ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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 皆様、新年あけましておめでとうございます。今年も本作をよろしくお願いいたします。


VS46  プロポーズは裸の心でぶつかれ

「みんな集まったわね。」

 

 リアスは自分の眷属とダイスケが集合しているのを確認すると、記憶メディアらしきものを取り出した。

 

「これは先日までに行われた若手悪魔の試合を記録したものよ。もちろん私たちとシトリー眷属の試合の記録もあるわ。」

 

 今日は眷属とダイスケで試合のチェックをすることになっていた。しかし、本来は関係のないダイスケもこの場にいる。それには理由があった。

 アザゼルがスクリーンの前に立っていう。

 

「お前ら以外にも若手悪魔たちは試合をした。大王バアル家とグラシャボラス家、大公アガレス家とアスタロト家。それぞれがお前らの対決後に試合をした、その記録映像だ。ライバルの試合だからよく見ておけよ。ダイスケだが、次のアスタロト家とのゲームでグレモリー眷属の特別枠で出ることになった。本当はシトリー戦で出るはずだったが事情が事情でな。異種族参加のテストケース第一号だそうだ。そう考えてお前もよく見とけ。」

 

『はい。』

 

 全員が真剣にうなずく。

 イッセーもだが、ダイスケは非常に内容が気になっていた。何せ一度は見たことはあるが非公式戦、せっかくの参加の機会も一度目はブラックホール第三惑星人のせいで吹っ飛んでしまった。だからこそ自分も関わることになるゲームの内容はちゃんと見てみたいと思っている

 

「じゃあまずはサイラオーグ……バアル家とグラシャラボラス家の試合よ。」

 

 プロジェクターが起動し、スクリーンに映像が投影させる。すると、すぐに期待感とわくわく感は消し飛ばされる。

 サイラオーグはまさに、圧倒的『力』を見せていた。グラシャラボラスのゼファードルの持ち駒はすでにサイラオーグの眷属にすべて撃破されてしまった。残すはゼファードルのみ。そして彼はサイラオーグに一騎打ちを挑む。

 そこからは一方的だった。ゼファードルのあらゆる攻撃がはじかれ、徐々に追い詰められていく。そこへ、サイラオーグの拳の一撃が入る。幾重にも張られた防御術式を難なく突破し、その拳はゼファードルの腹に突き刺さった。

 桁違いの破壊力である。何せよけられた拳の拳圧で周囲の建物を吹き飛ばすのだ。一度でもまともに食らえば致命傷だろう。

 

「凶児と呼ばれ忌み嫌われていたゼファードルがこうも……これほどのものなのかサイラオーグ・バアル。」

 

 木場もその光景に驚愕し、目を細める。なにせ騎士(ナイト)である彼の動体視力でいま起きたことのすべてを視認することができなかったのだ。戦慄もする。

 

「リアスとサイラオーグは(キング)なのにタイマン張りすぎだ。基本的に王は動かずとも駒を進軍させて勝利を得ればいいんだからよ。王を取られりゃ負けなんだぜ?バアルの血筋は血の気が多いのかね。」

 

 アザゼルが嘆息しながら言う。それに対し、リアスは顔を赤くしていた。思うところがあるらしい。

 

「ゼファードルの強さってどれくらいなんですか?」

 

 イッセーの問いにリアスは答える。

 

「映像ではああ見えたけど、彼自身は決して弱くはないわ。とはいっても、本当の次期党首が事故死しているから彼は代理参加なのだけれど。」

 

 朱乃が続く。

 

「若手同士の対決前にゲーム開催委員会が出した下馬評のランキングでは一位はバアル、二位はアガレス、三位がグレモリー、四位がアスタロト、五位がシトリー、六位がグラシャラボラスでしたわ。王と眷属を含めた平均で比較したランクです。それぞれ一度試合をして覆りましたけど。」

 

「しかし、このサイラオーグさんは抜きんでているってわけですね。」

 

 イッセーの言葉にリアスはうなずく。

 

「ええ、彼は正真正銘の怪物よ。「ゲームに本格参戦すればすぐにランキングに食い込んでくるのでは?」といわれているの。逆に彼を倒せば私たちの名は一気に上がる。」

 

