ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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 神器の名前とか禁手の名称考えるのって本当に脳汁出ますよね。


VS67  京都決戦~始まり~

 ホテルを出て京都駅のバス停に向かう。ここからバスで二条城まで向かう予定だ。

 距離的には四km弱、徒歩では五十分近くかかるが、バスでなら二十分強で到着する。バスが襲撃される危険性はあったが、渡月橋で一般人を巻き込まなかった点から考えるにそれはないと判断した。

 可能性があるとしたら絶霧(ディメンション・ロスト)による強制転移だが、こればかりは対処のしようがない。あるものだと覚悟していく。

 

「うっぷ……。」

 

 バスを待つ間、ロスヴァイセがひたすら吐き気と戦っていた。これからテロリストと戦わなければならないというのに別のものと戦っているのだ。

 帰ったら絶対に飲ませないようにしよう。特にMMSのジェイと会わせてはいけない。イッセーがそう思った時、イッセーの背中に何かが飛び乗る。

 

「赤龍帝!私も行くぞ!」

 

 それは九重であった。本来は裏京都で待機しているはずである。

 

「おい、なんでここに?」

 

 イッセーの肩に肩車の格好で座る九重はその頭をぺちぺちと叩きながら言う。

 

「私も母上を救う!」

 

「は!?おいおい、危ないから待機しているようにこっちのセラフォルーさまやアザゼル先生に言われただろう!」

 

「言われた!じゃが!母上は私が……私が救いたいのじゃ!頼む!私も連れて行ってくれ!お願いじゃ!」

 

 イッセーの肩に乗りながら、九重は真剣な顔で頼み込む。

 

「……おい、イッセー。まさか連れて行くっていうんじゃないだろうな。」

 

「……ダイスケ、責任は俺がとる。ひょっとしたら、この子の存在が狐の御大将を救う切っ掛けになるかもしれない。」

 

「冗談じゃねぇ。余計な荷物が一つ増えるだけだっていうのはお前にもわかるだろう。護る対象が多ければ多いほど不利になるんだぞ。降りろ。先生に連絡して妖怪の誰かに連れて帰ってもらう。」

 

「ま、待ってくれ!お主らの邪魔はせん!誓う!だからどうか――」

 

「誓う誓わないの問題じゃない。渡月橋の時とは違う。こっからは本気の殺し合いになる。戦えない奴が一人でもいたら邪魔なんだよ。それにな、イッセー。立場も何もない唯の下級悪魔がどうやって責任を取るっていうんだ。結局は部長に責任が行くんだぞ。」

 

 そういうダイスケに、ヒオとマナが同調する。

 

「姫様、ここからは本当に危険です。どうかお引き取りください。」

 

「姫様、申し訳ないが伏見で力を貸させていただいた時とは状況が違う。とても姫御子まではお守りできん。」

 

「わかっておる、わかっておるのじゃ!それでも――」

 

 九重が言おうとしたその時だった。ぬるり、とした湿気が足元を覆う。足元にあった霧がもくもくと立ち上がる。

 この感覚は昼間一度味わった。それに気付いたイッセーは叫ぶ。

 

「絶霧だ!転移される!」

 

 九重が現れて口論となったのが痛かった。反応するだけの時間が無くなってしまった。

 

「くそっ、イッセー!こうなったら絶対に守りきれよ!」

 

「――っ、ああ!」

 

 そして、霧に包まれる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 霧が晴れたその時、ダイスケは寺の境内らしき場所にいた。周りを見渡せばガメラがいる。

 

「おい、無事か?」

 

「我は何ともない。この体も無事だ。そっちはどうだ。」

 

「特に異常なし。何かされたってことはないらしいな。」

 

「だがこの場に流れる気がおかしい。どうやら都を模した異空間に飛ばされたようだ。」

 

「絶霧か……。末恐ろしいな。」

 

――ダ……ケくん、ダイ……ケくん、聞こえ……か?

