本当に大してあくどい手を使ったわけじゃないですよ、ほんと。
ネタふりじゃなくて、ほんと。
予防線張っておきます。本当に大したことしてないです
神殿の中はとてつもなく広かった。元々がレーティングゲーム用に作られたものであるためそれは当然なのだろうが、それでも広さを感じずにはいられない。
中は複雑な造りになっており、部屋を抜ければまた別の部屋に抜ける造りになっている。そういう部屋をいくつか抜けた時、気配を感じた。それも複数の人数だ。そして部屋の中にはフードをかぶった小柄な人影が十人ほどいる。
『いらっしゃい、リアス・グレモリーとその眷属のみんな。』
屋内にディオドラの声が響くが、イッセーが辺りを見渡してもその姿は見えない。
『いくら探してもそこに僕はいないよ、赤龍帝。僕はずっと奥の神殿で君たちを待っている――遊ぼう。中止になったレーティングゲームの代わりだ。』
「なにする気だ!?」
『簡単だよ、赤龍帝。互いの駒を出し合って戦うんだ。一度使った駒は僕のところに辿り着くまで二度とつかえないのがルール。あとはご自由に。第一試合、僕は
滅茶苦茶な話であった。敵陣どころか自陣内であるはずなのに女王に昇格している兵士を八名、さらに戦車二名も相手どらないとこの先へ進めないというのだ。ただでさえ手駒が少ないリアスにとっては不利な状況。しかし。
「……いいわ、あなたの戯言に付き合ってあげる。私の眷属がどれほどのものかその身をもって知るといいわ。」
「部長、いいんですか!?」
イッセーが驚くが、ダイスケは目を細めて言う。
「いや、ここは部長が正しい。なんせ相手はアーシアを人質にとっている。下手に動けばなにされるかわからん。」
「そういうことよ。ではまずこちらはイッセー、小猫、ゼノヴィア、ギャスパーを出すわ。」
相手十人に対しこちらは四名、半数以下と数的にリアスが圧倒的不利に見える。
「四人とも、いいこと?今回は制限なんてなし……つまり思いっきりやっていいわ。思いっきりね。」
あえて二度言って強調した「思いっきり」という言葉に、イッセーたちは目を光らせる。
『じゃあ、はじめようか。』
そのディオドラの合図で眷属たちはいっせいに構える。しかし、そこから先は一方的な蹂躙であった。
「ギャスパー、いくぞ!」
まず、イッセーがゼノヴィアにアスカロンで自分の指を切ってもらうとそこから滴る血をギャスパーに飲ます。
「アーシアは返してもらう!」
そしてゼノヴィアは異空間からデュランダルを引き抜くと、二振りの聖剣の聖なるオーラを共鳴させる。
「デュランダル、アスカロン、私に友達を救う力を……くれ!」
ゼノヴィアにとって、アーシアは掛替えの無い存在である。初めはアーシアを魔女と罵倒した。しかし神の死を知り、落ち込んだ自分を同じ境遇の友として受け入れてくれた。どん底から救い上げ、手を取ってくれたのだ。
そんなアーシアを奪い、穢そうとする輩をゼノヴィアが許せるはずもない。すべての怒りとアーシアへの想いを込めて、二振りの聖剣を振り下ろす。すると、その増幅された聖なる破壊のオーラはディオドラの戦車二名を飲み込み、文字通り消滅させた。
「制限はないと言われたからな。」
もとよりデュランダルを制御しきれていなかったゼノヴィアは、制御することを止めたのだ。全く抑えられていない破壊のオーラの破壊力は絶大で、神殿の半分以上も余波で消し去っていた。その一撃は残りの兵士たちをひるませる。
当然、その隙をイッセーたちが見逃すはずもない。
「小猫ちゃん、ギャスパー、いくぞ!」
「はい!」
「にゃん!」
まず、イッセーは女王に昇格する。本来であれば敵陣内でなければ昇格はできないが、すでにゲームが崩壊した今ではリアスの承諾さえあれば昇格は可能だ。
『Boost!』
さらに、ただでさえ向上した力を赤龍帝の籠手の力でブーストをかける。
