ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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 閲覧数見てみたらごっそり減ってました。
 あれかな、前のウソ予告がよくなかったのかな。素直に謝ります。
 あんなもの上げてすいませんでした。


VS65  逆鱗

「神はこの槍で屠るさ。――はじめようか。」

 

 その曹操の言葉が引き金となって戦いが始まった。

 

『ゴガァァァァアアアアアア!!』

 

 アンチモンスターの群れが大挙して迫る。その群れをダイスケとマナがそれぞれ槌と戦斧で薙ぎ払う。

 

「そんな武器もあったか。これは面白い。」

 

「俺を見てる場合かよ。」

 

 そういって二人は再び武器を振るう。再び衝撃波と爆発がアンチモンスターたちを屠る。

 

「これは……レオナルド、アンチモンスターの生産スピードを増速だ!」

 

 曹操の指示にコクン、と少年が頷く。影はさらに広がり、さらなるアンチモンスターたちが這い出てくる。

 

「やらせると思う!?」

 

 そこへエリーが躍り出て獣具の巨大な腕で影から這い出てきたばかりのアンチモンスターたちを握りつぶしていく。

 だが、別の場所から這い出てきたアンチモンスターがイッセーたちに狙いを定める。そして、一斉に口を開け、光の砲撃を放つ。

 

「攻撃方法がわかっていてそのままにしているとでも?」

 

 ヒオが両手に扇を広げ、服装がアレンジされた巫女装束に代わる。そして、一度扇を振る。

 すると、扇から金色の粒子が放たれ、一同を覆うフィールドになる。そのフィールドに光の砲撃が届いた瞬間、光は幾度も屈折してアンチモンスターのほうに向きを変え、そのまま直撃する。

 

「悪魔の皆さん、なるべくフィールドの中へ!これなら光の直撃はありません!」

 

「いや、我々も前に出て戦う!」

 

「ゼノヴィアの言う通り!」

 

 金色の粒子のフィールドから飛び出したゼノヴィアと木場。

 

「光はこうして受ければ何の問題もない。」

 

 木場が手にするのは魔剣創造で生み出した光喰剣(ホーリー・イーター)。これならば光の一撃も打ち消すことができる。

 

「いや、受ける前に倒せば済む。」

 

 一方、ゼノヴィアはイッセーから借りたアスカロンからオーラを噴出させて一気に薙ぎ払う。

 

「曹操、お前は俺がやらせてもらう!」

 

 アザゼルはファーブニルを封印した宝玉を取り出し、人工神器の黄金の鎧を展開する。そして十二枚の黒い翼を広げて曹操に突貫していく。

 

「聖書に知るされし堕天使の長が御指名とは!これは光栄の極み!」

 

 曹操はそう言いながら桂川の岸に降り立って槍の先端を開く。するとそこから黄金に光り輝くオーラが刃を作りあげた。それだけで周囲の空気が震え、悪魔であるイッセーたちは圧される。

 しかし、だからと言って圧倒されたままでいいわけがない。イッセーは自身でも足りないと思っている頭をフル回転させる。何しろ将来は(キング)を目指しているのだ。こういう時に何かできないといけない。

 そして、イッセーは思いつく。

 

「ゼノヴィア、お前は前に出るよりもここでヒオさんと一緒にアーシアと九重を守ってくれ!アンチモンスターはダイスケたちに任せていい!聖なるオーラを飛ばす攻撃をして、近づけるな!!」

 

「そういうことなら!」

 

 ゼノヴィアは素早く後退し、鱗粉のフィールド内に入る。

 

「ヒオさん、内側からオーラや波動を飛ばすことはできますか?」

 

「ええ、内側からなら大丈夫です。そのかわり外からの攻撃は完ぺきに防ぎます。」

 

「わかりました。アーシアは回復の波動を飛ばすのに専念!それから俺は僧侶(ビショップ)昇格(プロモーション)するから承認を頼む!九重はヒオさんの後ろから離れるなよ!」

 

「はい!」

 

「わ、わかったのじゃ!」

 

 二人が指示通りにしたのを確認し、イッセーはフィールドから出る。

 

「イッセーさん、承認します!」

 

