おまけに母が癌(超軽度)で入院、艦これ秋イベ、自身の体調悪化にスランプ、艦これ冬イベ、自身の階段落下事故、Zaraのレベル上げとほぼ艦これ関係で時間が食われました。
ナニヤッテンダヴァーカ!!チクショウメェェェェェ!!あ、ヒトミちゃんはお迎えできましたよ。
そのため今回はいつもの文字数の約1.5倍です。ちょっとだけ大盛りでお楽しみください。
ハーメルンよ、私は帰ってきた!
生き物とは、常に安住の地を求めるものだ。あるものは理想的な環境を求めて長大な距離を移動し、またあるものは自ら定住の地を作り繁栄する。
もし、今いる環境が破壊されれば前者ならば再び移動をすれば済む。だが後者ならこれまで積み重ねてきたものすべてを捨てて一から始めなければならない。それが他者からの破壊であれば再建の前にしなければならないことが一つある。
報復だ。
THEM達の巣が爆破されたといっても、それは中枢のみの話。東京の地下鉄網以上に複雑に絡み合った巣であれば、必ず無事なところがいくつかは残る。そこに残っていた巨大蟻達が校庭に空いたクレーターから大勢這い上がってきているのだ。
目的はもちろん破壊した者たちへの報復だ。それを迎撃するのはMSSのメンバーとマサノ姉妹、そして今動けるグレモリー眷属たち。
「クレーターがすり鉢状になってるのが幸いだね……。」
木場が言うように、すり鉢状のクレーターが蟻地獄の巣のようになっていて彼らが這い上がってくるのを奇跡的に阻止してくれている。大勢で一気に這い上がってきても地面が崩れてなだれ落ちるので、迎撃する側としても相手する数は少なくなるのでありがたい。
「だが、下手に大技を撃つと地形を崩しかねない。私とデュランダルには不向きな戦場だな。」
ゼノヴィアの言う通り、この中で最大の破壊力を誇るデュランダルはこの有利な地形を崩しかねないのでほとんどの力を箸で絹ごし豆腐を扱うような慎重さでゼノヴィアは剣を振るっている。
当然本人の性格とデュランダルの特性上、かなり不向きな環境だといっていいだろう。それでも何とか戦線を維持しているのは大したものだ。
しかし、それはゼノヴィアだけの話ではなかった。
「くそっ、威力の絞り込みに神経が削られる……!」
超音速エネルギーを固形化した矢とラドンの弓をつかうジョン・ロダンもそうだった。元々ラドンの最大の破壊能力は地上の人間たちにはお構いなしに放たれるソニックウェーブによる破壊が元だ。元来繊細な破壊に向いたものではない。
それを環境に影響を与えないように使わなければならないのだから相当神経を削られていることだろう。元々普段からメンバーの傍若無人勝手気ままな振る舞いに胃を痛くしているジョンにとってはかなりの苦痛だ。
それに今近くで戦っているイッセーと裏切ったヴァーリの戦いの事もある。ヴァーリの性格上、目の前の戦い以外の事には興味を持つことはないだろうが、いつ気が変わったり流れ弾が飛んできてもおかしくはない。
さらに弾薬の問題もある。元々が生産がとうに終了した代物であり、在庫処分のバーゲンセールといった感じで倉庫からアーロンが引っ張り出してきた弾だ。最悪の場合、弾が無くなれば味方の攻撃が降り注ぐ中で敵の真っただ中に飛び込んで格闘戦を挑まなければならない。
そのような心配をジョンがしていた時、周囲の環境に変化が起きたのを感じる。突如として自分たちが囲むクレーターをさらに囲む形で炎が立ち上がったのだ。
(敵の新手!?)
ジョンだけでなく全員がそう感じて一気に肝を冷やす。これが敵が行ったものだとしたら、この炎で一網打尽にされてしまうだろう。
しかし、炎はすぐさま消え去る。その代わりに炎が消えた後から大勢の迷彩柄の服とヘルメットをかぶり、大きな銃器を構えた者たちが走ってくる。
敵かと思い一瞬身構えるが、彼らはジョンや木場たちを通り過ぎてクレーターの下の蟻達にガトリング砲らしきその巨大な銃器の照準を付ける。
「射撃用意……。」
隊長格らしき壮年の男の合図に合わせ、一斉に迷彩服たちは安全装置を解除し、引き金に指をかける。そして―――
「てぇぇぇぇぇえええええ!!」
束になった銃身を回転させるモーター音が一斉に鳴り、弾丸のシャワーが蟻達に浴びせられる。
しかし、その弾丸は鉛の塊ではない。光の弾丸である。正確に言うと断続的に照射されるマイクロ波メーサーだ。
それを発するのは04式六連回転砲身メーサー照射機関銃、通称「メーサーガトリング」。対怪獣兵器の中でも数少ない個人携行が可能な装備であり、これを本格配備しているのは世界でも有数の対怪獣迎撃能力を持つ日本国自衛隊第五軍対特殊生物自衛隊、すなわち特生自衛隊のみ。
六束の砲身や誘導装置、その他大容量バッテリーや制御システムで構成されていることを加味しても他の装備と一緒に担いで現場を走り抜けられるという強みを持ったこの銃は、緊急出動の多い特生自衛隊には御誂え向きである。勿論破壊力は折り紙つきで、低出力ながらも連続照射されるメーサーは確実に対象となる巨大生物の体組織を破壊する。
その生物に対する容赦のない強力さゆえに対人戦闘には使用を禁止されてはいるが、元々対人戦闘には出動しないという名目を持つ特生自衛隊のお家事情に合致しているため特生自衛隊の普通科のトレードマークにもなっている。
それらの知識はもともと持っているジョンは、この迷彩服の男たちが日本国自衛隊に属する自衛官であると理解するのにそれほどの時間は無かった。
