ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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みんなもっと……感想とか書いてくれてもええんやで(にっこり)?


VS3  ダイスケと小猫のスニーキングミッション

ダイスケが力に目覚めた翌日。

彼は今のところ平穏無事に登校している。

まあ、ダイスケが通う通学路は人通りが多いので堂々と襲われる可能性はほぼ無い(はず)。

ファンタジーのような出来事があった昨日が嘘のようにいつも通りに校門をくぐり、玄関で内履きに履き替え、教室に入る。

はずだった。

 

「おはようございます(黒笑)」

 

教室のドアを開けた途端、目が笑っていない状態の笑顔をした榛名に遭遇したのだ。

 

「あぱらぁ!!??」

 

思わぬ伏兵に普通上げないような叫びを上げる。

突如廊下に響いた奇声に、何事かと様子を見に来る生徒の姿もチラホラ見える。

だが、以前の騒動を知っている彼らはすぐさま状況を察して退散していく。

誰も巻き添えを喰らいたくはないからだ。

そして、彼らがダイスケを見る目が「まあ……ガンバ」と言っている気がしたのは絶対に気のせいではない。

 

「お、おう。おはよう。なんだよ、びっくりするじゃないか。」

 

「あらそうですか。でも私は昨日もっとびっくりしたんですよ?」

 

「は?昨日?何の事?」

 

「まあ、恍けちゃって。……ここではなんですから場所を変えましょうか。」

 

榛名に手を引かれて連行されるダイスケ。

そのまま階段を上って屋上へ続く四階と三階の間に連れて行かれた。

昨日のこと。

それについてダイスケが思い当たるのは、あの自身の常識を打ち壊してくれた第三種接近遭遇と正体不明の力の目覚めだ。

それをどこからどこまでかはわからないが、運の悪いことに彼女に見られていた。

自分でも何が起きていたのか理解できていないというのに、説明できるはずもない。

どうやって言い訳したものかと悩む前に、榛名が問う。

 

「単刀直入に聞きます……昨日、ダイスケくんが街で一緒にいた女は誰なんですか!?あんなに楽しそうにしているだなんて……まさか、彼女さんなんですか!?」

 

「そっちかい!?」

 

予想と異なる質問に、思わず突っ込んでしまった。

そういえば、その話もあったのだった。

その後の出来事の方がインパクトがありすぎて、完全に失念してしまっていた。

 

「以前の女性はただの通りすがりだったとのことでしたが、今回のはどう見てもそんな雰囲気ではありませんでした!どこからどう見ても恋人同士のそれです!!まさか、私の知らないところでダイスケくんが彼女さんを作っていただなんて……。8年前のあの日、なんの知らせもなく突然ダイスケくんが私の前から姿を消した時から私はダイスケくんのことが気にかかってしょうがありませんでした。ご両親のことで心を閉ざしてしまったダイスケくんに何もできずにお別れしてしまったことが、私の心の中でずっと突っかかっていたんです。それが、7年ぶりに同じ高校で再会できたんです!そして、あの時何もしてあげられなかった代わりに、全力で今のダイスケくんの支えになってあげようと心に決めました!ダイスケくんが戻ってきた時にご挨拶に行ったのを覚えていますか?あの時、ダイスケくんの御祖父さまにも「孫を頼む」って頼まれたんです。その言葉と決意を胸に今日まで勝手ですが、ダイスケくんの生活を時々ですが支えさせていただきました。お掃除を手伝ったり、晩御飯を作ってあげたり、寝坊しそうになったときは起こしてあげたり……。それなのに、ダイスケくんは何も言わずに私の下から去っていってしまうんですね。きっと、子供が自立した姿を見た親というのはこんな気持ちなのでしょう……。せめて、あの女性がどんな人なのかは事前に教えて欲しかったです……って、さっき「そっち」って言いました?ひょっとして、昨日ほかにも何かあったんですか!?まさか、あの雰囲気のまま、ホ、ホ、ホ、ホテルに連れ込んで……いけません!!高校生ともあろうものが、そんな不純異性交遊なんて!!どこまでいったんですか?Aですか?Bですか?それとも、SでEのXまで行っちゃったんですかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????」

