ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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 誰か俺をタダで京都に連れて行って。


VS64  観光ぐらいはゆっくりしたい

「ほら、ここの湯豆腐は絶品なのじゃ。」

 

 そう言いながら九重は皆に鍋から湯豆腐を掬って配る。

 天龍寺、二尊院、竹林の道と九重に案内してもらって今はおすすめの湯豆腐屋に来ている。若者が湯豆腐で満足するのか、と思いきや九重の言う通りいつも食べている豆腐とは全く違う味である。

 

「和の味だ。悪くないな。」

 

「はい、いつものお豆腐とは違って風味が新鮮でおいしいです。」

 

「ああ、こういうのいいわぁ……。」

 

 ご満悦の様子の教会トリオだ。

 外国で生まれ育った者たちが感嘆する味ではあったが、日本で生まれ育ったダイスケもこの味には感心した。

 

「……確かに店のチョイスは間違ってないな。」

 

「そうであろう、そうであろう!」

 

 だれよりも喜んだのはこの店を選んだ九重だ。生まれ育った土地の味をほかの土地の者に認めてもらうことほど地元の者にとっての誇りはないだろう。

 

「よかったですね、姫様。あら、ダイスケさん?顔の横に豆腐のかけらが。」

 

「え、どこどこ。」

 

 ダイスケは自分の頬に手をやるがわからない。

 

「ここですよ、ほら。」

 

 そう言ってヒオがダイスケの頬に手を伸ばし、頬についた豆腐のかけらを取る。そしてそのまま自分の口の中へと持っていこうとして――エリーに止められる。

 

「おい、お前今何しようとした?」

 

 普段の訛りが嘘であるかのような流暢なエリーの日本語。しかも思いっきり怒気が含まれているので横でそれを聞いていたダイスケもビビった。

 

「あら、口元の汚れを取ってあげただけですわ。」

 

「それでふつう自分の口の中に持っていくか?ん?っていうか?それは本来は私の役目なんだけど?」

 

「誰がやろうと関係ないのでは?それに、別にあなたは彼の妻というわけではないのでしょう?」

 

「将来なるの。絶対に。大体アナタは急に横から入り込もうとしてるだけでしょう。特にダーリンと接点もないのに。」

 

「接点ならありますよ。前に会ったとき「手のかかる弟みたいでかわいいな」って。言っていることもなかなかいいし、興味を持たない方がおかしいと思いますけど?」

 

「ん?なんだ、ヒオ。お前こいつに興味があるのか?取らないでくれよ、私だって興味(戦闘的な意味で)あるんだぞ。」

 

「なっ!?」

 

 まさかのヒオだけでなくマナも話に加わろうとする。それにエリーは絶句した。

 

「な、なんでアナタまで!?ぽっと出のくせに!」

 

「おいおい、ぽっと出も何もないだろう。不意打ちとはいえ私の一撃を完全に防ぐものなどそうそういない。ヒオじゃないが興味(戦闘的な意味で)が出ないのがおかしいと思うぞ。正直、チャンスがあるのなら改めてヤりたい(戦闘的な意味で)。」

 

「ぐぬぬぬ!よくもまあ、ぬけぬけと……!ダーリン、ダメだからね!こんなぽっと出の奴らを見ちゃ!」

 

「あら、それは本人の決めることでしょう。あなたが決めることではありませんよ。ん……。」

 

 にちゃり、とヒオは自分の指先のダイスケの頬についていた豆腐のかけらを舐めとる。

 

「よし、表出ろ。」

 

「ダイスケさん大変ですね。こんなに嫉妬深い女の子に付きまとわれるなんて。いっそのこと京都に引っ越しません?あなたに見合ったポストを用意しますよ?」

 

「はっ!いくらダーリンを誘惑しようとしても無駄ネ!長きにわたるアプローチの結果、ダーリンはこの前ついに私の胸を揉んできてくれたんだから!」

 

「あら、私は出会ってすぐに触られましたよ。太ももを。ねちっこく。」

 

「やめて……もうやめて……。」

 

 あのダイスケが過去の所業をばらされて赤面し、顔を手で覆っている。その事実がイッセーたちを困惑させた。 

 

「なんか大変な時に出くわしちゃったなぁ。」

 

 頭をかきながら現れるのは木場だ。

 

「おお、木場か。そういえばお前のとこも今日は嵐山を攻めるんだったか。」

 

