これまでにない体調不良がわが身に襲い掛かった上に、パソコンも絶不調という不幸が重なりこのような形となってしまいました。よって誤字もいつも以上になっている可能性もあるのでご注意ください。
もっともダメージが大きかったのはIOWAをお迎えできなかったという精神的ショックでしたが。
そんな中私を支えてくれたのはやっぱりデットプールでした。やっぱり彼は最低で最高です。手乗りフィギュアは目前で品切れになりましたけどね。
ドォォォォォォオオオオオオオン!
グレイフィアの転送陣によって飛ばされてきたリアスが魔力の塊でドアを壁ごと吹き飛ばし、それと同時に左手に赤龍帝の籠手を装着したイッセーが躍り出る。
「ギャスパー!!」
手近いたローブ姿の魔術師を殴り飛ばしたイッセーは、後輩の名を叫んでその姿を探す。
恐らく襲撃時に荒らされたのであろう、散乱した室内を見渡すがギャスパーの姿はまだ見えない。どこかに隠れているのかとイッセーは室内を突き進み、リアスもその後を追うように進んでいく。
「貴様ら動くな!」
だが、突き進むイッセーたちはその歩みを止めなくてはならなくなってしまう。
「ギャスパー……!」
「部長……イッセー先輩……。」
手枷足枷をされた上で椅子に括りつけられたギャスパーの喉元に、鋭利な刃物が宛がわれ、人質にされてていたのだ。
「ハーフヴァンパイアを殺されたくなければ大人しくしなさい。」
下僕の命を盾に取られ、リアスとイッセーは脇から出てきた他の魔術師や魔女たちに取り押さえられてしまう。両手を後ろ手に回され、跪かされるも目立った怪我もなく無事だったギャスパーの姿を見てリアスは安堵する。
「よかったわ、無事だったのね。」
自分も危うい状況であるなかでも下僕優先で考えるのはやはりグレモリーの性か。しかし、ギャスパーは涙を流し頭を振って主に乞う。
「僕、もう嫌です。部長、先輩、僕を殺してください……!」
悪人に利用されるという異常な状況下で今までずっと貯めていたものが一気に溢れ出す。
「ただでさえ先輩たちが力を貸してくれているのに眼を使いこなせないでいるのに、僕の眼がこんな状況を作って迷惑をかけて……。ならいっそのこと僕なんていなくなってしまった方がいいんです。」
「なにを言うの。あなたが諦めても、わたしは諦めないし信じ続けるわ。ギャスパーがその力をいつかきっと使いこなせる時が来るって。」
「そうだぞ!俺だってお前が目を使いこなせるまで付き合うって言っただろ。これからだってのに諦めるんじゃねェ!!!」
生きる気力すら奪われた仲間にリアスとイッセーは励まそうと言葉をかけるが、その傷ついた心にはその言葉も通じない。
「……でも、もうだめです。こんな僕じゃ、誰の傍にいてもいけない。友達だって―――」
―――パァン!
「ゴチャゴチャ五月蠅いわね、この半端者が!!」
虚ろな目で自らを嘆くギャスパーだったが、刃を宛がっていた魔女がその頬を打つ。喋りかけていた口の端から鮮血が一筋垂れるのが見えた時、相手が女であるがその事を忘れさせるほどにイッセーの頭に血が上って行った。
「てめぇ、俺の後輩になにしやがる!!」
「フン、なにが後輩よ。グレモリーの者は力があっても下僕の事になったらバカになるって聞いたけど、どうやらそれは下僕同士でも言える事らしいわね。」
「なにィ!?」
怒りで吠えるイッセーを見下し、魔女は続ける。
「だってそうでしょう?こんな危険物、とっとと洗脳でもすれば便利な道具になったでしょうに。それを仲間だかなんだか知らないけれど生温い仲よしこよしで宝の持ち腐れにするんですもの。上手くやれば手柄の一つでも立てられたのに、よりにもよってそれでこの状況を引き起こしたんだから完全にバカじゃない!」
魔女はリアスをせせら笑い、自分に怒りの視線を向けるイッセーだけでなく心砕かれたギャスパーまでも侮蔑する。しかし、それを聞いていたリアスの目はあくまでも冷静であった。
「……私は下僕を肉親と同じように大切にするわ。道具だなんて思ったことは一度も無いし思いたくもない!こんなことになったのは私のせい?いいえ、あなた達が起こした状況でしょう!?あなた達の身勝手な理由で……その穢い手で私の大切な眷属に触れるなぁ!!!」
ガォン!!!
