ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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 前話でイリスに取り込まれたことが判明した榛名。これ、後々の展開の大きく影響します。
 それはそうと、ジオウ録画したきりでまだ見てないんです……。


VS69  炎の掌(バニシング・フィスト)

 イッセーのドラゴンショットを槍で薙ぎ払いながら曹操は言う。

 

「かつて柳星張はガメラに敗れ、封印された。そしてその間ずっと考えたんだよ。ガメラの強さの秘密を。――なんだと思う?」

 

 その言葉の間に曹操は一気に距離を詰め、一突きを加える。

 

「知るかよ!」

 

 その聖槍の一閃を避けながらイッセーは怒鳴った。

 

「人と繋がることだよ。ガメラは常に人のそばに立ち、守っていた。人とのつながり、それがガメラの力の正体。そして柳星張はそれを欲していた。だからこの実験に協力させると同時にその贄をくれてやったんだよ。」

 

「だからってなんで河内さんなんだよ!」

 

「彼女は怪獣王に近い。それでいて一般人。これほど格好の人質はないだろう。言っただろう、俺たちは敵の弱点に注目するって。兵藤一誠、君にとってのそれは光と龍殺し(ドラゴンスレイヤー)。だが、いくら調査してもこれといった弱点がゴジラにはまだ見当たらなくてね。もう少し調査すれば一つ二つは見つかると思うんだが――そこで今回は彼個人の人間関係に注目させてもらった。」

 

「それでこんなことを……!」

 

「かなり合理的だと思うけどね。気に入らないかな。」

 

「当たり前だ! お前だけは許さねぇぞ、曹操!!」

 

 

 

 

 

 

 その時、河内榛名は朦朧とする混濁した意識の中にいた。

 彼女は班員たちと一緒に行動しているさなか、突如発生した霧に包まれて気が付けば隣にあの漢服の美丈夫がいて目の前には黒い鎧を着こんだダイスケがいた。

 そしてそのまままた霧に包まれ、気が付けば意識は暗転していた。

 

「ここは……?」

 

 目を開けて周囲を見渡してみる。そこはまるでテレビで見る母胎の中のような様子であった。しかし、安心感は感じない。まるで言いようのない邪悪な意思の中に落とされたかのようだ。

 さらに両手足は触手のようなものに縛られている。身動き一つできなかった。

 すると、目の前に空中投影モニターのようなものが投影される。そこに映っていたのは意識を失う前に見た黒い鎧。ダイスケだ。

 黒い鎧姿のダイスケは、自分を拘束しているものによく似た触手から攻撃を受けていた。そのうち、光線のようなものも撃たれている。そのうちのいくつかはダイスケにあたった。思わず榛名は眼をそむける。

 恐る恐る目を開くと、ビジョンに映るダイスケは鎧が傷ついているものの、肉体そのものにダメージがいかなかったと分かった。それを知って榛名はほっと胸を撫でおろす。

 

――心配、した?

 

 突然脳裏に他人の、しかし自分の声色と全く同じ声が聞こえてくる。

 

「だ、だれですか?」

 

――誰? あなたは今私の中にいるじゃない。

 

「なか?」

 

――今はそんなことどうでもいいの。それよりも今、あなたは彼のこと心配したでしょう。

 

「あたりまえです、だってあの人は――」

 

――あなたの好きな人だものねぇ。

 

「す、き……?」

 

――だってそうでしょう。傍から自分の姿を見てみなさいな。まさに恋する乙女の行動そのもの。

 

「ち、ちが――」

 

――違わないわ。あなたは昔からそうだった。彼があなたをかばったあの時からあなたは彼に恋い焦がれた。じゃなきゃ好きでもない男の身の回りの世話をする?

 

「それは私の贖罪で――」

 

――いいえ、贖罪でできることじゃないわ。本当に彼のことが好きでなければ続けることなんてできない。好きな人のそばにはずっといたいとだれも思うものねぇ。でも、最近はそうでもなくなった。ちがう?

