ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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前回のあとがきに「今章のゲスト怪獣は次回でやっと出てきます」と書きましたが、またまた文字数制限マイルールにより出番が後回しになります。
また、遅くなりましたが今回熊本地震において被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。


VS28  会議のプレゼンって死ぬほど緊張する

時計の針が頂点を指した休日の駒王学園。普段は人っ子一人いないはずだが、今日は事情が違っていた。

 

「失礼します。」

 

ノックした後にリアスはそう言って、会場の扉を開ける。会場になっているのは学園の新校舎にある職員会議室。普段は生徒の進路などを話し合う場が、今後の世界の行く末を語る場となるのだ。

だが流石に普段と同じ内装ではない。今日の為にとリアスとソーナのそれぞれの実家の力を使って特別に用意させたという豪華な調度品で部屋は埋め尽くされている。中央を占める大きなテーブルには幾人かの見知った人物が座っており、静寂でありながら張りつめた空気が漂っている。

イッセーもアーシアもあまりの緊張感にごくりと唾を呑む。そしてダイスケはと見ると、壁に掛けられた絵画を見て「これは……シャガールだねぇ。」と緊張を紛らわすために適当なことを言っている。因みに後で聞くところによると、これは実際はミレーのものだった。

 

「私の妹とその眷属、そして協力者たちだ。眷属の一人は諸事情でここに来れないが、ご容赦願いたい。」

 

サーゼクスが立ち上がり、テーブルにすでについている面々に自分の妹とその仲間を紹介する。そしてサーゼクスは眷属のうち一人はここにはいないと説明したが、それはギャスパーのことだ。封印解除の許しは出たものの能力を制御できないのであれば、ということでリアス自らが部室での留守番を命じていたのだ。

 

「先日のコカビエル襲撃の際に活躍してくれたのは彼女たちだ。」

 

兄に紹介されたのち、リアスはお歴々に向けて会釈する。すると、一人の青年が立ち上がった。

 

「ええ、報告は受けています。いま、改めてお礼申し上げます。」

 

その青年の背中には金色の翼が生えており、頭上には金色の輪が浮かんでいる。彼は天使なのだろうがダイスケは今まで悪魔と堕天使にあったことはあっても純粋な天使は初めて見るので誰だかわからない。

 

「そういえばこの中には初めてお会いする方もいらっしゃいましたね。初めまして、わたくしは燭天使の一柱と天使の長を兼任しているミカエルと申します。以後お見知りおきを。」

 

爽やかでありながら、どこか荘厳さを湛えるその笑顔。美しくもあり、力強さを兼ね備えたその立ち姿はまさに天駆ける神の使い達の長の雰囲気が満点だった……がダイスケが抱いた印象は全く違っていた。

 

「ああ、某マンガでデスメタルにハマってた人!」

 

「……最近の下界における私ってそういう扱いなのですか。」

 

若干がっくりとしたミカエルが座ると同時に、それぞれ席に座るように勧められる。ダイスケが座るすぐ横にエリザベスが椅子をくっつくようとしたり、あろうことか小猫までもが人の目も気にせずにダイスケの膝の上に座ろうとしてきたりしたが、どちらも無言で引き剥がした。

 

「それじゃあ一応全員そろったってことでいいのか、サーゼクスにミカエル?」

 

以前姿を現した時の浴衣姿と違って堕天使の正装でいるアザゼルの問いに、やはりリアスの婚約発表の時と同じ衣装のザーゼクスが首肯する。

 

「こちら側はまだ全員というわけではないのですが、後々こちらに来る手筈にはなっています。ですからお気になさらずに……。」

 

「そうか、ミカエル。じゃあ始めるとするか。とりあえずここにいる連中全員は最重要禁則事項である『神の不在』について知っているってことで始めていいんだな?じゃあ、まずコカビエルの件だが……うちのバカが迷惑かけた。すまんかったな。」

 

といいつつも謝罪するアザゼルの顔は態度同様に全く悪びれてはいない。その不真面目ぶりにリアスは口元を引くつかせていたが、ミカエルとサーゼクスは慣れているのか全く気に留めていない。

