ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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 今回は基本原作沿いに話が進みますが、ラストは前回につながるようになっています。
 それとGODZILLA決戦起動増殖都市、見てきました。
 感想としては……エグイ、実にエグイ。ネタバレは避けますが、まさか異種族間の価値観の違いがここまでの結果を生み出してしまうとは。
 メカゴジラヤバい。ナノメタルヤバい。っていうか、ビルサルドがヤバい。メトフィエスは相変わらず胡散臭い。そしてやっぱりゴジラヤバい。
 あと、ミアナが唯一の癒し。
 とにかくこの心をしっかりと抉ってくるエグさは見ないとわからない。
 見た後の教訓としては……余計なお世話はしないこと。これに尽きます。


VS57  始まりのラグナロク~もう一つの視点~

二天龍が並び立った所を確認したロキは、自分を止めるために並び立つ最強の者たちと称された存在が手を組んだということに歓喜に震えた。

 

「これは素晴らしい!二天龍がこの私を倒すべく共闘するか!このような経験ができるのは我が初めてだろう。フェンリル、博士、他は頼むぞ!!」

 

「わかっている。……気温、湿度ともに良好。気になるのは地中の水分量だが……まあいいだろう。さあ、わが子よ。降りて来い。」

 

 すると天から黄金の粒子が降り注ぎ、地面に染み込む。ややあったかと思った次の瞬間、地面が大きく揺れる。そして地が割れ、そこから幾本もの蔦状の触手が伸びていく。

 

キュォォォォオオオオオオオオオオオ!!!

 

 そして地中から白神博士を取り込んだビオランテの本体が現れた。しかし、その姿は以前のバラの花の姿ではない。鰐のような巨大な咢が花があった場所に存在している。

 

「より戦闘用に進化させた。再生能力も強化してある。止める術はない。」

 

 その言葉と同時に一斉に牙を生やした触手が一同に襲い掛かる。が、その触手の群れをダイスケの熱線が一掃する。

 

「スルーズ、博士のもとへ!」

 

「ええ!」

 

 スルーズが白神のもとへ向かう。作戦通りだ。そしてそれを無視し、ロキは全身を覆うように幾重にも魔方陣を展開する。

 イッセーはそれが防御用の魔方陣かと思っていたがしかし、それは射撃用の魔方陣であった。陣から何条もの光の帯が伸びる。それは追尾性が高い攻撃らしく、イッセーとヴァーリを追い立てる。

 それに対しヴァーリは空中で華麗に回避して見せ、イッセーは何発当たろうがお構いなしに我武者羅に突貫する。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

「いっけぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!」 

 

 右拳に貯めた力を、ロキめがけて一気に距離を詰めて打ち抜くイッセー。その一撃はロキの身にまとった魔方陣をすべて破壊させた。

 そこへヴァーリが空中から覚えたての北欧式魔術をお見舞いすべく力をためていた。

 

「――初手はこんなものでいいかな。」

 

 イッセーに吹き飛ばさたロキに放たれた魔法砲撃が殺到する。その弾着地点は大きなクレーターになっていた。しかし、

 

「ふはははは!覚えたての北欧式魔術か?よくやる!」

 

 ロキは無傷で立っていた。それを見たイッセーは一気呵成に決着をつけるためミョルニルを取り出す。

 

「……ミョルニルだと!?いや、ドワーフのレプリカか。それにしてもオーディンめ、あんなものを持ち出してまで会談を成功させたいか!」

 

 オーディンへのいら立ちをあらわにするロキの姿に、イッセーは改めて自分の得物がとんでもないものなのだと再認識する。

 そんなミョルニルも最初は持てなかったが、今のイッセーならしっかり持てている。これなら使用可能だ。 

 

「よし、行ける!!」

 

 イッセーはドラゴンの羽を広げた上で背中のブースターに点火する。目指すはロキ。一気に距離を詰めて念じる。

 

「雷よッ!!」

 

 ロキめがけて一気にミョルニルを振り下ろす。その一撃そのものは避けられてしまったものの、地面に激突した一撃はヴァーリの砲撃にも負けないほどのクレーターを残した。

 しかし、肝心の神の雷が発生しない。

 

「な、なんだこれ!不良品か!?」

 

 そのイッセーの様子を見たロキは哄笑を上げる。

 

「ふははははは、残念だったな。その槌は純真な者にしか使えない。どうやらよほど邪な心の持ち主らしい。本来であれば羽のように軽く扱えるほど重さを感じないものだ。どうやらオーディンは人選ミスをしたらしいな。」

