ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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お久しぶりです。
閲覧数も評価もたいしたことない駄作がのこのこと帰ってまいりましたよ。
ほんと、閲覧数ってどうやった増えるんでしょうね。俺が脱げばいいんですかね?(ヤメロ
それはそうと、ゴジラとメカゴジラの獣具の絵が大体できています。へたくそな絵でよろしければ近日人物紹介のところに載せようかと思っています……あれ、これ前にも言ったな。
それではどうぞ。


VS34  宝田大助拉致事件

東京都内某所の大規模墓地に、一筋の線香の煙が上がる。

その墓碑銘に刻まれているのはダイスケの両親の名、そしてその墓の前に立つのはダイスケの二人の祖父だ。

一人の名は宝田春雄。父方の祖父で現在は駒王町のダイスケとは違う家で一人暮らしで、年金暮らしの自由気ままな生活を送っている。

そしてもう一人は母方の祖父、新堂嘉男。いまだ現役で働いており、今日も本来は盆の時期に参るはずの墓参りを唯一あいているこの日に持ってくるほど忙しい身だ。

 

「もう、八年ですか。」

 

「早いものだな。歳をとるわけだ。」

 

二人が見つめるのは墓石に刻まれている年月日。その数字が、いやに重くのしかかってくる。

 

「やはりあの子はお前に預けて良かった。お前がかまってやってくれたから、あんなに強い子になれた。わしにはそんな時間がなかったからな。」

 

「いえ、あれはあれでまだ弱いところがある。それを解かっているのかいないのか、一人暮らしをするなんて強がりを見せているんです。」

 

「思春期というやつだろう。男には、親に隠れてやりたいことがたくさんあるものだ。」

 

「それもそうですな。」

 

この二人、ただの義理の家族というわけではない。かつて共に同じ戦場に上官・部下として立ち、生き残ってきた仲なのだ。いわば、階級の垣根を越えた戦友だ。

そんな間柄だからこそ、普通の祖父同士には無い関係性が作り出せる。

 

「そういえば、九州に一人で釣りに行くといっていたが大丈夫なのか?」

 

「それ自体は大丈夫でしょう。ただ、ひとつ問題が。」

 

「なんだ?」

 

「どうも学校の部活動の合宿に参加せずに行ったとかで、顧問の先生と部長から連絡がありまして。まったく、学校行事は大事にしろと言っておいたのにあのバカ孫が。」

 

「ほう。で、君が叱ったのか?」

 

「いえいえ、なんでも「こちらでお仕置きする」とかで。まあ、任せて大丈夫でしょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

7月20日の駒王町の駅ターミナル。

新幹線から降りたダイスケは、旅行用の荷物を取りに一時帰宅するために駅を出る。荷物は今のところ榛名が預かってくれているので、それを受け取ればいい。

だが、一応の連絡は入れておいた方がいいと思い、ダイスケは榛名に連絡を入れる。

 

『もしもし?』

 

「あ、もしもし。ダイスケだけど。」

 

『はい、荷物の事ですね。』

 

「うん、もうそろそろ取りに行くから。」

 

『分かりました。あ、そういえばダイスケ君に見てほしい文章があって。メールに添付して送りますね。』

 

「え?ちょ、なに……って切れちゃったよ。」

 

そして送られてきたメールには、次の文章が書かれたメモ帳の写真が添付されていた。

 

 

アメフトには気をつけろ

  キックオフが迫ってる

 

 

「なんだ、これ?」

 

全く持って意味が分からない。なので、もう一度電話して確認することにする。

 

「もしもし?榛名さん、ちょっと意味が分からな―――なにがだよ、なんだよ、お前ら!?」

 

すると突然、本当にアメフトの格好をした数人の男たちに取り囲まれ、ダイスケは天高く持ち上げられる。

 

「なにすんだよ、おい!!」

 

周囲の目もなんのその、荷物までも回収したアメフト軍団はそのままダイスケを駅の構内に連行する。傍から見ても立派な拉致である。

一体どこへ連れて行く気なのかとダイスケは本気で心配になったが、入ったのは何の変哲もないエレベーター。すると、一人がカードをエレベータの操作パネルにかざす。階数がカウントダウンされていくが、この駅に地下は無いはずだった。