 そういってアーシアが取り出したのはグレモリーの紋章が記されたカード。これを行使することにより王なしでも所持する者が代理で兵士(ポーン)の昇格を認めることができる。それをリアスからアーシアは預かっているのだ。

 

「よし、プロモーション!」

 

 イッセーが僧侶を選択したのは訳がある。自分が戦場の中衛に立って前衛の援護と同時に戦況を見て支持を飛ばすためだ。そのためには魔力に優れる僧侶がベストだ。

 

「ドラゴンショット、乱れ打ちぃぃぃぃぃ!!!」

 

 そうしてイッセーは木場やダイスケたちが狙いきれないアンチモンスターたちを吹き飛ばしていく。

 

「木場!前衛のみんなと俺にその魔剣を!」

 

「――っ!わかったよ!」

 

 そう言いて木場は人数分の刃のない柄を生み出して放り投げる。

 

「その剣は柄のみ!使うときは魔力を流して!」

 

「……俺使えねぇじゃん。」

 

「私も要らん。自称ダイスケの女、私たちの分をつかえ。」

 

「自称じゃないモン!!」

 

 そう言いながらもエリーはダイスケとマナから投げ渡された光喰剣を手にする。そして自分の両手と獣具の両手に光喰剣を持ち三刀流になってアンチモンスターに向かう。

 一方、光喰剣を手にしたイッセーは思案する。

 

「ドライグ、これアスカロンの代わりに差し込んで使えないか?」

 

『無理をしたら命を削りそうだが、この場かぎりなら問題はないだろう。』

 

「了解!」 

 

 即座にアスカロンの抜けた穴に光喰剣を差し込む。すると、籠手から闇の盾が生まれた。

 

「イリナ!天使のお前は光は弱点じゃないよな?ならゼノヴィアの代わりに前衛に出てくれ!」

 

「弱点じゃないだけで当たれば普通に痛いんだけど……でもやる!ミカエル様の(エース)だもん!」

 

 そう言ってイリナは天使の羽を羽ばたかせて上空を回って撹乱し、できた隙に対して攻撃を加える。

 これで大体の陣形は完成した。だが、それよりも不気味なのは英雄派の静けさだ。曹操は現在進行形でアザゼルと戦っているが、ほかのメンバーに動きがない。

 アンチモンスターがダイスケたちに無双系ゲームのように吹き飛ばされていっても動く気配がないのだ。

 と、思ったら中衛に一人いるイッセーを狙って制服を着た少女が三人現れる。手には剣や槍と武装し、イッセーに対し敵意を向けている。

 

「女の敵の赤龍帝は私たちが!」

 

「――っ、やめておけ!女じゃ勝てない!」

 

 白髪の優男がそう言うが聞かずに少女三人はイッセーに向かう。

 

「そう、女じゃ俺には勝てない!くらえ、乳語翻――(パイリンガ――)

 

 しかし、イッセーの乳語翻訳が発動することはなかった。アンチモンスターをマナに任せたダイスケが駆け付け、一人を裏拳で地面にたたきつけ、また一人を掴んで桂川に放り投げ、そして一人を蹴り飛ばして近くの家屋にぶつけて倒壊させた。

 

「あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁ!なんで邪魔するんだよ!乳語翻訳(パイリンガル)からの洋服崩壊(ドレスブレイク)のコンボを決めたかったのに!なんで獣具の使い手はみんな俺の邪魔するんだよ!?」

 

「え、だって普通にやった方がノックアウトできるじゃん。服破けてもなお襲い掛かってく危険があるんだし。」

 

「眼福が欲しかったんだよ、俺は!」

 

「いつもリアス先輩の見てるんだろ、それでいいじゃん。」

 

「別腹なの!たまのデザートも食べたいの!」

 

 戦いの最中にコントを繰り広げる二人。

 すると、先ほどの優男は他の英雄派の面々に向けて叫ぶ。

 

「みんな気をつけろ。あの男は歴代で最も予測不能な赤龍帝。最も力は無いが最もその力を理解しようとしている男。そして何より女は不利。決して近づかず、警戒を忘れないように。侮るな。」

 

