーを破壊したい木場が乗っかった。

それをリアスが「教会の人間と悪魔が手合いする」という条件でガス抜きをしようとしたのである。

 

「ダイスケ君、邪魔はしないでね。」

 

「人の喧嘩に乗っかっといて、なにが邪魔するなだよ。なんだったら、先にテメェからヤってやろうか?」

 

「イリナ、例え片方が人間でも、奴だけは徹底的にやるぞ。」

 

「ええ、ゼノヴィア。あの背徳者に信仰の力を見せ付けてやりましょう。」

 

お互いに殺気ムンムン。

しかも片方はタッグだというのに、仲は険悪。しかも仲間討ちしかねない雰囲気だ。

 

「いいこと?これは一応ただの“手合い”よ。相手を殺すのはダメ。それも、悪魔も協会も関係ない私的な決闘。何度も言うけど、殺し合いは絶対にダメよ。わかっているわね、四人とも。」

 

リアスの言葉に、四人は答えない。

 

「……暗黙は了承と受け取るわよ。……はじめ!!」

 

その言葉を切っ掛けに、四人は闘いをはじめる。

木場はゼノヴィアに、ダイスケはイリナへ向かう……はずだった。

 

「取り敢えず、お前は寝てろ。」

 

「―――なッ!!」

 

ダイスケはいきなり、木場の顎に強力な一撃を与える。その衝撃で脳震盪を起こし、木場は一撃で気絶する。

 

「ダイスケ!!何やってるんだよ!?」

 

イッセーが驚いたのも無理はない。タッグを組んでいるはずの仲間をノックダウンさせたのだから。

 

「これは元々俺の喧嘩だ。そこに木場が割り込んできただけだろ。」

 

唐突すぎる展開に、エクソシストの二人も足を止める。

 

「それに、木場の神器で生み出す魔剣はオリジナルの聖剣や魔剣には敵わない。コイツが自分で言ったことだ。勝ち目のない戦いに、何の策もなく立ち向かうのはバカのやることだ。」

 

そう言ってダイスケは、木場の体を小猫に向けて放り投げ、小猫はそれを見事にキャッチする。

 

「……それだけですか?」

 

木場をキャッチした小猫は、ダイスケに問う。

 

「言わねぇ。ああ、そうだ。小猫、後で俺が「悪かった」って言ってたって伝えておいてくれ。」

 

「嫌です。そういうのは自分で言ってください。」

 

その返事を聞くと、再びダイスケはイリナとゼノヴィアに向かう。

 

「いいのか?二対一になったぞ?」

 

「そこの伸びている彼に手伝ってもらったほうがいいんじゃない?」

 

「心配ねぇよ。なんでか知らないけど、「お前らには絶対に負けない」って勘でわかるんだ。」

 

「だったらその勘―――」

 

「―――間違ってるって教えてあげるわ!!」

 

同時に斬りかかるゼノヴィアとイリナ。

その二つの剣戟を両手のガントレットで受けるダイスケ。

 

「これで両手が塞がれたな。イリナ!!」

 

「もっちろん!!」

 

そう言うとイリナは、擬態の聖剣を紐に変えてダイスケを捕縛しようとする。

だがそれよりも早くダイスケが動いた。

 

「ふんッ!!」

 

掴んだ聖剣を支えにして背中から崩れ落ちるように二人の後ろへ滑り込んだのだ。そのせいでゼノヴィアとイリナは前方へバランスを崩してしまう。

そこへすかさずダイスケは体勢を立て直し、二人の腹を目掛けて順に蹴りを食らわせる。

 

「がッ!?」

 

「きゃあ!?」

 

後方へ飛ばされる二人だが、そこは流石聖剣を持つことを許された剣士、すぐに体勢を立て直す。

だが―――

 

「刃物にはやっぱ飛び道具っしょ。」

 

「!?」

 

ダイスケはゼノヴィアに向けて光弾を放つ。

音を遥か超え、ほぼ光速に近い速度で飛んでくるそれを、ゼノヴィアは野性的勘のみでエクスカリバーの刃の腹で防御する。だが予想以上に威力があったために完全に競り負けてしまい、そのまま後方へと飛ばされて運動場の一角に植えられた木に激突する。

 

「カハッ……!」

 

「ゼノヴィア!?……こいつッ!」

 