 

やべぇ、ツッコミが藪蛇になった。

一気に捲し立てられたダイスケは、心の中で後悔した。

 

「い、いや、そういうことじゃあなくてだな。あー、その……。」

 

ダイスケは考える。

なんで彼女でもない異性に浮気の言い訳めいたことをしなければならないのか、と。

確かに彼女の言う通り、頼んでもいないのに実生活で色々と自分をサポートしてくれている彼女には感謝している。

だが、彼女はダイスケの彼女というわけではない。

傍から見れば押しかけ女房とか、通い妻であるし、榛名がダイスケに好意を寄せているようにしか見えないだろう。

しかし、二人共そういうふうには感じていないというのが実情だった。

榛名は「心に傷を負ったダイスケを支えてあげたい」という親切心、ダイスケは「いろいろと手助けをしてくれるいい奴」という認識でしかないのだ。

特にダイスケは、意図的に他人と関わろうとしなかった期間が長いために他人の心情を察するということが極端に苦手だった。

そういうことを鑑みれば、二人共どこか「壊れて」いる。

かといって、誰かがそれを指摘することはないし、どこかおかしいと感じても誰も気に止めない些細なズレだ。

だが、今重要なのはそんなことではなく、いかに榛名の追求から逃れるかだ。

助けを乞おうにも周りには誰もいない。

というか、それほど親しい人間がいない。

まさに神にも見放された、と思ったその時―――

 

「河内さん。取り込んでる最中に悪いけど、宝田君を貸してくれないかな?」

 

自称悪魔の木場祐斗が現れた。

神は見放したが、どうやら悪魔はダイスケを助けてくれるらしい。

 

「き、木場くんですか!?どうして貴方が……?」

 

「うん、河内さんが言う『昨日の事』で宝田君に話があってね。ひょっとして聞いていない?彼がデート商法に巻き込まれたの。」

 

「で、デート商法!?」

 

典型的な詐欺の手口の一つ、『デート商法』。

異性を利用して相手から金を巻き上げんとする悪質な手法である。

それにダイスケが巻き込まれたと木場が言ったのだ。

もちろんそんな事実はないが、すぐさまダイスケはそれが木場が機転を利かした嘘だとわかった。

 

「そうなんだよ、昨日引っかかっちゃってさ。で、危ない所を木場に助けられたのさ。」

 

「そんなことが……。だったら、なんで私に一言いってくれなかったんです!?」

 

「いや、ただでさえ榛名には迷惑かけてるからさ、余計な気を揉ませたくなかったんだよ。ゴメンな、黙ってて。」

 

「でね、警察の事情聴取が今日の放課後にあることになってね。そのことで宝田君に用があったんだ。」

 

結構無茶があるウソだったが、これはダイスケ一人の嘘ではなく、学校でも品行方正で通っている木場も一緒になったものだ。

そのおかげで幾分かの信憑性ができた。

 

「……事情はわかりました。それならばもう追求しません。でも!もう、こういうことは黙っていないで私に相談するなりしてください!じゃあ、教室で待っていますから、お先に。」

 

そう言って榛名はこの場を後にする。

 

「木場、ホント助かった。俺、浄土真宗から悪魔信仰に改宗するわ。」

 

「どういたしまして。まあ、改宗云々はどうかと思うけど。でも、昨日の事で用があるっていうのはホントなんだ。今日の放課後、旧校舎に来てくれないかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駒王学園は市内でも有数の規模を誇る私立学校である。

その前身は「駒王女子学園」という女子高であったが、少子化による生徒数の現象を受けて数年前から共学制となった経緯がある。

無論、共学化に向けて校舎をそのままにしてはトイレ等の問題があるとしてすぐさま新校舎が建てられた。

残された旧校舎は多少の不便さは残るものの、充分に機能できるものであり、一部の生徒が利用しているのが現状である。

その一室に、駒王学園「オカルト研究部」の部室があった。

そして、ダイスケと木場はその室内にいた。

 

「ゴメンね、他の人まだ来ていないんだ。はい、どうぞ。」

 

木場が紅茶を淹れ、ソファーに座っているダイスケに差し出す。

 

