ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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みんなもっと……感想とか書いてくれてもええんやで(にっこり)(二回目)?




VS49  シン

 イッセーに殴り飛ばされたディオドラは装置の足元まで飛んでいき、そこでようやく止まる。

 

「へぇ、なかなかいい拳じゃないか。でも僕もオーフィスの『蛇』でパワーアップしたんだ。本気を出せば君くらいは瞬殺――」

 

 そう言おうとした時、すでに眼前に鎧を着こんだイッセーの姿があった。背中の噴出口からブースターのように魔力を一気に噴き出し、一瞬で距離を詰めたのだ。そして、ディオドラの腹を思いっきり殴った。

 

「……瞬殺がなんだって?」

 

 千鳥足のような足取りでディオドラはゆっくりと拳から体をくの字に曲げて後ずさりする。

 

「僕はっ、上級悪魔だ!こんなことで!現ベルゼブブの血筋なんだぞ!」

 

 ディオドラはそういうと、自身の周囲にいくつも魔力弾を準備する。

 

「君のように下劣で下等で下品な転生悪魔なんかに、気高き血が負けるはずがない!」

 

 手を前に突き出すと無数と言っていい数も魔力弾がイッセーめがけて雨霰のように降ってくるだが、イッセーはそれらをよけもせずただ一歩ずつ歩いていく。飛んでくる弾を手ではじき、鎧で受けながらもまっすぐに歩いていく。この程度、タンニーンのブレスに比べれば子供のおもちゃ同然だ。

 

『そうだ、奴との修行はお前を相当なほど鍛えこんだ。シトリーとの一戦では縛りがあったから出し切れなかったが、縛りがないのなら思う存分暴れられる。鎧の防御力もシトリー戦のころより安定してきた。単純な力なら、お前はかなりのものだよ。』

 

 イッセーがディオドラの眼前に迫る。するとディオドラは魔力弾の攻撃をやめ、距離を取った。そして、幾重にも防御障壁を張り巡らす。

 

「ヴァーリのよりも薄そうだな。」

 

 たった一撃の拳。それだけで幾重にも張られた障壁はガラスのように割れていく。そしてイッセーはブースターを噴射させ、一気に距離を詰めるとディオドラのその顔面を殴りぬけた。その反動でディオドラは床に叩きつけられる。その顔からは血を流し、涙も流していた。

 

「痛い痛い痛い痛い痛い!どうして!?当たったのに!オーフィスの力なんだぞ!」 

 

 わめくディオドラの体をイッセーは引き上げる。そしてオーラがこもった拳を何度も、何度も打ち込んでいく。

 

「がふっ!めふゅ!げばぁ!ぼひゅ!」

 

 まさに一方的だった。しかし、ディオドラはまだあきらめてはいない。標的をリアスたちに変え、自身に残った『蛇』の力すべてを打ち出した。が、ダイスケはそれを空中でつかみ、リンゴか何かのように握りつぶす。

 

「そ、そんな……!」

 

「お前……俺やアーシアだけじゃなく、みんなも狙ったなぁぁぁぁぁぁあああああああ!」

 

 イッセーはありったけの怒りとオーラを右手に集中させる。そしてそのままディオドラの顔面を殴りぬいた。ディオドラの体は壁にぶつかってめり込む。残っていたすべてを賭けて放った一撃がダイスケにあっさりと潰されたのだ。もう手立てはない。

 しかし、それでもイッセーは止まらない。壁に埋もれたディオドラを引き抜くと、もう一度拳を構え、その目を見た。その目は――映像で見たゼファードルと同じだった。

 

『そいつの心はもう終わった。そいつの瞳はドラゴンに恐怖を刻み込まれた者のそれだ。』

 

 ドライグの言葉にイッセーは納得した。しかし、すべてを受け入れたわけではない。イッセーはディオドラの胸ぐらをつかむと言い放つ。

 

「俺んちのアーシアを泣かせるんじゃねぇよっ……!そして二度と俺たちの前に姿を見せるな!そのときは本当の本気でお前を消す!」

 