そしてこのアザゼルの人を煙に巻くかのような態度はまだまだ続く。自分の身内の不始末についてしれっと謝っただけで済ませたのはまだいい方だ。ミカエルとサーゼクスがお互いにぶつかりあって滅びの道を辿りたくはない、という話に至った時など、

 

「まあ、ウチはそこまでその道には拘ってないんだけどな。」

 

と言い放って三陣営の席の空気が凍りつかせたりもしていた。顔には出していないが天使長も魔王も内心「真剣な場でふざけるのも大概にしろ」と思っていることだろう、ふたりは全く目が笑っていなかった。

だが、トップにこんな空気を作られては下の者が迷惑だ。流石のダイスケもミカエルとサーゼクスの目が笑っていない笑顔を見て、給仕係としているグレイフィアが淹れた紅茶を零しそうになった。だが、途中途中で場の空気が凍っても会議の内容は順調に進んで行っている。

 

「さて、リアス・グレモリー。そろそろ先日の事件について話してもらおうかな。」

 

「はい、ルシファー様。」

 

そしてついに自分達が関わった事件の内容についてのリアスによる報告が始まった。リアスが語った内容の事件の一部始終の中には当然ながらダイスケがゼノヴィアとイリナを買収した上で恐喝したことについてもしっかり語られていた。

あらためて他人の口からから自分がしたことを聞かされた周りの反応が恐ろしくなるダイスケは、その話の部分では終始両耳を手で閉じていた。当然ながらその話を初めて聞いたものは全員引いていた。特にその場にいた女性陣の引きっぷりは凄まじく、特にセラフォルーなどは

 

「あの子、番組の悪役のモデルにしようかと思ったけど、流石にエグすぎねー☆」

 

と好きなことをいっていた。そもそも番組ってなんだ、というダイスケの心の突込みすらミカエルの「エクソシスト達の教育を改めねば……」という呟きで削り取られている。

 

「もういい……もういいだろっ……!」

 

三陣営から要注意人物としてマークされたダイスケは、ついに心が折れて未確認生命体とパワードスーツで戦う警察官みたいなセリフを吐いて机に突っ伏す。だが、捨てる神あれば拾う神あり。

 

「ウン、張り切りすぎて周りがよく見えてなかっただけなんだよネ。私はちゃんと理解してるヨ。」

 

そう言いながらダイスケの頭を優しくなでるのはエリザベスだ。正直な話、この時ダイスケは本気で彼女に惚れそうになった。さらにその横ではマリアが会議の最中なので妨害できない悔しさで憤怒の表情を浮かべていたが、触らぬ神に祟りなしととりあえず無視する。

 

「――以上が私、リアス・グレモリーとその眷属が関与した事件の顛末の報告です。」

 

「ご苦労、座ってくれたまえ。さて、アザゼル。この報告を受けたうえで、堕天使総督としての君の意見を聞きたい。」

 

リアスの報告を受け、サーゼクスからの問いかけを投げかけられた不敵な堕天使総督に全員の視線が集まる。

 

「先日の事件は我が堕天使中枢組織『神の子を見張る者《グリゴリ》』の幹部コカビエルが、他の幹部及び総督である俺にも黙って単独で起こしたものだ。そして奴の処理はウチの白龍皇がおこなった。その後、組織の軍法会議でコカビエルの刑は執行された。『地獄の最下層《コキュートス》』で永久冷凍の刑だ。もう二度と出てこられねぇよ。」

 

立場ある者の会議中の発言とはとても思えないアザゼルの返答に、ミカエルは嘆息を吐きながら辟易している。

 

「説明としてはまさに見本にしてはいけない最悪の部類ですが……組織としてはどうであれ、あなた個人としては我々と事を起こすつもりはないという話は聞いています。それは真実なのですよね?」

 

「ああ、俺は戦争になんざ興味は無い。コカビエルの奴も俺のことを散々こき下ろしていたってのは悪魔側の報告にもあっただろう。」

 