「いや、お茶汲みなんてさせて悪いな。……へぇ、いい匂いするな。淹れるの上手いんだ。」

 

「まあね。こういうことする機会が結構多くて。」

 

「へぇ。そういや、いいのか?例の込行った話。この部室にはほかの部員も来るんだろ?」

 

「大丈夫だよ。昨日の仕事の帰りに報告はしてる。みんな事情は知ってる人たちばかりだから、心配しなくても平気だよ。」

 

「仕事ねぇ……。」

 

先日にも聞いた単語である「仕事」。

ダイスケはこれが気になっていた。

就職しているわけではないとしたら、まず思い浮かぶのはバイトである。

だが、大学生ならまだしも高校生が日が落ち切った夜中までバイトをしていることはまずないはずだ(やっている者もいるだろうが)。

そこに結びつくのが木場が自分を悪魔と名乗ったことだ。

この事が虚実である可能性はひとまず置いておいて、悪魔という存在が行う仕事と言えばやはり「召喚主との契約」だ。

キリスト教以前の宗教で祀られていた土着信仰の神々が悪魔とされて以来、これらの力を借りることは悪魔に力を借りる悪徳とされてきた。

祈祷や占い、果ては治療行為も魔術として異端視されてきた経緯があるのが今日のキリスト教だ。

だが、どうにも木場がそのような技術を持っているようには見えなかった。

さらに、木場が用いた剣やカラワーナの正体と行動の目的の事も気になってしょうがない。

痺れを切らしてこの事を木場に訪ねようとしたその時、部屋のドアが開いた。

 

「ようこそ、オカルト研究部へ。歓迎するわ、宝田大助くん。」

 

開かれた扉に、三人の女子生徒が立っている。

一人は白髪ショートヘアの小柄な少女。

たしか、彼女は一年の塔城小猫といったはずだ。

その愛らしい姿からその気のある男子から上級生の女子まで幅広い人気を誇る。

ややロリコン気味の元浜が彼女の隠し撮り写真を片手に、無口系ロリの魅力について延々と語っていたことがあったから間違いない。

もう一名は黒髪ポニーテールのグラマラスかつ包容力がありそうな美少女。

彼女のことは他人にさして興味もないダイスケも知っている。

「学園二大お姉さま」の一角と言われ、男女問わず人気がある三年の姫島朱乃だ。

イッセーと同じく巨乳好きの松田が彼女の101cmのバストについて語っていたのをよく覚えている。

そして、ダイスケに歓迎の意を表したのが学園の誰もが憧れ、ストロベリーブロンドの髪を優雅に揺らす「学園二大お姉さま」のもう一角を担う三年生。

彼女がこのオカルト研究部の部長、リアス・グレモリーその人だった。

 

「……まさか、学園の有名人が一堂に会すとはね。」

 

「あら、私たちのことを知ってるの?なら、自己紹介は必要ないかしら。」

 

「どうやら俺も自己紹介は必要ないみたいっすね、グレモリー先輩。」

 

ある筋の話によると、このリアス・グレモリーの実家は北欧の資産家らしく、駒王学園の経営にも関わっているとのことだ。

ならば、生徒の名前さえわかればある程度の個人情報は簡単に手に入れられる立場に彼女はあるとみていい。

さらに言えば、ダイスケの身辺についても手を出す事もできると見ていい。

そのことがダイスケの表情を固くさせる。

 

「そう、警戒することはないわ。私たちは貴方自身をどうこうするつもりはないから。」

 

そのままダイスケが座るソファの反対に座るリアス。

他の部員はリアスの後ろに控え、朱乃は奥に入ってリアスの分の茶の用意をする。

 

「その確証はどこにあるんです?俺は木場が「自分は悪魔だ」って言ったことだってまだ信じられずにいるんです。まずはそっちが何者なのか言ってもらわないと。」

 

「ええ、教えてあげる。私たちは《悪魔》よ。この部屋にいる貴方以外の全員、ね。」

 

「悪魔……。どこからどう見ても人間ですけど?悪魔といえば、元は地獄の獄卒の天使。見るものに恐怖と嫌悪を抱かせるおぞましい外見のはずですけどねぇ。」

 