「あのー、ひょっとしてライザーより強かったり……?」

 

 イッセーは恐る恐るリアスに訊く。

 

「実際にやってみないとだけど、贔屓目抜きで見てもサイラオーグが勝つでしょうね。」

 

「ま、グラフを見せてやるよ。各勢力に配られたものだ。」

 

 アザゼルが術を展開して宙にホログラフを投影する。そこに記されたサイラオーグのパワーの値はグラフの枠を飛び越えていた。何せ天井にまで届きそうなのだ。

 

「だがサイラオーグは全開なんて出しちゃいなかった。本気のほの字もな。」

 

 アザゼルの言葉にイッセーは戦慄する。何せ素の拳で禁手化した今のイッセー以上なのだ。神器も、伝説級のドラゴンの力もなしで、である。

 

「やっぱ、天才なんですかねぇ。」

 

 ぼそりとイッセーはそういうが、アザゼルは否定する。

 

「いや、あいつはバアル家始まって以来初めて滅びの力を継承できなかった純血悪魔だ。滅びの力が継承されたのがグレモリーに嫁いだヴェネラナ女史が生んだ兄妹のほうさ。そして奴は家の才能を引き継ぐ純血悪魔が決してしないことをして力を手に入れた。」

 

「本来しないもの?」

 

「凄まじいまでの修行と鍛錬だよ。尋常じゃない修練の果てに力を得た稀有な純血悪魔なのさ。あいつには自分の肉体しかなかった。だからそこを愚直なまでに鍛え上げたのさ。」

 

 そしてアザゼルは皆に語りかけるように続ける。

 

「奴は何度も何度も勝負の度に打倒され、敗北し続けてきた。華やかに彩られた貴族社会の中で泥臭いまでに血なまぐさい道を歩いているやつなんだよ。」

 

 だからか、とダイスケはひとり納得する。初めてサイラオーグに会った時、彼からえもいえぬ裏打ちされた自信のようなものを感じられた。

 

「才能のないものが次期当主に抜擢されることがどれほどの偉業か。敗北の屈辱と勝利の喜び、天と地の差を知っているものは間違いなく本物だ。ま、強さの秘訣はほかにもあるんだがな。」

 

 そして映像が終わる。サイラオーグの勝ちである。最終的にゼファードルは物陰に隠れおびえながら投了した。

 その姿を誰も笑えなかった。

 映像が終わり、しんと静まり返った室内でアザゼルが言う。

 

「先に言っとくがお前ら、ディオドラと戦ったら次はサイラオーグだぞ。」

 

 全員が驚くが、アザゼルは頷くだけ。しかし、リアスは怪訝そうにアザゼルに尋ねる。

 

「少し早いのではなくて?ゼファードルの方と先にやるのだとばかり思っていたのだけれど。」

 

「いや、奴はもうだめだ。サイラオーグに心身に恐怖を刻み込まれた。もう戦えない。サイラオーグに精神まで断たれてしまったんだよ。だから残りの五人どうしで戦うことになる。グラシャボラスは……ここまでだ。」

 

 映像にはアザゼルの言葉を肯定するように恐怖に震えるゼファードルの姿があった。

 

「お前らも十分気を付けろ。あいつは本気で魔王になろうとしている。そこに一切の躊躇も妥協もない。決して呑まれるな。」

 

 実際に映像越しではあるがそれを体験した一同は頷いた。そこから一呼吸置き、リアスは言う。

 

「でもまずは目先の試合ね。今度戦うアスタロトの映像も見るわよ。こちらも注意しないといけないわ。なにせ大公家のシーグヴァイラ・アガレスが負けたのだから。」

 

「え、あのガンダム姐さん負けたんですか!?」

 

 一番驚いたのはダイスケであった。何せ個人的に連絡先を交換して時折ガンダム談義に花を咲かせるほどこの中で一番親交が深いのである。

 

「そんな話一切してなかったんだけどなぁ……。」

 

「え、あなたそんなに彼女と仲良いの?」

 

