最初に動いたのは匙、もといヴリトラだった。
「――『
この異空間にくる前に
ジャァァァァァアアアアアアアアアア!
漆黒の炎の龍が毒蛇のように鳴く。
クォォォォォォオオオオオオオオオン!
対峙する九尾の狐が威嚇する。そしてしばらくにらみ合った後に大激突。まずは黒い炎が九尾の御大将の周囲を完全に包囲する。力を奪い、縛る炎で九尾の狐は苦しがる。
イッセーはそれを見てこれで無傷で戦いを終わらせられるかと思ったが、それは甘かった。九尾の狐が口から大出力の炎を吐いたのだ。それがタンニーンものほどではないことが分かったが、それでも並みの相手なら一瞬で消し炭になるだろう。曹操が龍王並みと称した理由がわかった。
これに対抗してヴリトラと化したさしも口から火炎を吐いて応戦する。ぶつかり合った二つの巨大な火炎は本丸御殿を吹き飛ばす程の爆発を起こし、九尾を縛っていた黒い炎までもかき消してしまう。
『くそっ! ロキの時みたくうまく炎を操れない……!』
『集中するのだ、我が分身よ。我の力を使うのならば高い集中力が必要となる――だがどうやらこれはそれだけではないな。』
ヴリトラが感じた通りである。もとより京の都と繋がった八坂姫は膨大な妖力が備わっている。そのため通常でも縛るのはたやすくないが、現在はゲオルグの術で安定化させられている。つまり、外部からの干渉等を受けにくくなっているのだ。それにより黒い炎による捕縛とエネルギー吸収がしにくくなっている。
それだけではない。九尾の八坂の力を奪えても龍脈から流れる大地のオーラによって瞬く間に復調してしまうのだ。これではヴリトラのほうが持たない。
「俺の譲渡、必要か?」
イッセーは曹操と対峙しながらも匙と繋がっている自らの神器を通してヴリトラに提案する。
『いらぬ。我が分身が我の力を使いこなせていないこの状態で赤龍帝の力が加算されれば暴走しかねん。』
が、このように返されてしまった。そうなればもう匙は匙で頑張ってもらう他ない。
「……了解。危なくなったらできる限り援護するぜ。」
『あいよ! お前もそいつらぶっとばしてくれよ!』
ふたたび九尾とヴリトラの火炎がぶつかり合う。
「みんな、散らばって戦おう!九尾の御大将から少しでもこいつらを遠ざけたい!」
『了解!』
イッセーの指示に、グレモリー眷属は一斉に散らばり、それを英雄派のメンバーが追う形になる。
「さあ、こい!」
「言われずとも行くさ。」
木場とジークフリードがぶつかり合う。三振りの魔剣の剣戟を木場は聖魔剣の二刀流でいなす。
「さすがに一度見られたらパターンが読まれるかな?」
「当然!」
手数が自分よりも多いジークフリードを相手にする木場は一度相対しただけでその剣戟パターンを見破っている。さらに木場は足に魔剣のレガースを履かせたりして三刀流に対応して見せている。
「面白いね、君。なら大サービスしようかな。」
その瞬間、ジークフリードから凄まじいプレッシャーが放たれる。それを感じた木場は何かを感じ、一瞬飛びのく。
「――
その言葉とともに、ジークフリードの背中から新たに三本の銀色の腕が生えてくる。その新たな銀色の手は帯刀していた残りの魔剣を引き抜く。その姿は、まさに阿修羅。
「魔剣のデルフィングとダインスレイヴ。それと対悪魔用の光の剣。僕はこの六振りの剣を使う六刀流なんだ。」
「――なるほど、亜種の神器の禁手も亜種ということか。」
「そのとおり。これが僕の『
すると、銀色の腕が背中から遊離する。いや、遊離ではない。よく見れば透明な触手のようなものが背中から銀色の腕につながっているのが見える。
「まさか、別の神器か!?」