組み伏せられ後ろに回されたリアスの両手のひらから赤く、それでいて暗い光を放つ魔力の塊が飛び出す。滅びの魔力をソフトボール大に固形化したものだ。直撃したのはリアスを抑えていた魔術師二人で、砂浜にできた砂の城のように崩れ去っていく。
「―――な!?」
リアスを罵倒していた魔女が反応するより早く、リアスたちは動いていた。まず怯んだ拘束役の魔術師をイッセーがまとめて投げ飛ばした後、左の籠手に格納された剣を展開させる。これは先んじてミカエルに会っていたイッセーが天界と冥界の協力体制の証として拝領した聖剣『アスカロン』である。アスカロンはキリスト教の聖人伝説をまとめた『黄金伝説』におけるドラゴン退治の中の登場人物の一人、「聖ゲオルギオス」が所持していた『ドラゴン殺しの剣(ドラゴンスレイヤー)』だ。
なぜそのようなものが半ドラゴンであるイッセーに渡されたのかと言うと、これから障害として現われるであろう強力なドラゴンから身を守るためのカウンターウェポンとして渡されたというのがその答えだ。だが、イッセーはあえてその切っ先で自分の肌を傷付け、刀身に血を滴らせる。
それと同時にリアスは驚いている魔女を突き飛ばす。タイミングはまさに同じく、イッセーはアスカロンを振って付いた血をギャスパーの顔に向けて飛ばした。そしてリアスは何かから守るようにギャスパーに覆いかぶさり、胸元から何かを取り出して叫ぶ。
「今よ!」
ドォォォォオオオオオオオン!
それは小さな無線機だった。そして先ほどのリアスの叫びが合図となって部室の左右の壁が破壊されたのだ。
「ぐあっ……!」
ギャスパーに刃物を押し当てていた魔女に向かって、爆風と瓦礫が死の壁となって降りかかる。壁側にいた魔術師たちも同じく吹き飛ばされて瓦礫に埋もれる。
タタン!タタン!タタン!
さらに空いた左右の壁の穴の向こうから銃声が聞こえ、混乱する魔術師たちを倒していく。突撃銃を手にしたエドとカエサルだ。
そう、ここまでの一連の流れはすべてリアスの想定の範囲内であり、予定していた通りの行動ゆえの結果である。
まず旧校舎にいたギャスパーが敵に利用されている時点ですでに人質として敵に利用されるであろうことは予想できていた。そこにエドとカエサルの協力といううれしい誤算があってこの作戦を実行したのだ。もちろんリアスが身を挺してギャスパーをかばったのも、イッセーがもしもの時の為にアザゼルが制御とパワーアップに使えると言った自身の血を与えたのも予定通りである。
だが不意付かれるものの魔術師たちは反撃をはじめ、数に任せての弾幕を張ってくる。さらに騒ぎを聞きつけたほかの場所にいた仲間が駆け付け、リアスたちは数の上で圧倒的不利に立たされる。
「おい、こんなにいたのか!?どんだけここに人員を裂いてるんだよ!」
物陰に隠れ、反撃しながらカエサルが文句を言う。リアスの腕の中で震えている小さな少年にそこまでの価値があったのかと驚くと同時に、敵の数の多さに辟易としているのだ。
「こんなんだったら俺らじゃなくてジョンかパンが来といたほうがよかったかもな。……いや、ジョンだったら建物ごと破壊しかねないからあいつは来ない方がマシか。」
エドは自分の認識の甘さを悔やむ。それでもこんな状況下において、派手な被害を出さないで済まさずに戦うに越したことはないし、今さら無いものねだりをしても仕方がないのでただひたすらに引き金を引く。
イッセーはギャスパーを抱くリアスを守るためにひたすらドラゴンショットで応戦する。本当ならリアスがここに加われば拮抗する以上の火力を得ることができるが、先ほどの爆発で飛んできた瓦礫が最中を強打した為に彼女はまともに動けなかった。
「僕、こんな時でも役に立てないなんて……!」