「そりゃそうっすよ部長。俺のガンダムネタに食いつけるほどの相手と仲良くしないわけないですって。」

 

「……ダイスケ先輩のガンダム談義についていけるって相当ですよ。」

 

 この中でもサブカルに明るい小猫が若干戦慄している。なにせダイスケのガンダムネタといえば時折不意打ちでコアなところを突いてくるものだから小猫ですら反応に困る時があるくらいなのだ。

 それはさておき。

 

「私たちを苦しめたソーナたちは金星、さっきのランキングで二位のアガレスを打ち破ったアスタロトは大金星という結果ね。悔しいけれど、事前のランキングなんて所詮は予想。ゲームが始まれば実際は何が起こるのかわからないのがレーティングゲームよ。」

 

 レーティングゲームとは、ただ眷属どうしを王がぶつけ合って戦うものではない。その試合ごとにルールや対戦方式は異なっており、そのたびに同じチーム同士が戦っても勝敗の結果は変わる。

 例えば、グレモリーとシトリーが戦ったルールでは建造物のむやみな破壊は減点対象となる。こうなると高火力ぞろいのグレモリー眷属にとってはかなりに縛りになってしまうが、戦術に優れるトップを持つシトリーにとっては自身の戦術を個々に発揮できる。

 強力な眷属をそろえれば勝てるというものでは決してないのだ。

 

「そうだとしても、まさかアガレスが負けるなんてね。」

 

 リアスが言いながら次の映像を再生しようとしたまさにその時、部室の片隅に転移用の魔方陣が展開された。その文様を見た朱乃がぼそりと呟く。

 

「これは――アスタロトの。」

 

 そして一瞬の閃光が輝いた後、そこにはさわやかな優男の姿があった。

 

「ごきげんよう、ディオドラ・アスタロトです。アーシアに会いに来ました。」

 

 

 

 

 

 

 部室のテーブルにはリアスとディオドラ、そして顧問としてアザゼルも座っていた。

 そして普段はこういう時、朱乃が茶を淹れるのだが、今日に限ってダイスケが茶を淹れると自ら率先してお茶汲みになっている。

 ほかの面々はライザーの時の一件のように部屋の片隅で待機している。

 

「粗茶ですが。」

 

 ごとり、と来客であるディオドラに先に茶碗を置くダイスケ。

 

「……指が入ってるんだけど。」

 

「そうですか?」

 

「いや、そうですか、じゃなくて五本の指全部入ってるんだけど。」

 

 ディオドラの言うとおり、ダイスケの右手の指すべてが茶碗の内側に入り、内側から支えるというかなり器用なことをしている。もちろん嫌がらせだ。先にディオドラのいけすかさなさを聞いているからこその手の込んだ嫌がらせである。きっと指の汗が全部溶け出して茶はしょっぱくなっていることだろう。

 

「では部長と先生にも。」

 

「いや、交換しないのかい?」

 

「それではこれで。」

 

「いや、交換……まあいい。」

 

 飲まなければいい、という判断をしたディオドラは、優しげな笑みを取り繕ってリアスに言う。

 

「リアス・グレモリー、単刀直入に言います。僧侶(ビショップ)のトレードをお願いしたいのです。」

 

 トレードとは、王同士が駒となる眷属を交換できるシステムのことだ。ただし、なんでも交換できるというわけではなく、交換できるのは同じ駒の眷属ということになる。 

 この場合の僧侶とはもちろん――

 

「いやん!僕のことですか!?」

 

 そういってギャスパーが身を守るポーズをとるが、すぐにイッセーとダイスケが両サイドから頭をはたく。

 

「「なわきゃねーだろ。」」

 

 思えば逞しくなったものである。ちょっと前なら「ひぃぃぃぃぃ僕のことですかぁぁぁぁぁ!?」と言ってダンボール逃げ込んでいたものだが、冥界での特訓の成果かこんなボケを見せるようにもなった。

 ふざけた話は抜きにして、ディオドラのほしい僧侶とは十中八九アーシアのことだろう。不安げなアーシアはイッセーの手を強く握る。明らかに口にはしていないがいやだ、という態度だ。

