ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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他のゴジラクロスの方々が調整平均バーに色がついているなら、うちはあえて永遠に無色透明でいきます。


VS7  出逢って、はぐれて、拉致されて

「っと、散らばった荷物はこれで片付いたかな?」

 

「はい、ありがとうございます。見ず知らずの私にこんなに親切にして頂いて。」

 

「いやいや、これぐらい。なあ、ダイスケ。」

 

「そうそう、困ったときはお互い様ってね。」

 

イッセーと宝田は、謎の金髪少女が転んだ拍子にぶちまけたトランクの中身をかき集めていた。

困ったときはお互い様、などとカッコはつけているものの、結局はいいカッコしいのいい印象を与えたいというスケベ心満載の二人である。

 

「まあ、祖国で聞いたとおり、日本の方は本当に親切なのですね。」

 

「「いやぁ、それほどでも。アハハハ。」」

 

あまりにも純粋なその笑顔と言葉に、スケベ心を抱いていた二人も罪悪感を感じざるおえない。

 

「しかし、すごい荷物だな。旅行?」

 

ダイスケの言うとおり、彼女の荷物は非常に多い。旅行だとしてもかなり長い日数であろう。

 

「いいえ、私はこの街の教会に派遣されてきたんです。」

 

「……教会?」

 

イッセーの聞き間違いでなければ、彼女は間違いなく教会といった。イッセーは彼女の胸の辺りに奇妙な嫌悪感と合わせて、非常に嫌な予感を抱く。

 

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はアーシア・アルジェント。教会のシスターをやっております。日本で言うところの尼さん、と言えばわかりやすいですか?」

 

その一言で、イッセーの嫌な予感は見事に的中した。

よりにもよってこんなに純粋で可愛らしい少女が、自分の天敵である神や天使に使えるシスターだったとは。

その彼女の胸元には十字架が燐く。

 

「あ、ああ、アーシアさんね。俺は兵藤一誠。よろしくな。」

 

「俺は宝田大助。イッセーと一緒の学校に通ってる。」

 

「ああ、それでお二人共同じ服をお召しになっているのですね。……日本の学校はみんなそれぞれに指定の制服があって、みんな同じ制服で授業を受けるんですよね。なんだか羨ましいです……。」

 

遠い目をするアーシア。純朴な彼女の憂いを込めたその瞳に、ふたりは何かを感じずにはいられない。

そう思っていた二人の耳に、子供の泣き声が聞こえる。

その方角に目をやると、小さな男の子が転んでいた。

 

「……今日はよく人が転ぶ日だな。」

 

「軽い手当てぐらいはしてやろうぜ、イッセー。」

 

歩き出した二人の脇を小さな影が横切る。

アーシアだった。

 

「ほらほら、男の子がこのくらいで泣いてはいけませんよ。」

 

そう言って、アーシアは男の子の膝の傷口に手をかざす。

すると、両手の中指に嵌められた指輪から淡い緑色の光が溢れる。

 

「おい、ダイスケ。あれは……。」

 

「神器……だな。」

 

みるみると塞がれていく傷口。泣いていた子供も、痛みが引いていくのを感じて泣き止む。

 

「はい、治りましたよ。」

 

ほんの数秒の間で完治に一週間はかかりそうな傷が治ってしまっていた。

 

「ありがとう、おねえちゃん!!」

 

礼を言って子供が笑顔で走り出す。アーシアも笑顔で手を振って応える。

 

「……びっくりさせてしまいましたね。」

 

少し後悔したかのような表情を見せるアーシア。

本来であれば隠すべき力だったのだろう

。しかし、自分の身可愛さに隠さず、泣いている子供のために力を使った彼女に驚異や嫌悪を抱く二人ではなかった。

 

「いや、すごい特技持ってるんだな。」

 

「純粋に自分の力をそういう風に他人のために使えるのはすごいと思うぜ、俺は。」

 

イッセーもダイスケは共に持つ力は戦い、破壊するだけのもの。

他人のために力を振るえるアーシアが今のふたりには眩しく見える。

 