 

 心当たりがありすぎる。真剣な戦いの相手にまでそこを指摘されてしまうとは何とも情けない話だ。 

 

「さて、お仲間が退屈しないようにこちらも本格的な攻撃に移ろうか。さあ行けフェンリル!神を殺す牙で咬まれれば一撃だぞ。さあ、行け!!」

 

 ロキがフェンリルに指示を出す。だがそれと同じ瞬間、リアスが手を挙げて合図する。

 

「りょ-かいにゃん♪」

 

 その指示通り、黒歌は自身の固有異空間に格納していた強化グレイプニルを引き出す。

 それに先行し、義人が手にしたグレイブでフェンリルをけん制する。

 

「さあ来い、お化け狼。」

 

 フェンリルの顔面に突きを加える義人。それを咬もうとするフェンリルだが、義人は適切な距離をホバーで移動し、つかず離れずでけん制し続ける。 

 その間にグレイプニルはタンニーン、美猴、アーサー、バラキエルが手に端を取り、一斉にフェンリルめがけて放つ。

 

「無駄だ、グレイプニルに対する対策などとうに――」

 

 しかし、ロキの言葉とは裏腹にグレイプニルはフェンリルを縛り上げる。ダークエルフの強化が効いたのだ。これでフェンリルの捕縛は完了した。

 となると残りはロキだけだ。だが、ロキは余裕を崩さない。

 

「スペックは落ちるが――」

 

 ロキが両腕を上げるとそこの空間がゆがむ。そしてそこからフェンリルと同じ姿――いや一回りほど小さい――の大きな灰色の狼が姿を現す。

 

「スコル、ハティ!!」

 

 オオオオオオオオオオオオオオオオォン!!

 

 共鳴する二頭の狼の遠吠え。そして大きさこそ若干小さいもののその姿は紛れもなくフェンリルだった。

 

「ヤルンヴィドの巨人族の女を狼に変えてフェンリルと子をもうけさせた。それがこのスコルとハティだ。父には及ばないがその牙は健在。さあ、スコルとハティよ、父を捕えたのはあの者たちだ!その爪と牙で食いちぎれ!!」

 

 一陣の風のように二頭の狼はそれぞれヴァーリ陣営とグレモリー眷属へ向けて駆ける。

 

「犬風情が!!」

 

 タンニーンがブレスをぶつける。だが、その足は止まらない。しかしそれでもダメージは与えている。

 対応としては正面からぶつかるほかないだろう。グレイプニルは親のフェンリルで使い切ってしまった。脱疽の好きに仲間に気を取られたイッセーにロキは特大の魔法攻撃を放つ。

 

「あぶねぇ!!」

 

 すんでのところでギリギリ躱すイッセー。しかし、その一撃は鎧を欠けさせていた。その間にもヴァーリはチャージしていた魔法攻撃を放つ。

 

「神格相手では半減の力もうまく作用しないからな。ならこのまま少しづつ削っていくまで。」

 

 ヴァーリが放った魔力、北欧式魔法もミックス砲撃の大半はロキにいなされる。だが、そのうち数発は確実にロキにダメージを与えている。

 

「ならおれはでかいので行く!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!――ドラゴンショットォォォォォオオオオオオ!!!」

 

 溜めに溜めた一撃をロキに見舞うイッセー。その一撃をロキは難なくいなす。

 

「なるほど、白龍皇のほうは熟練した強さと経験で、赤龍帝は徹底的に気合を込めた一撃か。技術こそないものだが侮れん、いまのもなかなか効いた。」

 

 勝てない相手ではないことは分かった。このコンビネーションなら確実にロキを追い立てていける。

 

「だが高速で動き回る白龍皇よりも赤龍帝のほうがとらえやすいのは確かだ!倍増した力を誰かに譲渡(トランスファー)されても面倒だ。ならそちらから潰す!!」

 

 ロキはイッセーに向けて手を突き出す。先にイッセーを狙うというのは本当のようだ。

 

「無視はいただけないな。」

 

 瞬時に自分に背中を見せたロキの背後にヴァーリが回る。だが、ヴァーリの攻撃がロキに届くことはなかった。

 

「グハっ!!」

 

 それはあり得なかった。ヴァーリがフェンリルの咢に咥えられていたのだ。

 見ればスコルかハティかわからないが、子狼が鎖を咥えている。眷属たちと戦うように見せて親を解き放ったのだ。

 

「ふははははは!!まずは白龍皇をかみ砕いたぞ!!」

 

 ヴァーリを助けるためにイッセーが動く。

 

「この駄犬が!!」

 

 鼻面に右ストレート。しかしものともしない。そのお返しにフェンリルは前足でイッセーの脇腹を切り裂く。

 

「お前たちをやらせるか!!」

 

 タンニーンがやってくる。少しでもひるませるために何発もの火球を放つ。

 

オオオオオオオオオオオオオオン!!!

