ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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 自分のPCでDxDの小説付属のBDが見れないと今更知ってショックを受けております。


VS47  人の評判ってどこでどう広がるかわからないから怖い

 その日、ダイスケはまず兵藤宅に向かった。他のグレモリー眷属と合流し、冥界に向かうためである。なぜ冥界に向かうのかというと、テレビ取材のためであった。

 前回のシトリー戦を含む若手悪魔のレーティングゲームは冥界全土に放送された。そこでもともと有名であったリアスはさらに知名度を上げたらしい。そのため、さらにゲームの視聴率を稼ぐために事前インタビューが行われることになった。

 もちろんそこには他種族初参加となるダイスケも一部の注目を浴びたので取材に参加、ということに相成った。

 一同が集合し、転移用魔方陣で一気に冥界へ旅立つ。そして転移した先は大きなビルの地下であった。駐車場のような転移用のスペースらしい。そこに着くなり、眷属一同はスタッフの歓待を受けた。

 

「お待ちしておりました、リアス・グレモリー様。そして眷属の皆様。さあ、こちらへ。」

 

 プロデューサーを名乗る人物に先導され、上層階へ行く。冥界でも珍しい大きな湖を望む立地は素晴らしいの一言で、周囲にある魔力で勝手に動く小道具などもダイスケの目を楽しませた。

 すると、見知った顔が十人ほどを引き連れてやってくる。

 

「サイラオーグ!同じ日にあなたも呼ばれるなんて。」

 

 貴族のローブを大胆に羽織り、その鍛え上げられた肉体は隠されている。しかし、一分の隙もない。常に戦闘を意識しているのだろう。

 

「やあ、リアス。君もインタビューか。」

 

「ええ、あなたはもう終わったの?」

 

「いや、これからさ。君らとは別のスタジオらしい――試合、見たぞ。」

 

 その言葉を聞いた途端、リアスの表情が厳しくなる。

 

「お互い新人丸出し、素人臭さがどうにも抜けないな。いかんいかん。」

 

 リアスを励ましているのだろう、サイラオーグは苦笑しながら言う。

 

「どれほどパワーがあろうとも、型に嵌れば負ける。相手は一瞬の隙を全力で突いてくるわけだからな。おまけに神器は未知の部分が多い。何が起こり、何をさせられるのかわからない。お前たちのソーナ・シトリーの一戦ではそれを改めて学ばせてもらった。――だが。」

 

 ぽん、とサイラオーグはイッセーの肩を軽くたたく。

 

「お前とは理屈なしのパワー勝負をしたいものだよ。ライザー氏との一戦を見て以来、ずっとそう考えてきた。」

 

 サイラオーグはそれだけ言うと別のスタジオへ向けて歩き去って行った。その後、一同は楽屋に通された。そこで荷物を置き一息いれる。

 なお、今日はアザゼルは引率していない。別の番組の収録があるらしい。イリナは居候先の兵藤家で待機している。

 ややあって、スタッフにスタジオに案内され中に通される。まだ準備中らしく、スタッフたちが忙しそうに動いていた。すると、インタビュアーらしき女性がリアスにあいさつする。

 

「お初にお目にかかります、冥界第一放送の局アナをしているものです。」

 

「こちらこそ、今日はよろしくお願いしますわ。」

 

 お互いに笑顔で握手する。

 

「では早速で恐縮なのですが打ち合わせのほうを……。」

 

 すると早速二人でスタッフを交えながら打ち合わせに入る。周囲を見渡せば観覧局用のいすがいくつも備えられており、大勢の前でインタビューを受けることが予想できた。

 

「ぼぼぼぼぼぼ僕もう帰りたいですぅ……。」

 

 イッセーの陰に隠れて震えるギャスパーが言う。

 

「バッカ野郎、俺だって緊張してるんだ。今まで人の注目なんて集めたことないんだぞ。ゲームで戦うことのほうがよっぽどだろうが。」

 

「そんなこと言われたってぇ……。」

 

 珍しく緊張するダイスケがギャスパーに言う。普段傍若無人でも緊張することくらいはあるのだ。

 

