ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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またまた投稿が遅くなってしまいました。
本来はもっと長い本文の予定でしたが、ちょっと行き詰まったのでこの状態で投稿します。
あと、バトスピの東宝コラボですが、奇跡的にXレアのデストロイアが手に入りました。


VS5  主従と隷属あるいはパシリ

「実は、このオカルト研究部は仮の姿、隠れ蓑なの。まぁ、私の趣味みたいなものね。」

 

放課後の旧校舎。

望まずして非日常の世界に片足を突っ込んでしまった兵藤一誠と宝田大助は、リアス・グレモリーからその概要を聞いていた。

 

「じゃあ、本当の姿ってなんなんですか?」

 

イッセーの疑問は正しい。仮の姿があるものには必ず本当の姿があるからだ。

 

「単刀直入に言うと、私たちは“悪魔”よ。そして昨日の黒い翼の男は“堕天使”。」

 

え、とイッセーの息が詰まる。それもそうだ。“悪魔”も“堕天使”も空想の存在。

それをさも「当然に実在するモノ」として語るとは頭がいかれているか、所謂厨二病のどちらかだ。

だが、もうすでにソレが現実であることをイッセーは承知していた。

既に常識では説明のつかない現象をいくつも体験している身としては、自身の浅学な知識ではありのままに受け入れざるを得ないのである。

 

「はい。まだ現実味がないけど……理解できます。」

 

「理解が早くて助かるわ。堕天使は神に仕える身でありながら、邪な心を抱いてしまった為に堕ちたモノたち。彼らと私たち悪魔は冥界、即ち地獄の覇権を巡って争っているの。そこに神に仕える天使達も加わって、三竦みの状態にあるわけ。あ、もちろん、日本神話等のほかの神話大系も存在するわ。海外かぶれの天狗がいるかどうかは知らないけれど。」

 

「ラッパーを目指していた河童は知り合いにいますけどね。」

 

ボソリ、と小猫が付け加える。

 

「で、でもいくらなんでも突拍子がないというか……。」

 

それでも、とイッセーは食い下がる。

まだ自分の心の中のどこかが、自体を受け入れられずにいるのだ。

 

「あら、あなたは昨日の男以外の堕天使にも遭ってるのよ。」

 

リアスはそう言うが、イッセーには心当たりがなかった。

 

「だ、誰にですか?」

 

「天野夕麻。忘れたわけじゃあないでしょう?デートまでしたんだから。」

 

イッセーは震える。

天野夕麻。

それはかつてイッセーの彼女であった“はず”の少女の名。

数日前の帰宅時、効果橋を渡っていた時に突然告白されたのが出会いだった。

最初は驚いたが、イッセーはすぐにその告白を受け入れて晴れて念願の彼女を手に入れることができた。

しかし、その翌日に松田と元浜に彼女を紹介したはずだったのに次の日には彼らは天野夕麻のことを忘れていた。

交換したはずのアドレスも、携帯で撮った彼女の写真も跡形もなく消えていた。

つまり、彼女のことを覚えているのはイッセーだけのはずなのである。

それをなぜこれまで関係のなかったリアス・グレモリーが知っているのか。

だが、その疑問の前にある思いがイッセーの口から溢れ出す。

 

「あ、あの、そのことをどこで聞いたかは知りませんけど……。確かに彼女についてはおかしな事がありましたけど、オカルト云々で話されるのは困るっていうか、正直ムカつくんですけど……。」

 

不可解な出来事とはいえ、自分の初めての彼女についての説明がよりにもよって如何わしいオカルトで片付けられたのである。

このようなことをされれば誰であれ不愉快に思うのは無理はない。

しかし、憤るイッセーをよそにリアスはその懐から一枚の紙片を取り出す。

それは写真であった。

写っているのは紛れもない、天野夕麻その人だ。

 

「あ、ああ……!」

 

あまりの衝撃にイッセーは思わず仰け反り、尻餅をついてしまう。

ここまでの反応をされるとダイスケとしてはその写真が気になって覗き込む。

 

「あれ、こいつ……イッセーの彼女か!?」

 

実はダイスケはこの名前にどこかで聞き覚えがあった。

聞いたときにはさほど興味を惹かれなかったので印象が薄かったが、写真を見て完全に思い出した。

だが、このことに驚いたのはその当人ではなくイッセーの方だった。

 

