ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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 今回は短めです。


VS44  家族だからできること

「宝田君、雑魚の相手は私がしましょう。それではご健闘を。」

 

 そういって金髪と黒髪が入り混じったウェーブ髪その男、マクレガー・メイザースは食堂の中央に陣取り相手を見渡すように一瞥する。

 

「ふむ、この程度ならそれほど本気を出さずともいいようだ。」

 

 そう言ったとたん、すべての敵魔術師がマクレガーに向けて攻撃を放つ。が、マクレガーはそれらを手で一振りしただけで空中に停止させる。

 

「馬鹿な!?」

 

「単調な攻撃魔法相手ならこの程度は誰だってできますよ。だてに禁術にまで手を出していませんから。」

 

 今度はマクレガーが杖を取り出し、まるで綿菓子を棒の先に集めるかのように周囲の停止した魔術から魔力を抽出していく。

 

「とりあえず事情聴取もしたいので、殺しはしませんよ。」

 

 そう言ってかき集めた魔力を拘束魔術に変えてマクレガーは敵全員にはなった。すると一瞬のうちに大勢の敵魔術師たちが杖を取り上げられた状態で拘束される。

 そして、これから起こるであろうダイスケの戦闘に巻き込ませないために屋敷から離れたところに転移した。

 

「さて、どう決着をつけるのかな、あの少年は。」

 

 

 

 

 

 

「まさかオリジナルのゴジラがここへのこのこ来るとはなぁ。死にたがりか?」

 

「そうかい?俺にはお前のほうが死にたがってるように見えるけどな。」

 

「なに?」

 

「……俺の家族に手ぇだしたんだ。楽に死ねると思うなよ。」

 

 放たれる怒気と殺気。しかし、力を得たことで酔っているチャールズはそれに気づいていない。

 

「ダーリン、あのね……。」

 

エリザベスがこれまで何があったのかダイスケに話そうとするが、ダイスケはそれを制する。

 

「大丈夫。話はマクレガーさんから全部聞いた。この家と禍の団のつながりも、親父さんが殺されてたことも、裏でマリーが動いていたことも。全部マクレガーさんが調べ上げていた。だから――」

 

 一瞬、ダイスケはエリザベスに振り向く。

 

「こんな悪夢は、もうここで終わらそう。」

 

「終わらせる、だと?異能に目覚めて数か月も経っていないお前が、この魔術の名門ドゥルイド家を背負う私を相手にして?」

 

「知らねぇな。そんなもん。」

 

 そのダイスケの言葉を聞いた途端、感情を爆発させるようにチャールズは《悪徳獣の放電腕甲(ガバラ・ディスチャージハンド)》から凄まじい電撃を放つ。

 電子レンジと同じ原理で大量の蒸気が発生し、ダイスケの姿が見えなくなるとチャールズは自身の勝利を確信する。

 

「ははっ!見たか!稲妻を食らったのも同然のダメージで立っていられるはずもない!」

 

 通常であればその通りである。普通の人間が稲妻を浴びればまずショック死、そこまでいかずとも全身に大やけどを受け、通電による破壊で内臓や筋肉にダメージが残る。

 そう、普通であれば。

 

「……こんなもんか?」

 

 蒸気が晴れた時、そこには何の変化もなく立っているダイスケの姿があった。

 

「……おっと、知らず知らずのうちに加減していたか?」

 

 そういってチャールズはさらに威力を上げてダイスケに電撃を放つ。しかし、ダイスケは怯むどころかチャールズに向けて歩き始める。そして、歩きながらその手足に獣具を纏っていく。

 

「まだだ、まだ威力は上げられる!!」

 

 焦りの色を浮かべつつ、徐々に恐怖に駆られるチャールズ。その言葉のとおり、電撃の威力は放つたびに上げているのだ。しかし、ダイスケはゆっくりとした歩みを止めない。

 

「この程度なら鎧をまとう必要もないな。」

 

「止まれ、止まれ、止まれぇぇぇぇぇ!!!」

 

 懇願にも思える叫び。そしてそのたびに徐々に威力を上げた電撃を放つも全くダイスケには効いていない。それもそのはず。

 

「この程度の電撃なんてなぁ、姫島先輩の雷に比べたら屁でもないんだよ。」

 

 今まで受けてきた一撃の重みが違うのだ。

 かたや必殺の一撃まで昇華し、「雷の巫女」とレーティングゲーム参戦前の若手悪魔ながらに称されるほどの者の一撃と、かたやつい最近得た力をただ単に垂れ流すような使い方をする者の一撃の重みの違いである。

 

「ひとつ教えてやるよ、お前の獣具の元になったガバラって怪獣な、自分がゴジラに勝てないからってその息子をいじめる三下なんだよ。お前そっくりだな。二人の親父さんに勝てないってのも、俺に勝てないってのも。」

 