なのにエレベーターは降り続け、ついに停止する。そして扉が開いたその先には、まるでイギリスのキングスクロス駅を彷彿とさせるような空間が広がっていた。そして担がれたダイスケは三番ホームに停車している独特なシルエットの列車まで連れて行かれ―――

 

ドサッ

 

そのまま列車の中に荷物ごと放り込まれた。

 

『アハハハハハハハハ!!』

 

車両内に響くのは聞きなれたオカルト研究部プラスアザゼルの笑い声。見れば車内にはモニターが設置されており、アメフト軍団の一人がビデオカメラを回しているのに気付く。そう、ずっと中継されいていたのだ。

そして笑い疲れ、涙を拭ったリアスがダイスケに言い放った。

 

「ダイスケ。」

 

「……なに。」

 

「旅に出るわよ。」

 

「うるさいわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「元はと言えばあなたが悪いんだからね。」

 

一仕切り笑い終えたリアスが言う。

 

「貴族の帰郷っていうのは、領地にとってはそれだけで一大イベントなの。そこに眷属や協力者でコカビエルともまともに渡り合ったあなたがやってくるってなったらお祭り騒ぎになるわ。それに加えて他の貴族との会合だとかに顔を出さないといけないから、政治的に見てもあなたの同行が無いっていうのはかなりまずいわけ。」

 

「すいません、俺の存在ってそんなに重要?」

 

「お前はいい加減、自分の存在の重要性ってのを自覚しろよな。大体、禍の団がお前の力を狙ってガチの拉致をしにくる可能性だってあるんだからな。東京ならいざ知らず、お前を一人で目の届かない駒王町の外、それも九州になんて行かせるわけないだろ。」

 

アザゼルと言う通り、如何に日本といっても地域によって神道勢力が強かったり仏教勢力が強かったりとそれぞれの組織の管轄にばらつきがある。さらに聖書内の三大勢力の折り合いを鑑みれば、日本という島国の中に非常に複雑な勢力配分図が出来上がる。

一応、裏で日本国政府が統治しているという形であり、禍の団という共通の敵が存在し、各神話勢力が手を取り始めたとはいってもいまだ完全な協力体制をとれていないのが現状だ。そこへ超重要マーク人物に好き勝手にうろつかれては護衛もへったくれもない。

完全な協力体制と連絡網が完備されればそれこそダイスケも好きに世界中を動けるだろうが、それができないのが今のようやく手を取りあい始めた世界の現状だ。

 

「いや、でもこの扱いは納得できない。特にあの85番、力が強ぇんだよ。」

 

列車の扉は閉まり、ホームには先ほどのアメフト軍団がずらりと並ぶ。この列車はグレモリー家のものだと聞いたから、恐らくグレモリー家の使用人か何かだろう。

 

「でさ、この列車どこに行くのよ?」

 

「どこに行くかって?イッセー、言ってあげて。」

 

「冥界。」

 

「ウソだろぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

これまでないくらいに慌てるダイスケ。そして再び大笑いするオカルト研究部プラスアザゼル。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!!俺を家に帰してくれぇ!!」

 

『無理☆』

 

「第一、俺向こうの船の予約とか入れてたんだぜ?キャンセル料はどうするんだよ!!」

 

「そんなものとっくに私が倍の額で払っておいたわ。」

 

リアスの痛烈なリターン。金を持っている奴というのは本当に怖い。

 

「いや、ほんと、心配してる奴がいるんだよ!榛名になんて言えばいいんだよ、俺は!?」

 

狼狽するダイスケの目の前に、朱乃が見覚えのある旅行鞄を見せる。

 

「なんで朱乃さんがそれを持ってるの?そのかばん、これから榛名のところに取りに行こうとしてたんだよ……?」

 

「預かりました。」

 

「え……?」

 

ダイスケは恐る恐る、リアスの方へと顔を向ける。

 

「言っておくけど、河内さんには連絡付けてあるからね。あと、あなたの親御さんにも。」

 