それが事実であることはその場にいたリアスたちも知っている。かつての争いの決着に興味がなく、神が残した遺物―――神器にしか食指が動かない男だと。

しかし、サーゼクスはまだアザゼルのその意思が本当かどうか確信が持てない。

 

「アザゼル、ひとつ聞きたいのだが、どうして神器の所有者をかき集めている?戦力を増強して、天界か我々に戦争をけしかけるのではないかとも予想していたのだが……。」

 

「そう、いつまで経ってもあなたは戦争をしかけてはこなかった。『刃狗《スラッシュ・ドッグ》』に加えて『白い龍《アルビオン》』まで傘下に入れたと聞いたときには、それはそれは強い警戒心を抱いたものです。」

 

「おうおう、かつては共に神の使いとして駆けずり回ったってのに、ミカエルまで俺のことをそこまで警戒してたのかよ?」

 

「当然。あなたは“堕ちて”いるのですから、信用も地に堕ちています。」

 

「なんだよ、旧魔王や先代ルシファーよかマシだと思ってたのに、俺の信用度は三大勢力中最低か?」

 

「その通りだ、アザゼル。」

 

「その通りよ☆アザゼル。」

 

「信頼されているとでも思ってるんですか。神が「光あれ」といった瞬間から人生をやり直しなさい、アザゼル。」

 

三者三様の辛辣な言葉に、傲岸不遜で通してきたアザゼルも苦笑する。

 

「俺が『白い龍』を引き込んだのは神器研究の為さ。まぁそれだけっていうわけじゃあないんだが……何なら研究成果の一部をお前らに開示したっていいんだぞ?つーか、研究してるから即戦争っていうのでもないだろう。俺はそんなもんに興味は無いし、宗教内のことも、人間界の政治にも手を出すつもりはない。俺はこれでも今の世界に満足しているんだ。第一、神器を集めているっていうんならミカエルのとこも一緒だろうに。」

 

「彼らは私が命じて集められたのではありません。身内の一人がたまたまそうで、似た力を持つ仲間を探しているうちにチームが出来上がっていました。私はそれを世界の安定につながるのなら、と認めたまでのことですよ。たとえ彼らが通常の神器とは違う、怪獣をその身に宿す者達であってもです。」

 

「ほほぉ、天使長さまは随分と寛大になったんじゃねぇの。俺だって怪獣持ちの奴にはなるべく近づかないで研究してたってのに。昔ならそれだけで断罪してそうなもんだぜ。」

 

「……時代が変われば考えも変わります。貴方ほど変容するつもりはありませんが。」

 

「すまない、どうやらそちらだけで話が進んでいるようだが、私たちには話が見えてこないのだ。君たちはこの世界における古参の部類だから解るのだろうが、比較的新しい世代の私たちにもわかるように説明してくれないか?」

 

サーゼクスの言うとおり、燭天使《セラフ》であるミカエルとグリゴリの総統であるアザゼルは非常に古い存在だ。しかし、サーゼクスもセラフォルーも悪魔のトップである魔王ではあるが彼らほど古い存在ではない。よって、世代の差によってどうしても知る情報の格差が出来上がってしまうのだ。

それに気づいたミカエルとアザゼルはお互いに目配せしあう。

 

「そうだな、どうせ今日の会談でも話そうと思っていたことだ。今話してもいいよな、ミカエル。」

 

「本当ならまだ来ていない者達にもここで聞いて貰いたかったのですが、致し方ありません。彼らには私から話しておきましょう。」

 

「わかった……これから話す事は、『神の不在』とは異なり各組織のトップしか知らないという類のものじゃあない。だが俺たちの世代は誰もが口のするのを憚ってしまう、だからこれまで表沙汰にされなかったっていう話だ。」

 