「お前……夕麻ちゃんの事覚えてるのか!?」

 

「いや、今思い出したんだけど……ちょっと待て。その言い方だと他の奴、松田や元浜は覚えてないっていうのか!?」

 

イッセーがコクリと頷く。

 

「まさかとは思うけど、俺に見せた携帯の画像やアドレスもか?」

 

「……消えてた。彼女に関すること全てが。」

 

「それは彼女が事実を隠蔽するための力を使ったからよ。今朝、私があなたのご両親にしたようにね。」

 

その言葉でイッセーは今朝起きたことを思い出す。

けさ、イッセーはリアスと裸で抱き合って寝ていた。

リアス曰く、体の傷を癒す為に魔力を送っていたとのことだったが、その時の一部始終を母親に見られた。

思春期における決定的シーンをすっ飛ばして、ストロベリーブロンドの外人美少女と不肖の息子のベットインを目撃したイッセーの母の混乱ぶりはすざまじかった。

そのことをリアスは「ただ添い寝をしていただけで、しかも最近の添い寝は裸で抱き合うのは当たり前」というとてつもない説明をイッセーの両親にしたのである。

イッセーは、これで両親が納得するとは思えなかった。

しかし、あっさりと二人は納得してしまったのだった。

 

「じゃあ、あの時俺の両親が納得したのって、その力を使って……。そして夕麻ちゃんも同じように。」

 

「でも、どうして天野夕麻はそれほどのことをやらなければならなかったんですか?」

 

「彼女の目的は、イッセーの中に睡るモノ。それがどういうものなのかを調査するためよ。そして調査の結果、危険と判断されイッセーは……殺された。」

 

―死んでくれない?―

 

イッセーは全てを思い出した。

あの日、何があったかを。

デートの最後、公園の噴水広場で彼女は先の言葉を放った。

曰く、自分の身には大きな力があり、その有無を調べるべく近づいた。

曰く、その危険性を確認したので殺すことにした。

そしてイッセーは、昨日の黒翼の男と同じ黒い翼を生やした彼女に光の槍でその身を貫かれ、自分流れる血でリアスのストロベリーブロンドの髪を思い出しながら息絶えた。

 

「そうだ……俺、夕麻ちゃんに……。」

 

「どうやら自分で、殺された時の記憶を封じ込めていたみたいね。ショックが強すぎたせいかしら。」

 

恋人だと思っていた彼女に裏切られた。

それも、目的は自分を殺すことだったとは。

あまりのショックに、イッセーは項垂れる。

 

「……じゃあなんで俺、今ここにこうして生きているんです?」

 

「それはこれ、“悪魔の駒《イーヴィル・ピース》”のお陰よ。」

 

「チェスの駒っすか、それ?戦車《ルーク》の。」

 

ダイスケの言うとおり、リアスの手には赤いチェスの駒が握られている。

 

「あら意外、宝田君はチェス知ってるの?」

 

「まぁ、ルールくらいは。で、その駒がイッセーとどう関わるんです?」

 

「この駒はね、悪魔が眷属にしたい相手に使うモノなの。そして眷属になった物は悪魔として生まれ変わり……つまり“転生悪魔”となる。そしてそれは死んでしまったものも同様。ここにいる私以外のオカルト研究部のメンバーも皆、転生悪魔よ。」

 

この部屋にいるほぼ全員が人間でないと言われたら普通は誰も法螺だと思うだろう。

だが、ここまでオカルトの世界に脚を踏み込んでしまえばもう疑問を持つ余地はなく、イッセーはそれをあっさりと信じた。

 

「でも俺、いつの間に眷属になんて……。ってうか、リアス先輩ってあの場にいたんですか?」

 

「いいえ、あの場にはいなかったわ。でも、あなたはこの紙を持っていたでしょう?」

 

そう言って、リアスは机上に山積みにされた一枚の紙を見せる。その紙には魔法陣が描かれていた。

 

「あ、それは駅前で綺麗なお姉さんが配っていた……。」

 

「それ、私の使い魔よ。そしてこの紙は、悪魔に願いごとを叶えてもらうための召喚用の魔法陣。で、死の間際にあなたは私を呼び出し、私はあなたを下僕にしたってわけ。」

 

「つまり、イッセーは偶然に偶然が重なって助かったってことですか。いや、運いいなお前。」

 