「……はい?」

 

「だから、河内さんも仕掛け人なんだよ。」

 

笑顔で無情な現実を突きつける木場。

そう、だから「アメフトには気をつけろ」なんて写真が送り付けられたのだ。全てに騙されていたということに気付いたダイスケはついに叫ぶ。

 

「な、な、な、何重の騙しなんだよ!?」

 

『アハハハハハハハハ!!』

 

本気でショックを受けるダイスケと再び笑い出すオカルト研究部プラスアザゼル。ひとしきり笑い終え、ようやく落ち着いた頃にはすでに列車は動き出していた。

ダイスケも徐々に落ち着きを取り戻し、座席にどっかと座り込む。若干ふてくされた顔つきだったので思わずリアスが訪ねた。

 

「あの……大丈夫?」

 

「いやね、ある意味真相がわかってほっとした。クリスマススペシャルの時の伏線も回収できたし。いやー、びっくりしたなぁ。」

 

若干壊れたのかここでメタ発言。そして重要なことを思い出した。

 

「あ、そうだ、電話していい?心配してるのが一人いるから。」

 

素早い手つきで番号をプッシュ。操作ミスをしないあたり変に頭が冴えている。

 

「……あ、もしもしダイスケだけど。―――俺、拉致されたから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

列車での旅は実に順風満帆。何事もなく時空の壁に突入、グレモリー領までの鉄道の旅が始まる。

イッセーはいつものごとく眷属仲間といちゃついているが、ダイスケはアザゼルとゴジラの獣具について話し込んでいた。本当はアザゼルはひと眠りしたいところだったようだが、趣味の領分の話ということで眠気をこらえているところだ。

 

「で、何かわかったんですか?」

 

「これまでの報告と、リアスのレポートからいくつかな。まず分類としてはイッセーと同じ全身装着型、身体能力を生かした戦いに向いたタイプだ。」

 

それはダイスケ自身も自覚があった。格闘能力なら一般的な同年代よりも上の自信はあったし、装着中の身体能力の向上も感じている。

 

「ただ、問題は成長の段階の踏み方だ。イッセーの場合、赤龍帝の籠手は龍の手に近い状態だったが、後に覚醒して今の形になり擬似的な禁手でスケイルメイルの形になった。だが、お前の場合はまずは籠手、次に脚甲、剣が出てきて甲冑になりそしてメイスを出した。こんなバラバラな発現をされたら俺もどう解析すればいいかわからんし禁手に至ったどうかもわからん。」

 

そこでだ、とアザゼルは続ける。

 

「先にウチのシェムハザがとったMMSの連中、それと獣具じゃない近い形態の神器のデータと比較して検証してみることにした。お前のデータは訓練中にとるとして、それと同時進行で比較もやる。なに、お前はただ訓練するだけ。大変なのは俺たちだから気楽にやれ。」

 

「分かりました。兎に角俺はやることやればいいんですね。」

 

「そういうことだ。名前も俺が最高にかっこいいのを考えてやる。」

 

「えぇ……別に『ゴジラの獣具』でいいんじゃ。」

 

「それじゃ物足りないだろ。なんかこう、男心くすぐるイカした名前の方が使うお前の方もテンションが上がるだろ?」

 

「ひょっとしてあいつらの獣具にも名前付けてます?」

 

「ジョンたちの事か?もちろんだ。あいつらも結構気に入ってたぞ。一番苦労したのはマイロンのバランの獣具だったな。独立具現型のあれを見ていると昔を思い出したりしてな。」

 

少し遠い目になるアザゼル。独立具現型の神器をめぐる何かが過去にあったのかとダイスケは勘ぐるが、聞いても何にもならないだろうからとそれ以上そのことに関して訊くのはやめた。

 

「そういえば、あとどのくらいで冥界に着くんです?」

 

ダイスケは後ろにいる朱乃に尋ねる。いつもならリアスに尋ねるところだが、今はグレモリー家の直系の者が乗れる特別車両と眷属が乗る車両に分かれているので今この場にはいない。やはり貴族社会ということもあり、ある程度の身分の差による扱いの違いというものは存在するのだ。