『Explosion!』
そして一気に開放し、イッセーは自身の魔力を脳に集中させる。その力は、一度封印された恐るべき力であった。
「煩悩解放!イメージマックス!広がれっ、俺の快適夢空間!!」
事の始まりは、タンニーンとの修行のさなかであった。あまりに過酷な修行と環境は、イッセーを追いつめ、唯一の楽しみはスケベな妄想をすることのみであった。そんなさなか、イッセーは思いつく。
――おっぱいとお話がしたい。
通常の精神状態ではまず思い浮かばないことだ。だが、追い詰められたイッセーは違った。煩悩方面においてのみ魔力を行使することができるイッセーはかつて
しかし、今度はある意味それを上回る女性限定で脅威となるエロ技をイッセーは開発し、一度シトリー戦でそれを使ってリアスから使用禁止令が下された。だが、今は違う。
「さあ、その胸の内を聞かせてちょうだいな、『
「ヘイ!兵士のおっぱいさんたち、右から順にこれから何するつもりか教えてちょうだいな!」
『まず、邪魔なヴァンパイアの目を封じるの♪』
『三人がかりで一気にたたんじゃえ!』
『ヴァンパイア、倒す倒す!!』
そこまで聞いたイッセーはクワっと目を開き、ギャスパーに指示を出す。
「あの子とあの子とあの子はギャスパーを狙っている!ギャスパー停めろ!」
「は、はいぃぃぃ!!」
イッセーの指示のもと、ギャスパーは己の神器の力で三人を停止させる。
「じゃあ、君たちは何を考えているのかな?」
『わーお、あの子たち停められちゃった!これじゃあ私たちが猫又を狙ってるのもばれちゃう!?』
『うっそー、心を読まれない術式を施してきたのにぃ。』
『これじゃ全部気付かれちゃう!』
これじゃも何もすべて筒抜けであった。
「ギャスパー、今度はそっちの三人が小猫ちゃんを狙う!停止だぁぁぁ!」
「は、はいぃぃぃぃぃっ!」
ギャスパーの眼光が光り、三人は停止させられる。これで残るは兵士二人のみ。
その前にイッセーは邪悪な笑みを浮かべて停止した六人に向かいそして――洋服崩壊。あらわにした裸体をイッセーはすぐさま脳内フォルダに保存する。その光景を見せられて恐怖するのは残りの兵士二名だ。
心の内を読まれ、あまつさえ全裸にされることが女性にとってどれほど恐怖と屈辱か想像に難くないだろう。
「フハハハハ!怖かろう……。」
しかも脳波コントロールできる、と続きそうないかにも悪役なイッセー。正直心の中ではいずれ自分は「おっぱいを支配できる」とまで考えている。
ちなみに原作ではゼノヴィアのシーンは四ページにわたっていたが、本作ではたった七行にまとめられ、
「さあ、残りのお姉さんたちはどうしてくれちゃおうっか――ごふ!」
手をわしわしとさせるイッセーの頭めがけてダイスケがその辺にあった瓦礫を投擲した。
「いいからさっさと殺れよ。」
若干の怒気が含まれたその言いっぷりにイッセーもさすがに恐れた。
「は、はい。」
「……私の出番。にゃあ……。」
この後、滅茶苦茶縛り上げた。
*
兵士八名を縛り上げた後、イッセーたちは先を急ぐ。そうして辿り着いた次の部屋で待っていたのはディオドラの
「お待ちしておりました、リアス・グレモリー様。」
そう言いながらディオドラの女王はフードを取り払う。金髪碧眼の美女であったが、これから倒すのには変わらない。
記録映像によれば女王のほうは炎の魔力を操り、僧侶二名のサポート力はギャスパーとアーシアを超えていた。
「では、私が行きましょうか。」
そう言って朱乃が前に出る。
「戦力的にみれば、後の
さらにそこにリアスが加わる。これで学園二大お姉様がここでそろって戦うことになる。
「あら、私一人だけでも十分ですわ。」
「何を言っているの。堕天使の光も混ぜた『雷光』を覚えたからって油断は禁物よ。ここは堅実に行きましょう。」