 

 しかし、フェンリルは咆哮ひとつで炎をかき消す。そしてその姿が消えたかと思うと、次の瞬間にはタンニーンがその爪で切り裂かれていた。

 

「ぐおおおおおっ!?」

 

 タンニーンは急いで口に入れた小瓶をかみ砕いて中の液体を飲み干す。フェニックスの涙だ。今回の事で悪魔サイドから援助用として贈られたものの一つだ。

 イッセーもタンニーンに倣い涙で傷を癒す。そして考える。

 ヴァーリにも支給されたフェニックスの涙がある。だが、咬まれたままでは意味がない。救出したうえで使わなければどうしようもないだろう。しかし、今の自分では先ほどのように返り討ちに会うのがオチだ。

 ――だが『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』ならあるいは。

 だが発動させれば今度こそ死ぬだろう。ただ、覚悟だけはしておく。

  

「ついでだ。こいつらの相手もしてもらおう。」

 

 そういうロキの足元の陰から巨大な蛇――いや、ドラゴンが姿を現す。その姿をイッセーは一度見ていた。大きさはオリジナルほどではないが間違いない。

 

「ミズガルズオルムのコピー……!」

 

 それが合わせて5匹。それらがそろって炎を吐いてくる。

 

「この程度!!」

 

 タンニーンのブレスが押し返す。威力はタンニーンのブレスのほうが上のようだ。

 さらにリアスたちもスコルとハティとの死闘に突入する。先鋒は美猴。ハティに向けて手にした如意棒で突きを放つ。だが、効果はいまひとつでその報復に前足が一閃する。

 

「あぶねぇ!!」

 

 紙一重で交わした美猴は距離を取る。その間けん制するのは義人の両目から放つ金色のメーサーだ。対生物用ゆえに効いているのか、撃たれたハティは苦しんでいる。

 さらにバラキエルが朱乃が普段見せる規模の10倍以上の雷をスコルに向けて放つ。しかし、戦闘意欲は消えそうにない。それどころかさらに攻撃してくる。

 

「防御にまわったら負けよ、ひたすら攻めて!」

 

 リアスが魔力の塊を放ちながら支持する。そこへ援護に来た木場たちが到着する。

 木場は騎士(ナイト)らしい高速戦闘でスコルを追い立てる。

 

「赤龍帝とのトレーニングは伊達じゃないんだ!!」

 

 そして木場の聖魔剣がスコルの額に突き刺さり出血させる。その隙にゼノヴィアが攻撃しようとするが傷つけられ怒り狂うスコルの一撃をもらい吹き飛ばされる。

 

「ぐわっ!」 

 

 しかも爪の一撃をもらったのか血を吹きだしていた。

 

「ゼノヴィア!」

 

 イリナが光に槍を放って追撃しようとするスコルをけん制しながらゼノヴィアにフェニックスの涙を振りかける。傷がふさがったゼノヴィアは再びデュランダルとアスカロンを構える。

 

「ギャスパー、蝙蝠に変化して奴の視界を奪って!小猫はその隙に仙術の一撃を!!」

 

 リアスの指示でギャスパーは無数の蝙蝠に変身し、スコルの顔面を覆う。

 

「えいえいえい!」

 

 ギャスパーを振り払おうとスコルは必死に頭を振るが、ギャスパーはしっかりまとわりついて離れない。その一瞬のすきを突き、小猫が肉薄する。

 

「こいつの経絡は……ここ!」

 

 スコルの足に一撃。威力そのものは大したことはない。しかし、練られた気が気の通り道、経絡を通り生命の根源にダメージを与える。そのためかスコルの体が大きくふらついた。

 

「ゼノヴィア、今よ!」

 

 リアスの合図に、ゼノヴィアを溜めに溜めていたオーラを一気に開放する。

 

「さっきの……お返しだッ!!」

 