 

 突然、頭の中にヒオの声が響いてくる

 

「――テレパシーか?」

 

――そうです、あなたにテレパシー能力があるという報告を聞いていたので試してみました。私たちも使えますので。

 

 同調できたのか先ほどよりも鮮明に聞こえる。

 

「今どこにいます?俺たちは……境内の様子から東本願寺みたいですけど。」

 

――私とマナは鞍馬山まで飛ばされました。

 

「鞍馬山!?二十キロ弱は離れてませんか!?」

 

――安心しろ。超音速で飛べるから心配はない。F-22だって追い越せるぞ。

 

――マナ、あなたやっぱり反省していないみたいね。菓子折りもってくだけじゃ足らないわ。反省文を書きなさい!

 

――おい、待ってくれ。反省文はないだろう。

 

「アンタら悪いけど俺の脳内で喧嘩おっぱじめないでくれるか。」

 

――っ、ごめんなさい。今襲撃を受けました。

 

――この制服、英雄派だな。

 

「英雄派!?大丈夫ですか!?」

 

――禁手に至った者もいるみたいですけど、この程度なら一蹴できます。

 

――先にこいつらを片付ける。私たちは置いておいて二条城に迎え。後で追いつく。

 

「――わかりました。ガメラ、状況は聞いていたか?」

 

「ああ、おおよそわかった。二条城に向かおう。」

 

 二人は東本願寺を出ようとする。ただ、襲撃される可能性もあるためダイスケは獣具を展開させた。

 しかし、そこに例の制服を着た英雄派のメンバーが立ちふさがる。

 

「簡単に行かせてはくれない、か。」

 

「その通りだ!怪獣王、ここで討ち取らせてもらう!」

 

 その言葉で英雄派の面々は戦闘態勢に入る。

 

「その手、龍の手(トゥワイス・クリティカル)か。それに魔剣創造(ソード・バース)とその手の炎からみて白炎の双手(フレイム・シェイク)か。」

 

「その通り。だが、あいにく俺たち全員禁手に至っているんだよ!」

 

 龍の手を持つものが一歩前に出る。

 

「この龍の手はタラスクを封印したもの!そして――禁手化(バランス・ブレイク)!」

 

 籠手が光を放ったかと思うと変化が起きる。籠手から宝玉が遊離して別の形のものを形作っている。

 それは祭りで見る山車のようだった。それもドラゴンの姿を模した山車だ。男はそれに乗り込み、龍の頭からは炎を吹きださせる。

 

「これが俺の亜種禁手、|張り子の龍の獄炎山車《タラスク・ペーパータイガー・ジャガンナート》だ!!」

 

 魔剣を持ったひとりがまた前に出る。

 

「俺の魔剣創造の禁手はジャンヌさんのをリスペクトさせてもらった――禁手化(バランス・ブレイク)!」

 

 男の影から無数の魔剣が現れる。それが合体しあい一つの形を形作っていく。それはまさに巨人であった。身長はゆうに二十メートルを超える。そしてその頭部に男は乗り込んだ。

 

「魔剣創造の亜種禁手、魔拳の巨人(ソードフィスト・グラップル・ジャイアント)!」

 

 もう一人の女は炎を纏わせた両手を構える。

 

「私はひたすらに炎の威力を徹底的に向上させたわ――禁手化(バランス・ブレイク)!」

 

 すると、構えた両手の炎が一段と強くなり、全身を覆っていく。そしてそれは灼熱色の全身鎧と化した。

 

「亜種禁手炎纏いし灼炎の鎧(フレイム・アップ・フルスキン)。地獄の業火に勝る炎で燃やし尽くしてあげるわ!」

 

 すぐさまダイスケは獣具を展開し、ガメラも武装を展開する。ガメラのメイン武装は円形の盾であった。それもただの円形ではなく亀の甲羅を模した盾であった。

 ガメラの全身を鎧でとはいかないコンバットスーツが覆う。その見た目はまるでヘルメットをつけた近代戦の兵士だ。

 

