ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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今回はいままでにないほどの難産でした。
そのせいでいつもより長くなってしまったのですが、二つの対比を描写したかったので分割はしませんでした。ご了承ください。



VS20  光と黒のOIRGIN

「私は幼い頃から聖剣という存在に憧れていてね。聖剣を持つ英雄の英雄譚に幼少の頃から心躍らせていたが、自分に適性がないと知ったときは絶望したよ。だが、適性がない自分のような者でも聖剣を使えるようにならないか、そう思ったのが研究を始めたきっかけだったのだよ。かつての憧れをこの手に掴むために。」

 

木場祐斗にとって同志を皆殺しにした元兇であるバルパーが語りだす。本当ならば今すぐにでも斬りつけてその口を閉じてやりたいところであったが、今の融合しかかっているエクスカリバーの不安定かつ強力な力がバルパーの管理を超え暴発してしまう可能性があるために迂闊に手を出せないでいた。それを向こうも承知しているのだろう、とめどない殺気を放つ相手に滔々と、そして自己心酔するかのようにバルパーは語り続ける。

 

「研究を進めていくうちに私は聖剣を扱うには先天的に得たとある因子が必要だとわかった。だが、適性があるものとして集めた子供らは扱えるだけの数値がある因子を持ってはいなかった。そしてあるとき私は思いついた。『適正値が低い適性者の因子を抽出し、一つにすれば人工的に聖剣の適合者を作れるのではないか』とね。」

 

そのうちの一人が祐斗であり、そして死んでいった仲間たち一人ひとりだったというわけだ。まるで油を取るために磨り潰される胡麻の一粒のように自分たちは扱われていた。そのことを知った木場の胸中は計り知れないものがあるだろうが、バルパーはお構いなしだ。

 

「その自分の妄想のために……僕や同胞たちを殺したのか!?適性がなかったからではなく!?」

 

「その口ぶりからすると……そうか、あの実験の生き残りか。このようなところであいまみえるとは……これもまた聖剣が呼び込んだ数奇な運命ということか。だが、一つ言っておく。これは妄想ではなく理論だ。夢見がちな自分に酔った哀れな者の妄言などでは決してない。そしてこれが―――」

 

言いながらバルパーは懐から光り輝く球体のようなものを取り出した。それもただの光ではなく、纏っているのは聖なるオーラの光だ。それは実験に関わっていた木場も知らないものであったが、ゼノヴィアだけが心当たりがあるようだった。

 

「まさかと思っていたがそれは……!」

 

「ほう、流石“破壊の聖剣《エクスカリバー・デストラクション》”の使い手だけあって見識が広い。そう、これはお前たち聖剣使いが祝福を受けるときに与えられるものと同様のものだ。」

 

「だが、私たちだってそれが多くの犠牲の上に成り立つ代物だなんて聞いてはいない!!」

 

「それもそうだ、聖剣使いの少女よ。お前が目にしたのは私の研究から得たデータをベースに被験者が死なぬようにされた改良品だ。よりにもよって、ミカエルと教会の奴らは私は異端者として追放しておきながら研究成果だけはしっかりと享受したのだ。まあ、被験者を殺さない分私よりは人道的なのだろうがな。くくくく……。」

 

自分を否定したもの全てを嘲るようにバルパーは嗤う。

そして自分が否定したものによって自分たち聖剣使いが成り立っているいることを知ってしまったゼノヴィアは悔しげな表情を浮かべた。

 

「ああ、そうだ。ついでに言っておくがの因子はそこの魔剣使いが死んだ時のものだ。三つほどフリードに使ったがね。これは残りだ。」

 

「ウヒャヒャヒャヒャ!ほかにこいつを与えられた奴らもいたんだけどさぁ、俺以外みんな体が耐え切れなくておっ死んじゃった!!で、生き残ったご褒美にこのエクスカリバーも使わせてくれるってさ!!うちのボスってばマジで太っ腹!!!」

 

まるで最高の玩具をこれから買い与えられる子供のようにフリードは歓喜する。

 

「ああ、いいぞ。フリード、エクスカリバーの統合が済んだらすぐにでもそれで遊んでくるといい。戦争前の肩慣らしだ。」

 

「そしてその統合の瞬間ももうすぐだ。そうすればまずはこの街を破壊しよう。因子の結晶も量産体制にすぐにでも入れる。あとは世界中の聖剣をかき集め、最強の聖剣使いの軍団を作り上げる。そうなればいずれ完全体になったエクスカリバーを用いて私を断罪したミカエルとヴァチカン相手にわたしの研究成果を見せつけてくれよう。」

 

共に天使を憎み、共に戦争を欲し、そして己の力を見せつける。立場は違えどこの三者は同類だ。そして最悪の同盟関係にあるとも言える者たちだ。

バルパーなどはこれから起こるであろう凄惨な未来に思いを馳せて恍惚の笑まで浮かべている。だが、木場はその反対に憎悪と怒りでその端正な顔立ちを歪ませる。

 

「もうこれに用は無い。材料の同胞のよしみでくれてやる。手慰みにでも使うがいい。」

 

そう言ってバルパーは木場の足元へ手にした結晶を放り投げる。バルパーにとってはもはや興味が失せて無用の長物だったのだろう。だが、木場は転がり込んできたそれを慈しむように両手で拾い上げる。

 

「―――みんな……。」

 

その木場の表情に、今は怒りの色は見えない。むしろ、いま手にした結晶に残る、かつての同胞のぬくもりを一つたりとも感じ逃さぬようにと悲哀に満ちたものとなっている。

 

「僕は、僕は……ッ!」

 

敵を目の前にしても一太刀も浴びせることのできない自分への怒り、そして結晶の中に眠る多くの命のかけらに対する憶いが相まって、木場のその瞳から涙が一筋流れ出ていく―――まさにその時だった。

結晶から光が放たれ、徐々にそのカタチを崩していく。溢れ出た光は少しずつ形を得ていき、まるで人影のようになった。その人影は因子に残っていた元の持ち主たちの魂のかけらなのであろうか。そう思わせるように無数の小さな人影たちは木場の周囲を取り囲んでいく。

それは実験のはてに殺されていったであろう少年少女たちの姿であろうことは、その姿を知らないダイスケやイッセーにも理解できた。

 

「この場に存在する様々な力が閉じ込められていた思念を呼び起こしたのか。それとも木場くんの思いが通じて彼らが解放されたのでしょうか……。」

 

感慨に耽りながらも、朱乃は冷静に分析する。

きっとそれは両方正しいのだろう。だが、きっと後者の力が大きかったのだとダイスケは信じたかった。

自分を取り囲む幻影たちに、木場は懐かしくも哀しげな表情を浮かべる。そして懐かしい姿を目にしたことで、ずっと心の奥に引っ掛かっていた思いが溢れ出す。

 

「僕は……ずっと、ずっと思っていたんだ。僕だけが生き残って本当に良かったのかって。みんなにだって夢はあった。みんなにだって生きたい思いがあった。それなのに、僕だけが生を手に入れていいのかって……。」

 

すると、木場のすぐ目の前にいた少年の幻影が微笑みながら語りかける。声には聞こえない。だが、何を言っているのかは心で感じた。

 

イ・イ・ン・ダ・ヨ キ・ミ・ダ・ケ・デ・モ イ・キ・テ・イ・テ

 

イキテ―――

 

「―――!!」

 

一筋だった涙が、大きな流れとなる。

ただひとり生き延びてからずっと抱いていた不安と疑問、それらすべてが一言で洗い流されていく。

すると少年少女たちが同じようなリズムで口を動かし始める。はじめは動作しか見えなかったが、徐々に胸の奥底から響く音に変わっていく。

 

「……聖歌。」

 

アーシアの呟きの通りだった。

かつての長く苦しかった実験体としての日々。それを乗り越えていくためにみんなで心の支えにし、歌った聖歌。

もはや涙で口もまともに動かなかったが、木場も彼らとともに歌いだす。もはやその顔に悲しみの色はなかった。声にならない声が耳では聞こえない、それでも心に響いてくる歌声に混ざり、一つになる。

 

『僕らは一人ではダメだった―――』

 

『私たち一人ひとりでは聖剣を扱える因子は足りなかった。でも―――』

 

『みんながひとつになれば、きっとだいじょうぶ―――』

 

『憎まないで、受け入れて―――』

 

『怖くなんてない―――』

 

『たとえ神がいなくても―――』

 

『たとえ神が見ていなくても―――』

 

『僕たちの心はいつだって―――』

 

「―――一つなんだ。」

 

幻影たちの魂は天に昇り、ひとつの光の大きな柱となって木場へ降りてくる。神々しくも優しい、そして悪魔ですら優しく包み込む光が木場を包み込んだ。

その光景は、意味をすべて理解できていないイッセーの心をも強く動かし、自然に涙を流させていた。

 

『相棒よ。』

 

「な、なんだよ!こんな時に!!」

 

折角いい雰囲気になっていたところをドライグの野太い声が邪魔をする。ムードをぶち壊されたイッセーは怒り心頭だ。

 

『あの騎士は“至った”ぞ。』

 

「だから、なにが!?」

 

『神器の力の糧は所有者の想いだ。だからこそ当人が成長すれば神器も強くなる。だが、それとは別の領域があるのだ。その想いが、そして願いが変えようがないこの世界の『流れ』に逆らうほどの強さを得たときに神器の力は転じ、そして至る。それこそが―――』

