ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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今回は久々に前作の大幅コピーですが、先日実際にあったとある事件の影響で調べなければならないことがあって時間がかかりました。
だいぶ書けててあとちょっとというところだったので、本当に焦りました。
某市教育員会のポカおかげで間違ったことを書かなくて済んだとも言えますが。


VS22  次の祭りの仕度

マサノ姉妹を受け入れたその翌日、ダイスケは当初の予定通りちゃんと登校していた。家に残した二人が少々気になったが、「自分たちにも用事がある」とのことで先日に続いて彼女たちはよく家を空けている。そういう事情もあって今日は心おきなく登校できている。

学校に来てみれば、イッセーもアーシアも元気に登校しており、受けたウィルスの影響もほとんどないようだった。

 

「なんか持ってたか知らないんだけどさ、部長がくれた薬のお陰で完治したみたんなんだ。」

 

イッセーいわく、事件の後に帰宅したら自宅にリアス宛の小包が届いていたということだ。それに付いていた手紙を読んだあと、小包の中身である小瓶に入った薬を使い魔も使ってゼノヴィアも含めた全員に渡したらしい。リアス以外は届け人は知らないが、その薬のお陰で体内に残っていたウィルスは一掃されたらしく、無事に健康な体を取り戻せた。

ここで「リドサウルスの襲撃を経験したアメリカですら作っていないワクチンを誰が持っていたのか」という疑問が出てくるが、それでもそれのお陰でイッセー達がウィルスの驚異から解放されたのは事実なので特にダイスケは気にすることもしなかった。

また、マサノ姉妹がダイスケの家に住まうことになった件に関して一番の懸念材料であった榛名の反応も特に問題はなく、「付き合ってもいない女の子に手を出すほどダイスケくんは男ができていませんし」という榛名の痛烈な一言で済まされた。それどころか女同士ということで生活に必要なものを見繕ってくれる約束もしてくれたので万々歳である。あっさりしすぎているところが逆に怖かったりするのだが、そこをあえて突っ込むほどダイスケも愚かではなかった。

そんな感じでいくつかの変化がありつつも平穏な日常が戻ってきた事件収束から数日後、いつものようにイッセーとアーシアと共にダイスケがオカ研の部室に入室した時、彼女はそこにいた。

 

「久しぶりだな、赤龍帝とその友人。」

 

それはゼノヴィアであった。しかも駒王学園の制服を着ている。

 

「「お前なんでここにいんの?」」

 

思わず二人の声がハモる。そしてゼノヴィアは、その質問の返答の代わりに背中の黒い羽を見せる。

 

「お、お前悪魔になったのか!?」

 

イッセーの驚く声に対し、ゼノヴィアは肯定だとばかりに頷く。

 

「正直自棄っぱちだ。神がいないとなれば、もう私のこれまでの人生はなかったようなものさ。それで人生のやり直しの意味でリアス・グレモリーから騎士の駒を頂いた。デュランダルがあっても、私自身は大した事無いから駒一個の消費で済んだ。あ、それとこの学園にも編入されせてもらった。今日から君らと同級生でオカルト研究部所属になった。」

 

「……部長、いいすか?これ。」

 

いくら神の不在を知ったといっても思い切りが良すぎだ。いや、悪魔に転生した分、神の不在を知って自らの命を絶つよりかはきっとマシだろうが。

 

「聖剣、それもデュランダル使いが眷属にいるのはとても頼もしいわ。これで祐斗と合わせて騎士がふたり揃ったわね。」

 

あんまり本人の出自には囚われないのか、転生をさせた当のリアスはあっけらかんとしている。まあ、確かに悪魔が相手のレーティングゲームでは猛威を振るってくれるだろうから戦力的には間違いなくプラスだ。

 

「ああ、そうだ。私は悪魔になってしまったのだ。……いや、本当にこれでよかったのか?ええい!!いつまでも悩むことはない!!もう転生したのだから!!……いや、やっぱり……ああ、今は亡き主よ!このような私をお許しくださ……あダダダダダダダダダ!!」

 

「そこまで思い悩むならよしゃあいいのに。バカだろ。お前バカだろ。」

 

ダイスケのツッコミを受けながら、迂闊にも神に祈ってダメージを受けている。そこでまたダイスケが「だからやめろって」と言いながらゼノヴィアの頭を叩いているわけだが。

だが、イッセーはふとあることを思い出す。

 

「あれ、そういや、イリナは?」

 