守護玄武の防人装(ガメラ・ガーディアン・コンバットスーツ)……ってかんじか。」

 

「いいな、その名前。俺はあの炎の使い手をやろう。」

 

「ならおれは残りの二人をやる。」

 

 まずはじめにダイスケは龍の山車に向かう。それを見越して男は張り子の龍に炎を吐かせる。

 

「この炎の温度は二千度だ!あっという間に燃え尽きろ!」

 

 しかし、ダイスケはその炎をよけようともしない。無様に炎に焼かれている。

 

「こいつ、ただのバカか!?自分から丸焼けになりにきやがった!」

 

「……馬鹿はお前だよ。どこに目をつけている。」

 

 そう、ダイスケは焼かれているが全くの無事である。この程度の火は脅威ではないのだ。

 

「馬鹿な!禁手に至った神器だぞ!?それがどうして!?」

 

「ハズレなんだろ。それぐらい解れバカ。」

 

 そう言ってダイスケは指先を山車に乗る男に向け、荷電粒子ビームを放った。ビームに貫かれ、男は山車から振り落とされる。

 それと同時に山車は消え、元の龍の手に戻っている。

 

「こ、こうなったら、このままで戦いを――」

 

「させると思うか。」

 

 そう言ってダイスケは熱線剣を投げつける。すると、男の龍の手がついていた左腕が切り落とされる。

 

「ぎゃああああああああ!手が、手が!!」

 

 男は切り落とされた左手を抑えてうずくまる。ダイスケはそのまま走りこみ、その男の頭を思いっきり蹴り上げる。するとサッカーボールのようによく飛んで拝殿に突っ込んだ。男はそのまま建材に突き刺さり、命を落とす。

 

「よくも!」

 

 魔剣でできた巨人がダイスケを掴みあげる。

 

「ははははは!このまま握りつぶしてやるよ!」

 

 そう言って男は巨人の握る力を徐々に強くしていく。

 

「あっけない!曹操様があれだけ注意していた怪獣王、こんなものかよ!」

 

 自身の力でたやすく捕まえ、握りつぶすことができると知った男は大笑いする。しかし、何かがおかしい。

 

「なんだ?暑い……?」

 

 そう急激に自身の周囲の温度が上昇している。先ほどまでの過ごしやすい気温とは大違いだ。すると、ダイスケは口を開く。

 

「……熱は物体の分子の振動。それを触れずに分子運動を活性化させるのには電子レンジのようにマイクロ波を当てるのが手っ取り早い。そして俺が得たのは雷神の因子。体内で放電を起こしてマイクロ波を発生させれば――」

 

 とたんにダイスケを握っている巨人の手が赤熱化する。

 

「そんな!並みの金属じゃないんだぞ!神器から生まれたものなのに!!」

 

「言っとくが今の俺は並みの聖剣魔剣も溶かしちまうんだよ。魔剣創造で作った、モンキーモデルの魔剣ならなおさらだ。」

 

 すると、ダイスケを握っていた巨人の手がどろりと溶け落ちる。完全に融解したのだ。これにより、ダイスケは地面に落ちて着陸する。

 

「こ、このぉぉぉぉぉおおおおお!!」

 

 巨人が残った拳を振り上げ、ダイスケめがけて振り下ろす。しかしダイスケはこれを拳で受け止める。

 

「ば、馬鹿な!」

 

「お前らってそればっかだな。」

 

 拮抗していた拳のぶつかり合い。その均衡を崩すべく、ダイスケはさらに力を込める。

 

「オラァ!」

 

 巨人が跳ね飛ばされ、地面に背中から打ち付けられる。そのせいで魔剣創造の男も放り出されてしまう。

 

「うわっ!」

 

 地面を撥ね、壁にぶつかる。その一瞬、意識が落ちた。だが、すぐに気を取り戻す。

 

「いててて……ハッ。」

 

 そして気づいてしまった。目の前にダイスケが立っていることを。

 

「わ、わるかったよ。殺そうとして。命令だったんだ。わかるだろう?」

 