 

イッセーの中のドライグは不敵に嗤う。

 

『―――真の“禁手《バランス・ブレイカー》”だ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんとうは今あるもので十分だった。

どのような形でも生きる。それこそが巡りあった主の願いであり、自分の本当の願いでもあり、命を賭して救ってくれた同胞たちの願いだった。

 

「みんなが復讐を望んでいないのは解っていた。エクスカリバーへの憎悪だって忘れても良かった。でも―――」

 

木場は立ち上がる。

涙をぬぐい去り、先程まで潤んでいた目には確固たる意志の炎が宿る。

 

「行け、木場ァァァ!!お前はリアス・グレモリー眷属の騎士で、俺たちの《剣》なんだ!あいつらの想いと魂、無駄にすんなァァァァアアアアア!!!」

 

「やりなさい、祐斗!自分の過去と決着をつけるのよ!!貴方は私の大切な騎士。エクスカリバーになんか絶対に負けないわ!!」

 

「祐斗くん、信じていますわよ!」

 

「ファイトです!」

 

「……先輩、私たちだってついてるんですからね。」

 

「おめぇ、ここで負けたら学園中のお前のファンに「あいつ、自分の問題にも決着つけられないヘタレ」って言いふらすぞ!!負けたら明日からのお前の居場所はオカ研のみだと覚悟しろ!!!」

 

木場に仲間たちの声援が届く。最後辺りかなり辛辣なプレッシャーを与えられた気もしなくはないが、その全てが彼の背中を押した。

 

「うひゃひゃひゃ!!!なーに泣いちゃってるの!?クッソうぜぇ聖歌なんか聴かせてくれちゃって!!!俺、あれマジで聴いてるだけでジンマシン出てくるんっすよ。ここでてめぇを切り刻んで心の燻蒸消毒させてもらうぜ!!この四本統合の無敵のエクスカリバーちゃんで!!!」

 

フリードが既に統合を終えたエクスカリバーを陣から引き抜く。もちろん扱えるのは木場の同志たちの因子が所以だ。これ以上彼らのためにも悪用させるわけには行かない。

そのためにこそ―――

 

「―――僕は剣になる。」

 

木場の前に、神々しくも禍々しい二つの力が合わさったひとつの力場が生まれる。そこへ両の手で剣を握るように手を突き出すと、ひと振りの剣が生まれた。

ほかの誰でもない、木場だからこそ出来た芸当。元より持ち合わせていた才能と、仲間たちから譲り受けた因子と命があったからこそ魔と聖の力が溶け合っていた。

 

「“双覇の聖魔剣《ソード・オブ・ビトレイヤー》”。僕とみんなの力の結晶、刀傷としてその身に刻め!!!」

 

木場が目に止まらぬスピードでかけだすと、まずは一太刀目を入れる。フリードも防御できた分流石というべきなのだろうが、それは木場も想定していた事態である。木場もその事実に感心するが、それだけでは済まさず手にした聖魔剣の魔のオーラでエクスカリバーの聖なるオーラを徐々に侵食させていった。

 

「ッ!本家本元の聖剣に影響を与えられるのかよ!?」

 

「それが真のエクスカリバーだったらできなかったさ。でも、その中途半端なものじゃあ僕と同志たちには勝てない!!」

 

「チィ!」

 

フリードは舌打ちをすると木場を押し出してその反動で後方へ一旦下がる。

 

「伸びて切り刻めェェェェェ!!!」

 

エクスカリバーは刀身を分裂させて蛇のようにくねらせ、無軌道に且つ神速をもって木場に襲い掛かる。それぞれ“擬態の聖剣《エクスカリバー・ミミック》”と“天閃の聖剣《エクスカリバー・ラピッドリィ》”の特性である。

だが、その斬撃の全てを木場は防ぎ、いなし、躱していく。

フリードは常に全開の殺気を迸らせながら敵に向かっていくが、全てに対して吹っ切れて冷静になった木場にはあまりにもわかりやすく単調な攻撃だった。

 

「なんでだよ!?なんで通じねぇぇぇぇぇぇ!?無敵の聖剣様だろうがよ!!!……ならコイツも追加だぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

木場を襲っていた無数の刀身が掻き消える。“透明の聖剣《エクスカリバー・トランスペアレンシー》”の能力である。確かにこれでは“普通”は避けきれないだろう。

だが、やっていることは先ほどと同じ。いくら見えない攻撃といえども殺気を隠せていなければ姿が見えているのと同義である。

 

「―――ッ!?」

 

四振のエクスカリバーすべての攻撃が見切られて驚愕するフーリドは、ショックのあまり戦いの最中であるにもかかわらず足を止めてしまう。

 

「よぅし、そのまま足を止めていろよ。」

 

横合いからゼノヴィアが乱入してくる。左手にエクスカリバーを逆手でもって右手を宙へ挙げた

 

「このまま君に出番を取られては教会の剣士の名折れ、加勢させてもらうぞ―――ペテロ、パシレイオス、ディオニュシウス、聖母マリアよ。使い手たる我に応じよ!」

 

突如としてゼノヴィアの頭上の空間が歪む。そこへ宙へ掲げられていた右手を突っ込むと、その空間の歪みからゼノヴィアはひと振りの大剣を引きずり出した。

 

「この刃にやどりし四柱の聖人の名において、我は開放する……デュランダル!!!」

 

デュランダルとはフランスの叙事詩『ローランの歌』に登場する英雄、ローランが持つ聖剣。その名の意味は「不滅の刃」であるという使用者であるローランも「切れ味の鋭さデュランダルに如くもの無し」と語る、まさに最強クラスの聖剣である。

その巨大な頭身には悪魔は近づいただけで浄化されそうなほどの強力な聖なるオーラがまとわれている。これはこの剣の黄金の柄の中には、聖ペテロの歯、聖バシリウスの血、パリの守護聖人である聖ディオニュシウスの毛髪、聖母マリアの衣服の一部と多くの聖遺物が納められているからである。

そんな聖遺物の塊のような聖剣であれば、嫌でも最強の称号が与えられるという代物が何故エクスカリバーの使い手であるゼノヴィアが持っているのか。。

 

「馬鹿な、デュランダルだと!?」

 

誰よりも驚いていたのは聖剣研究のエキスパートであるバルパーだ。

 

「ありえない、今現在でもデュランダルを扱えるのはただ一人と聞く。それに私の研究でもデュランダルを扱う領域にまで入っていないのだぞ!?」

 

「残念だったね。私は元々現在のデュランダルの所持者だ。エクスカリバーの使い手も兼任していたに過ぎない。そして私は数少ない天然物の聖剣使い。貴様の因子結晶がなくとも、私は元から聖剣に祝福されているんだよ!!」

 

自分の想像を超えた存在を前に、バルパーは絶句する。だがこれは致し方ないだろう。自分が誇った研究以上の存在を目にすれば、誰であれこれまで抱いていた自身の歩みへの誇りもたやすく崩れ去るというもの。

 

「さぁて、コイツは使い手の言うこともまともに聴かないじゃじゃ馬までね。普段は異空間に収納していて使うチャンスも滅多にない。仮初とはいえエクスカリバーの使い手であるフリード・セルゼンよ、簡単に死んでくれるなよ!!!」

 

斬ッ!!!

 

言うが早いか、圧倒的な破壊のオーラを纏った斬撃がフリードを襲う。いつもの軽口を見せる間も無く、一瞬にして枝分かれしていた刀身が粉々になり本体のみが現れる。

 

「……所詮は折れた刃か。木場祐斗、もう私が出る幕ではないらしい。幕引きを頼む。」

 

虚しげなゼノヴィアの嘆息を背に受けて、木場は一気にエクスカリバーへと詰め寄る。

その速さに、茫然自失のフリードは咄嗟に防御の構えを取るものの時すでに遅し。一閃の下に、エクスカリバーもろとも切り裂かれた。

 

パキィィィィン……

 

儚い金属の破断音が木場の胸中へ染み渡る。束の間の復活を見たエクスカリバーも、遂に再び元の破片の姿へと引き戻されていった。

そして同時に、木場の人としての死から続いてきた因縁も、ついに断たれたのである。

 

「―――みんな、見ていてくれたかい?僕らは、エクスカリバーを超えたよ。」

 

聖魔剣を握り、木場は天を仰ぐ。人生における最大の目標を果たしたことでこれ以上ない充実感に満たされるものと考えていたが、実際にその胸に去来するものは言いようのない喪失感であった。悪魔としての永い生で完遂しようとしていた目的の果てに自分は何を目標に生きていけばいいのか。

 

「ば、馬鹿な……有り得ない!聖なる力と魔なる力はプラスとマイナス、水と油以上に混ざり合うことないものなのだぞ!!それが、それがなぜ……!?」

 

いや、やるべきことはまだあった。

自らの、そして同胞たちの人生を狂わせた元兇である目の前の男。この男を生かしたままでは間違いなく自分と同じ境遇になるものがまた現れてしまう。

 

「バルパー・ガリレイ。お前の野望と因果、僕が断ち切る!覚悟しろ!」

 

聖魔剣を正眼に構え、仇敵を討つ覚悟を固める木場。だが、バルパーは思考を巡らすのに必死で木場が自らを討たんと歩み寄ってくるのに気付いていないようだった。

 

「そうか!それぞれのバランスが末に崩れているのだとしたら説明はつく!つまり、魔王だけでなく神も既に―――」

 

ズドムッ

 

何かの結論に達したらしいバルパーの胸を光の槍が貫く。刺さった角度から見るに、槍を放ったのはどうやらコカビエルらしい。槍を突き立てられたバルパーは口と傷口から大量の血を流し、グラウンドに突っ伏す。木場は急いで駆け寄って脈を見るが、既にバルパーは絶命していた。

 

「バルパー……お前は実に優秀だったよ。その結論に達したのもお前が真に優秀だったからこそだったのだろうが、お前自身はもう必要ないのだ。俺は最初から一人で十分なのだよ。」

 

学舎の時計台に腰掛けるコカビエルが嘲笑う。

 

「……もうお前に手は残っていないぞ、コカビエル。」

 

「ああ、そうだな。だがそれがどうした?俺は最初から一人でも良かった。バルパーと組んだのは兵隊を作る手段が欲しかっただけだ。だがそれもあまり期待は出来そうにない。それでも―――」

 

ズンッッッッ!