 

「あと一時間ほどでしょうか。魔法陣でジャンプするのと違って、この正式のルートは時間がかかりますから。」

 

「そういえば俺、この前ダイスケと一緒に冥界に来た時と同じように魔法陣で行くのかと思ってましたよ。」

 

イッセーが言っているのは先日のフェニックスとの一件の事だ。あの時はグレイフィア経由でサーゼクスから渡されたジャンプ用魔法陣で移動していた。

 

「あれはサーゼクス様謹製の特別措置でしたから。本当ならイッセー君たち新人悪魔は一度こっちの正式なルートで行かなければならないルールがあるのですわ。」

 

「「え゛!?」」

 

「本来なら罰則ものでしょうけれど、サーゼクス様の計らいですからそこのところは安心してくださいな。」

 

ほっと胸を撫で下ろす二人。特にダイスケはつい最近ようやく借金が消えたというのに前科者になんてなったら目も当てられない。

 

「だ・け・ど……。」

 

急に声に艶が出る朱乃。すると彼女はイッセーの手を取り自身の太ももへともってくる。

 

「主や眷属仲間との性的接触で逮捕されるかもしれませんけれどもね?私とは合意の上ですからセーフで・す・け・ど♡」

 

イッセーの手が朱乃によって徐々に太ももの付け根、スカートの奥へと進んでいく。そんな状況に驚きつつも喜ぶイッセーを見て、アーシアは焦った。

 

「そ、そんなっ!私だって同意の上ですっ!!」

 

あわてて朱乃のスカートの中へ突き進もうとしていたイッセーの手を引き戻すアーシア。

 

「最近の朱乃さんのアプローチは過激すぎです!このままじゃイッセーさんが変態さんになっちゃいます!」

 

それは元からである。

 

「あら、男性は変態ぐらいが丁度いいですわよ?」

 

それは君だけである。

そんな光景をまた始まったな、という冷静な目で見るダイスケ。

なにせ兵藤宅に朱乃やゼノヴィアらまでもが転がり込んできてから彼女たちのイッセーに対するアプローチが日に日に強烈になっていくのだ。そんな風景を日々見せつけられては嫌でも慣れる。イラッとはするが。

だが、こういうときに「破廉恥です」とか「こんなところで発情しないでください」と言って痛烈な突込みを入れる小猫が車窓の外を見つめているだけで何の反応も示していないのだ。そもそも彼女はなぜか若干離れた席に座って他の眷属仲間と距離を取っているようにも見える。

 

「女というのはね、アーシアさん。愛する男性の変態的劣情を全て受け入れて初めてその人の隣に立つことができるのですよ?」

 

「それはアブノーマルすぎますっ!それにさっきもいったように私もリアスお姉さまもイッセーさんとは常に合意の上です!!何の問題もありませんっ!」

 

小猫の事が気になってそっちに行こうかとするダイスケだったが、さすがに女の争いをやっている横を通り抜けられるほどの勇気はなかった。怖いもの。

こういう状況を面白がりそうなアザゼルも、今はダイスケとの話も終わったので眠りこけている。というより、過去にこういうところに首を突っ込んで痛い目でも見たのだろうか。寝て知らぬ存ぜぬで危機回避ということか。

そこへ第三勢力、というより本妻がこちらの車両に入ってきた。

 

「よく言ったわアーシア。危うくダイスケ用の通関証を怒りに任せて窓の外へスパーキングするところだったわ。」

 

「やめて、俺を巻き込むの。」

 

痴話喧嘩が原因で「入国できません」なんてシャレにならない。おまけにダイスケは拉致されて強制連行で来させられたのだから尚更だ。

 

「……主から奪う、というのも燃えますわね。」

 

そこへ火に油を注ぐかのように朱乃が挑戦的な目にリアスに言う。その視線の凄味と言ったら好意を向けられているはずのイッセーが引くほど怖い。

 

「あ、朱乃、貴女いい加減に―――」

 

「ゴホン、リアス姫、下僕との触れ合いも結構ですが、やらなければならないことを失念してはおりますまいな?」

 