イリナは先の学園での決戦を前にフリードから受けた傷でリタイアしていた。まあ、神の不在を知る機会はなかったのは不幸中の幸いというべきか。

そしてイッセーの疑問にゼノヴィアが答える。

 

「イリナは擬態の聖剣と私が使っていた破壊の聖剣を持って本部に帰った。私にはデュランダルがあればそれでいいからね。木場祐斗と私が破壊したエクスカリバーの芯はアーロンが持ち帰ったから任務完了さ。芯さえあれば、錬金術で再生できるからね。」

 

「錬金術ってあれ?フルメタルアルケミスト的な?。」

 

「ダイスケ、それゼノヴィアに言ってもわかんないから。ていうか、わかってて言ってるだろお前。……ていうか、デュランダルの持ち逃げっていいのかよ、それ。」

 

「エクスカリバーは教会が管理しているし、他にも使い手は見繕える。だが、デュランダルは使い手がそうそういないんだ。それに、私が神の不在をチラつかせたらタダでくれたよ。まあ、手切れ金みたいなものさ。教会はたとえ聖剣使いでも異端者を徹底的に排除するからな。アーシア・アルジェントの時のように。」

 

自嘲するかのように彼女は笑う。

 

「イリナは運がいい。怪我で途中リタイアしたから、神の死を知らずに済んだのだからな。もし私以上に信仰に熱心だったあいつがあの場にいたら、どうなっていたか……。」

 

「そうだよな、未だにエル○ィスのファンはまだ生きてるて信じてるくらいだもんな。M○Bでネタにされてたくらいだし。」

 

「ダイスケ。お前、本当にちょくちょくネタ突っ込むな……。」

 

イッセーは呆れ顔をしながらも、幼馴染であるイリナのことを思う。いったい彼女は、どのような気持ちで帰っていったのかと。信じる宗派は違えども、共に戦った仲間が本来討つべき悪魔に堕ちた姿を見るのは偲び難いものがあっただろう。

 

「まあ、彼女は私が悪魔になったことには残念がってはくれた。それなりに付き合いは長いからな。ただ、神の不在が原因とも言えないからなんとも言えない別れ方になってしまったが……次に会うときは敵、かな。」

 

そういうゼノヴィアの目は、なんだか哀しげなものだった。少々場がしんみりしてしまったところで、朱乃、木場、小猫が部室に入ってくる。全員揃ったことを確認すると、リアスは話を切り出した。

 

「教会側は今回のことでこちら側、魔王に打診してきたそうよ。『堕天使の動きが不透明かつ不誠実のため、誠に遺憾ながら連絡を取り合いたい』とね。あと、バルパーのことについても協会側からの謝罪があったわ。」

 

あくまで遺憾。まあ、敵同士だからその態度も仕方がないか。バルパーの事について謝罪があっただけ良しとするべきか。

 

「まあ、魔王の妹二人に命の危機があったのだからな。三大勢力の均衡が崩れるかもしれなかったのだから当然だ。」

 

「え?魔王の妹二人って……この学園の上級悪魔は部長と……ってことはソーナ会長!?」

 

イッセーは自分で導き出した答えに驚く。リアスはそれを肯定するように頷いた。

そういえば、とイッセーは思い出す。エクスカリバーを破壊するために匙と組んだとき、彼は「俺の目標はソーナ会長と出来ちゃった結婚すること」と言っていた。つまり、彼は相当な逆玉狙いということか、と一人で納得する。

 

「それと堕天使の総督であるアザゼルからも連絡が来たわ。事の真相は白龍皇の言った通り、コカビエルの単独行為。他の幹部達を出し抜いてまで、三大勢力の均衡を崩し、再び戦争を起こそうとした罪により“地獄の最下層《コキュートス》”での永久冷凍刑が既に執行されたそうよ。」

 

「コキュートスで永遠の冷凍刑か。永遠な分、ドモ○の親父さんとかコレ○・ナンダーよりきついな。」

 

ダイスケのその言葉はイッセー以外わからなかったが、取り敢えずイッセーにはどれくらい重い刑は伝わったようだ。言葉の意味は分からないが、理解することを置いておいてリアスは話を続ける。

 

「とりあえず、アルビオンの介入で事を収めたという形に表向きにはなっているらしいわ。そしてこれは皆に初めて言う事だけど、事が済んですぐに堕天使総督アザゼル本人から謝罪の連絡が来たわ。それと一緒に、リドサウルスのウィルスのワクチンを送ってきたの。」

 

『!?』

 