 共鳴した二振りの聖剣のオーラと斬撃の砲撃。それがスコルに大きな傷跡をつける。だが、それでも倒れない。

 

「追加だ!」

 

 そこへ木場がスコルの足元に大量の聖魔剣の刃を生えさせて追加のダメージを与える。

 

「傷ついた今なら通るはず……!」

 

 さらに朱乃が雷を放ってスコルに大打撃を与えた。一方――

 

「量産型ならば本人と違って相手しやすい。」

 

 タンニーンのブレスが量産型ミドガルズオルムの一匹を消し炭にする。

 

「もう一丁!」

 

 さらに放たれたブレスがもう一匹の量産型ミドガルズオルムをバラバラに吹き飛ばす。その余波でタンニーンを狙っていたビオランテの触手もいくつか吹き飛ぶ。

 

「援護します、いけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 ロスヴァイセがタンニーンを狙うミドガルズオルムとビオランテの触手を北欧式魔術で薙ぎ払う。だが、蛇のような口つきの触手がロスヴァイセに強酸性の樹液を吐きかけてダメージを与える。

 

「ロスヴァイセさん、回復を!そちらにも!」

 

 すかさずアーシアが聖女の微笑み(トワイライト・ヒーリング)の癒しのオーラを放ち、ロスヴァイセを回復させる。戦いが始まってからずっとこうして皆を後ろから支援しているのだ。

 しかし、後方にいるからと言って安全なわけではない。常にビオランテの触手がアーシアを亡き者にしようと狙っている。その間ずっとアーシアを守っているのはエリーとマリーだ。

 

「ファイヤァァァァァァアアアアアアア!!」

 

 エリーが大砲と化した獣具から特大の熱線の砲撃を放って触手を薙ぎ払う。さらにアーシアに近づいてきた触手は獣具を巨大な手の形に戻して一気に引きちぎる。引きちぎった個所から強酸性の樹液が待ってエリーの肌を傷つけるが、すぐに回復する。

 しかし、それを許さないのがマリーだ。

 

「よくもお姉さまの玉の肌をぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!」

 

 脚甲が二挺の銃に変形すると、マリーは触手の群れに向け乱射、乱射、乱射。多くの触手が撃ち落されていく。 

 もう一方のハティを相手取るヴァーリの仲間たちも子供とはいえ神喰狼(フェンリル)相手に押していた。

 

「義人ぉ、呼吸を合わせるぜぃ!!」

 

「了解した。」

 

 美猴と義人がそれぞれ手にした得物でハティに連撃を与え、ひるまさせる。如意棒の殴打とグレイブの突きが良いコンビネーションで絶え間なく、そして確実にハティに疲労とダメージを与えていく。

 この状況を打破するため、ハティは大きく動こうとするが、足が動かない。

 

「にゃははは♪それそれ、足止め。」

 

 見れば黒歌が術でハティの足元を泥濘に変えていた。足を取られ、動きを封じられた上にダメージが蓄積したハティにアーサーがコールブランドで斬りかかる。

 

「まずは片目。」

 

 ハティの右目が大きくえぐれる。

 

「Reiko、メガバスター。」

 

『OK,Mega‐bastar fire.』

 

 義人の顔面装甲の一部が開き、虹色の閃光、メガバスターがほとばしる。着弾地点はアーサーに抉られた右目痕。これに大きくハティは苦しむ。

 

「お次は爪。」

 

 さらにそのまま肉ごと前足の詰めを削り取る。

 

「そして一番危ないその牙も!!」

 

 コールブラントが空間ごとハティの一番の武器である牙を抉る。流石に効いたのかここで初めてハティは苦痛の叫びをあげた。

 そしてそのチームのリーダーであるヴァーリがフェンリルに喰われたままイッセーに話しかける。

 

「……兵藤一誠……ロキは君に任せる。ただこのフェンリルに関しては――確実に俺が仕留めよう。」

 

 その言葉を聞いたロキがせせら笑う。

 

「おいおいおいおい、どうやってだ!?すでに瀕死ではないか!単なる強がりや妄言は白龍皇の品位を貶めるだけだぞ?」

 

「――天龍を……このヴァーリ・ルシファーを……舐めるなッッッッ!!」

 

 ヴァーリは見る者の背筋を凍らせるほどの睨みを利かせた後、静かにその呪詛にも似た言葉を紡ぎだす。

 

「我目覚めるは――」

 