 

コカビエルの全身から放たれる強大な殺気。本人はその場からひとつも動いていないというのに、その場にいる全員がその殺気に圧倒され、膝をついてしまう。

 

「どうだ?これが俺一人とお前達との“戦力差”だ。言っておくが今のは本気の十分の一も出してはいないのだぞ?それで戦えるのか?特にデュランダルの使い手よ。お前の先代とは一度やりあったことがあるが、本気の殺気を受けても平気だったのだ。せっかくのデュランダルだというのにその調子でいいのか?」

 

「クッ―――!」

 

ゼノヴィアが悔しげな表情になる。事実、先ほど放たれた殺気で充分に闘志を殺がれてしまっているのだ。それでもゼノヴィアはデュランダルを構える。

 

「例えそうだとしても、神の御名においてお前の勝手を許すわけには行かん!」

 

「……闘志を削がれてもなお俺に立ち向かうか。そこのグレモリーの小娘もそうだが、お前達はよくやるよ。信じる者は共にとうに亡いというのにな。」

 

一瞬、その場の空気が凍りついた。

リアスたちが信じるものである真の魔王が先の大戦で喪したことは全員が承知の上だ。だからこそ魔王という肩書きは選ばれし統治者としての称号となり、その内の一つをリアスの兄であるサーゼクスが継いだ事も周知の事実だ。

だが、ゼノヴィアと悪魔であるが経験なクリスチャンであるアーシアが信じるのはキリスト教、ひいてはアブラハムの宗教における全能にして唯一の存在である“神”だ。コカビエルの言うとおりであれば、その唯一神すらこの世にいないということになる。

 

「ああ、そうか、そうだったな!!お前達が知らないのも無理はないか!ならちょうどいい、教えてやろう。先の大戦で身罷ったのは四大魔王だけではない。神も死んだのさ。」

 

衝撃が走る。

それもそうだ。この場にいるすべての者は何らかの形でその神の影響を受けている。それどころかその存在を信じ、生きる糧にしている者もいるのだ。誰もがコカビエルの言葉を信じることはできなかった。

 

「まぁこの事実が人間の間で広まれば世界中は大恐慌だ。人間は何かを信じなければ生きてはいけない存在なのだからな。リアリズムとかいう宗教を信じない者達もいるにはいるが、それだって自分たちの主義という人工の神のようなものを崇めているようなもんさ。そんな弱い人間どもが壊れないように各勢力のトップたちは神の死という事実をひた隠しにし続けているのだよ。」

 

確かに信じる者が既に存在しないと知れば、人は容易く心を壊すだろう。死んだという神を信じる者、つまりアブラハムの宗教の信仰者は現在の世界の人口の約半数である。それら全員が信じるものを失い、恐慌に落ちればどのような大惨事が起きるか。規模は想像できなくとも世界中が大いなる混沌に陥ることは誰の目にも見えている。

 

「あの戦の後、残ったのは神を失った天使、魔王全員と上級悪魔の大半を失った悪魔、幹部以外はほどんどいなくなった堕天使だった。疲弊どころではない、絶滅の危機だ。どこも人間に頼らなければ存続できないほどに落ちぶれた。今の世界があるのは神が残した世界の運行を司る“システム”のお陰さ。それさえあれば神への祈りも、祝福も、悪魔祓いもある程度は機能する。ミカエルの奴はよくやっているよ。」

 

「嘘だ……嘘だ―――」

 

「そんな……それじゃあ、神の愛は―――」

 

中でも衝撃が大きいのはともに敬虔な信者であったゼノヴィアとアーシアだ。ゼノヴィアは手にしたデュランダルを落としそうなほどに疲弊し、アーシアに至っては涙も出ないほどに心が打ち砕かれていた。イッセーがその身を支えるものの、今にも彼女は崩れ落ちそうだ。

 

「先程の特異な禁手も神がいないからこその現象だろうな。力を統括するのがただ粛々と処置していくだけのシステムならバランスが崩れることもある。そこまでこの世界は脆い柱の上に成り立っているのだよ。」

 

「……なら、何故貴方は戦争にこだわるの!?世界がそこまで来ているのであれば、もう戦争どころではないでしょう!?」

 

「グレモリーの小娘よ、だからこそだ。誰がこの世界の頂点であるかを決めなければ、この振り上げた拳はどこへ下ろせばいい!?戦争以前に、あの“黒の獣の王”のこともあるというのにアザゼルの奴は「決着は付けない」と言いやがった!!!我ら堕天使こそが至高であると世界に示し、導かねばならんのだ!!!真の強者が強さを示して何が悪い!!!それだというのに神器なぞにうつつを抜かして、人間どもに頼る堕天使に何の意味がある!!!」

 

憤怒の形相のコカビエルから先程とは比べ物にならない圧倒的な怒気と殺気が溢れている。だが、その理由はあまりにも身勝手すぎた。

 

「俺は再び戦争を起こす。たとえ俺ひとりでもあの戦の続きを遂げてやる!!!我ら堕天使こそが至高であると悪魔どもにも、天使どもにも見せつけていずれあの“黒の獣の王”さえも超えてやるんだ!!!!!」

 

なんと矮小で身勝手な理由で世界を滅ぼしかねない選択を採るのだろうか。だが、相手は世界をどうこうしようという魔王や天使の長を相手取ろうという存在。その力は本物だ。

信じていた世界が仮初のものであったというショックと、戦う相手の圧倒的強さに誰もが戦う意思を失いかけていた。

ただ一人を除いて。

 

「……巫山戯るなよ。」

 

ダイスケである。

つい先程までの木場が起こした奇跡と世界の真実に圧倒されていたダイスケであったが、コカビエルへの純粋な怒りで立ち上がったのだ。

 

「……何が堕天使が至高だ、何が神は死んだだ。そんなもん、世界の半分にとっちゃ関係ないんだよ。そのままそっとしておけばいいのに、なんでテメェの我侭で今俺たちが生きている世界が迷惑を被らなきゃならないんだ。」

 

「……人の子よ。それが人の定めだ。大きな力には逆らえず、ただ世界の流れに身を任せるしかなく、雑多で小さな一つ一つの存在でしか有り得ないのが人間だ。現に今でも自分を超える大きな力には抗えない。自ら作り出した力であってもだ。」

 

「そうだな。だけどその雑多で小さな一つ一つの存在のなかには俺の大切なものがある。お前の好き勝手で、それをお前なんかに壊させるわけにはいかないんだよ!!!!」

 

コカビエルと比べても、ダイスケの怒りの理由は矮小なものであろう。結局それは至極個人的なものであるからだ。だがそれはイッセーたちにとっても同じであった。

彼らにもこの街には大切な存在がいる。イッセーには両親と親友たち。アーシアには自分を受け入れてくれたイッセーたち。あえて全ては上げないが、それらの彼らにとって大切なものはすべてこの大きな世界に寄って存在している。この大きな世界を守らなければ、小さな存在である身近なものすら守ることはできないのだ。

その事を、彼らはダイスケが立ち上がった姿を見て遂に悟った。

 

「そうだよな……勝てる勝てないの問題じゃあない。ここで動かなきゃ、なんにもならないよな。」

 

イッセーが立ち上がる。

 

「……神を信じていた僕らの祈りは無駄たったのか、なんて思っていた。だけど、今ここで折れたらそれこそ本当に全ては無意味になっちゃうな。」

 

木場が弱々しくも聖魔剣を構える。

 

「お兄様が来てくれるまで、なんて考えていたけど……ダイスケに心で負けちゃあ上級悪魔として情けないわよね。」

 

いつもの自信にあふれた瞳ではないが、リアスの目に再び闘志が宿る。

 

「なら私も圧倒されている場合ではありませんわね。」

 

余裕の無い朱乃ではあったが、リアスを助けるという意志は戻った。

 

「……もとより、私の居場所はここなんです。わたしだって……!」

 

小猫がその小柄な体にいま一度闘志を流し込むように気合を入れた。

 

「……信じていたものがなかったことは辛いです。でも、ここで私が立ち上がらなきゃ誰がみなさんの怪我を治すんですかッ!」

 

心の支えを失いながらも、アーシアは立ち上がっていく仲間のために心を無理にでも奮い立たせた。

 

「悪魔に身を窶しても信仰を捨てなかったあの娘が自ら立ち上がったんだぞ……現役信徒の私が遅れてなるものか!!」

 

まだ心の震えは止まらないが、アーシアが自らを奮い立たせた姿を見てゼノヴィアが歯を食いしばって再びデュランダルを構えた。

正直な話、誰も本当に立ち直れたわけでも迷いを断ち切ったわけでもない。コカビエルに対する恐怖だって未だに抱いている。だが、それでも立ち上がらずにはいられなかった。

 

「……実力差を見せつけられても、世界の真実を見せつけられてもなお立ち上がるか。―――面白い。サーゼクスとミカエルの前にまずはお前たちとの“戦争”だ!!!」

 

コカビエルが腰掛けていた時計台から立ち上がる。本格的にダイスケ達を敵として認識したようだ。

 

「サーゼクスが来た時に使おうと思っていたが、今ここでお前たちにぶつけてやろう……さぁ、出てこい!!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

 

足元が揺れ、校庭がひび割れる。地割れの中に砂がなだれ込み、見慣れた校庭の景色が一変していく。

 

GYAUUUUUUUUUUUUUUULLLLLL!!!