今回の事件の発端は堕天使の幹部とはいえコカビエルの独断専行によるものだ。だが、それでも敵対する勢力相手に自分の非を認め、あまつさえ謝罪してきたとは本来ありえない。どんな事情があろうとも、組織のトップというものは一度相手に下手に出てしまえばイニシアチブを獲りにくくなってしまうからだ。

それでもあえて総督本人からの謝罪があったということはコカビエルが言っていた「アザゼルはもう戦争を起こす気はない」ということは事実なのだろう。

 

「ああ、そうか。あの日ウチに届いていたのは堕天使からのものだったんですね。そして身内がやった不手際だから、ワクチンもすぐに用意できた。」

 

「そうよ、イッセー。彼らの技術力は三大勢力でも随一。先進諸国でも用意できないものをすぐに造るのも簡単でしょうね。そして、ワクチンを送ってきたということはどうやら向こうも本気で誠意を見せようとしてると考えてまず間違いはないわ。……朱乃は受け入れられないでしょうけどね。」

 

そういうリアスの視線の先にいる朱乃は、どこかしら苦々しげな顔をしている。悪魔と堕天使が敵対関係にあるとは言え、ここまでの拒絶感を見せれば何かあるのではないかと勘ぐってしまう。

 

「―――当たり前です。よりにもよって彼らに助けられるだなんて!いっそのことまだ苦しみ続けたほうが……。」

 

「気持ちはわからなくはないけど、彼らのおかげで完治できたのは事実。今はその気持ちはしまっておいて。その想いを吐き出すのは本人に会ってからにしなさい。」

 

自制を促すリアスに、朱乃は小さく「そうですわね……。」と呟く。

 

「それと、これは連絡事項の最後になるけれど……近いうちに天使側、悪魔側の代表を集めてアザゼルが会談を開きたいとの打診があったわ。その時にコカビエルの件についての謝罪があると思うのだけど……勿論、神の死のことも話題に上がるでしょうね。そして貴方もよ、ダイスケ。」

 

「……やっぱり?」

 

ついに来るべきものが来た、と観念するダイスケ。それもそうだ、自身に宿っていた力は本来は空想の中の存在。それも覚醒したばかりでコカビエルと互角以上に戦え、かつて大暴れしたらしい内容の話もあった。これらを鑑みれば封印される前のドライグやアルビオン並の危険性があることは間違いない。

 

「それでその場に私たちも招待されたわ。事件に関わってしまったことだし、その報告もしなければならないから。当人達も含めて話し合いたいこともあるのでしょうね。」

 

「マジっすか!?」

 

驚いたのはイッセーだけではない。全員が驚いた。日本人で言えばG8のサミットに一般人がいきなり首相と同席しろと言われているようなものなのだから。

 

「そして勿論、彼女たちも当事者だから来るわよ。―――入ってきて。」

 

バァン!

 

リアスの一言を合図に扉が勢いよく開かれ、何者かがとんでもない勢いで入ってくる。

 

「ダァァァアリィィィィィィィィン!!!!」

 

さながらミサイルが発射されたが如くダイスケに勢いのまま飛びつくのはエリザベスだ。あとに続くマリアはまるでなにか抑えきれない感情を必死に抑えるようにドアを閉めて入ってくる。

 

「おわっ!いきなり抱きつくな!!」

 

「いいじゃん、減るもんじゃなシー!」

 

言いながら全身でダイスケを抱きしめるエリザベス。その表情はまさにご満悦といった感じだが、それを快く思わないマリアが引き剥がしにかかる。

 

「お姉さま、人が見ていますから!っていうかあなたも少しは恥ずかしがるなりして拒否してくださいよ!!」

 

間に割って入ったマリアは力ずくで二人を引き剥がし、その出来た空間に割って入ってダイスケを威嚇している。その一連の動作はまるで猛獣から我が子を守る野生動物を思わせるほど必死だ。

 

「……マリー、最近ダーリンに対して態度がキツくなってない?」

 

「事情が変わったんです!」

 

完全に喧嘩腰のマリアを取り敢えず無視することにしたダイスケだが、あることに気づく。彼女たちの格好がいつも見る私服姿ではなく、ゼノヴィアと同じように駒王学園の制服を着ているのだ。

 

「おお、お前達も転入するのか!」

 

エリザベスたちが自分と同じであることに気づいたゼノヴィアが喜びの声を上げる。

 

「yes!これからヨロシクネ!!」

 