〈消し飛ぶよっ!〉〈消し飛ぶねっ!〉

 

「覇の理に全てを奪われし、二天龍なり――」

 

〈夢が終わるっ!〉〈幻が始まるっ!〉

 

「無限を妬み、夢幻を想う――」

 

〈全部だっ!〉〈そう、全てを捧げろっ!〉

 

「我、白き龍の覇道を極め――」

 

「「「「「「「「「「汝を無垢の極限へと誘おう――」」」」」」」」」」

 

『Juggernaut Drive!!!!!!!!!!!!』

 

 月明かりに照らされたバトルフィールドをさらに目映く照らすほどの七色の光がフェンリルの口の中から放たれ、フェンリルそのものも飲み込まれていく。

 

「義人、フェンリルを拘束!黒歌、俺とフェンリルを義人ごと予定のポイントまで転送だ!」

 

 まず、義人が動く。精神安定剤と睡眠薬入りのミサイルを乱射しフェンリルに命中させ、両腕をフェンリルに向る。

 

「Reiko、Gクラッシャースタンバイ。」

 

『OK,G-crasher fire.』

 

 両腕のグレイブが飛び出たところから先端に矢じりが付いたワイヤーが勢いよく飛び出る。それはそのままフェンリルに突き刺さる。

 

『Come on's discharge. 』

 

 そしてワイヤーを通じて強力な放電が行われる。それもフェンリルの肉が焼ける程の放電だ。そして黒歌は空間を操作して転送術を起動させる。

 すると、光と魔力の奔流がヴァーリとフェンリルと義人を包み、闇夜に消えていく。

 

「ヴァーリ!」

 

 イッセーはその名を呼んでは見たが返事などあろうはずがなかった。おそらく最初からフェンリルなりロキなりを一対一で決着をつける算段だったのだろう。それにあの覇龍(ジャガーノート・ドライブ)もヴァーリなら魔力を代償に短時間なら使いこなせると聞いた。自我もしっかりしていたようだから心配する必要はないだろう。

 

「朱乃!」

 

 しかし、リアスの叫びが耳に入る。見れば今まさに朱乃に相手する者がいなくなったハティがその残った牙をむいてきていたのだ。

 

「――ふざけるなッ!」

 

 考えるよりも先にイッセーは飛び出していた。背中の魔力噴出孔を全開に、ブーストをかける。

 

『Jet!』

 

 しかし、これはロキに背を向けることになる。当然ながらロキはそこを狙う。

 

「隙ありだな!」

 

 しかし、ロキが攻撃してくることななかった。巨大な火球と魔術攻撃が阻止したのだ。

 

「やらせはせん!」

 

「兵藤さん、行ってください!」

 

 タンニーンとロスヴァイセだ。見ればもうすでに量産型のミドガルズオルムは一体となっている。だから援護する余裕があったのだ。おかげでイッセーに朱乃を救うチャンスができた。

 しかし、すでにハティの牙は朱乃の眼前にまで迫っている。そして――その牙を身に受けたのはバラキエルだった。朱乃をかばうように背中からやられたのだ。

 

「――ごふっ。」

 

 口から大量の血があふれだす。傷口からもだ。

 

「そんな……どうして?」

 

 驚きの表情で朱乃は問う

 

「……お前まで失うわけには……いかん。」

 

「こいつッ!」

 

 イッセーがハティの横っ面を殴打し、吹き飛ばす。その拍子にバラキエルを解放して後退して行った。

 

「アーシア!」

 

 手持ちのフェニックスの涙はもうない。故にアーシアにイッセーは指示を飛ばす。

 

「はい!」

 

 そして淡いグリーンの光が飛び、バラキエルを包む。傷はこれでふさがった。しかし出血がひどい。体力も相当失われただろう。

 

「……私は……私はっ……!」

 

「……しっかりしろ、朱乃。戦いはまだ終わってはいないのだぞ。」

 

 イッセーは必死で考えた。今、この親子のために自分ができることは何か。せめて今、朱乃本人がバラキエルを嫌ってなどいないという胸の内を引き出すことができれば少しは救われるのではないだろうか。

 そう考え、静かにイッセーはパイリンガルを発動させる。

 

(なあ、朱乃さんのおっぱい。教えてくれ。朱乃さんは本当にバラキエルさんを恨んでいるのか?)