リアスの怒りの声を遮る勇気ある第三者がひょっこりと現れる。車掌姿で白いひげをダンディに整えた初老の男性だ。

 

「ご、ごめんなさい……。」

 

「ホッホッホッ。いやいや、それにしてもあの小さなリアス姫が色恋の話に熱くなられる日がこようとは。長く生きた甲斐がありましたな。」

 

愉快いそうな老人の笑いにリアスが顔を真っ赤に染める。身内に恥がばれたパターンだ。

 

「はじめてお目にかかります、宝田大助殿。私、当列車の車掌を勤めておりますレイナルドと申します。以後、お見知りおきを。」

 

イッセーたちとはすでに挨拶を交わしたのだろう、レイナルドはダイスケに会釈をする。その丁寧な所作にダイスケも席を立って態度を改めて返答する。

 

「これはどうも、ご丁寧に。」

 

「実は以前、リアス姫の婚約パーティーでの大立ち回りを見ておりましてな。いやいや、あれは痛快でしたなぁ。それはそうと、こちらの品を。」

 

そういってレイナルドは高級時計でも入っていそうな黒い箱を差し出して開ける。赤い高級生地のクッションの上にはウェアラブル端末らしきものがあった。

 

「他の眷属の皆様はその身に宿した駒の反応を読み取ってすでに入国検査を済まされております。その代り、大助様はこちらの端末を肌身離さずお持ちくださいませ。冥界政府からのお墨付きでございますので、冥界にいらっしゃる際はこちらをお付けください。なお、これは大助様の生体情報を読み取った専用のものとなりますのでご安心を。」

 

見た目は単なる端末だがそこはオカルト、見た目以上の機能が盛りだくさんらしい。

 

「っていうか、こういうの必要なの俺だけなんですね。」

 

「アザゼルがこうしたほうがいいってね。下手に生体認証を体に刻んだらあなたの中のゴジラだどんな反応をするかわからないからって。拒絶反応で獣具が暴走、なんて洒落にならないでしょう。」

 

過保護すぎる抗体反応とも言うべきか。リアスの話に少し背筋が凍る思いのダイスケである。

 

「そういえば、前もこんな列車で現世に戻ったけど、特に何も検閲とかなかったですよ?」

 

「それはバアル家、大王家の特別列車だからよ。あとでその話を聞いてびっくりしたんだから、私。」

 

「いや、おたくら全員で俺を置いてきぼりにしたからでしょうが。」

 

そんなことを言っている間に端末の画面に「登録完了」の文字が浮かび上がる。悪魔には独自の文字があるのだが、日本語で表示してくれるあたりありがたい。

 

「さて、これで皆様全員の入国手続きも済みました。到着までごゆるりとなさいませ。仮眠をとれる寝台車やいつでもお食事可能な食堂車もございます。到着までの鉄道の旅をお楽しみくださいませ。」

 

レイナルドが一礼し、先頭の車両へ戻っていく。そうなれば後は自由時間。男子は男子で集まったかと思えば、新人眷属同士でトランプをしたり、専用車両にいなければならないリアスが寂しくなって残り、再び朱乃と火花を散らしたり思い思いに次元の壁を突破するまでの時間を過ごす。

 

『間もなく、次元の壁を突破します。』

 

ふと、レイナルドのアナウンスが車内に響く。すると間もなく、暗いトンネルを抜けたように一気に車窓の外の風景が変わった。

 

「おわ、すっげぇ!!」

 

イッセーが子供のようにはしゃぐ。目に飛び込んでくるのは人間界と変わらぬ野や木々といった光景だが、空の色が暗い紫色なのだ。それだけで一気に異なる世界に足を踏み込んだという実感がわいてくる。

他にも変わった形の家々があり、異世界の光景のアクセントとなっている。

本当なイッセーもダイスケも一度は訪れているのだが、リアス奪還という目的に目が行っていたせいでほかのことに全く注意がいかなかった。だから余計に、この冥界の光景は新鮮に感じられた。

 

