「メインターゲットと会敵、交戦に移ります。コンバットオーダーはいかがいたしましょう?」
「先程と同じく当人の自由裁量に任せる。ただし、緊急時は強制コマンドを実行させろ。」
「了解。」
ついに自分たちの技術の結晶が、日の目を見るときを間近にして彼らの胸は躍る。しかし、それでも彼らは与えられた使命の重要さを頭において冷静にふるまっている。
彼らはブラックホール第三惑星人。先日自称宇宙人の北村の前に現れた者たちで、正真正銘の「宇宙人」である。
彼らの星は、危機に瀕していた。彼らの恒星系の中心に存在するブラックホールが母星に迫り、そのシュヴァルツシルト半径の中に飲み込もうとしていているのだ。
本来であれば重力バランスによる惑星間の均衡が保たれ、近くにブラックホールが存在してもその暗黒の咢のなかに飲み下されることもなかった。しかし、恒星系の中の惑星の一つに超光速で惑星と同じほどの大きさの隕石が衝突、そして重力バランスが狂ってしまった。
銀河レベルで考えればいつもどこかで起きていることであり、長い時間をかけて起こる変化であるため気を長くして対処もできるが、恒星・惑星レベルとなると話は別だ。
重力バランスの均衡が完全に崩れるまでには時間があるが、しかし、必ず破滅は訪れる。その為に彼らは母星を捨て、新たなる新天地を探すことにした。時間があるとは言っても何かハプニングが起きて破滅の時が一気に迫ってくるということもありうる。そのため、すぐに植民できる自分たちの故郷によく似た環境の惑星を探し続けた。
そしてついに見つけたのがこの太陽系第三惑星、地球である。
だが、ここにはすでに生命体、それも文明をもち、一部には科学とは違う力を持って科学的アドバンテージを覆す能力を持つ者たちがいた。地球の神話存在だ。
この者たちがいれば、確実に自分たちの植民計画は邪魔をされる。その為、彼らのうちわにおける不和を利用することにした。体制側に反旗を翻そうとする者たちに協力という形で自分たちがいいところをかっさらおうというのだ。
その為に必要だったのが神話存在のトップに匹敵するほどの戦闘力を持った兵器であったが、それは協力者となった反乱勢力「禍の団」が用意してくれた。
入手ルートまではわからなかったが、強力な力を持つという神器と彼らが呼称する武器をコピーできる素材を提供してくれたのだ。そしてそれをもとに兵器を作ったはいいが、試製機は起動しなかった。
どうやら地球の原住民である人間でなければあつかえない代物らしかった。故に二号機は材料の中にあった地球人の遺伝子を素にクローンニングし、こちらの都合の通りに動くサイボーグ兵器を製作したのだった。
これは見事に成功し、元となった者の名をとって「メカゴジラ」とシンプルに呼称することにし、こちらの命令どおりに機能させるために思想、戦闘技能、地球で活動するための一般的常識を教え込んだ。与えた知識はスポンジのようにすぐに吸収し、命令にも従順で申し分のない戦闘兵器は完成しつつあった。
しかし、地球上での活動訓練がたたり、彼は地球と地球人というものに興味がわいているらしかった。しかも、最近では特定の人物と頻繁に会っているらしく、地球への帰属意識が芽生えてしまうのではという懸念もあった。
最悪の場合はマインドリセットして感情のない傀儡としてコントロールすることも可能だが、現場での即時判断能力を惜しんで自我は保ったままにしてある。
そしてそれらの懸念を抱きつつも今日、実戦を迎えることができた。協力者はいろいろ注文を付けてきたが、ほとんど無視して彼らはこの実践テストに集中している。生物のDNAを書き換えて巨大化させる放射線を放つ機器もついでに渡し、効果を出しているので協力者も文句は言わないだろう。
まず、同類の力を持つ地球人を襲撃した。どうやらメカゴジラのオリジナルと顔見知りらしく、完全な不意打ちを与えることができた上に動揺の隙を突いて圧倒して見せた。