 歯をガチガチと鳴らし、ディオドラは恐怖する。しかし、それで納得できない者がいた。ゼノヴィアだ。彼女はアスカロンをディオドラの首に突きつける。

 

「止めは刺さないのか?こいつはまたアーシアに近づくかもしれない。今この場で首をはねたほうが今後のための得策ではないのか。」

 

 その言葉の裏にあるのは彼女の本気だ。もとよりエクソシストであるため悪魔を斬ることには慣れている。そして、イッセーかリアスの承諾さえあればいつでも斬るだろう。

 だが、イッセーは首を横に振った。

 

「いや、こいつの処罰は魔王様たちに預けよう。これでも一応現魔王の血筋だ。勝手に殺したらきっと部長やサーゼクス様、それにジオティクスさまにも迷惑がかかるかもしれない。ここのところでお終いにしておこう。」

 

「そうね……イッセーの言うとおりだわ。ゼノヴィア、こんな奴の血で聖剣を汚す必要はないわよ。」 

 

 イッセーとリアスの意見を聞き、ゼノヴィアはもったいなさそうに剣を引く。

 

「……イッセーと部長が言うならそうしよう。――だが。」

 

「ああ。」

 

 イッセーとゼノヴィアはアイコンタクトし、ともにそれぞれ剣と拳をディオドラの眼前で止め、怒気を込めて言い放った。

 

「「二度とアーシアに近づくなっ!!」」

 

 その二人の怒気に当てられ、ディオドラは恐怖で瞳を濡らして何度も頷いた。

 ディオドラはそこで放置され、一同はアーシアの元へ駆け寄る。

 

「イッセーさん!」

 

「もう大丈夫だぞ、アーシア。約束したからな、必ず守るって。」

 

 そう言ってイッセーはアーシアの頭を撫でてやる。それで安堵したのか、うれし泣きで涙を流した。

 

「さてと、こいつをぶっ壊すか。」

 

 ダイスケがそう言ってアーシアの手枷を握りつぶそうとする。しかし――

 

「あれ……びくともしねぇぞ。」

 

 ダイスケが本気で焦る。

 

「ウソだろ、ちょっと俺の力で『Boost!』――おい、まさか。」

 

「よし、一緒に枷を引っ張るぞ!」

 

「わかった、「せーの!!」――おい、冗談だろ!?」

 

 イッセーとダイスケの二人掛りでも枷が外れない。それを見た木場が聖魔剣で切り付けるが――

 

「だめだ、刃が立たない!」

 

「……無駄だよ。それは滅びの力でも破壊することはできない。」

 

 その時、ディオドラが言葉少なげにそう呟いた。

 

「その装置は昨日の関係で使い捨てだが、逆に一度使わないと停止できないようになっている――アーシアの能力が発動しない限り停止しない。」

 

「どういうことだ!?」

 

 イッセーがディオドラの胸ぐらをつかむ。すると、ディオドラは感情もなく淡々と答えた。

 

「その装置は神滅具(ロンギヌス)、『絶霧(ディメンション・ロスト)』所有者が作り出した固有結界。このフィールドを強固に包む結界もそう。絶霧(ディメンション・ロスト)は結界系の神器の最強。その霧の中に入ったすべてを封じることも、異次元に送ることも可能。それが禁手(バランス・ブレイカー)に至った時、所有者の望む結界装置を霧の中から創り出す能力に変化した。『霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)』、作り出した結界は一度望む形で発動しない限り止められない。」

 

 それを訊いた木場はディオドラを問いただす。

 

「発動の条件と結界の能力、それと効果範囲は?言え!」

 

「……じょ、条件は僕かほかの関係者の合図、もしくは僕が倒されたら。能力は――枷につないだもの、この場合はアーシアの能力を増幅させて反転(リバース)させる。」

 

「おい、反転ってたしかシトリーが――!」

 