「ああ。」

 

「よ、よかった。頼む、見逃してくれ。俺にはもう英雄なんてどうでもいいんだ。ここから逃げ出したいんだよ。」

 

「そうだろうな。」

 

「わかってくれるか!じゃあ俺を見逃してくれ!」

 

「そうだな、もうお前には興味がない。先を急ぐ。」

 

「あ、ありがとう!」

 

 そう言ってダイスケは即座に踵を返す。が、男はこれを待っていた。背中を向けた瞬間、即座に産んだ魔剣で後ろから突き刺す。

 そのチャンスはやってきた。ダイスケは背中を向ける。手には魔剣。幸いにも気づかれてはいない。そのままダイスケを突き刺そうとし――

 

「だろうと思ったよ。」

 

 振り向いたダイスケが魔剣を弾いて鰭斬刀を男の腹に突き立てる。

 

「ガハッ!……な、なぜ……。」

 

 最後の力を振り絞り、男はダイスケに問う。

 

「お前に興味はないがお前たちは殺すと決めている。お前たちは――踏み入れちゃならない領域を土足で踏みにじった。」

 

「カハッ――。」

 

 鰭斬刀を引き抜き、ダイスケは血を払った。

 一方のガメラである。

 

「なんで!?なんで止まらないのよ!!」

 

 ひたすら女はガメラに向けて炎の塊をを撃ち続ける。しかし、ガメラは自らに向けて放たれる炎の砲弾ををすべて盾で弾き、殴り、蹴り上げてかき消していく。

 それどころか炎を吸収し、己のエネルギーとしているのだ。

 

「なぜ我がお前を相手に選んだかわかるか。それはこの通り我は炎に対してはめっぽう強くてな、このように炎を自らの糧にすることにできる。柳星張を相手にする前としてはお前は格好のエサよ。」

 

「じょ、冗談じゃないわ!元龍王のタンニーンクラスの炎なのよ!?」

 

 その龍王クラスの炎を相手にして傷一つつけることができないガメラに女は次第に焦りを感じる。

 そして徐々に女との距離を詰めていく。

 

「なら……これはどう!?」

 

 女は身に纏っていた炎をすべて掌の一点に集めて一塊にすると、一本のナイフにする。エネルギーを拡散させずに集中させれば吸収されることもないと判断したのだ。

 そして、女は跳躍して高熱のナイフを手にガメラに飛びかかる。逆手に持ったナイフは確実にその顔面を貫いた。

 

「ふふ、やった……なんですって!?」

 

 確かにナイフは顔面を捉えていた。しかし、ガメラはその歯でナイフを噛んで止めていたのだ。そのまま顎に力を加えて灼炎の刃をかみ砕く。

 そして、ガメラは女の顔を盾で殴りつけた。

 

「がっ……!」

 

 殴り飛ばされた女の体は池まで飛んでいき、そのまま落ちて沈んでいった。

 

「終わったか?」

 

「ああ。」

 

 ダイスケの問いにガメラが答える。

 

「余計な時間を取られた。先を急ごう。」

 

「そうだな。」

 

 踵を返し、東本願寺を出ようとしたその時だった。

 

「この邪気は……!」

 

 頭上を何か巨大なものが飛行している。頭を上げるとそれはそこにいた。

 百メートルはあろうかという巨大な体躯。頭は鳥を思わせる鏃型。眼窩の奥の瞳が黄色い光を漏らしている。

 その巨体には四本の触手が備えられていた。その触手の間には虹色に輝く膜開いており、それで翼を形成しているということに気が付く。そして、手のない槍を思わせる鋭利な腕が人のようについている。だが、そんな常識離れしたパーツパーツの割に全体的な印象は人間を思わせるフォルムだ。

 

「柳星張……!」

 

「これが……!」

 

 虹色の膜がたなびく翼をはためかせ、柳星張はゆっくりと地上に降り立つ。その美しいさまはまるで虹の神。

 