「眷属悪魔さんたちのもインタビューが来ることがあると思いますが、その時はあまり緊張せずに。」

 

 スタッフが気を利かせてくれるが、それでも緊張は収まらない。そんな中。

 

「えー、木場祐斗さんと姫島朱乃さんはいらっしゃいませんか?」

 

「あ、僕です。」

 

「私ですわ。」

 

 二人が手を上げるとスタッフが駆け寄ってくる。

 

「お二人が木場祐斗さんと姫島朱乃さんですね。お二人にはそこそこ質問が行くかと思われます。何せ、お二人とも人気急上昇中ですから。」

 

「そうなんですか!?」

 

イッセーが驚きの声を上げると、スタッフが答えた。

 

「ええ、それぞれ男性ファンと女性ファンがついていましたからね。そこへ先日の試合のご活躍ぶりの結果さらに赤丸急上昇中なんですよ。」

 

 もともとの見てくれもいい二人だ。そういうこともあるだろう。

 

「それと、兵藤一誠さんは……。」

 

「あ、俺です。」

 

 イッセーが名乗りを上げて前に出るが、スタッフのほうはというときょとんとした表情だ。合点がいかない、といった感じなのである。

 

「えっと、あなたは……?」

 

「あの、俺が兵藤一誠です。一応赤龍帝やってるんですが……。」

 

 恐る恐るそういうと、スタッフはやっと気が付いたらしき手をポンとたたく。

 

「あ、そうですか。あなたが!いやぁ、恥ずかしい話鎧の姿のほうで記憶しておりました。兵藤さんには別スタジオでの収録もあるんです。なにせ『乳龍帝』として有名になってますからね。」

 

「ち、ち、ち、『乳龍帝』ぇぇぇぇええええええ!?」

 

 自分があずかり知らぬところでつけられていた二つ名に驚くイッセー。それもそうだ、なにせそういう風に言われる心当たりがない。

 

「子供にすごく人気になってるんですよ。小っちゃい子なんか「おっぱいドラゴン」なんて呼んじゃって。シトリー戦の時におっぱいおっぱい叫んでいたでしょう。あれがお茶の間に流れまして、それを見た子供たちに大うけしちゃってるんですよ。」

 

 あまりの話に顔を抑えてうずくまるイッセー。確かにイッセーはゲームの最中おっぱいおっぱい叫んでいた。新たなおっぱい技も披露した。だが本人としては至極まじめな話であって、よもやこんな伝わり方をするとは思ってもみなかったのである。

 

「口は災いの元ってこれだね。」

 

 ダイスケの言葉が更なる追い討ちになる。もう立てないかもしれない。しかし、ダメージを受けているのはイッセーだけではなかった。

 

『そ、そんなっ、そんなっ……うううううううう。』

 

 イッセーの中でドライグが突然泣き出す。

 

『二天龍と称されたこの俺が……赤龍帝と呼ばれ、多くの者に畏怖されたこの俺が……。』

 

 マジ泣きである。よほどショックだったらしい。悲しいかな神器は宿る人間を選べない(一部例外ありだが)のだ。

 

「では兵藤さんはこちらへ、案内いたします。」

 

 スタッフに案内され、イッセーは別スタジオに向かっていく。

 

「すいません、宝田大助さんはどちらにいらっしゃいますか?」

 

「俺です。」

 

 まさか自分が呼ばれるとはいなかったダイスケが手を上げる。

 

「こちらでしたか。実はあなたにはレーティングゲーム初参加の異種族として個人インタビューを敢行しようと思っていまして。」

 

「こ、個人インタビューですか?」

 

「はい。なにせレーティングゲーム始まっていらい初の異種族の参加、それも未来のゲーム像のテストケースですから特別枠を設けようという話でして。レーティングゲームファンからも注目されているんですよ。お部屋に案内します。」

 

「そうなんすか……。」

 

 いよいよダイスケも傍観者でいられなくなった。

 「こちらへどうぞ」と通された部屋は小さな会議室のようであった。ダイスケが座るであろう簡素な椅子の墓に所狭しと機材が置かれている。 

 