だが、なぜ特生自衛隊がここに、それも魔術のような芸当で出てくるなど―――そんな疑問がジョンの脳内を回っている間にクレーター内の蟻達は光のシャワーによってばらばらにされて洗い流されていく。
あまりにも一方的な光景に一同は息をのむ。そして特自が現れて五分も経たない間に眼に見える限りすべての蟻達が駆逐されてしまった。
「撃ち方止め!」
先ほどの壮年の指揮官の号令ひとつでぴたりと特異な銃声が止む。傍にいる赤外線スコープを装着した兵士が土煙がいまだ立ち込めるクレーターの中を覗き込む。
「第一斑、クレーター内のTHEMの存在兆候を認めず。」
《第二班、こちらも存在兆候を認めず。》
《第三班、同じく兆候を認めず。》
無線機からの報告を合わせ、その男は決断した。
「よし、第二種警戒、敵残存勢力の索敵に切り替え。各員周囲への警戒を厳となせ。それからクレーター内に偵察ドローンを下して蟻の死体確認と生き残りがいないか地中用レーダーでチェックだ。」
《了解。》
「さてと、あとはお前さんたちだが……ここの責任者は?」
全員の視線を背中に感じたジョンが、あわてて前に出る。
その様子を見た壮年の男はヘルメットについた暗視ゴーグルを上げ、メーサーガトリングを紐で肩にかけて敬礼し、ジョンも返礼する。
「……『Mutants・Military・Service』代表、ジョン・ロダンです。貴方は?」
その言葉を聞いた壮年の男は敬礼していた右手を下し、握手の手を突き出してこういった。
「俺は日本国対特殊生物自衛隊所属、自衛隊陸幕調査部から出向している権藤五郎一佐だ。あとでいろいろ積もる話もあるから……まあ、よろしく頼まぁ。」
不敵に笑うその男の背負い紐を持つ左腕にはセイコーファイブスポーツがキラリと光って見えた。
*
自分の頬を打ち抜く拳。初めは何が起きたのか理解できなかったが、ややあって自分が見下していた存在に痛烈な一撃をお見舞されたのだという事実を徐々に認識していった。
当然感じるのは痛みだったが、ヴァーリ・ルシファーにとってはこれ以上ない歓喜を呼ぶものであった。
自分を殴ったのは兵藤一誠というつい先日までこの裏の世界を知らずに安穏と生きてきた同い年の少年。ただ彼は普通の同年代の少年少女と違っているのはとてつもなく強く、大きな存在を宿しているという事。
その名は赤龍帝ドライグ。神に匹敵しうるこの世界において最強格の内の一角を担うドラゴン。そしてヴァーリにはそれの対となる白龍皇アルビオンが宿っている。
対をなすこの二つの存在は、出会えば必ず雌雄を決さんと拳を交え、いずれかが斃れるという定めを持つ。
そして先代ルシファーと人間の女である母との間に生まれ、類稀なる魔力の才を持って生まれたうえに人の血が流れていることにより神滅具を宿したヴァーリは、育ての親であるアザゼルからも「歴代最強の白龍皇」になりうると太鼓判を押される程の才覚があった。
そんな境遇に生まれれば、自然と己の限界を試し、自分がどこまでいけるのかと考えるのは必定。覇を求め己の力と技術を研鑽し、いずれ来るであろう運命の日に向けて着々と経験を積んできた。
しかし、今代でぶつかるであろう赤龍帝の器である兵藤一誠の事を知り、彼は落胆してしまった。
自分とは違い、ごくごく平凡な家庭に生まれ、ぬるま湯につかっていた只の思春期の少年。同年代でありながら、環境が違えばこうも変わるものかと悪い意味で感心し、そして兵藤一誠という赤龍帝にほとんど興味を失ってしまったのだった。
何せどう考えてもイッセーはヴァーリよりも弱い。目覚めたばかりで少し才能がある子供と百戦錬磨の戦士が戦うように結果は見えている。いったい彼が一角の戦士として成長するまでどれだけに月日を待てばよいのだろうか?
だからヴァーリは己のフラストレーションを発散させるための機会を得るために禍の団の誘いを受けた。旧魔王派などどうでもいい、世界の敵として世界中のつわもの達相手に無謀とも思える戦いを挑む。そんな日々の方が魅力的に映るのは彼の性格上仕方のないことだった。
だが、運命の紅白対決の機会は意外にも早く訪れた。
これまで親代わりになってくれていたアザゼルには悪いとは思ったが、彼の求める平和というやつはどうにも性に合わないから致し方ない。それに一度研究家であるアザゼルと拳をを交えてみたかった。
取りあえず圧倒して押しては見せたが、この後の展開はヴァーリにも読めない。何せ相手を徹底的に観察・解析し、最高の対抗策を練って応じるのが神器研究者としての一面を持つアザゼルの戦い方だ。だからこそ胸がときめく。兵藤一誠との紅白対決よりも、だ。
なのにアザゼルはカテレアなどという血統によってしか物事を推し量れない小物を相手にし、自分にはアザゼルが作ったサポート器具を持ってようやく禁手に至れるイッセーをぶつけてきた。
ヴァーリからすれば、まだ熟れる前の青い果実を売りつけられたようなものであり、何故アザゼルはこのようなことをしたのかが理解できない。
力の使い方を知らない、ただ拳を前に突き出すことしか戦いの術を知らない素人を相手にして何が楽しいのだろう。自分の動きを止めようとしていたハーフヴァンパイアの停止結界の邪眼は面倒だから呪術で封じてはおいたが、その彼らはそういった対策もしていない。
どいつもこいつも、己の力の使い方を知らない間抜けにしか見えない。なのに、一丁前に力は持っているというのがもどかしい。
無味無臭の土壌で育ち、日陰に隠れた華。これほどもどかしく、焦燥を募らせるものがあるだろうか?
