ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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 普段とは違う投稿ペースですが、なんとなくあげてみました。


VS59  ラグナロク・その始末

「博士!」

 

 鎧を解いたスルーズは、急いで白神の元に駆け寄る。

 スルーズに抱かれた白神に、早速アーシアが癒しの光を当てる。タンニーンもイッセーもダメージを負っているが、彼は体力の無い一般人である。真っ先に手当てをする必要があった。

 破れたシャツの向こうで、傷口が見る見るうちに元通りになっていくのが見る。

 だが、青ざめた顔色は元には戻らない。失われた血と、体力だけはさすがの聖女の微笑み(トワイライト・ヒーリング)でも元に戻すことはできない。

 

「……すまないね、お嬢さん。無駄なことをさせてしまった。だが、おかげで痛みだけはなくなったよ。」

 

「……いえ。」

 

 その言葉でアーシアも悟ったのだろう。彼はもう助からないと。

 

「私はもういい。仲間のところへお行きなさい。」

 

 その言葉を聞いたアーシアは一礼し、イッセーとタンニーンのもとへ涙をこぼしながら走って行った。

 

「今からでも間に合います、悪魔なり堕天使なりが経営する病院へ搬送してもらいましょう。そうすれば――」

 

 しかし、スルーズの言葉に白神は首を横に振る。

 

「いや、自分でもわかる。私はもう……助からない。その資格もない。」

 

 涙を流すスルーズに対し、白神は最後の力を振り絞り、言葉を紡ぐ。

 

「すべて私が自分の科学に倫理を忘れていたから起きたことだ。エリカが好きだった薔薇にあの子の遺伝子を組み込んだのが間違いの始まりだった。あの子を失い、せめて何か残したいと思った時に倫理を超えた行為をしたのがいけなかったのだ。そのせいで私はあの子を怪物にさせてしまうという最後の歯止めすら振り切ってしまった。そのままにしておけばこんなことにならずに済んだのだ。エリカには本当に悪いことをした……。」

 

 もはやその双眸にも光はない。だが、後悔の念が彼に言葉をつづけさせる。

 

「私のような老人の気の迷いが、君たち若者の未来を奪うところだった。ただでさえ私たち老人は君たちに多くの負の遺産を残しているというのに……。ああ、なぜなんだろうな。ほんの少しのボタンの掛け違いのせいでこんなことに……。」

 

 白神の瞳から涙が一筋流れる。そして、虚空を掴もうとするかのように手を伸ばす。

 そこへ鎧を解いたダイスケが歩み寄って跪き、白神の手を取る。

 

「確かにすべてはあなたの過ちから始まった。ロキがあなたを誘惑したとはいえ、それを受け入れてしまう土壌はあなたにもあった。」

 

 でも――とダイスケは言う。

 

「あなたが娘さんを愛していたというのは真実です。だから遺伝子を残そうとしたし、復讐もしようとしたし、怪物に姿を変えさせてでも命を繋ごうとしたんでしょう?今回はその想いと、俺たちの想いがぶつかり合ったってだけです。そんなの、俺たちは日常茶飯事ですよ。」

 

 その言葉を聞いた白神は瞑目する。すると、ビオランテの残骸に変化が起きた。

 ビオランテの巨大な体躯が光の粒子となって天へ昇っていく。それはあの狂暴だった存在からは想像もできないような美しい最期。誰もがその光景に目を奪われた。

 

「……ありがとう。」

 

 ふいに、その光景を見ていたダイスケがそう口にする。

 

「……ビオランテ――いえ、エリカさんが。」

 

 ダイスケは白神に告げる。すると、白神は満たされたような穏やかな表情になる。

 

嗚呼(あぁ)――エリカ……。」

 

 その瞬間、白神の手に残っていた力が消える。

 彼の魂は、そのまま静かにビオランテと共に天に昇って行ったようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「娘と共に逝けて、彼は最後に幸せだったのだろうか……。」

 

 朱乃に支えてもらいながら片膝をつくバラキエルはそう言う。同じ父親として、思うところがあったのだろう。

 しかし、その疑問に朱乃は答えることができなかった。それは本人のみぞ知るところである。

 

「お父さま、私は――」

 