「……イリス。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イッセーはその背に九重を乗せて先を急ぐ。

 つい先ほど転移させられた疑似京都駅で英雄派の刺客を倒し、地下鉄の路線を利用してその中を二条城に向けて飛ぶ。

 途中途中でアンチモンスターが待ち受けてはいたが、難なく倒していっている。

 

「赤龍帝、ここじゃ!」

 

 烏丸御池駅を経由し、二条城前駅についたことを九重が教える。線路からホームに出て、階段を一気に上がる。すると、二条城が見える。先に連絡していた木場たちとは東大手門で合流する手はずだ。

 見ればそこにはすでにダイスケ、ガメラ、ヒオ、マナ以外のメンバーがそろっている。

 

「悪い、遅れ――」

 

「おぼろろろろろろろろろ。」

 

 わびようとしたその瞬間、ロスヴァイセがゲロった。しかも堀に向けて四つん這いになって吐いている。

 

「だいじょうぶっスか?」

 

「す、すいません、匙く――おぼろろろろろろろろろろ。」

 

 匙に背中をさすってもらいながらなおも吐き続ける。見れば匙ももらいそうな表情だ。

 

「イッセーくん、無事でよかったよ。」

 

 木場が笑顔で迎える。イッセーも皆の無事(一人違う方向で重傷)な様子を見て安堵する。

 よく見ると皆服の一部が破けていたりしているが、目立った怪我はない。

 

「みんなも無事だったんだな。アーシアも無事みたいでよかった。」

 

「はい、みなさんが刺客から守ってくれましたから。」

 

「そういうことに関しては私に任せろ。」

 

「逆に回復役がいてくれて助かったわ、アーシアさん」

 

 そう答えるゼノヴィアとイリナはすでに制服を脱いで下に着ていた教会の戦闘服姿だ。

 

「それでロスヴァイセさんのほうは……?」

 

「うん、あの人も刺客と戦っていたんだけどね。その、激しく動き回ったせいで胃の中がシェイクされたみたいで……」

 

「わかった、木場。みなまでいうな。……ダイスケたちはまだなんだよな。」

 

「イッセーくんのとは繋がった携帯もダイスケ君は出ていない。ヒオさんたちとはもともと連絡手段がなかったわけだけども、まだ刺客と戦っているか警戒されてこちらに転移されていないかだと思う。」

 

「……たしかにヒオさんもマナさんも渡月橋じゃすごかったからな。警戒されて当然か。なら、俺たちだけで今は何とかするしかないな。」

 

 イッセーがそう決意したとき、地響きを上げて合図するかのように東大手門の扉が開いた。

 

「まったく、演出が行き届いているね。僕が倒した刺客は曹操は本丸御殿で待っているって言っていたからね。誘っているんだろう。」

 

「まったくだ。舐めてくれやがって。さあ、行こう!」

 

 東大手門をくぐり、二条城の敷地に足を踏み入れる一行。唐門をぬけ、二の丸庭園をすすみ、本丸を囲む堀が見えてくる。そして、本丸に続く本丸櫓門をくぐった。

 たどり着いたのはかつては本丸の城郭があった本丸御殿。それらがライトで照らされて闇夜の中でも映えていた。 

 

「禁手使いの刺客は全員倒したか。俺たちとのなかでは下位から中堅どころでも禁手使いには変わりない。それでも倒してしまう君たちはやはり驚異的だよ。」

 

 声の出どころを捜すイッセーたち。すると庭園にその声を発した曹操の姿を見つける。そしてそれに呼応するように。建物の影のあちこちから英雄派構成員が姿を現す。だが、その中には違う人影もあった。

 

「母上!」

 

 イッセーの背中の九重が叫ぶ。その視線の先には先日絵画で見せられたものと全く同じ姿の女性、八坂姫がいた。

 思わず敵地であることを忘れ、九重は母のもとに駆け寄る。

 

「母上、九重です!しっかりしてくだされ!」

 

 母にすがる九重。しかし、その瞳は虚ろ。自分の娘の姿が見えていないようだ。

 