泣きじゃくる下僕を抱きながらリアスは首を横に振る。
「いいのよ、私たちに迷惑をかけても。そんなもの、あなたを眷属にした時からかけられる覚悟も準備もしてあるわ。だから自分を責めないで?」
「でも、でも……!」
「だったらさ、今ここで一歩踏み出してみろよ。お前の頬に飛ばした俺の血は堕天使総督お墨付きのドーピングアイテムだ。立ち上がりたいっていうんだったら俺の血を舐めろ!」
ギャスパーの頬に付いた血はすでに乾き始めていた。だが、滴る雫の部分はまだ潤いを保っていたのでギャスパーはそれを指で掬う。しかし、これまで避けていたものをいきなり口に入れようと思ってもそうそう簡単に受け入れられるものではない。
逡巡するギャスパーの姿を振り返る余裕は今のイッセーには無かった。だが、彼は叫び続ける。
「怖いのはわかるよ。パワーが上がれば余計にコントロールできなくなるかもしれないさ。でも、そうなったとしても俺も、部長も、お前を諦めない!拒絶しない!だからその血を―――痛ぇえ!!空気読め、バカ野郎ォ!」
ギャスパーは今一度指先に着いたイッセーの血を見る。
今までは生臭いからと避けてきた吸血行為。もしかしたらそれは己の生い立ちを疎んでいたが故の忌諱だったのかもしれない。しかし、もし今ここでそれを乗り越え受け入れられたら―――
意を決したギャスパーは指先を口に押し込み、その先を啜った。舌の上に広がる鉄の味を一気に喉奥へ唾液と一緒に流し込んだ。
ヴァンパイアの本能が、主たる糧である血を得たことにより目覚める。それも力あるドラゴン、わけても最強格である赤龍帝の血が吸収されたことで一気に力が覚醒した。
ブワァァァアアアア!!
突如として黒く捉え所のない何か大きなものがギャスパーのいたところに出現し、ギャスパーの姿が消えてしまう。聞こえてくるのは大量の羽音。普通ならばバサバサと表現されるのだろうが、数が数なだけにとてつもないことになっている。そしてその黒い煙のような塊が魔術師たちに向かって集りはじめたのだ。
「な、なんだこれは!?」
「まさか、吸血鬼の化身の蝙蝠か!?」
民間で流布されている吸血鬼の特徴と言えば太陽の光に弱い、十字架などの聖なるアイテムを恐れる、鏡に映らないというのが有名だろう。そのうちの一つに蝙蝠や他の動物に変身するというものがある。その変身能力を最大限に利用して敵を翻弄し、しかも血を吸って力を奪っているのだ。血を吸われまいと抵抗するが、群れを成して宙を舞う蝙蝠たちはそれらを全て掻い潜って吸血していく。だが、ギャスパーの攻撃はこれに止まらない。
『貴方たちの動きを僕の《眼》で停めます!!』
宙を舞う蝙蝠達の口からギャスパーの声が発せられ、エコーが利いた声が響き渡る。しかもその宣言通りに魔術師たちだけの動きが停止させられており、イッセーたちには何の影響も出ていない。
最高の反撃の好機であり、そしてイッセーが考えていたコンビネーションプレイの最高の実践場であった。
「よし、いまだ!『洋服崩壊(ドレス・ブレ―――!」
しかし、それを実行する前にイッセーの横をエドとカエサルが通り抜ける。
エドの脚には肉食恐竜の脚部を模した装甲と腰にはしなやかに動く長い尾が付いている。彼は助走をつけ、スライディングするかのようにジャンプするが尾が支えとなり、さらに発条のような屈伸の挙動を示してエドの体を跳ね飛ばす。その姿勢から放たれた蹴りはまるでカンガルーのようなキックであり、たったの一撃で数人の魔術師を巻き込む破壊のエネルギーを叩き込んだ。
カエサルの右手には自作したかのような全金属製の中途半端な長さの矛が、左手には獅子とも狛犬ともつかぬ獣のデティールが施された楕円状の盾が構えられている。矛は的確に相手の喉や胸といった急所を貫き、致命傷を与えていく。さらに左手の盾で停止させられた魔女の整った顔を殴りつけてノックアウトさせた。
