なお、前回の反動で今回はちょっと文章少な目です。
――自分はどうしたらいいのだろう。
自分の存在意義、それは創造主の目的とするものの達成が第一。だが、それを達成するためには自分に世界を教えてくれた恩人を殺すことと同義。
本心を言えば、彼女には死んでほしくない。だが、それは自身の存在意義と矛盾する願いだ。
二律背反とはまさに事のこと。やらなければならないことはわかっている。だが、それは自分のやりたいこととは違う。
――自分は、どうしたらいいのだろう。
*
ダイスケが駅に着いた後、すぐさま黒服を着た男たちが出迎えに来た。荷物を預かってもらい、連れていかれたその先は富士の裾野手前の森の中にある野営施設であった。
そのうちの一つの中に通されると、そこには司令官らしき若い自衛官と奇妙なヘルメットとローブ姿の一団の姿があった。
「よく来てくれた。私は今回の作戦を指揮する黒木だ。勿論君や裏の世界のことも把握している。よろしく頼む。」
「こちらこそよろしくお願いします。それで、作戦っていうのは?」
「その前にまず、君には知っておかなければならないことがある。そのために彼らを紹介したい。……自己紹介を。」
黒木に促され、赤いヘルメットの男が前に出る。
「我々はミステリアン。火星と木星の間にあるアステロイドベルトから地球に来た、いわゆる宇宙人だ。」
「――自分、特撮好きなんで薄々そうじゃないかなーとは思ってたんですけど……映画のまんまですよね?コスプレとかじゃなく?」
ダイスケが言っているのは映画『地球防衛軍』のことである。地球人との交配と地球侵略にやってきた宇宙人と全人類が団結して戦う、という内容だ。
「無論、我々は本物だ。地球が我々を受け入れてくれた経緯は、映画とはだいぶ異なるがね。」
「彼らはもともと地球を侵略しに来たが、地球の神話勢力の存在を知ってそれをあきらめた。そのかわり、技術提供と引き換えに日本に秘密の居留地を作ることにしたんだ。ちなみに彼らが現れたのは映画公開の後年だ。」
「堕天使の総督が「映画の内容は現実に起こるはずだった未来を記したものじゃないか」って言ってましたけど……。」
「恐らくそうなのだろう。映画に私をモデルにしたんじゃないのかと思えるキャラクターがいるのも知っている。実に不思議な気分だがな。知らず知らずのうちに我々は神話世界と宇宙、そして怪獣の三つの世界のメタ情報を持っている、というわけだ。」
「それじゃあほかの宇宙人も……。」
「どこの国家も公表はしていないが、地球外知的生命が存在していることは把握している。天使や悪魔の存在が裏の世界として表の世界とつながっているようにすでに彼らとは共生関係を結んでいる。そこで不審な動きがあれば、今回のように我々特自が動くことになっている。」
隠さなければならないことも多いが、と黒木は疲れた様子でいう。
「だが、今回については我々も被害を受けた上に別の宇宙人にも被害が出た。死んでいった同胞のため、何よりこれ以上の被害を食い止めるため、ぜひとも君の力を貸してほしい。」
そう言ってミステリアンのリーダーはダイスケの手を取る。
「それはもちろんですけど、いったい何があったんですか?」
「……三か月前、我々の居留地は奴ら――ブラックホール第三惑星人の襲撃を受け、地底工作用ロボット「モゲラ」を三台盗まれた。そしてその直後、この伊豆半島にあるキラアク星人の居留地に襲撃を仕掛け、占拠したらしい。」
「……あっさりとまた別の重要な情報が出てきましたけど、今は一応飲み込んでおきます。メタ情報含めて。」
「そうしてもらえると助かる。キラアクの基地を襲撃したのはおそらく、キラアクが持つ非常に強力な宇宙船を利用しようとしているからだ、と踏んでいる。おそらく、それを使って大規模な破壊活動を行うのだろう。」
「もしかしてファイヤードラゴンですか。」
「おお、そこまで知っているとは。かの宇宙船は自身の周囲に強力なプラズマのフィールドを纏うことでそれそのものが強力な砲弾と化す。飛行速度も速く、人類が持つ現行の航空機やミサイルでは迎撃不可能。神話勢力も表立って活動できない分、破壊のしほうだいだ。」
「そこで我々は奴らが行動に移す前になんとしてでも検挙ないし叩かなければならない。そこでどうしても障害となるのが奴らの有しているという、君が戦ったサイボーグ兵器だ。」
「それで俺に奴と戦え、ってことなんですね。」
ダイスケはそう会得するが、黒木はそれを不承不承の体で認める。
「本当なら、君は奴の情報を教えてくれればそれでいいと言いたいのだが。本来は君のような一学生が前線に出る必要はない。」
「俺は何度も最前線に立って戦いました。今更前に出ないだなんて……。」
「そのことも知っている。だが、君のご家族のことを考えれば前に出て戦えとは言えまい。特に、私のような立場の人間からすればな。」
「……祖父のことですか。」