そしてあらわれたのがオリジナルのゴジラの力を持つ人間だった。
こちらは自分と同じ姿をしていても冷静に対処しており、それだけでも厄介な敵であることは認識できた。しかし、ベースが同じでも、ゴジラとメカゴジラは違うのだ。
「ふん、メカゴジラがお前と同じ性能だと思ったら大間違いだぞ。」
そういいながら司令官のムガールはメカゴジラからのセカンドシフト要請に許可を下す。ついにあらわれる真の姿にオリジナルは遂に動揺し、その能力に圧倒されていた。
これはいける、と踏んだその矢先であった。突如コマンドルーム内に警報が鳴り響いた。
「セキュリティルームどうした!?」
『緊急事態発生、侵入者による破壊工作の模様!保安員出動せよ!』
本来ならばありえない。なぜならここは駒王町から何キロも離れた山岳地帯の地下だからだ。人類側の最も進んだ技術でも用いない限り、その痕跡を見つけることすら不可能。
ならば、侵入者の正体は限られる。
「ここはまかせる。」
ムガールは指令所を部下に任せて部屋を出る。長い廊下を進んだ先にはいくつもの同胞の亡骸と、一人の男がいた。
X星人、北村である。
「数日ぶりだな。」
「……ああ。どうやら今更になってこちらに組しに来た、という訳ではないようだな。」
「当然。もうここは俺の二つ目の故郷となっている。お前達に渡してたまるか。」
「自分たちの星の環境も自ら汚し、他者を虐げ争い続ける連中が同居人だぞ。そんな連中より我々がこの星を有効利用したほうがよほどいいとは思わないのか?」
「どの口がそれを言う?規模が違うだけで俺たち宇宙の民も似たようなことをしているではないか。他星への侵略などその極致だろうに。文明が劣っているというだけで、この地球の者たちをどうこう言える義理は俺たちには無いんだよ。俺もそのことに、長い時間をかけて気付いた。だから、俺はお前を止める。」
「できるかな?“皇帝の力”がない今のお前に。」
そういってムガールは自分の胸についているワッペン状の通信機を起動させる。
「ムガールだ、メカゴジラを緊急帰還させろ。前哨基地がやられては何にもならん。本拠地に戻し、我らも撤退する。それと……試作一号改を俺のところにまわせ。」
*
「―――状況終了、戦闘用具納め。事後処理にかかるぞ。」
「状況終了、戦闘用具納め!」
指揮官の号令のもと、各自衛隊員は戦闘用具の収容と事後処理にあたり始める。慌ただしく、しかし整然と動いていく隊員たちに指揮官の凛とし、若々しさも感じる指揮の号令が次々と伝わっていく。
何せこの駒王学園に大量発生した巨大蟻討伐に赴いたこの指揮官、まだ二十代の後半であり非常に若い。だが、彼の部下にある年上の隊員も全く違和感や反発を見せずに忠実に彼の指揮を受け入れている。
彼の名は黒木翔。階級はその年齢に似合わぬ特佐。通常の軍隊における少佐相当の権限を持ち、防衛省特殊戦略作戦室においては室長の座についた上で特自に出向する形で今回のような特殊状況における指揮を執っている。
場合によっては、その専門的見地から自分より階級が上の権藤に命令することもできる特別な立場にある人間なのだ。しかし、ほとんどの場合において現場での陣頭指揮にこだわる権藤が出しゃばる形で彼が後方で指揮を執ることになるというのがほとんどである
そんな彼の下に、件の先輩が戻ってくる。
「おう、一旦戻りに来たぜ。」
「先輩、そういう時はいつも先に無線連絡をといつも……。」
「いいじゃねぇか、どうせもうお前が状況終了を宣言したし、向こうには羽の生えたお偉いさんも部下も数名おいてきたし。表に出る話でもないから防衛大臣サマや与党のお偉いさんがせっつかれることだってないだろ?」
「一応、表ざたにはできませんが記録には残さなきゃならないんですって……。」