 

そして地の底から大きな獣の叫び声が聞こえてくる。また、ケルベロスのような地獄の神話生物かとリアスたちは想像したが、その予想は的はずれだった。

その姿はまさに太古の巨大生物。図鑑の中の想像図でしか目にすることはないであろう、現実に即しつつも今を生きる者にとっては異常な太古の生態系を想像させる巨大な四足歩行の蜥蜴であった。

 

「きょ、恐竜!?」

 

イッセーの疑問は当たらずしも遠からず。

この巨大な蜥蜴はかつて古生代の巨大肉食恐竜の一種と考えられていたが、その脚のつき方から厳密には爬虫類であると近年になって訂正された分類の特殊なカデコリーにいる絶滅してしまった“はず”の巨大肉食爬虫類である。

ではなぜ、「はず」なのか。それは一度この生物の同類が二十世紀に多くの人々の目の前に現れたことがあるからだ。そしてこの場においてそれを詳しく知っているのはダイスケただひとり。ダイスケだけがその生物の名を口にする。

 

「リドサウルス……!?」

 

「そうだ、人の子!こいつはかつてニューヨークに上陸し、多大な被害を与えたリドサウルスの同類だ!!!」

 

コカビエルが愉快そうに答える。それはまるで自分が持つ玩具の価値を知っている人間に出会った子供であった。

 

「ちょっとまて!確かにリドサウルスは1953年の北極の核実験で目を覚まし、ニューヨークを襲撃した。だが、そいつは放射性アイソトープを撃ち込まれて死んだはずだぞ!!」

 

ダイスケの言う通り、このリドサウルスは1953年の北極におけるアメリカの核実験で目を覚ましたあと、カナダのバフィン湾からグランドバンクス、ノヴァスコシア、メーン州沿岸、マサチューセッツ沿岸、そしてニューヨークを襲撃して多大な被害を出したあと、発見者であるトム・ネズビット教授の手により放射性アイソトープを打ち込まれて絶命している。

 

「ほう、よく知っているな。だが、過去の事件には詳しくても最近の事件には疎いものと見える。」

 

コカビエルの言葉で、ダイスケの脳裏に一ヶ月以上前の出来事が浮かぶ。それは朝の登校中に榛名が見せてきたタブレット端末の画面にあったニュース記事。

内容は「リドサウルスの幼体が仮死状態で発見され、アメリカに移送された」というものだった。そして数日前にゼノヴィアたちが来ていた部室にあった朝刊の一面にあったその幼体が移送先のアメリカで行方不明になったという記事である。

それらの情報を重ね、いま目の前に実物がいることを考えれば結論はひとつ。

 

「……お前か、幼体を盗んだのは!!!」

 

「その通り。此奴は既知の生物の中でも飛び抜けて強力な生物、本物の怪獣だ。一頭いるだけでいい戦力になるから手に入れておいた。」

 

そのために今アメリカ国内は騒然としている。政権に対する信用は低下し、株価も関連する企業のものは下落し続けている。たった一頭の、それも幼体であるといっても未だに多くの国民がその驚異を記憶しているのだから致し方ない。

たとえ対抗できる力があったとしても、怪獣という存在が与える影響はそれほどまで大きいのだ。

 

GAUUUUUU!!GAUUUUUUU!!!

 

檻から解き放たれた虎のように、リドサウルスは目の前にいるダイスケたちを威嚇する。野生の本能で目の前にいる小さな存在たちが不釣合なほどに大きな力を有しているのを察したのだ。

 

「こんなデカいだけのトカゲ、デュランダルで!!」

 

ゼノヴィアがエクスカリバーを携えて宙を跳ぶ。高く跳び上がって思いっきりリドサウルスの胸を叩き切ってやろうというのだ。だが、それはこのリドサウルスにとっては最悪の悪手なのだ。それをただ一人知っているダイスケはゼノヴィアに向かって叫んだ。

 

「駄目だ……そいつだけは斬るなァァァァアアアアアア!!!!」

 

ザシュッッッッ!!!

 

GYAUUUUUUUUUUUUUUULLLLLL!!!

 

しかし、ダイスケの制止も時すでに遅し。刃はリドサウルスの胸を深々と切り裂き、鮮血が激しく飛び散って校庭の砂を濡らす。ここまで盛大な流血だ。生物であれば確実に致命傷となる一撃だった。ゼノヴィアは勝利を確信するが―――

 

グラッ

 

「!?」

 

目眩がした。

いや、それだけではない。ゼノヴィアの全身を謎の虚脱感と寒気、そして意識の混濁と頭に籠る熱が襲う。

 

「な、なに……?」

 

「体が……。」

 

「うだるように熱い……!」

 

リアスが、朱乃が、小猫が、次々とゼノヴィアと同じように倒れていく。

 

「あ、アーシアッ、しっかりしろ……!」

 

「ダメですイッセーさん……私まで体がおかしいんです……。」

 

神滅具を有するイッセーも、本来であればすぐさま回復役に回らなければならないアーシアまでもが崩れ落ちていく。

 

「まさかこれは……ウィルス感染なのか?それも悪魔ですら免疫がない未知のウィルス……!?」

 

聖魔剣を杖替わりにしている木場の予測の通りである。

このリドサウルスという巨大爬虫類の血液中には未だ正体不明の太古のウィルスが潜んでいる。1953年のニューヨーク襲撃の際は、砲撃によって傷付き滴った血液から空気感染し、追撃にあたった多くの米兵たちが治療法がない熱病に倒れていった。

それから半世紀以上たった現在でもウィルスのサンプルは存在せず、対抗するワクチンも「もうリドサウルスが暴れる可能性はない」として知られている限りどこの研究機関でも造られていないのである。

 

「なるほど、階級を問わずどの悪魔にも有効か。なら十分に使えるな。―――フリード!いつまで寝ている?立て、リベンジのチャンスだぞ。」

 

「……いやー、そうしたいのは山々なんですけどねぃ。ここまでの傷を負わされた上に愛しのエクスカリバーちゃんまで折られたとなったらもう打つ手がねぇっす……。」

 

胸を切り裂かれ、虫の息のフリードはコカビエルに弱々しく答える。会話が出来るだけでも驚きのしぶとさである。

 

「お前にくれてやったアレがあるだろう。やれ。」

 

「……わーお、こんなにもボクちんのことを頼ってくれる上司がいるなんて幸せで絶頂しちまいそうでござんすよっと。」

 

言いながらフリードは小さな短剣のようなものを懐から取り出している。よもやそれで襲ってくるつもりか、と思ったが様子がおかしい。なんとフリードはその短剣を自らの胸に―――

 

「フンスッ!!」

 

―――一気に突き立てた。

 

ドクンッ

 

弱々しく鼓動を奏でていたフリードの心音が一気に高まる。胸の傷はみるみると塞がっていき、土気色だった顔も元の血色を取り戻す。

 

「ウッハァァァァァァ!!!気分爽快ィィィィ!!!なんかマジで生まれ変わった気分!!あ、マジで生まれ変わってるんだけどね、これ!!」

 

元のテンションを取り戻したフリードは、その手に巨大な武器を生み出していた。

それは巨大な鎌である。まるで中世で麦の穂を刈り取っていたような農耕用の巨大鎌である。所々に節があり、まるで全体が昆虫をイメージしたような作りになっている。それを見た木場が何故か一番最初に頭に浮かんだのはレイナーレとの一件で戦ったあの巨大カマキリの「カマキラス」であった。

 

「紹介しちゃうぜぃ!これがオイラの新たな相棒、“巨大蟷螂の不信心なる祈りの大鎌《カマキラス・インピオス・プレイア・サイズ》”でぃ!!!」

 

言いながらフリードは自分を切った木場に斬りかかる。

熱病で力が入らない中、木場は聖魔剣でその一撃を受けきるものの、体が全くついていけていない。

 

「くそっ、何故……!?」

 

「チミが万全の体調だったら勝てなかったさ。でも、その中途半端な力じゃあ僕ちんとカマキラスちゃんには勝てない!!なーんて君にもらったセリフをパロって返させて頂きましたァ!!」

 

大鎌で聖魔剣を払うと、そのまま空いた胸をフリードは一気に切り裂く。

 

「カハッ―――!!!」

 

聖魔剣を落とし、木場は膝から崩れ落ちた。

 

「そんな、祐斗が……!?あの神器は一体……!?」

 