 実際に見たことはなかったが、記録映像で見てそれはダイスケも知っていた。 

 反転(リバース)、それはシトリー眷属がグレモリーとの一戦で見せた「発動された能力を逆の特性に変える」技術。例えば聖剣の聖のオーラは魔のオーラに変換され、悪魔にとって有害な『光』は無害な闇に変換される。

 この場合はアーシアの絶大な悪魔や堕天使すらも癒す聖女の微笑み(トワイライト・ヒーリング)の力。これを反転させれば――

 

「そして効果範囲は……このフィールド全体と観覧席。」

 

 アーシアの癒しの力は冥界でのトレーニングの際に強化された。それがさらに装置によって増幅された上に反転されれば一体どれだけの被害を及ぼすか想像に難くなかった。

 

「……各勢力のトップたちが根こそぎやられるかもしれない。」

 

 その可能性に発言した木場のみならず全員の表情が青ざめる。

 

「おい、ドライグ!なんとかならないのか!?お前だって神滅具だろ!」

 

『いや、絶霧は赤龍帝の籠手よりも高ランクの神滅具だ。しかも相手が禁手に至っているのなら突破は無謀に等しい。覚えておいてくれ、俺よりも強力な神滅具も存在するのだ。』

 

「……くそ、どうにもならないのかよ!?」

 

 胸倉をつかんでいたディオドラを放り投げると、イッセーは悔しげに床を叩く。

 

「諦めるな!必ずなんか方法はあるはずだ!」

 

 そう言ってダイスケは枷を何度も鰭斬刀で切り付ける。同じ神滅具の黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)の刃も砕いた刀である。何とか傷はつけてるものの、この様子ではいつまでかかるか分かったものではない。

 その様子を見たアーシアはイッセーに懇願する。

 

「イッセーさん、いっそ私ごと――」

 

「なにバカなこと言ってんだ!次そんなこと言ったら怒るからなっ!アーシアでも許さねぇぞ!」

 

「で、でも、このままでは先生もミカエル様も……そんなことになるくらいなら私は――」

 

「それでもダメだ!俺は、俺は二度とアーシアに悲しい思いをさせないって決めたんだ!絶対に守って見せるから!だから、一緒に帰ろう。父さんと母さんが運動会で頑張るアーシアを撮るんだって張り切ってんだからさ!!」

 

 涙ながらにイッセーはアーシアを説得するも、静かに装置は起動を始める。そんな中、イッセーの脳裏にあることがよぎる。

 この装置はアーシアを磔にしたものだ。枷によってアーシアの体は密着している。ならば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?

 

「……ドライグ、お前を信じるぞ。」

 

『何をするつもりだ、相棒?』

 

「そんでもってアーシア、先に謝っておく。」

 

「え?」

 

 そしてイッセーは心の中でアーシアに謝った。

 

――ゴメンね!

 

「高まれ、俺の性欲!俺の煩悩!――洋服崩壊(ドレスブレイク)禁手(バランス・ブレイカー)ブーストバージョン!!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

 そして響くパキン、という枷が割れる音とビリィッと言う布が裂ける音。装置が破壊されると同時にアーシアの服も粉みじんになって吹き飛んだのだ。

 

「きゃ!」

 

 かわいらしく悲鳴を上げ、前を隠すアーシア。その姿を見て鼻血を流すイッセー。さっきまでの約束云々言ってたお前はどこに行った。

 

「あらあら大変。」

 

 朱乃がすぐに魔力で新しいシスター服を生成して着せてやる。もちろんアーシアの尊厳のためダイスケを木場は目を隠している。

 

「それにしてもよくあの技で装置も破壊できると思ったわね。」

 

 リアスが呆れながらもイッセーに言う。

 

「いえ、アーシアの衣服に密着してたから衣服の一部としてみなせないかなーって思っただけだったんで。多分、いつものじゃ無理でした。神器でブーストしたからできたんだと思います。それでグレーゾーンなあたりを無理やり突破したかな、って感じです。」

 

「それでこの結果を出したんだから大したものよ。――お疲れ様。」 

 

 そう言うとリアスはイッセーの頭を鎧越しに撫でた。

 

「イッセーさん!」

 