「いいんだ。何も言わなくていい。お前の本心は――彼が聞かせてくれたからな。」

 

 そういってバラキエルはイッセーのほうを見る。ちょうど倒れた匙を起こしているところであった。

 瞬間、あることが朱乃の脳裏をよぎる。

 

「……お父さま、一つ訊かせていただいてもいいですか?」

 

「なんだ?」

 

「お父さまは、私に何かあった時……あの白神博士のように動いてくれますか?」

 

 その質問を聞いたバラキエルは、一瞬驚いたような表情になったが、すぐにふっ、と笑って答えた。

 

「当たり前だ。父親なのだから。」

 

 その一言が、朱乃にとって嬉しかった。

 ややあって、バラキエルは朱乃の助けを借りて立ち上がろうとする。だが、その体格の違いのせいでバランスが崩れ、二人とも倒れそうになる。

 

「おっと。」

 

 そこへ手を貸したのはイッセーであった。

 

「……乳――いや、兵藤一誠。」

 

 突然の助けに、バラキエルは驚く。

 

「あ、今俺の事乳龍帝って言おうとしたでしょう。まあいいっスけど。」

 

「いや、その、すまない。」

 

 たどたどしく謝るバラキエルに、イッセーは彼の風貌からはうかがい知れない一面を見た気がした。

 

「その、だな、君は――」

 

「……俺、乳なんて食べませんよ。」

 

「あ……うむ、そうだな……。」

 

 苦笑しながら言うイッセーを見て、バラキエルは先に言われたダイスケの言葉を思い出した。

 そこで、バラキエルは勇気を出してあることを聞こうとした。

 

「ひょ、兵藤君、君は娘が――朱乃が好きか?」

 

「はい、大好きです。頼りになって、やさしい素敵な女性(ひと)だと思います。」

 

 間髪いれずに、そして笑顔でイッセーは答えた。それを聞き、バラキエルはこんなことが起きた後ではあったが嬉しくなった。

 イッセーと一緒にバラキエルを支えていた朱乃など、顔を真っ赤にして俯いていた。

 

「……そうか。そうか。」

 

 その様子を見たバラキエルはいたく満足した。

 

「すまない、これから後方にいる仲間に状況が終了したことを伝えに行く。先に失礼させてもらう。」

 

 そういうと、バラキエルは転移魔方陣で移動していった。

 

「終わったか?兵藤一誠。まだ動けるな?戦後処理だ。この土地を元通りにするぞ。」

 

 タンニーンに言われて見ればビオランテが起こした地割れの後だの、三割ロキ七割ヴァーリが作ったクレーターだの、クレーターだのあとやっぱりクレーターだの散々な状況になっていた。しかも、美猴達の姿もイッセーがロキにミョルニルで向かっていった時にはすでに消えていた。

 

「あぁ、くそっ、ヴァーリのバカ野郎!どこ行きやがった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――G細胞の回収完了っと。そしてあれが今世の二天龍か。ヴリトラと聖魔剣も確認できた。ヴリトラは暴走状態だったが新しい道をたどっている。聖魔剣も奴の期待通りのイレギュラーだな。」

 

「見に来て正解だったわね。技術部の理論が確証を得そう。――赤龍帝と白龍皇に一度でも関わった神器所有者はイレギュラーの覚醒をする確率がダンチってね。」

 

「グリゴリの技術も脅威だな。――で、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)の攻略法は見つかったか?」

 

「消耗させるものを加速させる神器で対抗できると思うわ。魔力ないし生命力を消耗させるなら、狙いはそこよ。でも問題は赤龍帝とゴジラね。何やらおかしな方法で成長しようとしてるみたい。神滅具(ロンギヌス)の意識に潜って行っているのかしら、赤龍帝は?その点で危険なのは白龍皇も危険だけど、ゴジラのほうはもっと予測不能ね。まさか雷神の力を得るなんて。」

 

「……。――いま曹操から連絡が入った。へぇ……。」

 

「どうしたの?もしかして――」

 

「ああ、龍喰者(ドラゴン・イーター)とアレに適合する生物が見つかった。――これで無限が終わり、俺たちの怪獣が生まれる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――久しぶりの覇龍(ジャガーノート・ドライブ)は危険な上に堪えた。できれば使いたくないところだ。このままでは俺が保たない。――で、そっちはどうだ、アーサー。」