 そのダイスケの瞳は、かつて見たマリーとエリーの父親の死ぬ寸前の強い瞳そっくりであった。まるで、あの時と同じである。そう思い、死者が帰ってきたような錯覚を覚えたチャールズがダイスケに恐怖を覚えた。

 そしてダイスケは恐怖するチャールズの眼前まで迫り、ぬっと顔を近づける。

 

「マクレガーさんが禍の団とのつながりについて聞きたいらしいから殺しはしねぇ。だがな――」

 

 左の襟と右腕をぐっとつかみ力を入れる。そしてそのままチャールズを背負い投げた。背負い投げではない、背負い、投げたのである。

 空中で何の抵抗もできず、そのまま空を切ってチャールズの体は飛んでいき、食堂の壁を突き破ってさらに屋敷の壁を貫通し、瓦礫の中でようやく止まった。

 

「これくらいは食らってもらうぜ。」

 

 すでに視界にないチャールズに、ダイスケはそう言い放った。

 

 

 

 

 

 

 屋敷から少し離れた丘に、ドゥルイド家の墓地がある。

 その離れた一角、一本の木が立っているそばに新しく持ってきた石があり、そこにはマリーとエリーの父の名が刻まれていた。

 

「今は間に合わせだけど……後でちゃんとしたのを作るからネ。」

 

 墓石の前に佇むのはエリーだ。

 一件の後、エリーとマリー以外のドゥルイド家の一族はことごとく三大勢力によって拘束された。一族そろって禍の団に合流しようとしていたのである。

 さらに、チャールズ・ドゥルイドには殺人の容疑がかかった。うち一件のエバート殺しに関しては人間の法での立件はできないが、父親殺しに関しては拳銃を使ったと自白しているためまずはイギリスの司法による裁きが下されることになるだろう。そのあとは悪魔や堕天使からの苛烈な尋問だ。まあこれに関して言えば完全に身から出た錆、自業自得といえるだろう。

 二人の父親に関しては、死体を遺棄した場所などをまだチャールズが供述していないため、本格的な埋葬はまだまだ先になるだろうとのことだった。

 エリーとマリーの母親は、マクレガーの薦めでグレモリー家が所有する冥界の巨大総合病院に入院することになった。入院とはいっても当人の健康状態はいいほうであったが、各地に散っているドゥルイドの残党から命を狙われないようにとの配慮でそうなった。なんにせよ、これでいつでも家族は会えるようになった。

 ただ、ダイスケにとっては搬送されるエリーとマリーの母に「どっちでもいいから、いつか孫を抱かせてね」と爆弾を落とされたのには参ったが。

 

「あれ……?」

 

 そんな中、丘の上から見下ろせる屋敷の玄関に一人に人影が見える。それは、マリアだった。それも、荷物をまとめて出ていこうとしているのだ。エリーは急いで丘を下り、門まで走る。

 

「待って!どこに行く気!?」

 

「お姉様……。」

 

 どこか気力が伴わないマリアがエリザベスに向けて振り返る。

 

「私、これから一人になります。お姉様にお会いすることももうないでしょう。さようなら。」

 

 そういってマリアはその場を立ち去ろうとするが、その手をエリザベスが握って引き留める。

 

「……離してください。」

 

「離さないヨ。何で行っちゃうノ?」

 

「私にはもう、お姉様と一緒にいる資格なんてありません。だって、お姉様の手伝いをするふりをしてずっと裏で邪魔してたんですから。何も知らずにただお父様を憎んでお姉様の努力を不意にしてきた私なんて、お姉様と一緒にいる資格なんて――」

 

「――あるよ!姉妹じゃない!!」

 

 その言葉に、マリアは振りむかずにただすっと涙を流す。

 言葉ではああ言った。やはり心の奥ではそばにいたいと願っている。しかし、それを許せない自分がいることもマリーには事実であった。

 

「別に一緒にいていいじゃねぇか。家族なんだから。」

 

 そんなマリーに、いつの間にかそこにいたダイスケが話しかける。

 

「あなたは……いつの間に。」

 

「屋敷を出ていこうとするお前の姿が見えたからな。まあ、こんなこったろうとは思ったよ。」

 

「なら……止めないでください。自分で自分の罪に決着をつけたいんです。」

 

「そういうことなら余計に止めないとな。だってさ、お前のしようとしていることで決着がつくとは思えないんだよ。」

 

「それってどういう――」

 

 どうしても自分と止めようとするダイスケに、マリーは疑問を持つ。そんなマリーに、ダイスケは「わかってねぇな」と続ける。

 

「そりゃ、お前にとっちゃ大好きな姉ちゃんと離ればなれになるのは苦痛だろうさ。でも、それじゃエリーから逃げてるだけだ。自分で自分を裁いたつもりでも、ちゃんとエリーと向き合ったわけじゃない。ほんとにお前がやんなきゃいけないことは逃げずに、ちゃんと謝って関係をもとに戻すことだ。仲良し姉妹にな。」