「ありがとうございます。でも、私はそんな大層な人間じゃあないんです。私はただ、主から与えられたこの力を誰かのために使うことができたらって……ただ、それだけなんです。」

 

アーシアの顔が少し、曇る。

場の空気が重くなったことを感じたイッセーは、雰囲気を変えるために別の話題を振る。

 

「ああ、そうだ!アーシアって、この町に来たばかりだよな。どこに行こうとしてたんだ?」

 

「あの、実は……赴任先の教会がどこにあるのかわからなくて迷ってたんです。この街の教会がどこにあるのか、教えていただけないでしょうか……?」

 

叱られた子犬のような目で懇願するアーシア。

普段のイッセーなら美少女の頼みとあらば喜んで案内しただろう。

だが、行き先は教会。敵対勢力のアジトとも言っても良い場所。

近づけばただでは済まないだろう。

アーシアの頼みと自分の命。

天秤にかけても答えは出ない。

 

「イッセー、お前確か今日は早く来いって先生に言われてるんだろ?俺が案内しておくから、お前は先に学校に行けよ。」

 

「え?あ、ああ、そうだったな。じゃあ、アーシアのこと頼むわ。」

 

ダイスケの考えに乗るイッセー。

言外の意思疎通である。

つまり、「悪魔であるお前は、彼女に関わらないほうがいい。」ということだ。

 

「す、すいません。急いでいるところを邪魔してしまって。」

 

「いや、いいんだよ。じゃあ、またなアーシア。この街にいるんだったら、いつでも会えるさ。」

 

「はい、またいつかお会いいたしましょう。約束ですよ、イッセーさん。それじゃあダイスケさん、お願いします。」

 

「ああ、行こうか。」

 

ダイスケに導かれ、アーシアは行く。

その背中を見て、イッセーは心の中で謝らずにはいられなかった。

 

(ごめん、アーシア。……約束、守れそうもない。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~……。」

 

放課後、イッセーはオカルト研究部の部室で今日配る分のチラシをまとめながらため息をつく。

 

「ふぉーふぃふぁいふぇー、ふぉまえふぁいひんふぁめいふぃふぁっふぁふぁふぉ。」

 

「食ってるパン呑み込んでから喋ろよダイスケ……。」

 

「ん……ゴクン。どうしたイッセー、お前最近ため息ばっかだぞ。」

 

イッセーの作業を手伝うダイスケだが、菓子パンを食いながらというなんとも不真面目な格好で作業している。

 

「またリアス先輩に怒られちゃったんだよ、教会関係者には近づくなって。」

 

「ああ、道理で今日一日元気なかったわけだ。」

 

普段の学校生活の会話では、二人は悪魔関係の話は絶対にしないと決めている。だから放課後にしかこの手の話題は決して口にしていない。

 

「教会には神父や牧師、シスターの他にもエクソシストがいて、悪魔祓いをやってる奴らもいるんだってさ。そういう奴らに祓われたら悪魔は何も感じることもできずに消滅すんだって……。」

 

「ふーん。ていうか、あの子のこと部長に話したのか。」

 

「正直に話すしかないだろ。一応、敵対してる勢力の動きなんだから。あ、アーシアはちゃんと教会まで連れて行ってやったのか?」

 

「ああ、住宅地からちょっと離れたとこの教会だった。つーか、あそこはもう人はいないはずなんだけどな。ここで合ってるって言ってたから、別れたけど。」

 

キナ臭い何かを感じつつも、確証があるわけでもない。

よって彼らには追求もできないのが痛かった。

 

「だけど俺、悪魔デビューしてからポカばっかでこのままいったら部長に見放されんじゃないかって心配なんだよ……。」

 

「今朝も言ってけど、お前はまだスタートラインに立ったばかりなんだ。このあといくらでも挽回できるさ。ほら、この菓子パン好きなスクールアイドルも言ってただろ?『ファイトだよっ♪』って。」

 

「ごめん、俺そのアニメ見てない。つーか、裏声きめぇ。ポーズをとるな。マジでやめろ。」

 

「ファイトだよっ♪」

 

「やめろ。しまいにゃ神器で殴るぞ。」

 