「いや、殺されてる時点で運は良くないだろ……。」

 

なんとも奇跡的な巡り合わせ。

不運であろうとなかろうと、友人の巡り合わせの良さにはダイスケも感心せずにはいられなかった。

 

「でもイッセーに特別な力がなければ、こんなにややこしい事態に巻き込まれることはなかったのか……。」

 

「そうなんだよな。でもその特別な力がなかったらリアス先輩ともお近づきになれなかった訳だから……これでイーブンなのか?」

 

「それでイーブンでいいのか、イッセー?……あ、そうだ。そもそも“特別な力”ってなんなんですか?殺される理由になるほどのものなんでしょう。そんなに凄いものなんですか、これ?」

 

そう言いながら、ダイスケは右腕に昨日と同じ黒いガントレットを出現させた。

疑問を投げかけるダイスケに、朱乃とリアスが答える。

 

「それは“神器《セイグリット・ギア》”と呼ばれるものです。人間にしか発現しない特別な力で、歴史上に名を残した偉人の多くがこれを宿していたと言われていますわ。」

 

「そしてその中には、神をも滅ぼしうる力を有するものがあるの。堕天使たちもそれを恐れていた、というわけね。ちなみに祐斗も神器の保有者よ。」

 

リアスの紹介により、木場が歩み出る。

 

「僕の神器は“魔剣創造《ソード・バース》”。あらゆる属性の魔剣を生み出すことができるんだ。まあ、オリジナルには及ばないんだけどね。」

 

そう言って手にひと振りの剣を生み出す。なるほど、確かに魔剣というだけあって禍々しいオーラを纏っている。

 

「なるほど、相手の特性と弱点に合わせた攻撃ができるってことか。RPGに木場みたいなキャラがいたら便利なんだけどな。」

 

「それじゃあゲームバランスが狂っちゃうんじゃあないかな。まあ、宝田君の言うとおり、戦う時には便利な能力ではあるよ。」

 

そう言って、手にした剣を木場は消した。出現も消滅させるのも自由らしい。

 

「……で、俺のは何なんです?頑丈で、手から光弾を出すだけで、木場の神器みたいに使い勝手の良さそうなものじゃあないみたいですけど。」

 

宝田は詳しいであろうリアスに問う。

 

「そうね、形状からすると“龍の手《トゥワイス・クリティカル》”かしら。比較的ありふれた神器で、ドラゴンを封印したもの。能力は『使い手の力を一定時間の間倍加させる』よ。」

 

「でも部長、龍の手に黒い個体、それも青白い光弾を発射する能力なんてありましたっけ?」

 

「朱乃の言うとうりなのよねぇ……。冥界の研究機関に問い合わせても、堕天使側ほど研究が進んでいないから解らないかもしれないわね。」

 

「あの、こいつはそんなにイレギュラーなんですか?」

 

どうも釈然としないリアス達にダイスケは問う。

 

「ええ、普通の神器はそれぞれ一つに一つの能力なの。能力が複数あるのは“神滅具《ロンギヌス》”とって極々稀少で13種しか存在しない上に、それぞれがどういうものなのかも分かっているわ。」

 

「なのに宝田君の神器は形状こそ龍の手ではあるものの、神滅具でないのに『使い手をパワーアップさせる』と『青白い光弾を放つ』という二種類の能力を備えているのです。私たちは神器のプロフェッショナルではありませんから、調べようもありませんわ。」

 

「色が黒いっていうのも判らない理由の一つなんだ。確認されている龍の手は殆どが赤、青、緑等のドラゴンらしい色合いで、黒い龍っていうのは大体が邪龍だからね。それに相応した神器になるはずなんだよ。」

 

「……要するに正体不明。」

 

リアス、朱乃、木場、小猫の言葉で宝田は不安になる。

あの奇妙な冒険漫画の能力者たちですら自分の能力を把握しきれているのに、自分のは一体なんなんだろう。

この身に火の粉が降りかかる状況が起こるかもしれないのに、このザマで自分は生き残ることができるのだろうか?