「おのれ、曹操!貴様ら母上に何をした!!」

 

「先に言った通りですよ。少しばかり我々の実験に協力していただいているのです。小さな姫君よ。」

 

 曹操はそう言うと、聖槍の石突きで地面をトンと突く。その瞬間、八坂姫に異変が起きる。

 

「う、うぅぅ……うぁぁぁぁぁあああああああああッ!」

 

 悲鳴を上げ、八坂の体が輝く。すると徐々に変化していき、その姿はまさしく九尾の狐の姿になった。しかし、問題はその大きさだ。大きさは十メートルを優に超えているだろう。尻尾の分、フェンリルよりも巨大に見えた。

 

クォォォォォォオオオオオン!!

 

 その美しい姿にイッセーたちも一瞬見惚れる。しかし、その瞳には感情というか光が燈っていない。どう見ても操られていることは明白。

 

「曹操!お前、こんな疑似京都のフィールドまで作って、九尾の御大将をこんな風にして、いったい何を企んでいやがるんだ!!」

 

 たまらずイッセーが問う。その問いに曹操は槍の柄を肩において答え始める。

 

「京都という都はその存在自体が強力な気のルート、龍脈で包まれた大規模な術式発生装置だ。名所と呼ばれるところのほとんどが様々な力にあふれている。それはこの都市を創った陰陽師たちが都そのものを巨大な一つの《力》にしようとしたからだ。それ故にこの都は様々なものを惹きつける。この疑似京都は京都からきわめて近く限りなく遠い次元の狭間に存在する。位相空間、という奴だ。それゆえ京都の龍脈はこちらにも流れ込んできている。そして九尾の狐は最高位ではないがそれでも妖怪の最高クラス、龍王クラスとも言われている存在。この都と九尾は切っても切り離せない関係だ。だからこそ、ここで事を行う必要がある。ああ、柳星張はその邪気を振りまいてくれるだけでかなりの相乗効果を生んでくれるからね。いてくれるだけでもこっちは大助かりなのさ。」

 

 いったん息を吐くと、曹操は真の目的を語った。

 

「――都市の力、九尾の力、そして柳星張の邪気。この三つを使ってこの空間にグレートレッドを呼び寄せる。本来なら複数の龍王が呼んだ方が手っ取り早いが、龍王の拉致なんて神でも苦難だからね。そこでこの三つで代用することにしたのさ。」

 

「……グレートレッドだって?あのでかいドラゴンを呼んでどうするつもりだ?あいつは次元の狭間を泳ぐだけで実害はないんだろう。」

 

「ああ、あれは基本的に無害な存在だ。だが、俺たちのボスにとっては邪魔な存在らしいのでね。故郷に帰りたいのに困っているそうだ。」

 

 オーフィスの事だ。

 

「……それで、呼び寄せたグレートレッドを殺すのか?」

 

「いや、さすがにそれは無理かな。とりあえず捕えることができてから考えようかと思う。いまだに生態が不明のドラゴンだ、調べるだけでも価値があるとは思わないか?たとえば『龍喰者(ドラゴン・イーター)』がどの程度効くのかとか、ね。まあいずれにしろ一つの実験だよ。強大なものを呼べるかどうかのね。」

 

 龍喰者(ドラゴン・イーター)という聞きなれない単語が出てきた。意味は解らない。だが、イッセーは直感でそれがろくでもないものなんだろうとあたりをつける。

 

「よくわからねぇ。よくわからねぇけど、お前らがろくでもないことをしようっていうは分かるぜ。……九尾の御大将、返してもらう。」 

 

「イッセーの言う通りだな。」

 

 ゼノヴィアが新生デュランダルを曹操に向けて構える。新たにこしらえられた鞘をつけたままであったが、刃を覆っていた部分がスライドして刀身が見えるようになる。そこから大質量の破壊のオーラが放たれている。

 そしてそのオーラは徐々にデュランダルを包むように光の刃となる。

 