 

「義人が抑えてくれたおかげで支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)で手綱を引けそうです――フェンリルを。制限付きなので力はだいぶ落ちてしまいますが。しかし、牙が目当てとはいえこのような危険な魔物をチームに入れるとは物好きの極みですね。」

 

「おい、ヴァーリ。曹操の奴から連絡だぜぃ。」

 

「美猴、奴はなんと?」

 

「要約すっと、「こっちは勝手にやる。邪魔だけはするな」だってよぅ。」

 

「ハッ、お互い何もないことを祈ろうじゃないか。こちらにかかってくるのなら容赦なしだ。」

 

「しっかし、異世界の神の加護を得るとはねぃ。兵藤一誠、先が読めなくて楽しませてくれるぜぃ。なんかあいつの成長ってよ、予想の遥か斜め上を猛スピードでカッとんでいくよなぁ。」

 

「ふふ、『おっぱいドラゴン』か。冗談みたいだが、冗談では済まない存在になりそうで楽しみだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

『本来なら通信ではなく直接そちらに伺いたかったのだが、今回も身内が助けられたようだ、アザゼル。』

 

「まぁな。しかし、今回も厳しかったぜサーゼクス。トールの助力がなければマジでやばかった。」

 

『しかし、また『おっぱいドラゴン』は奇跡を見せ、怪獣王に助けられた。』

 

「ったく、不思議パワー全開だぜ、イッセーは。誰だよ、乳神って!ダイスケもまさか神から力を得るとは思いもしなかった。これで奴の成長の幅はさらに広がったろうな。――で、イッセーたちには例の件、伝えなくていいのか?」

 

『中級悪魔への昇格の話か』

 

「イッセーと木場と朱乃に来てるんだろう。」

 

『うむ。コカビエルの一件、三大勢力会談テロ、冥界でのパーティーの襲撃、旧魔王派テロ、これらをすべてリアスたちは防いでいる。昇格への功績としては十分すぎる。さらに今回のロキ襲撃を防いだ件も大きな功績だ。三名の昇格は確実と言っていいし、ダイスケ君にも何らかの名誉を与えねば。』

 

「まあ、最近平穏だった悪魔たちの中ではトップクラスの成績だからな。得にイッセーは冥界でも人気者。朱乃はバラキエルの娘。木場は特異な聖魔剣を持つ。優秀で有望だ。力だけならもう上級悪魔だ。だが――」

 

「ああ、そうだ。まだ彼らには早すぎる。イッセー君など悪魔になってまだ半年だ。昇格すれば話題となり、敵の的になって狙われる。さらに力をつけてもらうためにももう五年、いや三年は待ちたいところなのだが、世論と流行が彼らを強く後押ししている。」

 

「ハハハ、魔王も大変だな。で、お前さん本人の心情としてはどうなんだ?」

 

『昇格してほしい。将来、娘と眷属と共に家を継ぐにも一応の肩書は必要になるだろう。古い悪魔たちはそのあたりにいまだに拘るのでね。だが、まだ早いうえに若すぎる。彼にももう少しの間だけただの『おっぱいドラゴン』でいてほしいのだ。』

 

「まあ、その通りだな。もう少しだけの様子見も必要だ。だが、それもそんなに長い時間じゃないんだろうな。」

 

『……ああ、わかっている。』

 

「イッセーよ、確実にハーレム王のレールに乗るためにあと何個かの功績をあげてみろってな。だが、昇格したとしても――」

 

『そう、そこから何を成すのか、それこそが悪魔としての本番だ。』

 

「それから、これは未確認情報なんだがな。各地の天文観測所がおかしな現象を確認している。」

 

『最近活性化してきている英雄派に関係あるのか?』

 

「いや、さすがにそこまでは分からん。ただ、なにかが頻繁に地球と宇宙を行き来していることは確かだ。」

 

『各地に潜伏している宇宙人たちの活動では?』

 

「それも考えたんだが、各国の政府を通じて問い合わせても奴らに動きはない。他の神話体系でもだ。兎に角、地球と宇宙を行き来している何かの大きさは約人間大。これの大きさの個人用宇宙船はどの宇宙人たちも保有していないらしい。」

