帝洋グループビルで情報を集め、一通りの行動を済ませたダイスケは一旦帰宅しマリーとエリーを伴い、泊りの準備をして兵藤宅へ向かった。ロキ対策のために一旦集合することにしたのだ。
そしてアザゼル主導で迎撃作戦の打ち合わせが始まる。
「よし、集まったな。では明日の北欧神話勢と日本神話勢の会談を妨害するロキをどのように迎え撃つか、これから説明する。」
ホワイトボードの背にしたアザゼルの前には今回の作戦に参加する者の面々がそろっている。ちなみに今回MMSの出番はない。リアスたちが駒王町を離れている間に英雄派が空気を読まず襲撃してくる可能性も無きにしも非ずなので今回はこちらの警戒を主とすることになる。
「まず、ロキの相手はミョルニルを装備したイッセー、そしてヴァーリが当たる。基本はヴァーリの手数で追いつめ、一気に力を解放したイッセーのミョルニルで止めというのが理想だな。いけるか?」
「うす、勿論ス!」
「フェンリルとも戦いたかったが……致し方あるまい、まあ、戦いの流れは変わるものだからな。」
「次にフェンリルは応援に来てくれたタンニーン、黒歌、美猴、アーサー、メカゴジ「桐生義人だ。」……もとい義人が前衛につき、まず今回のためにダークエルフが強化したグレイプニルで動きを封じる。そこから抜け出した場合はタンニーンとコールブラントの力を軸に戦っていけ。」
「……テロリストと組むことになるとはな。だが、妙な動きをしようものなら即座に処断するから覚えておけ。」
ミニドラゴンに変化したタンニーンは凄味のある視線で黒歌たちをけん制する。しかし、それぞれ不敵に笑むだけだ。義人だけは平然としていたが。
「そしてビオランテだが、これにはダイスケが前衛に出てスルーズと共に白神博士の説得にあたる。」
「説得?撃破じゃないんですか?」
イッセーが疑問の声を上げる。そう、いつもなら戦う相手は最後までとどめを刺すかノックアウトさせて終わりにしている。今回のような場で説得という選択肢が出ることが不思議であった。
その疑問にアザゼルが答える。
「ビオランテは確かに脅威だ。しかし、それを操る白神博士本人は生身の人間だ。彼は生物工学の権威でもある。何としてもその頭脳は無事に確保できないと今後の科学の発展に大きな遅れができることになるだろう。だから博士に関して言えば、倒す、のではなく捕えるのが目標だ。」
さらにダイスケが続く。
「それにあの人はこんなことに関わるべき人じゃないんだ。さっき話した事情の通り、
あの人は悲しみをロキに付け込まれて巻き込まれただけの人なんだ。だからせめて、無傷で終わらせたい。」
「説得に関しては私ができる限りやって見せるわ。……だけどありがとう。例の事実、あなたが掘り出さなければ博士をどうやって止めていいかわからなかったもの。」
「当時使えなかった情報を掘り出したってだけだ。それに動いたのは俺じゃなくてミカエルさんたちだ。天界の協力がなきゃ司法を動かすことなんてできなかった。」
「それでもきっかけはあなたが動いてくれたからよ。本当にありがとう。」
「礼なら終わった後に言ってくれ。これで博士が止まるって保証もないんだからな。」
「ふふ、それもそうね。」
そんなダイスケとスルーズのやり取りを見てエリーは焦る。
「あれ、ちょっとまって。なんか距離感近くない?あの二人。」
「そ、そう見えます私にも。」
マリーもそのように見えている。
「なんか同じ目的で協調し合って雰囲気よくなってない?あれ、なんかやばくない?」
エリーが焦る中、アザゼルが各員の配置を決めていく。
「で、ダイスケとスルーズの援護だが――「はい!はい!私やるネー!」おお、やる気だなエリザベス。だがお前は妹と一緒に癒しの力を飛ばすアーシアの直衛だ。だからそっちは木場、ゼノヴィア、イリナにやってもらう。」
「Nooooooooo!!!!」
崩れ落ちるエリーだが、それに構わずアザゼルは続ける。
「リアス、朱乃、ギャスパー、バラキエル、ロスヴァイセは滅びの力、そして雷光、時間停止と北欧式魔法で各員をサポート。本来ならおれも加わりたいが俺は会談のほうに行かなきゃならない。すまないがこの五人で全体の後衛を頼む。小猫はここの直衛だな。それから途中参戦になると思うができればここに匙を送り込む予定だ。」
「匙?そういや姿が見えないけど。」