相手が停まっているとはいえ、瞬く間に全員を処理した彼らの技術の高さたるやまさに驚愕すべきものだったが、違う意味でショックを受けたのはほかでもないイッセーである。
「な、な、な、なんでぇぇぇぇぇぇ!?」
もとよりやらしい目的で考えていたギャスパーの時間停止能力と自身最高技術である『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』とのコンビネーションを実行させる最高のチャンスをぶち壊されたのである。もうイッセーには二人に対する怒りしかない。
だが、当の二人はイッセーの怒りなどどこ吹く風である。
「なにが『なんで』だ。殺れるときには殺っとかねぇと。」
「そうは言うけどエドさん!!俺にだって、俺にだってぇ……。」
「なんか知らんけど泣くな。さて、こいつら何か情報を持ってるだろうから、生きてるのを数人縛ってっておくか……。」
そういいながら、カエサルがツールボックスの中から拘束用の締結バンドを探していた時である。
(クソッ、このままおめおめ……。)
なんとまだ息も絶え絶えながらもまだ戦う気力がある者がいた。ブレーキをかけずに突っ込んできたのとほぼ同じ衝撃を受けながらも意識を保っていることも驚きだが、なおも戦う意思を持っているのだ。
攻撃魔法を放つ杖を握る手には力が入っていないものの、その先はしっかりとしゃがむカエサルの背中に向けられている。呪文を詠唱せずに放つ技術は持ち合わせている。故に気取られることもない。いざ、放たんとしたその時だったが、イッセーがそれに気づいた。
「あ、危ない!!」
まさにそれは同時だった。澪呈してカエサルを守ろうと駆けだしたイッセーだったが、走る人間の速さと飛翔するエネルギー体の速さやなど比べるべくもない。
―――ああ、間に合わない。
だが、あきらめるイッセーとは裏腹に異変に気付いたカエサルがとった行動はただ一つ。魔術弾が飛来してくる方向に獅子面の盾をむけるだけ。その一連の動作を見たイッセーはさらに焦った。
おそらく獣具由来の防具であることは間違いないだろう。だが、それで魔術の類を受け止められるとはどうしても思えない。それは魔術を放ったよう本人も同じで苦しみながらも内心ほくそえんでいた。しかし―――
パキィィィイイイイインン
放たれた魔力の塊は獅子の片目に吸い込まれ、もう片方の目からおうむ返しに返される。
それが何を意味するのか考えた頃には魔術を放った張本人の胸は自らの攻撃で抉り取られ、答えにたどり着く前に絶命してしまっていた。
まさに完璧なカウンター。準備動作もほぼゼロのこの技に誰もが驚いていたが、一番驚いていたのは当のカエサル本人だった。
「……これってこういう風に使えるんだ。」
異能バトルものにおいて最悪の感想である。
「自分の能力なのに知らなかったんですか!?」
「いや、だって今までこんなビームみたいのを撃ってくる奴いなかったし。」
今までイッセーは、自分のことをまだ己を知らない弱い未熟者だと思っていた。だが、世の中にはもっとひどい奴がいたのである。
*
出ていくダイスケ達を見送り、いざ自分達も出ようとしていたMMSとアーロン・ブロディの目に飛び込んできた光景は米国出身者ならば自国の罪として当然知っているものであり、本来この日本では起こるはずのないものだった
次々と地面の底から巨大なアリたちが現れるこの現象、これは「THEM(奴ら)現象」と呼ばれるものだ。
1954年、アメリカはニューメキシコ州で一人の少女を残してキャンプをしていた一家が消えてしまうという事件が起きた。少女は地元警察に保護されたが、現場には無残に破壊されたキャンピングカーと一帯に響き渡る奇怪な音、そして異常な酸の臭いしか残っていなかった。
