ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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 前回はほんとに反省しかありません……誠に申し訳ありませんでした。
 なお、当作の北欧神話にはMARVELネタが注ぎ込まれています。
 それからしばらく更新できません。理由は……その、艦これのイベントが……。


VS52  娘が男をホテルに連れ込んでるところを見たらそりゃ父親は心配になるよね

 

「ほっほっほ、ちゅーわけで訪日したぞい。」

 

 兵藤家の最上階に設けられたVIPルームにオーディンは招かれていた。

 その訪日の理由は日本神話勢力との和議。そのため、安全を考慮して三大勢力が守るこの駒王町が最も滞在に安全と判断したらしい。

 当然ながら朱乃とイッセーのデートは中断。その尾行も中断。今はアザゼルやマサノ姉妹も合流している。

 そのため、朱乃は不機嫌になっていた。だが、不機嫌になっているのはデートが中断になっただけではない。オーディンの護衛に自身の父、堕天使であるグリゴリ幹部のバラキエルが来ていたのだ。武人気質の堅物で、一発の攻撃力なら堕天使随一ということはイッセーもダイスケも事前に聞かされている。

 朱乃がそんな父と何らかの確執があるということは周知の事実である。そのため、今は朱乃ではなくリアスがお茶くみをしている。

 

「どうぞ、粗茶ですが。」

 

 リアスは笑顔で応対する。

 

「いやいや、お構いなく。しかし相変わらずでかいのう。そっちもでかいわい。」

 

 そう言いながらオーディンはリアスと朱乃をどこをとは言わないが交互に見る。

 

「お爺様、いい加減にその女をいやらしい目で見る癖直せないの?フェンリルに呑みこまれる前にその首落としていい?」

 

 そう言いながら金髪のヴァルキリーがオーディンの首元に剣をあてがう。

 

「ちょっと、ルゼ!でもルゼの言うとおりですよ!相手は魔王サーゼクスさまの妹君ですよ!」

 

 銀髪のヴァルキリーがルゼと呼ばれたヴァルキリーを抑えながらもオーディンをたしなめる。

 

「全くお堅いのう。サーゼクスの妹と言えば別嬪でグラマーで有名じゃからな。誰だって目がそっちに行くわい。っと、紹介を忘れておった。この二人は儂のお付きのヴァルキリー。名は――」

 

「ロスヴァイセと申します。日本にいる間お世話になります。以後、お見知りおきを。」

 

 銀髪のほうのヴァルキリーが丁寧にあいさつすると、金髪のほうのヴァルキリーもしぶしぶながら挨拶する。

 

「……スルーズよ。よろしく。」

 

「双方共に彼氏いない歴=年齢じゃから、いい話があったら頼むわい。」 

 

 にやりと笑うオーディンがどうでもいい追加情報を教える。当然ながら当人たちは怒る。

 

「別にそれは言わなくていいじゃないですか!好きで処女やってるわけじゃないんですよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!」

 

「だから何度も言ってるでしょ!付き合えないんじゃなくて付き合わないの!!最低お父様クラスの武人じゃなきゃ私は嫌なの!!」

 

 ロスヴァイセが崩れ落ちて床をどんどんと叩き、スルーズはオーディンに怒鳴る。そこへアザゼルが声をかける。

 

「ちょっとまった。あんたスルーズって言ったな。ジジイをお爺様と呼ぶということはもしかしてお前さんの親父さんって……。」

 

「ええ、そうよ。私の父は至高の戦神にして雷神トール!マイティ・ソーよ!!」

 

 その発言に、誰もが驚く。何せ神話に疎いイッセーですら知っている名であるからだ。

 

「マイティ・ソーって、あのアメコミの!?」

 

「そうよ、赤龍帝。私のお父様は北欧神話じゃ知名度トップクラスでアースガルズ最強の戦神なんだから!!」

 

 自慢げにスルーズは語るがなるほど、行き遅れるわけである。たしかにトールクラスの勇者(エインヘリヤル)などそうそういようはずもない。

 

「なるほどね、話はこれで繋がったぜ。だが、トールの娘の異名と言えば「強き者」だろう。何でそんな重要人物がジジイのお付止まりなんだ?」

 

 アザゼルの疑問に、オーディンは嘆息をつきながら答える。

 

