ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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やっと出ますよゲスト怪獣。
関係ないですが、艦これの春イベの後段作戦で沼っております。
ああ、そうか。おれはIOWAとは縁が無かったんだな……。


VS29  THEM!

「おっ、赤龍帝のお目覚めだ。」

 

イッセーが気がついて最初に聞いたのが、アザゼルのその一言だった。辺りを見渡すと、周囲の様子がやや慌ただしくなっていることに気づく。

見ればミカエルが窓から外の様子を確認し、サーゼクス達悪魔のトップ陣営も真剣な面持ちで何かの話をしている。

 

「な、何かあったんですか?」

 

さらに周囲を見渡せば、止まっている者とそうでない者がいることがわかる。

まず先に言ったとおり各陣営のトップ陣、そしてヴァーリは動いている。だが、アーシア、朱乃、小猫、ソーナ、エリザベス、マリアたちは停止していた。

 

「眷属の中で動けるのは私とイッセー、祐斗にゼノヴィア、それからダイスケだけのようね。」

 

リアスが動いている様子を確認し、ひとまずイッセーは安堵する。だが、イッセーには朱乃やソーナまでもが止まっているという事実に驚かざるをえない。

 

「ダイスケは言わずもがなとして、イッセーには赤龍帝、祐斗は禁手に至っている上にイレギュラーな聖魔剣を有しているから無事だったみたいね。ゼノヴィアはさしずめ時間停止の直前になってデュランダルを発動させた、といったところかしら。」

 

見れば、ゼノヴィアがデュランダルを普段仕舞っている空間のひずみに格納しているところだ。

 

「私はギャスパーの特訓中に何度も時間停止をくらっていたからな。その予兆の感覚は体で覚えた。直前にデュランダルを出せば防げるかもしれないと思ったんだが、うまくいってよかった。」

 

「お前は相変わらず本能で生きてるのな。」

 

「褒めるな、ダイスケ。そう簡単に私は靡かんぞ?」

 

「褒めてねぇよ、この脳筋。」

 

ゼノヴィアの野性っぷりにイッセーは驚くが、それよりも重要なことがある。なぜ自分たちは時間停止を食らったのか。そして、現在の状況がどういうものなのかということだ。

 

「なあダイスケ、何がどうなってるんだよ?っていうか、どうして時間が止まってるんだ?」

 

「外見りゃわかるよ。」

 

言われるがまま、イッセーは窓から外を覗こうとする。が、突然目の前に閃光が広がる。

 

「な、なんだ!?」

 

「テロだよ。現在絶賛攻撃されてる最中ってとこだ。」

 

アザゼルの説明に、イッセーは我が耳を疑った。

 

「てててテロオオオォォォ!?世界情勢がどうのっていう大事な会議の真っ最中に!?なんで!?」

 

「大事な会議の真っ最中だからさ。いつの時代も和平の動きがあればそれに反対する連中がいるんだよ。人間の歴史もそうだろ?」

 

「ああ、うちの爺さんが言ってたっけ。是が非でも玉音放送を止めようとしてた連中がいたって。で、あいつらなんなんすか?なんか、黒いローブみたいなの着込んでるけど。」

 

ダイスケの問いに、アザゼルが不敵な笑みを浮かべて答える。

 

「魔法使いって連中さ。悪魔の魔力体系をかのマーリン・アンブロジウスが人間向けに再構築した魔力技術を使役する連中さ。言っておくが、三十過ぎた童貞軍団って意味じゃねぇぞ。」

 

「エリーたちの同業者ってか。この校舎、攻撃されてるみたいだけど、そっちの方は?」

 

「それについては心配しなくていい。俺とミカエルとサーゼクスが一緒に張った超強力な結界の中にいるわけだからな。外には出られんが、破られることはないさ。まあ、相手は中級悪魔クラスの攻撃を放っている訳だがな。」

 

「素の俺より上の連中がわんさかいるのか……。」

 

アザゼルの説明はイッセーにとって非常にわかりやすいものだった。だが、わからない点がもう一つ。

 

「じゃ、じゃあ、時間を停止させたっぽいのは?」

 

「連中の内の誰かに、力を譲渡させる神器を持ってる奴がいたんだろう。それで例のハーフヴァンパイアを強制的に一時的な禁手状態にしたんだろうぜ。まあ、俺たちを止めるには出力不足だったがな。」

 

「ギャスパーがテロリスト連中に武器にされているってことね。どうやって私の下僕の情報が漏れたのかしら……。しかも、よりにもよってこんな形で使われるなんて!!!これほどの侮辱はないわ!!!!」

 

リアスが怒りのあまり紅いオーラをほとばしらせる。自分のかわいい下僕がよりにもよってテロリストに利用されているのだから、リアスの怒りはもっともだった。

 

「しかし、外で待機していた連中を悉く停めちまうとはな。お前さんの妹の眷属は末恐ろしいなぁ、おい。」

 

振られたサーゼクスが苦笑いするのを見ると、アザゼルは右手を窓の外へ向けてそっとかざす。すると、幾百幾千もの光の槍が現れ、瞬く間に魔術師たちを貫き、薙ぎ払っていく。その後にはあっという間に校庭に魔術師たちの死体の山が築かれる。

目の前のスプラッタな光景に思わず吐き気を催してしまうイッセーだったが、間髪入れずに魔方陣がいくつも展開し、また何十人もの魔術師が現れた。

 

「さっきからこれの繰り返しだよ。この学園は結界に囲まれているっていうのに転送用魔方陣を使って外から戦力を逐次投入するときたもんだ。こうやって時間稼ぎをして俺たちを足止めし、時間をかけて強力にした停止結界で全員を止めて一網打尽……っていうのが奴らの算段だろうな。しかし、タイミングの良さといい、テロの方法といい、こっちの内情に詳しい奴がいるのかもな。下手すりゃ、案外近いところに内通者がいるのかもしれん。」

 

その可能性は大いにあり得た。第一、結界に囲まれた中に転移してきている時点でおかしいのだ。この会議のセッティングに関わったものの中に裏切り者がいる可能性は大いにある。