だから、その華を鮮やかにするためにヴァーリはイッセーのために一つの提案をした。
「そうだ、君の両親を殺し、君は復讐者になるというのはどうだ?」
無味無臭の平凡な土壌にイッセーの両親の血を滴らせ、赤龍帝兵藤一誠という存在をその名の通り赤く紅く朱い復讐鬼という存在に昇華させる。そうすればきっと、この平々凡々の環境の中で育った隠れた華を色鮮やかにし、特別な世界で生まれ育った自分とようやく同じステージで戦うことができるはずだ。
そう思っていた。が、しかし。
「殺すぞ、この野郎。」
不意打ちで放たれる殺気。
本当にこれが格下の相手なのかと思ってしまうほど、ヴァーリは気圧される。
「俺の家族を、日常を、お前なんかに壊させるかよ!!」
イッセーが吐露する、ヴァーリが軟弱と唾棄したモノへの親愛。直接拳を交わしたわけでもないのに、言葉だけで巨大な拳を眼前に突き付けられたかのようなプレッシャーが襲い掛かってくる。
そして爆発的に増幅したイッセーの龍の気を孕んだオーラが、いかに先ほどのヴァーリの何気ない提案が彼を激昂させたかがよくわかる。
イッセーがついに突撃し、殴打を見舞う。しかし、突き出される拳の一撃一撃は軌道を読むのも容易く、ヴァーリにとって脅威になるものではない。いかにパワーを上げたとはいっても、力の使い方が下手なのだ。
なるほど、兵藤一誠という人物のこの直情さはヴァーリよりもドラゴンという生物との相性はいいだろう。だが、戦う頭ができていなければそれも意味を成さない。
ザンッ!!
不意打ちのタイミングでイッセーの左腕の籠手から刃が突出し、斬撃を繰り出す。龍殺し、ドラゴンスレイヤーと称される聖剣の内の一振り「アスカロン」である。元来、悪魔でドラゴンであるイッセーにとっては最悪の劇物のような代物だが、事前に調整されミカエルからイッセーに護身用として進呈されたものだ。
当然これは半悪魔であり白龍皇であるヴァーリにとっても渾身一擲の大ダメージを与えられるであろうが、やはり単調な動きであるイッセーの一太刀は余裕で躱されてしまう。それでも、それでもとなおもイッセーは追い縋る。
しかし、いずれ限界が訪れる。
今のイッセーはアザゼルからもらった腕輪によって特例状態で発現している禁手に至っているに過ぎない。それが無ければライザーと再戦した時のようにあっという間に禁手は解除されてしまう。
そしてその腕輪にも使用限度がある。綱渡りの状態でかつ全力を出さなければならないという苦しい状況なのだ。勿論、問題はそれだけではない。
「長剣でその使い方はアウトだろうに!」
イッセーのアスカロンの使い方をわかりやすく言うならばインドの短剣ジャマダハルだ。これはパンチの要領で刺突を行う特殊な形状の短剣だが、これはリーチが短い短剣の刃だから有用な武器となる使い方だ。
ジャマダハルを近接戦で用いる際、必要になってくるのは一撃必殺となりうる刺突力であり、斬撃は二次的な用い方となる。そうなると取り扱いやすいのは長い刃よりも短い刃となる。短いリーチの刃であるからこそ、取り回しがきくのであり、刃が長ければ腕に想定以上の負荷がかかるうえに取り回しも悪い。
当然拙いイッセーの技術ではただ振り回すだけの扱いになる上、特異な形状のせいで余計な体力を浪費することになる。世界の刀剣の歴史上に、ロングソードの刃が付いたジャマダハル状の刀剣が同じくインドのパタぐらいしかないことが、イッセーのアスカロンの扱いが間違っているという事の証左だ。
それらの要素の帰結として、大振りの一太刀は容易に躱される。躱しきったヴァーリはカウンターに大量の魔力弾を撃ち込んでいく。
一発一発がその大きさから想像できない破壊力を生み出し、イッセーの鎧の各所が剥がされていく。衣服や装備に隠れて見えないが、着弾か所の直下の肌には痛々しい痣や傷ができているだろう。
今のイッセーからすれば必殺の一撃といい破壊力がその体を宙に浮かすほどの衝撃を与える。吹き飛ばされたイッセーの表情は、まさに己を圧倒する大いなる存在を眼前にした者の目。そして戦意を失い絶望した敗者の目。それは見たヴァーリは勝利を確信し、背中の羽から魔力のジェットをふかして突貫、トドメの一撃を食らわせようとする。
そして充分な距離まで接近したヴァーリは勝利を確信し、宣言する。
「これで当世の紅白対決は―――」
俺の勝ちだ、と続けようとした時、異変が起きた。突如としてイッセーの瞳に闘志が復活したのだ。
空中で体勢を整えると、突き出ていたアスカロンの刃を格納。そしてドライグに命じる。
「ドライグッ!このままアスカロンに譲渡だ!!」
『承知!』
《Transfer!!》
ヴァーリからはさんざん言われたが、イッセーも自分に剣の才が無いことは先刻承知していた。だが、それでも自分なりに使える方法を考えることはできる。
増幅された力がイッセーの指令通りに格納されたアスカロンに浸透し、効果が表れる。その龍殺しの聖剣独特のオーラが格納している籠手の外まで迸る程に強められる。それはまるで、隔離してもその外へ死のエネルギーを放つ放射性物質のように。