 

「僕がのぞむトレードしたい僧侶は――アーシア・アルジェント。」

 

 ディオドラはためらいもなくそう言い放ち、優しげな視線をアーシアに送る。それにしてもずいぶんと直球な手段に出たものである。

 

「こちらが用意するのは――」

 

 自分の下僕が載っているであろうカタログをディオドラが出そうとするが、それをダイスケがひったくる。

 

「なにをしてくれるのかな?君は。」

 

「いえね、部長はもともとトレードなんてする気ゼロだろうから一応客観的な目で見れる自分がチェックしようかと。」

 

 そう言ってパラパラとページをめくり、ダイスケは「はぁ……」とわざと大きなため息をつく。そしてリストをぱたんと閉じ、ディオドラに放り投げる。

 

「だめだ、これじゃあだめだ。話にならない。」

 

「……僕の眷属を侮辱するのかい?」

 

「結果的にそうなりますねぇ。なんせどいつもこいつもアーシアと交換するだけの目立った特徴も能力もない。駒価値が同じってだけ。戦力的に見てもおいしい思いをするのはそっちだけじゃあないですか。こっちは友達と別れなきゃならないってのに。それに何より、同じ眷属連中が受け入れようとしないでしょう。どうです、部長?」

 

「そうね、私としても受け入れがたいわ。それにはっきり言っておいたほうがいいわね。私はトレードをする気は一切ないの。それはあなたの用意する僧侶が釣り合わないというのではなくて、単純にアーシアという存在を手放したくない。」

 

「……それは彼女の神器?それとも彼女自身のことですか?」

 

「両方よ。私はあの子を妹のように思っているから。」

 

「――部長さんっ!」

 

 アーシアは口元を手で覆い、その双眸を潤ませていた。リアスが自分のことを「妹」と家族同然に思ってくれていることがうれしかったのだろう。

 

「一緒に生活してる仲ですもの。情が深くなって離れたくないっていうのは理由にならないかしら?私はそれで十分だと思うのだけれど。それに求婚しようという女性をトレードで手に入れるというのもどうなんでしょうね。あなた、求婚って言葉の持つ意味が分かっているのかしら?」

 

 自身も婚姻絡みでひと悶着あった身だ。最大限配慮をしているがディオドラに対して怒りを感じているのは間違いない。

 しかし、ディオドラはその笑みをやめない。

 

「――わかりました。今日はこれで失礼させていただきます。けれど、僕はあきらめません。」

 

 ディオドラはそういって立ち上がり、アーシアの元へ歩み寄る。当惑するアーシアの前で跪き、その手を取ろうとしていた。

 

「アーシア、僕は君を愛している。大丈夫、運命は僕たちを裏切れない。この世のすべてが僕たちの間を否定しても、僕はそれを乗り越えるよ。」

 

 わけのわからない気障なセリフを吐くと、そのままアーシアの手を取って甲にキスしようとする。

 

プチッ

 

 イッセーの中で何かが切れた。気が付けば、イッセーはディオドラの肩をつかみ、アーシアから引きはがしていた。

 

「……放してくれないかな。薄汚いドラゴンに触れられるのはちょっとね。」

 

 間違いない、これが本性である。その言いようにイッセーは頭に血が上り殴りかかりそうになる。が、しかし。

 パァン!と何かをはたいたような音が部室に響く。

 

「そんなこと……言わないでください!」

 

 アーシアがディオドラにビンタしていたのだ。

 ビンタされたディオドラの頬は赤くなっていたが、その笑みがやむ様子はない。ここまで来ると裏に何かあるのかと思ってしまうほどだ。

 

「なるほど、わかったよ。――ならこうしよう。次のゲーム、赤龍帝の兵藤一誠を僕が倒そう。そうしたら、アーシアは僕に応えてほしい――」

 

「――お前なんかに負けるわけねぇだろっ。」

 

 面と向かって言うイッセー。これでわかりやすい形になった。

 

「赤龍帝、兵藤一誠。僕は君を倒すよ。」

 