「すいません、散らかっていて。何せあいている部屋がここぐらいしかなかったもので。」

 

 そう詫びられつつもダイスケは椅子に座り、早速インタビューが始まった。

 

「それでは、簡単な質問をいくつかしていきます。細かいところはこちらで編集しますのでご安心ください。ではまず、自己紹介と神器……ではなく獣具について少し教えてください。」

 

「はい……宝田大助16歳、学生やってます。獣具は怪獣王の王装(ゴジラ・キング・オブ・モンスター・アーセナルズ)です。あ、これの名前付けたのは俺じゃなくて堕天使の総督ですからね?中二病じゃありませんから。」

 

 あわてて付け足す様に、関係者から苦笑が漏れる。

 

「大丈夫です。では、今回初めての異種族のレーティングゲームの参加となりますが、そのことについてはどう思われていますか?」

 

「初参加、ということに関しては光栄に思っています。何せ門戸が狭い競技に参加できるのですし、自分にとってもいい経験になるでしょう。まあ、俺が参加するのが不愉快だという方もいらっしゃるでしょうが。」

 

「いえ、まさかそんなことは。」

 

 インタビュアーは否定するが、ダイスケはいやいや、と言って続ける。

 

「大丈夫です、わかってますから。元々貴族の悪魔のみが下僕を使って戦うってものに突然自分みたいな部外者がしゃしゃり出てくるんです。不愉快に思わない悪魔がいないわけがありません。」

 

「確かに、保守的な悪魔はそう思うかもしれませんね。」

 

「ですが、三大勢力が手を取り合った今、いずれ天界側の御使い(ブレイブ・セイント)との異種混同戦も予定されている今ならいいテストケースになれるんじゃないかと思っています。そこのところで自分が役にたてるのなら幸いです。」

 

 その言葉を聞いたインタビュアーや関係者に衝撃が走る。

 

御使い(ブレイブ・セイント)?異種混同戦?すいませんそこのところを詳しく!!」

 

「あれ、これまだ発表されていないんですか。やべぇ。すいません、ここカットで。俺も詳しいところはわからないんで。」

 

「……だめですか?」

 

「現政府からも発表がないことはさすがに……ね?」

 

「わかりました、カットしておきます――では、あなたが注目している選手を教えてください。」

 

「……サイラオーグ・バアル氏ですね。一度記録映像を見ましたが、あの方は半端ではありませんから。警戒が必要だと思っています。」

 

「では、実際のゲームではサイラオーグ氏との対戦も視野に?」

 

「いや、あの人が気になってるのはイッセー……赤龍帝ですからね。自分なんかは目にも入っていないでしょう。」

 

「そうですか――実際の戦闘では買収・恐喝・だまし討ちが得意とのことですが、ゲームでもされる予定ですか?」

 

「ゲホッゲホッ!!しませんよ、さすがに!誰ですか、そんな情報流したの!?」

 

 突然の不意打ちに咳き込むダイスケ。思わず椅子から立ち上がってしまう。

 

「セラフォルーさまからそう伺いましたが。」

 

「あのコスプレ魔王、まだ言ってるのか!!すいません、あの人には「そんなに言うんだったお前にやってやるよ」って伝えておいてください!」 

 

「わ、わかりました。それでは次の質問ですが――」

 

 それ以降はありきたりな質問が続き、ダイスケも平常心で受け答えすることができた。

 ただし、実際の放送で「実際の戦闘では買収・恐喝・だまし討ちが得意」の部分がメディアの予想以上に冥界に広がって、冥界におけるダイスケのイメージは大変悪くなったという。

 

 

 

 

 

 

 ディオドラ・アスタロトとの一戦を二日後に控えたその日、ダイスケはリアスが管理するアパートの一室にいた。

 

「で、どう?なんかわかった?」

 

「そう簡単に言うな。いくら使っている名前がわかってるっていったってこういった悪事にはいくつもの銀行を介するんだ。その全部を洗っていかないと……。」

 

 ダイスケの相手をするのはMMSのジョン・ロダンだ。彼は今デュアルモニターのパソコンの前に向かい、何らかの作業をしている。

 