イッセーの考えを理解したヴァーリは、とっさに全身をカバーできるだけの大きさの光の障壁を展開する。しかし、それでもイッセーの拳は止まらない。
ゴンッ
苦も無く障壁を砕いだイッセーの拳は、見事にヴァーリの顔面に突き刺さる。その威力は白龍皇の兜のマスク部分をガラスのように容易く砕き、その奥のヴァーリの表情が見えるほど強烈であった。
「―――?」
自分の頬を打ち抜く拳。初めは何が起きたのか理解できなかったが、ややあって自分が見下していた存在に痛烈な一撃をお見舞されたのだという事実を徐々に認識していった。
当然感じるのは痛みだったが、ヴァーリ・ルシファーにとってはこれ以上ない歓喜を呼ぶものであった。
自分を殴ったのは兵藤一誠という、つい先日までこの裏の世界を知らずに安穏と生きてきた同い年の少年。ただ彼は普通の同年代の少年少女と違い、どうしようもないほどに熱い。
一種の感動を覚えていたヴァーリだったが、イッセーはすかさず次の手に出る。殴りぬいた姿勢をすぐさま戻し、すかさず白龍皇の力の根源である光翼に手をかける。
「何を―――?」
ヴァーリが疑問を感じたその一瞬、突如として膨大な量の力の奔流が自分の体内を突き抜けていくのを感じた。そして光翼から噴出するエネルギーと、体内に蓄積されているエネルギーが異常をきたしていることが分かった。
「お前の神器の大本はここだろう!?そしてドライグが教えてくれた、ここは吸い取った余剰エネルギーの排出口も兼ねてるって!だからこうしてやるんだよ!!」
イッセーが狙ったのは鎧の機能の暴走。本来過剰分のエネルギーを排出すべき個所から赤龍帝の籠手の能力で増加したエネルギーを強制的に流し込むことで、エンジンを吹かしている車のマフラーを塞いだ時のような反応を狙ったのである。
ため込んだ力を白龍皇の吸収の能力も利用して流し込んだせいでとてつもない脱力感がイッセーを襲うが、その分効果も絶大だった。赤龍帝の鎧と同じく白龍皇の鎧には各所にコンデンサの役割も果たす制御用の宝玉が各所に配されているが、それらが制御不能を示す異常な光の明滅を起こしているのだ。
『いかんッ!ヴァーリ、一度体勢を立て直せ!!』
鎧の機能がオーバーロードを起こしたことに気付いた白龍皇の鎧に宿るアルビオンが主に警告をかける。ヴァーリはその言葉の通りにイッセーに向き直ってから防御の構えをとった。
だが、その防御も無視してアスカロンの龍殺しの力が相まったイッセーの拳の一撃がすべてを突き崩す。防御のために構えた両腕が装甲ごと貫かれ、易々と鋭い一撃がヴァーリの懐に入った。そしてその口の端から漏れるせき込みと同時に出た鮮血は、ヴァーリにとって大ダメージであることを示す。
「ハ、ハハッ、なんだい、やればできるじゃぁ―――」
めりっ
歓喜の笑みを浮かべたヴァーリの頬に、アスカロンの加護が無いイッセーの右拳が突き刺さる。
「……この一発だけは俺自身の拳で決めたかったからな。お前にとっちゃ味気ないかもしれんが、殴らせてもらった。」
自分の両親をバカにし、あまつさえ自分のエゴのために殺害しようとした分、ということである。しかし、ヴァーリの鎧の破損個所はいつの間にか元の状態に修復されている。
『大本である神器の所有者を叩かん限り終わらんよ。腕輪のこともある。どうにかして一発逆転、乾坤一擲の策が必要になるが……お前何かよからぬことを考えているな?』
ドライグの言うとおり、イッセーにはある策があった。
それは、目の前に転がるヴァーリの鎧の一部だった宝玉。
それは、神器の「主の思いに応じて強くなる」という特性。
それは、神が不在の世界という、非常にアンバランスになった世界の法則。
成功させられる可能性は十分ある。しかし、そうでない可能性だって同じだ。もし叶わないのなら―――
『俺も、お前も死ぬかもしれん。なにせ前例がない。成功しても死んだほうがマシだというほどの苦痛が来るだろう。それでもお前はベットするのか?』
「俺はまだ部長とベッドインしていないんだ。ここで死ぬつもりは欠片もない!!苦痛がなんだ、部長の処女を貰うためにも、目の前のクソ野郎をブッ飛ばすためにもいくらでも耐えきってやらぁ!!!」
『フハハハハハハハハ!おもしろい、おもしろいぞ、我が相棒!脆弱なお前がそこまでの覚悟を決めたのなら、二天龍と称されたこの俺も覚悟を決めなければな!!やってやろう、相棒!否、兵藤一誠!!いつでも来い!!!』
目の前のライバルが何をしようとしているのか、ヴァーリには理解できなかった。すると突然、イッセーは自分の右手の籠手についていた宝玉を自ら破壊し、そこへすぐさま拾った白龍皇の宝玉を嵌め込んだのである。
「あ、っ?―――ああああああああああああああああああ!!」
『ぐぉおおおおおおおおおおおおお!?』
苦しみからの絶叫。人間なら生涯発することがないだろう叫びと、装甲越しにでも伝わるイッセーとドライグの苦悶。
「取り込む気か?アルビオンの能力を?」