「アーシア!」

 

 すべてが終わったことを実感したアーシアがイッセーに抱き着く。

 

「ゴメンな。辛いこと、聞いてしまったんだろう?」

 

 ディオドラが話してしまったことについて謝ると、アーシアは首を横に振り、笑顔で言った。

 

「平気です。あのときはショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから。」

 

 その言葉に、イッセーは涙を流した。そして、より一層アーシアを守ろうという誓いを強くする。 

 今度はゼノヴィアがアーシア抱きついた。

 

「アーシア!良かった!私はおまえがいなくなってしまったら……」

 

「どこにも行きません。イッセーさんとゼノヴィアさんが私のことを守ってくれますから」。

 

「うん!私はおまえを守る!絶対だ!」

 

 親友同士抱き合う二人。

 

「部長さん、ありがとうございました。私のために……。」

 

 今度はリアスがアーシアを抱き、やさしげな笑顔で言う。

 

「アーシア。そろそろ私のことを家で部長と呼ぶのは止めてもいいのよ? 私を姉と思ってくれていいのだから」

 

「――はい! リアスお姉さま!」

 

 何はともあれ、これで一件落着である。 

 が、突如光の柱がアーシアを包む。その光が消えた跡には――

 

「アーシア?」

 

 ――アーシアの姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

「神滅具で創りしもの、神滅具によって散る、か。霧使いめ、手を抜いたな。計画の再構築が必要だ。」

 

 いつの間にか、知らない男が宙に浮いていた。どこまでも冷たい、氷のような目をした男だった。

 

「お初にお目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私の名前はシャルバ・ベルゼブブ。偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正統なる後継者だ。先ほどの偽りの血族とは違う。ディオドラ・アスタロト、この私が力を貸したというのにこのザマとは。先日のアガレスとの試合でも無断でオーフィスの蛇を使い、計画を敵に予見させた。貴公はあまりに愚行が過ぎる.」

 

 アザゼルが言っていた今回の事件の首謀者の名前の一つであった。その男に、ディオドラは縋るように懇願する。

 

「シャルバ、助けておくれ!君と一緒なら、赤龍帝を殺せる!旧魔王と現魔王が力を合わせれば――」

 

 しかし、シャルバの手から放射された光が、ディオドラを貫く。ディオドラは床に突っ伏す暇もなく、塵と化して消滅していった。

 

「哀れな。あの娘の神器の力まで教えてやったのに、結局モノにもできずじまい。それではたかが知れているというもの。」

 

 天使か堕天使の能力に近しいものだろうか、しかし、その誰もが光には見覚えがあった。アーシアを消した光と同質のものだ。

 そのことに気付いた者たちは怒りにわなわなと体を打ち震わす。

 

「さて、サーゼクスの妹君。いきなりだが、貴公には死んでいただく。理由は当然。現魔王の血筋をすべて滅ぼすため。」

 

「グラシャラボラス、アスタロト、そして私たちグレモリーを殺すというのね。」

 

「その通りだ。不愉快極まりないのでね。私たち真の血統が、貴公ら現魔王の血族に『旧』などと言われるのが耐えられないのだよ.」

 

 そしてシャルバは嘆息して呟く。

 

「今回の作戦は失敗に終わった。まさか神滅具のなかでも中堅の赤龍帝の籠手が上位の絶霧に打ち勝つとはな。こればかりは想定外としかいえない。まあ、今回の件はいい勉強になった。クルゼレイがサーゼクスに挑んで死んだがこれも問題ない。私がいさえすればヴァーリが働かなくとも我々は十分に動ける。真のベルゼブブは偉大なのだから。さて、去り際のついでだ。サーゼクスの妹よ、死んでいただく。」

 

「現魔王に直接決闘を申し込まずにその血縁から断とうだなんて何たる卑劣!」

 

「それでいい、まずは現魔王の家族から殺す。絶望を与えなければ意味はないからな。」

 

「――外道っ!何よりもアーシアを殺した罪!絶対に許さないッ!」

 