「最近はご時世かなかなか英雄や勇者がヴァルハラに送られんでの。ヴァルキリー部署が予算削減のあおりで縮小傾向なんじゃ。なのでこの器量なしのロスヴァイセと一緒にお付きということにしとるんじゃ。」

 

「そういうことかい……とまあ、爺さんが日本にいる間、俺たちで護衛することになっている。バラキエルは堕天使側のバックアップ要員だ。俺も最近忙しくて日本にいられるのも限られているからな。俺の代わりに護衛はバラキエルが見てくれることになる。」

 

「よろしく頼む。」

 

 言葉少なげにバラキエルは皆にあいさつをした。

 

「しかし爺さん、日本に来るのにはちょっと早すぎたんじゃねぇか?聞いていた日程よりもだいぶ早いぞ。今回は俺だけじゃなくミカエルとサーゼクスの仲介が必要だってのに。」

 

「――アスガルドでちょっと厄介ごと……というより厄介な奴にワシのやり方を非難されての。奴が事を起こす前に早めに日本につきたかったんじゃよ。早めに今回の話をつけたくてのぉ、今まで閉鎖的にやっとったわけじゃし色々あるんじゃよ。」

 

 オーディンは長いひげをさすりながら嘆息する。

 

「厄介な奴って、ヴァンルあたりにでも目をつけられたか。それともヘルヘイム?それともまさかニダヴィリールがぶちぎれたか?頼むから日本で神々の黄昏(ラグナロク)なんて起こさないでくれよな。」

 

「まあ、ヴァンルはいつもの事じゃが……なに、ここにきてそんな話をするものなんじゃ、さっそくじゃがちらっと日本観光でもしたいもんなのじゃが。」

 

「おう、そのことか。爺さん、どっかいきたいとこあるか?」

 

 アザゼルの問いにオーディンはうーん、と悩む。はたしていったい重要な会談の前にどこへ行こうというのか。日本神道との関わりを深めると言っていたから京都か、それとも伊勢か。それとも――

 

「おっぱいパブとやらに行きたいのう!」

 

 アザゼル以外の全員がずっこけた。

 

「ハッハッハ!見るところが違いますな、主神殿!よっしゃ、ちょっとそこまで行ってくるか!俺んとこの若い娘どもがVIP用の店を開いててな、特別招待しちゃうぜ!」

 

「うっほほーい!流石アザゼル坊じゃ!おっぱいでかい娘たっくさん用意してくれい!!」

 

「ついて来い、クソジジイ!おいでませ、わびさびの国日本!お代官様ごっこやるか?日本に来たら一回は着物の帯を引っ張らないとな!」

 

「たまらんのー、たまらんのー!」

 

 などと言いながらスケベバカトップ二柱が早々に退出する。

 

「あ、いけませんオーディン様、私たちも行きます!!」

 

「お前さんたちは残っとれ。アザゼルがいれば問題あるまいて。この家で待機しておれ。」

 

「馬鹿じゃないの。護衛が離れるわけにはいかないでしょう!」

 

 などというやり取りが廊下から聞こえると残された者たちは皆一様に「ハァ……」とため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「君、宝田大助君だったな。少し話をしてもいいだろうか。」

 

 兵藤邸から帰宅しようとしたダイスケは突然、バラキエルに玄関を出たとたんに呼び止められた。

 

「大丈夫ですけど……なにか?」

 

「聞きたいことがある。あの……乳龍帝の事だ。」

 

「あの、そこはぜひドライグのためにも赤龍帝って呼んでやってください。あなたみたいな人にまで言われたらドライグが本格的に泣くので。」

 

「そ、そうか。」

 

 そんな会話をしながら二人は庭まで移動する。

 

「聞きたいことというのは……親友であるという君から見て、兵藤一誠という男はどんな男なのだろうか?」

 

「イッセーですか?姫島先輩から聞いたほうが早くないですか?親子でしょう。」

 

「娘は……見ての通り私を嫌っている。憎んでいるといっていい。とてもではないが……。」

 

 そのバラキエルの顔には後悔というか諦観の色が見える。そのだけでよほどのことがあったのだろうと推察できる。

 

「まあ、過去に何があったか聞きませんけど。イッセーがどんな奴か、か。うーん……。」

 

 しばし考え込んで答えを出す。

 