リアスがショックで口を抑える。だが、それと同時に気を引いたのが突如としてフリードが使い出した神器らしき代物である。

確かにフリードは優れた戦士であり、後天的ながらも聖剣を使いこなしていた実力だけで言えば確かに優秀なエクソシストであった。だが、神器の所有者でないのは間違いない。それがどうして突然あのような力が発現したのだろうか。

 

「気になるか、リアス・グレモリー。なら冥土の土産に教えてやろう。我ら堕天使の神器研究が最先端であることは周知の事実だが、実は人工的に神器を作るレベルにまで達している。そこへ特殊な生命力を持つ怪獣の力を用いることで特殊な人工神器を生み出すことに成功したのさ。」

 

それでようやくレイナーレがあの巨大カマキリを戦力として有していたのか理解できた。あれはこの人工神器を作るための研究材料だったのだ。それを無断で持ち出して戦力にしていた、ということなのだ。

 

「しかし、まさか人の世の中に生きる貴様らがこの怪獣のことを知らないとは意外だった。人間の世界ではコイツが出てくる映画もあるだろうに。」

 

そのコカビエルの言葉は、リアスたちには理解できない言葉であった。そういえば以前にカマキラスを見たときはダイスケがその存在を知っているようであった。なぜ知っているのか問おうとしたが、あの時は状況が状況であったために何も分からずにいた。

そしてコカビエルの言葉に反応できるのは、オカ研の中で唯一怪獣という存在に詳しいダイスケである。

 

「お前、まさか……映画の中の怪獣は実在してるって言うんじゃないだろうな!?」

 

「当たり前だ。お前たちにとっての神話の存在が実在しているのだぞ?想像の世界の存在という点では同じステージにいるのと変わらない。無論、現実にいる怪獣以上の存在だ。だからこそお前たちが映画の怪獣として知っているのは実在の動物の姿で神獣クラスの力がある『ネメアの獅子』や『フェンリル』、『天狐』のようなものだと位置づけていい。」

 

つまり、それら神話の獣同様に映画に出てきた怪獣は想像上の存在ではないということである。むしろ人はその存在を潜在的に、本能的に知っていたからこそそれら神話の獣のように絵物語を創り上げてきたのだろう。

いわば、現代に生まれた神話である。古代の神話の存在が実在していたのだから、現代の神話の存在も実在していてもおかしくはない、ということらしい。

視線を別の方向にうつせば、ゼノヴィアが巨大なリドサウルスの前脚による攻撃をなんとか凌いでいるのが見える。だが、絶大な破壊力を持つというデュランダルといえども使い手が病に犯されては本来の力を発揮することは叶わず、もっぱら盾として使われている始末である。

 

GYAUUU!!

 

横合いからの一撃が、ほぼ無抵抗となったゼノヴィアを吹き飛ばす。ゼノヴィアの体はイッセーたちが倒れている方向へと飛んで行き、近くの木にぶつかってようやく止まる。

 

「ゼノヴィアッ!……くそっ、あいつのところへ行くこともできないなんて!」

 

イッセーが頭から血を流し、グッタリと項垂れているゼノヴィアのもとへ向かおうとも木場たちと同じで体が言う事を聞かないでいる。これでは応急処置もままならない。

 

「おーう、ナイスホームラン。そんじゃ君もその首刈り取ってホールインワン行っとく?行っちゃおうか!!!」

 

血が付いた大鎌を振るい、その刃を木場の首筋にあてがう。

 

「やめろ……やめろぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!」

 

イッセーがたまらず叫ぶが、フリードは全く気にする素振りすら見せない。

誰にも止めに行けないなか、無情にも大鎌が振り下ろされ―――

 

ズバァァァァァ!!!

 

刃は虚空を切り裂いた。

よく見れば、木場は先程までの場所にはいなかった。ダイスケによって間一髪のところで救出されていたのである。それも趣向から発射した熱線の反動で飛び出したのだから相当遠くまで逃げ切っている。

 

「おう?チミさっきまで熱に苦しんでなかった?なんで平気な顔してんのよん?ひょっとして治っちゃった?」

 

フリードの問にダイスケは無視を決め込む。

最初は確かにダイスケも例に漏れず病に苦しんでいた。だが、五分も経たずに熱は引いていた。なぜ治ったのかは本人にも理由が分からないでいる。効いていないのはコカビエルとフリードも同様であるが、コカビエルは体内で光を用いることで殺菌し、フリードは“巨大蟷螂の不信心なる祈りの大鎌《カマキラス・インピオス・プレイア・サイズ》”がもたらした超常的な肉体強化によるものである。

そのどちらも持ちようのないダイスケが何故回復できたのか誰にも推し量れなかった。だからこそダイスケは余計なことは言わずに黙って木場を降ろしてフリードに向かい合う。

 

「あれれーおかしいぞー?ひょっとしてチミ、僕ちゃんとリドちゃんを同時に相手取る気?言っとくけど、あの子堕天使の機械でしっかり睡眠学習してあるからこっちの言うこともちゃんと聴くのよん?」

 

「……知らねぇ。」

 

「おやおや、知らねぇはないでござんしょうよ。ウチの大将、まだ自分で戦う気がないとは言え三対一よ?勝目は完全にナッシングなのにそれでも戦っちゃう?殺られちゃう?」

 

「……知らねぇって言ってんだろ!!!」

 

再び瞬間的な熱線の噴射による加速。その勢いでフリードに向けて突進するが、あえて素通りしてリドサウルスの方へ向かう。

走り幅跳びの要領でリドサウルスの頭上まで上がると、頭にしがみついた。

 

GHAUUU!!GHAUUU!!

 

自分の頭にしがみついたダイスケを振り払おうとその頭を必死に振るが、ダイスケのガントレットから伸びた爪が食いついて離さない。元々機関銃の弾すら寄せ付けないほど頑丈な頭部だ。その分しっかり食いついている。

 

「コイツッ!!」

 

GHAUUU!!GHAUUU!!

 

リドサウルスは頭にしがみついて離さないダイスケを引き剥がすために、なんと自ら校舎に突っ込んでいった。

 

ドッガァァァアアアアアン!!!!

 

「クッソ、近づけねぇ!」

 

フリードが悪態をつくが、これこそがダイスケのほぼ狙い通りである。

あえて自分を危険なところに置くことでもう一方の敵に手出しをさせにくくさせるのが目的であった。そのためにリドサウルスに寄生虫のように張り付くことで余計に大暴れさせて近づけなくさせたのだ。

無論、このままでは自分の身が危険だ。校舎に突っ込んだことはダイスケにとっては想定外であった。これでは予定していた以上に早く決着をつけなければならなくなってしまった。だが、勝算はあった。

ダイスケはこの怪獣がバズーカや野砲でようやくダメージを与えられる程の耐久力があるのは分かっている。正直なところ、自分の熱線でこの皮膚を撃ち抜ける自信がない。当然ながら出血させることもタブーだ。余計にウィルスをばら撒くことになってしまう。

それでもゼノヴィアの一太刀は大きなダメージを与えることに成功させている。問題は如何に出血させないかだ。

 

(剣のような貫く一撃でありながら、出血もさせない方法……!)

 

そこで脳裏によぎったのはフェニックス戦で見せたイッセーの赤龍帝の籠手の変化と、つい先程の木場の禁手への目覚めだ。

ドライグの言う通り、神器の力の源が所有者の願いや想いであるのなら。それに神器が応えてくれるというのなら。

 

「いつも黙ってないで……たまには言うことも聞けよ、俺の神器ァァァァァアアアアア!!!!」

 

願うのは、相手を傷付けつつも、決して血を零させない『武器』。振り上げた右手に、いつも放つ熱線以上の熱量が迸り、形になっていく。

腕が燃え上がるのではないかと思える程の膨大な蒼い熱が、ダイスケが望む形になっていった。

それはひと振りの直剣。

木場とゼノヴィアに影響されたのであろうか、熱線が直剣の形となって現れたのである。ダイスケの神器の答えは「熱線を武器の形に固め、傷口を焼き固めながら溶断して切り裂く」というものだったのだ。

このことを直感で理解したダイスケは、熱線が固定した剣、いわば『熱線剣』をリドサウルスの頑丈な頭部に逆手で突き立てた。

 

GYAUUUUUUUUUUUUUUULLLLLL!!!

 

先程のデュランダルの一太刀とは比べ物にならない痛みがリドサウルスを襲う。痛みの原因を振り落とそうと躍起になって余計に暴れるが、暴れれば暴れるほど熱線剣は傷口を燃やし、溶かし、切り裂いていく。

 

ズブ、ズブズブズブズブ……

 

肉が焼け焦げる匂いを放ちながら、リドサウルスはのたうち回る。だが、既に出現した当初の力強さはない。その隙を逃さずにダイスケはしがみついていた頭から飛び降り、先にデュランダルでつけられていた傷口に熱線剣を突き立てる。

 

GYUUUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!