 

「学園から脱出ってのは無し?」

 

繰り返される現状にいら立ちを覚えるダイスケだが、アザゼルはそれを止める。

 

「やめとけ。外へ出るには学園全体を覆う結界を解かないと無理だ。だが、それをすると人間界に被害が出るかもしれん。俺としてはここで粘って、敵の親玉が痺れを切らして出てくるのを待ちたいところなんだ。そうすれば敵の親玉の顔も割れるし、事はここの結界内で済ませられるからな。」

 

「だが、それの下調べの為には私たち首脳陣は動けない。だが、まずは旧校舎からギャスパー君を救出することが先決だね。現在最大の懸案事項を取り除けば、状況は我々の側に好転する。」

 

サーゼクスの提案にリアスが一歩前に出る。

 

「ギャスパーの救出には私が行きます。旧校舎においてある未使用の戦車の駒でキャスリングを行えば、敵に気取られることなくギャスパーの元へ行けます。」

 

キャスリングとは、チェスにおける駒の移動法の一つである。もしも王が危機に陥った時、戦車が身代わりとなって位置を交換することができるのだ。

 

「なるほど、それなら確実だね。だが、一人では危険だ。グレイフィア、キャスリングを私の魔力方式で複数人転移はできるかな?」

 

「時間がないので簡易式で、それも戦車の駒がある部屋の近くへのランダム転送しかできませんが……お嬢様とあと数人ならば可能です。」

 

「サーゼクス様、俺が行きます!!」

 

イッセーが名乗りを上げる。本来なら木場あたりが適任なのだろうが、今回はギャスパーが関わっている。眷属の中ではおそらく、一番リアスとギャスパーのことを想っているはずだ。

 

「なら兵藤君、リアスを頼む。すまないが最低でもあと一人―――」

 

「ミカエル様、遅れました!!」

 

サーゼクスの言葉を途中で遮って部屋に入ってきたのは紛れもない、アーロン・ブロディだった。

 

「別室で停止させられていたかと思っていましたが、よく時間停止から抜け出しましたね?」

 

「それはこれの御陰です。」

 

アーロンが付きだした手に握られていたのは一つのロザリオだった。

 

「ミカエル様が下さったロザリオです。これがミカエル様とオーラとつながっていたおかげで、タイムラグはありましたが復活できました。」

 

「なるほど、それで、他の者達は?」

 

「十字架からを流し込むことで彼らも復帰できました。ええ、できたんですが……。」

 

「何か問題でも?」

 

気まずそうなアーロンの視線をたどっていくと、そこにはボコボコに殴られてヨロヨロになっているMSSのメンバーが扉に寄りかかってようやく立っている姿だった。しかもその半死半生のメンバーをジョンが蹴って追い立てている。

どう見たって様子がおかしい六人組に対して真っ先に疑問をぶつけたのはサーゼクスだった。

 

「ミカエル、彼らはいったい……?」

 

「私が話していた怪獣の力を宿している者達、なんですが……アーロン、何があったのです?」

 

「それが……。」

 

 

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「―――ッ!」

 

まるで居眠りしていた時に突然揺り起こされたかのような感覚。そして目の前に広がるのは同じ部屋にいる自分以外の全員が完全に停止しているという異様な光景。

 

「これは……。」

 

混乱しつつもアーロンは状況を観察し、自分が知っている情報と照らし合わせて何が起きているかという答えを探る。

 

「まさか時間停止の神器か?」

 

一つだけ心当たりがあったのは、悪魔側に一人時間停止能力を持つ神器を有しているハーフヴァンパイアがいるという事だ。流石になぜそれが起動したのかまでは考えが及ばないが、このような異常事態が発生する理由はただ一つ。和平反対派のテロだ。

そして、胸元のロザリオが輝いているのに気付く。

 

「ミカエル様の加護のおかげか……。」

 

ミカエルに対し感謝の祈りをささげ、今一度停まっている仲間たちを確認する。普段から身勝手なことばかりする連中だが、その実力は確か。彼らが動けないとあっては現状の戦力が大きく低下するのは目に見えていた。

そこで、アーロンは一つの賭けに出る。

 

「頼むから、届いてくれ……!」

 

アーロンはその手の中にある十字架を、リーダーであるジョンの胸に押し当て自分の聖なるオーラと十字架のミカエルのオーラを送る。

彼はもともとゼノヴィアやイリナのように聖剣の素質があってエクソシストになったのでも、聖人のようなたぐいまれな聖なるオーラを持っていたのではない。支給されるホーリーアイテムの力と純粋な戦闘能力によって現在の役職を手にいれたのだ。だからこうして停止状態から復活させられるのもここにいる五人で限界だ。しかもそのあとは自力のみで戦うことになる。

それでも、彼はこの六人に希望を見出している。そしてその効果はあった。

 

「―――今のは?」

 

停止させられていたジョンが覚醒した。

 

「良かった、成功したな。」

 

「いや、今の感覚はいったいなんだったんだ?それにこいつらは―――」

 

そうして、アーロンはジョンに何が起きたのか説明する。

彼は「時を止められた」と聞いたときは我が耳を疑っていたようだが、目の前の仲間の様子を見て非常識な現実を無理やり飲み込んだ。

 

「だがこれでみんなを戻せる。だから少し待って「いや、その前にちょっと俺にやらせてくれ。」―――は?」

 

するとジョンは、停まっている仲間を容赦なく殴打し始めたのである。

 

 

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     ・ 

 

 

「―――という事がありまして。」

 

それを聞いた各勢力のトップは本当に引いた。自分たちも規模は違うが集団のトップにいる為、同じく集団の長であるジョンの行いに心底心に冷たいものを浴びせられた気分になっていた。

 

「いや、君、いくらなんでもそれは……。」

 

ボコボコにされた四人を不憫に思ったサーゼクスがジョンに諭すように声をかける。だが、そんなザーゼクスをジョンはキッと睨んで答える。

 