「貴様たちが何をしようとしているのか底が見えない。だが、貴様たちの思想が私たちや私たちの周囲に危険を及ぼすことは確かだ。――ここで屠るのが正解だな。」

 

「ゼノヴィアの意見には同意だね。」

 

 木場が頷きながら聖魔剣を構える。

 

「右に同じく!」

 

 イリナも光の剣を手にした。それを見て嘆息するのは匙だ。

 

「グレモリー眷属は死線ばかりだな……。」

 

「ごめんな、匙。うちってこんなことばっかりだから。」

 

「いいよ、兵藤。ま、これも学園のみんなとダチのため――」

 

 その匙の腕や足に黒い蛇が複数現れ、その体の上を這い出す。全身に蛇を這わせたかと思うとその足元から巨大な漆黒の大蛇が現れる。

 

「……ヴリトラ、悪いけど力を貸してくれ。兵藤がフォローしてくれるらしいからよ、今日は暴れられるぜ?」

 

『我が分身よ、獲物はどれだ?あの聖槍か?それとも狐か?どれでもよいぞ。我は久方ぶりの現世で心地よいのだよ。どうせなら眼前にあるものすべてを我の黒き炎で飲み込むのもよかろうて!』

 

 ヴリトラの声が愉悦にゆがむと、たちまちあの黒い炎が立ち上げる。ロキですら脱出できなかった相手を縛り、力を奪う黒い炎だ。

 その力で九尾となった八坂を抑えてほしいてイッセーが言おうとしたところ――

 

「まずは初手だ。」

 

 ゼノヴィアが曹操たちに向けて巨大で長大な光の剣となったデュランダルを振り下ろす。以前見せたアスカロンとの合わせ技以上の威力だ。しかもその時よりも制御されているように見える。

 その一撃は本丸御殿を丸ごと吹き飛ばし、その先にあるものもすべて薙ぎ払っていく。大地はその威力に揺れ、思わずイッセーたちは膝をつく。

 

「ふー。」

 

 ゼノヴィアは「一仕事終えました」と言わんばかりに息をつく。

 

「いやいや、ふーじゃなくて。一発目から飛ばしすぎじゃないのか?っていうか、そのデュランダルいったいなんなんだよ。」

 

「ああ、これか?エクスカリバーを正教会がデュランダルの鞘にしたんだよ。錬金術でね。」

 

 つまり、エクスカリバーを制御装置にしたうえでデュランダルとの相乗効果を狙った強化ということだ。

 

「まだ名前がなかったが――こいつはエクス・デュランダルと名付けよう。」

 

 破壊の痕にエクスデュランダルを向けながらゼノヴィアはそう言う。

 

「まあ、初手で倒せれば苦労はないがな。」

 

 ゼノヴィアが前方を見据えてそういう。破壊の痕跡に舞う土煙が消えると、そこには霧が立ち込めていた。

 その霧が消えると、そこには無傷の英雄派の面々が。どうやら絶霧(ディメンション・ロスト)の使い手がさっきの一撃を防いだ様だ。

 

「いやー、いいね。」

 

 楽しげな曹操の声が響く。

 

「今のを見ても君たちはもう上級悪魔の中堅、いやトップクラスの上級悪魔の眷属と比べても遜色がない。リアス・グレモリーはいい眷属を持った。ゲームに本格参戦すれば短期間で二桁台、十数年以内にはトップランカー入りかな?どちらにしても末恐ろしい。よくもシャルバ・ベルゼブブはこんな連中をバカにできたもんだね。あいつ本物の阿呆だな。」

 

 曹操のその言葉にジークフリードが苦笑する。

 

「化石みたいに古い尊厳に拘りすぎて、下から来る者たちが見えてなかったんでしょ。だからヴァーリにも見放され、旧魔王派は終わったのさ。で、どうするの?僕今ので大分ハイになってきたんだけど。」

 

「ん、じゃまあ実験を開始しよう。――ゲオルグ。」

 

「了解。」

 