 

まさに断末魔の絶叫である。

滴っていた鮮血は高熱で水分が蒸発し、確実に細菌が繁殖できない状態になっている。それどころか突き立てられた熱線剣は瞬く間に心臓を突き破り、確認する間もないほどの時間でリドサウルスを死に至らしめた。

 

「くぅ……フン!」

 

一気に剣を引き抜き、残ったフリードをも始末せんと振り返る。背にリドサウルスの巨大な亡骸を配することで盾にし、襲ってこられる方向を限定させる。だがダイスケの目の前にある瓦礫の山の中にフリードの姿が見えない。

 

「いっきまぁぁぁぁぁあああああああす!!!」

 

フリードの背後からの奇襲。

本来なら有り得ないはずであった。ダイスケの背には巨大な死体が横たわっているのだから。だが、答えは簡単だった。フリードが手にした大鎌で死体を切り裂いて突撃したのだ。

 

ザシュッ

 

刃が肉を切り裂く音。それはフリードがダイスケの背中を大きく切り裂いた音である。

 

「っう―――!」

 

背中に鋭い痛みが広がるが、歯を食いしばって背後へ剣を振るう。だが反応は一足遅く、剣を振った先にフリードはいなかった。

 

「リドちゃんをやったのは確かに凄かったけどさぁ―――」

 

頭上から聞こえるフリードの人を小馬鹿にした声。

 

「君、剣は使い慣れていないっしょ!?」

 

次の瞬間、ダイスケの胸が切り裂かれる。フリードは落下と同時にダイスケの胸を狙い、見事に深く切り裂いて鮮血を噴出させることに成功させていた。

その道の達人ですら気絶するような痛みを我慢していたのに、そこへ更に致命傷となるような一撃が加えられる。たまらずダイスケは剣を落とし、両膝から崩れ落ちた。

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!おやおやぁ、さっきあんなご高説たれてたのにもうギブですかぁ?情けねぇったらありゃしないねぇ、おい!」

 

ダイスケの頭を踏みつけて悦に入るフリード。

悔しいが、フリードの言うとおりであった。コカビエルどころかその手先のフリードにすら手も足も出ない。落ちた剣を拾おうとするも、既に影も形もなく消え去ってしまっていた。

このままではこの街を破壊され、自分の大切なものが全て消え去ってしまう。なぜそうなったのかも知らないまま、理不尽にだ。

 

「さっきはあの騎士くんの頭を切り落とすの邪魔してくれたからさぁ……先に君のをチョンパさせてもらおっかな!?」

 

濃緑の大鎌が頭上高く振り上げられ、ダイスケの首筋へと正確に狙いを定める。切れ味は折り紙つき、寸分違わずその首を切り裂いて容易くダイスケの命を刈り取るだろう。

何も守れないまま、殺される。

 

―――嫌だ。

 

自分が無力に殺されれば、次はイッセー達の番だ。

 

―――嫌だ。

 

病に犯された今、たとえ上級悪魔であろうが神滅具持ちであろうが、そして禁手に目覚めたものであろうが簡単に殺されるだろう。

 

―――嫌だ。

 

サーゼクスの援軍も間に合わず、結界を維持する蒼那達もろともこの街はコカビエルによって破壊させる。

 

―――嫌だ。

 

短いながらも両親との思い出が詰まった家も跡形もなく破壊される。

 

―――嫌だ。

 

そうなれば松田や元浜も、イッセーの家族も、今も自分の帰りを待っていてくれてるであろう榛名も皆この世から消え去ってしまう。

 

―――嫌だ。

 

今ここで死ねば、何も残せない。何も守れない

 

「さーあ、それじゃあ覚悟はできたかなぁん?まあ、心配しなくてもみんなブッ殺してあの世に送ってあげるから!!それでは……アーメン!!!」

 

命を刈り取る刃が振り下ろされた。

もう助かる道はないだろう。だがもし、助かる道が、今目の前にある敵を討ち滅ぼせる力があるのなら。

 

 

―――ヒトであることを辞めてもいい。

 

 

ただ、力を望んだ。

 

 

ドォゥン!!!!!

 

 

刹那、『力』が爆ぜた。

 

「どぉうわ!!!」

 

その力に吹き飛ばされ、フリードとリドサウルスの死体、そして多くの瓦礫が宙を舞う。爆風はリアスたちがいるところまで届き、そこに何があるのかがよく見えるようになった。

意識が朦朧とする中、見えたのは蒼い光の柱の中で仁王立ちする黒い鎧姿の人物。

 

「……だ、ダイスケ?」

 

その人物が立っている場所から察するに、それはダイスケなのであろうとイッセーは判断するが、その姿は異様である。形状はイッセーの禁手である“赤龍帝の鎧《ブーステッド・ギア・スケイルメイル》”に近いが、放つオーラは明らかにドラゴンのものではない。

 

ウ゛ゥゥゥゥゥゥ……

 

なによりもそれが人の姿をしていても人であるというには見えず、その息遣いは怒れる野獣のものだ。そして大きく息を吸い込み、ダイスケであろう鎧の人物は“吠え”た。

 

ゴァァァアアアアアアアアアアアォォォオオオオオオオオンンンン!!!!!

 

その叫びは、誰もが一度は聴いた事があるであろう咆哮であった。

 

「んな虚仮威しが通用するかっちゅーの!!!」

 

飛ばされていたフリードが再び大鎌で棒立ちのダイスケ目掛けて斬りつけに来る。切先が再び首筋を捉えるが―――

 

ガシィ!

 

当たるか当たらないかの距離でその刃は掴んで止められた。そしてそのまま大鎌ごとフリードは空中を一転していた。

 

「……はぇ?」

 

何が起きたか理解できていなかった。まるで柔道や合気道の達人を相手にした者がよく言う「何をされたかわからないまま技を掛けられていた」という心境に近い。

だがそれは技によるものではなく、単純な力によって放り投げられていただけのことである。何が起きたのか理解できぬまま、フリードの目の前は暗黒に包まれる。その闇の正体はダイスケの掌だ。頭を掴まれたフリードはそのまま信じられない速度で地面に叩きつけられた。

 

ドォォォォォオオオオオンンン!!

 

イッセーは鉄骨でも落ちてきたのかと錯覚したが、実際は人が成人男性の背ほどの高さから落ちたに過ぎない。だが、その事実を忘れさせるほど衝撃は凄まじい。落下地点にはクレーターができており、その中心にフリードは文字通り埋まっていた。

常識的に考えれば死んでいてもおかしくないが、生来のしぶとさからかまだ虫ほどの息は聞こえてる。それを確認したあと、ダイスケは興味を失ったかのようにコカビエルの方へと向く。

 

「……ふふふ、アーハハハハハハ!!!いい!いいじゃないか!その迸る殺気!躊躇のなさ!どれも俺好みの―――」

 

ブンッ!!!

 

全て言い切る前にコカビエルめがけてダイスケは巨大な瓦礫を投げつける。当然ながら当たることはなく、光の剣と化した堕天使の光の槍で切り裂かれた。切り裂いた瓦礫の先のダイスケへと突っ込むコカビエルだが、その眼前に待っていたのはダイスケの握られた拳であった。

 

ゴンッ!!

 

人の骨格はコンクリートよりも頑丈だという。上位存在である堕天使のものならばその上を行くだろうが、相対された速度と強烈な一撃が相まってコカビエルは想像以上のダメージを受けた。

 

「―――グッ!」

 

一瞬、気を遣りそうになるが即座に体勢を整えるが、すぐさまそこへ棍棒のような何かが振られて再び吹き飛ばされる。何が起こったのかコカビエルにはよく解らなかったが、離れた位置から見ていたイッセーにはそれが鎧の一部を構成する尾であることがわかった。

腰に位置する黒く太い尾が、バランサーとしての役割の他に多節棍のように機能するらしい。

 

「……貴様ぁぁぁぁああああああ!!!!」

 

二度の不意打ちをむざむざと受けてしまったことで堕天使の幹部としてのプライドが傷つく。だが、再び体勢を立て直そうとしているあいだにダイスケはいつの間にか眼前にいる。

 

ドムッ!!

 

足元の邪魔な虫を踏みつぶすかのような蹴り。それを腹部に受け、更にコカビエルの胸に鋭い鉤爪が食い込こまされ高く放り投げられる。

 

バサァ!!

 

十枚の翼を広げ、コカビエルは宙で静止する。熱線を利用した加速はできるものの、本格的な飛行手段を持たないダイスケは地に残され、飛翔するコカビエルを見上げる形になる。

 

「そうか……その力、そのオーラ、どこかで感じたことがあると思ったが……まさかこのような形で再びあいまみえるとはな。『黒の獣の王』、『怪獣王』……ゴジラ!!!」

 

言いながらその手の中にはこれまで見たことがないほど強力な“光”を内包した槍を生み出す。

 

「かつて出会った時は見向きもされなかったが……神器に身をやつすほどに堕ちたか!!!ならちょうどいい、ここで引導を渡してくれる!!!!」

 

槍を投げる体勢になるコカビエルに対し、ダイスケの背にある並んだヒレが発光し、顔の装甲の一部が展開する。そこからあの蒼い光が溢れ、手から放つものよりも強力な熱線を放とうとしていることがわかる。

だが、突然ダイスケは地面に倒れる。発せられていた光も消え、身悶えながら苦しみだした。

それもそのはずである。既にその体は生きているのが不思議なほどの傷を負っている。それでここまで持っていることのほうが奇跡なのだ。

 

「……人の身に宿ったのが運の尽きか。ならば―――」

 

ドドドドドドドドド……

 

みー―――……

 

コカビエルから放たれるプレッシャーが音となって聞こえてくるのだろうか、地響きのような音がグラウンドを伝わる。

 

「―――死ねい!!!」

 

ついに必殺の一撃が放たれた。広範囲の破壊よりも一点におけるエネルギーの集中を重視した攻撃であったが、射抜かれれば鎧に守られていようが間違いなくダイスケは射殺されるだろう。

その一瞬一瞬がまるでスローモーションのように流れていく。

 

ドドドドドドドドド……!