「ええ、確かに傍から見たら奇異に見えるでしょう。だけどね……普段から仕事している最中に故郷から取り寄せたアワモリをあおったり、止せと言うのにピンポイントでヤバイ奴とくっついている女に手を出したり、片付けろって言ってるのに部屋中に切り落としたICの足だか導線の切れ端だかをまき散らしてたり、常習的に覗き行為をしている奴を部下に持てば誰だってチャンスがあれば半殺しにするってもんでしょうよ!!!」

 

本当に溜りに溜り、我慢に我慢を重ねていたのが本来ありえるはずのない時間停止という異常事態が彼の冷静さを失わせ、そして怒りを大爆発させてしまったのだろう。その証拠に怒りを吐露するジョンの声は震えている。

その様子を見た仲間たちは流石に自分たちも悪いと思ったらしい。

 

「いや、もうほんと仕事中の飲酒はなるべく控えるようにするから……。」

 

「なんつーか、俺らも今までほんとに悪かったわ。これを機会にマジで反省しますんで。」

 

「これからはなるべく拘らずに出来合いの基盤で済ませますんで……。」

 

「っていうかさ、なんで俺らはこんだけ殴られてエドの奴は殴られてないの?」

 

「だって俺比較的真面目だもん。」

 

「「「「没個性ってだけじゃね?」」」」

 

「……よし、次は俺が殴る、っていうか『蹴る』わ。」

 

「「「「それだけはマジで勘弁してください、洒落にならないんでほんと。」」」」

 

まるでコントのようなやり取りに誰もがあきれ返っている。この危機的状況下においてアーロンは彼らを危機を突破する要因になりうると踏んでいたが、今の様子を見てだれもが不安に感じているのは間違いない。

 

「なんていうかすごい人たちが来たな……って何してるんだダイスケ?」

 

ふとイッセーがダイスケを見ると、停止しているマサノ姉妹のそばでなにやら考え込んでいる。

 

「いや、さっきの話を聞いててさ、俺のゴジラのオーラを流し込めば同属のこの二人もあの六人みたいに動けるようになるんじゃって思って。」

 

「なるほど!……でもお前オーラの使い方わかってるのか?これに関しちゃお前、俺以下だぞ。」

 

イッセーの言うことは事実である。イッセーの赤龍帝の籠手は己の内在する力を十秒ごとに倍加させていくもの。故に常にドライグに教わりながら効果的な内在する力、すなわちオーラの使い方を日々勉強している。

だが、ダイスケはこれまで自分の神器の正体を知らずにいたのに加えてほぼ本能と己の習得した技術のまま無秩序に力をふるってきた。

 

「でも、やるしかない……!」

 

手をかざし、二人に向けてダイスケは恐る恐る力を送ろうとする。だがやはりうまくいかない。

今度は籠手を出してから試してみる。すると、熱線を撃つ時と同じような感覚で淡く蒼い光がふたりに送られていき、そして―――

 

「―――what?今のって……。」

 

「―――停められてました?」

 

二人は再び動き出した。

 

「ふぅ、賭けには勝ったな。」

 

籠手をしまい、一息つける。そして部屋の中を一通り見て状況を理解したエリザベスはダイスケに人目も憚らず抱きついた。

 

「Wooow!!なんやかんや言って助けてくれるから大好きデース!!」

 

「だー、もう!この程度でくっつくな!!」

 

「そうですよお姉さま!停められている間きっとこの人はいやらしいことしようと考えていたに違いないんですから!!ああ、いやらしい!」

 

「おいマリー、今すぐお前にやった俺のエネルギー全部返せ。そんでもって永久に停められてろ。つーか、イッセーじゃねぇんだから。」

 

「何気に俺をDisってねぇ!?あ、でもこの要領で俺もみんなに倍加した力を譲渡していけば―――」

 

「いや、そいつは止めとけ。」

 

即座にプランを実行しようとしたイッセーをアザゼルが止めた。

 

「な、なんでだよ?」

 

「今のお前程度の力を倍加して譲渡しようとしたら、お前んとこの眷属仲間の数だとそうとう時間がかかるぞ。あの獣具持ちの連中に使ったミカエルの十字架はかなり強力なホーリーアイテムだし、この姉妹を復活できたのだって人数が少ないのとゴジラが持つ力が元々高いからできたんだ。だから今は目の前の戦闘の為に温存しておけ。」

 

「お、おう……。」

 

流石は長年独自に神器を研究していただけのことはある、ということか。そうなるとどうしても彼が自分達を見てくれる詩になってくれればどれほどよいことか、とイッセーは思ってしまう。

常々イッセーは自分たちには全員に力の使い方を教えてくれる人物が必要なのではと感じていた。幸いなことにイッセーにはドライグがついているので神器の使い道に困るという事は無い。だがそんなことができるのは今のところ赤龍帝の籠手のみで、獣具の中に封じられている怪獣は宿主の問いかけに答えないし眷属仲間が有する神器も宿主の言葉に受け答えするものではない。それに加えてギャスパーのこともある。今はイッセー達が訓練の相手をしてはいるものの、これが効果的なのかもわかっていない方法で訓練しているのが現状だ。

しかし、先日のアザゼルのアドバイスは的確だった。先ほどもアザゼルが忠告していなければイッセーは戦いの前に余計な力を使うところだった。

そんなアザゼルが自分たちの師になってくれればどれほど助かることか。だが彼は他種族、それもその種族の長。和平が成ったとはいえ、そんな人物に教えを乞う暇など無いだろう。故にイッセーはそんな淡い希望をすぐに打ち捨てた。

 

「手数はこれでさっきよりは増えた。まずは先んじてギャスパー・ヴラディの救出に向かう。メンバーはリアスとイッセー君、他に立候補者は?」

 

「俺、行きます。」

 

サーゼクスの問いに、ダイスケが立候補する。だが、サーゼクスは首を横に振る。

 

「いや、君は正面から来る敵に対する戦力にしたい。それに室内での戦闘になるだろうから君の力は少々使い勝手が悪くなる。禁手に至った木場君も、なるべくこっちで迎撃の位置についてほしい。その点を踏まえて誰か?」