 

「そ、それは……。」

 

――彼女たちは今まで自分のいた立ち位置にずかずかと乗り込んできた。しかも、その好意を隠すことはない。あなたと彼女たち、どちらが優位なのかしらね。

 

「優位とかそんな話じゃないんです! 彼女たちのことは彼女たちで――」

 

――でもそれだけじゃない。彼女たちの優位は。彼女たちは彼のあなたに言っていない秘密を知っている。

 

「秘密……?」

 

――あなたもわかっているでしょう?あの鎧のこと。彼が隠しているの何かのこと。

 

「それは私が立ち入るべき話じゃ!」

 

――いいの?それじゃあ彼女たちとの差は広がるばかり。だからこうして彼の秘密を見せてあげてるんじゃない。

 

「そんな必要ありません!ダイスケくんが知られたくないというのなら私は目も耳をふさぎます!」

 

――それじゃああなたはいつまでたっても彼の隣にはいられない。何も知らない一般人のままあなたは終わるわ。……本当は嫌なんでしょう?

 

「そんな、ことは……。」

 

――知りたいのね。なら私があなたを応援してあげる。

 

「応援……?」

 

――そう、私とあなたが一つになるの。そして、彼も取り込む。そうすればずっと一緒よ。

 

「……だめ、だめ、だめだめだめ!そんなことしたら――」

 

――そう、彼は死んじゃうわね。でもあなたと一つになるということはそういうこと。

 

「やめて……やめてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

――そこで黙って見ていなさい。そして、あなたと彼を一緒にしてあげるわ。

 

 そして、榛名の意識は再び暗転した。

 

 

 

 

 

 

 榛名という人質の存在を見せつけた柳星張は、今一度開かれた胸を閉じて再び榛名を取り込む。

 

「まってろ、いますぐに――」

 

 ダイスケはすぐさま榛名を助け出そうとするが、ガメラがそれを制する。

 

「まて! 今すぐは無理だ!」

 

「なんでだ!? すぐに助けないと何をされるか――」

 

「奴の目的は一つ、俺と同じように人と繋がることだ。それによって俺は心を得てどこまでも強くなれるようになった。奴はそれを欲している。だがヤツは俺のように共に立つことではなく人を支配することでこの力を得ようとしている。おそらく、ヤツはあの少女との精神融合を果たすつもりだ。」

 

「精神融合?」

 

「そうだ。だからもし彼女が今、完全に柳星張につながったとして今下手にヤツを傷つければあの少女の精神も傷つけることになる。そうなれば廃人は確実。無理に引き出そうとすればその心を壊される。それにヤツは恐らく何らかの方法であの少女に精神的なゆさぶりをかけて自分の側に引き込もうとしているはずだ。そうなればお前に奴は討てなくなる。そして、そこを狙ってお前を殺す。敵はそこまで考えているんだ。」

 

「ならどうしようっていうんだ!?」

 

「方法は一つ。モスラとバトラの精神感応によってあの少女が自分から今の状況から抜け出したいと思わせること。そうすれば――」

 

 その瞬間、柳星張から悪意を感じさせる膨大な邪悪なオーラが噴出する。その質と量に驚くのはモスラとバトラだ。

 

「こ、この邪悪などす黒いオーラ、京の龍脈に確実に悪影響を与えるわ!」

 

「ヒオ、私とお前で何とか抑えられるか!?」

 

「なんとか! ごめんなさい、これを抑えないと京の気脈が破壊されてしまいます!」

 

 モスラとバトラははるか上空へ舞い上がり、自分たちのオーラを練り合わせて太陽十字と呼ぶべき紋章の陣を創ってこの邪悪なオーラを抑えにかかる。

 しかし、これでモスラとバトラはこれ以上直接柳星張を相手取ることができなくなってしまった。

 

「万事休すか……!」

 

 ガメラが歯噛みする。だが、ダイスケの眼はまだあきらめていない。

 