 

「まあまあ、気を落とすなよダイスケ。そのうちわかるさ。まあ俺は堕天使に直接命を狙われたくらいだから、強力な神器を持っているのは確実なんだけどな。だっはっはっはっは!!」

 

不安に落ちる悪友を傍目に余裕綽々のイッセー。

あからさまに自信満々な上に状況証拠まで揃っているからなんとも腹立たしい。

思わず「俺も命狙われたよ」と言いかけたが、折角先ほどの気落ち状態からイッセーが立ち直ったのだ。

余計なことを言って変な心配をさせることもないだろう。

 

「それじゃあ、イッセーの神器も見せてもらいましょうか。」

 

「はい、リアス先輩!いでよ……神器ァァァァァ!!」

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

出てこない。

 

「……あり?」

 

「イッセー、自分の中で一番強いと思うものを想像しなさい。そうすれば出てくるはずよ。」

 

「はい、リアス先輩!ならばもう一度。いでよ……神器ァァァァァ!!」

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

やっぱり出てこない。

 

「プッ!!お、お前、あれだけ自信満々で結局出ないとか……マジでダッセェ!!」

 

散々自信満々で神器を出そうとしていた先ほどのイッセーを思い出して笑い出すダイスケ。

 

「お、俺だってなぁ!!なんとか集中して出そうとしたよ!でも、机に座ったリアス先輩の太ももに意識が行ってダメだったんだよ!あんな素晴らしい太もも見せられて集中できるかってんだ!!」

 

「まあまあ、イッセー。神器の発現は人それぞれよ。悪魔の一生は長いの。気長にやりましょう?」

 

「うぅ……リアスせんぱぁい……。」

 

優しい主の言葉に思わず涙ぐむイッセー。心底この人の眷属になってよかったと思う。

 

「それじゃあイッセー。あなたには早速悪魔としての仕事があるわ。」

 

「はい!なんでしょうか!!」

 

「これを各家庭に配ってきて欲しいの。今時、わざわざ魔法陣を描いて悪魔を召喚しようって人は少ないから。」

 

リアスは机上に山積みにされた例の魔法陣が描かれた紙の山を指さす。

 

「悪魔っていうのは、人間に召還されて依頼をこなし、その対価をもらうことで力をつけるの。あなたは今下僕、下級悪魔だけど、力をつけていけば私と同じ上級悪魔になって眷属を持つこともできるわ。」

 

「眷属……ってのはアレですか、今の俺みたいな下僕を作れるってことですか?」

 

「ええ。」

 

「下僕ってのはアレですよね、俺のいいなりに出来るってことですよね?」

 

「もちろんよ。」

 

「じゃあ、可愛い女の子ばかりの眷属にして、エッチな命令をさせることも……?」

 

「あなたの下僕ならいいんじゃあないかしら。」

 

「なん……だと……?」

 

始まった。いつものエロ兵藤モードが。

ときどきダイスケは思う。こいつのエネルギー源は三大栄養素ではなくエロなのではいかと。

思えば、イッセーが駒王学園への進学を決めたのだって、彼女を作ってエロい事したいというのが動機だった。

多分今も、「上級悪魔になれば可愛い女の子だけの眷属を作ってハーレムを作りたい!」思っているのだろう。

偏差値的に無理と言われていた駒王学園の入試も、彼女がほしいという煩悩によって突破したのだ。

この兵藤一誠なら、どのような困難が待っているとしても、上級悪魔を目指すのだろう。ハーレムの為に。

 

「部長!俺、やります!いつか上級悪魔になって、眷属でハーレム作ります!!でもまずはチラシ配りという第一歩から。イッセー、行きまーす!!」

 

机上にあったすべての紙束をもって、イッセーは部屋を出ていった。

「がんばってねー。」というリアスの言葉を背中に受けて。

 

「しっかし、部長も人を働かせるのがうまいですね。流石は悪魔ってところですか。」

 

「あら、人事みたいにしている余裕があるの?貴方にもイッセーの手伝いをしてもらうわよ。ちょうど誰かにイッセーの補佐をして欲しかったし、貴方は私に借りがあるわけだし。」

 

「は?何、勝手言ってるんですかアンタ。だいたい借りって何?」

 

「忘れたとは言わせないわよ。朱乃、例の紙を。」

 

「はい、部長。」

 

そう言って朱乃はダイスケにあるプリント用紙を手渡す。

 

「えーと、石碑の修繕費用の対価、日本円換算にして……いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうま……ハァ!?なに、この額!?」

 

書面に書かれているゼロの数に驚くダイスケに、朱乃が説明する。

 