 

すると、MSSの面子の中から二人の挙手があった。

 

「あー、俺らなら狭所での戦闘も行けますよ。最悪、銃器無しでも行けますんで。」

 

「右に同じく。」

 

「……立候補してくれてありがとう。私、サーゼクス・ルシファーの妹リアスと兵藤一誠君を頼む。」

 

本来ならリーダーであるジョンの指示で動かなければならない。しかも彼らは戦って生計を得る存在であって無償で戦うヒーローではない。その対価の交渉も無しに勝手に動いていいのか、という視線が他のメンバーから向けられるがジョンは素知らぬ顔だ。

 

「構わん。どうせここで動かなければ俺たちも死ぬんだ。命が報酬だと思えばいい。」

 

「思えねぇよ、あとでたっぷりいただくわ。お前の分抜きで。」

 

「なら代表権限でお前らから60パーほど給料から天引きしてやる。」

 

「……ひょっとしてまだ怒ってる?」

 

言いながら傭兵たちは使用する銃器の等の準備をあっという間に済ませてしまう。一方、その横ではサーゼクスがイッセーを一瞥してからアザゼルにあることを尋ねている。

 

「アザゼル、噂では君は神器を一定時間自由に扱えるようにできる研究もしているときいたが……赤龍帝の力も可能だろうか?」

 

「……。」

 

しばしの間アザゼルは黙っていたが、ややあって懐から二つのブレスレッドらしきものを取り出す。

 

「おい、赤龍帝の。」

 

「ひょ、兵藤一誠だ。」

 

「なら兵藤一誠、これを持って行け。」

 

アザゼルがブレスレッドを投げ渡すと、イッセーは慌ててそれを受け取る。見ればその内側には悪魔の文字とも違う文字が呪文のように刻まれている。

 

「そいつは神器の力を程よく調整する装置だ。一つは例のハーフヴァンパイアに、もう一つはお前が使え。お前、『赤い龍《ウェルシュ・ドラゴン》』の力をまだ制御できていないんだろう。それさえあれば代価無しに一時的な禁手に至れる上に、リアス・グレモリーが施したお前の兵士の駒の封印やらもろもろも適度な量の規模で使えるようになる。」

 

「ま、マジで!?」

 

「ああ。ただし、それを使うのはマジでピンチになった時だけだ。体力の消費までノーリスクってわけじゃない。いいか、お前はまだ人間に毛が生えた程度の悪魔にすぎん。獣具みたいに基礎体力や再生力まで強制的にブーストを掛けられてるわけでもない。まだまだお前は上位の者に食い下がれる力もないってことを覚えておけ。じゃなきゃあっという間に死ぬぞ。」

 

「わ、わかってるよ。」

 

事実それはイッセーも理解していたことだが、改めて面と向かって言われたことで心が抉られ、身に染みて納得していた。

自分が頼りにされるのも、自分がすごいのではなくドライグがすごいだけ。わかっていたことだが、再認識するのは辛かった。だからこそ今腕に着けた腕輪の存在が少しだけ喜ばしい。―――こんな自分でもリアスの役に立てるかもしれないのだから。

だが、そんな逸るイッセーの肩に先ほどリアスたちとの同行を立候補した二人のうち一人が腕をまわして窘める。

 

「おい、坊主。いくらいいもん貰ったからって血走るなよ?テンション上げるのもいいが、やりすぎると肝心な時にトチって死ぬぞ。だがら今はまずは深呼吸。な?」

 

「は、はい。」

 

すると同行するもう一人の日本人らしき男もイッセーに声をかける。

 

「そして緊張をほぐすのに最高なのは酒だ。酒はいいぞ、飲めば緊張もほぐれるしこの手の震えだって……まてまてまて緊張とほぐすための冗談だ。だからジョン、ナイフを投げようとするのは止めろ。」

 

「あはははは……あの、俺、御二人のことなんて呼べば?」

 

イッセーが尋ねると、その肩に手をまわしている男は答えた。

 

「俺はエドワード・モンド。エドでいい。で、あの年中不機嫌そうな石頭がジョン・ロダン、ウチのリーダー。それとヤバイ女に手を出すって言われてた全身男性器男がパン・ルパレ。それから今、自作の起爆装置のセットしてるのがベネディクト・ソウル、覗きやってたって言われてたのがマイロン・ブラットレーな。」

 

「そしてもう既にアル中というイメージを持たれているであるであろう俺が国頭・J・カエサル。まあ、あとそれぞれタックネームがあるんだが……今はいいか。」

 

「はぁ……。」

 

イッセーが気の抜けた返事をしてた間にもグレイフィアが術式の構成をし、着々と転送への準備を済ませていく。そして白龍皇も動き出す準備をしていた。

 

「おい、ヴァーリ。」

 

「なんだ、アザゼル。」

 

「まずお前が最初に出ていけ。白龍皇が動いたとなったら連中も慌てだす。そしたら何らかの動きを誘発させられる。」

 

「だが俺がいることはテロリスト共も承知の上だろう。」

 

「しかしキャスリングで自分たちの中央に赤龍帝が来るなんてことは想定はできんさ。外と内に二天龍がいて、さらに他にも特記戦力がいるとなったらお前が出れば効果は出る。さらに時間が稼げれば恩の字だ。だろ、ミカエル?」

 

「ええ。緊急事態が起きた場合、私に伝手で外からの増援があることになっています。少々来るのに時間がかかるそうですが、私たちなら十分粘れます。そうなれば数の上での不利も覆りましょう。」

 

「それを待つよりも旧校舎にいるハーフヴァンパイアをテロリストごと吹き飛ばした方が早いんじゃないかな?」

 

自分の下僕をテロリストと一緒くたに殺すと言われたリアスは、それをさらっと言ってのけるヴァーリに鋭い視線を向ける。それを察知したのか、アザゼルはヴァーリを窘めた。

 