それは、『神の子を見張るもの《グリゴリ》』のメンバーがまだ誰も堕天しておらず、神々と人の世界が地続きだった頃にまで遡る。

まさに突然。

青天の霹靂。

一頭の黒い怪物がこの世に現れた。

どこから来たかもわからない。どうして来たかもわからない。

ただ一頭の怪物ならば何も恐れることはない。その時はただの人ですら人知を超えた怪物を斃すことができた時代だ。神々の中にはそれこそ一撃で刃向うものを悉く滅ぼす力を持つ者だっていた。その黒い怪物よりも巨大な体を持ち、圧倒出来る力を持つ神獣や魔獣も存在していた。

しかし、彼の黒い怪物はそういった本来己を超えるはずの存在達を悉くなぎ倒していってしまったのだ。どれだけ猛々しい英雄も、どれだけ神々しき神々も、どれだけ荒々しい怪物たちも、である。

その最大の原因は誰もがすぐに理解できた。

彼の黒い獣は常に『怒り』を抱いていたのだ。

怒れるからこそ、いかに強大な力を持つ者を相手にしても立ち向かっていく。体に大穴を開けられても、神すら殺す猛毒を受けてもただ怒りのみで立ち上がり、戦い続けた。故に現実を超えていたはずの神話の存在達はその怪物を恐れた。

だが彼らの不幸はそれだけではなかった。その怪物の登場に惹かれるかのように、地下や深い海の底に眠っていた獣達が一斉に姿を現したのだ。

獣たちは神話の生物とは違い、明確な知性や神通力や奇跡のような超自然的な力と呼べるものは持ち合わせていなかった。だが、それでもその巨体と力は充分過ぎるほど世界の脅威となる「怪しき獣」、すなわち『怪獣』だった。そして何より恐ろしかったのが、そのほとんどの怪獣たちが最も力がある始まりの黒い怪獣に付き従った事だ。

それ故に黒い獣は『黒い獣の王』、若しくは『怪獣王』と呼称されるようになった。

最初の内は黒い怪獣にだけ注意していればよかったが、それに呼応して暴れる他の怪獣にも注意を払わなければならなくなりどこの神話体系もパニックに陥ったのだ。

もちろん、すべての怪獣が黒い怪獣に付き従ったわけではない。もとよりその力を地球の平和のために振るおうとする怪獣や、文明を守るために存在する怪獣、そして世界の均衡を守ろうとした怪獣達は神々に力を貸した。

そうしていくうちに徐々に暴れる怪獣達は数を減らし、ついには始まりの黒い怪獣だけが残った。そして、その最後の黒い怪獣を斃すために、ついに今は亡き聖書の神が重い腰を上げたのである。

 

「結果的には、俺たちは勝った。だがどうも腑に落ちない点があったんだよ。」

 

アザゼルが言うその一点とは、聖書の神が最後にした行動である。

黒い獣を抑えるとき、どうしてもその強すぎる怒りの思念がじゃまとなってすべてを抑えきれないとして各神話のほとんどの最高位の神々が力を終結させたのだが、その中心に聖書の神が居座ったのだ。

そもそも、聖書の神は『全知全能』だ。強すぎるとは言ってもたった一頭の怪物を抑えるのは訳がないはず。それでもなお、聖書の神は各神話の神々や協力する怪獣達の力を借りてその脅威を払った。

不審に思えるのはそれだけではない。本来ならそこまでの力を行使すればどのような存在でも塵どころか後の世に影響を全く残さぬほどにこの世から消滅する。アザゼルも最初は神はそうしたのだと思った。だが、先に消えたはずの怪獣達の気配は騒動が終結した後も世界に残り、そして神代の時代に現れたはずの彼の黒い獣が人間たちの意識の中に微かながら存在していたのである。

そして1954年11月3日。アザゼルが堕天した遥か後に、一本の映画が封切られた。

『ゴジラ』である。

 

「最初は驚きましたよ。あの時関わった誰かが人間たちにリークしたのではないかとね。出てくる怪獣のほとんどはゴジラをはじめとして見覚えがある顔でしたから。」

 

しかしミカエルが言うような事実は全くなく、ただの創作物であるという結論にすぐに至った。結局、実際の水爆実験が切っ掛けとなって人間の遺伝子レベルで記憶された情報があのような形で現れたのだろうという見解に落ち着いているのが現状である。