その後の調査の結果、一家を襲撃したのは近くで行われた核実験の影響で巨大化した蟻の仕業だという事が解った。すぐさま毒ガスによる攻撃で巣の蟻は一掃されたが、既に女王蟻は旅立っており、その後に次の繁殖地として選ばれたロサンゼルスの地下で激しい攻防戦が繰り広げられた。
そして少女が巨大アリたちが現れるとき発せられる蟻酸のにおいを嗅いで「Them(奴らよ)!」と叫んだことが切っ掛けとなり、このように生物が放射能汚染で突然変異を起こして巨大な姿に変貌することを「THEM現象」と呼ぶようになったのだ。
現在では定期的に核実験が行われた地域ではこのような異常が起きていないか調査されており、四年に一度はこのTHEM現象による巨大化蟻が発生して州軍が駆除にあたっている。それでも土地に残る残留放射能も年々低下しており、発生の件数も規模も本家アメリカでは縮小傾向にあるはずだった。
それが核汚染とは縁もゆかりもないこの駒王町で発生している。どう考えてもあり得ないことだが、現実に今ここでTHEM現象は起きている。
巨大アリたちは徒党を組み、結界が張られている校舎本館に殺到しているが、ほとんどはその前面に展開した木場とゼノヴィアが、裏側では移動したマサノ姉妹が、そして体育館側ではダイスケと状況を見てすぐに飛び降りていったアーロンが高所に到達する前に倒している。
そして会議室で出遅れたMSSの面々も手にした小銃で1954年の最初の遭遇戦と同じく蟻の目を正確に撃ち抜いていっている。
「連中、自分たちは後ろに下がって全面にアリ共を殺到させていやがる。高みの見物のつもりか?」
そう愚痴を吐くマイロン・ブラットレーだが、本来であれば後方に下がっているという魔術師たちは見えない位置にいるはずだった。しかし、仲間たちはそれを与太話とは全く思っていない。
そんな彼らの様子を見て不思議に思うミカエルは、結界の強度を上げながら言う。
「いえ、彼らはこのアリたちを利用して建物を覆う結界を破るか建物そのものを土台から破るつもりなのでしょう。勿論一匹一匹ではこの結界が破れるはずもありません。ですが連続的に、そして一斉に結界を攻撃し続ければいずれは……。」
アザゼルが言っていたように、天使の長であるミカエルが作り上げた結界は即興でありながら文句の付けどころがないほどの強度を誇る。しかし、雨粒の小さな一滴が落ち続けることで岩に穴を穿つように、小さくとも連続した負荷を与え続けられればどのような壁もいずれは崩壊する。
「そのための捨て石か。たしかにこれなら人手も減らないし、なにより心も痛まないよな。心があれば、だけどさ。」
皮肉りながらも、マイロンは構えたボルトアクション式ライフルで正確に巨大アリの強度が弱い目から脳を狙撃して無力化していく。
「でもさ、これって明らかにあの箱みたいなのが原因だろ?すっげー解りやすくグラウンドに落ちてるもん。見るからに怪しいし、光ってるし。バカでもわかるぜ。」
「そうだなパン、大学どころか高校も出ていないバカのお前でもわかるよな。」
「ジョン手前ェ、一応気にしてるんだぞこの野郎!!大体、ウチの中で大学出てるのはお前だけだろ!!」
「まあそれは置いておいてだ、どうやって下に降りた連中にあの箱を壊すように連絡を付ける?無線機なんて持ってなかっただろ。」
これリアスたちと共に行動している二人は当然持っているものだ。しかし、彼らもおそらく現在ギャスパー奪還に力を注いであろうから助力は望めない。つまり、ミカエルが言う増援が来るまで少ない人数でありが大量発生している原因である機械と後ろで操る人間をたたく必要がある。
これらを踏まえたうえで、ジョンは決断を下す。