「まだだ! まだ俺がテレパシーで榛名に語りかけることができれば!」

 

「それも無理だ! さきほどモスラたちの声が聞こえたのは彼女たちの心の声そのものの強さのおかげだ! お前の心の声の力はまだそれほどのものではないんだぞ!」

 

「……それでも、やらなきゃならないだろうが!」

 

「おい、まて! 危険だ!」

 

 ダイスケは柳星張に向けて走る。無論、触手の妨害があった。四本の触手が超音波メスを放ち、刺突してくる。

 その攻撃をダイスケは避け、受け、躱しながらも柳星張の本体へと向かっていく。しかし、柳星張の槍状の腕部がダイスケの眼前に迫る。これは避けられない、直撃コースだ。

 

「あぶない!」

 

 何かがダイスケを突き飛ばす。それはガメラであった。

 ガメラの右腕に柳星張の槍状の腕部が突き刺さり、そのまま駅の壁にはりつけられる。

 

「ガ、ガメ――」

 

「いいから行けッ!」

 

 壁にはりつけられながらもガメラはまだ自由の利く左手から火球を放ってダイスケを援護する。

 すると、柳星張の触手の先端の矢じりが開いた。そしてそこからガメラと同じ火球を放ってきたのだ。

 

「こいつは――相手の遺伝子を読んで自分のものにしたのか!?」

 

 ダイスケの予想は当たっているのだろう。出なければこのような芸当はできないはずだ。ならば自分は余計にやられるわけには行けない。この邪悪な生命にゴジラの力が渡ればどうなるか、考えるだに恐ろしい。

 放たれる火球に目もくれず、ダイスケはひたすらに榛名を目指して走る。何度も直撃を食らうが、そのダメージを無視して彼は走った。着弾した個所がぶすぶすと音を立てているが気にも留めない。

 そしてダイスケは柳星張のすぐ足もとまでたどり着き、一気に跳躍してその胸元に飛びつく。

 

「榛名、答えてくれ……榛名ぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 

 必死になって彼女の名を叫ぶダイスケ。それに対し柳星張はダイスケを振り落すためにその巨体を大きく振り、腕で払い落そうとする。

 それに対しダイスケは渾身の力を込めて抵抗した。ガメラがその身を犠牲にした以上、ここで振り落されるわけにはいかない。

 

「榛名、答えてくれ! 俺はお前を助けたい! お前がいなきゃダメなんだ。お前がそばにいてくれなきゃ俺は……ッ!」

 

 柳星張の胸に爪を立ててダイスケは自分の体を固定する。それを知った柳星張はさらに激しくもがき、駅の構内はさらに倒壊する。

 

「でも、お前自身の声が聞こえなきゃ、意思がわからなけりゃダメなんだ。たのむ。今まで隠していたことも全部話す。だからお前の声を聴かせてくれぇぇぇぇ!!!」

 

 そしてダイスケには幽かだが聞こえた。

 

――たすけて。

 

 その声を聴いた瞬間、ダイスケは触手に跳ね飛ばされた。しかも先端の銛で傷つけられ、その血を吸われてしまった。

 ダイスケは柳星張に触手についた自身の血を見せつけられながら壁に叩きつけられる。これでゴジラの力も柳星張の手に渡ってしまった。

 だが、それを引き替えにしても得られたものはあった。

 榛名自身は解き放たれたいと思っているということである。つまり、柳星張は榛名の心を完全に我が物にできていない、イコール柳星張と榛名は完全にはつながっていないということになる。

 

「それだけわかれば……充分だッ!!!」

 

 目の前には熱線をチャージしているであろう触手の先端が四つ見える。だが、ダイスケの目にはもはやそんなものは映っていない。ただ、榛名が囚われている柳星張の胸部のみを見据える。