木場はそう口にしたが、すぐにそれが違うという結論にたどり着く。匙のようによほどのことがなければ二種類以上の神器は持つことができない。ジークフリードのような使い手ならば使いこなすことも可能だろうが、それでも生命に相当な負担がかかるはず。
「ああ、これかい?獣具だよ。
「それでも、なぜ神器の亜種ともいえる獣具を重ね掛けして平気でいられる!?」
「神器を管轄する《システム》の外に獣具があるからじゃないかな。詳しいことは僕も曹操も知らないよ。まあ、いいんじゃない? こうして使いこなせてるんだから。ちなみにこいつの能力は怪力。鉄橋ぐらいは軽く持ち上げられる。それを
うねうねとのたうつ透明な触手の先の魔剣が木場を狙う。
一方、イリナはジャンヌと呼ばれていた女性と斬りあう。
「光よ!」
一旦上空に上がって距離を取ったイリナはジャンヌに向けて光の槍を放つ。威力としては人間なら確実に四散する威力だ。それをジャンヌはすべて紙一重でよけていく。
「いいわね! 天使ちゃんは攻撃も素直でお姉さん感激!」
「じゃあこれならどう!?」
イリナは一気に硬化し、その威力を乗せてジャンヌめがけて光の剣で斬りつける。その威力をジャンヌはレイピアで受け止めきる。
その瞬間、ジャンヌは何かを企んだかのように笑む。
「聖剣よ!」
すると、イリナに足元に何本もの剣の刃がが石筍のように生えてくる。一瞬反応が遅れたが、イリナはそれを身をよじって何とか避ける。
そのイリナを追うように次々と刃が地面から生えてくるが、パターンを見切ったイリナは空中に飛んでやり過ごす。
「やるじゃん。見くびってたな。流石転生天使になるだけの事はあるって感じ?」
「これでもミカエル様の
「そっかそっか、ミカエルさんのねー。……わかった。お姉さんもジーくんみたいに大サービスして全部見せてあげるわ。」
そう言ってウインクしてみせるジャンヌ。ジーくん、とはジークフリードの事だろう。ならば、全て見せる、ということはそういうことだろう。
「お姉さんの神器はね、
そう言って微笑んでみせるジャンヌ。そしてそのまま禁断の言葉を紡ぐ。
「――
言葉と同時に噴出するオーラと鳴動する大地。すると、ジャンヌの背後にひと振りの剣が現れて地面に突き刺さる。
その剣が地面に刺さると何本もの剣が生えてきて一つの形を作りあげる。――それは、聖剣でできた巨大なドラゴンであった。
「この子は私の禁手。『
自身の力に余裕の笑みを見せる。
「確かにすごいわ……でも、本体を狙えば!」
ジャンヌの力に畏怖しつつもイリナは冷静であった。独立具現する力ならば本体が弱点になる。その本体であるジャンヌに向けてイリナが光の槍を飛ばすのは当然であった。
しかし、ジャンヌの余裕の笑みは消えない。
「あ、本体狙いなんてひっどーい――だけど。」
ジャンヌの背中から翼竜のような翼と昆虫を思わせる一対の腕が生えてくる。その一対の腕が地面を叩くと衝撃波が発生し、イリナの光の槍をかき消してしまった。
「そ、そんな!?」
イリナは信じられなかった。魔術攻撃がアンチ魔術術式によって阻害されるのならば理解できる。しかし、これは天使の光由来の攻撃だ。かき消すのならば同等の魔力か光ないし魔術による防護障壁を張るか、鍛えに鍛えたフィジカルで受け止めきるか、それを上まわる量のオーラを放出するかほかない。
だが、先ほどの行動は魔力も、光力も、オーラも、魔術も感じなかった。それどころか先ほどの衝撃はこちらに風も感じさせないほど弱いものだった。それなのに、なぜ。
「あははは! いいわね、その理解できないっていう表情も可愛いわ。じゃあこれもどうせ対策できないから教えてあげちゃう。これは『
魔力はイメージによって形になる。光も同じようなものだ。しかし、それを形作るイメージとは脳の電気信号だ。それを阻害されれば魔力や光は霧散してしまう。それやるのが