「……敵にそんなこと言われるなんてな。」

 

 イッセーはその優男の言葉にこそばゆいものを感じてしまう。何せ今まで対峙してきた敵は軒並みイッセーをバカにしていた。

 

「そうかな?君は君が思っている以上に危険視されるに値するものだと認識しているんだけどね。さて、なら僕もやるかな。」

 

 優男が一歩前に出る。そして腰に携えていたさやから剣を一振り抜き放つ。

 

「はじめまして、グレモリー眷属の諸君。僕は英雄シグルドの末裔、ジークフリードのジークだ。」

 

 その男、ジークの自己紹介を聞いたゼノヴィアとイリナは顔を見合わせる。

 

「……どこかで見た顔だと思ったが、まさかそうなのか?」

 

「……みたいね。腰の魔剣の数からしてそうよ。」

 

「知っているのか、二人とも?」

 

 イッセーの問いに、ゼノヴィアとイリナは首肯する。

 

「あの男は元同業。カトリック、プロテスタント、正教会。それらを含めてトップクラスの戦士だ。その異名は『魔帝(カオスエッジ)ジーク』。フリードと同じ機関の出身らしい。あそこの戦士は皆白髪だ。何らかの実験の副作用らしいが……。」

 

「ジークさん、あなた教会を――天界を裏切ったの!?」

 

「そうなるかな。でも別に僕が抜けたってまだ天界には最強の戦士がいる。御使い(ブレイブ・セイント)のジョーカー候補のあの男が。さあ、剣士同士やりあおうじゃないか。デュランダルのゼノヴィア、転生天使の(エース)紫藤イリナ、そして聖魔剣の木場祐斗。」

 

 三人にまとめて宣戦布告をしたジークフリードは手にした剣にオーラを流す。それはあまりにも禍々しいオーラ。剣には疎いイッセーですらそれが魔剣の類、それも高位の魔剣であることがわかる。

 

「仕掛ける!」

 

 最初に動いたのは木場だった。騎士(ナイト)の超スピードで聖魔剣を振って切り込む。が、その一撃はたやすく受け止められる。

 

「これは魔帝剣グラム。この最強の魔剣なら聖魔剣もこの通り。」

 

 グラム。それは北欧神話に登場する剣のひとつ。その名は古ノルド語で怒りを意味する英雄シグルドが用いた剣だ。これにより、シグルドはファーブニルを倒している。

 鍔競り合う両者を見てイッセーは驚く。何しろ木場とこのように鍔競り合う者など見るのは久しぶりだ。両者は一旦飛びのき、再び剣をぶつけ合い火花を散らす。

 その剣戟の技は互角――いや、徐々に木場が押されている。それは厳しいものになった木場の表情からも見て取れる。本来人間には捉えられない筈のスピードの木場の動きが捉えられている。

 いや、スピードだけではない。フェイントをいくつか加えた剣戟もすべて捉えられている。決して騙されない。逆にジークフリードは最小限の動きで攻撃をいなし、逆に攻撃を加えていく。

 

「――くっ!」

 

 ついに木場も避けるだけで精いっぱいになり、カウンターすら入れられなくなるほど追いつめられていく。

 

「木場!」

 

 そこへゼノヴィアが割って入る。

 

「悔しいかもしれないが、お前ひとりでは無理だ! 加勢する!」

 

「――すまない!」

 

 剣士としてのこだわりを捨て、木場はゼノヴィアに感謝する。そして、作った聖剣を一振りゼノヴィアに渡す。

 合計三振りの剣戟でジークフリードを追い立てるが、それもジークフリードは意に介さずに受けていく。そして、木場とゼノヴィアは息を合わせる。

 ともに左右に分かれ、ゼノヴィアは上空から、木場は滑空させるように下から剣を振りあげての同時攻撃。しかし、ジークフリードはもう一振りの魔剣を用い、二刀流で二人の同時攻撃を受け止める。

 

「バルムング。これもシグルド絡みの魔剣だ。」

 

 バルムング。ニーベルンゲンの歌に登場する剣で剣身は幅広で、黄金の柄には青い宝玉が埋め込まれ、鞘は金色の打紐で巻き上げられていたという魔剣だ。

 しかし、これで両手は塞がった。

 

「せりゃぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 

 イリナが突貫し、横一文字に背後から斬りかかる。剣士としては恥ずべき行為であろう。しかし、この男相手では剣士の矜持もプライドもかなぐり捨てなければならないとイリナは覚悟したのだ。

 しかし、その一撃も受け止められる。

 

「ノートゥング。これもシグルド絡み。」

 

 ニーベルングの指輪にて、「川の中で流れにのせた毛の束が剣にふれるとまっぷたつになる切れ味」と表現された魔剣。それがノートゥングである。

 しかし、これは本来ありえない光景だ。ジークフリードの両手はすでに木場とゼノヴィアによって塞がれていた。それがどうやって三振り目の魔剣を使っているのか。

 

「ああ、これかい? 龍の手(トゥワイス・クリティカル)だよ。本来は手につくんだけど僕のは亜種でね。背中から腕が生えるんだ。もちろんまだ禁手は使っていないよ? それに奥の手はまだあるし。」

 

 龍の手(トゥワイス・クリティカル)ならイッセーも聞き覚えがあった。イッセーの赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の下位互換である。しかし、このような使い方ならばもはや下位互換とは呼べないだろう。

 いずれにしろこの男は素の状態で木場とゼノヴィアをいなし、それでいて神器を使っても禁手を用いずにイリナを含めた三人と渡り合ったのだ。しかも、まだそれぞれの魔剣の特性を使ってはいない。

 三人が攻めあぐねていたその時、イッセーとダイスケの前にアザゼルが降り立つ。その姿はボロボロだ。鎧はあちこち削り取られ、堕天使の翼も傷ついている。

 

「なぁに、心配するな。まだ小競り合いだよ。」

 

 しかし、一方の曹操は服がところどころ破れている程度。どちらが圧しているかは明白であった。

 

「総督よ、選手交代だ!」

 

 アンチモンスターを相手していたマナが曹操に襲い掛かる。その一撃を曹操は受け止めるが、何メートルも後退させられる。

 

「情けないな、ダイスケは一歩も引くことなく受け止めきったぞ。」

 

「くっ……一緒にしないでくれるかな。これでも弱っちいただの人間なんだぜ。」

 

「それでも受け止めたことは誉めてやろう!」

 

「そりゃどうも!」

 

 マナの斧の一撃一撃を曹操は聖槍でいなしていく。ともに本気は出していないだろうが、それでもその一撃の衝撃波だけで周囲のアンチモンスターが吹き飛ばされていく。

 だがアンチモンスターが吹き飛んでいるのはそれだけではない。

 

「光力回路切断、収束システムを書き換えてやれば……。」

 

 エリーが捕まえたアンチモンスターを魔術でいじっている。そして、それを群れの中に投げ飛ばした。すると光の大爆発が起きる。暴発した光は多くのアンチモンスターを薙ぎ払う。

 さらにそこにダイスケの荷電粒子ビームが走る。一閃された青い光の筋は町ごとアンチモンスターを薙ぎ払う。そのせいで嵐山周辺の景色は瓦礫の海と化している。

 

「加勢、行くぜ。」

 

 ダイスケは電磁加速でイッセーのそばからマナの隣に移動し、曹操を相手取る。豪炎鎚をふりかざし、一撃を与える。曹操は受け止めるが、爆炎が曹操の顔を襲う。それをバックステップで避けるが、こんどはマナとダイスケは左右から追撃する。

 

「「おおおおおおおお!!」」

 

 左右からの攻撃を、曹操は槍の刃先で受け止めた。

 

「……むん!」

 

 すると曹操はオーラを槍から放ち、ダイスケとマナを吹き飛ばす。

 

「おっと。」

 

 マナは空中で姿勢を立て直すと足元のアンチモンスターを蹴散らしてから着地。一方のダイスケは再びイッセーのそばに立って体勢を立て直す。

 その光景を見た曹操は首を鳴らして言う。

 