 リアスはついに激昂し、深紅のオーラを全身から波止場知らせる。朱乃も怒りに顔をゆがめ、両手に雷光を纏う。

 

「こういうクソは――この場で何としても消さねぇと……!」

 

 ダイスケもその怒りで力が増したのか、装甲の隙間から青白く淡い光が漏れている。

 

「アーシア?アーシア?」

 

 しかし、ただ一人イッセーは虚ろな目で消滅したアーシアを呼んでいた。

 

「アーシア?どこに行ったんだよ?ほら、帰るぞ?家に帰るんだ。父さんも母さんも待ってる。そんなふうに隠れていたら、帰れるものも帰れないじゃないか。ハハハ、アーシアはお茶目さんだなぁ。」

 

 あたりを探すように、ふらふらとイッセは周囲をうろつく。

 

「アーシア、帰ろう。もう、誰もアーシアをいじめる奴はいないんだ。いたって、俺がぶん殴るさ!ほら、帰ろう。アーシア、体育祭で一緒に二人三脚するんだから……。」

 

 もう、誰もまともに直視できなかった。その光景を見て、一番繊細と言っていいギャスパーと小猫が嗚咽を漏らす。

 朱乃も怒りに顔をゆがませながらも、その頬につう、と涙が走る。放っておけなくなったリアスはイッセーをひしと抱きしめた。

 

「部長、アーシアがいないんです。やっと救いだしたのに。アーシアだけでも、神殿の地下に逃がさなきゃ。でも、アーシアがいないと……。……と、父さんと母さんがアーシアを娘だって。アーシアも俺の父さんと母さんを本当の親のようにって……。俺の、俺たちの大切な家族なんですよ……。」

 

「……斬るっ!斬り殺してやるッ!こいつだけは絶対に許せないッ!!」

 

 叫びながらゼノヴィアがシャルバに斬りかかる。

 

「無駄だ。」

 

 しかし、シャルバはアスカロンとデュランダルの一撃を障壁で難なく弾き、ゼノヴィアの腹部に魔力の塊を打ち込む。その威力で地に落ち、めり込むゼノヴィア。二振りの聖剣も手から離れ、地面に突き刺さる。

 

「……アーシアを返せ。――私の、友達なんだ……!……誰よりも優しい、優しい友達なんだ!どうして……、どうして……!」

 

 頭から血を流しながらも、ゼノヴィアはそれでも聖剣を手にしようと地面を這いずる。

 

「下劣なる転生悪魔と汚物同然のドラゴン。全く持ってグレモリーの姫君は趣味が悪い。おい、そこの赤い汚物。あの娘は次元のかなたに消えた。すでに次元の狭間の無に当てられてその身も消滅しておろうて――お前にもわかりやすく言ってやると死んだ、ということだ。」

 

 その時、うつろなイッセーの視線がシャルバを捉える。そしてそのままじっと見つめる。その姿はどう見ても異様だった。

 

『リアス・グレモリー、全員を連れていますぐこの場を離れろ。死にたくなければすぐに退去したほうがいい。』

 

 突然、ドライグが声を出した。

 その言葉の意味を理解するよりも先に、崩れ落ちていたイッセーが立ち上がる。

 

『そこの悪魔よ。シャルバといったか?』

 

 リアスすらも振り払い、イッセーはシャルバに向かって歩き続ける。その足取りはさながら生き返った死人のようであった。

 

『おまえは――』

 

 嫌悪感を覚えるほど無機質で無味無臭なドライグの声がイッセーの口からこぼれる。

 

『――選択を間違えた。』

 

 その刹那、神殿そのものが大きく揺れるほどの莫大な赤いオーラがイッセーからあふれ出てくる。その赤はいつもの鮮やかな赤ではなく、まるで血のような赤。

 誰もが、それを肌で感じてそれを理解する。

 

――これは、危険だ。

 

 そしてイッセーの口から呪詛のごとき呪文が発せられる。しかし、その声はイッセーのものだけではない。老若男女、あらゆる人物の替えが入り混じった不気味なものだった。

 