「あら、詳しいのね。」

 

「趣味の一つです。」

 

普通なら「自分は悪魔です」なんていう人間は所謂「イっちゃってる人」だ。

ただの通りすがりの人間にそう言われれば「はぁ?」の一言で済む。

そして、このオカルト研究は痛い人間の集まりということになってしまう。

だが、カラワーナのことがあった。

実際に人の背中に翼が生えて空を飛び、超常的な力を振るったのを自身の目で見てしまったのだ。

そういう存在が実在するものだと見ても仕方がないだろう。

かといって、リアスの言葉を迂闊に鵜呑みにするわけにも行かない。

ここはあえて否定し、相手の動きを見る。

 

「まあ、信じられないのも無理はないけど……みんな。」

 

「「「はい、部長。」」」

 

そのリアスの言葉が合図となった。

全員の背中から一様にコウモリのような翼は現れたのだ。

 

「どう?」

 

「……作り物には見えないし、疲れて幻覚を見たわけでもない。ヤバイ薬もキメてないとなるとこりゃ、マジか。」

 

ダイスケが頭を抱えて事実を認める。

その様子を見た一同は漆黒の翼をしまった。

 

「じゃあ、あのクソアマ……カラワーナは?」

 

「……口が悪すぎ。」

 

ダイスケの悪口に苦言を漏らす小猫。

それが癇に触ったのかダイスケはメンチを切るが、小猫も睨み返す。

この二人、「混ぜるな危険」かもしれない。

 

「あの女は堕天使。私たち悪魔と冥界の覇権を争っている敵よ。」

 

「それがなんで俺の命を?」

 

「それは……あら、来たみたいね。」

 

不意にリアスの傍らに一匹のコウモリのような生き物が現れる。

 

「なんスか、それ。」

 

「私の使い魔よ。ある人物を見張っていたんだけど……そう、もうそろそろ学校を出るのね。」

 

その使い魔とやらが全身を使って大きく頷く。

 

「わかったわ。ご苦労さま。小猫、手筈通りに彼を尾行。万が一の場合は連絡と彼の護衛をよろしくね。」

 

「……はい。」

 

小猫が了承し、部室を後にしようとするが、ダイスケがそれを止める。。

 

「ちょっと待ってくれ!グレモリー先輩、彼って誰です?」

 

「……あなたのクラスメイトの兵藤一誠よ。」

 

あまりにも意外すぎる人物の名前が出てきたことに、ダイスケは同様を隠せない。

リアスが使い魔を使って彼を監視し、小猫が尾行するということは彼も悪魔や堕天使に関わる何かがあるということだ。

しかも護衛が必要になるということは、彼が命の危険にさらされる事もありうるという事。

それこそ前日のダイスケのように。

それ以上考えるのは、もうできなかった。

 

「グレモリー先輩。折角ですけど、俺は塔城についていきます。いいよな塔城?よし、行くぞ。」

 

小猫からの返事を待たずにダイスケはドアノブを掴む。

 

「待って。貴方まで行く必要はないわ。それに、貴方には私達のことを知ってもらわなければならないの。」

 

「レクチャーならいつでも出来るでしょ。」

 

「そういう問題ではないの。小猫を監視に付けるということは、彼に危険が迫るかもしれないということ。小猫にはそれを払うだけの実力がある。でも、力に目覚めたばかりの貴方が行っても足で纏いになるだけよ。それに最悪……。」

 

そのリアスの言葉ですぐさま朱乃がダイスケの傍に立ち、ドアノブを握る手を掴む。

 

「貴方が無理に行こうとすれば、わたくしが全力で止めさせていただきますわ。自校の生徒が自殺しに行くのをみすみす見逃しはできませんから。」

 

「……どけよ。先輩ったって関係ェねぇんだぞ。」

 

「あらあら。血気盛んなのはいいですけれど、勇気と蛮勇は別物ですわよ?」

 

朱乃の表情は一見柔らかそうだが、その目にはなんとしても止めようという決意があった。

だが、それでもダイスケの気持ちは変わらない。

 