「いい集団だ。これがグレモリーの眷属とその仲間か。もう少し楽に戦えると思ったんだがなかなかどうして。俺の理論が正しければこの馬鹿げた力を有するグレモリー眷属が出来上がったのは兵藤一誠、君の力だ。元の身体能力と魔力は無いんだろうが、ドラゴンが持つ他者を引き付ける力は一級品だ。歴代でもトップだろう。ほら、ドラゴンは力を集めるっていうだろう?君良くも悪くもその辺が輝いている。連続する名うてとの遭遇に各龍王との邂逅、多くに支持される『おっぱいドラゴン』に自覚はなしだが、怪獣王とも親友になった。そして王がいない現状で誰よりも冷静に対処していた。まだ稚拙で穴だらけの采配だが……手慣れてきたらと思うと怖くなる。」

 

「――っ。」

 

 今までイッセーはそのようなことは考えていなかった。すべては幸運、不運を含めた巡り合わせ。そこに何の因果関係もないと思っていた。

 

「気にすんな。敵の言う戯言だ。」

 

 ダイスケはそう言う。しかし、曹操に言われてそれを自覚してしまっている自分がいるのも事実だ。

 そう逡巡するイッセーに、曹操は槍の切っ先を突き付ける。

 

「だから俺たちは旧魔王派のように油断はしない。将来君は歴代で最も危険な赤龍帝になるだろう。眷属も、その周りにいる者たちも。今のうちに摘むか、データを取っておきたいものだ。まあ、怪獣王のほうは今日中に決着がつくと思うがね。」

 

 恐らくこの英雄派はもっとも戦いづらい相手だろう。今までの敵は常にこちらを見下し、油断したところを逆転してきた。

 しかし、こちらを侮らずに研究し研鑽する相手は即座にたたきつぶさねば後に繋げてくる。しかも油断はないからそこに付け込めずに即座に潰すことはできない。だからこそ厄介なのだ。

 そんな曹操にアザゼルは尋ねる。

 

「一つ訊きたい。お前たち英雄派の目的はなんだ?」

 

 その問いに曹操は目を細めて答える。

 

「総督殿、俺たちの目的はシンプルだ。『人間』としてどこまでやれるか知りたい。そこに挑戦したいんだ。それに悪魔、ドラゴン、堕天使に怪獣。その他諸々の超常の存在を倒すのは常に人間だった――いや、人間でなくてはならない。」

 

「英雄にでもなるつもりか?平穏を守ろうとする者たちを害してまで?」

 

「よわっちい人間のささやかな挑戦さ。この蒼天の下、人間のままどこまでやれるのかやってみたくなっただけさ。」

 

 曹操は天に指をまっすぐに突き立てて言う。その曹操の答えにアザゼルは嘆息しながらイッセーとダイスケに言う。

 

「……お前ら、油断するなよ。この男は旧魔王派なんて目じゃないほどの強敵だ。お前たちを知ろうとする者はこれから先全て強敵だと思え。特にこいつはその中でヴァーリと同じくらい危険だ。」

 

 そう忠告するアザゼルを加えて一同は再び身構える。すると、英雄派のメンバーたちも身構え始めた。今度はアンチモンスターだけでなく自分たちも戦うつもりらしい。

 両者が対峙し、一触即発の空気が流れる。そんなとき、両者の間に魔方陣が展開する。

 

「――これは。」

 

 見覚えがあるのか、アザゼルが呟く。するとその魔方陣から光が溢れ一人の少女が現れる。背格好は中学生ほど、しかし、よく見る魔女がかぶるような帽子にマントをしてる。

 その少女がイッセーたちに体を向けると、ぺこり、と頭を下げて笑顔であいさつする。

 

「はじめまして。私はルフェイ・ペンドラゴン。アーサーの妹です。ヴァーリチームに所属する魔法使いですので、以後お見知りおきを。」

 

 突然のヴァーリチームの来訪にイッセーたちも英雄派も驚く。その中心にいるルフェイはトコトコとイッセーのもとに近づき、目を爛々と輝かせている。

 

「あ、あの、突然なのですが、私『乳龍帝おっぱいドラゴン』のファンなのです!握手してください!」

 

「え?……えっと、ありがと、う?」

 

「やったー!」

 