 熱線が放たれたと同時にダイスケは磁化反発を利用してスタートダッシュを切った。放たれる熱線とうねる触手をすり抜け、柳星張の胸の眼前に迫る。

 そして、ダイスケは口から声にならない大音量の声を上げる。すると、柳星張の胸部の肉がはじけ飛んだ。

 これはの超音波メスの応用のようなものだ。超音波メスは超音波を指向性エネルギーに変えて投射し、物体表面上の微粒子を振動させて切断する。これに対してダイスケは大音量の声を放って指向性を持たせず面で柳星張の胸部の肉を弾き飛ばしたのだ。

 そのままダイスケは榛名を拘束する触手を引きちぎり、彼女を引きずり出して抱きしめる。もう二度と離さないように。そしてダイスケは柳星張の胸を蹴って飛びのいた。

 驚異的な跳躍力であっという間にダイスケは柳星張から離れ、着地した。

 

キュォォォォォオオオオオオオ!!

 

 榛名との融合を邪魔された柳星張は怒りの雄たけびを上げる。そして融合できないのならせめてダイスケごと榛名を滅しようというのか、柳星張は触手の先端を開いて火球を放つ準備をする。

 熱線ならばダイスケがすべて弾くことができるだろう。だが、火球ともなれば着弾から燃え広がる炎に榛名まで巻き込まれる。ダイスケは彼女を抱きかかえたまま、せめてその身だけは守ろうと伏せた。そのとき――

 

「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」

 

 ガメラが意を決したように叫ぶ。そして、空いてぶら下がったままの右手に火球を生み出し、自分の刺し貫かれている右腕を吹き飛ばしてしまった。

 

「うぐぅ!」

 

 その痛みにガメラは顔をしかめるが、これで終わらない。柳星張が放とうとする火球の射線上に立ちふさがったのだ。

 愚か者よ、ならばそのままもろとも消し去るがいい、とばかりに柳星張は火球を放った。しかし、その火球はダイスケたちのところまで到達しなかった。

 

「おおおおおおおおおおおお!!!」

 

 ガメラが、その失った右腕で火球の炎をすべて吸収してしまったのである。そして、その無くなったはずの右腕が再び炎の腕として顕現したのだ。

 

「――なら!」

 

 ダイスケは榛名を下し、ガメラに向けて走る。そして彼の体をつかむと、思いっきり柳星張に向けて放り投げた。慣性のまま柳星張に向けてガメラは飛ぶ。しかし、四本の触手と二本の腕がそれを邪魔しようと動く。

 

「ヒオ!」

 

「ええ、封印結界展開!」

 

 ヒオとマナが展開していた太陽十字の紋章がそのまま柳星張に向けて降りる。そしてそのまま柳星張を拘束してしまった。これでもう抵抗できない。

 そしてついに、吸収したゴジラの力で胸の傷が癒え始めているところにガメラの炎の掌(バニシング・フィスト)が突き刺さった。

 

「まだまだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 傷口に、ガメラはその腕をさらにねじ込んでいく。そして、集約された炎の力を一気に解放させる。

 その瞬間、柳星張は京都駅もろとも内側から爆ぜ、燃え上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 京都駅が柳星張もろとも大爆発したのち、ダイスケ達はしばらくその様子を見た。ゴジラの細胞も吸収し、回復するかもしれないからだ。

 しかし、実際にその兆候は起こらなかった。

 

「当然だ。奴のコアを直接潰したんだからな。」

 

 どうやら柳星張は榛名と融合するために相当自分のコアを奥から引き出していたらしい。その欲のおかげで根から立つことができたのは皮肉というほかない。

 乱れに乱れた京の気の流れも実相世界に悪影響を与える前にヒオとマナが何とか制御した。そのせいで疲労困憊になり、気力も体力もごっそる抜け落ちてしまっている。

 

「ごめんなさい、私たちは今兵藤君たちのところへ行っても足手まといになるだけでしょう。」

 

「我ながらなさけない。まともな戦闘もせずにここでへばるとは。」

 