 

「それでも、神が行った仕事が当時の理想でいうところの“完璧”じゃなかったって言うのはデカかった。だから俺は騒動のすぐ後から徐々に神を信じられなくなって、止めに女を抱いて堕ちちまったよ。」

 

「そこまで怪獣王のせいにすると流石に冤罪というものですよ、アザゼル。」

 

「まあ、それ置いていてだ。俺は三つ巴の戦争が終わった後、神器の研究の傍ら黒い獣……ゴジラをはじめとした力ある怪獣達がどこへ行ったのか必死で探した。そしてどうやら神器のように封印されて……俺は『獣具《リスキー・エレメント》』って呼んでるが、人間界の中を転々としている事は掴めた。だが、白龍皇や赤龍帝みたいにどこに行ったか特定できないんだ。三百年ほど姿を現さないかと思ったらひょこり出てきたりしてつかみどころがない。しかも肝心のゴジラはどこにも見つからないときたモンだ。」

 

「ということは彼は……。」

 

「ああ、そうだぜサーゼクス。そこにぼけっとした顔で座っている宝田大助は、確認される中で歴史上唯一のゴジラを宿した獣具を使った人間だよ。」

 

「……はひ?」

 

想像の遥か斜め上の話についていけずに脳内がオーバーロードしていたダイスケが間抜けな反応をする。まさか今の話でいきなり自分に話が飛ぶとは考えていなかったのだ。

 

「おいおい、頼むぜ。お前は今回の重要議題の内の一つなんだから。」

 

「いやいやいやいや、いくらなんでも話がぶっ飛びすぎだろ、この不良中年天使!ちょっと待て、どこから突っ込めばいいんだ!?」

 

これでもダイスケがサブカルチャーに興味を抱いた第一歩はゴジラだ。たまたま昔死んだ父が録画していた最初のゴジラを幼稚園の時に見てからずっと、それこそビデオが擦り切れるまで全シリーズを見てきた。

だから幼いころから見てきた映画の中の存在が実在すると言われてもどこか納得できなかった。レイナーレが連れてきたカマキラスすら「非常に大きいカマキリだからそう名付けたのだろう」とある意味現実逃避をしていた。

 

「な、なあ、アザゼルさんよ。じゃあ俺が今まで見てきた映画とかの方はどういう位置づけになるの?他の怪獣達も実在することになるんでしょ?」

 

「そうだな……これは俺の個人的考えだが、そういった類のものは『ありえた未来』なんじゃないかと考えている。もし本当に1954年3月1日のキャッスル作戦でゴジラが生まれたのならな。」

 

「そうじゃない場合……って言うのは考えられないだろ。」

 

「知ってるか?原爆の父と呼ばれたロバート・オッペンハイマーはある記者の「果たしてアラモゴードでの原爆実験が本当に世界初なのか?」 という質問に対して「ああ、近現代においては初めてだろう」なんて意味深なことを言ってるんだぜ?俺らの知らない間に核爆発に準ずることが起きていてもおかしくないさ。どこから来たのか定かじゃないんだから。ただ、可能性として最も高いのは『1954年に誕生したゴジラは何者かによってタイムスリップさせられた』ってことかな。時間に干渉する技術なら悪魔のとこにも一人いるだろう。ありえない話じゃない。」

 

それが事実なら、その時間的干渉が行われなければテレビやスクリーンの向こうの惨劇が実際に起きていたという事である。それを考えると嫌でもダイスケの背筋は凍りついてしまう。

 

「いずれにしろ、現代にゴジラは再び現れ、めったに姿を現さないという獣具を宿した者もすでに数名がまとめてミカエルの下に集っている。何か大きな時代のうねりに引き寄せられた、と考えるべきだろうか。」

 

そのサーゼクスの言葉が真実なら、それはまさにこの世界に大きな危機が迫っていることになるのだろうか。ダイスケはイッセーがドライグに問いかけるときのように己の中のゴジラに問うが、何の返事も無かった。