魔術に関しても術式を支えるのは使用者のイメージ。これも同じく電磁パルスによって阻害されてしまう。
「なるほど……確かに光に頼る私には厳しい相手ね。それに相手は聖人の名を継ぐ者……天使としては複雑だけど、平和が一番!!」
イリナは決意を新たにし、ジャンヌに立ち向かっていく。
別のほうでは爆発音が続いている。爆発合戦を繰り広げるのはロスヴァイセとヘラクラスだ。
「くっ、魔術を受けても平気だなんて!」
ロスヴァイセは幾度も魔法攻撃をヘラクレスに当てているが、まったくものともしないのだ。
「ハッハッハー! いいねぇ! いい塩梅の魔法攻撃だぜ!」
飛来する魔術攻撃を拳で迎撃するヘラクレス。そのたびに爆発が起きるのでまるで手の中に爆弾を仕込んでいるようだ。
「オラァァァァ!!!」
ロスヴァイセに向けて拳を突き出すヘラクレス。その拳は見事の避けられるが、行方を失って振りぬかれた先の地面が大爆発を起こした。
「俺の神器は殴れば爆発する『
男の体が光を放つ。その光が男の腕、足、背中で何かごつごつとした形にかわっていく。光が止んだ時、ヘラクレスの全身には無数の突起物が生えている。まるでミサイルのようだ。いや、これはまさしく――
「これが俺の禁手、『
全身のミサイルがロスヴァイセに向けて放たれる。それをロスヴァイセは防護術式の盾を展開して何とかうけきる。
「おっと、魔術で防ぐかよ。ならこいつだッ!」
とたんにヘラクレスの腕がカマキリを思わせる異形の腕に変わる。それはジャンヌの背中から生えた腕に酷使していた。
「行くぜ、俺の獣具! 『
ヘラクレスは異形の腕の拳と拳を突き合わせるようにぶつける。すると、やはり衝撃波が発生する。その影響でロスヴァイセの防御術式も飛行魔術も阻害された。
落下するロスヴァイセは見事に着地を決めるが、その表情は苦悶にゆがむ。
「このままここで戦えばこの場そのものが……!」
わざとヘラクレスに背中を向け、ロスヴァイセは本丸から離れるために走る。
「おお、いい女じゃねぇか。仲間を爆発と電磁パルスに巻き込ませないようにするために俺の気を逸らそうってか! いいぜ、乗ってやるよ!」
ヘラクレスはロスヴァイセの誘導にあえて乗った。
一方では彦斎とゼノヴィアがお互いの獲物を構えて対峙している。
一瞬の静寂の後、両社は走りこんで己の間合いに入った瞬間斬りあった。刹那、砕けたのは彦斎の日本刀であった。
「なるほど、そのなまくら刀で三大勢力関係者を襲っていたのか。それで中級悪魔や転生天使に傷を負わせられるのだから大したものだ。だが、このエクス・デュランダルには遠く及ばない。」
彦斎に向き直って再びエクス・デュランダルを構えるゼノヴィア。
「投降しろ。いずれにしろその状態の刀では戦えまい。」
ゼノヴィアの言葉を聞いた彦斎は若干未練がましそうに語る。
「一応我が家に伝わっていた無名ながらも使える刀だったのだが……致し方ない。」
すると、あっさりとそれまで手にしていた日本刀を未練が吹っ切れたかのように放り投げた。
「俺はな、伴天連の悪魔よ。この国の歪みが気に入らぬのよ。この国は仏教と八百万の神の国。そこに余所者の伴天連どもが商売のためにクリスマスだのイースターだのハロウィンだのと平気で文化侵略をする。おまけに悪魔はこの国の土地を勝手に領土とし、ヤクザのようにこの国の中で肩で風を切って歩く。それが実に気に喰わん。いっそのこと伴天連の思想をこの国から一掃する『攘夷』をしてやろうと思うたのよ。」
彦斎はゼノヴィアのほうに向きなおり、その意を込めて言う。