 

『となれば何らかの神器ないし獣具の保有者の仕業ということになるのか。』

 

「考えられるとしたら、そいつは宇宙由来の何かを求めている。ひょっとしたらそいつは大いなる脅威になりうるかもしれん。個人で宇宙を行き来するどこの誰かさんも含めてな。」

 

『……荒れそうだ。まだ見ぬ神器への対策か。考えてみれば、一番厄介なのは特異な能力の多い神器なのかもしれない。』

 

「単純なパワータイプなら御しやすいんだがな。そんなのも余裕で封殺できるタイプが多いってのが痛い。神器は確かに面白い。が、だからこそ怖いんだ。」

 

『――神の置き土産、か。今まで私たちを支え、特殊能力の一つにすぎなかったものがこうしてわれらの前に立ちふさがるとは……。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 駒王町のはずれにある教会。かつてここでダイスケたちはカマキラスやレイナーレ達と死闘を繰り広げた。

 戦いの最中、建物はほぼ倒壊したが、今は三大勢力の和平によって天界勢力に接収され修復し機能している。

 その敷地内の墓地にダイスケとスルーズはいた。そして、彼らの前にある二つの墓標のエピタフには白神とその娘であるエリカの名が刻まれている。

 献花し、祈りをささげる二人。ともに立ち向かった者同士だからこそ、二人は今日共にここに来た。捧げられた花は、エリカが好きだったという薔薇の花である。

 

「このくらいしかできないけど……せめて二人とも安らかに――」

 

 そのスルーズの祈りは、ダイスケの祈りでもあった。

 

「だけど、よくキリスト教の流儀に合わせたな。あんたなら北欧式に拘るかと思ったんだけど。」

 

 キリスト教の墓であるのに数珠を握るダイスケである。

 

「別に故人の冥福を祈れるのなら拘らないわ。私、そういうところは寛容なの。」

 

「なるほどね。」

 

 そう言うと、ダイスケは数珠をポケットに仕舞う。

 

「で、これからあんたどうするんだ?オーディンの爺さん、先に帰ったんだろ?」

 

 言うまでもなく、オーディンと神道勢力との会談は無事成功裏に終わった。これから閉鎖的だった北欧神話勢力も三大勢力を含めた各世界との歩調を合わせることも決まった。すべてロキを足止めできたからである。

 そして会談を成功で終わらせたオーディンはスルーズよりも先に帰って行ったのだった。

 

「平気よ。私、ビフレスト使えるから。本来はヴァルキリークラスは使えないんだけど、私はトールの娘だから。大学時代、授業に遅れそうになった時によく助けてもらったわ。」

 

「それいいのかよ、ヘイムダルさん……。」

 

 とんでもない職権乱用にダイスケは頭を抱える。

 

「何だったら、これから一緒に日本観光でもする?どうせ時間はあるし。」

 

「アホか、俺は部活脱け出してきてるんだ。すぐ戻るんだよ。」

 

「あら、残念。」

 

 じゃあな、と言ってその場を後にしようとするダイスケだったが、スルーズがねぇ、と言って呼び止める。

 

「ねぇ、あなたどうして博士の件を調べようとしてくれたの?確かに、有益な情報ではあったわ。でも、あなたが力を貸してくれた理由が知りたくて。」

 

 その質問にダイスケは立ち止まり、やや考えてから答える。

 

「……別に、大した理由はないよ。誰だって家族が死ねば、よほどのことがない限りなんで死んだか知りたくなる。俺も亡くしたからわかるってだけだ。それに、復讐したいって気持ちも理解できた。でも、そのせいで娘を想ってるだけの人が、世界の敵になるってのが許せなかった。……それだけだよ。」

 

「……そう――いいヒトね、貴男。」

 

「そうか?俺は別に――」

 

 そう言いながら振り向いた瞬間、ダイスケの両頬はスルーズの両手で包まれる。そして、ダイスケの唇にスルーズの唇のやわらかい感覚が広がった。

 実際はほんの四、五秒だっただろう。だが、それがダイスケには何時間にも感じられた。

 一陣の風が通り抜けた後、スルーズはゆっくりと唇を話す。 

 