ただ、これが初めてというわけではない。ダイスケは自分の身に宿るものの正体を確かめる為にすでに何度かコミニュケーションを図っていたが、ようやく反応があったのはリドサウルスを倒す為に熱線を剣の形に固めた時なのだ。

 

「その可能性も十分にあり得るな。俺も独自のルートでおかしい動きをしている奴らの存在を感知しているし……だからさ、それに対抗するためにも和平でいいだろ?」

 

「え、そんなあっさり……?」

 

そのイッセーの小さな呟きは、おそらく各組織のトップの下についているこの場にいる者すべての心の代弁だ。イッセーの隣のリアスも、さらにその隣のソーナも相当驚いている。なにせ油断のできない上に何をたくらんでいるかわからない人物と思っていたアザゼルが、あっさりとこれまで敵対してきた相手と手を組もうとしているのだから。

 

「私も元々悪魔側とグリゴリに和平を持ちかける予定でした。このままこれ以上敵対関係を続けていても、害にしかならない。天使の長である私が言うのは本来憚られるべきことなのでしょうが……戦争の大本である神と魔王は消滅したのですからね。」

 

「ハッ! 堅物ミカエルさまが言うようになったね。あれほど神、神、神の神至上主義だったのにな。」

 

「……失ったものは大きい。ですが、いないものをいつまでも求めても仕方がありません。迷える子羊であるか弱き人間たちを導くのが我らの使命。神の子らをこれからも見守り、先導していくことこそ最優先だ、と私たちセラフのメンバーの意見も一致しています。」

 

「おいおい、今の発言は『堕ちる』ぜ? ……と思ったが、『システム』はおまえが受け継いだんだったな。いい世界になったもんだ。俺らが『堕ちた』頃とはまるで違う。」

 

天使と堕天使の長の意見は同じであった。そして注目を一身に集める魔王が表明する。

 

「我ら悪魔も同じだ。魔王なくとも種を存続するため、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我らも望むべきものではない。そう、次の戦争が起きれば悪魔は必ず滅ぶ。」

 

各代表の意志はこれで明言され、確定された。

そのあとは話がとんとん拍子に進んでいく。まるで最初からこうなる予定であったかのように。だが、結局のところどこも疲れていたのだ。

一度始めた争いはどこかで決着を付けなければならないが、先に自分が辞めようとしたら相手はそこに付け込んでくる。だから第一次世界大戦も第二次世界大戦もは泥沼化し、総力戦になった。現代においてはそうなることはもうないといわれているが、結局のところ一度始まった争いのほとんどは完全な収束に至っていないのだ。

その点、この三大勢力の争いに関しては運が良かった。何せ各勢力のトップが共にリベラルだった。そうである事が至上という訳ではないが、落とし処が解っている者達だったからよかったのだ。

すでに今後の各陣営の対応だの、勢力図の変化ついてのこと等を粗方話し終え、

 

「―――と、こんなところだろうか。」

 

というサーゼクスの一言で一気に場の空気の緊張が緩む。一通りの話は終えたらしい。

そして今日より前にすでに位置でミカエルに会っていたというイッセーが、一度会ったときに取り付けた約束をミカエルが実行する形でミカエルに問い質す。

 

「なんでアーシアを追放したんですか?」

 

他の者からしたらなぜいまさらその話を?と思っただろうが、これはずっとイッセーの中で納得できずにいたことだった。だからあえて、そして二度と来ないであろう機会である今訊いたのだ。

彼女の人となりは非常によくできていて、誰よりも優しく敬虔な信徒だった。しかし、神にかまともに運用できなかったこの世界を支える『システム』は、燭天使四柱が扱うには荷が重かった。だからこそ、木場の『双覇の聖魔剣《ソード・オブ・ビトレイヤー》』のように混ざるはずの無い聖と魔が融合した神器が生まれたり、神が生み出したシステムであるのに『聖女の微笑み《トワイライト・ヒーリング》』が悪魔や堕天使を分け隔てなく癒したりしてしまう。