「さぁ、もう窓を開けても大丈夫よ。」

 

トンネルを通過している間はずっと閉められていた窓が開け放たれ、冥界の空気が流れ込む。その空気は人間界のものと違い、どこかぬるま湯のように肌に絡みつく独特の感触があった。

列車の後方を見れば、ブラックホールを思わせる黒い穴があり、そこから車体が次々とにけ出している。この穴が時空の特異点の穴なのだろう。

 

「拉致されずに来たかったねぇ。そしたらもっと感動が強かったんだけど。そういえば今どのあたりなんですかね?この端末の地図機能見ても「グレモリー領」って書いてあるだけなんですけど。」

 

拉致のショックのほうが異世界訪問の衝撃を上回っているダイスケである。

 

「ここはもう我がグレモリー家の領地よ。そういう路線になるように作ってあるから。でも、最終到着地点の駅まではまだね。この領土は日本の本州ほどあるから。」

 

さらっととてつもないことを言うリアス。そんな大きさの領地をもつ貴族なんて聞いたことがない。

 

「冥界の表面積は地球と一緒だけど、海が無いんだ。その分各貴族が持つ領地や堕天使が持つ土地は広大なんだけど、ほとんどの地面は遊んでいるんだ。手つかずの自然も多いよ。」

 

木場の説明で合点がいったダイスケとイッセーである。

 

「そうだわ、イッセーたち新人に与える領土の分配をしないと。余っていた土地があったからそのあたりを切り分けましょう。」

 

「いや、部長。ケーキ切るんじゃないんだから。」

 

悪魔の不動産管理は大丈夫なのか、と心配になるダイスケ。人間界のようにタケノコやマツタケの財産権みたいなものは特にリアスは気にしないらしい。

 

「ダイスケには土地はあげられないけど……ああ、首都にある私の持っているオフィスビルをあげましょう。確かそれなりにいい賃貸料が入るところだから資産価値については安心よ。」

 

「結構ですぅぅぅ!!!見返り要求されそうで怖くて頂けましぇん!!!」

 

過去のトラウマが、ダイスケをギャスパーみたいに叫ばせた。それほどまでに借金を背負った経験は大きいのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

『間もなくグレモリー本邸前、間もなくグレモリー本邸前。皆様、長らくのご乗車誠にありがとうございました。』

 

レイナルドのアナウンスと同時に、徐々に列車のスピードが落ちる。

窓を閉め、降車の準備をする面々。だが、アザゼルだけは降りる様子を見せない。

 

「俺のことは気にするな。このまま魔王連中のところにお呼ばれされているんだ。トップ同士の訪問の御挨拶さ。それが終わったらグレモリー本邸に向かうから先に行っててくれ。」

 

「先生……意外とトップらしいことしてるんですね。」

 

「じゃあ、お兄様によろしくね、アザゼル。」

 

「わかったぜ、リアス。そしてイッセー、この後のお前のトレーニングのメニューは地獄クラスにしてやろう。」

 

車内でアザゼルと別れ、一行は停車した列車からホームに降り立つ。すると―――

 

パンパンパパンッ!!

 

古めかしいライフル銃から発せられる空砲にダイスケは一瞬身構える。MMSの地下射撃場で一度実銃を撃たせてもらっているので音の若干の違いは分かっていても何事かと思ってしまう。

見れば一列に並んだ儀仗兵が空に向けて空砲を放っている。それだけではない。大勢のメイドや執事が並び、空には絵物語の中でしか見たことがないドラゴンライダーのような騎士が空を舞う姿もある。

 

『おかえりなさいませっ、リアスお嬢様!!』

 

一糸乱れぬ号令。慣れているリアスや木場たちはいいが、新人眷属やダイスケからしたら心臓に悪すぎる。ギャスパーに至っては「ひ、ひと、いっぱいぃぃぃ……」と恐慌状態になってイッセーの陰に隠れている始末だ。

さらに花火が上がり、音楽隊が盛大なファンファーレを鳴らす。

 

「出迎えありがとう。ただいま。」

 