「……馬鹿でスケベでおっぱい好き。」

 

「や、やはり!そんな男の毒牙に朱乃を曝すわけには――「でもいい奴です。」――なに?」

 

「馬鹿でスケベでおっぱい好きだけど、誠実で、実直で、まっすぐな奴です。贔屓目無しでそう言えます。」

 

「だ、だが、かの乳龍帝は女の乳を食らうというではないか!アザゼルが言っていたぞ!」

 

「ったく、あの人は……そんなのあの人が適当に言った冗談ですよ。付き合い長いんだからわかるでしょう。」

 

 う、うむとバラキエルはうなりながらも納得する。大方適当な法螺を吹きこまれてそれを真に受けてしまったのだろう。

 

「だが、人の娘をラブホテルに連れ込んで鼻血を流すような奴だ。とてもではないが誠実とは思えん。」

 

「連れ込んだのは姫島先輩のほうですよ。跡を付けていたから間違いないです。」

 

「そんな、朱乃が……。」

 

「本気で好きなんでしょう。普段見ていてよくわかります。」

 

「なにか騙されているということはないだろうか!?」

 

「相手騙すような知恵のまわるやつじゃないですよ。だからいつも一本勝負で苦労してるんです。」

 

「なら、兵藤一誠は本当に……。」

 

「ええ、娘さんを大切に思うのは当然ですが、こればっかりは断言できます。兵藤一誠は好人物です。」

 

 ダイスケがそういうと、バラキエルは庭石に座りこむ。ダイスケもそれに習った。

 

「……朱乃を兵藤一誠に任せてもいいのだろうか。」

 

「それは自分で考えてください。」

 

「そうだな……そういえば君は私と朱乃の仲がどうしてあそこまで険悪なのか知らないんだったな。」

 

「そんな、つらい過去なんでしょうし。」

 

「いや、君にも知っておいてもらいたい。何より、君は朱乃と仲間だ。知っておいてくれたほうが話が早い。」

 

 バラキエルが語ったのはとある家族の話だった。

 二十年近く前、バラキエルは的勢力の襲撃に会い、とある神社のテリトリーに迷い込んだ。そこで、一人の女性と出会う。

 女性の名は姫島朱璃。バラキエルの傷を手厚く看病し、次第に惹かれ、後の朱乃の母となる。

 バラキエルのは堕天使としての務めがあった。だが、幼いわが子と妻を置いていくわけにはいかない。だからバラキエルは二人の家とそう遠くないところに居を構え、会いに行けるときに妻とわが子に会いに行っていた。

 だが、幸福な日々は番組と番組の間のコマーシャルのようにそう長くは続かなかった。

 ある日、バラキエルはアザゼルから召集を受ける。バラキエルでないとこなせない任務であった。その任務を果たしている間に事件は起きた。

 朱璃の実家の姫島家から刺客が襲来したのだ

 姫島という家は、古くから日本の裏の世界を守護してきた家である。そんな家であるから自分たちの血族の者が異教の、それも堕天使と契って子をなしたという事態が気に食わなかったのだ。

 異変を察知したバラキエルはすぐさま二人の元に急いだ。そして、襲撃者たちは皆殺しにしたが――朱璃だけは助けられなかった。

 

『あの人たちが言ってた!父さまが黒い天使だから悪いんだって!黒い天使は悪いひとって!私にも黒い翼があるから悪い子なんだって!父さまと私に黒い翼がなかったら母さまは死ななかったのに!嫌い!嫌い!こんな黒い翼大嫌い!あなたも嫌い!みんな大嫌い!』

 

「――朱乃は襲撃者の言うことを鵜呑みにしてしまったのだろう。そうしなけれは幼かったあの子の精神は……いや、言い訳だな。私がちゃんと傍にいるべきだった。仕事を優先させた俺への報いなのだ。」

 

「そんなこと……。」

 

「いや、あるのだよ。そもそも私があの時、朱璃と出会っていなければこんなことが起こることも――」

 

「それ以上言ったら怒りますよ。それじゃあ、姫島先輩がこの世に生まれなければよかったって言ってるのと同義ですから。」

 

「そうだ、そうだったな……。」

 

 そういいながら、バラキエルは自身の髪を掻き上げる。そんなバラキエルにダイスケは問う。

 