それが明るみになればただでさえ不安定な『システム』で成り立つこの世界は崩壊する。だから、多を生かすために小であるアーシアを切り捨てざるを得なかった。ほんの少しでも綻びを見せれば、必ず誰かがバルパーのように神の死という結論にたどりつき、世界人口の半分を占める聖書の神を信じる者たちの世界は崩壊し、人間社会は滅びるだろう。

だからミカエルは異端としてアーシアと神の死を知ったゼノヴィアを切り捨て、そして今ここで彼女たちに頭を下げた。彼女たちも彼女たちですでにこの件に関して追放されたからこそ今があると言って決着をつけていた。

だが、たとえここでこの件が落とし処を見つけたとはいっても看過できないことがある。

 

「俺のところの部下がそこの娘を騙して殺そうとしたらしいな。その報告も受けている。」

 

レイナーレの事だ。

あの一件はダイスケがしっちゃかめっちゃかにしたのが功を奏してアーシアの命が絶たれるという展開は回避できた。

 

「そう、アーシアは堕天使に殺されかけた!俺は実際に殺されたし、ダイスケまでもだ。それにゼノヴィアについてもコカビエルが暴走したのが原因みたいなものだろ!」

 

同じ悪魔であるリアスで考えれば、もともと彼女は堕天使に対していい印象は抱いていなかった。それは彼らが敵だと教わってきたからだ。だが、イッセーは違う。堕天使からの害悪を実際に受け、その結果親しいものは命を奪われかけた上に自分の生命も一度立たれた。あまつさえ、自分の初恋を自身の手で終わらせ、初恋の相手を殺す結果になった。

故に、イッセーの堕天使に対する悪感情は生粋の悪魔であるリアス以上になった。だが、アザゼルは決して謝らない。

 

「堕天使が将来害になるかもしれない神器所有者を殺すのは組織としては当然だ。俺も黙認している。神器ってのは感情や想い一つでとんでもない悪影響を世界に及ぼすかもしれないからな。」

 

「でもおかげで俺は悪魔だ。」

 

「悪魔になったことが不満か? 意図せずとはいえお前が選んだ選択は正しかったように見えるが?」

 

「それは……。」

 

結果論だ、と言いたくてもイッセーには言い出せなかった。

主として巡り合ったリアスは、ライザーという例を考えれば最高の主人だ。仲間にも恵まれていると思う。悪魔にならなければこんな出会いは絶対になかった。

それはアーシアやゼノヴィアと同じ。それでも納得できないのは彼女たちと違ってそれまで普通の人間だったからなのだろうか、やはりイッセーには納得できなかった。

 

「俺からすれば世界の安定の為にやったことだ。詫びの言葉は絶対に言わない。まあ、今更言ったとしても嫌味にしか聞こえないだろうからな。まあ何だ、その代りと言っちゃなんだが別の形で穴埋めはさせて貰う。」

 

「……別の形?」

 

アザゼルが意図するところが見えないが、イッセーが理解するより先に話が進んでいく。

 

「さて、そろそろ俺たち以外の世界に影響及ぼしそうな奴らへ意見を聞こうか。まずはヴァーリ、おまえは世界をどうしたい?」

 

「俺は強い奴と戦えればいいさ。」

 

即答だった。

出会ってまだ数回だが、もう彼がバトルジャンキーだという印象は覆らないだろう。ただ、ダイスケには不安があった。「強い奴と戦えればいい」というのは聞いた時にはそれで満足でそれ以上何も望まないのだという印象を与える。だがそれ以外に興味がなく、世の中がどうなろうが知ったことではないというようにも解釈できるのではないかと思うのだ。

 

「じゃあ、赤龍帝、おまえはどうだ?」

 

アザゼルは次にイッセーに問いかける。するとイッセーは頬をかきながら答えた。

 

「……正直よくわからないんです。なんか、小難しいことばかりで頭が混乱してます。ただでさえ今は後輩悪魔の面倒を見るのに必死なのに、世界がどうこう言われてもなんというか……実感がわきません。」