「……マイロン、魔術師連中の『狙撃』頼めるか?特に分隊長クラスを集中的にやってほしい。俺と一緒にここの屋上に上がってやるぞ。」
「―――了解。」
「よし。ベネット、こいつら地上の蟻が強制的にでかくなったもんだろうけど、地下にもいる可能性がある。万が一のために爆破準備を。使うのはTNT、テルミット手段は問わんし量は任せる。」
「よっしゃ、行ってくる!」
「パン。校庭のあの怪しい機械、見つけられる分全部回収してこい。敵中を突っ切ることになるが、お前ならできる。」
「……お前のそういう風に言ってくれるところ大好きだよ。」
「―――とまあ以上のように動く予定ですが……構いませんね?」
そういってミカエルに了承を得ようとしてたジョンだったが、実行に関してはミカエルが首肯し終えるよりも彼らは早く行動に移っていた。
*
一方、魔術師から巨大蟻に相手を変えたダイスケは苦戦していた。
数が多いのも勿論問題だが、何より自分の武器との相性が最悪であった。最初は熱弾の連射で対処しようとしていたが、これが意外と蟻の装甲が熱に強く貫けない。熱線で打ち抜こうにも発射と発射の以外に長いインターバルのせいで効率が良くない。
最終的に魔術師たちも追い払った熱線剣で対処することにしたが、いかんせんりリーチが足りない。かつてアメリカで起きた同様の事件に関する知識をなまじ知っているせいで蟻の眉間にむけて一撃必殺を狙うものの、数が数だけに余計に体力が減ってしまう。
「だぁぁぁぁもう!やってられねぇ!!」
倒せてはいるものの確実に擦り減っていく体力と自制心が限界を迎えてしまう。
―――ああ、もういっそのことこいつらを一網打尽でぶっ飛ばせたらいいのに。
まさに、そう思った瞬間だった。片手剣を握っていた恥の手にそれ以上の重みがのしかかる。いつの間にか自分の右手に握られていたもの、それはまさに一振りの戦鎚(メイス)だった。
あまりに唐突だったので理解が追い付かなかったが、ここでまた熱線剣が生まれたとの同じことが起きたのだ。そしてダイスケはこのことからあることを実感する。
それは、自身の中のゴジラは間違いなく自分に力を貸している、ということである。理由はわからないが、世界の毒であるようなの存在が自分に力を貸しているという実感が、ダイスケにとてつもない心の強さと安心感を与えてくれた。
思いがけない太鼓判が大助に勇気と力を与えてくれた。そして大助はその高揚感を、両手に構えた戦鎚を通して目の前に邪魔な蟻たちにむけて解き放つ。
ドォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオン!!!
砲弾の着弾でもない、高性能爆薬や大量の燃料の爆発でもない。ダイスケの戦鎚がもたらした爆発である。そう、これがこの新しいダイスケの武器の特性であった。
ゴジラの熱戦の破壊の要素は、大きく分けて二つに分類される。まずは核反応由来の超高圧超高温。ものによれば太陽表面にも匹敵するその熱エネルギーは大抵の物質を溶解させうる。
そしてもう一つは熱線にさらされた物体の急激な反応による大爆発だ。ある資料によれば熱線を受けた際の大爆発は光速で打ち出された電子や陽子が対象物にぶつけられることによって強制的な熱核反応を起こしているという一説がとられている。これが事実であれそうでなかったであれ、劇中においてゴジラの熱戦を受けた大概のものが大爆発を起こしているのは事実だ。
つまり熱線剣はゴジラの熱戦の高温特性を、戦鎚は熱線照射時の大爆発という特性を形にした武器である、ということになるのだ。
ドォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオン!!!