「バラキエルさんは、姫島先輩の事が大事なんですよね。だからさっきみたいに先輩のことを心配してたんですよね。」

 

「当然だ。」

 

「なら、今は嫌われていても想いつづけることぐらいしかできないので正解じゃないんでしょうか。」

 

「そ、それでは単なる現状維持ではないのか?」

 

「そうですね。そうなります。でも、何かインパクトがあることが起きれば、きっとそれが転機になると思います。」

 

「そんな転機など起きるだろうか……。」

 

「起きますよ。いや、多分きっとあいつがそれを起こすんじゃないかと。何せ女性の胸の内を聞くことができる奴ですからね。」

 

 そう言ってダイスケはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

翌日、イッセーたちはオーディンの日本観光に振り回された。そのあとは男子組はトレーニングである。

今はイッセーとダイスケが組み手をしていた。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!』

 

「おおおおおおお!!」

 

 背中のジェットから魔力を噴出し、ダイスケに迫るイッセー。超高速で勢いをつけて拳を突き出すが、すっと避けられてしまう。それどころかその腕をつかまれ背負い投げされてしまう。

 

「ガッ!」

 

 背中から地面にたたきつけられ、肺の中の空気を搾り取られたイッセー。しかし、すぐさま両肘で地面をたたいて起き上がり、回し蹴りを入れる。その一撃をまともに腹部に受けるダイスケ。しかし――

 

「……ふん!」

 

 イッセーの足をつかんでダイスケはそのまま振り回し、遠くへ投げる。が、飛ばされながらもイッセーは空中ですぐさま体勢を立て直し、再び背中のジェットを点火させる。

 

「うおおおおおお!」

 

 再びダイスケに向けて突貫。拳を腰だめにし、いつでも殴りかかる準備をする。すると突然眼前にダイスケの兜が見える。驚異的な脚力で一気に距離を詰めたのだ。

 イッセーの懐に入ったダイスケは下側から腕を曲げた状態でイッセーの顎めがけて突き上げる。相撲でいうところのかち上げだ。これがイッセーの脳内を激しくシェイクする。

 いったんふらつきイッセーの顎をめがけて更にダイスケは張り手を加える。そのままイッセーはひっくり返りそうになるが、突き出されたダイスケの腕をつかみ、腕力だけで放り投げた。

 背中から地面に投げ出されるダイスケ。だが、すぐに立ち上がり何とか意識を保っているイッセーに殴りかかる。イッセーはその一撃をガードし、顔面を狙って一撃を加える。そして見事に入る一発。

 だが、ダイスケはイッセーの伸びた腕のひじ関節に逆方向に力を入れる。

 

「ぐわっ!」

 

 突然の痛みに前のめりになるイッセー。その顔面に今度はダイスケのアッパーカットが入った。一瞬意識を刈り取られるイッセーだが、すぐさま意識を取り戻して今度は頭突きを加える。

 それをダイスケは真正面から頭で受け止めた。そして始まる拳の応酬。そしてイッセーが右手で殴り掛かるが、それをダイスケはイッセーの拳の内側に腕を差し込み、パンチと同時にそれをはじく。

 カウンター気味にダイスケは右手で殴るが、それはイッセーの左手で阻まれる。

 一寸膠着状態に陥るが、ダイスケは自分の右手を握っているイッセーの左腕をねじりあげる。

 

「イダダダダダダダダダ!!」

 

 そしてねじりあげた腕ごと体を下から突き上げる。すると、イッセーは転倒してしまった。

 その倒れるイッセーの両足をつかみダイスケはイッセーをジャイアントスイングして酔わせ、止めとばかりに何度も地面にたたきつける。ゴジラプレスだ。

 

「そ、そこまでですぅ!制限時間がきましたぁ!!ス、ストップですよぉ!!」

 

 小柄の体でぴょんぴょんと跳ねながらギャスパーが言う。組み手には制限時間を設けている。ダイスケはそこでプレスする手を止めた。

 

 

        ・

        ・

        ・

 

 

「いてて……ちっくしょう、訓練だからって言っても限度があるぞ。本気で背骨が逝くかと思ったわ。ちょっと吐きそうになったし。」

 

 イッセーの不平を聞いてダイスケは「いっけね♪」と舌を出して自分の頭を軽くこずく。

 