 緊迫した戦場の中、間の抜けた空気がその場を支配する。

 

「そうだよな、みんなイッセーのファンだよな。身から出た錆とはいえどうせ俺にファンなんてつかないんだ……。」

 

「そんなことないです、宝田さん!最近は暗黒怪獣王ゴジラダイスケにもスポットライトが当たって人気出てきてるんですよ!どうして暗黒怪獣王が乳龍帝の敵になったのかわかるあのエピソード、私大好きなんです!」 

 

「そうなの?ひょっとしてテコ入れされた?」

 

「はい、テレビ業界のことは詳しくないですけどそうみたいです。」

 

 変な話で盛り上がるルフェイを見て相手方の英雄派は困惑している。一応は同じ禍の団の構成員。手を出していいものかどうか迷っているようだった。

 そんななか、曹操がルフェイに尋ねる。

 

「ヴァーリの使いかな?で、君の要件は?」

 

「あ、そうでしたそうでした!ヴァーリ様からの伝言をお伝えいたします。『邪魔だけはするなと言ったはずだ』だそうです♪――うちのチームに監視なんてよこした罰ですよ~。」

 

 ルフェイの返答のすぐ後、それに呼応するかのように地響きがなる。そして、地面が揺れる。あまりの揺れの強さにアーシアと九重が尻餅をついてしまうほどだ。

 

『ゴォォォォォォオオオオオオオオ!!』

 

 地面が割れ、野太い雄叫びと共に巨大な何かがそびえたつ。それは、身長十メートル以上あるかと思われる巨大なゴーレムだった。

 

「こいつはゴグマゴグか!」

 

「はい、ウチのパワーキャラでゴグマゴグのゴッくんです♪」

 

「そんなかわいい名前つけられても……って、あれなんなんですか、先生!?」

 

 イッセーの問いにアザゼルが答える。

 

「俺も動く原物を見るのは初めてだが、あれは古の神が量産したという超古代兵器。次元の狭間に投棄されたって話だったが……そうか、この前ヴァーリが次元の狭間をうろついていたっていうのはこいつを見つけるためか!」 

 

「はい、以前オーフィス様が動きそうなのを感知されたらしいので改めて探索していたんです。さあ、ゴッくん!不可侵協定違反の罰に英雄派の皆さんを懲らしめちゃって!」

 

『ゴォォォォォォオオオオオオオオ!!』

 

 ルフェイの指示に、ゴグマゴグはその巨大な拳を英雄派に向けて振り下ろす。その緩慢なスピードのせいで英雄派の構成員は軒並み桂川の向こう岸に退避した。だが、その拳の一撃の衝撃波で多数のアンチモンスターが消滅する。

 

「ハハハ!ヴァーリはお冠か!ならば……伸びよ!」

 

 曹操はそう言いながら槍を構える。すると槍が伸び、ゴグマゴグの肩にあたる。そのたった一撃でゴグマゴグは転倒してしまった。しかもその衝撃で渡月橋が破壊されてしまう。

 こうなったら川を挟んでの砲撃戦か、向こう岸にたどり着く方法を考えなければならない。その一手をどうするかとイッセーが考えていた時だった。

 その視界に向こう岸をゆらりゆらりとおぼつかない足取りで英雄派たちに向けて歩く者がいる。ロスヴァイセだ。

 

「……う゛ぃー、ひとがきぶんよくねてるところにあんたらどっかんばっかんうるさいんれすよぉ!」

 

 酔っぱらいの登場に英雄派の面々も魔の抜けた表情になるが、それがグレモリー眷属の一員であることに気付くとすぐさま戦闘態勢に入る。

 

「お?お?なんれすか?やるんれすか?いいれすよぉ、もとおーでぃんのくそじじいのごえいう゛ぁるきりーのちから、みぃせてやろうじゃないれすかぁ!!」

 

 すると、ロスヴァイセは今まで見せたこともないような数の攻撃用魔法の魔方陣を文字通り無数に展開する。

 

「ぜんぞくせい、ぜんせいれい、ぜんしんれいをもちいたわたしのほくおうしきふるばーすとまほうをくらえぇぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!!!!!」

 