再び振り下ろされる一撃から発生した爆発は、熱風と爆風を孕んで蟻たちに襲い掛かる。それはこの現象を起こしているらしい怪しい機械も巻き込んだ。頑丈に作られていたようだったが、さすがに十数匹の巨大蟻たちを焼き尽くす爆炎には耐えられなかったらしい。
そしてこの機会が今の現象を起こしていたのは確かなようで、徐々に発生する巨大蟻たちの数は減っていっており、ついに動く蟻は大助の前からは一匹もいなくなった。
こうなれば次にしなければならないのは同じ状況に陥った味方の救援だ。エリーとマリーはまず大丈夫だろう。そう判断したからダイスケは今前ここで一人で戦っていたわけだからして彼女らの心配は不要だろう。木場とゼノヴィアに関してもそうだ。木場の手数の多さとゼノヴィア最大の自慢であるデュランダルの火力があればただ数と大きさしか自慢が無い蟻など倒されるドミノに等しい。
ならば今救援が必要になってくるのはアーロンだろう。ダイスケのように飛び道具もなければ木場のような武器の拡張性もない彼が一人でいるというのは非常に危険だ。
周囲に脅威となるのがないことを確認したダイスケは、急いで彼がいるであろう体育館方面へと走る。
その間、何度かジェット機が地面すれすれを飛んだ時のような音が響いていたが、おそらくこれは件の傭兵集団のうちの一人の能力の影響だろう。さらに、まるでサーカスのブランコにように構内をスイングして例の怪しい機械を回収している者の姿も見える。
味方が動いている光景がさらなる安心となって大助の足に力がこもっていくのを感じる。周りには多くの蟻の死体があることからアーロンも相当奮戦しているのだろう。姿は見えなかったが、体育館の中で争う音が聞こえてくることからそこにいるのだろうと判断したダイスケは、一気にドアを蹴破った。
「アーロン、助けにき……。」
だが、ダイスケの目に飛び込んできたのは孤軍奮闘ながらも果敢に戦うアーロンの姿ではなかった。
当の本人は満身創痍、武器である巨大なモーニングスターも手から離れて無残に転がっている。そして、たった一人の無傷の男に顎を持って片手で持ち上げられていたのだ。
ミシィ
その音からもわかるように、すでに顎の骨の強度限界が来ていることはすぐに見て取れる。これだけでこの男が並々ならぬ腕力を有していることがわかるのだが、ダイスケが不気味に思えたのはそこではなかった。
アーロンを見る彼の瞳が、機械のように冷たいのだ。
「高脅威目標A、無力化を確認。生存状態での捕獲のために戦闘意志の消去の必要有。この場合の最良解は―――」
ゴキリ
胡桃の殻を割るかのような、鈍い顎の骨が砕ける音。直後に男はその手からアーロンを離し、彼の身は地面に力無く崩れ落ちる。
「顎をかみしめることで人体は力を発揮する。うん、彼女に見せてもらった本の通りだ。」
まるで野辺の花を手折るが如く屈強な戦士を無力化したその男には人でありながら人の感覚が無い。さながら冷酷非道の殺人マシンのようでありながら、幼子のような好奇心を持ち合わせた異常な存在なのだ。
だが、何よりも異常だったのは、着ている衣装は違いながら―――
「来たか、オリジナル。そして……最優先殲滅目標。」
ダイスケと全く同じ姿をしていたということである。
唐突な新ヴィラン登場で作者もびっくり。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!