「確かに早いが、これから和平を結ぶってのにそれはねぇだろ。最悪の場合はそうしなきゃならんかもだが、魔王の身内を助けられるってんなら後々ためになるってもんだ。つーわけで、まずヴァーリが先行して敵を攪乱。頃合を見計らって赤龍帝がハーフヴァンパイアを確保し、それを受けて敵の前線に獣具持ちも含めて全面攻勢をかけて一気にたたみかける。手こずっても援軍が到着するから持久戦にも持ち込める。これでいくぞ。」

 

めんどくさそうにヴァーリはため息を吐くが、その次の瞬間には彼の背中には白く輝く光の翼が広がっていた。そしてあっという間にミカエルが開けた僅かな結界の隙間と窓をくぐって外へと飛び出し、純白のプレートアーマーを身に纏って魔術師たちを蹂躙し始めた。

 

「すげぇ……。」

 

その白龍皇と対になるイッセーは、その圧倒的強さにただただ圧倒されていた。斃されても斃されてもわいてくる魔術師たちも脅威だったが、それ以上にヴァーリという男の底知れない強さに畏怖を感じている。

しかもイッセーと違い、ヴァーリはまるで呼吸するかのように禁手に至っている。そして、素のイッセー以上の力を持つ魔術師たちを苦も無く爆殺していくさまは、これほどわかりやすいものは無いと言っていい実力の差。

そしてその実力はミカエルにさえ感嘆の吐息を吐かせるさせるものであった。

 

「白い龍の力が圧倒的なのか、はたまたヴァーリという少年自身のポテンシャル故か……それにしてもアザゼル、よくもここまでの神滅具所有者を育てたものです。ですが一体何のために?」

 

「そうだ。君自身が和平を望んでいるというのは信じよう。しかし先ほどの神器関連技術といい神器と獣具に関する知識といい、いくら君が神器に関してのギークを自認していたとしてもなぜここまでの準備をしているのだ。」

 

ミカエルとサーゼクスの言う通り、いかに古代ローマの警句に「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」とあるはいっても、それは勢力均衡による平和状態の維持であって世界を滅ぼす程の力を得よという訳ではない。今暴れている二天龍の片割れは間違いなくこの世の中の数少ない強者と呼べる域も一歩前にある上に、それを飛躍的な進歩をもたらす技術を有するアザゼルの技術力はかえって平和を求める者達に不信感を抱かせてしまう。

そんな疑惑を抱く二柱に対し、アザゼルはこう告げた。

 

「俺は単に備えていただけさ。」

 

そのアザゼルの答えを聞いたミカエルとサーゼクスはさらに疑問を抱く。それを察知したのかすぐさま次の言葉を継ぎ足していく。

 

「いやいや、もちろんお前らに対してっていうわけじゃねェ。もちろん他の神話体系のことでもない。―――『禍の団《カオス・ブリゲード》』って連中さ。」

 

「……カオス、ブリゲード?」

 

その場にいた者のほとんどがその単語を知らないらしく、サーゼクスやミカエルまでもが知らないという様子で眉根を寄せている。

 

「組織名と背景が判明したのはつい最近だ。以前からウチの副総督であるシェムハザがおかしな連中に目を付けてはいたんだが、そいつらはどうも三大勢力内の危険分子やら不満分子を集めているらしい。その中には禁手に至った神器持ちや神滅具持ちまでいやがるって情報もある。」

 

「その者達の目的は?」

 

ミカエルが尋ねる。

 

「単純さ。破壊と混乱、そして恐怖。気に食わない奴は皆殺しっていう、非常にわかりやすくて最大級に最悪なテロリストどもだよ。そしてそいつらをまとめ上げているのが……二天龍以上に強大で凶悪なドラゴンだ。」

 

神をも殺す龍以上に強大な存在。それはこの世界を知る者からすれば最も敵に回したくない存在だ。それを相手に戦わざるを得なくなったサーゼクスは険しい表情を浮かべる。

 

「……そうか、『無限の龍神《ウロボロス・ドラゴン》』のオーフィス。彼が動いたのか。」

 

その言葉を反芻し、誰もが胸に氷柱を突き刺されたかのような表情をする中、事情を知らないイッセーがリアスに尋ねる。

 

「あの、オーフィスって一体……?」

 

「この世界ができた時から常に最強の座に座り続けている者よ。その二つ名の通り、無限の力を持ってるの。だから基本的にこの世界には彼に対抗できる者はいないのよ。かの死んだ神ですら手を出さなかったというわ。」

 

そのリアスの説明に、どうして皆がその名を聞いただけで畏怖しているのかがイッセーには理解できた。そして恐らく、かつてヴァーリが言っていた「この世界の頂点」がそれなのだという事もだ。

しかし、それを受け入れようとする前に部屋の中に突然見慣れない魔方陣が浮かび上がり、聞き慣れない声が聞こえてくる。

 

『そう、そのオーフィスが禍の団のトップです。』

 

その声が響いた瞬間、サーゼクスはすべてを理解した。

 

「そうか、そう来るか!今回の襲撃の首謀者は―――グレイフィア、すぐにリアスたちを転送しろ!!」

 

「承りました。さぁ、お嬢様方!」

 

「ちょっと待って!何が何だか―――」

 

狼狽するリアスをよそに、グレイフィアは陣の中へ四人を押し込んですぐさま転送術式を実行させた。

陣から溢れる魔力光の狭間から、丁度入れ替わるようなタイミングでもう一つの魔方陣から現れる人影が見えたが、その顔を認識する前にリアスたちは旧校舎へ飛ばされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔を呼び出す、あるいは現出する魔方陣は悪魔によってそれぞれ異なる。例えるならグレモリーにはグレモリーの、シトリーにはシトリーの家紋ともいうべき魔方陣がある。

しかし、その陣は木場にとっては見たことがない紋様だった。公爵家次期当主の騎士である木場は72の主だった名家の魔法陣はすべて諳んじているし、メフィスト・フィレイス、ルキフグスといった番外悪魔《エクストラ・デーモン》の家のものも知っている。

だが、その木場が知らない魔法陣は確かに目の前に存在し、機能している。

 

「レヴィアタンの魔法陣……!」

 