体を動かしてさえいれば、自分が税金泥棒でないと自覚できるからと先頭に立ちたがる先輩を持つ苦労に黒木の胃がまた蝕まれる。だが、それでも頼れる男であるという点ではいろいろ助けてもらっているのでイーブンなのであろうが。
すると、権藤は本来ここにいるはずの人物の姿がないことに気が付いた。
「そういや、姫島のところの娘はどうした?」
「自分の出番がないとわかると、あっという間に去りました。表向きは、五大宗家はまだ内向的ですから。」
「まったく。一応の立場は俺たちの指揮下にあるってことを忘れているのかよ、雀の嬢やは。」
「それ絶対に本人の目の前で言わないでくださいね。いくら権藤さんが相手でも「朱の字が抜けている」って燃やされます。第一人の事を言える立場なんですか、あなたは。」
五大宗家とは、古来よりこの日本の裏の世界を闇の力から守護し続けた術師の大家達。各家当主は受け継がれていく異能の力をふるい、数多の闇からの魔の手を払いのけてきた。
そのうちの一つ、姫島家の次期当主、姫島朱雀が彼ら特自部隊を強力な結界の内側に転送させたのだ。ちなみに彼らが現れた時に立ち上った炎は、姫島朱雀の異能のパワーソースである霊獣『朱雀』の炎である。
「しかしいいのか?確かグレモリー嬢の眷属にはあの娘の親族がいたはずだがな?無事かどうか気にはならないのか。」
「本人としては気になっているようでしたが、祖父へのポーズもあるのでしょう。古い家というのは、政治の場のように自分を殺していなければならないのでしょうね。」
「まあ、俺には縁遠い世界だな。しかし、だ。」
「なんです?」
「堕天使総督、天使長、魔王の御三方がお前を呼んでいる。これからの話をしたいんだそうだ、ある連中を交えてな。」
「文官がいないのに、ですか?」
「現場に立つ人間と話がしたいんだと。つまり、俺とお前だ。」
本来の役職から大幅に逸脱した仕事が舞い込んだ黒木は大きくため息をつく。彼は一指揮官であり、同時に政治家も兼ねる彼らとは違う。だが、求められれば応えなければならない相手だ。
「わかりました、行きましょう。それがこの国を守るという、私たちの使命につながるのですから。」
*
エリザベス・D・マサノは、先ほどまで戦地となっていた学舎を歩いていた。
ただ歩き回っているのではなく、足元に注意を向けて死体の間に埋もれているであろう何かを探している。実は彼女は、先の戦いの中で見覚えのあるものを目にしていた。
相対した魔術師の一部が身に着けていた、マントを止めるバッジである。もしも、それが彼女の知っているものであれば今回の事件は自分とっても大いに関係がある事柄となってしまう。
そして、彼女は見つけた。
落ちていたのは紫色のフードのような形の花を象ったバッジ。それは、エリーの家の家紋にも描かれているトリカブトの花。
「お姉さま、どうされたのですか?何かお探しのようでしたけど……。」
死体の間を縫うようにしていた姉を心配したマリーが駆け寄ってくる。が、エリーが手にしていたものを見てショックを受ける。
「それ、まさか……!?」
「エエ。アザゼルが言っていた裏切り者、それにサーゼクス様がこの間言っていた事……どうやら私たちのとても近いところで起きているみたいデス。」
*
時計の短針はとっくに3の数字を超えた時刻に、ダイスケはようやく家路に就くことができた。
マサノ姉妹は用事があるからと残り、イッセーたち悪魔の面々は校舎の修理のために今も残っている。魔力を使った修復作業には携われないダイスケは、疲れただろうからというサーゼクスやアザゼルの気遣いで一足早くその場を後にしたのだ。
先の大敗退と、その身を持って味わった自身の威力を考えて追手は無いと考えたダイスケは護衛も断り一人で帰路に就いている。姉妹のほうも、遅くまで残る関係上ゼノヴィアのところに泊まるといっていた。
家までもうすぐそこというところで、自宅から道を挟んだ反対側の家の二階に明かりが灯っているのが見える。榛名の部屋だ。