ハァ、と息をついて右手で顔を覆うイッセー。

正直なところ不安だらけだ。

このままでは本当に主に見捨てられるなんてことも……。

 

「気を落とさないでくださいな、イッセー君。部長はイッセー君に期待しているからこそ、厳しく接しているのですわ。」

 

「あ、朱乃さん!?いつの間に!?」

 

突然後ろから声を掛けられて、かけていたソファーから飛び退くイッセー。

 

「宝田くんがポーズを決めて「ファイトだよっ♪」と言っている辺りからですわ。」

 

「え、聞いてたんですか。」

 

「はい。」

 

いかにも「新しい弱みを握ったぞ」と言わんばかりの黒い笑みを浮かべる朱乃。

 

「うっわ、俺もう立ち直れない……。」

 

「まあまあ、それこそ『ファイトだよっ♪』ですわ。」

 

「勘弁してください……。」

 

今度はダイスケが落ち込む番だった。

そこへリアスが扉を開けて入ってくる。

 

「あら朱乃、帰ったんじゃなかったの?……って、どうしてダイスケがこんなに落ち込んでるの?」

 

リアスの問いに、朱乃が笑顔で答える。

 

「それについては触れてあげないでくださいな。ところで……。」

 

その直後、朱乃の表情は一気に真剣なものへと変わる。

 

「アガレス大公から連絡がありました。この街に、“はぐれ”が紛れ込んだようです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「“はぐれ”もね、元々は悪魔の下僕だったんだ。」

 

月が輝く夜空の下、木場の説明を聞くダイスケとイッセー。

彼らを含めたオカルト研究部の面々は今、住宅地のはずれにある大きな廃屋の手前にいた。

 

「今の俺みたいな?」

 

「下僕って言うほどまだ働いてないけどな。」

 

にへら、と笑うダイスケのその一言にむっとするイッセー。

お前は俺を励ましてくれるのか、落ち込ませたいのかどっちなんだとでも言いたげな表情だ。

その様子に木場も「あはは……。」と乾いた笑いをあげるしかない。

 

「でも中には脱走したり、主を殺して好き勝手に生きようとする輩もいる。それが“はぐれ悪魔”さ。」

 

木場の視線が廃屋に向く。貴族の住むような洋館といった佇まいの建物だが、心なしか邪な気配がする。

 

「例のはぐれさんはこの建物の中へ人間を夜な夜な誘き寄せ、食べているとの報告がありましたの。」

 

「あ、朱乃さん。その食べてるっていうの、マジなんですか?」

 

「大マジですわ、イッセー君。それを討伐するのが、今日のお仕事です。」

 

先鋒として木場が木製の扉を開く。

 

「主と自制心を持たず、勝手気ままに力を求めた悪魔がどれほど醜悪な結果を齎すか……兵藤君は確り見ておいたほうがいい。」

 

「お、おう。」

 

木場を先頭にして続くメンバー達は洋館のエントランスホールへと足を進める。

 

「イッセー、前に悪魔の駒の話をしたのを覚えているかしら。」

 

「はい。下僕にしたいものを悪魔に生まれ代えさせて、眷属にするってヤツですよね。」

 

「そう。でも、それだけじゃあないの。主の私を王《キング》として女王《クイーン》、騎士《ナイト》、戦車《ルーク》、兵士《ポーン》の特性を眷属に与え、その力を行使することができるの。爵位を持つ悪魔の特権だけどね。」

 

「駒の特性……なんでわざわざそんなことを?」

 

「兎に角、今日はイッセーとダイスケに悪魔の戦いというものがどういうものなのか「一時の方角、仰角35度。」……え?」

 

ダイスケの言葉に反応して、メンバー全員がその方向を見る。

そこにはにギリシャ建築風の太い石柱があった。

 

「……宝田先輩の言う通りです。柱の後ろにいます。……なんで人間の先輩が先に見つけられるんですか。」

 

「塔城よりカンがいいからじゃね?」

 

その言葉に反応したのか、一人の女が踊り出た。

それも上半身裸で。

 

「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもする……甘いのかな?苦いのかな?」

 

「ぬおぅぉぅぉう、おっぷぁい!!」

 