「いっけね♪じゃねぇよほんとに怖いんだよお前のプレス。」

 

 そんな会話をする二人に、木場はさっとスポーツ飲料を渡す。

 ここはグレモリー男子にアザゼルとサーゼクスが与えた非常に強固なフィールド。冥界のグレモリー領の地下にある。

 四人は能力の関係上、人間界での派手なトレーニングはできない。そこで先のディオドラの事件で活躍した褒美としてこの空間の使用が許された。兵藤宅にジャンプ用の魔方陣があるのでダイスケもそこから通っている。

 

「たまに二人の練習量について行かなくなる時があるよ。」

 

 模擬戦が終われば各々での方法で自主トレにしている。横を見ればギャスパーがアザゼル謹製の小型ドローンで邪眼のコントロールの練習中だ。いったん一息を入れるイッセーは木場に答える。

 

覇龍(ジャガーノート・ドライブ)になって、俺はとんでもない力が目覚めたかもしれない。でも、あれのおかげで俺の寿命は削られた。使って死んじゃうような力じゃ意味がない。でも、またアーシアの時みたく誰かが危機に陥った時、俺は強くないといけないんだ。」

 

 そう、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)は強力な力を与えたと同時にイッセーの寿命の約九割をもっていった。それを知った時、リアスは泣いた。イッセーもそれを知っている。

 だからこそ覇龍は二度とつかえない。使ってまた誰かを泣かせる結果をもたらしたくはないのだ。

 

「でも、だからって俺の成長が頭打ちになったわけじゃない。違う方法でもっと強くなる。才能がない分は努力で補えばいいし、足りない魔力だって体力で補う。サイラオーグさんっていう先例がいるんだ。なら俺だってやってやるさ。」

 

 ダイスケも続く。

 

「俺はイッセーみたく目に見えたデメリットは無かったけど、自分の中が変異したってのはわかる。正直不安しかない。何が起きるかわからないんだから。またあのシン化が起きる可能性だってある。」

 

 ダイスケの暴走――アザゼルによって『シン化』と命名された――は覇龍に匹敵する力を齎した。それと同時にダイスケの成長の方向は完全に見えなくなった。ひょっとしたら見えていないだけで身体に悪影響を与えているかもしれない。何もかもが不透明なのだ。

 

「だけどアレはだめだ。コントロールできない力なんて害悪以外の何物でもない。そのせいで俺が守ると決めたものを壊してちゃ意味がないんだ。事実、矛先はイッセーに向いた。そうならないように、あれと同等、いや、それ以上の力を自分自身の手で身に付けて自分のものにしないとな。この先どんなに強い奴が現れるかわからないんだから。」

 

 正直本当にそれができるかどうかは自分自身でもわからない。何せ自分自身でイッセーほどの向上心は無いと自覚しているダイスケだ。イッセーよりもいろいろと達観している分、自分の限界も見えやすい。そういうところではイッセーの愚直さは美点といえるだろう。

 だが、現状はダイスケを踏みとどまらせることを許さない。ゴジラの映画の内容がもしも本当に来るべきはずだった未来ならば、登場する敵怪獣達は出自を変えて現れる可能性がある。そうなれば現状で踏みとどまるわけにはいかない。先を目指さなければ、今後現われるであろう脅威には立ち向かえない。

 

「だから、強くならないとな。力も、心も。」

 

 大いなる力には大いなる責任が伴う。だからこそ、覇龍やシン化のような無思慮に力を振りまくようなものに頼るわけにはいかない。大切な者を泣かせるような、守るべきものを壊すような力を乗り越えていく必要がある。

 

「やってるな。ほれ、 女子から差し入れのおにぎりだ。 」

 

 アザゼルがイッセーたちに手に下げた小包を渡す。

 

「こっちはエリザベスから預かってきた。サンドウィッチだとさ。」

 

 そういってダイスケにはバケットを渡す。

 

「さっきの話、ちょっとだが聞かせてもらったぜ。二人とも方向性を決めたようで俺も安心だよ。」

 

 アザゼルは差し入れを口にするイッセーとダイスケに言う。

 

「それでだな、イッセー。覇龍についてだが。」

 

「使いませんよ絶対に。」

 