 すべての魔方陣から信じられない数の光の束が英雄派に向けて放たれる。まるでスコールのようだ。何せ余波で周囲の建物や建築物が軒並み破壊されていっている。とんでもない破壊力だ。

 

「――チッ、ジャンヌ!ヘラクレス!」

 

 曹操の言葉に、髪をアップにした女性とガタイのいい大男が目に出る。

 

「ええ!行くわよ、ヘラクレス!」

 

「おうよ!」

 

 すると、女性は背中から翼竜のような黒い羽を広げ、大男は腕をカマキリの腕のような黒い腕に変えて、その先端を地面に叩き付ける。

 その衝撃波によって英雄派に向けられた魔法砲撃がかき消された。

 

「んあ?なんだぁ?まあいいや、もういっちょうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」

 

 酔っぱらったロスヴァイセは再び幾条もの魔法の光を放つ。

 しかし、こんどは突如所現れた霧によってすべての魔法が呑み込まれる。制服の上にローブを着こんだメガネの青年がこれをやっているらしい。つまり、このメガネの青年が絶霧(ディメンション・ロスト)の所有者ということなのだろう。

 だが、問題はそれだけではない。その絶霧の使い手は後ろ手に縛った駒王学園の女生徒を伴っている――榛名だ。

 

「てめぇ!そいつになにをしたぁぁぁぁぁ!!!」

 

 鎧の兜を解除してダイスケは叫ぶ。

 

「河内さん!?」

 

「な、なんで!?」

 

「ハルナ!?」

 

「あれ、なんで私こんなところに。それに、あの黒い鎧の人は……ダイスケくん?それにこの人たちは――」

 

 状況が呑み込めない榛名は困惑する。だが、霧が英雄派のみならず榛名をも包んでいく。

 

「行かせるかよ!」

 

 そういうが早いかダイスケは電磁気化で滑走し、一気に榛名に迫る。しかし、それを許さないのが曹操だ。

 

「――伸びよ。」

 

 伸びた槍がダイスケの足に突き刺さる。治る傷だが歩くのは困難だ。

 

「少々乱入が過ぎたが――祭りに始まりには上々か。アザゼル総督!」

 

 曹操はイッセーたち、そしてダイスケたちに向けて楽しそうに宣言した。

 

「我々は今夜この京都という特異な力場と九尾の御大将、そして柳星張を使い、二条城で一つ大きな実験をする!彼女は特別来賓だ!ぜひとも阻止するために我らの祭りに参加してくれ!」

 

 曹操の言葉とともに、霧が濃くなっていく。そして胸や顔にまで到達し、ついに視界がすべて真っ白になっていく。

 

「お前ら。空間が元に戻るぞ!武装を解除するんだ!」

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 一拍開け、霧が晴れたそこは観光客であふれた渡月橋周辺だった。多くの人々が何事もなかったかのように行き来している。

 その証拠に渡月橋は壊れていない。ゴグマゴクとルフェイも消えていた。

 

「おい、イッセーどうした難しい顔して。」

 

「……いや、なんでもないよ。」

 

 つい先ほどまで戦闘していたのだ。急に気持ちを切り替えようとしても難しい。するとガンッ、と電柱を叩く音がする。アザゼルだ。

 

「……ふざけたことを言いやがって。京都で実験だぁ?おまけにウチの一般人の生徒まで拉致してくれやがって……舐めるなよ、若造がッ!」

 

 アザゼルが珍しく怒りをあらわにしている。一方で九重はその小さな体を震わせる。

 

「……母上。母上は何もしていないのに……どうして……。」

 

 そしてもう一人、怒りに震える者がいる。ダイスケだ。

 

「殺してやる……殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる……ッ!」

 

「……ダーリン。」

 

「ダイスケくん……。」

 

 その瞳はすでに殺意にあふれていた。




 ということで身内を拉致られてブチ切れなVS65でした。
 ひょっとしたら今後週一ペースで投稿できなくなくなるかもしれません。理由は純粋に今後の展開を考えるのに時間がかかるためです。リアルで大変なことになったとかではありませんのでご安心を。閲覧数がごっそり減ったからとかでもないですから。
  なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!

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