ヴァーリはそう口にはしたが、信じることはできなかった。なにしろドライグとアルビオンの能力は正反対。プラスとマイナスが合わさればゼロになるように、ともに共存させて己のものにしようとするのは無理がある。
それに一人の人間が所有できる神器の数は一つだけ。いかにその身を悪魔のものに転生させようが、神が生み出した強力無比な力を一つの肉体に二つも宿すのは器たる肉体を自らキャパオーバーで破壊するようなものだ。
『無謀な……元より交わることのない水と油、プラスとマイナス、陰と陽。それらが合わされば文字通り無だ。勝機が無いからと自棄に走ったか、赤いの?』
『そうとは限らんぞ、白いの?俺はこの相棒を通して見てきているんでな―――バカも突き抜ければ得られるものがあると!!』
全身を突き刺すような痛みが頂点を迎え、イッセーは声にならない叫びを上げる。しかし、つぎの瞬間には二次曲線的に痛みは引いていき、イッセーは息も絶え絶えになりながら、しかし誇らしげに自身の白く変化した右腕を見せつけた。
「へへっ、さしずめ《白龍皇の籠手(ディバイディング・ギア)》ってところか?まあ、白龍皇ってついてても、もう俺のものなんだけどな。しかもちょっと不恰好だけど。」
『その代わり、お前の生命そのものが大きく削られた。一万年は生きる命が、今じゃこの無茶のせいで人間とそう変わらない時間しかお前には残っていない。』
「べつにいいよ。一万年も生きるなんて何すりゃいいんだかわからなくなっちまう。百年とか五十年のほうが俺の身の丈に合ってるさ。」
冷静に自分の命がすり減ったことを納得し、受け入れるイッセーに対してアルビオンは狼狽し、眼前で起きた事実を受け入れられずにいた。
『バカな……いくら神が身罷り、世界を支える《システム》に穴があったとしても、相反する力が一つの場所で共存するなど有り得ないぞ!!』
「いや、アルビオン。事実は事実として受け入れるべきだ。兵藤一誠は俺とは違う意味でイレギュラーであり、そしてこれから強くなる強者だ。だから―――」
ヴァーリはぐっと拳を構え、敵意をイッセーに向けて放つ。
「この力を使う!!」
『Half Dimension!!!』
カッとヴァーリの瞳が開かれた瞬間、彼の異能のパワーソースである光翼が力強く羽ばたき、全身に配された宝玉が光を放つ。
すると異変は起こった。周囲の空間が歪み、ヴァーリを中心に徐々に広がっていく異界の中で彼は見せしめのように眼下に広がる木々に手をかざす。すると、一瞬で木々は半分の大きさにになっていく。
「兵藤一誠、これで俺も君に対して少しは本気を出した!これで俺が勝ったら、君と君の大切のものすべてをハーフサイズに仕上げてやろうじゃないか!!!」
ヴァーリの高々とした宣言。しかし、慣れないイッセーの頭はその言葉の意味をよく理解できていなかった。
「は、半分って……具体的にいうと?」
『そうだな、相棒にもわかりやすく言うなら……白龍皇のあの力は自由自在にあらゆるものを半分にするというものだ。さっきの木々のように、ピンポイントで特定のもの、特定の部位を半分のサイズや量に変えることができる。』
「……もっとわかりやすく言うと?」
『相棒の大好きなリアス・グレモリーや姫島朱乃の豊満なバストのサイズをピンポイントで半分にするといってるんだ、あいつは。』
「……はい?」
イッセーにはその言葉が理解できなかった。いや、意味は理解できていたが、なぜそのような悲劇が起きなければならないのかが理解できなかった。
バスト。
乳房。
おっぱい。
あらゆる言葉で存在し、イッセーの生きる最大の原動力となる素晴らしき女体の神秘、神聖にして不可侵の聖遺物が、頭のおかしいバトルマニアの自分本位のその場のテンションで破壊される。
許されない。
許さない。
認められない。
認めない。
「ふっざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!」
大切な両親を殺すと言われただけでも許せないと思っていた。だが、そこへさらにイッセーの生きがいを汚すと宣言したヴァーリの言動はもはやイッセーにとって万死に値するものである。
その証拠に、イッセーの身体から発する赤いドラゴンのオーラはこれまで見たことのないレベルにまで高まっている。
『なあ、相棒。力の使い方がうまくなってくれることに関しては俺も素直にうれしいと思う。だが、その動機はいくらなんでも……。』
非常に渋い声を出すドライグ。彼の言い分も正しいだろう。何せ自分の神すら屠る強大な力が、乳房への執着がトリガーとなって発現しているのだから。
「うるせぇっぞ!!ンな悠長なこと言ってる場合じゃねぇんだよ!!もう、本格的にトサカに来た!!あの野郎、ぜってぇゆるさねぇええええええええええええええええ!!!」
感情の高まりは神器の力の高まりと同義。それは宿主の神器を扱う技術の向上も意味するが、動機があまりにも不純なのでドライグは実に複雑そうな声を上げた。それとは反対に激昂しつつも早速白龍皇の籠手でヴァーリの半減の力を吸収し、且つ赤龍帝の力で増幅して己のものとするイッセーはそういう技術的観点では冷静に処理していた。