 

『……。』

 

 返事が返ってこない。答えることができないほどショック状態なのだろうか。すると、おっぱいは静かに語りだす。

 

『私は姫島朱乃のおっぱいではありません。――私はおっぱいの精霊です。』

 

 ……はい?

 

「…………だ、誰だあんた!!」

 

 突然のイッセーの驚いた様子に朱乃とバラキエルも驚く。

 

『落ち着いてください。私はこの娘のおっぱいを通じてあなたに話しかけているのです。』

 

「いや、だから誰だよお前!?」

 

『私はすべてのおっぱいを司りし神、乳神様に使える精霊です。貴方のかたくななまでのおっぱいへの渇望が私を呼んだのです。』

 

 イッセーは自分がしでかしたことの異常性に戸惑っていた。それはそうだ、胸の内を聞きたかったのに乳を司ると自称する精霊が出てきたのだから。

 

「お、おっさん!」

 

 ロキと戦っているさなかのタンニーンを呼ぶイッセー、律儀にもタンニーンはイッセーに振りむく。

 

「何だ!またなにか起きたのか!また乳か!」

 

「おっさん、乳神様ってどこの神話体系の神様だ!?」

 

 イッセーの問いかけに、タンニーンの口が塞がらなかった。敵味方問わず、みんな(一部でドシリアス展開中)呆気にとられていた。

 一拍開け、タンニーンはリアスに言う。

 

「――リアス嬢ぉぉぉ!!アイツの頭に回復をかけてやってくれぇぇぇぇぇぇ!!!!致命傷だぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「ああ、イッセーしっかりして!幻聴よ!なんてこと、フェンリルの牙がイッセーの精神まで!!」

 

 リアスまでもイッセーの頭が壊れたと思ってしまっている。その頭にアーシアから癒しの光が届く。

 

「あ、ありがとう。じゃなくて。違うんです!確かに朱乃さんのおっぱいが自分はおっぱいの精霊だって!」

 

「き、きさま……うちの娘がそんなわけのわからないものだと――ぐふっ。お、おのれおっぱいドラゴン……!!」

 

 息も絶え絶えなバラキエルが全身に雷光をほとばしらせて怒る。

 

『い、いや、みんな聞いてくれ。確かに俺にも乳の精霊とやらの声が聞こえる。しかも俺の知らない世界の力を感じる……残念な結果だが、こいつはどうやら異世界の神の使いを呼び寄せたらしい!』

 

 ドライグの言葉に、全員が驚愕する。

 

「馬鹿な!」

 

「そんな!?」

 

「ドライグまでダメージを!?」

 

 誰も信じない。

 

『ちくしょおおおおおお!どうせおっぱいドラゴンの言葉なんて誰も信じちゃくれないんだ!俺は何も悪くない!相棒が、相棒がぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 本気で泣くドライグだが、おっぱいの精霊は続ける。

 

『よく聞きなさい、乳龍帝。この巫女の本音を聞くことで乳神様の力をここに降臨させるのです。その力によって、あなたが望む奇跡が起こることでしょう。』

 

「俺の望む奇跡……?わ、わかった。でも俺だけが朱乃さんの本音を聞いても意味がない。朱乃さんとバラキエルさんにも聞こえるようにしてくれないか?」

 

『いいでしょう。――では、この娘の胸の内を聞きなさい。』

 

 目を閉じるイッセーの脳裏に、とある風景が写しだされる――

 

 

 

 

 

 

 それは、とある家族の物語であった。

 一人の母と、父と、娘。父は仕事でよく家を開け、娘は寂しい思いをしたがそれでも父も母も愛していた。父と母も同じく互いを、そして娘を愛していた。

 だが、その幸せな家庭は悪意によって壊される。

 悪意を持った者たちは父の留守を狙い、異端となった母ともども娘を殺しに来た。そして母は殺された。さらに、悪意の者たちは娘を穢れたものとしてなじる。

 その生まれ持った黒い羽根が悪いのだと。父と母が悪いのだと。そして同じく娘も生まれながらにして悪なのだと。

 結果、悪意を持った者たちは危機を察知した父によって皆殺しになった。娘は救えた。だが、母は帰らぬ人となった。

 娘は父を蔑んだ。怒りをぶちまけた。だが、娘にもわかっていた。

 父は悪くない。だが、そう思わねば娘の精神が持たなかった。 

 しかし、その光景とは別に母――朱璃の言葉が響く。

 

『朱乃――なにがあっても父さまを信じてあげて。父さまはこれまでたくさんの人を傷つけてきたかもしれない。……でもね。』

 