こんな時間まで夜更かしするキャラではないし、普段から予習復習はきちんとやるタイプなのできっと自分の帰りを待っていてくれたのだろうとダイスケは推理する。実際はダイスケが考えているニュアンスとは少々違うが、その推理に間違いはなかった。
ダイスケからすればありがたい話である。
隣近所にどんな人物が住んでいるのかわからないという、無関心な社会の現代でなかなか実行できることではないだろう。それに両親がいなくなったダイスケからすれば、「だれかが待ってくれている」ということがどれだけ重要なことか。
窓の外から見る限りだが、卓上ランプが点いていることからしてきっと机の上で突っ伏してしまっているのだろう。そんな不健康なことをこれ以上させるわけにはいかないので、ダイスケは携帯をかけ、窓に小石を軽く投げ当てる。
『はい……もしもし……?』
予想は当たっていたらしく、寝ぼけた榛名の声がスピーカーから聞こえてくる。
「もしもし。俺、ダイスケ。今帰ってきて、外にいる。」
『え?』
すると、窓から榛名の驚いた顔が見えた。
『あ、おかえりなさい……じゃなくて!こんな時間まで何してたんですか!?』
近所迷惑になるので窓は開けずに携帯で会話する。
「悪い悪い、オカ研の行事で夜中の学校に忍び込んでてさ。ほら、部長って学校のお偉いさんに顔が利くらしいから簡単に入れちゃって。あ、二人はゼノヴィアのとこで泊まるから心配しなくていいぞ。」
ウソは言っていないはずだ。行った目的と何が起きたのかを言っていないだけ。そういう風にダイスケは罪悪感を感じる自分を納得させる。
『だったら連絡の一つも入れてください!何回メールして通信不可で帰ってきたと思ってるんですか!?』
おそらく禍の団が張った結界の影響だろう。道理で普段なら何十通と来るはずのメールが一件も来ていないはずだ。
「あー、でもなんともなかったからそれで許してくれよ。危険とか、怪我も無かったし。」
これは嘘。戦闘でつけられた傷がゴジラの治癒能力で回復しただけだ。
『そういう問題じゃないんです!ただでさえあの時私のせいで本当に孤立してしまったのに……ダイスケくんは私が支えなきゃいけないのに……!』
震える榛名の声。
「大丈夫だよ、俺は。あの時は俺が勝手に暴走しただけだし、榛名だけは味方でいてくれただろ?それに俺だってもう一人じゃない。だがら、榛名が無理する必要ないんだぞ。」
今、身の回りにいる者の間では自分たち二人しか知らない過去の出来事。それがかつて二人を引き裂き、また現在二人を引き寄せた。誰にも言う必要がない、二人だけが共有する過去―――。
きっと、いま彼女の眼は潤んでいるのだろう。かつての行いを思い出して。だが、それは決して悪徳ではなかったのだ。なのに、彼女はいまだにそのことを悔やみ、思い悩む。
『……なんにせよ、もう私をこんな気持ちにさせないでください。心配するんですから、本当に。』
「―――ごめん。でもありがとう。今度から遅くなるときはもっと早くに連絡入れるから。」
『絶対ですよ?お説教ももう遅いのでしません……おやすみなさい。』
「ああ、おやすみ。」
切れる電話。窓から榛名の姿が消え、カーテンが閉められて電気が消えた。それらを見守り、ダイスケは大きく息をつく。
鍵を開け、もろもろのかたずけをしてようやくダイスケは寝る決心をする。風呂に入ろうかとも思ったが、どうもそんな気になれないから明日の朝にまわすことにする。すでに電気が消えている自室のベットに横たわると、どっと疲れがやってきた。
「ほんとに榛名は俺の母ちゃんだな……でも―――」
守るのは彼女じゃない。自分が彼女を守るのだ。それはあの時から変わらない。
だからこそ戦った。だからこそ殺した。だからこそ会議の場でそう誓った。懺悔の気持ちは無い。誰のせいにするつもりも当然ない。