すかさずイリナは擬態の聖剣《エクスカリバー・ミミック》を鎖鎌に変化させ、分銅をダイスケへと投げつけてその腕に巻きつけた。

 

「捕まえたわよ、この異端者!」

 

致命傷を与えるべく、イリナはその手に持った鎌刃を光らせ、鎖をたぐり寄せる。それにダイスケは抵抗するものだとその場にいる誰もが思った。

だが、逆にダイスケは鎖を己の体に巻きつけて自分からイリナに近づいていく。

 

「こ、コイツ!で、これでどう!?」

 

慌ててイリナは鎖鎌を連結刃に変化させる。

それと同時にダイスケの体に巻きついていた鎖は刃がついた鋼線と化し、そのまま肉体を締め付け、尚且つ数多くの切り傷を生んでいく。それでもその歩みを止めることはできない。

ついにイリナに対抗策を立てさせることを許さないまま、連結刃を掴んで背負い投げの要領で投げ飛ばした。

 

「うぅ……!?」

 

背中から地面に叩きつけられたイリナは、後頭部に受けた衝撃の所為で立てずにいる。

ダイスケはそれを確認すると、自身に絡みついた連結刃を振りほどいて倒れるイリナの喉元に手甲の鉤爪を突き立てようとした。

 

「もうお止めなさい!勝負はついたわ。」

 

しかし、リアスの言葉がグラウンドに響き、ダイスケが止めを刺そうとする手を止める。

 

「……もうちょっとやらせてくれてもいいでしょうに。」

 

「これはお互いの力量を知るためのものよ。このままいったらあなた、事故に見せかけて止めを刺しちゃうでしょう?」

 

その指摘に「チッ」と舌打ちをするダイスケ。図星だったようだ。そのままイリナから手を離し、開放する。

 

「なるほど、大口を叩きだけの事はあるということか……。」

 

「人間だからって手を抜いたのが間違いだったわね……。」

 

聖剣を杖がわりにその身を支えるゼノヴィア。

イリナも悔しげに身支度を整え、二人はこの場を立ち去る気が満々だ。

 

「ま……まて!」

 

そこへ意識を取り戻した木場が、二人を引き止めようとする。

 

「『先輩』、次はもう少し冷静になって立ち向かってくるといい。彼に止められたのは正解だった。頭に血が上った状態で勝てるほど、エクスカリバーは弱くはない。リアス・グレモリー、先程の話、よろしく頼むよ。」

 

朱乃は既に結界を解いている。もう戦いを続けるわけにはいかない。

木場は憎々しげにゼノヴィアを睨む。それを無視し、ゼノヴィアはイッセーに視線を向ける。

 

「兵藤一誠だったか、赤龍帝の宿主。君に一つ言っておこう。『白い龍』は既に目覚めている。気をつけておけ。」

 

その言葉に衝撃を受けるイッセー。

だがその姿を歯牙にもかけず、二人はこの場を立ち去った。その姿が完全に見えなくなっても、残されたオカルト研究部のメンバーは黙っているしかない。

その内、木場が立ち上がってダイスケの胸ぐらを掴んだ。

 

「おい、木場!やめろ!!」

 

「祐斗、放しなさい!!」

 

イッセーとリアスの言葉も、木場の耳には入っていない。

 

「なんで、僕の邪魔をしたんだ……!?君も聞いているんだろう。僕がエクスカリバーを憎む訳を!!」

 

普段の木場からは想像できない激昂した姿。

それを見て、イッセーは止めようとするその足を思わず止めてしまう。だが、ダイスケの顔はそんなことどこ吹く風だ。

 

「聞いてるよ。そんで、お前の気持ちもわかる。」

 

「だったら、なんで!?」

 

「……お前の同志は、お前を全力で助けた。それはなんでだ?お前に純粋に生きていて欲しかったからじゃないのか?なぁ、今お前が奴らにやってやらなきゃならないことは、本当に復讐か?」

 

「そんなこと、あの場にいなかった君に分かることじゃない!!」

 

「そうだな。お前の言うとおりだ。それに復讐そのものも別に悪いことじゃないさ。それでお前の中で納得と決着が付くんならな。だけど、今のお前で勝てる相手か?さっきだってあいつら、人間相手だから本気を出しちゃいなかった。やるんだったらせめて冷静になってからだ。」

 