しかし、それも自分がこの世で最も愛する女性のバストを暴虐の白龍皇から守るために必死で、そっちの意味では頭に血が上っているというまさに「平静と情熱の間」の極致にイッセーはいた。
「お前だけは、お前だけは許さない!部長のあの見事なおっぱいを半分にするだなんて!!絶対に手前ェをぶっ壊してぶっ倒してやる、ヴァリィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!》
力の高まりと同時に、イッセーの周囲の空間が爆ぜる。そして彼のその身には過去に例がないほどの強力なオーラがまとわれていた。それを見て笑うのはカテレアとの戦いを終えてすぐにイッセーの元へと向かったアザゼルである。
「アッヒャッヒャッヒャッ!!なんだよ、そりゃ!?主サマのお胸のピンチで成長して強くなる赤龍帝なんて聞いたことないぜ!こいつは傑作だ!!!アッヒャッヒャッヒャッ!!」
アザゼルは腹を抱えて、ここが戦場であることを忘れさせるような抱腹絶倒の姿を見せるが、イッセー本人は真剣である。なにせ最近スキンシップは増えてもいざそこから先へと踏み込めないイッセーだ。まだ彼は主の胸の真髄を味わってはいない。
それを体験する前に壊そうというのだから、これはイッセーにとっては夢を、人生の目標を奪われるのと同義。
ああ、こいつとは絶対に分かり合えない、とイッセーは思う。大助ですらある程度は話には乗ってくれるが、ヴァーリは違う。そしてあまつさえ破壊しようという決定的に分かり合えない相手にイッセーはオーラが乗った指を突きつける。
その威力たるや、ヴァーリにダメージはないものの、余波でその後方の雑木林の一部が吹き飛ばされるほどである。
「俺のリアス・グレモリーに手を出してみろッ!二度と転生できないくらい徹底的にぶち壊したらぁ、この半分マニアがァァァァァァァァァァァ!!!」
乳を愛する男の絶叫で雲が晴れ、隠れていた月が顔を表す。もうここまで来ると本物だ。
「女が理由で強くなる……こんな奴は初めてだ!」
だろうね、ともしここにダイスケがいたなら同意するだろうが、その想像もする間もなく、イッセーは高められた力をまず筋力に変えてダッシュし、一気に肉薄する。そして位置エネルギーを溜める振り子のごとく腕を引いて―――
「これはリアス部長の分!」
ヴァーリの腹部にイッセーの右拳がめり込む。もちろんヴァーリも避けようとはしていた。しかし、神速で動くヴァーリの動きすら、今の乳で高みに立ったイッセーには牛歩のように感じる。
そしてすかさず直接白龍皇の籠手でヴァーリから溜めていた力を奪い取る。
「カハッ……!」
よもや自分の力が自分の脅威となって降りかかるとは夢にも思わなかったヴァーリは、思わず肺から空気を逃がしてしまう。が、これでイッセーの猛追が止まるわけがない。ただの一撃で満足するはずがないのだ。
「これは100越えの朱乃さんの分!」
今度は左拳でヴァーリの右顔面側へのフック。この一撃が白い兜のマスクを割った。
「これは成長途中のアーシアの分!」
うずくまりかけているヴァーリの背中にある光翼を改めて手刀で薙ぎ払うように破壊。そしてそのまま腹に膝蹴りを当ててその身を高く蹴り上げる。
「これは綺麗に整ったゼノヴィアの分!」
イッセーもこれに合わせて高くジャンプし、最後の仕上げにかかる。
「そしてこれが……半分にしたら本当に何にもなくなっちまう小猫ちゃんの分だァァァァァァ!!!」
重力とブーストによる全身を使った猛タックル。二つの物理的力と怒りの力が合わさったタックルが、ヴァーリを地面にめり込ませた。
「小猫ちゃんなんてなぁ!ついこの前ダイスケに「あ、あの……先輩の周囲には結構メリハリが効いたスタイル方が揃っているわけなんですが、先輩としてはスレンダー系ってどうなんですか?」って聞いて「いや、別に人を好きになるのに胸がどうのとかは関係ないだろ。」って安心した次の瞬間「でも幼児体型はないわな。俺そこまで倒錯してねーもん。」って言われて涙目で馬乗りになって殴り続けていたんだ!!!そんなあの子の気持ちが、お前にはわかるのかこの半分マニアが!!!!」
何発も入れてやったが、それでもまだイッセーの怒りは収まらない。さてどうしてくれようかと思案した矢先、ヴァーリは再び立ち上がる。
「おもしろい……本当に面白い。」
口の端の血をぬぐいながら、ヴァーリは不敵に笑う。
『ヴァーリ、奴の半減の力の解析は済んだ。俺の力との対照検証で対抗できるぞ。』
「わかった。ならあのイレギュラーはもう怖くはないな。俺は純粋にぶつかればいい。」
対策がとれたところで、ヴァーリは構えつつも真剣な表情でアルビオンに問う。
「なあ、アルビオン。今の彼が相手ならば、《覇龍(ジャガーノート・ドライブ)》を使う価値があるんじゃないか?」
『いや、それは下策だ。そんなことをしたらドライグのほうの呪縛も解かれてしまうぞ。』