サーゼクスの一言で、木場はさらに混乱する。なぜなら、木場の知っているレヴィアタンの陣は目の前のものとは全く違うし、レヴィアタン本人は目の前にいるのだ。

だが、意外にもゼノヴィアがこの木場の混乱を解くことになる。

 

「以前これと同じものをヴァチカンの資料で見たことがある。これは、旧レヴィアタンの召喚陣だ。」

 

ならば、現行政権が治める悪魔社会しか知らない木場が知らないのは当然だった。

かつて、冥界は二つに分かれての内乱に包まれていた。三竦みの戦争の傷跡を無視してでも他勢力との雌雄を決すべしとする一派と、それを否として種族の安定と復活に重点を置くべきとする勢力との内乱だ。

結果、前者は《旧魔王勢力》、後者は《現魔王勢力》と呼ばれる状態に落ち着いた。本来なら、旧勢力は駆逐されるのが常である。が、現魔王たちはそれを是とせず、あくまで種の保存を目的であるとして旧体制の駆逐を是としなかった。当然ながら、旧魔王たちに政治的実権は与えられず、常に飼い殺しの状態が続いた。

だが、禍の団に加担することによって、その組織力と首魁であるオーフィスの助力を得てついに現行政権に対して反旗を翻したのだ。そして今回の会議に各勢力のトップが揃うことを察知して、これを纏めて抹殺し、政権を簒奪すべくクーデターを敢行した。

その尖兵として現れたのは前レヴィアタンの血を引く、胸元が大きくあき、深いスリットが入ったドレスを身に纏った、それこそイッセーが見たら鼻血を垂らして喜びそうな美女、カテレア・レヴィアタンがそこに現れた。

 

「カテレア、なぜ君たちは禍の団と?」

 

「サーゼクス、貴方達こそなぜ天使、堕天使と組もうとするのです?私たちは先代魔王を失いましたが、同時に最大の障害である神も身罷ったのです。これを好機としてこの世界を我らの手で革新すればよいものを……。」

 

カテレアは心底落胆したかのような表情を見せる。

 

「私たちは禍の団と組むことによって、強大な戦力を得ることができました。これを元に、我ら正統なる魔王が率いる悪魔が世界を手に入れ再構築するのです!!」

 

その理想を語る目は、狂気にも激情にも染まっていない正気の瞳だった。自分たちが世界の覇権を握りうると、本気で考えているのだ。

 

「しかし、おたくらのトップであるオーフィスはそこまで考えているのかね?奴さんはそこまでこの世の中には興味のない奴だったはずだが?」

 

アザゼルの問いにもカテレアは自己陶酔するかのように蕩々と答える。

 

「かの者は純粋な力の象徴。並み居る強者達を纏め、惹きつけるための役割です。私達が世界を統べた後は彼にシンボルになってもらうだけ。彼には彼の別の目的がある。」

 

「なるほど、お互いがお互いを利用……ってやつかい。だが、奴さんはお前さんらの思うように動くタマかな?」

 

「アザゼル、あなたの心配はご無用です。彼の為に新世界の神という席を開けています。統治するのは私たちが行いますのでご安心を。」

 

そして、外にいる魔術師達はその賛同者だということだ。

 

「カテレアちゃん、どうして!?」

 

セラフォルーは悲しげに叫び問うが、カテレアの表情は憎しみに歪む。

 

「よくも、私からレヴィアタンの名を奪っておいてぬけぬけと……!私は正当なる血統によりレヴィアタンの名を継ぐ正当性を有していたというのに!!私こそが魔王に相応しかった!!!」

 

「わ、私は……!」

 

「ですがセラフォルー。もうそのことで貴女が思い悩むことはありません。今日、この場であなた達を皆殺しにしてその懊悩も永久の冥府の闇の中に消えるのですから。……さあ、貴女たちの時代の終焉です。」

 

その言葉で、首脳陣の表情に影がかかる。

だが―――

 

「―――クッックックック、……アーハッハッハッハッハ!!!!」

 

アザゼルが愉快そうに嗤う。まるで出来の悪いジョークを聞いたかのようなリアクションだった。

想定していないリアクションに、カテレアの顔に驚きの色が加わる。だが、それとは反対にアザゼルの顔は悪童のような邪悪な笑みが浮かんでいた。

 

「……何が可笑しいのです?」

 

「可笑しいさ。旧体制にしがみつこうとする連中が、よりにもよって世界の変革を謳うんだからよ。それもその大義名分が『血筋故に』と来たもんだ。事が終わった後の他の神話大系に対する姿勢の如何も、人間に対する戦後処理のことも何も無し。さらに言えば、各地の存在する怪獣達への対処も何もないと来た。これを笑わずに何を笑えってんだ?」

 

「私たちに力を貸しているのはオーフィスだけではない!!彼らの技術と我らの知識さえあればこの世のどこにも恐れる者は―――「あ、やっぱりそうだ!あんときのイカした姉ェちゃん!」お、お前は!?」

 

突然話を遮った男に、カテレアは明らかに狼狽した。その男とは、MSSのパン・ルパレであった。

 

「いやいやいやいや、まさかこんな所で会うなんて奇遇だな!!」

 

「貴様、あの時の私を口説こうとしていた軽薄で不埒な男!!」

 

そう、それはこの会議の会場の警備の下見が行われていた日まで遡る。

与えられた任務を早々に終わらせ、拘束時間など知ったことかとばかりに街中をぶらついて観光していたパンは、路地裏であるものを見かけた。手下を引き連れ、何者かと込み入った話をしていたカテレアである。

その姿を一目見たパンは瞬時に性欲を滾らせてカテレアにずかずかと近づき、そしてこう言ったのだ。

 

「一発どう?」

 

原始人も斯くやというプロポーズである。

勿論カテレアは激怒。街中であるにもかかわらず怒りのまま魔力砲を打ち込み、部下を引き連れて追い掛け回された、というのが一部始終であった。

だが、そこまでの話を聞いてパンをよく知る者達は引っかかることがあった。

 

「おい、ちょっと待て。パンの奴が気に入る女って確か……。」

 