ダイスケがそう言うと、黒木は首肯する。
「関係ない、とは言わせないぞ。君のお爺様の影響力は絶大だ。その親族に万が一のことがあれば……どのような影響が出るかわからない君ではあるまい。」
「分かっています。でも、それでも決めたんです。大切なものを、その大切なものがいる世界を守るって。だからこれまでいくらでも血を流してきたし、殺しもした。」
「……十七歳とは思えないな。まあ、そこまでの覚悟があるのなら頼み甲斐がある。作戦の説明をするからついて来てくれ。」
黒木はそう言って立ち上がり、ダイスケとミステロイド達を引き連れて大きなテントにはいる。そこにはすでに、MMSの面々とアーロンがいた。
「アーロン、あんたも来てたんだな。」
「ああ、三大勢力の協力者としてな。それに奴には借りがある。」
「あれ、そういえば学校の方は?」
「そっちの方は今悪魔さん方に任せてある。今日はボーナス狙いの出稼ぎみたいなもんさ。」
そう言うのはパン・ルパレである。バイト感覚の発言ではあるが、その恰好はすでに戦闘準備万端である。ジェイなどは相変わらずスキットルで酒をあおっているがやはり恰好だけはしっかりしている。他の自衛官が目をしかめているがそんなことお構いなしだ。
「攻撃を前に、これよりブリーフィングを行う。まず、この地図を見てほしい。」
黒木は部下に命じ、卓上に富士山周辺から伊豆半島の範囲の地図を広げさせる。
「ミステリアンの居留地は本栖湖周辺、キラアクの居留地は富士の裾野地下一帯の範囲だ。しかし、ここ最近伊豆半島周辺の温泉地の湯の噴水量が減るなど明らかに地下に異変が起きている。」
地図の上にはさらにクリアシートが乗せられ、そのキラアクの居留地の規模が視覚化される。
「恐らく奴らはミステリアンから奪ったモゲラによって天城山にかけてかなり強引な地下開発をしているとみていい。その結果、源泉に影響が出たものと推測される。さらに、こちらのMMSメンバー、マイロン・ブラットレーが行った航空偵察による偵察写真を見てほしい。マイロン、説明を。」
今度はプロジェクターに数枚の獣具を用いてとったであろう空から撮られた写真が移される。
「このように怪しい人物が複数名周辺を警戒しているのがわかる。先にミステリアンに見てもらったがキラアクの格好ではないらしい。」
「それ以前に、キラアク星人は周囲が高温でないと生きていけない。それ故に火山地帯であるこの周辺に本拠地を構えたわけだが、恐らく奴らによって生命維持装置は破壊され、鉱石状になって潜む仮死状態になっているだろう。つまり、地下で活動しているのはほぼ100%ブラックホール第三惑星人であるとみて間違いない。」
そう補足するのはミステリアンのリーダーである。そして黒木が続ける。
「そいつらが頻繁に出入りしているのが、この天城山にある出入り口だ。国土交通省に照会したところ、ここでのトンネル工事は行われていない。つまり、十中八九奴らの通用口だ。それとこれの大規模なものがもう一つ。富士山上吉田付近にあるこの坑道だ。ただ、こちらの方から潜入するには問題が一つある。」
また別の写真が、プロジェクターによって投射される。説明するのはアーロンだ。
「この人物に注目してほしい。この手にした剣、堕天使の情報筋によって獣具であることが分かった。数少ない記録に残っている獣具で、《海底恐龍の旋風蛮刀(チタノザウルス・ストームブレード)》という一振りしただけで瞬間風速320メートルの突風を発生させられる代物らしい。」
瞬間風速320メートルという言葉に、誰もが驚愕した。なにせ下手な台風やハリケーン以上の風速だ。生身の人間が喰らえばひとたまりもない威力である。
そこへ黒木が疑問を投げかける。
「その獣具使いは禍の団から派遣されてきた人間なのか?」
その黒木の問いに、アーロンが答える。
「いえ、堕天使が録っていた記録によると、この人物はそう言った裏の世界には関わっていません。彼の名は真船明。海洋開発機構に所属し、一か月前から行方不明届が出されています。」
「拉致されてマインドコントロールされているのか?しかし、なぜ彼はピンポイントで狙われた?」
「恐らく、組織を裏切った堕天使から情報を受けたのでしょう。それから、彼の妻真船桂はもうそろそろ出産が近いそうです。」
そのアーロンの言葉を聞き、テント内はしん、と静かになる。
「何とか殺さずに嫁さんのところに帰してやりてぇなぁ……。」
ぼそり、と呟いたエドの言葉は全員の心の代弁であった。黒木がその静かになったテント内の空気に軛を入れる。
「それに関してはこの後の話だ。これから話すのは、ここをどう制圧するか。それをまず考えよう。」
*
「……性能的には申し分なし。スペックも随時更新してきた。それなのに、だ。なぜおまえは結果を出せない?」
ムガールは拘束したメカゴジラに問う。