きょろきょろと周囲を見渡すダイスケにイッセーがそっと教える。
「ああ、あいつな、グリゴリの研究施設に送られて特訓だってさ。」
「マジ?あそこホント地獄だぞ。」
「だよなぁ。くわばらくわばら。」
ともに堕天使勢の頭のブレーキの壊れっぷりを体感している二人にはただ、匙の無事を祈るほかなかった。
「ロキ迎撃については以上だ。それまでは各員、英気を養ってくれ。じゃ、俺とバラキエルはまだやることがあるから一旦抜ける。解散だ。」
アザゼルの言葉とともに、各自解散していく。ダイスケも自宅へ帰ろうとしたがイッセーに呼び止められる。
「そういやさ、母さんが久々に泊って行けって。この家になってから一度も泊りに来ていないだろ。」
「たしかにそうだな。じゃ、甘えさせてもらうわ。でも、着替えとかあるからまずいったん帰るよ。エリー、悪いけど家頼めるか。」
「OK、家のことは妻に任せて!」
「……誰が妻だ、誰が。」
そうするとダイスケは一旦帰宅し、荷物を持って再び兵藤家を訪れる。
だが、やることと言えば別段普段イッセーの家に遊びに行った時と変わらない。ゲームで対戦したり、イッセーが所蔵する漫画を読んだり、だ。だが今回は普段の何でもない遊びとは違い、死地に向かう前の休息の時間としての意味合いが強い。
そんな感じに時を過ごしていると自然に就寝してもいい時刻になっていた。
今、ダイスケがいるリビングにはヴァーリと義人がいる。本来ならダイスケも客間を割り振られていたのだが、ベッドがあまりにも柔らかすぎてなじめなかった。だから三人ともソファで寝ることにしたのだ。
ヴァーリは現在北欧魔術に関する本を読み、義人は興味があるのかその読み終えた本をもらっていた。そしてダイスケは絶賛榛名に対する言い訳のメールを必死に作っていた。
そんな風に時を過ごしているとふいにイッセーが部屋に入ってくる。
「よかった。まだ起きてたんだな。ダイスケ。」
「ん、まあな。どうした、なんか用か?」
するとイッセーはやや恥ずかしがりながら言う。
「実はその……朱乃さんに夜這いされて。」
その言葉を聞いてダイスケは思わずソファから落ちそうになる。本に集中していたヴァーリと義人も何事か、と思いイッセーに意識を向けた。
「お、おい、まさかお前そのまま抱いたんじゃないだろうな!?」
「いやいやいやいや!流石にできなかったって!朱乃さん、すごく思いつめてたし、とてもじゃないけどはいOKですって言えるような状態じゃなかったよ。」
恐らく決戦前にせめて、という理由でイッセーに迫ったのであろう。イッセーの答えをを聞いてダイスケはほっと胸をなでおろす。
「イッセー、今回に関しちゃお前はベストな判断だったと思うぞ。もし抱いてたらお前、決戦の最中ピンチに陥ったら「好きな人に抱いてもらったからいいや」ってなって生きることを放棄するかもしれんからな。」
「それは困るぞ。戦力は減っては勝機も薄れる。兵藤一誠、よく留まった。流石俺のライバルだ。」
ヴァーリが変な方向でイッセーをほめるが、ダイスケはそれを無視する。
「兎に角、俺はお前がいい意味で性にヘタレで良かったと心底思っている。よくヘタレてくれた。」
「お前、俺の事褒めてるのか貶してるのかどっちだ。」
「ヴァーリ、ヘタレというのは場合によって良い結果を呼ぶことがあるのだな。いい勉強になった。」
「いや、義人。これは勘だがあまり脳にインプットしていい情報ではないと思うぞ。」
「お前ら俺の家からまとめて追い出すぞ!?」
疲れたイッセーはドサッとソファに座りこむ。そうしていると自然に時が流れ、イッセーは感慨深くボソッとつぶやいた。
「だけど、まさか悪神とはいえ神様を相手にしなきゃいけないなんてな。そりゃ、朱乃さんじゃないけど怖くなってくるよ。」
答えは期待していなかった。だが、ヴァーリが律儀にも返す。
「良い神もいれば悪い神もいる。まあ、立場が変われば良い神だって邪に見えてくるものだが。」
すると義人もそれにのってくる。
「とりわけロキは北欧のトリックスターだ。何がなくても自ら世界を引っ掻き回そうとする神だ。和平がなればなおさら動こうとするだろう。」
「それがわからないんだよ。なんで平穏や平和が嫌いなのか。俺なんて悪魔だけど、部長たちと楽しく過ごせられればいいやって、それだけで十分なんだぜ?」
「君にとって良いと思えることが苦痛に思う奴だっているってことさ。」