 もしかしたらそれはそう見えただけで幻だったのかもしれない。だが、イッセーの目にははっきりと見えた。

 朱璃が、朱乃とバラキエルをやさしく包むのが。

 

『あの人が私と朱乃を愛してくれているのは本当だから。だから、朱乃もあの人のことを愛してあげて。』

 

 実際の時間は数秒にも満たなかった。だが、その光景を見た当人たちからすればこれまで歩んできたすべての時間と等しい時間であった。

 意識が現実に戻った時、朱乃はとめどない涙を流していた。

 

「母さま……私はッ……父さまともっと会いたかった!もっと頭を撫でてもらいたかった!もっと遊びたかった!父さまと母さまと……三人ずっと一緒にいたかった……!」

 

 それが、本当の想いだった。それを聞いたバラキエルはただ一言言った。

 

「朱璃の事を――お前のことを一度も想わなかった日はないよ。」

 

 震える手をバラキエルは朱乃の頬に伸ばす。朱乃はその手を、黙って受け取った。

 

「……父さま。」

 

 そのときだった。赤龍帝の鎧(ブーステッドギア・スケイル・メイル)の全宝玉が輝きだし、そして機能しなかったミョルニルから目映い光があふれ出てくる。

 

『乳龍帝よ、あなたはこの娘の想いを、この娘のおっぱいを救ったのです。さあ、乳神様の加護をあなたへ――』

 

 イッセーは置かれたミョルニルを手に取る。そしてそこから伝わってくる波動の強さは尋常ではなかった。その波動はどうやらロキにも伝わったらしい。

 

「むぅ、何やら知らない神格の波動を感じるぞ。異世界の……乳神?今度の赤龍帝は不思議がいっぱいだな!」

 

 ロキはそう言うとローブを広げ自身の影を広げた。そこからまた五体のミドガルズオルムが現れる。

 確かにタンニーンとロスヴァイセで十分屠れる相手だが、こう何度も何度も増援を出されては限がない。そのとき、戸惑うイッセーたちの前に大きな黒い影が現れる。

 いや、それは影ではなく黒い炎であった。それも龍の姿をかたどっている。そしてその黒い龍の炎はロキとスコルとハティ、そして五匹のミドガルズオルムを包む。

 

「ぬう、なんだこの炎は!?……これは、力が抜けている!?呪いの炎を操る龍王がいたと聞くが……まさか!?」

 

 その炎はロキたちを拘束し、力を奪っているようであった。

 

「な、なに!?今度は尻神!?」

 

「馬鹿か、お前は!!……この漆黒の炎、よもや黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)ヴリトラか!?」

 

 タンニーンが叫ぶ。そう、ヴリトラ、つまり匙がようやく現れたのだ。すると、緊急用にイッセーが耳につけていたイヤモニから声が聞こえてくる。

 

『兵藤一誠君、聞こえますか?私はグリゴリ副総督のシェムハザです。』

 

 声自身は効き覚えがなかったが、その名前は知っていた。

 

「あ、どうも。あのでかい黒い炎のドラゴン――匙を送ってくれたのはシェムハザさんなんですか?」

 

『ええ、トレーニングが終わったらそちらに転送するようにとアザゼルに言われていましたから。』

 

「あの……匙に何したんです?」

 

『ヴリトラは複数の神器に封印されていることはご存知ですね。グリゴリは宿主から抜けた後のそれら複数の神器を保管していたのですが、黒い龍脈(アブソーブション・ライン)に他の邪龍の黒炎(ブレイズ・ブラック・フレア)漆黒の領域(デリート・フィールド)龍の牢獄(シャドウ・プリズン)を匙君に埋め込みました。バラバラに分断されていたヴリトラの意識が復活するかとやってみたのです。結果アザゼルの予測通りヴリトラの意識が復活しました。』

 

「じゃあ、あの姿は?」

 

『暴走です。しかし、匙君の意識は残っています。ドライグを通じて呼びかければ繋がるでしょう。それでなんとか手綱を引いてあげてください。』

 

「……わかりました、何とかやってみます。」

 

『お願いします。ただ、あくまで暴走なのでそれほど持たないでしょう。敵が封殺されている今が好機です。』

 

「はい!」

 

 イッセーはミョルニルにオーラを送る。形こそ変わりはしなかったがなるほど、あれだけ感じていた重さを感じない。これがレプリカではあるがミョルニルの本来のスペックなのだろう。