「うん、イッセーくん。君たちの方はもう天龍寺は回ったのかな。」

 

「ああ、見事な雲龍図だった。」

 

「僕のところもこれから渡月橋を見てから午後に天龍寺に行こうとしてるんだ。楽しみだよ。」

 

「渡月橋か、俺たちもこれ食べたら行くぜ。」

 

 などと話していたら「秋の嵐山、痴話げんかは似合わないが風流なもんだぜ。」という聞きなれた声が聞こえてくる。

 

「よう、お前ら。嵐山堪能してるか?」

 

 アザゼルだった。しかも手には御猪口、テーブルの上にはすでに空いた徳利が何本も。

 

「先生もこっちに?っていうか教師が昼酒はいかんでしょう。」

 

 イッセーが注意すると、アザゼルの対面に座るロスヴァイセが「その通りです」と同意する。

 

「このひと、私が何度も注意するのにやめないんです。生徒がいる手前、こういうことはやめてほしいと再三言っているのですが……。」

 

「いいじゃねぇか、こちとら嵐山周辺の調査を終えた後だ。一仕事終えた後のアルコールぐらい許してくれや。」

 

 恐らく調査とはやはり禍の団絡みだろう。教師としての仕事の合間を縫ってやっているのだろうから確かに疲れもするだろう。

 

「だいたいよ、お前さんはもうちょっと要領よくいった方がいいぜ。そんなんだから男ができないんだぞ。」

 

「か、彼氏は関係ないでしょう!セクハラですよ!?ああ、もう、あなたが飲むくらいなら私が――」

 

 そういってロスヴァイセはアザゼルが口に運ぼうとしていた御猪口を奪い取り、自らの口に持って行って一気に呷る。見事な飲みっぷりだ。しかし……。

 

「っぷっはー。……だいたいれすね、あなたってひとはふだんからたいどがだめだめなんれすよ……。」

 

 いきなりべろんべろんだ。その泥酔具合にアザゼルも引いた。

 

「お、お前、御猪口一杯分でもう泥酔してるのか!?」

 

 驚くアザゼルを尻目にロスヴァイセは中身のある徳利をそのまま呷った。そして、絡む。

 

「あ゛ー?あたしゃべつによっちゃいないれのふよ。これでもくそじじいのおつきをしているころかさけにつきあって……あー、くそっ、いやなことおもいだしてきた。あのじじいわらしがいっしょうけんめいたくさんくろうしれさぽーろしてたってろに、やれおねえちゃんだ!さけだ!おっぱいだ!って、あほみたいにたびさきでいうんれふよ、もう、もうろくしてちほうでもはいってるんじゃねえかっつうくらいで。う゛ぁるはらじゃほかのぶしょのう゛ぁるきりーからじじいのへるぱーだのかいごう゛ぁるきりーだなんていわれつづけれ……やっすいおきゅうきんでじじいのみのまわりのせわをしてたんれふよ?いっしょうけんやってたんれふよ?そのせいれふよ!そのせいでかれしはできないし、かれしはできないし、かれしはできなんれふよぉぉおぉぉぉおおおぉぉおおお!!う゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ん゛!!!!」

 

 最悪の絡み方だ。しかも大号泣している。正直これは触らない方がいいのではないだろうか。誰もがどうしていいかわからなくなる。

 

「あーもう、わかったわかった。今日はお前の愚痴に付き合ってやるから。ここでゲロっちまいな。」

 

「ほんとうれふか!?なーんだ、あざぜるせんせいいがいといいとこあるんじゃないれふか!おねいさーん、おさけじゅっぽんついかでー!!」

 

 大喜びするロスヴァイセ。ここでアザゼルがイッセーたちに小声で言う。

 

「お前ら、さっさと食ってここは俺に任せて逃げろ。下手したらお前らに酒を飲ますやもしれん。」

 

「すいません、先生。俺も正直言って一杯飲みたい気分なんですけど……。」

 

 恥ずかしい話をエリーとヒオにばらされたダイスケである。

 

「馬鹿言ってんじゃない。ほら、とっとと行け。」

 

 一同は顔を見合わせる。確かにこのロスヴァイセを相手にするのは非常にめんどくさそうだ。

 

「……行こうか。」

 

『うん。』

 

 そういうことになった。

 早々に料理を平らげてその場を後にする。後にはただ、泥酔したロスヴァイセの叫びが響いていた。

 