同じ転入生どうしでガッチリと握手するエリザベスだが、ダイスケにはあることが引っかかっていた。

 

「お前、向こうの大学はどうしたの……?」

 

そう、彼女たちはあまり飛び級に積極的ではないとされているイギリスで飛び級を果たして大学に在籍しているはずだ。卒業したなどとは一切話していないので、まだ彼女たちは向こうの大学に籍を置いているはずである。

 

「んー、それなんだけど……辞めてきちゃった。」

 

『……えええええええええええええええええ!?』

 

出会って既に数日が立ち、ダイスケからある程度の彼女たちの事情を聞いていたオカ研のメンバーのほとんどが一斉に驚いた。日本に滞在するのならせいぜい休学だろうと思っていたのだが、大方の予想を裏切って大胆な決断をしたものである。

 

「まあ、元々本当に行きたくて行ったわけじゃないし、ダーリンをオトすにはこっちに入学したほうがいいっていう表向きの理由があるからネ。」

 

「うぅ……だからと言ってこれはやりすぎです……。せっかくのお姉さまの経歴に傷が……。」

 

ヨヨヨ、と泣き崩れるのはマリアだ。一般的に考えれば飛び級をして大学に入れば一般社会においてはステータスになるものだが、これでは自分で泥を塗ったようなものだ。だが、それでもやらなければならないことがエリザベスにはある。それを為すためにはこれくらいの傷は彼女は傷だとは思っていない。

 

「まあ、こっちとしてもダイスケに続いて眷属以外の戦力強化につながるからありがたいわ。勿論、それ相応の御礼もさせてもらうし、例の件もしっかり考慮させてもらうわ。」

 

「すげーや、半奴隷状態の俺とは大違い。」

 

こればかりは過去の自分の過失が原因であるため何とも言えない。本当に弱みがあるのとないのとでは人間の扱いというものはこうも変わるのだ。

そんな中、ゼノヴィアの視線がアーシアに移る。

 

「そうだ、やらねばならないことが一つあった。……アーシア・アルジェント、キミに謝らせてほしい。主がいないのなら、愛も救いもないのは当然だった。それなのに、わたしは……。本当にすまなかった。気が済むのなら、私をいくらでも殴ってくれて構わない。」

 

ゼノヴィアは深く頭を下げる。

変わっていない表情なのでわからないが、その心は態度で本物だとわかる。

 

「……頭を上げてください。私は今この時のなかで、皆さんと一緒にいられるだけで幸せなんです。だから、それでいいんです。」

 

そう言って、アーシアはゼノヴィアの手を取る。

ゼノヴィアが恐る恐る顔を上げた先には、アーシアの聖母のような笑顔があった。神の存在を否定されたとき、彼女は精神の均衡が危うかった。イッセーとリアスのフォローにより何とか取り留めたものの、未だに辛いものがあるだろう。

ゼノヴィアも、本部に連絡を取ったときは異端者扱いをされた。その時にようやくアーシアがどういう心境だったのか理解できた。そのことを鑑みても、アーシアが受けた心の傷はゼノヴィア以上のものだったろう。その彼女が笑って許してくれたことで、逆にゼノヴィアの心が少し軽くなった。

 

「……ありがとう、アーシア・アルジェント。」

 

その感謝の言葉とともに、ゼノヴィアはアーシアに笑顔で返す。

 

「wow!なんだか丸く収まったみたいで良かったデスネ!いっそのことこのまま懇親会に突入しまショウ!」

 

「あら、いいですわね。でもどうせなら豪勢に行きません?ケーキやお菓子を買ってきて、私自慢の紅茶を振る舞いますわ。」

 

「朱乃サン、気が合うネ!ならこっちもイギリス持込のtea_technicを披露するヨ!!」

 

紅茶党同志で意気投合した二人がノっているのを見て、リアスは「やれやれ」といった感じで承諾する。

 

「まあ、今から会議のことをどうこう悩むこともないし……じゃあ、今日のオカルト研究部の活動内容は祐斗の禁手祝いと新人の歓迎会よ!朱乃、買い出し部隊の指揮を任せるわ!」

 

「了解です、部長。」

 

すぐさま木場と小猫が使えしうなテーブル類を探しに出て行き、、朱乃がイッセーたちを引き連れて出かける準備をする。そうやって準備に動く中、一人だけ動いていない人物がいた。

ダイスケである。

 

「あれ?ダーリン、一緒に買い出しに行かないノ?」

 

既に一緒に出かけるつもりだったエリザベスが尋ねる。

 