「それにしてもよくも俺を頼ろうって思ったな。確かに大学で経済学は学んでいるし、こういう仕事をしているから裏の世界の金の流れも少しはかじっているが。」

 

「いや、どーしてもやっこさんを精神的に追い詰めたくてね。そのためにはほら、蛇の道は蛇ってやつで。」

 

「いい性格してるよ、ほんと……お、出たぞ。」

 

 モニターに検索していた結果が現れ、ジョンは手元の資料と見比べる。

 

「証言した奴は正直者らしいな。この資料に出てる名前とすべて一致している。」

 

「そりゃ俺が直接灸を据えたわけだし?俺の名前にガチでビビったらしいからな。そりゃ正直に話してくれるよ。」

 

「とりあえずどうする?この情報このまま秘匿しておくか?」

 

「いや、とりあえずあんたのところでミカエルさんに連絡を入れておいてくれ。俺は俺でアザゼル先生にこのことを報告しておく。」

 

「しかし動いてくれるかね?一介の学生と札付きの傭兵が出した情報だぞ。」

 

「動いてくれるさ。なにせ禍の団とつながってる奴の情報だ。無碍にはしないよ。……だけどこれで俺も騙す側かぁ。なんか気が引けるわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 決戦の日、グレモリー眷属とダイスケは深夜にオカルト研究部の部室で待機していた。ダイスケの腕には腕輪が装着されており、それが悪魔の駒と同じように働くらしい。

 ちなみにマサノ姉妹とイリナは特別席での観覧とのことので、この場にはいない。

 

「そういやイッセーさ、この前のテレビ収録の日、別撮りで何やってたんだ?」

 

 戦いの前の緊張感を少しでも減らすため、ダイスケがイッセーに他愛のない話題を振る。

 

「それは内緒。身内にも秘密にしてくれってテレビ局の人にも言われててさ、悪いな。」

 

「ほんと、何やってるんだよお前……。」

 

「ほらほら、そんなこと言ってないでそろそろ時間よ。」

 

 パンパン、とリアスが手を叩いて話を止めさせる。

 

「いい?相手はどんな力を使ったか知らないけれど、絶大な力で単騎突入も可能な王よ。でも、王さえ取ればゲームは終わる!こっちはパワーだけなら負けないものがゴロゴロいるわ。奴が単騎で来ても返り討ちにするわよ!」

 

『はい!』

 

 全員は勢いよく返事する。しかし、アーシアだけはどこか不安げな様子だった。

 それもそうだ、今回は彼女は賭けの対象にされてしまっている。この一戦で恩あるイッセーから離れなければならないかもしれないのだ。そんなアーシアの手をイッセーはぎゅっと握る。

 

「大丈夫だ。奴がどんな手を使ってきても、俺がアーシアを守るよ。」

 

「――!はいっ、イッセーさん!」

 

 いよいよ全員の足元に大きな転移用魔方陣が現れ、光に包まれる。

 決戦の時は来た。

 

 

    ・

    ・

    ・

 

 

「……着いたのか?」

    

 まばゆい魔方陣の閃光が治まり、視力が回復したのでイッセーはゆっくりと瞳を開ける。そこは広大なエリアだった。一定間隔でローマ建築のような柱が何本もそびえたち、その後方には大きな神殿らしき建築物も見える。

 ここが自分たちの陣地なのか、と思っていたがどうもおかしい。審判のアナウンスがいつまでたっても聞こえてこない。

 

「どういうこと?」

 

 リアスも、そのほかのメンバーも怪訝な表情になっている。その中でもダイスケは最大限の警戒態勢を取り、すでに鎧姿になっている。

 そんな時、神殿の反対方向に多数の転移用魔方陣が現れる。

 

「え、こんな近くでいきなり!?」

 

 イッセーは慌てふためくが、よく見るとその魔方陣は以前見たアスタロトのものではない。

 

「……アスタロトじゃない!?」

 

 木場もそのことに気づき、剣を構える。

 

「魔方陣そのものに共通点は見られませんわね。ですが――」

 