「無論、送り出すこちらの想定を敵が超えているのは事実だ。その点を予測できないことに関してはお前を運用する我らに問題があると認めよう。しかし、それ以外に重要な問題がある。」
一拍間を置き、ムガールはメカゴジラに詰め寄った。
「どうもお前の電子頭脳には欠陥がある。論理的に、かつ効率よい戦闘プログラムが何かの影響を受けてアルゴリズムが狂わされている。……何か心当たりはないか?」
「……無いな。結果を出せないのは純粋にの俺のスペック不足だ。」
そういうメカゴジラの答えを聞き、ムガールはとあるスイッチを押す。すると、メカゴジラの体に電流が流れた。
「ぐあああああああああああ!!!!」
苦しむメカゴジラの姿を見ても、ムガールの表情は涼しいままだ。
「惚けるなよ。我々が何も知らないとでも思っているのか。」
そういうとモニターに霧香の姿が映る。それは、メカゴジラの記憶の中から拾い上げられたものだった。
「貴様、この原住民とたびたび接触して地球側の論理や常識を学んでいたらしいな。それがお前の戦闘プログラムに悪影響を与えていると我々が気付かないとでも思ったか。」
「俺の頭を覗くな……!」
ムガールの表情が忌々しげにゆがむ。
「精神安定のために貴様にある程度の自由行動を認めていたのが間違いだった。よもやこのような形で悪影響が出ようとは。今後、貴様の自由行動を一切認めん。戦闘時以外常時拘束する。」
「……わかっている。」
息も絶え絶えになりながらも、メカゴジラは承諾する。ある程度は覚悟していたことだ。しかし、ムガールはさらに残酷な宣言をする。
「いや、それでは足りんし根本的な解決にはならん。――マインドリセットの準備をしろ。」
「なに!?」
ムガールの言葉と同時に、機材が運ばれてくる。その中には六角形のバイザーと透明なドーム状のヘルメットが組み合わさったヘッドギアがあった。それの姿を確認すると、メカゴジラはひどく怯えた。
「待て!それで戦闘プログラムに悪影響が出るかもしれないんだぞ!!」
「もともと貴様はこちらで遠隔コントロールできるように作られているし、基本プログラムに影響は出ない。何も問題はないさ。あるとすればお前の記憶を封印してしまうぐらいのものだが、戦闘には何の支障も出ない。」
「やめろ!やめてくれ!!今まで積み上げてきたものを、忘れたくない!!」
メカゴジラは必死に拘束から脱しようともがくが、コントロール権をむこうに握られているためまともに体を動かせない。
「それが我らの目的達成の障害になっているのだ。優先順位をはき違えるな。……やれ。」
「やめろぉぉぉぉぉおおおおお!!!」
ムガールの部下たちによって無情にもヘッドギアは設置される。すると途端にヘッドギアは機能し始めた。血管を思わせるヘルメットの模様が輝きだし、皮膚も頭がい骨も通り抜けて光は脳に直接作用する。
メカゴジラの叫びの裏でこれまでの自分の行動や感情のすべてに鍵を掛けられていく。頭を直接のぞかれ、すべてを見られるようなおぞましい感触が全身を駆け抜ける。初めて霧香にあったときのこと。その霧香に様々な本を見せてもらい学んだこと。ダイスケに敗れ、ほんの少しの悔しさを感じていたこと。それらすべてが塗り潰されていく。
「ああああああああああああ!!!」
「そうだ、ファイヤードラゴンによる攻撃の目標に駒王町も付け加えよう。それで後顧の憂いを断てるというものだ。」
頭振り、必死の抵抗をして見せるもすべてが徒労に終わる。なにをしても、リセットは止まらない。
「――あ。」
最後の記憶の一片が塗り潰され、メカゴジラはがくりと頭を垂れる。すべての記憶が封印されたのだ。
「手間をとらせよって。これで少しは――」
マシになるだろう、と言いかけた時、けたたましいサイレンが響いた。
「何事だ?」
「第一ゲートに侵入者、これは……地球人からの攻撃です!」
「……居留地を襲ったのが裏目に出たか。だが、問題はない。番犬を向かわせろ。それで事足りる。それと全面攻撃の開始を繰り上げる。ファイヤードラゴンの準備をしろ。それと……。」
そう言ってムガールはメカゴジラを見やる。
「必要ならばさっそく働いてもらおう。文字通り心機一転してな。」
ということで今回は実際の地図とにらめっこしながら書いていました。
地図を見て分かったのですが、キラアクって富士演習場から伊豆半島までかなりの範囲にわたって基地を作ってたんですね。
そしてファイヤードラゴンの機能が出てきましたが原理云々は独自解釈によるものです。Wiki見てもプラズマ云々なんて書いてありませんのであしからず。
なお、感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われると「キメワザ!!CRITICAL SACRIFICE!!」になりますのでご勘弁を。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!