「それならなおのこといいよ、アルビオン。―――『我、目覚めるは覇の理に―――」
『やめぬかヴァーリ!わが力に翻弄されるのが貴様の本懐ではあるまい!?』
必死に止めようとし、ヴァーリに怒ってたしなめるアルビオンの必死さにイッセーは《覇龍(ジャガーノート・ドライブ)》という言葉に懸念を感じた。だが、それでも向こうが何か仕掛けてくる前に決着をつければいい。そしていざ、攻撃を仕掛けようとしたまさにその時、月光をバックにイッセーとヴァーリの間に割り込むように一人の男が舞降りる。
気配は一切感じなかった。しかし、その京劇に出てきそうな中華風の鎧を着込んだ男は確かにヴァーリをかばうように今そこにいる。
「迎えにきたぜぃ、ヴァーリ。ずいぶんとやられてんなぁ。」
「……何の用だ、美猴。」
「それゃないだろう。仲間のピンチに遠路はるばるこの島国の一地方に急いでやってきたんだぜぃ?なーんか他の連中が本部で騒いでてようぅ、北のアースガルズと一戦交えるから、こっちが失敗に終わったんならさっさとそっちに行けってよう。カテレアのほうは完璧にドジっておっ死んじまったんだろ?なら監察のお前もお役御免、俺っちと一緒にまずは帰ろうや。」
「……わかったよ、なら仕方がない。」
勝手に話が進み、帰ろうとするそのさわやかそうな中華青年にイッセーは指をさして尋ねる。
「お、おい!いきなり出てきてなんなんだよ、お前!?」
「ん、俺っちかい?俺っちは美猴てぇのよ。はじめましての、これからよろしくな赤龍帝。」
肩書も何もなしに名前だけをいう男を前に、イッセーの頭の上にはクエッションマークがいくつも浮かんだ。そのクエッションマークを消し去ったのはアザゼルである。
「美猴ってのは斉天太聖、闘戦勝仏の最初の名だ。そんでもんってお前にも一発で分かるように言うなら、そいつは西遊記の孫悟空の末裔だ。」
「は、はい!?」
イッセーが驚くのにも無理はない。なにせ目の前のこの男が誰でも知っている西遊記の孫悟空の血を引いているというのだから。
「まあ、正確に言えば孫悟空が美猴王時代に作った子孫で、その力を受け継いだ猿の妖仙なんだがな。しかし世も末だな、伝説の名を継ぎし者が世界ぶっ壊し団の禍の団に御入会とは。いや、「白い龍」と孫悟空なら相性はいいのか?立場は逆みたいだがよ。」
「ははっ、そいつは言えてらぁな。だが俺は俺、初代は初代さね。俺っちは自由気ままにふらりふらり筋斗雲のごとしってな!そんじゃ、あばよ。」
そういってヴァーリをそばに寄せると、足もとにタールの沼のようなものが現れて二人の姿がみるみると沈んでいく。幻術かはたまた仙術か妖術か、正体は測り兼ねるもののイッセーはあわてて追いかけに行く。
「おい、手前ェ!まだ終わっちゃ……『パキン!』―――へ?」
急いで追おうとするも、聞こえた何かが割れる音でその歩みを止める。すると、ほぼ同時にイッセーの禁手化が強制的に解除されてしまった。
「これで、終わり……?ウソだろ!?」
アザゼルが渡した神器安定化の腕輪がこのタイミングで使用限度を超えてしまい、自壊してしまったのである。
追う手段も、戦う手段も喪失してしまったイッセーは、もはやただ黒いタール状の物体が消え去るのを黙ってみるしかなくなった。
*
首を捻じ折られたメカゴジラの亡骸を地面に転がし、ダイスケは一息つける。
そこへイッセーが駆けつけてきた。
「おい、ダイスケ!無事か!?」
すでにイッセーは赤い龍の鎧を解除しており、そのことからすでに戦闘は終結したことがうかがえる。メカゴジラとの戦いで手一杯であったダイスケからすれば朗報だ。
「おーう、イッセーはどうよ?」
「ヴァーリの奴と戦った。で、―――」
イッセーは自分の右手に埋め込まれた白龍皇の宝玉を誇らしげにダイスケに見せる。
『正直ギリギリの判定勝ちだ。白龍皇がお前を侮ってくれたから退いてくれたようなもんだ。だが……よくやったよ、相棒は。』
若干呆れながらも、イッセーを頼もしく感じているかのようなドライグの声が聞こえてくる。力を送りつけてくるだけで一つも言葉を交わしてくれないどころか姿も見せないダイスケのゴジラとはえらい違いだ。
「ところで、こいつは……?」
ダイスケの足元に転がる白銀の鎧を着た亡骸にイッセーが注目する。
「多分っていうか、間違いなく……メカゴジラだ。」
「は!?それってお前のライバルキャラだろ!?怪獣ものをそんなに知らない俺でも知ってるやつじゃないか!なんでそんな奴が……。」
「これは俺の推測だが、誰かが意図的に造ったんだ。仮面の下の顔は俺そのものだったから、クローンかなんかなんだろうな。」
「わざわざお前のクローンを?なんで、どうやって?」
「禍の団に協力してる奴らがどっからか俺にゴジラが宿っていることを知った上で俺の遺伝子情報を拾ってきて、こいつの生みの親に渡したんだろう。理由は「自分たちがコントロールできるゴジラがほしい」ってとこだろうな。」