「ディオドラ。アスタロト、お前が薄汚いって言ってくれたドラゴンの力、とくと見せつけてやるよ!」

 

 その時、アザゼルの携帯が鳴る。いくつかの応答の後、アザゼルは告げる。

 

「ちょうどいい、ゲームの日取りが決まったぞ。――五日後だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 それは、夕飯前。イッセーからの電話であった。

 

「なるほど、ヴァーリがお前にディオドラに対して警戒しろってねぇ……わかった。こっちも注意しておく。……は?マジ?俺も?わかった。とりあえず集合はお前の家に行けばいいんだな。それじゃ。」

 

 ダイスケは携帯を切り、元のサラダ用のレタスをちぎる作業に戻る。その横ではエリーがカレーを鍋で煮ている。

 

「そろそろこっちはいい感じヨ。」

 

「そうか。マリー、食器は?」

 

「全部出てますよ。あとは盛り付けるだけです。」

 

 食器が必要分すべて出ているのを確認すると、テーブルの中央にエリーがカレー鍋を持っていく。

 

「きょうはU.K.流だからネ!」

 

 そういってエリーが取り出したのはパンだった。エリーがパンを切る間、ダイスケはサラダをボウルに盛り付ける。

 

「え、パプリカ入れるんですか?」

 

「好き嫌いすんな。彩りと緑黄色野菜ってやつだ。ガキじゃないんだから食えるだろう。――さてと、これでいいか。」

 

 すべての配膳を終え、三人が席に着く。

 

「それじゃあ、いただきます。」

 

「「いただきます。」」

 

 それぞれにサラダを取り、パンをちぎり、カレーをよそう。

 

「ダーリン、今日の私のカレー何点?」

 

「んー、パンに合わせるんだったらもうちょっとどろっとしてたほうがいいかも。でも味はいいから90点。」

 

「Yes!ダーリンやさしー!」

 

「ちょ、食ってる最中に抱き着くな。」

 

 そんな二人のやり取りに嫉妬を覚えるのはマリーだ。

 

「くぅ~、せめて私がお姉様の隣というグットポジションを取れれば!」

 

「なーにいってるの、マリーだってグットポジションじゃない。」

 

「へ?」

 

「ダーリンのはす向かいってことは狙ってるってことでしょ。知ってる?心理学の話になるけど、異性同士で話するとき、はす向かいでいたほうが会話が弾むんだかって。だから合コンとかで狙っている異性の真向かいよりもはす向かいに座るといいんだってさー。ネ?マリー。」

 

「いや、ちょ、そんな意図があってここに座っているわけじゃないですから!なんとなくですよ、なんとなく!そ、それよりも、さっきの電話なんだったんですか!?」

 

「ああ、さっきの電話か。」

 

パンをちぎり、カレーに浸しながらダイスケは言う。

 

「さっきの電話、イッセーからでな、どうやら夕方の悪魔家業の最中にヴァーリと遭遇したらしい。」

 

「え、大丈夫だったノ?」

 

お代りにカレーをよそいながら、エリーはダイスケに問う。

 

「幸いなことに向こうはただ話に来ただけだったんだと。その話によるとヴァーリは「ディオドラ・アスタロトには気を付けろ」と言ってきたんだと。」

 

「ああ、例のアーシア先輩にプロポーズしたっていう。こんど試合でしたっけ?」

 

「ああ、俺も出るけどな。ただ、ヴァーリがそんな風に言うってことは……何か禍の団が関係してるってことかもしれん。」

 

「まさか。だって冥界の貴族様でしょ?」

 

「そうなんだが、確かにちょっとおかしいところがあるんだよ。研究用にディオドラの試合の様子を見せてもらったんだが、何か変だったんた。」

 

 ダイスケは今日、ディオドラが帰った後に彼の試合ぶりを確認するべき記録映像を見ていた。それがどうにもおかしかった。内容は事前に聞いていた通りディオドラの勝ちである。しかし、同にも違和感がある勝ち方だったのだ。