「ふふ、ファーストキスかしら。」

 

「……いや。前に無理やり。」

 

「あら、これまた残念。でも私は初めてよ。」

 

「さいですか。つーか、俺もう一人でいっぱいいっぱいなんだけど。イッセーみたいにハーレム王目指してるわけじゃねぇよ、俺は。」

 

「あら、男の甲斐性を見せるいい機会じゃない。私はビフレストでいつでもここに来れるわけだし。」

 

「そう言う問題じゃねぇよ。せめてこういうことに関しては誠実でいたいの。」

 

「あら、そういうことに関してはあなたもう手遅れだと思うけど?まぁ、基本あなたの周りは同年代みたいだし、私みたいな年上がいてもいいと思わない?一番を譲るつもりはないけど。」

 

「なにで争ってるんだ、なにで。」

 

 スルーズはそういいながらいたずらっぽく笑うと、天に獣具のランスを掲げる。

 

「じゃあまたね、私の未来のお婿さん♪」

 

 雷鳴とともに、虹色の光の柱がスルーズを包む。そして、次の瞬間にはもうその姿は光の柱とともに消えていた。

 

「……とんでもねぇ爆弾残していきやがった。」

 

 そうダイスケは言い、しばらく佇んでその場を後にしようとする。すると、見知った二つの影が見えた。

 

「……ダーリン、何時までも待っても来ないから迎えに来たヨ?」

 

「ダイスケさん、あなた……。」 

 

 エリーとマリーだった。

 血の気が引いた。

 

「見てた?」

 

「なにガ?」

 

「なにも?」

 

「なにガ?」

 

「……うん、だったらいいんだ。」

 

 そういってそそくさとダイスケはこの場を去ろうとするが、それを許すエリーではない。

 

「……口紅ついてるヨ?」

 

 言われてダイスケはあわてて口を拭う。が、拭った手には何もついていなかった。

 

「彼女、口紅使ってないの知らなかった?」

 

「……へぇ~それであれだけ唇照かってるんだ。すごいね、若さって。」

 

 それで済まそうとしたがもはや手遅れ。エリーはマリーと共にダイスケと取っ組み合いになる。

 

「なにやってるネ、ダーリンは!!」

 

「俺は何もしてねぇよ!!むしろ被害者だ!!」

 

「人の気持ちを弄んであなたは!!」

 

「弄ばされてるの俺!!つーか、なんでマリーまで!?お前姉ちゃん一筋じゃねぇのかよ!!」

 

「わたしは、あの、その……いいじゃないですか別に!!」

 

「こうなったら上書きするネ!!ンンンンンン!!!」

 

「だ、おま、やめろ!!ここ墓場だぞ!?」

 

「そうですよ、お姉さま、いっそ私が代りに、っていうか私はまだなんで!」

 

「だーからなんでお前が!?……こういう時はジョー○ター家の家訓……逃げるんだよぉぉぉ!!!」

 

「「あ、待てェェェェェェェ!!」」

 

 こうして三人の追いかけっこは学園に戻るまで続いたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう終わりよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 銀髪のヴァルキリー、ロスヴァイセが部室で泣き叫んでいた。

 

「オーディン様もルゼもひどすぎる!!私だけ置いていくなんて!戦いの後の処理とか、各勢力へのセッションなんかもあったってわかってるはずなのに!」

 

 そう、彼女はオーディンはおろかスルーズにも置いて行かれたのだ。一人取り残され、しかも何の音沙汰もないということを考えるとリストラされたと考えても不思議ではない。

 

「あー、オーディンの爺はともかく、ルゼの奴は博士の葬儀とかいろいろあって手いっぱいだったからなぁ。またこっちに来るらしいから、そん時に一緒にビフレストで帰ればいいじゃん。」

 

「それで帰っても今度は「今までオーディン様をほおっておいてどういうつもりだ」とか言われて左遷されるにきまってる!どの面下げてアスガルドに帰れっていうのよ、うえぇぇぇぇぇぇん!!」

 

 ダイスケが一応のフォローを入れるが、ロスヴァイセの涙は止まらない。ちなみに今のところオーディンからは何の連絡もない。完全に忘れ去られているのだろう。

 