慣れたリアスが笑顔で答えると、一同は一糸乱れぬタイミングで頭を下げる。ただただ新人眷属たちとダイスケは圧巻されるまま。そこへ見覚えのある銀髪メイド、グレイフィアが一歩前に出てきた。

 

「お嬢様、お帰りなさいませ。道中御無事で何よりでございました。さあ皆様、こちらの馬車へ。」

 

グレイフィアに誘導され、一同は馬車に乗る。

その馬車も豪華絢爛、引く馬すらとてつもない巨躯を誇り、人間界の馬とは明らかに違う力強さがある。荷物はいつの間にやらメイドたちによって貨物馬車に移され、その行き届いたサービスの良さががわかる。

 

「私の馬車に下僕たちも乗せるわ。イッセーやアーシアたちが不安そうだから。グレイフィアもこっちにお願い。」

 

「かしこまりました。では、ダイスケ様もこちらへ?」

 

「……いえ、俺は木場たちと一緒で。」

 

一番前の馬車にイッセーとリアス、アーシアに朱乃とゼノヴィアとグレイフィアが乗り込む。その次の馬車には残りのメンバーが乗る。

全員が乗り込むと、馬車は蹄鉄の音を立てて進んでいく。すると、ダイスケの隣に座った木場がダイスケに尋ねた。

 

「ねえ、なんでこっちに乗ったんだい?」

 

「いや、あっちの馬車、グレイフィアさんがいるからさ……。」

 

この男、過去にグレイフィアに速攻でフラれたことが若干トラウマになっている。だから先ほどグレイフィアが姿を見せた時も実はイッセーの後ろに隠れていたのだ。

 

「別に気にしなくてもいいんじゃないかな。」

 

「いや、イケメンのお前には絶対分からないねこの気持ち。だいたいグレイフィアさん、サーゼクス様とくっついているんだろ。」

 

「あれ、それ言ったっけ?」

 

「見てわかったよ……。」

 

誰も何も言っていなかったが、ダイスケにはもう察しがついていた。イッセーと婚約パーティーに乗り込んだ時も、この前の会議の時も二人の距離は近かったのである。

 

「だとしたら本邸についたらもっとショックを受けるかもね。」

 

「何?なにがあるの?拉致以上に怖い何かがあるんだけど。」

 

そうこうしているうちに馬車は巨大な門を潜り抜ける。その先に見える巨城こそ木場が行っていたグレモリー家の本邸なのだろう。そこへ至る道もまさに一級品。

邸内の木々はきれいに剪定され、隅々まで手入れが行き届いている庭には花々が咲き誇る。イギリス人のエリーとマリーがいたらさぞ目を輝かせていただろう。さらに飼っているであろう美しい小鳥たちがさえずり、見事な造形の噴水からは高く水が吹き上がる。

間違いなくここは人間界のどの豪華絢爛といわれる宮殿も霞んでしまうほどの豪華さと煌びやかさがある。そこに自分がいることにダイスケは信じられなかった。無理もない、ほんの数時間前まで九州に行こうとしていたのだからこのギャップはすごいのだ。

やがて城の大きな正面玄関の前で馬車止まり、一同が降車する。すると、玄関に至る道にはレッドカーペットが敷かれその両脇を大勢の執事とメイドが列をなしているという、漫画でしか見ないような光景があった。そしてとてつもなく大きい玄関の扉が「ギギギ」と軋む音を立てて解き放たれる。

 

「……木場、これって天国の門じゃないよな?」

 

「大丈夫、ここは正真正銘地獄だから。」

 

「では皆様、お進みください。」

 

グレイフィアの誘導の下、一同はレッドカーペットの上を進む。すると、小さな影が扉の向こうからリアスめがけて駆け寄ってくる。

 

「リアスお姉さま!」

 

紅髪のかわいらしい少年が、リアスに抱き着く。リアスも抵抗することなくその子を受け入れる。

 

「お帰りなさい、リアスお姉さま!」

 

「ただいま、ミリキャス。大きくなったわね。」

 

愛おしそうにミリキャスというらしい少年を抱くリアスに、イッセーが訪ねる。

 

「部長、その子は……?」

 