もともと眷属の中でも純粋な魔力でトップを誇る二名だ。ここは安心してみていられるだろう。そう思っていたイッセーの袖を小猫がちょんちょんと引っ張る。
「ど、どうしたの?」
すると小猫はイッセーにしゃがむように促し、こそこそとあることを耳打ちする。
「……ほんとにいいんだね?言っちゃうよ?」
イッセーがそう念押しすると小猫はこくんと頷く。
「じゃあ――朱乃さーん、その人たちに完勝したら今度一緒にデートしましょう――ってホントにこれで朱乃さんがパワーアップするの?」
イッセーが小猫に問う。すると、小猫は朱乃を指さす。すると、朱乃は歓喜に打ち震えていた。
「ふふ、うふふふふふふふふふふふふ!イッセー君とデートできる!!」
迫力のある笑みを浮かべ、周囲に電撃を漏らす朱乃。よほど嬉しいらしい。正直これに一番ビビったのはイッセーである。これで本当に完勝してデートに行こうものならナニをされるかわからない……いや、いいかもと思ったのは秘密だ。
「酷いわ、イッセー!私というものがありながら朱乃にだけそんなこと言って!!」
悔しがるのはリアスであった。しかも涙目であるから相当だ。
「うふふ、リアス。これは私の愛がイッセー君に通じた証拠よ。あなたはもう諦めるしかないわね。」
「な、何を言っているの!?たかがデートの一回くらいの権利で電撃を迸らせる卑しいあなたに何も言われたくないわ!!」
なんか口論に発展した。しかも次第にたがいに体に魅力がないだの、したキスの回数で揉めたりしはじめた。その光景にディオドラの女王と僧侶二人も困惑する。
「あ、あなたたち!敵を目の前にして男の取り合いなど――」
「「うるっさい!!」」
同時に放たれる膨大な魔力と雷光。そのたった一撃で女王と僧侶二名はノックダウン、本当に完勝してしまった。
「大体ね、あなたのやり方は――まあいいわ、今はアーシアのことが最優先よ。」
「それもそうね、リアス。私にとってもあの子は大切な存在だもの。」
一旦共に矛を収め、リアスと朱乃は倒れているディオドラ眷属を思いっきり踏んで先に進んでいく。その様子を見て、ダイスケは思わず頭を抱えた。
「……何でウチはこうまともに戦えないのかねぇ。」
恐らくすべてはイッセーがいるから、なのではなかろうか。
*
残りはディオドラの
これなら楽勝、と部屋に足を踏み入れると、そこには見覚えのある白髪の者がいた。
「や、おっひさー。」
白髪のはぐれエクソシスト――
「フリード!?」
因縁のあるはぐれエクソシストが現れたのである。イッセーの記憶が正しければ、エクスカリバー事件以来である。あのときは目覚めたダイスケに一蹴され、ヴァーリに回収されていた。それがまだ生きていたのだ。
「まだ生きてるんだって思ったっしょイッセー君?もちもち、僕ちんしぶといからしっかりきっちり生きてござんすよ!」
思考を読まれていらだつイッセーだが、何か違和感を覚える。ここにいるはずの騎士二名が見当たらないのだ。
「オンやぁ、騎士二名をお捜しで?」
そう言いながらフリードがもごもごと口を動かすと、何かをペッと吐き出した。それは、指だった。
「俺様が喰ったよ。」
あまりに突拍子にない言葉に、イッセーの頭が回転しない。だが、小猫はあることに気付く。
「その人……人間を辞めています。」
忌むかのようなその言葉を聞くと、フリードは人間とは思えないような形相で哄笑をあげた。
「ヒャハハハハハハハハハハ!てめぇらに滅茶苦茶にされた後ヴァーリの野郎に回収されてなぁぁぁぁぁぁぁ!腐れアザゼルにリストラ食らっちまってよぉぉぉおおおおおおお!!!」
フリードの肉体が嫌な音を立てて変貌していく。顔は三角形で触角が生え、胴体はほそ長く、しかし太くなり、脚は二本に割れて節足動物のような脚に変わる。
「行き場をなくした俺を拾ったのが禍の団での連中さ!奴ら、俺に力をくれるっていうから何事かと思えばよぉぉぉぉぉ!キクハハハハハハハハハハ!