ヴァーリに言われたことが、なぜか悲しいことに思えるイッセーであった。そこへダイスケが言った。
「結局、意見が違えば必ず争いが起きる。その時自分の我を通すには結局戦うしかないんだよ。だが幸いにも俺たちには相手の暴力を払いのけるだけの力がある。望むものがあるならその力で勝ち取ればいい。悪魔の世の中だってそんなもんだろ。」
「そんなもんかなぁ……。でも、世の中には強い奴がわんさかいるじゃないか。」
「俺はそれがいい。平和なんてくそくらえ、とまではいかないがやはり退屈は嫌だ。だからこそこの世界は面白い。戦い甲斐がある。だから今回の共同戦線も俺はうれしいんだ。」
自分で戦う他ない、と言っていたダイスケだが、改めてヴァーリの戦闘狂の面を見てあきれ返り一周して感心する。一方のイッセーはそうでもない、という様子だ。
「俺は最強の
「それは君らしいことだ。」
ヴァーリが苦笑しながら言う。
「あー、でももう一個目標あった。――俺、お前を超えるぜ。」
そのイッセーの目標を聞いたヴァーリはこれまで見せたことないような喜色を浮かべる。
「ああ、俺のところまで来い。一時は君に失望していたが、君はほかのどの赤龍帝とも違う成長をしている。実に楽しみだ。……いかん、いずれ俺のチームと君のチームでレーティングゲームのように戦えたらとふと思ってしまった。」
「なんだよ、それ。おもしろそうじゃないか。だったら俺は全員美少女の眷属作るぜ。ダイスケはどうよ。」
「俺か?レーティングゲームの異種族参加のテストヘッドの俺が言うのもなんだけど、俺はあんまり興味はないかな。」
それを聞いたヴァーリは心底もったいない、という表情になる。
「なんだ、興味はないのか。きっと楽しいぞ?」
「俺はお前ら二人みたいな因縁はないからなぁ。……ただまあ、義人と一対一でぶつかり合いたいとは思う。」
「そうだな、今までの俺たちの戦いはいつも俺が操られてばかりで自分の意志で戦うなんてろくになかった。意義も見出していなかった。だが今はちゃんと自分の意志で戦って決着をつけたい。」
その義人の言葉を聞いたダイスケはどことなく気恥ずかしかった。なんだかまるで自分にイッセーにとってのヴァーリだ生まれたようだったからだった。
「うん、ええもん見させてもらったわい。若いとはええのう。」
そこへ何の前触れもなくオーディンが現れた。何やらいたく感心しているようだ。
「今回の赤白は個性的じゃい。昔はみんなただの暴れん坊じゃった。各地で大暴れして、勝手に戦って周囲の風景を消し飛ばしていきおった。そして死んでしもうた。『
「そ、そこまでだったんだ。」
流石生き証人は言葉の重みが違う。だが、その違いに先代赤龍帝の思念を呼び起こすカギがあるのではないかとイッセーは思う。
「ところでな、白龍皇。おぬしはどこが好きじゃ?」
ヴァーリに尋ねるオーディンの目が非常にいやらしい。そしてヴァーリはその意図を理解できていないようであった。
「なんのことだ?」
「決まっとるじゃろう、女の好きな部位じゃ。こっちの赤は乳を、なら対になる白龍皇にもなんかあるじゃろう。」
「心外な。おれはおっぱいドラゴンとは違う。」
心底心外そうだ。
「まあまあ、お主も男じゃ。なんかかんかあるじゃろうて。」
「……あまりそういうのに関心がないんでね。だが、しいて言うならヒップラインか。腰からヒップにかけての曲線は女性らしいものだと思う。」
「なるほどのぉ、ケツ龍皇か。」
『や、やめろ、オーディン!俺をドライグと同じところに突き落とす気か!?』
『どういうことだ、アルビオン!俺だって好きでおっぱいドラゴンなんて呼ばれているわけじゃない!!』
『き、貴様にわかるのか!?生涯のライバルがテレビでおっぱいドラゴンなどと称されていると知った時の俺の気持ちを!俺は情けなくて情けなくて……うぅ。』
『泣くな!泣きたいのは俺のほうだ!毎度毎度乳で目覚めるなんてどうかしている!くそうぅ、俺が何したっていうんだ……グズッ。』
「ほう、かわいそうなドラゴンか。これで一つお伽話でも作れそうじゃわい。」
「爺さんやめて!今すごく繊細な時期なの!」
「アルビオン泣くな。相談ならいつでも俺が聞いてやる。」
あのヴァーリがやさしい声音でアルビオンに語りかけている。その珍しい光景に義人が身を乗り出してくる。