その言葉を聞くと、木場は悔しげにダイスケの胸倉から手を離す。

そして、その場から立ち去ろうとする。

 

「待ちなさい。どこへ行こうというの、祐斗。」

 

木場はその言葉に一度立ち止まるが、またすぐに歩き出す。

 

「待ちなさい、祐斗!私の元を離れるなんて許さないわ!あなたは私の『騎士』なのよ。はぐれになってもらっては困るわ。……留まりなさい!!」

 

「……僕は同志たちのお陰であそこから逃げ遂せた。だからこそ、彼らの恨みを僕の魔剣に込めなければならないんだ……。」

 

それだけ言うと、木場はその場から姿を消した。

 

「祐斗、どうして……。」

 

そのリアスの顔を、イッセーは見てはいられなかった。そして同時に、彼の胸の中にある決意が芽生えたのだった。

ただ、誰もが木場に気を取られていた所為であることを見逃していた。

エクスカリバーでズタズタに切り裂かれていたダイスケの傷が、所々破れた制服の下で既に全て消えていたのである。

 

 

 

 

 

 

「えっと、次なんだっけ。」

 

「薬局に行って洗剤とキッチンペーパーです。今日はポイント五倍デーですから、これを逃す手はありません。」

 

「そういや、ウチのシャンプーとシェイビングクリームも切れかけてたな……ついでに俺も買おう。」

 

次の休日、ダイスケは榛名を伴って買い物に出ていた。

と言っても、恋人同士がするようなお互いに似合う服を選んだり、相手に贈るアクセサリーを見たりといったものではなく日用品の買い出しである。

いつも食事の面倒を見てもらっては悪いということで、時折ダイスケが自ら荷物持ちになって外出しているのだ。

街中は休日ということもあって多くの人でごった返しており、その様相は一見平和である。だが、この街のどこかで聖剣をめぐる陰謀が張り巡らされており、しかも死人まで出ている。その事実を知らない分には平気だが、知っているのがダイスケである。

いまは教会と堕天使の抗争で収まっているが、それが万が一一般人、それも身近な人が巻き込まれたら……それを思うと恐ろしくてならない。

もしも隣にいる榛名が巻き込まれたら―――『裏の世界に関わる表で起きた事件は決して明かされることはない』というこの世の暗黙のルールが榛名に適用されたとしたら、彼女の死は妹にも、両親にも知らされることなくただの失踪等として社会に処理されてしまうのだろうか。

もしそれが本当に起きたら―――自分は果たして正気を保っていられるのだろうか。そのようなことを考えているだけで胸は締め付けられ、表情も歪む。

 

「どうしました?あの……ひょっとして疲れてるところを無理させちゃってるんじゃあ……。」

 

「え?いやいや、ちょっとした考え事。でも、確かに疲れてきたから休憩するか?近くのファミレスとかで。」

 

「もうそろそろ三時ですから、おやつの時間にも丁度いいですね。」

 

そう言って二人は近所のファミリーレストランに足を向けるが、その途中で榛名は妙なものを見つける。

 

「あれ……なんでしょう?」

 

「あれって?」

 

「ほら、あの道の真ん中に立ってる白いローブを羽織った二人組です。」

 

「んん?」

 

確かに榛名の言うとおり、路上にどこか見覚えのあるローブ姿の二人組が見える。その二人の姿は現代日本の中では非常に浮いており、道行く人は奇異の視線を不審人物二名に向けている。

しかもこの二人、何やら口論をしておりその声にもダイスケは聞き覚えがあった。さらに止めとしてもっと見覚えがある三人組が反対方向からやって来る。

 

「あ。」

 

「あ。」

 

「あ。」

 

三者三様、何とも間抜けな声を上げて知己と出会ったことを示す声を上げる。

一方は教会からやってきた件のエージェント二名。そしてもう一方はイッセー、小猫、そして何故かいるシトリー眷属の匙の三名。

このメンツが面を合わせたということは、間違いなく裏の世界の面倒事が起きる。

 

「悪い、榛名。先に帰っててくれ。」

 

―――折角のオフが潰れてしまった。ダイスケの顔にそう書いてあったが、榛名はそれに気づかなかった。

 




一応言っときますけどダイスケはデートしてたわけではないのであしからず。
あと鈍感主人公ではありません。いろいろ人としてブレているだけです。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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