「ええ、朱乃。すべて悪魔のものよ。しかも記憶が確かなら――」

 

 魔方陣の中から現れたのは大勢の悪魔たちであった。数は百や二百では済まない。少なく見積もっても千以上の悪魔がリアスたちに対して半包囲陣形を取っている。そしてそのすべてがリアスたちに敵意と殺気を向けていた。

 

「いくつかの魔方陣を見て分かったわ。彼らは禍の団(カオス・ブリゲード)の旧魔王派に傾倒した者たちよ。」

 

 そのリアスの言葉を肯定するように、陣形の先頭に立った悪魔は言う。

 

「忌々しき偽りの魔王の血縁者、グレモリー。ここで死んでもらう。」

 

「キャッ!」

 

 突然、悲鳴が聞こえる。アーシアの声だ。イッセーはアーシアがいた自分の隣を見るが、その姿はない。

 

「イッセーさん!」

 

 すると、アーシアの声は上空から聞こえてくる。そこにはアーシアを捕まえたディオドラの姿があった。

 

「やあ、リアス・グレモリー。そして赤龍帝。アーシア・アルジェントは頂くよ。」

 

「アーシアを放せ、このクソ野郎!卑怯だぞ!つーか、ゲームで決着つけるんじゃなかったのかよ!!」

 

 イッセーのその叫びに、ディオドラは初めてそのさわやかそうな笑みを捨て、醜悪な顔つきになる。

 

「馬鹿じゃないのかい?ゲームなんてハナからするつもりはないよ。君たちはここで彼ら、禍の団のエージェントに殺されるんだよ。いくら君達でもこの数の上級悪魔と中級悪魔を相手取れないだろう?ハハハハ、死んでくれ。速やかにね。」

 

 リアスは憤怒の表情で上空に浮かぶディオドラを激しく睨む。

 

「あなた、禍の団に通じたというの?最低最悪だわ。しかもゲームまで穢すなんて万死に値する!!何よりも私のかわいいアーシアを奪い去ろうとするなんて!!」

 

「彼らと行動したほうが僕の好きなことを好きなだけできそうだと思ったからね。ま、最後のあがきをしてくれ。僕はその間にアーシアと契る。意味は分かるな?追ってきたら神殿の奥に来るといい、素敵なものが見られるよ。」

 

 ディオドラの嘲笑の中、ゼノヴィアはイッセーに叫ぶ。

 

「アスカロンを!」

 

「応!」

 

 イッセーはすぐに反応し、籠手からゼノヴィアに向けてアスカロンを射出する。空中でそれを受け取ったゼノヴィアはディオドラに斬りかかる。

 

「アーシアは私の友達だ!お前の好きにさせるかっ!!」

 

 ゼノヴィアは怒りで燃えていた。しかし、放たれた魔力弾で体勢を崩し、剣戟は届かなかった。アスカロンから放たれた聖なるオーラも躱されてしまう。

 

「イッセーさん!ゼノヴィアさ――」

 

 助けを乞うアーシアであったが、ディオドラが空間転移したせいでともに掻き消えてしまった。

 

「アーシアァァァァァァアアアアアア!!」

 

 イッセーは消えてしまったアーシアを呼ぶが、当然ながら返事など帰ってくるはずもない。守れなかった悔しさに、イッセーは自分が許せなくなる。

 

「イッセー、まずはこいつらの相手が先決だ!アーシアのことはそのあと考えればいい!!」

 

 ダイスケがイッセーを柱の陰に投げ入れる。それと同時に悪魔たちは魔力の砲撃を雨霰と撃ってきた。あわてて一行は柱の陰に隠れる。

 

「ダイスケ!?」

 

 物陰に一旦隠れたリアスが叫ぶ。ダイスケは上級悪魔の砲撃の中に曝されたのだ。しかし、ダイスケの分厚い装甲はそれをものともしない。

 

「そーらよっと!!」

 