「ひゃくえんしょっぷさいこうなのれすよ、ぎゃはははははははははは!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロスヴァイセちゃん、えらいことになってたな。」

 

「ああ、こりゃ彼氏は苦労するぞ。」

 

「相手があのアザゼル先生だもん。そりゃ愚痴の一つも言いたくなるわ。」

 

 ふだんのロスヴァイセからは信じられない一面をみた松田、元浜、桐生の言である。まあ、原因はアザゼルだけではないのだが。

 

「……グレモリー眷属は大変なのばかりなのか?」

 

 イッセーに尋ねる九重だ。言われてみてイッセーは過去のことを思い出す……そういえば大変なのだらけだ。

 

「うん、まあ……ね。」

 

 そう言う他ないイッセーである。心当たりが多すぎる。

 それはともかく、今は渡月橋である。店を出て数分ほど観光街を歩くと木造の古風な橋が見えてくる。

 

「おお、るろ剣。」

 

 桂川にかかる渡月橋を見たダイスケの第一声である。ちょうど秋の風景が重なり、確かにダイスケの言いたいこともわかってくる。

 

「そういえば知ってる?渡月橋って渡りきるまで振り返っちゃいけないらしいのよ。」

 

「どうしてですか、桐生さん?」

 

「それはね、アーシア。渡月橋を渡る最中に振り返ると授かった知恵がみんな返っていくかららしいのよ。そこのエロ三人組は振り返ったら終わりね。それこそ救いようのない馬鹿になっちゃうわ。」

 

「「「うるせぇよ!」」」

 

 異口同音に三馬鹿が返す。

 

「……それは嵯峨の虚空蔵法輪寺の虚空蔵菩薩へ知恵を授かりに参る十三詣り絡みの話だろう。さっきあらかじめ調べたからわかるんだぞ。」

 

「ダイスケの言う通りなのじゃ。そんな常時発動する呪いのようなものではないぞ。」

 

 ダイスケと九重の言葉だ。しかし、桐生は構わず続ける。

 

「あと、振り返ったら男女が別れるなんて言い伝えも――」

 

「私、絶対に振り返りませんから!!」

 

 アーシアがイッセーの腕に涙目になりながらしがみついて叫ぶ。

 

「ダーリン、やめよ!?この橋渡るの!」

 

 こっちはエリーがダイスケにしがみついている。

 

「いや、俺ら別れる以前に付き合ってねぇだろ。」

 

「あらぁ、言われてしまいましたねぇ。」

 

 にんまりと笑うヒオにそれをキッと睨むエリー。まだやっているらしい。

 

「それも都市伝説じゃ。特に気にせんでもよいと思うのじゃが……。」

 

 九重が呆れる。それでも向こう岸の観光地を巡るため橋は渡らなくてはならない。そのためアーシアとエリーはそれぞれの想い人にしがみつきながら(マリーはヒオといがみ合いながら)渡月橋を渡りきった。

 

「あぁ、振り向かずに済みました。」

 

「ヒオ、アンタさっきからずっと私を振り向かせようとしてたでショ。」

 

「なんのことですか?」

 

「はいはい、そこまで。さーて、次はどのあたり攻めるよ?」 

 

「そうだなぁ……。」

 

 ダイスケとイッセーはあたりを見渡しながら相談し合う。そのとき、生ぬるい空気が全身を覆った。

 

 ・

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 ・

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 ダイスケはハッとし、あたりを見渡す。すると、桐生と松田と元浜の姿が見えない。同じく離れた場所にいた木場がこちらに走ってくる。彼も異常を察したようだ。

 さらに周囲を見ればほかの観光客の姿も見えない。残された一同は周囲を警戒するも、怪しい影は見えず、足元に霧が漂うだけ。

 

「――この霧、見覚えがあります!」

 

「アーシア?」 

 

「イッセーさんこの霧、私がディドオラさんに捕まった時に、この霧を見ました。そのあと、あの結界装置につながれたんです。」

 

「じゃあこれは絶霧(ディメンション・ロスト)の――」

 

 木場が歩み寄ってきてそう言う。

 

「お前ら、無事か!?」

 

 今度は空からの声。店から文字通り飛んできたアザゼルだ。イッセーたちがいるあたりに降り立つと、翼を仕舞いながら言う。

 