 がれきに腰かけて大きく息を吐くマナ。確かにまだ英雄派幹部たちが残っているこの状況で彼女たちが抜けるのはつらいものがある。

 

「だがそれは我も同じだ。さっきの一撃でため込んだエネルギーのすべてを使い切ってしまったうえにこの様だ。」

 

 そういいながらガメラはアーロンの失われた右腕をおさえる。

 

「この体の持ち主には悪いことをした。何らかの形で償いができるといいのだが。」

 

「だったらうちのアザゼル先生にでも頼めよ。あの人、自分の腕義手にしてるから。褒賞代わりにおねだりすればいい。それと……ありがとうな。庇ってくれて。」

 

「……まさかゴジラに感謝される日が来るとはな。気にするな、これは我の行動によって出た責任だ。我がこの体の持ち主に侘びればいいだけだ。」

 

「そう言ってくれると、俺も少し気が楽になれるよ。」

 

 そんなダイスケに、ヒオは疑問を投げかける。

 

「そういえば、あなたがその娘に語りかけてすぐにあなたは彼女を引っ張り出そうとしましたよね。ということは彼女自身はもう柳星張から逃れたい気持ちでいっぱいだった、ということですよね。……なぜ彼女はそこまで拒否をしたんでしょう。精神融合を果たすのなら彼女が逃れたくなくなる誘惑をしそうなものですが。」

 

 そのヒオの疑問に、ダイスケではなくガメラが答える。

 

「所詮奴は人を自分が強くなるための道具としか見てこなかったから下手な誘惑をしたのだろう。共に生き、共に戦うからこそ強くなれるのに奴はそこをはき違えた。それだけだ。」

 

 しかし、問題は榛名だ。ショックが大きすぎたのか柳星張からよほどひどい精神攻撃を食らったのかいまだに目は覚まさない。呼吸音が聞こえているのがせめてだった。

 

「俺やヒオさんたちのテレパシーで何とか意識をつなぐことってできないのかな……。」

 

「おそらくその問題ではないでしょう。何らかのかたちで彼女の生命そのものにダメージがあるとしたら……。」

 

「そうなるともう気の使い手に頼む他無くなってくるな。残念だがヒオは気はまだ極めきれていないし私に至っては闘気しか使えない。」

 

 そうなるともう小猫に頼る他無くなってくる。身近な気の使い手といえば彼女しか思い浮かばない。学園に戻るまでこのままなのか、と諦めかけたその時――

 

「その嬢ちゃん、何とかなるかもしれんぜぃ。」

 

 突然老人の声が聞こえてきた。その老人は背が低く、大きな玉の数珠を首にかけ、サイバーなデザインのサングラスをかけていた。そしてその手には赤く長い棒を手にしている。

 

「あんたは――」

 

「まさか、闘戦勝仏さまですか!?」

 

 ダイスケの声がヒオの驚きの声にさえぎられる。

 

「闘戦勝仏って……斉天大聖、孫悟空!?」

 

「オウ、獣の坊や。若気の至りで付けた名はださねぇでくれるかい。」

 

 闘戦勝仏。斉天大聖。どれも西遊記の孫悟空の異名である。斉天大聖は天帝に対し反旗を翻した時に名乗った名で、闘戦勝仏とは天竺から唐に無事に経典を持ち帰った功績に仏に列せられた時の名で共に孫悟空を指す名だ。

 数々の化け物から三蔵玄奘を守り抜いた異形世界では英傑中の英傑だ。おそらくアザゼルが言っていたうれしい増援とは彼のことだろう。

 

「京の姫さんとの会議に出席した結果がこれとはねぃ。あの曹操の坊主えらいことをしてくれたもんだぜぃ。」

 

「……なんでもっと早く来てくれなかったんですか。」

 

「獣の坊や、こっちもそうしたかったけども、絶霧(ディメンション・ロスト)の結界が思った以上に厄介でねぃ。ちっこい魔女っ娘の案内のおかげでようやく入ってこれたのよ。まあそれはともかくこの娘だ。」