「ねぇ、これリストラ、リストラよね!?私、あんなにオーディン様のために頑張ってきたのに!どうせ私は仕事ができない女よ!いまだに処女よ!彼氏いない歴=年齢の喪女よぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「もう、そんなに泣かないでよ、ロスヴァイセ。一応、この学園で働けるようにはしておいたから。」

 

 リアスがやさしくロスヴァイセの肩に手を置く。

 

「ほ、本当に……?」

 

「ええ、希望は教諭ってことでいいのよね。生徒ではなくて。」

 

「それはもちろんです。私、ルゼと一緒に飛び級で大学は卒業していますから。ちゃんと教員免許も取得しています。」

 

 一応彼女は年上ではあるもののそれほどダイスケたちとは離れていない。

 

「で、でも私この国でちゃんとやって行けるかしら……。かといって(くに)には戻れないし……うぅ、せっかく安定した生活を送れそうな職に就けたのに!」

 

 相当気にしているようである。しかし、そこへリアスが文字通りの悪魔の笑みを浮かべてとある資料を見せる。

 

「うふふ、そこでこのプラン。今冥界に籍を置くとあんな特典やこんな特典が付いてくるわよ?」

 

「……え、うそ!保険金がこの保険料でこんなに!?しかもアスガルドのと違ってこっちは掛け捨てじゃない!」

 

「そうなのよ。さらにはこんなサービスも、こんなシステムもあるわよ?」

 

「こ、これは……!眷属悪魔のお給金ってこんなにいいんですか!?これでなんではぐれなんて出るの!?最低賃金がヴァルハラのヴァルキリー局とは段違い!!しかも好条件!」

 

「うわぁ、悪魔がヴァルキリーを買収してるよ……。」

 

 ダイスケが言う通り、さながらリアスはやり手の保険外交員だ。悪魔には本能的にこうして相手を堕そうとするものがあるのだろう。

 

「ちなみに私のところに来るとこんなサービスも受けられたり。」

 

「……グ、グレモリー家といえば魔王輩出の名門で、最近は特産産業も好調だとか。」

 

「そうよ、そのお仕事に将来手を出してもいいし。ウチはより良い人材を求めているの――貴女のような、ね。」

 

 そういいながらリアスは懐から紅い戦車(ルーク)の駒を取り出す。

 

「そんなわけで、冥界でひと仕事するためにも私の眷属にならない?あなたのその北欧魔術の技術、戦車(ルーク)として得ることで動ける魔術砲台要員になれると思うわ。まぁ、駒の消費が一つで済むといいのだけれど。」

 

 リアスの申し出に、ロスヴァイセは驚いた。

 リアスにとっては最後の駒。そこに今までグレモリー眷属に欠けていたテクニカル要員のウィザードが入るとなれば心強くなる。それが戦車(ルーク)ならテクニカルタイプの魔術移動砲台といういいとこどりの戦力が生まれることになる。

 

「……どこか運命的なものを感じます。私の勝手な空想ですけど、それでも冥界の病院で一度あなたたちに出会って、こうして日本に来て、そんな巡り合わせがあったのかもしれませんね。」

 

 ロスヴァイセは紅い『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を受け取った。その瞬間、彼女の背中から黒い悪魔の翼が生える。

 こうして誕生した元戦乙女の悪魔、ロスヴァイセが一同に一礼する。

 

「皆さん、悪魔にたった今転生しました元ヴァルキリーのロスヴァイセです。冥界の年金や健康保険が祖国のより非常に魅力的でグレモリーさんの財政面含め、将来の安定度が高いので悪魔になりました。どうぞ、これからよろしくお願いします!」

 

 若干、洗脳されたような顔なのはこの際おいておく。

 

「ふふふふふふふ、オーディン様、次お会いしたその時は……ふふふふふふふふふふ!!!」

 

 病みも少し入っていたのだろうか、その様子にイッセーも引く。そんなイッセーに、朱乃が中身が入ったタッパーを差し出してくる。

 

「イッセー君、あまりものだけど、よかったこれどうぞ。」

 

 中身はどうやら肉じゃがのようだった。イッセーはひとかけらひょいとつまみ、口に入れる。

 

「――うまい。こりゃ、おいしいですね。なんだろう、安心する味だ。おふくろの味というか、なんというか……。」

 