「俺たち以外の存在はこの周辺からきれいさっぱりいなくなっている。俺たちだけを強制的に転移させて閉じ込めやがったとみてまず間違いないだろう。この様子だとこの空間はレーティングゲームのフィールドみたいなこの周辺をそっくりそのままトレースした空間らしいな。」

 

「何でレーティングゲームの空間の技術が……。」

 

 イッセーの疑問にアザゼルが答える。

 

「三大勢力の技術は技術交流でいくらか外に流れているからな。そっから技術を盗んでこの空間に転用したんだろう。絶霧の霧は覆ったものを別の場所に転移できるからな。……ここまでの事をノーアクションでやるっていうのが怖いぜ。」

 

 すると、九重が震えだす。

 

「どうしたのです、姫様!?」

 

「ヒオ殿……亡くなった母上の護衛が死ぬ間際に言い残しておった。気づいた時にはすでに霧に包まれていたと。」

 

 すると、複数の気配が渡月橋のほうからやってくる。その薄い霧から一人の男が前に出る。

 

「初めまして、アザゼル総督、そして赤龍帝。」

 

 挨拶をしたのは学生服を着た黒髪に青年。その服装は特異で学生服の上に漢服を羽織っている。そして手には槍。何とも不気味なオーラが感じられる。

 その青年の周囲には同じような学生服のような服装の若い男女がいる。

 悪魔やドラゴンとも違う異様なプレッシャーを与えてくる中、アザゼルが一歩前に出て訊く。

 

「お前が噂の英雄派を仕切っている奴か。」

 

「ご明察。曹操と名乗っている。三国志で有名な曹操の子孫――一応ね。」

 

 曹操ならイッセーも聞き覚えがある。そして仰天した。

 

「先生、アイツは一体……。」

 

 アザゼルは曹操から視線を離さずに皆に向けて言う。

 

「全員あの男が手にしている槍に注意しろ。最強の神滅具、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)だ。神をも貫く絶対の神器。神滅具(ロンギヌス)の代名詞になった原物。俺も見るのは久しぶりだが――よりにもよってテロリストとはな。」

 

『――ッ!?』

 

 アザゼルの言葉で動揺が広がる。特に教会三人娘の反応はすさまじかった。

 

「あれが天界のセラフの方々が恐れているという聖槍……!」

 

「私も幼いころからよく教え込まれたよ。イエスを貫いた槍、イエスの血で濡れた槍、神をも貫く絶対の槍!」

 

「あれが聖槍――」

 

 アーシアの目が虚ろになっている。まるで槍に魅了されて意識が吸い込まれていくかのようだ。そのアーシアの視線を遮るようにアザゼルが立つ。

 

「アーシア、信仰の深いお前は決してあれを見続けるな。心をもっていかれる。」

 

 すると、九重が憤怒の表情で槍を持つ曹操に叫ぶ。

 

「貴様、曹操と言ったな!なら一つ訊く!」

 

「これはこれは小さき姫君。なんでしょう?私ごときでよろしければ何なりとお答えしましょう。」

 

「……母上を攫ったのは貴様らか!」

 

「左様。」

 

「やはり……母上をどうするつもりじゃ!よもや柳星張の贄にするつもりではあるまいな!?」

 

「まさか、アレには他の使い道がある。貴方の母君には実験に参加していただく。」

 

「……何を考えておる。」

 

「スポンサーの要望を叶えるため、というのが建前かな。」

 

 それを聞いた九重は歯をむき出しにして激怒していた。目にはうっすらと涙が見える。

 悔しいのだろう。大切な母が実験などという名目で攫われ、自分ではどうしようもないという事実が。

 

「スポンサー……オーフィスの事か?それで突然こちらに姿を現したのは何の用だ。」

 

「いえ、もう隠れる必要がなくなったのでね、アザゼル総督。ことを起こす前にあいさつと共に少しばかりやりあってみようかと思っただけですよ、俺もアザゼル総督と噂の赤龍帝殿に一度お会いしたかったのでね。」

 

 その言葉を聞いたアザゼルは手に光の槍を生み出す。

 

「わかりやすくて結構。九尾の御大将は返してもらおうか。こちとら妖怪との協力提携を成功させたいんでね。」

 

 アザゼルが構えたのを見たダイスケとマリーは獣具を身にまとい、イッセーは籠手を出して禁手へのカウントダウンを始める。そしてアスカロンを抜いてゼノヴィアに渡す。

 