 ダイスケは倒れていた柱の一本を持ち上げ、凄まじい力で放り投げる。石柱は空中で砲撃を受けてバラバラになるが、その巨大な飛礫は幾人もの悪魔を押しつぶした。

 さらに、ダイスケは熱線剣を二刀流に構え、悪魔の群れへと突っ込もうとする。が、そのとき。

 

「きゃっ!」

 

 朱乃の悲鳴が聞こえた。何事か、と思えば見知らぬ長いひげを顎に蓄えた隻眼の老人が朱乃のスカートをめくっていた。

 

「うんうん、よい尻じゃ。何よりも若さゆえの張りがたまらんわい。」

 

「てめぇ、このクソジジイ!こんな時に何してやがる!!朱乃さんのお尻は俺のだ!!」

 

 イッセーが怒りのままその老人を朱乃から引きはがす。

 

「一体どこから湧いて出てきやがった――ってあんた!?」

 

 イッセーはその老人に見覚えがあった。その老人とはイッセーはシトリーとの一戦を終えた後の医務室で一度出会っていた。そして、リアスが叫ぶ。

 

「オーディン様!なぜこちらに!?」

 

 オーディン。北欧神話の主神にして戦争と死の神。片目を代償に、世界樹(ユグドラシル)のミーミルの泉の水を飲み、絶大な魔術の知恵を得たことでも有名である。

 そのオーディンが長い顎鬚をさすりながら言う。

 

「うむ、話すと長くなるがのう、グレモリー嬢。簡潔に言ってしまうとこのゲームは禍の団に乗っ取られてしまったのじゃよ。貴賓席がある会場も今攻撃を受けておる。」

 

「そんな、そこまでなのですか!?」 

 

「今運営側と各勢力の面々が協力体制を敷いて向かい撃っておるよ。ま、あのアスタロトの小僧が裏で旧魔王派の手を引いていたことも判明しちょる。例の急激なパワーアップも大方オーフィスから『蛇』でも貰い受けたのじゃろうて。じゃが、このままではお主等が危険であろう?そのための救援をわしが引き連れてこようとしたんじゃが、このゲームフィールドごと強力な結界に覆われていてのう、波の力では突破も破壊もできん。内側から結界を展開しているものを破壊せんとどうにもならん。」

 

「じゃあ、爺さんはどうやってここに?」

 

「赤龍帝よ、儂はミーミルの泉にこの片目を差し出した時にあらゆる魔術、魔力、術式に精通するするようになってのう。この手の結界に関してもそうじゃ。」

 

 そういってオーディンはイッセーに自分の左目にある義眼を見せる。それはまるで、言いようのない深淵を覗き込むような気分であった。思わず背筋が凍る。

 

「北欧の主神だ!打ち取れば名が揚がるぞ!!」

 

 すると、オーディンの姿を確認した悪魔たちが狙いをオーディンに集中させる。

 

「やべぇ!」

 

 ダイスケは急いで身を盾にしようと走るが、どうしても間に合わない。しかし、オーディン本人は余裕綽々、たった一度手にした槍でポンと地面を突く。するとオーディンを狙った魔力弾はすべて宙ではじけて消滅してしまう。

 

「ホッホッホ、まだまだ若いもんに心配させられんわい。」

 

 その御業に悪魔たちも顔色を変える。

 

「本来ならばわしの力があれば結界を破るなぞたやすいのじゃが、ここに入るだけで精いっぱいとはの。はてさて相手はどれほどの使い手か。ま、これだけはお前たちに渡してくれとアザゼルの小僧に頼まれとるからのう、ほれ。全く、年寄りに使い走りさせるとはあの小僧はどうしてくれようか。」

 

 そんな小言を漏らしながらもまとめてイッセーに渡したそれは小型の通信機であった。数は人数分ある。

 

「ほれ、ここはこのジジイに任せて神殿まで走れ。神様が戦場に立ってお主等を援護すると言うとるんじゃ。」

 

 言いながらオーディンは手にした槍をイッセーたちに向けると薄いオーラの膜が放たれ、その身を覆う。

 

「それが神殿に着くまでお主等を守る。ほれ、走らんかい。」

 

「で、でも爺さんだけで大丈夫なのかよ!?」

 