「この国に足りぬのは『攘夷』よ。無節操に受け入れて取り込むのではない。余計なものを切り捨てる『攘夷』が必要なのだ。 そしてこれは、そのための力。――『
その言葉とともに彦斎から信じられないようなオーラの奔流がほとばしる。そしてその両手に握られていたのは手鎌のような鈍器であった。
「それも獣具か!?」
「おうよ。これはベーリング海に封印されていた怪獣をベースに作った人工獣具でな。どこの誰の忘れものかは知らぬがいいものをもらったわ。――さて、本当にはじめようか!」
彦斎は手にした鉈をふりかぶってゼノヴィアに向けて叩き付ける。ゼノヴィアはそれをエクス・デュランダルから分離させたエクスカリバーとデュランダルで受けた。が、しかし、その力に圧されてしまう。
「くっ、なんて威力だ!?」
「もともとは巨大な怪獣の力だからな! 当然のこと!」
鍔ぜり合う両者だが、純粋な力では獣具によって力を増した彦斎が上なのか徐々にゼノヴィアが圧されていく。
それを見て危険だと判断したイッセーはゼノヴィアを援護するために彦斎に向けてドラゴンショットを放とうとした。しかし、それを遮るように曹操が突貫してくる。
「おっと、君の相手は俺だぜ。」
ならばそのまま撃つのみ。イッセーはドラゴンショットを放つ。だが、その一撃は曹操の手の聖槍によってたやすく弾かれる。
聖槍を構えなおした曹操はそのまま鋭い突きをイッセーに向けて放つ。これをイッセーは大きくバックステップすることで躱して見せた。
避けられた曹操は足でブレーキをかけて追撃をかけるのをやめる。そして、一定の距離を保ってイッセーと対峙した。
「見たかい? いいもんだろう、禁手のバーゲンセールっていうのは。人間もこれくらいのインフレをはじめないと超常の存在相手に戦えないからさ。」
「ならお前も禁手になるのかよ?」
「いや、そこまでしなくても君たちは倒せると踏んでいるよ。ヘラクレスたちも本気なんてまだ出しちゃいない。禁手と獣具で遊んでいるだけさ。今日はせいぜい君たちを堪能しようかなってところさ。」
「……舐められたもんだな。でもどうしても俺をバカにしているようには見えないんだよな、お前。」
「そりゃあ、堪能し、楽しむためにはだれだって深く考えるものさ。最初だって仲間は君を時間を加速させる神器で鎧の制限時間を加速させて倒そうって考えた。でもきっとそれじゃあ楽しくないし、何よりそれでは君は倒せないと考えている。」
「なんでだよ、確実じゃないか。」
「君は自分の神器を深く知ろうとしている。もしも君が自ら禁手を解除して十秒ごとに倍加する禁手前の神器能力にそれを付加させたら? そしたらきっと瞬時に倍加する恐ろしいものになるだろうね。もちろんできるかどうかは不明さ。でも、神器の深奥に潜り込もうとする君なら実現しそうでね。」
「……何が言いたい?」
「姑息な手を使うよりも正攻法で行った方がいいんじゃないかって話さ。君はテクニックタイプには注意深く警戒していてそれじゃあ逆にやりづらいんじゃないかって思えてね。」
よくわかっている。イッセーは普段からテクニックタイプの敵に対しては自分の天敵であるとして警戒している。そのため、先ほど曹操が言ったような手も考えたことが実際にあるくらいだ。
しかし、そこすら曹操は読んでくる。下手なテクニックタイプよりも厄介な相手だ。アザゼルがヴァーリと同等の危険性といった意味がよくわかる。
「だが、君のも決定的な弱点がある。
そして曹操は槍のその切っ先をイッセーに向けた。
*
いざ柳星張を前にしたダイスケは、その姿に思わず見惚れてしまった。
かつての超古代文明が生み出したものとは聞いていたが、それはまさに神の造形物と思えるほどに洗練されたフォルムであった。その柳星張は触手の間に張った膜を畳みながら静かに着陸する。