「紹介するわ。この子はミリキャス・グレモリー。お兄様、つまりサーゼクス・ルシファー様の長男。つまりは私の甥っ子ね。」

 

なるほど、と合点がいったイッセーに対し、白目になるほどのショックを受けるダイスケ。目の前でイッセーがかしこまって挨拶するのも見えなくなるほどのショックである。

グレイフィアとサーゼクスとの間に子供がいたことではない。子持ちの人妻に告白してしまったということにダイスケはショックを受けているのである。もちろん、初対面で何も知らない時に告白したから特に気にすることではないはずだが、ダイスケにとってはショックだったのである。

 

「ダイスケ、何ボーっとしているの。中に入るわよ。」

 

リアスの声でようやく我に返ったダイスケは急いで後を追う。

玄関ホールはそれこそ中で運動会ができるのではないかという広さ。前方には転がり落ちたら確実に死ぬほどの大きさの階段が陣取り、これまた落ちてきたら二・三人は確実に押しつぶされてされて死ぬ程の大きさのシャンデリアがぶら下がっている。

 

「グレイフィア、お父様とお母様に帰国のあいさつをしなければならないのだけれども。」

 

「旦那様は現在外出中です。眷属の皆様との顔合わせは夕餉の席で行いたいと仰っていました。奥様は――」

 

「あら、リアス。帰ってきたのね。」

 

その時、二階のほうから声が聞こえてきた。そこにいたのは長い亜麻色の髪をした、リアスによく似た美女。

似ていないのは若干きつめの目つきと、リアス以上に豊満なバストのみ。その陽子から察するにリアスの姉だろうか。優雅に階段を下りてくるその姿に、ダイスケは一瞬で心を奪われた。

いや、恋をした。

そしてリアスはその美女の姿を確認するなりこう言った。

 

「はい、ただいま帰りましたわ、お母様。」

 

「「お、お、お、お、お母様ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!?」」

 

似たようなことを考えていたらしいイッセーがダイスケと同時に驚く。だが、本気で惚れてしまった分ダイスケの声量のほうが若干でかい。

 

「いや、ちょ、どう見たって部長とそんなに年が変わらない美少女ですよ!?」

 

まだショックが小さいイッセーにはまだ驚きの声を上げる余裕があった。半面ダイスケはまたもや声が出ないほどショックを受けている。

 

「あら、美少女だなんて。うれしいことを言ってくれるわね。はじめまして、私はリアスの母ヴェネラナ・グレモリーですわ。これからよろしく。」

 

そう頬に手をやって言うその姿は本当に年齢詐欺だ。

本当に詐欺だ。これで二児の子持ちで、しかも長男は社会人(?)だなんて誰も信じられない。それが今のダイスケの心中であった。

ただ、今回はグレイフィアの時のように即断即決即行で告白しなかった分ダメージは少ない。むしろダイスケは自分の女性に対する嗜好に危機感を感じている。これではまるで、年上好きとかそんな生ぬるいものではなく業の深い人妻好きだ。

ある程度の年齢の悪魔は自分の見た目を自由にできるというリアスの説明も聞かず、ダイスケは頑丈そうな石でできた壁に向かい―――

 

ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!!

 

「ッあっぶねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!ッあっっっぶねぇぇぇぇぇぇぇええええええええ!!!!」

 

自分を取り戻すために頭をぶつけた。

 

「あら、あの子大丈夫かしら。いきなり頭を壁にカチつけるなんて。」

 

「きっと長旅で疲れたのですわ、お母様。グレイフィア、みんなを部屋に通してあげて。」

 

うん、つかれてたんだよきっと。

 




というわけで「拉致だよこれは!」な回は以上です。
前回や今回のリアスの行動に違和感を感じた方も数多くいらっしゃったでしょうが、ただ単にどうでしょうネタを仕込みたかっただけですのであまり深く考えないでください。
獣具のイラストも感想などで反響があれば近日中にアップしようと思っています(近日とは言っていない)。
感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われると「キメワザ!!CRITICAL CREWS-AID!!終焉の一撃!!!」になりますのでご勘弁を。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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