両手は鎌に変貌し、背中に昆虫らしい薄く長い翅が生えている。しかし、これはキメラというより――
「カマキラスか……?」
その変貌したフリードの姿はまさにカマキラスであった。
「そりゃもちろん合体相手は俺のソウルメイトになったカマキラスちゃんだよ!文字通り一つになったんだよぉぉぉおぉお!!!」
獣具の技術の応用の一部なのだろうか、フリードの肉体はカマキラスのものと混ざり合って人間カマキリというべき異形の姿だ。
「ところで知ってたかい?ディオドラ・アスタロトの趣味を。これがまた素敵にイカレていやがって最高に胸がドキドキだぜ!!!」
そこからフリードが話したディオドラの趣向の話は――最悪だった。
ディオドラの眷属は皆実は教会の元聖女やシスター。それも熱心な信徒や教会本部にも近い者たち。彼女たちは皆ディオドラによって誘惑され、手籠めにされ、堕とされた。そんな女たちだった。
ある日、ディオドラはあるシスターを目にする。アーシアであった。一目見て気に入り、ディオドラは自分のものにできないか思案する。そこに、ある神器に詳しい者がアーシアが悪魔も癒す神器を持っていると教えられる。そこからのシナリオはこうだ。
まず、わざと自分は怪我をして教会の前に来る。当然心優しいアーシアは傷を癒すだろう。しかし、その正体が悪魔だとすればアーシアは悪魔を癒す魔女として教会を追い出される。
そこを狙う。
信じていた教会から追放され、信じていた神も信じられなくなれば自然とアーシアは自分のものになる。その苦しみも快楽のためのスパイスなのだから。最底辺まで落とし、掬い上げて、犯す。心身ともに。今までずっとそうしてきたのだ。そして、今度のターゲットはアーシア。
そこまで聞いたイッセーは、もう自分を止められそうになかった。握りしめる拳からは血がしたたり落ちるほどだ。怒りのまま、フリードに向かおうイッセーは一歩足を動かすが、両方の肩をつかまれ、停められる。
木場とダイスケだ。
「イッセー君、気持ちはわかる。でもその怒りをぶつけるのはあいつじゃぁない。ディオドラまでとっておくんだ。」
「第一お前もう出たろ?俺だって体動かしたいんだよ。」
二人の物言いは冷静だった。それが逆にイッセーの癇に障る。
「お前ら、これで黙っていろなんて――」
二人の胸ぐらをつかもうとしたが、その手が止まる。イッセーに見えた二人の目には、明確な怒りの炎が宿っていた。
「ここは僕たちが行く。あの汚い口は閉じなければならない」
「あー……久々の感覚だわ、これ。誰かをぶち殺したくってしょうがねぇかんじ。」
イッセーの怒りが一瞬覚めてしまうほど、二人の全身から怒りのオーラが立ち上る。そしてなにより、これまでにないほど攻撃的だった。
「やあやあ、てめぇらはあの時俺を好きにしてくれたお二人さんじゃないの!てめぇらのおかげで俺は素敵にモデルチェンジしちゃいましたよ!でもよぉ、その分強くもなったんだぜぇ?ディオドラの騎士二人をぺろりと平らげてそいつらの特性も得たんすよぉぉぉぉ!!!無敵超絶モンスターのフリード君をどうぞよろしくお願いしますぜ、色男サンたちぃぃぃぃぃ!!!!」
二人に飛びかかろうとするフリード。しかし、その姿は突然消える。
「なんだ!?消えた!!」
イッセーが驚くと、突然木場とダイスケの周囲の地面が切り裂かれる。
「あひゃひゃやひゃひゃひゃ!実はカマキラスはよ、自身を周囲の風景に溶けかませる擬態能力があるのよ!つまり透明化だぁぁぁぁぁ!!さぁ、何が起こっているかわからねぇ内に切り刻んでやるぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
音もなくダイスケたちの周囲は切り裂かれていく。このままではフリードの言うように何もできないまま切り刻まれてしまう。
しかし、様子がおかしい。何も見えないはずなのに、木場とダイスケは体をそらしたりステップで移動し、最小限の動きだけで見えない攻撃をよけているようなのだ。
「なんでだ、なんで斬れねぇぇぇぇえええええええええ!?」