「……ここまでの大きさになるまでどれほどの命を喰らってきた……っ!」
ガメラのその怒りをにじませた言葉に、ダイスケは我に返る。そう、この怪物はすでに多くの人の命を奪っている邪悪なる存在だ。その姿に感動を覚えた自分を恥じた。
柳星張はその眼下にダイスケとガメラの姿を捕えると、その存在がどのようなものなのか一目で察したらしく触手の鋭利な先端を鎌擡げさせて二人を狙う。
「来る!」
ガメラのその言葉を合図に二人は左右に分かれる。その瞬間、二人がいた場所に触手が突き刺さった。
衝撃で飛び散る玉砂利。飛びのける二人の軌道を追って触手が次々襲い掛かる。
「止まるな、刺されるぞ!」
「刺されるっていうレベルじゃねぇよ!」
このサイズなら人間が貫かれれば一撃で真っ二つだ。ダイスケに回復能力があるとはいえ、真っ二つにされて治る自信というものがどうしてもわいてこない。
もちろんただ一方的に攻められるわけではない。ダイスケとガメラは荷電粒子ビームと火球を放って応戦する。しかし、放たれた一撃は触手によって弾き飛ばされる。
「あの触手、厄介だな……。」
攻撃にも防御にも使える触手とはなかなかに厄介だ。これを排除できればこちらが有利になるだろうが、その太さと頑強さから見てどうにも今のダイスケには無理そうだ。
ならばどうにかして触手の動きを制限させることができればよいのだが、その方法が思いつかない。そんな時だった。
二種類のビームが柳星張の背後を撃ち抜く。その威力に思わず柳星張はもんどりをうった。
「すいません、遅れました!」
「すまない、思いのほか手間取った。」
モスラとバトラが駆け付けてくれたのだ。
すかさずモスラは己の鱗粉を周囲に放ち、鱗粉のフィールドを作りあげて自分に有利な戦場を作りあげる。
「さあ、これで飛び道具は――」
「いかん、その気になっては!!」
ガメラの警告と同時に、イリスの触手先端の発光部がさらに輝き黄金色の光線のようなものを放つ。
とっさに四人は受けずに避けた。何か嫌な予感がしたのだ。そしてその予感は的中し、光線は鱗粉のフィールドの中を突っ切って直進し、避けた先にあったビルに当たって真っ二つに斬った。
袈裟がけに斬られたビルがずるずると音を立ててゆっくりと切断面に沿って崩れ落ちる。
「ただ破壊したわけじゃない。こいつは一体……?」
ダイスケがその遠方からその切断面を観察する。すると、切断された鉄骨の断面が鏡のように輝いていた。
ふつうはこのようなことは不可能だ。機械加工による金属の切断ではこのように綺麗な面にはならない。そのあとに磨きをかけなければ鏡のような光沢は出ないのだ。
仮に先ほどの光線がレーザーやビームの類であってもこのような切断面にはならない筈だ。
「さっきのは音の刃だ! 物理的な防御がほぼ無意味な上、光や魔力のように反射はできないぞ!」
これで合点がいった。音による切断ならば物体表面上の微粒子が高周波の振動によってまるで細かい目のやすりのように働いたのだ。
実際、細かい粒子を用いたラッピングという研削方法がある。これと同じように切断面が綺麗な鏡面になったのだろう。
「なるほど、超音波メスってところか。」
ダイスケはひとり納得する。
「そういうことだ。だが、俺のこの盾なら――」
再び超音波メスが放たれる。しかし、その一撃をガメラは盾で受けきった。
「――このように受けきれる。」
そして盾を前面に構えてガメラはイリスに向けて走る。その間に何度も超音波メスを受けたが、盾は見事にすべて無傷で受けきった。
すると、ガメラは飛び上がり、柳星張の胸に盾で殴りつける。
キュォォォォォォォオオオオオオオ!!