「言うたじゃろ、若いもんに心配されるほど――」

 

 今度はオーディンは槍を悪魔の群れに向ける。

 

「――グングニル。」

 

 呪文のように唱えられたその名はオーディンが手にした槍の名である。その槍の穂先から極太のオーラが放出され、横一線に薙ぐ。するとその一撃ははるかかなたまで伸び、悪魔の群れの数十人ほどを一掃するどころか深く地を抉っていた。

 

「なに、ジジイもたまに動かんと鈍るでな。さーてテロリストども、本気でかかってくるがよい。主らの前にいるジジイは想像を絶するぞい。」

 

 先ほどの一撃が効いたのか、先ほどは名が上がると意気揚々であった悪魔たちの表情に緊迫の色が浮かんでいた。誰も容易に襲い掛かろうとせず、様子を見ている状態だ。

 その一瞬を突き、リアスたちは走り出す。

 

「すいません、ここはお願いします!さあ、神殿まで一気に走るわよ!」

 

 リアスは一礼し、眷属とともに走り出す。その間にも悪魔たちとオーディンとの戦いは再開されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 神殿の入り口に着くと同時に、一同はオーディンから渡された通信機をイッセーから受け取り装着した。するとすぐに声が聞こえてくる。

 

『そっちは無事か?アザゼルだ。』

 

「ええ、無事よ。そっちのほうはどうなって――」

 

『――言いたいことはいろいろあるだろうが、まずはこっちの話を聞いてくれ。オーディンの爺さんから聞いてるだろうが、このゲームは禍の団の旧魔王派に攻撃された。そっちのフィールドも、VIPルーム周辺も旧魔王派だらけだ。だが、これはこちらも予想していたことだ。現在は各神話勢力が協力して旧魔王派を迎撃している。』

 

「予想していた?どういうこと?」

 

 リアスが怪訝そうな表情になってアザゼルに問う。

 

『最近、現魔王に関係する者の不審死がつづいていた。裏で動いていたのは旧魔王派、グラシャボラス家の次期党首が不慮の事故死したのも実際は連中が手にかけたってことだ。』

 

「なるほど、今回は私。オーディン様もターゲットなのかしら。」

 

『そういうことだろう。首謀者として名が挙がっているのは旧ベルゼブブと旧アスモデウスの子孫だ。カテレアの奴といい、旧魔王派の連中の現魔王政府に抱く憎悪は大きい。このゲーム襲撃を世界転覆の狼煙として現魔王派の関係者を血祭りに上げるつもりだったんだろう。ちょうど観覧に現魔王や各勢力のトップもそろっている。これほどのチャンスはないからな。先日のアスタロト対アガレスの一戦から疑惑はあったんだ。』

 

「じゃあ、ディオドラの野郎が急激にパワーアップしたっていうのは?」

 

『オーフィスの力の一部、『蛇』を授かったんだろう。ゲームで使うことは旧魔王派の連中も計算外だったろうがな。だからこそ、グラシャボラスの一件と併せて今回何か起きるだろうという予測が立てられた。』

 

 相手が卑怯な手を使ってきたことに、ますますイッセーはディオドラへの怒りの炎を強くする。

 

『あっちにすればこちらを始末できれば何でもいいんだろうが。だが、俺たちにしてもまたとない機会だ。今後の世界に悪影響を及ぼしそうな連中を一網打尽にするにはちょうどいい。現魔王にセラフたち、オーディンのジジイにギリシャの神々、帝釈天のところの仏どもも出張ってテロリストどもを一気につぶす寸法だ。事前にテロの可能性を極秘裏に各勢力に示唆したらどいつもこいつも応じやがった。どこの連中も勝気だよ。今全員旧魔王派相手に大立ち回りだ。』

 

「いずれにしろこのゲームはご破算ね。」

 

『すまなかったな、リアス。戦争なんぞそうそう起こらないと言っておいてこのざまだ。今回お前たちには危険な目に合わせてしまった。』

 

「あの、もし俺たちが死んじゃったらどうするつもりだったんですか?」

 

 イッセーが何気なく聞いたが、帰ってきたアザゼルの声色は真剣なものだった。

 