 

つー―――……

 

地に伏しながらもなんとかダイスケを助けようとするイッセーたちだが、やはり体が動かない。地響きのような音が徐々に強くなっていくのと同時に危機感と焦燥感が強まっていく。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

けー―――……

 

と、ここで刹那の中でありながらも彼らは気付く。これは「地響きのような音」ではなく紛れもない「地響き」だ。それも人が走っているかのような響き方だ。というかさっきから変な少女の声が聞こえてくる。ここまで聞こえたのは「みー」と「つー」と「けー」の三つ。だが誰が言ったのか、繋げるとどんな意味になるのかなんて今のイッセーたちに考える余裕はない。

そして、それらを確認する間もなく光の槍がダイスケに近づく。

 

「たー―――……。」

 

ここまでの言葉をつなげると「見つけた」だ。それも間違いなく声の主は近づいてきている。だが、それよりも槍の到達の方が早い。

そして―――

 

「ネェェェェェェェエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!」

 

ドッ……ゴオオオオオオオオオオオオオンンン!!!!!

 

―――着弾した……はずである。だが明らかに何かが刺さったような音ではない。まるで人がトラックか何かにはねられたような音だった。

槍を放ったコカビエル自身も手応えを感じていない。よけられる状況ではなかったはずだからそれは本来ありえないが、手応えがないのも確かだ。しかし、立ち上がった土煙のせいで確認ができない。確認を取るために地上に降り立つ。

徐々に土煙が晴れていき、何がどうなったのかようやく見えるようになるとそこには―――

 

「あぁん、イギリスを旅立って苦節約一週間!やっと私のお婿さん候補に巡り合えたネー!最初は私に宿っているのと同じ種族が妹以外に、それもオトコのコのがいるだなんて驚いたヨー!!でもでも、私たち二人で子供を作れば絶対に強い子が生まれるから一緒に頑張ろうね♡それにしてもわざわざ発動させて待っていてくれたなんて……私が迷ってるって思って目印のために着てくれてたんでしょ?もーう、見た目に似合わず優しいんだかラー!あ、それとも「俺はこれからお前とはベットの上では常に臨戦態勢だぜ」的な意味デ!?やーん!darlingったらエッチなんだかラー!!!あ、そういえばアナタのお名前なんていうノ?」

 

見知らぬ少女がダイスケに抱きついていた。勿論、放たれた槍は見事に目標を離れて地面にブッ刺さっている。彼女がダイスケにとんでもない速度で抱きついたからこそのこの結果、ということだ。

それも怪我人相手に勝手に盛り上がって、挙げ句の果てに胸の傷口の上をバンバンと叩いている。さらに言っていることは支離滅裂、自己紹介すらせずに一方的に盛り上がり、ここまで続いていたシリアスな空気を勝手にぶっ壊す始末。

ここまで周りの状況が見えていない人間などイッセーたちは見たことがなかった。あまりの凄まじさにちょっと熱が引いたくらいだ。というか、一体どうやって学園全体を覆っている結界を突破してきたのだろう。

だが一番ショックを受けたのは(物理的な意味で)ダイスケだろう。謎の少女の腕の中で気絶し、鎧も解除されてしまっている。

 

「はれ?なんで気絶してるノ?ねぇdarling、大丈夫?あ、今ちょうど気付けの薬持ってるからちょっと待っててネー。」

 

そう言って彼女は懐を探る。

 

「……ガキ、そこをどけ。後で殺してやるから、先にそっちの方を殺させろ。」

 

背後から聞こえるコカビエルの静かな声。その声量に反して明確な殺意が見て取れる。だが、それに反応することなく彼女は薬瓶を取り出して開封する。

 

「うえっほ!自分で作っといてなんだけどやっぱり効くネー。でもこれさえあれば一発で目を覚ますから安心していいからネ!」

 

背後のコカビエルの存在に全く興味を示さない。それどころか興味はダイスケにのみ集中しているようだ。

これにはコカビエルも我慢ができない。これほどまでに殺気を放っているのに何の反応を示さないのでは堕天使の幹部としての沽券に関わる。

 

「聞こえなかったか?そこをど「―――五月蝿いヨ。」……なに?」

 

「……五月蠅って言ってるのヨ!!!」

 

振り向きざまに見せる少女の怒りの形相。全くに別人で性別も違うはずなのに、それはどこがつい先程のダイスケの怒りの表情に似ていた。

そして次の瞬間、彼女は拳を振りかざす。距離はそれなりに離れていたから避ける必要なく、コカビエルはその場に立ったままだった。

だが、殴り飛ばされた。

 

ドゴォォォォォオオオオンン!!!

 

何が起きたのか理解できぬまま、コカビエルは瓦礫の山に突っ込む。

 

「な……何が……!?」

 

見上げるとそこには巨大な腕を背負う少女の姿が。それも人のような腕ではなく鰐か大蜥蜴のような、年頃の少女が背負うには似合わない無骨な腕。

 

「……こっちは自分の人生賭けてるんだヨ。部外者にごちゃごちゃ口を出されたくないネ。」

 

全く他者を寄せ付けまいとする冷徹な表情。本来であれば部外者はこの少女の方だったが、いつの間にか当事者のはずであった自分が部外者にされたことでコカビエルは余計に怒った。

 

「……部外者、だと?これは俺の仕切りで起こした戦いなんだぞ?この俺を舐めているのか……貴様ァァァァァ!!!!!」

 

あえて槍は構えずに、先程のお返しとばかりに拳を振りかざす。拡げられた十枚の翼がはためいて低空で滑空。いざ殴ってやろうと拳に最大限の力を込めた時、再び乱入者が現れる。

 

「お姉さまに……何するかァァァァァァ!!!!!」

 

飛び蹴りの格好で飛び出してきたのはこれまた別の短髪の少女。顔立ちはよく似ているものの髪型の違いではっきりと別人で、且つ姉妹なのだということがよくわかる。さらにその足には恐竜の足のようなブーツが装着されている。

飛び蹴りはコカビエルの横っ面に見事に当たり、勢い余って空中を一回転させる。だが、この短髪の少女の攻撃はまだ止まない。

 

「気合……。」

 

膝蹴りで一旦コカビエルを滞空させたあと、地面に強く踏み込んで力を貯める。

 

「入れて……。」

 

さらに上段の横蹴りを加えて突き上げる。そして大きく息を吸い込み―――

 

「イきます!!!!」

 

ゴゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウ!!!!!

 

突如として吹き荒れる突風。それは彼女が放った息吹である。一体どんな肺活量をしているのかと疑問に思ってしまうほどの吐息は、翼を開いていたコカビエルを再びはるか上空へと突き上げる。

 

「お、おおぉぉぉぉおおおおおおお!?」

 

台風のような突風に突き上げられ、一気に距離を引き離されて驚愕するコカビエル。だが次の瞬間、その驚愕を越える殺気を感じ背後を振り返る。

 

「……ここで少しくらい出番がないと多分みんな俺のことを忘れるからな。」

 

そこには巨大なモーニングスターを構えたアーロン・ブロディの姿があった。そしてそのままコカビエルめがけてモーニングスターを打ち下ろす。

 

ドムッッッッ!!!

 

背中に強烈な一撃を受けたコカビエルは真っ直ぐ地面へ落下していく。意識を失いかけたその矢先、自分の落下地点に白い全身鎧を身につけた男がいるのに気付く。

 

「無様だな。独断専行で、それも意気揚々と他勢力へ戦争を仕掛けた結果がこれか。」

 

「き、貴様!……白龍お―――!?」

 

ズドムッ!

 

落下した衝撃と同時に腹部に受けた突きの一撃でコカビエルの意識は刈り取られる。

 

「……持ち帰りやすくしておくか。途中で暴れられても困る。」

 

《Divide!》

 

音声が聞こえ、コカビエルが放っていたオーラが一気に激減する。そしてその体は白い鎧の男の腕で突き上げられたままだ。

 

《Divide!》

 

白い鎧の背に生えた光の翼が輝き、またオーラが削り取られる。

 

《Divide!》

 

「これで中級の堕天使並みか。まぁ持ち運ぶにはこれでちょうどいい。」

 

ついに意識を取り戻すことなくコカビエルは封じ込められる。どうやらオーラが音声が鳴るごとに半減していったのは背に生えた光の翼の能力であるらしい。

 

「俺の“白龍皇の光翼《ディバイン・ディバイディング》”の禁手“白龍皇の鎧《ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル》”の力を一度体感したいと言っていたが……これで満足かな?」

 

問いかける相手は答えない。だが、白い鎧の男が名乗った自らの神器の名を聞いてリアスは驚愕する。

 

「白龍皇の光翼……イッセーの赤龍帝の籠手と対をなす神滅具……!?」

 

意識は朦朧とする中でイッセーは衝撃を受けた。なぜなら目の前にいるコカビエルの戦闘力を瞬く間に奪っていった男が、ドライグが言っていた「いずれ必ずぶつかる相手」なのだから。それも相手は既に禁手を完全に自分のものにしている。これはあまりにも大きな差だった。

 

「ヴァーリ、こっちには例のはぐれ神父が埋まっている。引っこ抜こうか?」

 