 

「だが、おまえは世界を動かすだけの力を秘めた者の一人だ。選択を決めないと俺を含め、各勢力の上に立っている奴らが動きづらくなるんだよ。」

 

と言われても、イッセーは困っていた。そこで、アザゼルは告げる。

 

「では恐ろしいほどに噛み砕いて説明してやろう。俺らが戦争をおっはじめたらお前も悪魔の重要戦力として表舞台に立つ必要が出てくる。そうなれば愛しのリアス・グレモリーを抱く暇なんかなくなるぞ。」

 

「――ッ!?」

 

「和平を結べば戦争する必要もなくなる。そうしたら重要になってくるは種の存続と繁栄、つまりセ○クスだだ。――それこそ毎日リアス・グレモリーとセック○しまくって子作りに励むことができるかもしれない。どうだ、わかりやすいだろう?さあ、○ックスなしの戦争とセッ○ス大歓迎の和平、どっちを選ぶ?」

 

と言われて、イッセーは即座に叫んだ。

 

「ぜひ、和平でひとつお願いします!ええ、平和いいですよね!平和が一番、最高です!部長とエッチしたいです、しまくりたいです!」

 

隣のリアスが顔を真っ赤にさせているのにも気づかずにイッセーは力説する。その兄のサーゼクスがいるのもお構いなしだ。もっともサーゼクス本人は若干苦笑するのみで全く怒っていない。つまり兄公認という事か。

 

「……イッセーくん、サーゼクス様がいらっしゃるのを忘れていないかい?」

 

木場がやれやれといった様子で小さく忠告してくると、ようやくイッセーは自分が何を言っているのか気が付いた。必死になってどう弁明しようか焦っているせいか、サーゼクスが怒るどころか愉快そうにしていることも見えていない。

 

「若いっていいねェ、己の欲望に素直でいいじゃねぇか。そういうのが一番信頼できるってモンだ。……さてと、怪獣王。先の話を聞いた上でお前さんはどうしたい?」

 

「……俺の神器、じゃなくて獣具が目覚めたのは堕天使の女が俺の家族や幼馴染まで手にかけようとしていたからだ。アーシアを助けようって思ったのだってイッセーが大切に想っている娘だったからだし、ゼノヴィア達にあんな詐欺まがいな脅しをかけたのも木場の無念が晴れてほしかったし、なによりゼノヴィア達にムカついてたからだ。だから……。」

 

関わってからほんの数か月しか経っていない世界のこと。それをあんな形とはいえはっきりと和平がいいという意思を表すことができたイッセーはすごいとダイスケは思う。自分はこの力で何を成すのか、今まで身にかかる火の粉を払うことしか考えずに力を行使してきたダイスケには考え辛いことだろう。

だが、話しながら心の中を整理していくことでようやく一筋の光明が見えてきた。

 

「まず、俺は和平そのものには賛成だ。そうすれば、俺の大切な人たちが混乱の中に巻き込まれるっていうこともないだろうから。でも、それを乱す奴がいるっていうんならどんな奴だろうが叩き潰す。俺の大切なものを壊そうとした奴には死んでも死にきれないくらいの後悔をしてもらう。俺が言えるのは……それぐらい、です。」

 

それが考えに考え抜いたダイスケの「やりたいこと」だった。我ながらよくも頭の悪い答えだと思う。ただ、これは間違いなくダイスケの本心だった。

 

「そこまではっきり言えるんなら上等上等。さて、聞きたいことは聞けたし、次はサーゼクスの方から出ていた議題でいいか?」

 

「それで頼む。先日のコカビエル襲撃の際に協力してくれたこちらのマサノ姉妹に関してだが―――」

 

だがサーゼクスの話の途中、彼らはある感覚に囚われる。その感覚の影響を受けた一人であるイッセーはなんなのかすぐにわかった。

それはもう感じることに慣れてしまった、ギャスパーが時間を止めた時の感覚だった。

 




今回の文字数を見てみると「12345」字になってて自分でもビビりました。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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