「いや、あとでついて行くから先に行っててくれ。部長に話があるから。」

 

「ふーん……まいっか、必ず来てネ!」

 

そう言ってエリザベスはどんな茶葉を買うか朱乃と相談しながら部室を出ていく。それに連れ立ってイッセーたちも出て行ったので、部室にはリアスとダイスケだけが残っている。

 

「―――部長、前から話していたエリザベス達の事なんですが……。」

 

「ええ、わかってるわ。彼女たちの名を上げさせて、ご両親を再会させることでしょう?」

 

今日に至るまでのあいだ、ダイスケは時間が許す限りを使ってずっとこの件でリアスに相談していた。彼女に力を貸すといった以上、願いは叶えてやりたい。そのために自分が知る限り最も権力というものに近いのはリアスだ。

 

「先日の一件では本当に助けられたし、そのことに関しては私もお兄様も感謝しているわ。お兄様の眷属には彼女が所属する“黄金の夜明け団”の団長がいるし、そっちの方からもアプローチできると思う。」

 

「じゃあ、なんとかできるんですね。」

 

「ええ。二人に直接感謝したいとも言っていたし、貴方にもコカビエル撃退の一役を担ってくれたことも喜んでいたわ。この分だと貴方の下っ端生活もチャラにできそうでよかったじゃない。」

 

これまで長きやってきていた下っ端生活は元々は先にも述べたようにダイスケ自身の不徳の致すところだ。それが今回の一件でチャラにできるのであれば、随分と痛い思いをした元を取れそうだ。だが―――

 

「……部長。それなんですけど、俺に関しては何もなくていいんで、エリザベスたちの報酬をでかくしてやってください。」

 

ダイスケは自身の待遇改善は望んでいなかった。

 

「どうして?あなた随分愚痴ってたじゃない。」

 

リアスの言うとおり、今まで随分とダイスケはイッセーのサポートに付き合わされたり、虐待とも言えるお仕置きを散々受け続けてきた。お仕置き云々は自業自得だから致し方なしとして、小間使い同然のタダ働きが無くなるのはダイスケにとってメリット以外の何者でもない。

なのに今回の手柄が必要ないということは―――

 

「まさか貴方、真性のマz「なんでだぁぁぁぁぁ!?」え、違うの?」

 

「そういうことじゃなくて……。」

 

予想斜め上のリアスの反応のせいで若干頭が痛くなってきたが、なんとか持ち直してダイスケはその理由を話す。

 

「なんていうか……あの時ほとんど何も考えてなかったし、それに……。」

 

「それに?」

 

「誰かに褒められるのって、ガラじゃないんです。」

 

本当はエリザベスの望みが叶えられる方を優先したいと言いたいところだった。だが、こんなことを言ってしまえば何を言われるかわからない。せいぜい茶化されて終わりだ。

 

「……わかったわ、そういうことにしておきましょう。さぁ、この話はこれで終わり。早くいってらっしゃい。私も祐斗たちの手伝いをしに行かなきゃだし。」

 

「りょーかいです。」

 

そう言ってダイスケは踵を返し、先に行ったエリザベスたちに追いつくべく走り出す。まるでリアスに本心を見透かされていたようで、少し気恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファイナルクロォォォォォォオス!ファァァァァアアァァァァイト!」

 

カラオケの一室。ダイスケのとんでもない声量で奏でられた歌声が狭い個室にガンガン響く。

 

「相変わらず声量スゲェ!」

 

「つーか、なんでこいつパチンコの曲知ってるの!?打ったこともないのに!!」

 

聞きなれている松田と元浜、そしてイッセーと桐生はダイスケが歌う場合に備えて耳栓を持ってきている。いつもつるむメンバーはこのように慣れており、アーシアと木場、そして小猫も事前にイッセーから耳栓を渡されているいるので問題はない。それどころか小猫は平然とした顔で「ふむ、こういうところで食べるものはインスタントと相場は決まっていますがこれはこれで」などと言いながら目の前の料理をぱくついてる。

だが、そういう前情報無しに付いて来てしまいエライ目にあっている人物が一人。

 

「ひぇぇぇぇぇえええええ!!何なんですか、この声量!この前鍋一つ潰した報復ですか!?」

 

マリアだった。

最初はダイスケに付いて行くと言って飛び入りで参加したエリザベスにさらに付いて来た形で参加したのだが、ボウリングのあとに入ったこのカラオケボックスでまさかのダイスケの歌声にすっかりヤられているのである。姉の方はどうかと見れば、