考えられるルートとなるとダイスケがかかりつけにしている病院の検査サンプル、ダイスケの生活圏内で髪の毛またはゴミ箱中の……ゲフンゲフン、まあそういった遺伝子的なサムシングを回収した、といったところだろう。だとすると、敵の手はかなり近いところまで迫っていると考えていい。
『だが、造った奴がいるとしてもそいつは何者だ?今日襲撃に来た旧魔王派の奴らはこんな純粋な科学技術には縁遠い連中だぞ。』
「アザゼルのおっさんやミカエルさんが言う『映画の内容は本来来るかもしれなかった世界を映したものだった』って話を考慮するとブラックホール第三惑星人って連中なんだけど、さすがに宇宙人は―――いや、北村さんの事もあるし……。今気づいたけど、あの人X星人名乗ってるもんなぁ。」
そういってダイスケは足元の亡骸に視線を落とす。疑問は尽きないが、現物がここに残った以上、その疑問の解明は早々になされるだろう。
何より今は状況の確認が第一である。イッセーと自分の戦いは終わりはしたが、ほかにも懸念すべきものはあるのだ。
「イッセー、他はどうした?蟻達とか、魔法使い連中とかさ。」
「ああ、蟻の方は全滅できたみたいだ。パッと見だったけど、今は自衛隊の人たちが確認作業してるところ。ミカエルさんが言ってた応援って、特自のことだったみたいだ。」
「マジ、特自来てるの!?こんなオカルト界隈の方にも出てくるんだ、特自って……。」
「悪魔とかも特殊生物扱いってことなのかもな。それと魔法使いたちは、全員逃げたみたいだ。なんか早々に指揮官が撃たれたとかで、自分たちのリーダーの前レヴィアタンを見殺しにして逃げたらしいぞ。例の傭兵チームの人たちがやったみたいだけど。」
「うわ、最低だな。でも、見殺しってことは旧魔王も片付いたってことか。」
ほっと息をつくダイスケ。状況が終息したらしいことを知って、一気に脱力する。そのせいか鎧も完全に解除された。取りあえずその様子を自分の目でも確かめたいのでいったんダイスケはメカゴジラの骸から離れた。
だが、そのタイミングを見計らったかのように奇妙な音が聞こえ始める。
チュイーン、ジジジジ……
まるでパソコンのハードディスクの音のような機械音。背後から聞こえるその音に、まさか、とダイスケは歩みを止める。その時になってふと、あることを思い出したのだ。
アーロンをエド達に任せ、再び相対した時にメカゴジラは間違いなくこう言っていたのだ。「自己修復に手間取っていた」と。
よくよく考えればベースはダイスケのクローンであり、ゴジラの能力を敵が制御しやすくするために機械化されたものだ。ならば、今ダイスケにあった傷のほとんどを癒してしまった回復力も再現されていても決しておかしくはない。
恐る恐るダイスケが振り向くと、まさに想像通りの出来事が起きていた。
ありえない方向に曲がっていた頭が、軋む音を立てながら本来の向きへと徐々に戻っていく。それどころから力なくだらりと下がっていた手足に再び筋力が戻り、ゆっくりと立ち上がる。
「マジかよ……。」
死者の復活という奇跡を眼前にし、ショックを隠せない二人。
「ドラゴンショット!」
立ち上がったメカゴジラに、イッセーは魔力弾を放つ。しかし、先のヴァーリとの一戦で精も根も尽き果てた後の一撃にさほどの威力があるわけもなく、腕のガードだけで容易く遮られる。
「野郎……!」
先ほどと同じように体内の磁力で縛ろうとするダイスケ。しかし、身の回りの鉄屑が若干反応しただけで目的の効果が出ない。
「充電が切れたってのか!?」
つまり、今後磁力攻撃を行うためにわざわざ朱乃に落雷攻撃をしてもらわなければならないということになる。せっかく身に着けた力がもう使えなくなったという絶望感が相まってダイスケの目の前は真っ暗になった。
その隙を突き、メカゴジラは一気に跳躍、そして飛行姿勢を整えると天に向けて加速していく。
『あの加速……物理的に結界を突破するつもり、いや、できるのか?』
どうやらそのつもりなのだろう。目視でもわかる強力な結界を破らんと、メカゴジラはさらに加速する。しかし―――
ガキンッ!!
なにかがメカゴジラに投擲され、直撃する。衝撃が凄まじかったのか、メカゴジラの姿勢は崩れ、バランスをとるのに必死になっている。そして眼下の見下ろした先に、息も絶え絶えながら投擲のポーズをとるアーロンの姿が見えた。
「帰えるなら一発食らってからでもいいだろう……。」
獣具の効果による早い回復で何とかしゃべれるまでに回復したアーロンがせめて一矢報いんと放ったモーニングスターの一撃。
その執念の姿を見て何を感じたかはわからないが、彼の姿を一瞥した後メカゴジラはついに姿勢を整えて結界を突破し、行方をくらませてしまった。
はい、ということで今回はほとんどヴァーリ対イッセーでお送りしてきました。
権藤一佐も出てきましたが、口調とかこれでいいのかかなり不安になってます。
次回はおそらく今回書ききれなかった宴の始末を描くことになるかと思います。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!