 

「そんな……今更元に戻るなんて。」

 

 否定するマリーに、ダイスケはさらにいう。

 

「お前だってさ、家族のためにやってたんだろ?そこにちょっとした思いの食い違いがあっただけじゃないか。」

 

 ならさ、とダイスケは続ける。

 

「できるじゃないか。他人じゃできない、家族だからこそできる仲直り。」

 

 そういってダイスケはマリアの背中を押し、エリザベスの前まで押していく。

 

「エリーはどうなんだ?」

 

「私は……正直ショックだった。裏切られた以上に、マリーの思いに気づいてあげられなかったことにネ。そっちのほうが情けないって思うわ。でもそれ以上にね、うれしかったよ。あのとき、戻ってきてくれて。」

 

「あ、あれはただ単にお母様とお姉様を助けなきゃって思っただけで……。」

 

「それでしょう?あなたの本当のこころは。ただ、やり方を間違えただけ。それだけだヨ?」

 

「お姉様、わたし、わたし……!」

 

 泣きそうになるマリアを、エリザベスがそっと抱き寄せる。その眼にはうっすらと涙が浮かんでいる。

 

「あなたの気持ちに気づいてあげられなくてごめんなさい。そして、これからも姉妹でいさせて?」

 

「グズッ、おねえ、さまぁ……私も、ごめん、なさい……そして、これからもあなたの妹でいていいですか?」

 

「――うんっ。」

 

 そういってエリザベスはマリアを抱きしめる。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!!」

 

 裏切ってしまった姉に許されたと知ったマリアは、涙腺を決壊させ、ただひたすらに泣いた。

 しかし、ひとしきり泣いた後、落着きを取り戻したマリーは涙を拭いて言う。

 

「お姉様のそのお言葉だけでもうれしいです。でも、それじゃあ自分を許せません。やっぱり、私はお姉様の前から消えるべきなんです。」

 

「じゃあよ、お前これからどこ行くんだ?」

 

「わかりません、つてを当たってみる、としか。」

 

「つーかさ、おまえ駒王学園の生徒なんだぞ、高校勝手に辞められないだろう。」

 

「それは、そうですけど……。」

 

「俺んとこ来いよ。これまで通りにすりゃいい。」

 

「は、はぁ!?」

 

 とんでもないダイスケの申し出に、マリーの目は点になる。

 

「そんでもってさ、エリーもうちに来い。ここにいちゃ家の残党の連中が襲ってくるかもしれないしな。なに、部屋の余裕はあるのは知ってるだろ。」

 

「そ、それじゃあ私がお姉様の元を離れるってことができないじゃないですか!!馬鹿なんですかあなた!?」

 

「アレだ、部屋別にすればいいだろ。ちょっとくらいは姉離れできる。」

 

「そんな屁理屈……。」

 

 マリアはダイスケがふざけているようにしか思えなかったが、見ればその表情は真剣だった。

 

「お袋さんが冥界に行っちまった今、エリーの家族はもうお前しかいないんだろ。」

 

「あ……。」

 

「なら、姉ちゃんダイスキで自分の間違いを正したいお前ができることをやれ。家族は大切にしろ。いついなくなるかわからないんだから。俺が言いたいのはそんだけだ。」

 

 そこまで言って、ダイスケは背伸びした。

 

「これでこの話はおしまい!明日はロンドンに移動して三泊はしてから帰るぞ。マクレガーさんに航空券と金もらったし、不正入国も何とかしてくれたし、とっくに宿題は終わらせてるし、これでやっと夏休みらしい夏休みができる。あ、そうだ。明日二人で俺を観光案内しろ。鰻のゼリー寄せ食ってみたいんだよ、怖いもの見たさで。頼むぞ。」

 

 そういってダイスケは踵を返し、屋敷へと戻っていく。残された二人は顔を合わせて、少し笑った。

 

「滅茶苦茶ですね、あの人は。なんでもごり押しで通そうとするんですから。」

 

「私の話をした時も、あんな感じだったヨ?でも……らしいでしょ。」

 

「ですね。らしいです。」

 

 屋敷へ戻っていくダイスケの背中を見て、ふたりはそう言いあった。そして、自分たちも屋敷へ戻っていく。

 今度は、手をつないで。

 

 

     ・

     ・

     ・

 

 

「……ダーリンに惚れた?」

 

「な!?そ、そんなこと万に一つもあり得ませんよ!!私はお姉様一筋です!」

 

「負けるつもりはないからネ。」

 

「いや、ちょ、ま、お姉様ぁぁぁぁ!?」




 ということでマサノ姉妹の物語はこれにて完結です。長い夏休みだった。
 なお、感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われると「Ridershooting!!」になりますのでご勘弁を。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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