「ああ、そいつにも事情聴取は必要だ。やってくれ。」

 

アーロンは地面に埋められたフリードを引っこ抜くと、そのままヴァーリと呼んだ白龍皇の宿主に投げ渡す。

 

「じゃあ、俺はこれで失礼する。あとはそっちでよろしくやってくれ、アーロン。」

 

そう言ってヴァーリという男は光翼をはためかせて飛びたたんとするが、それをイッセーの中のドライグが呼び止める。

 

『無視か、白いのよ。』

 

その声に合わせるようにイッセーの籠手の宝玉が光る。

 

『起きていたか、赤いの。』

 

同じように、白龍皇の鎧の宝玉が光る。

 

『せっかくこう顔を合わせることができたというのに、この状況ではな。』

 

『構わん。俺達はいずれ再び戦場の中であいまみえる宿命。こういうこともある。』

 

『しかし、白いの。お前の相棒からほとんど敵意が伝わってこないのだが、どうしてだ?』

 

『それはお前も同じだろうに。』

 

『お互い、戦い以外に何か興味がある、ということか。』

 

『まあ、そういうことだ。しばらくは勝手に楽しませてもらう。お前の他にも、面白い奴がいくつもいるだ。そういうのもたまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ。』

 

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン。』

 

赤龍帝と白龍皇の会話。伝説の存在同士の会話は終わり別れを告げる両者だが、イッセーは納得いかない、とばかりに朦朧とする体を無理に起こして立ち上がる。

 

「おい!お前ら勝手に話を進めるなよ!!お前は……お前は一体なんなんだ!?」

 

再び崩れ落ちるイッセーの疑問に白龍皇の宿主が答える。

 

「全てを理解するのには時間と力が必要だ。養生してせいぜい強くなってくれよ、未来の俺のライバルくん。」

 

そう言うとそのまま白龍皇は掘るか上空へ飛び立っていった。

 

「さて、俺もエクスカリバーの核を回収して帰投するか……の前に大丈夫か、ゼノヴィア。」

 

「五月蝿い……!そもそもお前は今まで何をしていた……!?」

 

熱に魘されながらもゼノヴィアはアーロンに悪態をつく。

 

「いや、俺もお前のようにヴァーリと協力して聖剣を探そうとしていたんだが……彼女らに捕まってな。」

 

言いながらアーロンはダイスケを一旦安置して倒れるグレモリー眷属たちに手当する姉妹に視線を向ける。

 

「お陰でさんざん振り回されたよ。あんなのに求婚されるとは……これはダイスケのやつも災難だな。まぁ、お前は怪我もひどいし、この街で暫く養生しろ。上には俺が伝えておく。」

 

じゃあな、と言ってエクスカリバーの核を回収したアーロンは身に余るほどの大きさのモーニングスターを担いでその場を後にする。その姿が見えなくなったかと思うとドン!と凄まじい音が響いて結界の一部に大穴が空く。どうやら同じ方法で結界内に入ってきたらしい。

あっという間に危機が過ぎ去ったと実感したゼノヴィアは、一気に虚脱してしまう。先程までは熱にうなされていたものの、場の緊張感でなんとか気を張り詰めることができた。だが、事態の終結を実感すると徒労と疲労が一気に襲ってくる。

 

「あ、大丈夫ですか?ほら、この薬を飲んで。ただの解熱剤ですから病原菌までは殺せませんけど、だいぶ楽になりますよ。」

 

そう言って介抱してきたのは姉妹の短髪の方の少女だった。一瞬飲むのを躊躇ったが、意を決して水薬を喉の奥へ流し込む。するとあっという間に熱が引いていき、先程までの熱が嘘のように回復した。

 

「……すごいな、この薬は。」

 

「でしょう!?私のお姉さまは“黄金の夜明け団《ゴールデン・ドーン》”に所属する新進気鋭の治療術師(ヒーラー)なんです!」

 

「英国の魔術協会か……なるほどな。」

 

黄金の夜明け団とは19世紀末に設立された魔術結社だ。組織としては新参であるものの、創設者の一人であるマクレガー・メイザースがサーゼクス・ルシファーの眷属になっていたりと非常に知名度が高い組織である。

 

「まあ、いろいろあって実家からは半追放状態なんですけどね……。」

 

彼女はそう寂びそうにリアスに水薬を飲ませる姉を見つめる。どうやら薬は悪魔にも効果があるようで、リアスたちもすぐに気力を取り戻していた。

 

「……ごめんなさいね、見ず知らずの人に迷惑をかけて。」

 

「別に気無しなくてイイデース。未来の旦那さんの仲間ならいつでもお力をお貸しするネ!でも、まで熱を下げただけで菌はまだ潜伏しているから無理しちゃダメですヨ?そこの金髪ガールも無理しちゃダメネ?」

 

「大丈夫です。熱は下がりましたから。」

 

既に解熱したアーシアはダイスケの傷を聖女の微笑みで癒している。大きな傷はあらかた塞がって峠も越したようだった。だが、突然ダイスケが苦しみ始める。

 

「ぅぅぅううう!カハッ!……ア゛ッ、ア゛ッ、ア゛ッ!!」

 

まるで喉の奥から何かを吐き出そうとしているかのようにダイスケは地面をのたうちまわる。その豹変ぶりに驚きつつもアーシアは何とかして治療しようとするが、一向に効果が出ない。

 

「私に任せて!」

 

すぐさま先ほどの巨腕を出現させてダイスケを抑える。そして胸に耳を当てて鼓動を聴く。

 

「……まずいヨ。放出されるはずだったエネルギーが行き場を失っているネ。」

 

「それって、さっき口から撃とうとしていた攻撃のこと?」

 

リアスの問いに少女は頷く。

 

「しかも本人の意識がないから、このまま放っておけば体に無理が生じる。ひょっとしたらエネルギーが暴発することも……。」

 

「そんな!なんとかできないのかよ!?」

 

狼狽するイッセーに少女は口元に人差し指を突き出した。

 

「ダイジョウブデース!出られないんなら無理やり吸い出せばいいんですから!!」

 

「いや、そんなのどうやって……って、えええええええええええええええええええ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――みーつーけーたーネェェェェェェ!!!

 

突然横合いから聞こえてきた声の主である少女がタックルをかまし、ダイスケは吹き飛ばされる。

 

―――お姉さまに……何するかァァァァァァ!!!!!

 

先ほどの少女に似た少女が先程まで自分が戦っていた相手を蹴り飛ばす。

 

―――ここで少しくらい出番がないと多分みんな俺のことを忘れるからな。

 

連絡が取れなかったアーロンが目の前にいる。

 

―――無様だな。独断専行で、それも意気揚々と他勢力へ戦争を仕掛けた結果がこれか。

 

イッセーの神器に似た雰囲気の鎧の男。

見知らぬ、あるいは見知った人間たちが入れ替わり立ち代りで現れる。あまりの展開の速さにダイスケは自分がどうなったのかさえわからない。

鎧の男とアーロンが立ち去ったあと、二人の少女が病に犯された仲間たちを介抱してくれている。どうやらそちらの心配はしなくていいらしい。胸の傷も回復したアーシアが治してくれている。お陰で大分楽にった。

だが、突然胸の奥が熱くなる。いくら吐き出そうとしても出てこない。このままでは体の奥から燃え上がってしまいそうだ。

 

―――私に任せて!

 

ロングヘアーの方の少女が背中から巨大な腕を生やして自分を拘束する。

 

―――ダイジョウブデース!出られないんなら無理やり吸い出せばいいんですから!!

 

途端にダイスケは不安になる。吸い出すって一体何?

すると少女は目を瞑り、ゆっくりと顔を近づけてくる。そして―――

 

ズキュゥゥゥゥン!!!

 

そんな奇妙な擬音をつけたくなるような唐突なキス。だがそれで終わらなかった。少女は一呼吸おいたあと、

 

ぶちゅうううううううううううううううう、ずぞっ、ぬりゅっぱ、ぬりゅっぱ、じゅばっ、じゅるっ、じゅるるるるるるるるる!!!!

 

文字にするのもはばかられるような粘膜の擦れ合い。あらゆるものが吸い出され、胸の奥に溜まった熱も一緒に吸い出されていった。だが、もう吸い取るものはなくなったというのにまだ彼女はダイスケの唇を執拗に吸い続ける。

 

―――んー、なんかまだ残ってる気がするネ。じゃあ、もう一発……。

 

言いながら再び顔を近づけてくる。たまらずダイスケは叫んだ。

 

「や、止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

ガバッ!と起き上がるとそこはいつも寝起きしている自室のベッドの上。どうやら全て夢の中の出来事であったらしい。ホッと安堵するもすぐに違和感に気づく。

いま、何も着ていない。

普段は「寝巻きを着るのも面倒」と言って冬でもシャツとトランクスだけで過ごすような男だが、明らかに何も着ていないのだ。

そして下半身にのしかかる人ほどの重さの物体。恐る恐る布団を剥がす。

 

「―――んー……もう朝なノー?」

 

そこには夢の中の少女が、同じく生まれたままの姿でダイスケの上に乗っていた。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

その時、本日二回目のダイスケの絶叫が住宅街に響いた。

 




無事に生まれてよかった……ほとんど帝王切開みたいなもんだけど。
あと新ヒロインの行動は自分で書いていてドン引きしました。一体何金剛型一番艦なんだ……。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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