『我、目覚めるは――』

 

〈始まったよ〉〈始まってしまうね〉

 

『覇の理を神より奪いし二天龍なり――』

 

〈いつだって、そうでした〉〈そうじゃな、いつだってそうだった〉

 

『無限を嗤い、夢幻を憂う――』

 

〈世界が求めるのは――〉〈世界が否定するのは――〉

 

『我、赤き龍の覇王と成りて――』

 

〈いつだって、力でした〉〈いつだって、愛だった〉

 

 

《何度でもおまえたちは滅びを選択するのだなっ!》

 

 

 イッセーの鎧が変質していく――それはまるで生物、もっと言えば小型の赤いドラゴン。

 そして全身に配された宝玉から多くの人々の絶叫に近い叫びが発せられる。

 

「「「「「「――汝を紅蓮の煉獄に沈めよう――」」」」」」

 

『Juggernaut Drive!!!!!!!!!!!!』

 

 赤いオーラが迸ったことによってイッセーの周囲がはじけ飛ぶ。何もかもがオーラに触れただけで。破壊されていく。

 

「ぐぎゅああああああああああああああああああああああああっ! アーシアァァァァァッッ!」

 

 獣にも似た叫びを残し、ドラゴンの姿は一瞬で掻き消える。その次の瞬間、すでにドラゴンはシャルバに組み付き、その肩に食らいついていた。

 

「ぬぅぅぅうううう!!」

 

 速度をつかさどる騎士の木場でも捉えきれなかったほどのスピードである。見れば兜のクラッシャーが文字通りの咢に変貌しており、ぶちぶちという音を立てて肩の肉を噛み千切っている。

 

「おのれっ!」

 

 シャルバは右手をかざして光を放とうとするが、その腕はすくさまドラゴンの宝玉から生えてきた龍の腕とそれから生えた刃で右手ごと切断される。

 

「ぬおっ!」

 

 シャルバの苦悶の声とともに、鮮血が辺りに散らされる。

 

「げぎゅごかゅぁ、ぎゅぎゃぎゃぁっ、ぐヴぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 各部に配された宝玉からいくつもドラゴンの手足や刃が生え、その姿も、発する声もすでに元のイッセーを思わせるものはない。もはや単なる怪物である。

 

「ふ、ふざけるなぁぁぁぁ!!」

 

 シャルバは残った左腕をかざすと特大の光を放つ。しかし、今度はドラゴンの翼が白く発光する。シャルバの光が届くと思われた瞬間――

 

『DividDividDividDividDividDividDividDividDividDivid!!』

 

 音声が鳴ると同時に徐々に光の波動が半分づつになっていく。これは紛れもなく白龍王の力だ。

 

「これは……ヴァーリの!おのれ、どこまでもお前は私の前に立ちふさがるのかヴァーリィィィィィ!!!」

 

 かつてはまともに使えもしなかった力をこうもたやすく使いこなすそのスペックと異常性にリアスたちはただおののくしかない。

 

「まずい……みんな逃げろ!イッセーは俺が抑える!!」

 

「何を言っているの!?あの力を見ていなかったの!?」

 

 朱乃も、小猫もギャスパーもイッセーに対して恐怖する中、ダイスケの一言でようやく我に返ったリアスが言う。

 その間にも、ドラゴンは口腔から放ったレーザーでシャルバの左腕を吹き飛ばす。

 

「この中で一番パワーがあるのは俺だ!じゃなきゃ誰が今のイッセーを抑える!?それに暴走するダチを放っておけるかよ!!」

 

「部長、ここはダイスケくんの言うとおりです!せめて僕はあなただけでも連れて行きますよ!朱乃さん、ゼノヴィアをお願いします!!」 

 

 木場の懇願で我に返った朱乃がゼノヴィアに肩を貸し、ギャスパーと小猫もそれに続いて神殿を出る。

 

「イッセー、私は……。」

 

「――っ、失礼します!」

 