 曹操の号令と同時に霧使いの魔術師――ゲオルグが手を突き出す。すると、その手からおびただしい数の魔方陣が現れる。

 

「ざっと見たでけでも悪魔、堕天使、北欧、白、黒、精霊……なかなか豊富な術式の使い手のようですね。」

 

 ロスヴァイセの見識通りならゲオルグは相当な使い手らしい。その複数の術式が一つの巨大な魔方陣を生み出す。

 それはイッセーにも見覚えがあった。形は若干違うものの、それはかつてアザゼルがミドガルズオルムを呼び出したときのものに酷似していたのだ。

 

クォォォォォォオオオオオオオン!

 

 九尾の御大将が雄たけびを上げる。その双眸は大きく開き、危険な色をにじませている。その毛も総逆立ちになり、見るからに危険な状態であった。

 それを見てもなんとも思わないのかゲオルグは語る。

 

「グレートレッドを呼ぶ魔法陣と贄の状態は良好。後はグレートレッドがこの都市のパワーに惹かれるかどうか。まあ、天龍と龍王が一匹づついるのはいいかもしれない。曹操、自分は術式を安定化させるために離れられない。これがまたきつくてねぇ。」

 

「了解了解。さーて、どうしたものか。レオナルドと他の構成員は外の連合軍とやりあっているし、彼らがどれだけ時間を稼げるかわからないところもある。なんせ堕天使総督に魔王も一柱いるうえセラフのメンバーも来るらしい。――ジャンヌ、ヘラクレス、それと彦斎。」

 

「はいはい。」

 

「おう!」

 

「ん。」

 

 曹操の呼び声にレイピアのような剣を持った金髪の女と巨体の男、そして日本刀を持った侍風の男が出てくる。

 

「彼らはジャンヌダルクとヘラクレス、幕末の志士、河上彦斎の意志と魂を受け継いだ者たち。誰が誰と戦る?ああ、彦斎。君は独断専行で勝手に三大勢力関係者に手を出していたから最後だ。選択権はないぜ。」

 

「これは手厳しい。まあ、あまりものには福が来るというから我慢するか。」

 

「そういうこと。じゃあジーク、誰とやる?」

 

 ジークフリードは二振りの剣をゼノヴィアと木場に向ける。

 

「じゃあ私は天使ちゃんかな。かわいいし。」

 

「ってことは俺はあの銀髪の姉ちゃんか。気持ち悪そうな顔してるがよ!」

 

「んで、俺は赤龍帝か。そっちのヴリトラ君はどうするんだい?」

 

 曹操に名指しされた匙は黒い炎をたぎらせる。しかし、その匙をイッセーは手で制した。

 

「匙、お前は九尾の御大将だ。何とかしてあの状態から解放してあげてくれ。」

 

「俺は怪獣対決か。……わかった。兵藤、死ぬなよ。」

 

「死ぬもんか。そっちもな。」

 

「決まったか。それじゃあ始め――」

 

「まてまてまて!俺の相手がいない!ジーク、貴様ずるいぞ一人で二人相手など!」

 

 納得がいかない彦斎が騒ぎ出し、ジークフリードに抗議する。その様子に苦笑しながらジークフリードは答える。

 

「わかったよ、しょうがないなぁ。どっちがいい?」

 

「どちらもそそるが、やはりデュランダルの使い手がいい。教会関係者だろうから俺の獲物にぴったりだ。」

 

「じゃあ、そっちをあげるよ。」

 

 これで各々戦う相手が決まった。そしてイッセーはアーシアに言う。

 

「アーシア、九重を頼む。」

 

「はい!」

 

「九重、アーシアを頼めるか?」

 

「任せろ!じゃが――」

 

「ああ、わかってる。お前のお母さんは俺が――俺たちが助ける!!」




 ということで次回より本格的な戦闘です。久々に戦闘描写を書くのでちょっと不安だったり。そして書き溜めがないのでたぶんまた時間が空くと思います。……いつになったら12巻分まで行けるんだ。
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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