あまりの手ごたえのなさにフリードが苛立ち、絶叫する。すると、木場が答える。
「君の一撃はあまりに殺気がこもりすぎている。それに、君が移動した瞬間の大気の流れや小さな音を拾えば君がどこにいて、次何をするのかなんて簡単に読めるんだよ。」
そしてダイスケも答える。
「最近分かったことなんだがな、どうやら俺の体は変化しているらしい。特に感覚器官はそうだ。まるでフェーズドアレイレーダーでもあるみたいにどこに何があるのか、どこへ向かおうとしているのか、目を開けなくても感じることができるようになっちまってるんだよ。」
異なる原理でしかし確実に攻撃をよけていくさまは、フリードを激昂させた。
「ちょ、調子くれてんじゃねぇえええええええええええ!!」
憤怒の表情で透明化を解き、二人に両手の鎌で襲い掛かるフリード。しかし、二人はよけずにそれぞれ聖魔剣を、そして熱線剣を薙ぐ。そのたった一閃でフリードの首は胴体から切り離され、その胴体も高熱にさらされて一瞬で灰になる。
「――んだよそれ、強すぎんだろ……。」
それぞれ、たったの一撃であった。それは素のカマキラス一匹を相手に苦戦していたころとまるで違うことを如実に示す。
「……ひひひ、ま、お前らじゃディオドラの裏にいる奴らも倒せないさ。何よりも神滅具所有者の本当の恐ろしさをまだ知らないんだ――」
頭部だけで笑っていたフリードであったが、その捨て台詞はすべて言えなかった。なぜならダイスケの熱線剣と木場の聖魔剣が突き刺さり、とどめを刺していたからだ。フリードの頭部は聖魔剣によって真っ二つに割かれ、そして熱線剣の熱で灰となった。
「――続きは地獄の死神にでも吼えるがいい。」
「――ま、お前なんざ相手にもされないだろうがな。さ、行こうか。」
*
イッセーたちが辿り着いたのは神殿の最深部、そのドアを蹴破って中に入ると、そこには異様な装置があった。壁に埋め込まれたそれは巨大な円形で、あちこちに宝玉が仕込まれ、怪しげの文様と文字が刻みこんである。
どうやらこの装置そのものが何らかの術式の魔方陣であるようだ。そしてその装置の中央には――
「アーシアァァァァアアアア!」
その装置の中央にアーシアは磔にされていた。見ただけだが、外傷を受けたらしき様子はない。
「やっと来たね、赤龍帝。」
装置の陰からディオドラが姿を現す。その相変わらずの微笑みを見てますます怒りを燃やすのはイッセーだ。
「……イッセー、さん?」
イッセーに来たことに気付き、うつむいていたアーシアが顔を上げる。その目元は赤く腫れ上がっていた。
そのアーシアの痛々しい姿を見て、イッセーはすべてを悟った。
「……おまえ、アーシアに話したな。」
「ああ、すべてね。ああ、君たちにも見せたかったなぁ、彼女が最高の表情になった瞬間を。すべて僕の掌の上だったことを知ったアーシアの顔は本当に最高だった。記録映像にも残したよ。見るかい?本当に素敵だったよ。教会の女が堕ちる瞬間は何度見てもたまらない。」
すすり泣きが聞こえる。アーシアだ。
「でもまだ足りない。まだ君たちという希望がある。そこの汚れた赤龍帝、君がアーシアを救ってしまったせいで僕の計画は台無しだ。あの堕天使、レイナーレが一度アーシアを殺した後に僕が登場してレイナーレを殺し、駒を与える算段だったんだ。君が乱入してもレイナーレに殺されると思っていたのに赤龍帝だというじゃないか。おかげで計画はだいぶ遅れたけど、やっとこれでアーシアを楽しめるよ。」
「黙れ。」
その声は、発したイッセー本人でも驚くほど低い声であった。
なんとなくだが、いけ好かないとは思っていた。ライザーと同じようなにおいを感じていたからだ。だが、違う。いけ好かないどころか小悪党も生ぬるい――外道。いや、鬼畜だ。
もう怒りを制御しようと思えない。それどころかディオドラはさらに続ける。
「アーシアはまだ処女だよね?僕は処女から調教するのが好きだからお古は嫌だな。あ、でも君から寝取るのもまたいいかもそれない。君の名前を叫ぶアーシアを無理やり抱くのも――「ちょっといいかな」――ん?」