「ねぇ、あなたがそこまで彼にこだわる理由は何?友達だから?」

 

リアスが怪訝そうに尋ねる。

 

「そんな高尚な関係じゃないですよ。でもね……。」

 

ダイスケはひと呼吸置き、しっかりとリアスの双眸を見据えて言う。

 

「俺は今まで碌に他人と接しちゃいなかった。だから、一人ぼっちなんてしょっちゅうですよ。自業自得ですけどね。でも、そんな俺にあいつは自分から接してきた。俺に変われるチャンスをくれた一人なんだ。そんなあいつがいなくなったら……馬鹿な話できるやつがひとり減っちまうですよ。」

 

「……随分とまあ、利己的な理由ね。」

 

「利己的なのは悪魔も一緒でしょ。」

 

空中でリアスとダイスケの強い眼差し同士がぶつかり合う。

だが、ややあって木場が口を開いた。

 

「……部長、彼に関しては心配は不要かと思います。実際、先日は一人で堕天使相手に善戦するどころか圧倒していましたし。彼が小猫ちゃんについていっても問題はないかと。」

 

意外な木場の助け舟に、ダイスケは驚く。

そんなダイスケに向けて、木場はウインクで答える。

 

「……祐斗が太鼓判を押すんだったら心配はないかしら。でも、くれぐれも無茶はしないように。小猫、何かあったらすぐに私たちを呼んで。」

 

「……わかりました。」

 

そう言って小猫が先に部屋を出る。

跡を追おうとするダイスケだが、一旦足を止める。

 

「……すいません、無理言って。」

 

「いいのよ。」

 

そしてリアスに向けて頭を下げたあと、すぐさま駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらアルファワン。目標に動きないかオーヴァー。」

 

「……こちらオメガナイン。特に動きありませんオーヴァー……って、何なんですかこれオーヴァー。」

 

「ばかやろう。尾行つったら、トランシーバーで連絡だろオーヴァー。」

 

「……持ってるふりじゃないですかオーヴァー。」

 

「なんでも形から入るのがいいんだよ。細かいこと気にすんな。つーか、お前だってアンパンと牛乳食ってるじゃねぇかオーヴァー。」

 

「……これはいいんです。お腹減ってるし、雰囲気も出ますからオーヴァー。」

 

「お前も結局、形に拘るんじゃねぇかオーヴァー。」

 

「……。尾行中なんですから静かにしててくださいオーヴァー。」

 

「無口キャラのくせにお前だって結構しゃべてるじゃねぇかオーヴァー。」

 

「……うるさいオーヴァー。」

 

「お前がうるさいオーヴァー。」

 

「……黙れオーバカ。」

 

「お前が馬鹿。」

 

「……死ね。」

 

「お前が死ね。」

 

罵り合いを続けながら、物陰に隠れているダイスケと小猫。

その視線の先は元浜家の二階にある、元浜本人の部屋だ。

なんの変哲もない一軒家だが、まだ日が昇っているのにその窓にはカーテンがかけられている。

 

「……なんでカーテンしてるんです?」

 

「あれだろ、元浜のお宝DVDでも見てるんだろ。三人して。」

 

ここでいうお宝DVDとは、本来なら未成年が持っていてはいけないR-18な内容のアダルティなDVDのことである。

その言葉を聞いた子猫の眉間にしわが寄せられる。

この手のアダルティな話は嫌いなのだ。

 

「……なんで男ってこうもスケベなんですかね。本当に軽蔑します。」

 

「スケベじゃなきゃあ、すべての生物は死滅してるよ。」

 

そんな他愛もない会話をしていると、玄関からイッセーが出てくるのが見えた。

こころなしか、かなり憔悴しているように見える。

 

「あいつ……授業中もしんどそうにしてたけど大丈夫か?」

 

「……まだ慣れていないんです。自分の変化に。」

 

「それって一体……?」

 

小猫に問うても答えは帰ってこない。

疑惑を抱きつつも、イッセーは歩き続ける。

そして、そのふらつく足取りで向かった先は、近くにある大きな公園の噴水広場であった。

イッセーは何事かつぶやきながら、周囲を見渡している。

 