 序盤はシーグヴァイラが押していた。しかし、途中から突然ディオドラが凄まじいほどの魔力でアガレス眷属を次々撃破、ついには一騎当千の力でたった一人でシーグヴァイラまでも撃破してしまった。まるで、自分の眷属などあてにしていないような戦いぶりである。 

 アザゼルはこの試合を生で観戦していたらしいが、事前に得ていた実力から考えてもある得ない力だったらしい。まるで、急激にパワーアップしたかのようだったとはアザゼルの言だ。

 そしてリアスとアザゼルが揃って言っていたのは「ディオドラはそこまで強い悪魔ではなかった」ということ。実力的にはリアスのようなウィザードタイプで少し魔力に劣るというものだったらしい。それが突然パワータイプのような魔力を発揮してほぼ一人で勝利を手にした。これに違和感を感じないものなどいようか。

 もちろん、鍛練を積んで力を得たという可能性もある。しかし、イッセーとのやり取りで見せたのは典型的な上級悪魔のそれ。サイラオーグのように鍛錬を積むタイプにはダイスケには見えなかった。

 

「それにしてもディオドラ、かぁー。」

 

 パンの耳をカレーに浸しつつ、エリーがどこか釈然としない、という様子だった。

 

「なんだ、知ってるのか?」

 

「ん?いや、なんかどっかで聞いたことある名前だなぁって。」

 

 彼が付いたパンを口に入れ、尚も考え込むエリー。そこにマリーが言う。

 

「私もどこかで聞いたことがあるんですよ、ディオドラ・アスタロトって名前。でもどこで聞いたんだったかな。」

 

 フォークにサラダを刺しつつ、マリーも思い出そうと必死になっている。

 

「たしか、悪魔と魔術師って契約関係を結ぶんだろ。そこで聞いた契約候補の悪魔の中にリストアップされていたとかじゃないか?それか、純粋に知り合いに似た名前の奴がいたとか。」

 

「いやいや、流石にアスタロトなんて名字の人間いないでショ。ということは家関係で見た名前だと思うんだけど――」

 

「――あぁぁぁぁぁぁぁ!思い出しました!」

 

 ダンッ!ッとテーブルを叩きながらものすごい勢いでマリーが立ち上がる。

 

「なななななななんだ!?」

 

「思い出しましたよお姉様!私の記憶が間違いでなければ――」

 

「……あ、そうだったネ!それなら私も覚えてる!」

 

「おいちょっと待てよ、だとしたら――いや、まずは先生に連絡を入れないとだな。」

 

 

 

 

 

 

「通信で悪いな、サーゼクス。例のグラシャボラス家次期党首の不審死とディオドラ・アスタロトの急激な魔力増大の件だが……。」

 

『やはり繋がったか。いやはや、悪魔はいまだ問題を抱えるばかりだ。』

 

「ダイスケからの連絡で奴を尋問したが、あっさり吐いたよ。それでも確証にはまだ遠いが、ヴァーリの忠告を信じるならばディオドラは――正直いやになるが例の案、やるしかないかもな。ダイスケもやりたいことがあるらしいから許可しておいた。ったく、ただでさえ身内のイベントで気が重いってのによ。」

 

『ああ、聞いているよ、君のところの幹部がまた一人結婚したそうだね。』

 

「どいつもこいつも焦りやがって、何よりも俺に黙って他勢力の女とよろしくやってたなんてよ。……ええい、ついに一人身は俺だけか!」

 

『ふふ、アザゼルもそろそろ身を固めたらどうだ?自分の教え子だってうまくやっているだろうに、そこで後れを取ってどうする。』

 

「嫌だね。俺は趣味に生きる。女なんてこの世にはいくらでもいるからな!」

 

『そうだな、そういうことにしておこう。……さて、例の案、君を信じるぞ。』

 

「ああ、任せてくれ。ダイスケの動きにもフォローを入れる。……あいつらには少々悪いことをすることになるがな。」




 ということで新年という時事ネタに全く関係ない新年初投稿でした。相も変わらず季節感ガン無視でこれからも続けたいと思います。
 なお、感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われるとオレノココロハボドボドダ!!になりますのでご勘弁を。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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