 

 地面に寝かせてある榛名の額に、闘戦勝仏はそっと手を乗せて気の流れを診る。

 

「……うん、これなら気の流れにポンと一押ししてやれば目が覚めるわい。獣の坊や、ちょっくらお前さんの気を貸せぃ。」

 

 そう言って闘戦勝仏はダイスケの額に如意棒をこつんとあてる。すると、ダイスケは軽い虚脱感を覚えた。が、すぐにこらえる。

 

「ふん、今のでそう反応できるとは。お前さんひょっとしたら仙骨があるかもしれんぜ。さて、あとはこの気を嬢ちゃんに流して――」

 

 目には見えない力がダイスケから闘戦勝仏を通って榛名に注がれる。すると、榛名はすぐに目を覚ました。

 

「――あれ、ここは……? ダイスケ君?」

 

「榛名!」

 

 思わずダイスケは榛名をひしと抱きしめる。その行動にふつうは何らかの反応をするだろうが、今の榛名にはできなかった。

 

「私……さっきまですごく苦しくて、胸が締め付けられて……つらくって……!」

 

 震えながらしゃべる榛名。その表情は今にも泣きだしそうなほどだ。

 

「ああ、わかってる。……よく耐えた。」

 

「……ダイスケ君、いったいあれはなんだったんですか?。」

 

「大丈夫、全部説明するから。……今まで隠してきたことも、な。」

 

 榛名はいまいち状況を呑み込めていないようだ。それも仕方ないだろう。突然拉致されていきなり何の説明もなしに柳星張の中に取り込まれたのだ。

 だが、今の問題は残った曹操である。

 

「さて、相棒を待たせてるんでねぃ。儂はあの悪餓鬼に灸を据えてやらにゃあならんでね。お前さんたちはここで待ちねぃ。疲れただろう。」

 

 その言葉にぴくっと反応したのはダイスケだ。

 

「曹操のところに行くんなら、俺も連れて行ってください。」

 

「獣の坊や、無理するんじゃねぇぜぃ。柳星張なんて大物相手で疲れたろうに。」

 

「いえ、余裕はあります。それに……ちょっと曹操をぶんなぐらねぇと気がすまねぇ。ヒオさん、榛名のこと頼みます。」

 

「……こうなったらもう歯止めは聞きそうにないですね。榛名さんのことは任せてください。闘戦勝仏さま、彼をどうかよろしくお願いします。」

 

「しょうがねぇなぁ、だったら付いてきな。あの悪餓鬼に灸を据える役、お前さんに任せてやるぜぃ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵藤一誠は困惑していた。

 仲間が皆、敵にやられたという事実もあったが、それ以上に自分が呼び込んだこの状況に困惑していた。

 とにかく悔しかった。自分たちが英雄派一派の実力に手が届かないという事実。どうしても、いつも一歩足りない。九重の母を助けることもできない。その事実に悔し涙を流しかけた。

 その時、神器の中にいる京都につく前に神器の奥底で出会った歴代女性赤龍帝最強のエルシャが語りかけてきた。なぜ泣くのか、と。

 悔しかった。自分自身の弱さに、そして肝心な時に役に立てない自分に対して泣いた。だが、エルシャは自分の可能性を信じろという。

 そしてイッセーは彼女の導くままあの宝玉を天に掲げた。すると、宝玉から光が放たれ幾人、幾百、幾千の人影が現れる。

 

「おっぱい」 

 

「ぱいぱい」

 

「おっぱい」

 

「おぱ~い」

 

「おっぱい」

 

「おっぱいん」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉおっぱい!!」

 

 きっとそれは京都でイッセーのせいで痴漢になってしまった者たちの残留思念だったのだろう。一人叫んでいたのがダイスケによく似ていたので間違いないだろう。

 

「……おっぱいゾンビか?」

 