「なんて言ってるんだ?」

 

「……『そうだ、俺ここで夕麻ちゃんと……。』以前にも誰かとここに来ていたみたいですね。」

 

「聞こえるのか?」

 

「……悪魔の身体能力は人間のそれを凌駕していますから。弱点も多いですけど……!」

 

小猫が何かを感じ取る。

すると、周囲の様子に変化が訪れた。

空が歪み、水の上に油を落としたような色に変わって行ってしまったのだ。

 

「……人払いの結界です。よほどのことがない限り、外にいる人間に中の様子を知られることもなければ、無意識にこの場所を避けるようになります。」

 

いわば、この場所は開かれた場所でありながら密室になってしまったのと同様になった。

人に知られず、何かをするにはうってつけの環境だ。

問題はこれを誰がやったかだ。

ダイスケはもちろん、イッセーもそのような知識はない。

小猫は目の前にいてそのようなことをする素振りは見せなかったし、やったとしてもメリットがない。

となれば、この結界を張ったのは第三者ということになる。

すると、イッセーの目の前に黒いソフト帽とトレンチコートの男が現れる。

人払いの結界があるにもかかわらずこの場所にいるということは、この男は人外の何かであるか結界を張った張本人かのどちらかである。

可能性が高いのは、その両方だった。

であれば、イッセーの身が危ない。

 

「塔城、グレモリー先輩たちを呼べ。俺は先に行く。」

 

「……先輩はどうするんです。」

 

「イッセーを助ける。頼んだぞ。」

 

そして小猫が止める間も無く、ダイスケは走り出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

兵藤一誠は当惑していた。

今朝からおかしなことが起こり続けている。

まず、最近になって天野夕麻という他校の生徒と付き合うことになったのだが、誰もそのことを覚えていない。

親友の松田と元浜に聞いても覚えていないという。

さらに、携帯のアドレスも消えていた。

それだけではない。

体が非常にだるい。

日光を浴びるとクラクラする。

普段であれば考えられない事だった。

放課後、元浜の家に2人で集まっての秘蔵のDVDを鑑賞していたが、その時にも異変を感じていた。

普段、この手のDVDを観賞するときは雰囲気を出すために室内を暗くしている。

であるはずなのに、まるで電気を点けているかのように明るく見える。

お陰で肝心のDVDの内容はちっとも頭に入らない。その為、2人を置いて早々に切り上げてしまった。

 

「おかしい、昼間よりも元気になってきてる……。昼夜逆転したみたいだ。」

 

昼間感じていた気だるさはもう無い。その代わり、不気味に思えてくるくらい活力が湧いてくる。

すると不意に、子供の声が聞こえてくる。辺りを見回しても子供らしき影はない。

 

「ちょっと待て、あんな遠くの声が聞こえているのか……?」

 

見れば500m以上先にひと組の親子連れがいる。その声が聞こえていたのだ。本来、聞こえるような距離ではないのは誰の目から見ても明らかだった。

 

「何なんだよ……。俺、何がどうなっているんだよ……!」

 

例の天野夕麻の件といい、この二日間だけで不可解なことが多すぎる。

そう思い悩むうちに、いつの間にか昨日来ていたはずの公園に着いていた。

何を思ったわけではないが、中央の噴水へと足を進める。

 

「そうだ。俺、ここで夕麻ちゃんと……。」

 

―死んでくれない?―

 

ズキン、と頭が痛む。

 

「なんだよ、今の頭に響いた声。もしかして、夕麻ちゃんの?」

 

何かを思い出しそうになる。

まるで自分で押し込めてしまったかのような記憶。

すると不意に、背筋がゾッとする感覚に襲われる。まるで蛇に睨まれた蛙の気持ちになったかのような、そんな気分だった。

 

「これは数奇なものだ。このような所で、お前のような存在に出会うとは……。」

 

黒いソフト帽にトレンチコートの男が現れる。

間違いない。イッセーの体と本能は、この男に得体に知れない恐怖を感じている。

 

「……フン。」

 