『見た目からして股が緩い、それこそ二束三文で男咥え込むようなビッチ。若しくは気軽に商売女。』

 

「そうそう、貞操観念とかプライドとか無いめんどくさくない女であれば十分なのよ。んで、ヤることヤっても金持たせれば後腐れの無いのが俺の理想。」

 

「な、な、な……!?」

 

自分が股が緩い女だと思われていたというショックでカテレアは言葉を失ってしまう。だが、それも仕方がなかった。何せ恰好が格好だ。胸と背中が大きく開いている衣装に褐色の肌が加わることで淫靡さが増し、さらにどこぞのスタイリッシュアクション魔女のような髪型が形容しがたい淫蕩さを醸し出す。止めに女教師もののそういうDVDに出てくるような四角いリムの薄い眼鏡をかけられて属性を盛りに盛れば誰だって「股が緩そう」と思ってしまう。

たぶん目的は定かではないが街中でも、ここまでとはいかないほどでも似たような格好でいたのだろう。そして運悪く、早々に仕事を(勝手に)切り上げて街中をぶらついていたパンと遭遇してしまったのだ。

しかしそのショックが冷めやまぬ中、さらなる追撃がカテレアを襲う。

 

「あー、そういえば昔修道院の小さい子を何人も性的な意味で食い散らかしたって自慢してしてたっけ、カテレアちゃん☆」

 

「な、何をそんな出鱈目を言っているセラフォルー!?」

 

「……私も聞いたことがあるな。カテレアは小さい少年から年老いた老人まで誰でも股を開く、レヴィアタンじゃなくてサキュバスを名乗った方がいい悪魔だと。」

 

「サーゼクス、貴様まで!?」

 

「そーいや、俺の獣具の研究成果を誰かが持ち出したって報告を受けていたが……お前がウチの研究スタッフを咥えこんで盗ませたんじゃねぇのか?」

 

「ふざけるなアザゼル!確かにお前のところの研究の一部を盗んだが、そんなことまではしていないぞ!?」

 

「そこまでひどいのであれば性病の一つや二つどころではないのではないですか?もうそのまま性病を司る悪魔にでもなっておしまいなさい。そして我々の半径100km以内に近づいてこないでください。確実に病気が移ります。」

 

「ミカエル、貴様本当に天使の長か!?言っていることが一番ひどいぞ!!」

 

示し合わせたかのような連続多重口撃に手ひどいダメージを受けるカテレア。だが、先ほど言いたいだけ言われていたのがよほど腹に据えかねていたらしいトップ四人は先の言葉を撤回する気はさらさらない。

 

「チョイとチョイとお兄さん方。いくら事実でもそこまで言っちゃあかわいそうでしょ。ねぇ、カテレアちゃん。」

 

パンが好印象を得ようとフォローに回るが、もうすでに印象は最悪の上いわれのない悪言でぼろぼろになったカテレアの神経を逆撫でしている。だが空気の読めないこのバカは容赦のない止めの一撃を放った。

 

「そういうわけで、テロなんかやめて平和的に一発どお?」

 

そう言い放つパンの笑顔は、それだけなら充分世の女性を虜にできるものだった。だが、いかに甘いマスクを持って生まれていても口から出る口説き文句は最低最悪。原始人レベルどころか単細胞生物クラスだ。

 

「―――してやる。」

 

「え、する?マジで!?じゃあ俺これからホテルの予約を取って―――」

 

「殺してやる!!!」

 

叫ぶカテレアは特大の漆黒の魔力の塊をパンに向けて放った。だが、それは横から介入したアザゼルにかき消される。

 

「こいつにはやってもらわなきゃならないことがあるんでな。そのかわり、この俺と二人っきりのハルマゲドンと洒落こまないか?」

 

「いいでしょう。どうせ順番が前後するだけのことです!!」

 

カテレアの答えを聞いたアザゼルは片手を窓際に向けて光を放つ。

 

ドゥン!!!

 

重機が突っ込んだように破壊された壁の穴からアザゼルとカテレアが飛び出していく。

 

「魔王さま、これ俺らも行った方がいいですよね?」

 

アザゼルが飛び出していった様子を見て、ダイスケが尋ねる。

 

「ああ、当初の予定通り獣具を有している者達は敵の前線を食い止めてくれ。―――行けるかな?」

 

そのサーゼクスの問いは、「殺すことができるか?」という意味である。ダイスケはライザーの披露宴をぶち壊した時は誰も殺してはいない。コカビエルと対峙した時も殺したのはケルベロス二頭とリドサウルスでコカビエルもフリードも死んではいなかった。

強いて殺した経験がある言うならレイナーレの件の時にドーナシークを殺めた時ぐらいだ。普通ならば他者の命を奪うことに関して人は強い罪悪感を感じ、回避しようとする。

しかし、今のダイスケはそれに当て嵌まらない。

 

「行きますよ。もう堕天使一人殺してるんです。その後に数が増えようが一緒でしょう。それにああいう連中は本気で潰すって決めたんだ。人から奪おうっていうんなら……俺が逆に奪ってやる。」

 

その眼はもはや青春を謳歌する十代の少年のものではない。自ら守るべきと定めたものをどうあっても守ろうとする獣の目だ。

ダイスケの心中にはすでに他者の命を奪うことに対する罪悪感は無い。たとえ自らは罪に塗れようとも、自分が大切に想う、また自分を受け入れてくれるごく少数の人々の平穏の為ならばいくらでも血に塗れよう。それがダイスケが今思う唯一のことだ。

 

「……白龍皇が敵を攪乱させているが、また正面に敵が殺到し始めている。木場君とゼノヴィア君はこちらを、ダイスケ君たちはこの敵を側面の体育館側から攻撃してくれ。反対側はまだ攻撃がないが、こちらは天使陣営の獣具所有者たちに警戒してもらおう。」

 

「わかりました。だけどエリ-、マリー、お前らは一応ここに残れ。」

 

「ううん、行くヨ。ダーリンばっかり危ない目には合わせられないネ。でしょ?」

 

「お姉様はこのマリアが身を盾にしてでも守ります!!」

 

「……なら一緒に行くぞ。体育館に続く渡り廊下から一気に下に飛び降りる。」

 

一気に駆け出す三人。廊下の窓の向こうを見ると、大勢の魔術師たちが白龍皇一人に翻弄されている様がよく見える。既に木場とゼノヴィアが交戦に入ったのが見えたが、その魔術師たちの一部が廊下を走る三人を窓ガラス越しに見つけ攻撃を仕掛けてきた。

 

バリン!ガシャン!