 意を決した木場は、リアスを抱きかかえてその場を後にした。そして、全員がいなくなったことを確認してダイスケはドラゴンに組み付く。

 

「イッセー、止まってくれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 尚もシャルバを痛めつけんとするドラゴンを正面から受け止めるダイスケ。だが、正直なところパワー負けをしている。

 その隙を見計らって、シャルバは残る足で転移用魔方陣を描き逃走しようとするが、その動きは途中で止められる。

 

「と、停めたのか、私の足を!?」

 

 見れば鎧の瞳が赤く光っている。ギャスパーの能力までも使ったのだ。

 

「馬鹿な、一体どこまでのスペックだというのだ!?これではデータ以上ではないか!!ありえん、たかが神器にこの真なるベルゼブブが敗北することなど――」

 

 その残ったシャルバの矜持から発せられた言葉が、ダイスケの精神を逆なでした。もとはシャルバがアーシアを消したのがトリガーとなってこうなったのだ。それをまるでこの状況を作り出したのがイッセーだとでも言いたいかのような口ぶりであった。

 

「ごちゃごちゃうるせぇンだよ……まずはお前が消えろ!!」

 

 そう言ってダイスケはまずドラゴンの自身を押す力のベクトルと別方向に力を掛けて組み伏せると、ダイスケは自分の顔をシャルバに向けるとクラッシャーを開く。

 そして鍛錬後一度も使っていない口からの放射熱線を放った。その威力は以前の比ではなく、あっという間にシャルバを包む閃光となる。

 

「バ、バカな……ッ!真なる魔王の血筋である私が!ヴァーリに一泡も噴かせていないのだぞ!?ベルゼブブはルシファーよりも偉大なのだ!おのれ!怪獣ごときが!赤い龍め!白い龍めぇぇぇぇ!!!」

 

 そんな断末魔を上げ、シャルバは青白い閃光の中に消えていった。

 

「イッセー、落ち着け!奴は俺が始末した!もう暴れなくていいんだ!!」

 

 再び立ち上がったドラゴンに、ダイスケは尚も語りかける。しかし、突如ドラゴンの胸の装甲が開く。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

『Longinus Smasher!!!!!』

 

 放たれた赤い一筋の閃光。その一撃はダイスケの胸を貫き、何メートルも後退させた。

 

「ハハッ、これ、やべ――」

 

 そう言い残し、ダイスケは地に臥した。

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 

 目の前で憎き敵を失い、やり場のない怒りを叫ぶドラゴン。しかし、その怒りが止めようとした友を貫いたのだ。

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 

 そのことにも気づけない哀れなドラゴンはただアーシアを失ったことへの悲しみの咆哮を上げる

 しかし、突如としてダイスケの身に異変が起きる。

 胸をロンギヌス・スマッシャーで打ち抜かれ、倒れ伏していたダイスケが突如、「ビクンッ!」と動き出したのだ。

 立ち上がれないのか、脚だけで這いずって動いているのだ。そして、ようやく立ち上がると同時に変化が現れる。徐々に体格が大きくなり、三メートルほどになってしまったのだ。

 それだけではない、脚が急激に太くなり、逆に手は短く縮み、手のひらが天を向く。

 もともと精悍だった兜の造形はどこへやら、徐々にグロテスクな爬虫類のような形に変わり、その意思が燈っていた瞳は人格を感じさせない上、どこを見ているかわからないぎょろりとしたものに変わる。

 特に皮膚は焼けただれたようになり、隙間からマグマのようでもあり爛れて出血しているかのような赤い光がこぼれている。

 もはや、それはダイスケと呼べる代物ではなかった。まるで別の生き物に進化してしまったかのような……。

 

ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!

 

 新

 真

 深 

 進

 神

 (Shin)

 それを何と形容するべきだろうか、それを誰が知るのだろうか(who will know)

 ならば彼の者をこう呼ぼう。

 

 

 ――シン・ゴジラ――

 




 ということでとうとう登場の覇龍とシンでした。
 なお、感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われるとBANGBANG CRITICAL FINISH!!になりますのでご勘弁を。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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