 曹操がそう評する残留思念の集団は輪を描き、一つの魔方陣へと姿を変える。

 

『準備は整ったわ――さぁ、呼びなさい、あなただけのおっぱいを!!』

 

 エルシャに言われるがまま、イッセーは最初に脳裏によぎった者のことを思い浮かべて叫んだ。

 

「さ、召喚(サモン)ッ、おっぱいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 そして天から着替え中だったと見受けられるリアスが降りてきた。

 

「え、な、なんなの!?ここ、京都の二条城?あ、あら、イッセー?ま、まさかまたおっぱい?」

 

 慣れたのか即座に大体の事情を察したリアス。そして、こういう展開になったということでイッセーもこの後の展開が読めた。だから主に乞うた。

 

「――部長、いつも本当にすいません。正直自分でもなんでこうなるのかさっぱりです。でも、今は……あなたのおっぱいをつつかせてください!!」

 

「――ッ。ええ、私もよ。なんであなたが絡むと毎度こうなるのか、正直今のこの状況は私にもさっぱりだわ。でも、よくわからならいけど――わかったわ!!」

 

 もうイッセーという存在の異常性に慣れてしまったのだろう、リアスはとんでもないお願いを快諾してしまった。。

 

『ちきしょぉぉぉぉ!!なんでだ!?なんでいつもこうなるんだよぉぉぉぉぉ!!!』

 

 ドライグがまた泣く。大号泣だ。その心中は常人には想像だにできないだろう。そんな自分の相棒に心の中で謝りながら、イッセーはあらわになったリアスの乳房を突いた。

 

「ぁふん……。」

 

 リアスの桃色吐息がイッセーの脳に染み渡る。そして、リアスは胸から放たれるまばゆい光に包まれる。

 

「こ、これは!?あ、あ、ああああああああああっ!!」

 

 リアスが乳から光を放ちながら天に昇っていく。そして、光とともにこの場から消えてしまった。

 

「あ、あれ?エルシャさん、部長は?」

 

『あ、もう用はないので帰ってもらいました。』

 

 このあつかいである。ダイスケがこの場にいたら何もかもに突っ込みを入れていたことだろう。

 いずれにしろイッセーはこの後リアスに土下座で謝らなければならないことは明白だった。

 

――ドクン。

 

 いろいろありすぎて困惑していたイッセーの胸が突如脈打つ。高鳴る鼓動。そして、全身からこれまで感じたことのないような力の昂ぶりを感じる。

 

『来たわね。さぁ、お行きなさい!』

 

 エルシャの叫びに呼応して、さらに力が昂ぶる。抑えきれないこの昂ぶりはまるで覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を思わせるが、あの時のような戦慄を感じない。今までにない力の波動だ。だが、そこにどこかしら懐かしいものを感じた。

 それはドライグも同じようだった。

 

『ああ、俺も感じるぞ。これはおれに懐かしいものを感じさせてくれる。これは本来の俺のオーラだ。激情に駆られ、『覇』の力に身を任せたものじゃない。呪いでも、負の感情でもない。ただただ、白いあいつに勝ちたかった頃の俺の――』

 

 先ほどまで泣いていたドライグが楽しそうな声色になっている。イッセーにはドライグに何が起きたのかわかりかねたが、どこまでも赤いオーラが全身を包んでいった――

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 気付けばそこは神器の奥底の光景だった。きっと意識だけがここに飛んだのだろう。おそらく現実の時間は一秒もたっていないはずだ。

 あたりを見渡すイッセーの目の前に、エルシャともう一人の男前な風貌の男がいた。彼はおそらく過去に二度も白龍皇を倒したという赤龍帝過去最強の男、ベルザードだろう。イッセーも以前エルシャから話だけは聞いていたのですぐに思い当った。

 

『あなたの扉はこれで解放されたわ。これで覇龍(ジャガーノート・ドライブ)とは違う道が開けた。――これで私とベルザードもやっと逝けるわ。』

 