きっとこれからも今日のようなことが起きる。そのたびに、きっと大切な存在を守るために戦い、殺すのだ。
すべては自分のために、かつて取りこぼしたものをもう一度掬う為に―――そう誓ったダイスケは、やがて微睡の中に沈んでいった。
*
西暦20XX年七月某日。
ミカエル、アザゼル、サーゼクス・ルシファーの三名の三大勢力各代表により、和平協定が結ばれる。
以降、天使、堕天使、悪魔間での抗争は禁止事項とされ、協調体制が結ばれることとなった。
なお、本協定は会談場所となった駒王学園から名をとって『駒王協定』と呼称されることが決定した。
*
「……とまあ、そんなこんなで今日から俺がこのオカルト研究部の顧問となった。気軽にアザゼル先生と呼べ。」
「いや、その「そんなこんな」を詳しく説明して欲しいんですけど。なんであんたここにいるのよ」
自分が帰宅した後に何が起きていたのかさっぱりなダイスケが返す。
アザゼルは一言であっさりと済まそうとしていたが、実際には一言では済まないほどの多くの出来事があった。
まず、イッセーはあることをミカエルに頼んだ。アーシアとゼノヴィアが神に祈る時に、ダメージを負わないように頼んでいた。もともと敬虔な信徒であった二人は、普段から何かあるたびに祈る癖がある。そのせいで日常的に頭にダメージを負っているのだ。
ダイスケは傍から見ている分笑えるのだが、当の本人たちからすれば大問題である。そのことに関して、イッセーは普段からアーシアと生活している分心配していたのだろう。この事をなんとかできないものかとミカエルに相談したのだった。
するとミカエルは二人に「神が不在だと知った今でも、祈る気持ちは変わらないか?」と聞いた。無論、二人の答えは是である。それを受けて世界を管理する“システム”の一部を少々弄って解決してくれることを約束してくれた。
このことに関してダイスケは非常に感心した。普通であれば「祈らないように気をつけろよ」というだけで済まそうものだが、よくぞイッセーはミカエルに直談判したものだなと心密かに感心したのだ。
次にあったのが事後処理だ。これが一番大事である。
突如として現れたテログループ“禍の団”に関する情報収集に各方面への警戒の要請。
それに呼応した各神話勢力への協力の要請と同盟の締結への始動。そして、各地に潜んでいるであろう怪獣と、獣具保有者の探索である。ただ、ただでさえ人目につかない秘境に潜んでいるであろう怪獣の探索は非常に困難である。
故に、これに関しても各神話勢力の協調が採られることとなった。さらに、木場たっての願いにより、聖剣に関する非人道的な実験も今後決して行わないことも確約された。
恐らく世の中少しはマシになるようになってきた、ということだろうか。
だが、マサノ姉妹に関してはあまり良い方向には向っていないらしく、本家に関わる何かを調べ上げるために本国への一時帰郷の準備をしている。
「まあ、禍の団なんて連中が出てくるような世の中だ。これでようやく釣り合いが取れたってことだろうさ。」
ダイスケの心中を察したかのようなアザゼルの一言である。確かに一つの勢力の内輪がうまくいくようになったくらいで世の中そうそう良い方向にはいかないだろう。
だが、世の中の膿がある程度一箇所に集まる状況になっているのは確かだ。この膿をなんとかすれば少しはより良い世の中にはなるだろう。
「俺がこの学園に滞在する最大の理由は、この学園にいる未成熟な神器保有者を正しく成長させるとこだ。まあ、俺の神器マニア知識が世のため、人のためになるってことだ。」
「ってことは、最終的に俺はもう一度ヴァーリと戦うことに……?」
「その通りだイッセー。っていうか、お前らグレモリー眷属とダイスケが将来的な禍の団に対する抑止力になりうると各方面から期待されている。特にダイスケがこちら側にいるっていうのが大きいな。」