「宝田君。貴方、あの堕天使に石碑の一部を投げましたわね?」

 

「……はい。確かに投げました。」

 

「さらに、ただ投げつければいいものを何を思ったか蹴り砕きましたわね?」

 

「……はい、確かに余計なことしました。」

 

「しかも、そのあとのことを何も考えていなかったでしょう?」

 

「……はい。完全に失念しておりました。」

 

「本当だったらただ石碑を元の位置に戻すだけのはずが、何千、何万個の破片を集めて修復しなければならないという非常に手間のかかる作業をしたんです。その対価としてその書面にある通りの金額を請求させていただきますわ♪」

 

いま朱乃はものすごくいい笑顔をしている。

だが、その裏には目の前の弱みを握った相手を徹底的に虐め抜こうという漆黒の意思があった。

何を隠そう彼女は真性のサディストである。

そのことにダイスケは身をもって痛感させられた。

証拠に今ダイスケは多分、一生分といっていいほどの冷や汗をかいて仔犬のように縮こまって震えているのだ。

そしてリアスは決してSというわけではないのだが、強力な必殺兵器をもってして朱乃の加勢に入った。

 

「まあ、その金額だと腎臓を片方売るぐらいのことをしないと到底払えないわね。でもそこまでしろなんて言うほど私も悪魔じゃあないわ。」

 

否、充分すぎるほど悪魔である。

だが、流石にそれを口にするほどダイスケは不用意ではない……というより悪態をつく余裕がなかった。

 

「金銭で対価を支払えないんだったら、カラダで返してもらうわよ。ということで、イッセーのサポート兼護衛をよろしくね。ウチの眷属はそこまでできるほど手が空いてないから本当に助かるわ♪」

 

身から出た錆というには少々理不尽な気もする。

だが、朱乃の手を煩わせたのは確かだ。

それもここまで話が大きくなったのは自分の不用意な行動によるものである。

その事に悲観し、立ったまま俯いて震えているダイスケに朱乃が止めを刺しに来る。

 

「それも嫌だというのなら、私がかき集めた破片38491個分……つまり38491回分鞭打ちという手もありますけど?」

 

耳元に吐息を吹きかけるかのような囁き。

イッセーだったら興奮して失血死するほどの鼻血を垂れ流すのだろうが、今のダイスケには蠱惑的な誘いには聞こえない。

第一、そんな回数を鞭で打たれたら無事であるはずがない。

生身の人間にそんなことをすれば、傷害どころか結果によっては殺人である。

だが悪魔に人間の法が通じるとは思えない。

三者択一。

というよりもはや一択である。

 

「いつかアンタら地獄に送ってやる!!!」

 

「あら、タダで実家に送ってくれるの?交通費が浮くから大助かりだわ。」

 

完全なる負け犬の遠吠えを吐いて、ダイスケはイッセーを追って飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部長!!チラシ配り、完了しました!!」

 

「……なんでこんな夜中に町内全部の家にチラシ配りしなきゃならないんだ。学生アルバイトの新聞配達じゃあないんだぞ……。」

 

片や達成感を込め、片や愚痴と恨み節を込めて帰還報告をする。

 

「お帰りなさい二人とも。案外早かったのね。」

 

「はい!ダイスケも手伝ってくれたんで、かなり助かりました!」

 

道すがら事情を聞いていたイッセーは、最初の内は自分ごとでダイスケが手伝うことを悪い気がしていた。

だが、実際に配ってみるとなると案外大変だったので今はリアスの手回しとダイスケの助力に感謝している。

とはいえ当のダイスケはイッセーのように自転車を用意しての配達ではなく、走っての配達だったのでかなり疲労困憊している。

 

「疲れた……。今度、自転車買おう……モーターアシスト付きの……。」

 

「……ダイスケ先輩、これどうぞ。」

 

小猫がダイスケに小さな茶色い立方体の物体を手渡す。

キャラメルだった。

疲れた体に糖分を、ということらしい。

 

「おう、悪いな。」

 

礼を言ってダイスケはキャラメルを口に放り込む。

この後輩とはソリが合わないと思っていたが、意外と先輩に対する気遣いもできるらしいことにダイスケは感心していた……矢先である。

 

「ブゥゥゥゥゥッ!!!」

 