 つまり、完全な死である。

 

『ああ、気にしないで。もともと死んでる身だから。本来存在するべき形じゃないの。今の私たちは。だからいい加減消えるわ。』

 

「で、でも、俺まだあなたたちに訊きたいこととかたくさんあるんです! アドバイスだって……。」

 

 何とか引き留めようとするイッセーに、エルシャは首を横に振る。

 

『あなたの行く道に、私たちの経験は必要ないわ。それに、私おっぱいに興味なんてないから。後にも先にもあなただけよ、こんなとんでもない赤龍帝は。それにドライグと仲間たちがいればもう大丈夫よ。安心してあなたの道を行きなさい、現赤龍帝。いまだその呪いは完全に開放はされていないけれど、いずれそれも解決できるわ。あなたならきっと私たち以外の残留思念も解き放ってくれる。』

 

 そのエルシャの自分をおもんぱかってくれる言葉にイッセーは感涙を流しそうになる。何今まで神器の奥で出会った歴代赤龍帝はみなイッセーのことを無視し続けてきた。そんな中でも自分を心配してくれる人がいるということがただひたすらにうれしかった。

 

『もう逝かないと。ベルザード、最後に彼に何か語りかけてあげて。』

 

 最強赤龍帝最後の言葉だ。イッセーは一言一句聞き逃なさないように静聴することにした。そして、ベルザードはイッセーに人差し指を突き出し、こう言った。

 

『――ポチッと、ポチッと、ずむずむいやーん。』

 

「――え?」

 

 一瞬、何を言われたか理解できなかった。イッセーは最後に彼が自分に「赤龍帝の闇にとらわれるな」とか、「君を信じてる」的な言葉が来ると信じていたのだ。それがまさかおっぱいドラゴンの歌詞だったとは正直受け入れたくなかった。

 何より、なんでそれでベルザードが満足そうな顔をしているのが理解できなかった。

 

『彼も満足したみたい。さあ、逝きましょう。じゃあね、兵藤一誠くん。』

 

「え? これで終わり? いやいや、さよならの手を振るんじゃなく。もっと後輩に言う事あるでしょう!? あ、空間消えかかってるし!!まじでこれでおしまいなの!? いやちょっと、逝かないで! なんか他にもっとましな言葉を!! あぁ、もう、逝っちゃったよ!! そっちは言いたいこと言えて満足だろうけどこっちはしこりが残ってますよ!! あ、わかった! 赤龍帝ってみんな変人なんだ! だから――」

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

「――どうせ俺も変態ですよぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

 真っ白な空間から意識が返ってきたイッセーは開口一番にそう叫んだ。もうこうなったらやけだ。新しく得た力を使うまで。

 

「いくぜっ、ブーステッド・ギアァァァァァッ!!」

 

 放った気合いと同時にイッセーを包む赤い閃光を伴う莫大なオーラが噴出する。力が奥底からあふれ出してくる。

 まるで覇龍(ジャガーノート・ドライブ)だが、あの時のような負の感情は全く見受けられない。純粋な力の昂ぶりだ。

 

『ああ、そうだ。やっと思い出した。どうして俺は忘れていたんだ? ……そうか、神か。俺とアルビオンを封じたあの神が本来の力を――』

 

「ドライグ、考察は後だ。まずは目の前のこいつらをぶっ飛ばそうぜ!!」

 

『そうだな。久しぶりに俺の力を見せつけてやろう!』

 

「ああ、いこうぜ! 赤龍帝を、俺たちの力を、グレモリー眷属の底力をとくとぶっ放してやる!!!」




 ということでとりあえずイリスは撃破したVS69でした。最初はダイスケがバニシングフィストもどきをやる予定でしたが、やっぱりガメラを出した以上ダイスケは榛名救出に専念し、止めはガメラにやってもらうのが一番だと判断しました。体内放射を応用すればできると思うんですけどね。
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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