その威力に柳星張はその巨体をよろめかせる。しかし、超音波メスが効かないと判断するやいなや、すぐさまガメラへの攻撃を触手による刺突に切り替え、ほかの三人にはそのまま超音波メスを放つ。
それはまさに触手と超音波メスの弾幕である。ダイスケにも避けきれなかった超音波メスが直撃するが、鎧の表層を切っただけで何とか持ちこたえることはできた。
「ならこいつはどうだ!」
そう言ってダイスケは右手から熱線を放つ。柳星張は荷電粒子ビームと同じように触手で弾こうとしたが、着弾の瞬間に大爆発が起きる。同じように防ぎきれなかったのだ。
恐らく感電粒子ビームの時は高周波による干渉でビームを弾いたのだろうが性質が異なる熱線には通用しなかったようだ。
これで柳星張に対する攻撃方法は何となく見えてきた。だが、触手による攻撃は一層激しさを増してくる。
「あの触手を何とかできれば……。」
「だが、どうする?」
モスラとバトラは互いに顔を見合わせながら、しかし超音波メスを避けながら考える。
一番いいのは閉所に閉じ込めて触手の動きを制限させるのが一番だろう。だが、この京都にそんな場所は滅多にないどころかそこまでどうやって誘導するかという問題もある。
この考えをモスラとバトラが捨てようとしたその時、ダイスケが叫んだ。
「あるぞ、うってつけの場所!」
ダイスケは真南に指をさした。
その人差し指の先にある、手近な柳星張を閉じ込められる場所とは――
「そうか、京都駅か!」
「ええ、あそこなら!」
特異な形状の、広大な広さの吹き抜けを持つ京都駅。高さは少し足りないかもしれないが、地下のフロアまで柳星張を陥没させれば事足りるはずだ。
問題はどうやってそこまで柳星張を持っていくかだ。しかし、それもダイスケには解決方法が浮かんでいた。その実行のためには京都駅に誰もいないことを確認する必要がある。
「ヒオさん、先に京都駅に言って誰もいない確認してくれ! イッセーがお姫さんを置いて行ってるって可能性もある!」
「わかりましたダイスケくん。先行します!」
そう言ってモスラは飛び立っていった。
「ゴジラを宿す者よ、一体どうするつもりだ?」
「まあ見てろ、こうするんだよ!」
ダイスケは柳星張に取り付くと、雷神の因子をフルに活性化させ、己だけでなく柳星張も包み込む巨大な磁場フィールドを作り出す。
そこへダイスケの頭にモスラのテレパシーの声が響く。
――倒れてた英雄派らしき男が一人いましたが、外に放っておきました。いつでもこちらへ!
「了解。マナ、ガメラ! 一緒に押せ!」
「お、おう!」
「よくわからんがわかったぞ!」
ダイスケの指示に、よく理解できていないながらも従う二人。触手の攻撃をかいくぐり、二人はダイスケと一緒に柳星張を押す。
すると、その巨体が嘘であるかのように簡単に押せてしまう。元来もつ怪獣の力でも十分に柳星張の巨体を動かすことができるだろう。だが、この動かしやすさはそれ以上だ。
これは先ほど張った磁場フィールドが地球の磁場に反発した結果であり、簡易的なリニアレールとなっているからだ。
あっという間に東本願寺を抜けて京都の街並みを破壊しつつ京都駅へ突き進む柳星張の巨体。それを受け止めるためにダイスケが柳星張を押すのをやめて跳躍し、京都駅の前に着地した。それと同時にガメラとバトラは柳星張から離れる。
柳星張の進行する直線上に立つダイスケは、眼前に迫った柳星張に強烈な蹴りを叩き込んだ。
「オラァ!」
その一撃にトンを超える質量の柳星張にブレーキがかかる。だが、すぐに止まれるわけではない。
タンカーなどはプロペラを止めて逆方向に推進力をかけてもすぐには停止できない。慣性によってブレーキをかけても質量が大きいとすぐには止められないのだ。
「地下のフロアを破壊するわよ、マナ!」
「ああ!」
モスラが手にした扇から、バトラは戦斧をふって光線を放つ。これによって駅の床が破壊され、大きな穴が開いた。
そしてそこへ柳星張が滑り込んでくる。
キュオオオオオオオォォォォォォォ!?
見事に穴に落ちる柳星張。完全に目論見通りにはまってくれた。
あとは動きを制限された触手に注意しながら叩き潰すだけだ。
「ああ、そうそう。君たちは忘れているのかな、君たちの学友を攫ったことを。」
曹操がイッセーに問う
「忘れるもんか、河内さんはどこにやった!?」
最初に変化に気付いたのはバトラであった。
「おい、見ろヒオ。柳星張の様子が変だ。」
「なに? 胸が開いて――」
そして、柳星張の開かれた胸部から触手にくるまれた何かが出てくる。
「――柳星張の中だよ。」
「……なに?」
「人を……取り込んでいるのか!?」
その人の姿に、ダイスケは見覚えがあった。だから、叫んだ。
「……は、榛名ぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」
ということで囚われの榛名、どうやって助ける!?の巻でした。榛名がこんな目にあいというのはこの作品の前身でもう決めていました。ごめんよ、触手まみれで……。
そういえばこの作品よく触手出てくるな。いや、触手プレイが好きというわけではないんですけれども、武器としては有能なんですよね、触手って。
なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!