「すいません、自分ライバル候補多すぎで抑止力になれそうにないんですけれども。いずれ殺されそうなんですけど。」
「知ってるさ。でもその分、お前に注目が集まって俺としては助かる。ついでに強くなればいいじゃん。」
全世界の神々相手に大暴れした者というだけで、メカゴジラ以外の存在しうるライバル候補にプラスして敵が多い(かもしれない)ダイスケからすれば悪夢だろう。
「ダイジョ-ブデース!もし何かあっても私ができる限りそばにいマス!私のためにいろいろ動いてくれたお礼、ここで恩返しするネ!!」
胸を張って言ってくれるマリーが本当に天使に見える。が、妹の方はその反対で―――
「……もし何かあった時はお姉さまに危害がないように何とかしてあの人を孤立させないと。」
などとかなり物騒なことを呟いている。もし本当に何かあった時には裏切りもおこしそうで怖い。
「だが、問題は連中の規模だ。ヴァーリが自分のチームを持っているっていうのは間違いない。解っているのはヴァーリ、美猴と数名。ほかの構成員の事も考えると集団戦になる可能性も出てくるな。」
「じゃあ、ヴァーリ達はまたここへ徒党を組んで攻め込んで来るってこと?」
リアスの問いに、アザゼルは首を横に振る。
「いや、三大勢力のトップを一度に討つ集まる絶好の機会を逃した以上、ここにはもう用はないさ。奴らの当面の相手は天界と冥界だ。まあ、冥界は悪魔と堕天使が手を組んでるし、天界には天使たちだけじゃなく居候している神獣たちもいる。赤と白の雌雄を決するのはまだまだ先。しばらくはこの学園も平和だろう。」
「静かな戦争状態ってことね……。」
「まあ、まだ小競り合いの規模、そして準備期間ってとこだ。お前ら全員が大学部を卒業する時分でもなければ本格的な抗争は起きないさ。学生生活を満喫できる時間はあるから安心しな。」
「そうっすか……。」
「まあ、イッセーよ。お前は頭が足りないんだから、深く考えるな。お前の敵はあくまで白龍皇ヴァーリだ。それを忘れなきゃ十分だ。だがダイスケ、お前は違うぞ。どこのどんなやつがお前の敵になるかわからないんだからな。まあ、白昼堂々と怪獣王を奇襲しようっていうバカはいないだろうけどさ。」
言われなくとも、ライバル候補は山ほどいるゴジラである。イッセー以上の警戒と鍛錬が必要になるだろう。まあ、その分経験値が増えると考えたほうが幸せだろう。
「それとだ、イッセー。今回勝てたのはヴァーリが油断してくれてたのと、アスカロンがあったおかげだ。それと、取り込んだ白龍皇の力も鍛錬しなけりゃ使えんぞ。それからスタミナもだ。これはグレモリー眷属全員に言えることだ。あのヴァーリだって禁手を一ヶ月は持たせられるんだからな。」
「一ヵ月!?俺なんてまだほんの数秒なのに!?」
ヴァーリとの実力差というものを改めて思い知らされたイッセーだが、よくよく考えれば今回は眷属の半分が役立たずとなる結果に終わっている。
戦えたとしてもダイスケは偶然のご都合主義的に発言した能力で一時的な勝利をしただけ、イッセーは敵の油断のおかげで勝ち、木場とゼノヴィアは自分の能力の研さんの至らなさを痛感させられている。あまつさえ一名は自身の能力を使いこなせていない所為で足でまといにまでなってしまった。
「まあ、現状は酷いにしても、それを正すために来たんだ。大船に乗ったつもりでいろ。そのためには自分の力がどのようなものなのか知り、受け入れることから始まるわけだが―――」
言いながらアザゼルの視線は朱乃へ向かう。
「まだ俺たち堕天使が……いや、バラキエルの奴が憎いか?」
「許すつもりはありません。母はあの男のせいで殺されたのですから。」
「……まあ、いまはそれでいいだろうさ。」
事情を知っているイッセーが複雑な表情に変わる。ダイスケも以前の折檻のさなかに父との確執があるらしいことは聞いていた。