怒りに震えるイッセーを抑えて前に出てきたのはダイスケであった。
「いやね、そっちばかりしゃべっててもつまらないから、俺の話も聞いてもらおうと思ってよ。それもディオドラ、お前に間する大事なお知らせだ。」
「お知らせ?なにかな。」
ディオドラは首をかしげる。
「むかーし昔というほどのことではありませんが、あるところに悪魔の貴族のお坊ちゃまがいました。そのお坊ちゃまは大変悪く、いろんなところの聖女をモノにするとんでもないエロガキでした。そんなある日、悪ーい人たち禍の団のひとから団にはいらないかという誘いを複数受けます。そのうちの一つは自分が契約していた人間の一人、チャールズ・ドゥロイドでした。」
チャールズの名前が出た瞬間、まさか、という表情になりディオドラの顔から余裕が消える。
「チャールズは禍の団からあるものを購入したかったのですが、何より一介の魔術師ということであまり相手にしてもらえませんでした。そこで、貴族である坊ちゃんに口添えを頼んだのです。そして目当てのものである獣具を購入することができました。当然坊ちゃんにも仲介料が入ります。ですが、さて問題が発生。テロリストの団体に入ったからには今までのようにのんきで冥界に暮らすなんてことはできません。そこでまず、自分の資産をチャールズに手伝ってもらって人間界の銀行に高跳びさせたのです。」
話が進むにつれ、ディオドラの表情が徐々に歪み始める。
「これで事が起きた後は人間界で今まで通りに生活ができる。そう思った矢先、チャールズはヘマをして捕まってしまいました。流石に自分のことは話さないだろうと、お坊ちゃまは考えましたが、なんと彼は裏で起きたすべてを話してしまったのです。」
「馬鹿な!?盟約を破ったのか!?」
「それどころじゃなかったのです。何せ自分を恐ろしい目に合わせた怪獣王にこの事と突っ込まれたのですから。そして彼は自分たちと禍の団の関係をすべて吐露、三大勢力は怪しい動きを見せていた金の行先もしっかり確保。テロリストに加担した罪でお坊ちゃまは次期党首の権利をはく奪、お家もしばらくの間魔王の輩出権を停止。もちろんお坊ちゃまが各地に分け、隠した資産もすべて没収ということになりました。」
財産の全没収という言葉に、ディオドラは口を開ける間抜けな姿になった。
「ですが悪いことばかりであはありません。没収された財産は俺のアイデアで各地の経営が厳しくなった教会の経営資金に転用されることになりました。これでお坊ちゃまが大好きなシスターの役に立てましたとさ、めでたしめでたし。」
「……何が目出度いものか。僕の全財産の没収だと?どれだけの価値があったのかわかっているのか!?」
「んー、少なくともミカエルさんが「これでかなりの数の経営の立ちいかない教会が救われます」って言ったくらい?つーか、テロ組織にかかわってる奴の口座を放っておくわけねーだろ。それくらい気付けバーカ。」
「ふ、ふ、ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁあああああああ!!」
そう言ってディオドラは自身の中の『蛇』の力を爆発させ、ダイスケにとびかかる。が、ダイスケはその身を翻しこう言った。
「お前を裁くのは俺じゃない――」
「うおおおおおおおおお!」
怒りを爆発させ、禁手の力を呼び起こしたイッセーがとびかかってきたディオドラをダイスケの陰から殴りぬける。
「――兵藤一誠だ。」
ということで覇龍カウントダウン開始なVS48でした。
もう、ここのところはほとんど原作と流れが変わっていないのでいかに自分の力量が無いか痛感させられます。……今回ので低評価続出したらどうしよう。
なお、感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われるとJET CRITICAL STRIKE!!になりますのでご勘弁を。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!