「ゼノヴィア!」

 

「すまん、助かる!」

 

 ゼノヴィアもアスカロンを正眼に構えた。と、ここでイッセーは気づいた。ロスヴァイセがいない。

 

「せ、先生、ロスヴァイセさんは?」

 

「あいつは店に置いてきた。こっちに転移はしている。酔いつぶれて寝ているから一応強固な結界を張っておいた。まあ、そうそう酷いことにはならんだろう。」

 

 確かに泥酔状態で今ここにいられても邪魔なだけだろう。正しい判断だ。

 しかし、こちらは臨戦態勢というのに向こうはその素振りが見えない。余裕か、それとも何か隠し玉があるのか。神器の使い手の集団である英雄派ならあり得そうだ。

 なにしろ神器には様々な能力がある。その特異な能力を急に見てもすぐさま対策を取るというのはやりづらい。なんにせよ、隙だけは見せられなかった。

 その膠着状態の中、曹操の隣に小さな男の子が並び立つ。

 

「レオナルド、対悪魔用のアンチモンスターを頼む。」

 

 小さな男の子はコクン、と頷くとあの足元から不気味な影が広がっていく。そしてその陰は周囲をほぼ飲み込み、そこから不気味な怪物たちが這い出てくる。

 

「ギュ。」

 

「ギャッ!」

 

「ゴギャッ!」

 

 耳障りな声を発しながら這い出てくるそれは二足で立つ異形のモンスター。黒い肌で手や足には爪があり、全身が筋肉でおおわれている。

 それらはあの小さな男の子の能力で『生み出された』ものだろう。

 

「――魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)か。」

 

 アザゼルの言葉に、曹操が笑む。

 

「ご名答。そう、この子が持つ神器は最悪級の神滅具。俺の聖槍とは別ベクトルで危険視される最悪の神滅具だ。」

 

 ここに絶霧の使い手がいるとしたらこれで三人。十三しかない神滅具が三つも敵方にわたっているのだ。

 

「先生、あの神器は一体?」

 

 カウントを終えて鎧を身にまとったイッセーがアザゼルに尋ねる。

 

「あの神器は魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)。いかなる魔獣も作り出すことができる。それこそゴジラのような口から火を噴く身長百メートル以上の怪物だって生み出せる。そんな怪物をいくつも、自分の想像の通りに生み出すことができる。」

 

「た、確かに最悪だ……でも、本体を狙えば。」

 

「ああ、それをカバーする魔獣も生み出せるだろうが、それがないことを鑑みるにまだまだ成長途中といったところだろうな。じゃなきゃとっくに各勢力を滅ぼせるアンチモンスターを世界各地に送っているはずだ。」

 

「おっと、いきなりレオナルドを把握されてしまった感があるな。だが――」

 

 曹操が手を軒並ぶ一軒の店に向ける。すると、怪物の一体が口から一条の光を放って完全破壊させてしまった。

 

「こいつは――まさか!」

 

「そう、アザゼル総督。これは対悪魔用アンチモンスター。口から《光》の攻撃を撃てる。データ収集の甲斐があったというものだ。」

 

「そうか、貴様!各陣営にちょくちょく襲撃を仕掛けたのはこれを作るためのデータ収集か!」

 

「半分正解かな。送り込んだ神器所有者と一緒に黒ずくめの兵隊がいただろう。」

 

 確かにいた。そのことは実際に対峙したイッセーやダイスケもわかっている。

 

「あれはこの子が作ったデータ収集用の怪物。あれを通じて様々の種族の戦闘データをインプットさせた。あえて攻撃を受け続けてね。禁手を増やすのと並行してやったが結果はごらんのとおり。」

 

 自慢するする曹操を憎々しげに睨むアザゼル。しかし、一転して笑みを浮かべる。

 

「だが曹操、神殺しはまだなんだろう?」

 

「……。」

 

 曹操は黙したままで反論はしなかった。

 

「やれるならとっくにやってるもんなぁ。こうやって俺たちに差し向けてくる分には。各陣営への同時攻撃ができる連中にやらない道理がない。だがやらないってことは――これがわかっただけでも収穫はでかいぜ。」

 

 そこまで指摘された曹操だが、ただ穂先をアザゼルに向ける。

 

「神はこの槍で屠るさ。――はじめようか。」




 女の争い怖い。自分で書いててドン引きしました。
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!

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