だが、それ以前に自分の事で手いっぱいになるダイスケからすればそれは朱乃に惚れられているイッセーが思い悩むことである。折檻の恨みもあるのですぐ気にしないことにした。
「ああ、それからな。例の傭兵集団、この学校の用務員として常駐することになったから。」
『はい!?』
さすがにこれは全員驚いた。旧魔王から個人的恨みを持たれるような連中が同じ学舎の屋根の下で共に暮らすことになるのだから。
「ちょっと待ちなさいよ、私が聞いていたのは彼らをこの町に常駐させて生活のほうはうちのマンションでっていうところまでだったじゃない!!」
「そこにプラスして日本政府と自衛隊から「生徒並びに住民のの安全のために」ってことでホットスポットになっているココに留めようってことになったのさ。もともと教会の息のかかった連中だし、三大勢力と日本からの給料四重取りだって喜んでたぞ。」
苦労人プラスその他問題児の連中が大喜びしている図が目に浮かぶようだ。しかし、イッセーがあることに気付く。
「あれ、そういえば三十年以上ココの用務員のオッチャンが急に辞めたのって……。」
「ああ、今頃軽井沢あたりでゆっくりと余生を楽しんでいるころだろうよ。」
「悪魔もなんだけど、堕天使も結局金かよ!!」
忘れがちだがリアスへの借金があるダイスケだ。三大勢力の金銭に関する豪胆さというか図太さに驚くばかりである。
「その金の話なんだがな……リアス、お前から言ってやれ。」
「そうね。わたし、あなたの借金をみんなチャラにしてあげようかと思うの。」
「―――はい?」
ダイスケは自分の耳を疑った。なぜなら今までさんざん自分を金銭で弄ってくれたリアスが、その弄るための手段を自ら手放そうというのだ。
「最初はね、アザゼルが肩代わりしてくれるって話だったんだけれども、よくよく考えたらあなたは十分私たちの力になってくれているじゃない?だったらもういいかなって朱乃とも相談したのよ。」
「もちろんこれからも何かをしでかせば、私に変わって小猫ちゃんの折檻が待っていますけれども、ね?」
朱乃の言葉を肯定するように、小猫が手にまいて持った鞭を「バチン!」と鳴らす。だが、そんなことはどうでもよかった。
イッセーと違い、完全な小間使いの立場であったダイスケの待遇が格段に良くなるのである。古代ローマで言えば奴隷から自由市民への昇格に等しい。
「ヨカッタデース!!これで晴れて自由の身、今夜はレッドライスを炊きまショウ!」
「いや、気持ちは嬉しいんだけどさ、なんか違くね?」
「お姉さまがレッドライスを炊くのなら、私はベイクドビーンズのシチューでも。」
「いやー、マリーと付き合ってるからわかるわ、殺すって言ってるんでしょ、遠回しに。幸せのまま死ねって。」
「でもよかったね、ずっとこのままいったらダイスケ君は最終的に命を担保にすることもあり得たんだから。」
さわやかな笑みでえげつないことを言ってくれる木場。まさか本当に、という目でダイスケはリアスを見る。
「前のままおかしなことをし続ければね。でも、コカビエルの一件以来そんなことも無くなったし、もういいかなって。」
そのリアスの言葉を聞いて、ダイスケの視界がぼやける。そして、目頭から何か熱いものがあふれ出てくる。そう、涙だった。
「無くなったぁぁぁぁぁぁ!借金無くなったぁぁぁぁぁぁ!!自由だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
祝、借金主人公脱却!!
というわけでようやく借金主人公の汚名返上いたしました。30話近くかかってようやくです。
それから、そろそろ主人公の獣具の簡単なイラストでもあげようかと思っています。
次回はこれまで語れなかった簡単なダイスケと榛名のなれそめや、某バカどもの怠惰な日常をSS形式で書こうかと思っています。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!