今までで感じたことのない殺気。

心臓を素手で掴まれたか、はたまた尻の穴にツララを突っ込まれたかのような恐怖。

今まで体験したことのないその感覚に、思わずイッセーは後ずさる。すると、

 

「え?うわっ!」

 

ほんの数歩後ずさっただけのはずだった。それなのにイッセーの身体は跳躍し、5m以上も後ろにジャンプしている。

 

「……なんだ、逃げ腰か。」

 

つまらなそうに男は言う。

 

「クッソ、訳分かんねぇつうの!!」

 

たまらず走り出す。

訳がわからないことは確かだが、イッセーは己のカンに従い逃げ出した。

 

「黒い、羽根?」

 

走るイッセーの眼前に、黒い羽根が数枚舞い落ちる。

するとどうだろう、強い風が巻いたかと思ったら、目の前にあの男がいる。それも、背中に黒い翼を生やして。

 

「うわ!」

 

驚いてしまったせいで頓き、尻餅をついてしまう。

 

「下級の存在はこれだから困る。主の気配も仲間の気配もない。消える素振りも見せず、魔法陣も展開しない。……お前は“はぐれ”か」

 

男は意を決したように俯き、手を横にかざす。

そしてその手には、“光でできた槍”が生まれた。

 

「ならばお前を消しても問題はあるまいて。」

 

(なんだよおい、こんな目に遭うんだったらこんなおっさんより、美少女相手の方がマシだぜ!!)

 

そう思いイッセーは再び逃げ出す。

だがその刹那、腹部に猛烈な痛みが襲う。あの男の投擲した光の槍が、背中から腹部へ突き刺さっているのだ。

だた刺されているのとは違う。毒を流し込まれているかのような猛烈な痛みが全身に行き渡り、体に力も入らなくなってしまっている。

 

「仕方あるまい、“光”はお前たちにとっては猛毒。止めを刺したかと思ったが……意外と丈夫にできているのだな、お前は。」

 

その言葉と同時に突き刺さった光の槍は消える。しかし、突き刺さっていたものが無くなったせいで出血と痛みは更に酷くなる。

 

「このままでは苦しかろう。ひと思いに……楽にしてやる。」

 

再び光の槍を振りかざす男。

だが、それを邪魔するかのように男目掛けて巨大な岩が飛んでくる。

 

「何ッ!?」

 

慌てて標的を飛んでくる岩に変え、我が身を守らんと槍を投げる。

しかし、槍が岩に当たる前に岩の方が粉々に砕け散る。

 

「おらァァァァァァあああああああ!!!!」

 

岩を砕いたのは、クラスメイトのダイスケだった。

なぜ彼がここにいるのかと疑問に思う前に、ダイスケは男に向けて蹴りを放つ。

先ほど飛んできた岩はダイスケが投げたもので、蹴りくだいて目くらましに使うためのものだったのだ。

 

「がハッ!?」

 

その一撃は男の胸を打ち付け、後ろに吹き飛ばして喀血させる。

 

「無事か?」

 

「いや、死にそう……。」

 

「だよな。」

 

確かに死にそうなイッセーだったが、その苦しみも忘れてしまいそうになるほどにダイスケの登場は意外すぎるものだった。

どうしてこんなにタイミング良く現れたのかという疑問もあるが、それ以上に気になったのはダイスケの手足だった。

まるで甲冑の籠手や脚具のようなモノがついていたのだ。

 

「ダイスケ……その手足。」

 

「足?本当だ、足にも付きやがった。」

 

どうやら本人も意外だったようだ。

だが、今はそのことを考えている時ではない。

 

「貴様……人でありながら悪魔に味方するのか!?」

 

倒れていた男が立ち上がる。

 

「あ?誰が悪魔だ。つーかお前、カラワーナと同じ武器を使うってことは堕天使だな?」

 

「そうか。貴様はカラワーナがしくじったという……ならここで貴様も殺して奴に恩を着せるのもよかろう。」

 

男は口の端から垂れた血を拭うと、再び光の槍を構える。

 

「上等だ。焼き烏にしてやるよ。」




最近になって牙狼に嵌ったせいでダイスケに本来持たせるはずじゃなかった剣を持たせちゃいそうな今日この頃。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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