「まあ、それもそうなんだが。せっかく一度目覚めた力だ、別方向からの赤龍帝の新しい力をアプローチするべきだと思う。」

 

「方法でもあるんですか?」

 

「俺の調べによると、覇龍の影響で神器内に記憶されている過去の赤龍帝所有者の思念が解き放たれた状態のようだ。ドライグにも聞いたが、神器内にそいつらの負の感情やらが強く残っている。それこそ呪いのレベルでな。暗黒面の力でお前を支配して神器にお前の命を吸わせようと働いている面もあるようだ。」

 

 実際、覇龍発動の際に数多の老若男女の声が聞こえてきた。おそらくあれのことだろう。

 

「自分のことながら恐ろしい話ですね。」

 

「なんせ歴代赤龍帝の身内もその呪いで不幸にあったって話だからな。だからその歴代赤龍帝の負を浄化させてやれば安全かつ覇龍に匹敵する力を得られるんじゃないか、と俺は考えている。そのためにはお前の意識を神器の奥に潜らせて歴代赤龍帝の負の思念を解き放つ必要がある。」

 

「じゃあ、俺が歴代赤龍帝を説得する必要があるってことですか?」

 

「まあそういうことだ。ドライグ、そこのところ悪いが面倒見てやってくれ。」

 

『それはいいが、歴代の思念は闇に満ち満ちていて俺でも迂闊に触れん。』

 

「そこんとこはおっぱいドラゴン兵藤一誠君がパパンと解決してくれるさ。」

 

「そんな無茶な……。」

 

 思いもしない難問に頭を抱えるイッセーだが、アザゼルはイッセーのワシャワシャと掻いていう。

 

「イッセー、俺はお前の可能性を信じている。歴代赤龍帝はどいつもこいつも力に溺れておっ死んだ。だが、お前は違う。女の乳で目覚め、さらに暴走からも戻ってきた。そんな奴は史上初だ。おっぱいドラゴン、結構なことじゃねぇか。そんな異名がつくなんて久しいことなんだぞ?たとえ力も魔力もほかのドラゴンやヴァーリに劣っていたって違う側面からお前だけの方法で強くなればいい。これからも努力と根性、そして意外性で活路を見つけていけ。」

 

「……はい!」

 

「それからダイスケ、お前のシン化の影響だが、やはり調べても神器で言うところの慮外面(イクス・サイド)が開かれたとしか言えない。どんな影響をお前に与えているかはグリゴリでも把握できなかった。」

 

「……そうですか。ところで慮外面(イクス・サイド)って?」

 

「純粋な強化の昇華面(クレスト・サイド)でも自己と神器の有り様を狂気の領域まで追及して自ら神器と混ざり合うことで体現させた深淵面(アビス・サイド)でもない突然変異さ。とにかく、ぼんやりと見えていたお前の成長の方向は完全に行先不明になった。だが、同時にこれはチャンスでもある。これからお前には何者にもなれるんだからな。」

 

「……失敗したら無軌道になりそうですね。」

 

「今のうちはそれでもいいだろう。とにかく、恐れずにあらゆる方向を自由に試してみろ。拡張性に関して言えば、お前はイッセー以上にあるし、ゴジラって存在のポテンシャルも高いんだからな。」

 

「マグロ食ってるやつはダメだなって言われないようには努力します。」

 

「そいつは最低のレベルになったときだな。そういえば、お前オーフィスの蛇を握りつぶしているだろう。あれも影響するかもしれん。」

 

「え、不味かったですか?」

 

「何とも言えん。だが、末端とはいえ無限を司るものの断片だ。その体液を鎧越しでも浴びたとなれば良かれ悪かれいずれ影響が出るかもしれない。悪影響が出たときはグリゴリ総出で何とかしてみせるさ。」

 

「まあ、可能性の話だし、今は組手に集中しますよ。」

 

「じゃあ、はじめようか。」

 

 そうしてダイスケは今度は木場との模擬戦に挑むのであった。




 ということで前回の反省の結果サイン会のシーンをすっ飛ばしたVS52でした。
 ちなみに「幸福な日々は番組と番組の間のコマーシャルのようにそう長くは続かなかった。」の元ネタはデットプールです。ホントこのセリフが見た後も響いています。
 なお、感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われるとBANGBANG CRITICAL STLIKE!!になりますのでご勘弁を。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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