口の中に広がった言いようのない味覚に驚いて、洗面所へ急行する。

口内にあったキャラメルを吐き出し、急いで流水を含んで妙な味を洗い流す。

 

「……ジンギキャラメル大成功。」

 

ジンギキャラメル。

正式名称ジンギスカンキャラメル。

本来なら甘く、心地よく調和した苦味のシンフォニーが楽しめるはずのキャラメルでなぜかジンギスカンの風味を楽しめるという、キャラメル界の異端児。

口にしたほぼ全ての人にトラウマを植え付けるという猛者である。

それを不意打ちで小猫は仕込んできたのだ。

 

「テメェ!!疲れてる人間に何してくれるんだ!?」

 

「……疲れている相手にこそ止めを刺せって、その道のプロが。」

 

小猫の指差す先には悦に浸る朱乃の姿が。

 

「姫島先輩ィィィィィィィィィィィ!?」

 

この二人、新しいおもちゃが手に入って心底楽しんでいるらしい。

特に小猫はこれまでグレモリー眷属の中では若手だったので弄れる相手がいてよほど嬉しいと見える。

つくづく酷い連中と知り合いになったものである。

 

「俺虐めてそんなに楽しいか……?」

 

「「「いじめ?ただの新人の可愛がりですけど何か?」」」

 

声を揃えて言い放ったのはにこやかな表情のリアス、朱乃、小猫の三人である。

厳密に言えばダイスケは眷属ではない。

だが、先刻のダイスケのやられっぷりがよほど気に入ったのだろう。

本来ならSの気は無いリアスもこの状況を楽しんでいる。

 

「まあ……女子が多い環境って、男の肩身は狭いものだから。」

 

「木場、お前だけか。このオカ研の良心は……。」

 

長いこと圧倒的女子多数の環境にいた先輩ということで、木場がフォローに回る。

なるほど、こういう心遣いができるところがモテる秘訣かとイッセーが悔しくも納得していると、リアスは本題を切り出した。

 

「……とまあ、冗談は置いといて。実はねイッセー、ちょっと困ったことが起きたのよ。」

 

「なんですか?俺にできることなら、お手伝いしますけど。」

 

イッセーの申し出に、リアスは少しの間考えてその案件について頼むことにした。

 

「じゃあ、お願いしようかしら。実は小猫に依頼が来てたんだけど、ダブルブッキングしてしまったのよ。悪いけれど、ダイスケを補佐につけるからもう片方の方にいってもらえない?」

 

「わかりました!行ってきます!!」

 

敬礼で答えるイッセー。

それではと朱乃がイッセーとダイスケを依頼者の下へ送る準備を始めたとき、小猫が二人のもとへ歩み寄る。

 

「お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。」

 

「ああ。任せてくれよ、小猫ちゃん。」

 

「へぇ、そういう常識的なこともできるんだ。」

 

小猫はすかさずダイスケの腿を蹴る。

痛みにダイスケがのたうちまわる間に、朱乃の準備は完了した。

 

「それでは二人共、この魔法陣の真ん中で立ってください。」

 

これは目的の場所へ瞬時に移動できる移動用の転移魔法陣である。

本来ならばリアスの眷属以外は使用できない設定のものではあるが、一応の契約関係にあるということでダイスケも使用できるようになっている。

そんな詳しい事情を知らないふたりは、生まれて初めてのテレポーテーションに期待して胸を膨らませている。

 

「それじゃあ、頼むわよ。」

 

「はい、部長!!」

 

「へーい……。」

 

朱乃が陣に魔力を送りこむ。

陣を形作る文様からは赤い魔力の光が溢れて二人を包み込んでいく。

光の強さは思わず目を瞑ってしまうほどに強くなっていった。

その光が一定のボルテージを迎えたあと、フッと光は収まった。

さあ、一体どこへ出たのか……と目を開けるとそこは―――

 

「「あり?」」

 

元の部室のままだった。

 

「……どういうことなの?」

 

「恐らく、二人の魔力量が極端に低いのでしょう。これでは主と一緒でなければ移動できませんわね。」

 

つまり、この魔法陣は使用できないということになる。

ではどうやって依頼者の下へ行くか。

もはや方法は一つである。

 

「悪いけど……自力で行ってもらえる?」




他と比べちゃいけないと分かっていつつも、自作の人気のなさに驚く毎日。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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