 

「yhaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

といった具合で歌に合わせてマラカスを振る余裕があるようだ。それ以上になれている榛名はこの大音声の中、全く動じる様子も無く料理の追加注文までこなしている。

そんな中、そそくさとイッセーが部屋を抜け出そうとしていた。

 

「おや、イッセーの股間の様子が……なに?個室だからなんかエロいことでも想像した?鼻血出てるし。」

 

「……なにかエッチなことを考えていたのは間違いないですね。」

 

桐生と小猫が目ざとくそれを見つけ、さらにアーシアまでもが不機嫌そうに、

 

「さっき、部長さんからのメール見てましたよね?……部長さんのことを考えていたんですか?」

 

と言ってくる。

 

「いやいやいや、なんでもないって!ちょっとトイレ行ってくるだけだから!!」

 

そう言ってイッセーは鼻を抑えて脱出する。完全に図星であった。

その理由は今この場にいないリアスから送られてきた「この水着どう?」という内容のメールである。ご丁寧に脱いだ服が一緒に映るように選んだ水着の写真を撮っているのと、これからの夏のムフフな出来事に想像と鼻の中の血管が膨らんで破裂してしまった。

トイレに駆け込んだあと洗面台の蛇口を思いっきり開き、鼻血を濯ぎ落とし、部屋に戻る途中の休憩所で木場が待っていた。

 

「おう、どうした?」

 

「うん、ダイスケくんの歌声に聴き疲れちゃって。」

 

「あー、わかるわ。なんか聞いてるだけで体力奪われるよな。前にマイクぶっ壊したこともあるからまだ抑えてる方だけど。」

 

ふぅ、というため息のあと、会話が途絶えてしまい壁越しに聞こえるダイスケの歌声だけが響く。よくよく考えれば、この組み合わせで二人きりというのが今まで滅多になかった。以前の合宿では同室だったが、あの時は鍛錬で疲れていたのとお互いに心を開いていなかったのでこの組み合わせで雑談らしい雑談はしたことがなかった。

そういった事情もあってしばらくの間お互いに黙っていたが、木場が会話の口火を切る。

 

「……イッセー君、ほんとうにありがとう。」

 

「なんだよ、藪から棒に。」

 

「いや、ちゃんとお礼を言ってなかったからね。」

 

少々気恥ずかしそうに言う木場に、イッセーは笑いかけながら答える。

 

「いいって。お前の同志たちだって、言い方はなんだけど成仏できた。部長もみんなもこれでよかったって思ってる。だから―――いいんだよ。」

 

「……イッセーくん。」

 

すべてが赦され、報われた喜びで木場の瞳が潤む。その瞳に思わず学園で流された木場との疑惑話を意識してしまったイッセーは、若干背中に悪寒が走っていた。

 

「や、やめろよ、そういう目で見るの!!!」

 

「だ、ダメかな……?」

 

「そういうところ、マジで他人が観てるところではしてくれるなよ……まあいいや。さあ、戻って兵士と騎士のデュエットと洒落こもうぜ。ダイスケからマイクを奪ってな!」

 

「ははは、お手柔らかにね……。」

 

その後、男子たちの壮絶なマイク争いのドサクサに紛れて桐生が撮った「イッセーと木場が一緒にいるところに嫉妬したダイスケが割り込みに入る」というように巧みに撮影された写真を巡りひと騒動が起こるが……おそらくこれを語る機会は永遠にないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムガール様、奴の姿が見えませんが。」

 

「ああ、やつなら今は外だ。許可は出してあるし、監視もつけているから心配はない。」

 

「……やはり、地球人をベースにしたのはまずかったでしょうか。いくら地球の生命の遺伝子でないと機能しないから仕方ないとは言えども、このままでは地球側に帰属心を持つのでは?」

 

「なに、精神安定剤代わりに散歩をさせているだけだ。マインドリセットさえすれば確実にこちらの命令を聞くようにはしてある。」

 

「ですが十分な不安材料です。早急に我々でもあの力を扱える研究を進めなければなりません。」

 

「それはもちろん任せる。だが、その前に……我らの力を地球人共にお披露目としようではないか。もうひとつの彼らへの手土産と共にな。」

 




というわけで、次回からようやくオリジナルのライバルキャラを出せそうです。
それと、また古いアメリカの特撮映画からゲストが出ます。多分、マイナーすぎて「なにこれ、ホントにあるの?」となってしまうでしょうが。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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