「ヴァーリ、これはあれか?「修学旅行の夜の男子部屋のエロトーク」というやつか?ぜひとも参加してみたい。」
「いや、やめておけ。変なあだ名がつけられるのがオチだ。」
「よいぞよいぞ、義人といったか、お前さんはどこがいい?」
「パーツパーツなんてどうでもいい。俺は霧香が好きだ。」
そのカミングアウトを聞いたダイスケが噴き出す。
「ちょっと待て、お前。話の意味わかってんのか?」
「勿論わかっている。だが、俺はここの部分が好き、とかではなく霧香が大好きなんだ。」
「……それ本人に言ってやれ。喜ぶぞ。」
「そうか。じゃあ今から――」
「やめろ!!」
「ええのう、若さじゃのう。ところで怪獣王や、お前さんだけ何も言うとらんぞ。ほれ、げろってしまえ。」
「えぇ……。」
しかし、イッセーもヴァーリも、そして義人までが関心の視線をダイスケに向けている。もはやこうなれば正直に言う他ないだろう。
「……俺は体のバランスが崩れていなくて均整をとれているカラダならなんでも。」
「なんじゃつまらんのー。もっとエグイ性的嗜好とかないんかい。」
「ねぇよ、なに期待してるんだ!?」
「まあなんにせよ若いちゅうのはいいことじゃ。」
ふん、と大きく息をつき、オーディンは先ほどとは打って変わって年相応の姿を見せる。
「わしはこの歳までなんでもジジイの知恵袋ひとつで何でも解決できると信じておった。じゃが、それはジジイの傲慢じゃった。真に大切なのはお前さんたち若者の可能性じゃて。いまさらになってようやくそのことに気が付いた。まったく、どこまでわしは傲慢だったんだか……。その傲慢がロキのような歪みを生んだ。そしてそのせいで今度は若いもんが苦労してしまっとる。」
そう語るオーディンの目は悲哀に満ちていた。
「でも別にいいんじゃねぇの?間違いなんて誰でも犯すし、間違いだったって気づいた時に正せるならそれでいいじゃん。」
「俺もそう思う。一歩づつ進んでいけばいいだけじゃない。俺もそう思って今ここにいるわけだし。」
そんなダイスケとイッセーの言葉に、オーディンはぽかんと間の抜けた表情になる。だが、すぐにおかしそうに「くっくっく」と笑い出した。
「……やはり若さはいい。ジジイをも刺激してくれる。ああ、そうじゃな。お前さんたちの言うとおりじゃて。」
そんな風に満足そうな笑みを浮かべ、オーディンは退室していった。
「……なんだったんだ?」
「さぁな。」
そんな風にそっけなくダイスケがイッセーにこたえると、再びメール作業に没頭した。
*
「よう、爺さん。会談はもうすぐだな。こっちの準備も進んでるぜ。」
「おう、アザゼル坊か。」
時計の針が深夜を告げるころ、オーディンとアザゼルはゲスト用応接間で鉢合わせた。
「どうした、珍しく小難しそうな顔をしてるじゃないか。」
皮肉げにアザゼルは言うが、オーディンは特に反論もしない。
「……なに、今までのわしの行いが祖国とここにいる若いもんに迷惑をかけていると思うてな。」
その言葉を聞きながらアザゼルは棚から酒瓶をとグラスを取り出し、ソファに腰掛ける。
「爺さん、俺は古臭い考え方で引きこもって何もしない北の連中が嫌いだった。でもあんたは表に出てきた。主神自ら表舞台に出てきたんだ。協力体制を解く俺たちのもとに。」
「……たまには若いもんの意見も聞きたくなる。それにうちの若いもん達の未来を考えると新しい道も用意してやらにゃあならんと思ってな。」
そういうオーディンに琥珀色の液体で満たされたグラスを差し出しながらアザゼルは言う。
「だったらその願い、成就させろよ。そのために日本の神々との話し合いに来たんだろう?観光なんて称して日本神話体系が関連する場所を見て回ってまで。絶対に今回の会談は無事に成功させるべきだ。俺たちも協力する。」
「言われんでもわかっとるわい。……今夜は付き合えよ、若造。」
差し出されたグラスを手に取り、オーディンが言う。
「おうともよ。」
そして二人同時にグラスを呷った
というわけで戦いの前の修学旅行の男子部屋の夜みたいなVS55でした。
なお、感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われるとヒッパーレ!スマッシュヒッート!になりますのでご勘弁を。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!