「それ相応の責任を取るつもりだった。俺の首を差し出して済むのならそうするつもりだった。」

 

 自身の命を賭けていたのである。その覚悟に一瞬、イッセーは息を詰まらせた。しかし、どうしても言わなければならないことがあるのを思い出した。

 

「先生、アーシアがディオドラに攫われたんです!」

 

『――っ、わかった。いずれにしれ、これ以上お前たちを危険なところにいさせるわけにはいかん。アーシアは俺たちに任せろ。そこは本格的に戦場になる。その神殿には隠し地下室が設けられている。かなり丈夫な造りだ、そこに戦闘が収まるまで待っていてくれ。このフィールドを覆っている結界は禍の団の神滅具所有者が作ったもので入るのはたやすいが出るのはほぼ不可能に近い。そのせいで戦闘が終わるまで待ってもらわなければならない。『絶霧(ディメンション・ロスト)』は結界、空間に関する神器の中でも飛びぬけているからあのオーディンのジジイにも破壊できない。』

 

「ひょっとして先生もこのフィールドにいるんですか?」

 

『ああ、いる。かなり広大だから離れてはいるが。』

 

「……わかりました、アーシアは俺たちで救います。」

 

 イッセーがまっすぐに言う。

 

『ちょっと待て、お前今の状況が分かってて言ってるのか?』

 

 通信機越しのアザゼルの声には怒気が含まれていた。しかし、イッセーは止まらない。

 

「難しいことはわかりません。でも、アーシアは俺の仲間、いや家族なんです!俺はアーシアを失いたくない!」

 

 こうしている間にも、アーシアの身に危険が迫っているのだ。知れを考えるだけでイッセーのはらわたは煮えくり返る。もう、待っていられない。そんなイッセーに呼応してリアスが言う。

 

「アザゼル先生、悪いけど私たちはこのまま神殿の奥にはいってアーシアを救出するわ。ゲームはご破算だけど、奴とは決着をつけなければ気が済まない。私の眷属を奪うということがどれほど愚かなことかその身に教え込まないといけないのよ!」

 

 さらに朱乃がつづく。

 

「先生、確か私たち三大勢力で不審な行為を行うものに実力行使してもいい権限がありましたわよね?今まさにその時では?」

 

 通信機の向こうで、アザゼルは嘆息を漏らす。

 

『……ったく、頑固で屁理屈が回る教え子どもだ。まあいい、今回は前回と違って限定条件なんかない。だからこそ、お前たちのパワーを止められるものはない。存分に暴れていいぞ!特にイッセー!赤龍帝の力うぃあの裏切り者の小僧に見せつけてこい!そしてダイスケ、お前の例の作戦、準備はオールオーケーだ。存分にかまして精神をへし折ってやれ!』

 

「オッス!……ってダイスケ、お前今回も裏でなんかしてたのか?」

 

「ああ、ディオドラの周囲の件でちょっとな。まさかここまでの事態になるなんて聞かされてなかったけど、俺もみんなを騙した側だ。すまない。」

 

「……まあ今回は良しとするわ。その代り、ネタはしっかり見せなさいよ。」

 

『最後にこれだけは聞いてくれ。奴らはこちらに予見されることも見越していたはずだ。それでも実行したってことは何らかの隠し玉を持っている可能性がある。それがなんなのかまだ分からないが、このフィールドが危険なことには変わりない。無論、ゲームは停止しているためリタイア転送もない。危なくなっても助ける手段はないと肝に銘じておいてくれ。――十分気を付けていけ。』

 

 そこまで言って、アザゼルからの通信は途絶えた。次はアーシアがどこにいるか、である。

 

「……あちらの方向からアーシア先輩とディオドラの気配を感じます。」

 

 気を用いて探索した結果がこれであった。そして一同はアーシアを探して神殿内の奥に向けて走り出した。

 




 ということでダイスケの自業自得&それにも懲りずにまた悪巧みな回でした。
 なお、感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われると(oMo)<ウワアアアアアアアアアア!になりますのでご勘弁を。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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