「良かった、気に入ってもらえて。あら、口の端に――」

 

 かすでも付いたか、とイッセーはそれを手でとろうとする。が、そこに朱乃の唇が迫ってきて――一瞬、イッセーの口元に朱乃の唇がふれた。

 

「な、な、な、な、な!?」

 

「うふふ、一応初めてを捧げた、ということになるのかしら。」

 

 もちろん、イッセー派派閥の女子部員立つもばっちり見ており、殺意の波動を発している。

 

「き、木場!ギャスパー!ダイスケ!助け――」

 

 しかし、名前を呼ばれた一同とマリーとエリーの姉妹も黙って部屋から退出していく。

 絶望に落ちるイッセーに、朱乃は背後からしっかりと抱きつく。

 

「イッセー、大好き!」

 

 それを聞いたリアスがついに憤怒の形相となる。

 

「もう、イッセー!朱乃!今日という今日は許さないわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ、アザゼルはバラキエルの他のグリゴリのメンバーが頼んできた土産を買う買い物のつきあいをしていた。

 デパート内のベンチでアザゼルが休んでいると、バラキエルが買い物袋を持って帰ってくる。

 

「頼まれていたのはこんなところだ。」

 

「おう、お疲れさん。」

 

 アザゼルの隣にバラキエルが心底疲れた様子で座る。こういうことは不得手なのだろう。そんなバラキエルに、アザゼルは巾着袋を手渡す。

 

「ほい。」

 

「なんだ?」

 

「良いから開けなって。」

 

 バラキエルは言われるがまま巾着袋を開ける。そこには、一つの弁当箱が入っていた。

 ここに来る途中、アザゼルが朱乃に渡されたものであった。送りあては言わなかったがこういう時、送り先は一つだ。

 

「これは――」

 

 中身は、肉じゃがだった。それを恐る恐るバラキエルは箸で口に入れる。

 

「……朱璃の、味だ。」

 

 バラキエルは無言でそれをがっつき始めた。ただ、箸を進める。涙を流しながら、ひたすら夢中で。

 

「――朱乃のこと、リアスやイッセーに任せろよ。問題はない。アイツが惚れた男は馬鹿でスケベだがいい奴だ。」

 

「……宝田君にも言われたよ。彼が――朱乃を大事に、守ってくれると信じたい。」

 

「ああ、大丈夫さ。」

 

「お、女の乳は食べないよな?」

 

「喰わねぇよ。」

 

「ああ、そうだな……。」

 

 バラキエルは安どすると再び箸を動かし始めた。それは二度と食べることができないと思っていた愛した女の手料理の味だった。

 そのバラキエルの姿を見て、アザゼルは言う。

 

「ちきしょう、おっぱいで他人を幸せにするドラゴンなんて聞いたことないぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「曹操、俺の動きもそろそろ感づかれたようだ。」

 

「いや、個人で何度も宇宙と地球を往復してたんだ、別にいいさ。それに、もうそろそろいいだろう。人材も集まってきた。では、次の段階に移ろうか。」

 

「そうだね、物はそろいつつある。頃合いさ。」

 

「さて、最初の交渉相手はどこにするか。」

 

「協力体制を外堀から崩していく――乗るかな?」

 

「乗るさ。いまどき全面戦争なんてはやらない。だから旧魔王派は潰えたんだ。まずは交渉だ。手堅くいこう、ジークフリード、ビルガメス。」

 

「了解。魔王と魔物にドラゴン、そして怪獣を退けるのは――」

 

「いつだって英雄と勇者だ。」




 ということでロキ戦の後始末なVS59でした。またヒロイン増えたよ、どうすんだこれ……。次回から修学旅行はパンデモニウム……ではなく久々の短編です。
 それとガイガンの獣具所有者、決定いたしました。たぶんまさかの人選になっていると思います。よって、アンケートはこれにて打ち切らせていただきます。活動報告をご覧になった皆様、回答していただいた萬月様、非常に参考になりました。誠にありがとうございました。……結果を見て引かないでくださいね?
 なお、感想などもお待ちしております。ただ、メンタルが非常に弱いのできついことを言われるとレディーゴー!ボルケニックアタック!になりますのでご勘弁を。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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