 

「みんな、シェムハザさんからの連絡だ!その匙の黒い炎で奴らは身動きが取れない!一気に畳み掛けよう!!」

 

 そのイッセーからもたらされた情報を耳にし、全員が総攻撃の意志を固めた。

 まず、ロスヴァイセが仕掛ける。

 

「オーディン様の敵は……ここで打ち滅ぼす!!」

 

 全身から魔方陣を展開し、魔法攻撃の一斉掃射を行う。それら放たれた魔法攻撃は子フェンリル、量産型ミドガルズオルムを貫いていく。黒い炎で力を奪われているため弱り目に祟り目だ。そこへ木場たちが止めの一撃をあたえ、確実に倒し切る。

 

『匙、聞こえるか?』

 

 イッセーは意識はドライグを通じて匙に飛ばした。

 

『……うぅ。』

 

『匙、俺だ。イッセーだ。』

 

『ひょ、兵藤……?俺、今どうなってる……?なんだかとてつもなく熱くて体が燃え尽きそうなんだ……。』

 

『意識をしっかり持て!せっかくかっこよく登場したんだから、最後まで仕事してからぶっ倒れてくれ!』

 

『……わかった、どうすればいい?』

 

『周りに何か見えるか?』

 

『黒い炎の中にでかい狼やら細長いドラゴンが見える……。』

 

『そいつらを繋ぎ止め続けてくれ。そう念じればいいんだと思う。兎に角強くだ!後、ヒト型の奴もいないか?』

 

『いる。なんだか得体のしれない魔術か何かを感じる。それで黒い炎を消し去ろうとしている。』

 

『そいつが親玉だ!消しさられるな!兎に角そいつをつなぐ止めるように強く念じるんだ!後は俺がやる!決着つけるからよ!』

 

 そこまでいうとイッセーはミョルニルを握りしめる。

 

『JET!!』

 

 背中のブースターに一気に点火し、突き進む。もちろん狙うのはロキただ一人。

 それを察知したのかロキはイッセーに向けて魔術砲を撃ち込む。そしてその攻撃は真正面から当たった。なんども、なんども、なんどもなんどもさらに撃ち込む。

 どれもこれも痛かった。頭に一発当たったせいで兜も壊れ、頭から血が出ている。しかし、それに構わずイッセーは突き進む。

 その時だった。ロキが炎の拘束から逃れたのだ。

 

「この程度でいつまでもこの私を縛れると思うな!!」

 

 そういうとロキは高く飛び上がる。

 

「仕切り直しだ!我は一時退却する。ふはははははは!!しかし三度ここに訪れて混沌を――」

 

 しかし、そのセリフは続かなかった。特大の雷光が放たれたのだ。そしてその一撃はロキを包み込む。

 見れば朱乃とバラキエルが互いに手を取り合っていた。そしてその二人の背中には堕天使の翼が広がっていた。

 

「な、なにをした!?」

 

 煙を上げ、落下するロキ。それを匙が見逃がすはずがなかった。黒い炎が再びロキを包む。

 

「馬鹿な、一度解いたはずだ!なぜもう一度解けない!?」

 

 そこは匙の根性である。赤龍帝を一度追い込んだ匙の根性は伊達ではないのだ。 

 

『やれ、兵藤!』

 

 匙に後押しされ、イッセーは狙いを澄ます。そしてミョルニルを一気に振り上げた。

 

「行くぜドライグ!」

 

『おう!』

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

 

『Transfer!!』

 

「いけぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええ!!!」

 

 ミョルニルの頭がロキに突き刺さる。

 響く雷鳴。注がれる破壊のエネルギー。

 ロキの体が煙を上げた。そしてその姿は――土くれのように崩れた。

 

「――え?」

 

 イッセーは目の前で起きたことに理解が追い付かなかった。ロキは倒した。しかし、まるで土くれのようになったこれはなんなのだろうか。

 そして、遠くからダイスケの叫びが聞こえてくる。

 

「……ロキィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイ!!!」

 

 戦いは、まだ終わってはいない。




 ということで決着は次回に持ち越しなVS57でした。文章量的にあれ、これだと時間的に前回と今回のラストつながらなくね?となるかもしれませんが、繋げてください。無理やりにでも
 なお、感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われるとカクエキデンシャーキュウコウデンシャーカイソクデンシャー海賊電車!発射!になりますのでご勘弁を。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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