 

普段見慣れた光景である廊下が次々と割れたガラスであふれ、床や壁に焼け焦げた弾着痕が残っていく。幸い直撃は無かったが、降りかかるガラス片がダイスケの皮膚を少しずつ裂いていく。

その傷も血を拭う前にあっという間に塞がってしまう。その事がダイスケに、自分が既に人の域を超えてしまっていることを思い知らせるが、今はそれを嘆く暇も悔悛する余裕もない。籠手と足甲を装着すると、廊下の曲がり角の壁を一気に殴り抜ける。

殴った勢いもそのままに、三階から一気に三人は地上むけて飛び降りる。その先には丁度驚いている魔術師がいたが、そのままダイスケは膝蹴りを顔面に浴びせて押し倒す。良くて脳挫傷、最悪なら頭蓋骨陥没に頚椎骨折、そして延髄へのダメージで即死だろう。

しかし、ダイスケは斃した魔術師を一瞥することもなくすぐさま別の魔術師を襲う。どうやら魔術師というのは接近戦は不得手らしく、いかに中級悪魔並の力と言っても一度懐に飛び込めばこちらの思う壺だった。

 

ドスッ

 

魔術師の一人の腹に籠手に着いた四本の爪を突き立てて山嵐の要領で地面へと投げ倒し、ちらりと後ろに見えた襲い掛かってくる魔術師に向けて熱弾を放つ。聞こえてきた悲鳴で致命傷を与えたことを確認すると、杖を振って攻撃しようとしてきた魔術師を引き抜いた腕からの熱線で胴体を蒸発させる。

エリザベスたちの方を見ると、姉妹揃ったコンビネーションで見事に敵を倒していっている。エリザべスがその背中の巨大な腕で近くの敵を薙ぎ払い、遠距離からの魔術攻撃を防いだかと思えばその背後からマリアが高い機動力を生かし敵集団の真っ只中に飛び込み、脚に装着された獣具の力を持って蹴り飛ばしていく。さらに自らも魔術師である彼女達は懐から杖を取り出して魔術攻撃を合間合間に取り入れているため隙がない。

独自に自分たちの神器を研究してきたというだけあってか、お互いの欠点を巧くカバーし合っているようだ。獣具を使いこなせている度合いでは間違いなくダイスケよりも彼女たちの方が上だろう。そう判断したダイスケは姉妹たちのことは彼女たち自身に任せてさらに前に突っ込んでいく。

今度ははぐれエクソシスト達も使っていた光の剣で武装した魔術師たちが向かってくる。熱弾や熱線で対抗してもいいが、撃っている間の隙を狙われたくないのでダイスケは熱線剣を両手に構えた。

斬りかかってくるものの中にはそれなりの力を持った剣を携えた者もいて、それらが一緒になってダイスケに剣を構えているのだ。そのうちの一人が一番槍とばかりに斬りかかってきたが、ダイスケはそれを受け止めるような動作はしなかった。

ただ、真っ向から斬りかかってくる相手に向けて横薙ぎに一閃。

すると熱線剣は魔術師が振った光剣をすり抜け、持ち主の胴をいともたやすく両断した。本来ならあり得ない出来事に周囲がどよめく。ならばと次に向かってきたのは実体がある剣を有する者だ。これならと上段に振りかぶり、両手剣ならではの重みを生かした斬撃をダイスケに向けて振り下ろす。

しかし、今度は両手剣が熱線剣にぶつかったところから溶断されて剣士の首も一緒に跳ね飛ばされた。

それもそのはず、そもそもこの熱線剣は「熱線のエネルギーが剣の形に収束したもの」であり、実体を持つ剣ではない。ガスバーナーの火を包丁が受け止められないような、またはガスバーナーの炎同士がぶつかってもすり抜けるようなものだ。

勿論これを利用して敵を倒せたのは偶然の産物ではなく、ダイスケの熱線剣に興味を持った木場と共に既に発見していたからである。この時、木場が用意した刃物が悉く溶断された経験が今に生きているという事だ。さらに言うと、この熱線剣を受け止められたのは木場が作り上げたモンキーモデル版の魔剣からで、並の武器ではすぐに破壊してしまうことも確認済みだ。

逆を言えば、名のある聖剣や魔剣の類を持つ者ならその纏ったオーラで簡単に受け止めてしまうという事だが、幸いなことに今のこの場にはそういった敵はいない。結果的に攻めあぐねたのか、十人ほどの犠牲者を出してこの事実に気づいた魔術師たちは散っていく。

それを追いかけようとしたダイスケだったが、あるものが目に飛び込んでくる。

学園の地面のあちこちに妙な機械が置いてあるのだ。なぜこんなものがあるのか、なぜ今まであったことに気が付かなかったのかと疑問に思うダイスケだったがその機械が光り輝き、機能し始める。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

同じタイミングで地鳴りが鳴り始める。さらに次々とあちこちの地面が隆起し始めた。そして地面から“THEM(奴ら)”がその姿を現す。

 

ヒィヒィヒィヒィヒィヒィヒィヒィ……

 

グリスを塗っていない軸受に通したシャフトが、お互いに擦れながら回転しているかのような奇怪な音。そしてむせ返るような酸の臭いと共に現れたのは蟻であった。だが、これはただの蟻ではない。

ゆうに体長5m以上あるのではないかという巨大な蟻が群れをなして地面から湧き上がってきたのだ。

 




ヒィヒィ言ってたのは別に笑ってたわけじゃないですよ。劇中で本当にこんな音を出しています。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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