裸の女が見れてよほど嬉しかったのであろう、イッセーが歓喜の声を上げる。

それと同時に小猫が「変態……」と言いたげな目でイッセーを見る。

 

「はぐれ悪魔バイサー……主の下を逃げ、己の欲求を満たすためだけに暴れまわる不逞の輩。その罪は万死に値するわ。よって、グレモリー公爵家の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!!」

 

ニタリ、とバイサーは嗤う。

 

「小賢しい小娘だこと……。貴女の身をその髪のように鮮血で染め上げてあげましょうかァァァ!?」

 

目の前のリアスの命を手折る事を前に、喜びよがるバイサー。

 

「これがはぐれ悪魔……ただの見せたがりのおねいさんにしか。デヘッ。」

 

もう、女の裸ならなんでもいいのだろう。

事前にその所業を聞いているにも関わらず、バイサーに痴態にイッセーは思いっきり鼻の下を伸ばす。

 

「イッセー、よく見てみろ。上半身が見えているのはあんなに高いところにある光採りの窓の位置だ。あいつの上半身は見えているのに下半身の方はどうなっている?」

 

「宝田君、よく見えているね。兵藤君、さっき言っただろう?箍を外した悪魔は、その身も心も醜悪になるって……。」

 

え?と声を上げるイッセー。するとバイサーが、自ら歩み寄って来た。

月の光に照らされ、バイサーの全身が見える。

その姿は上半身は女、下半身は巨大な獣の脚を昆虫のように生やした怪物だった。

 

「のわぁあぁあぁあ!完ッ全に化物ォォォォ!!」

 

「だから言ったろう?兵藤君。」

 

飛び退くイッセーと対照的に戦闘態勢を取る木場を先頭にした眷族とその主たち。

 

「祐斗、奴の足を削いで!小猫は攻撃のブロック!」

 

「「はい、部長!」」

 

リアスの号令で木場と小猫が動く。

まず小猫がリアス達の前に出て、迎撃態勢に入った。

 

「あの体躯で防御を担当……しかもなんの武道の構えをとっていないから、あいつは純粋なパワーファイターってことか。」

 

「正解よ、ダイスケ。小猫が司る駒は戦車《ルーク》。強力な馬力と防御力が特徴なの。」

 

「で、でも、部長!大丈夫なんですか!?」

 

イッセーが心配するのも無理はない。

なにせ象以上の巨体が地響きを上げて突進してくるのだから。

誰がどう見ても小柄な小猫が受け止められるとは思えない。

 

「大丈夫。論より証拠。」

 

主であるリアスがそう言うのだからそうなのだろうが、だからと言ってすぐに信じられるわけがない。

 

「潰れろチビィィィィィィィ!!!!」

 

バイザーは叫びながら、突進の加速と己の質量と腕力を加算した一撃を小猫に見舞わんとする。

そしてその暴力の象徴は小猫の頭上へと降りかかる。

 

ドッゴォオォォォオオオン!!!

 

まるで鋼鉄の建材が落下したかのような音が、狭いホールの中に響く。

巨木を思わせる脚が振り下ろされたのは間違いなく小猫の頭上。

その光景を見たイッセーは、この漂う埃の先に踏み潰されてしまった小猫の亡骸があると思ってしまっている。

だが。

 

「……チビ?」

 

小猫はその小さな躰でバイサーの足を受け止めていた。

しかも先ほどのバイサーの一言で小猫は怒り心頭に達している。

チビ。

それ以外バイサーにとって小猫を小猫だと認識する術がないのは仕方がなかった。

だが、小猫の堪忍袋の緒をブッ千切るのに充分すぎた。

 

「……ふんっ。」

 

バキッ!!!

 

割り箸をへし折ったかのような音が響く。

それはバイサーの足の骨が小猫の腕力によって剪断破壊された証である。

 

「ぎゃああああああああ!!!」

 

思いもよらぬ痛みに悶えのたうつバイサー。

だが、グレモリー眷属の制裁は終わらない。

 

「小猫ちゃんスゲェ……って、木場は?」

 

そう、先制に出てきたのは小猫だけではなく、木場も出ていた。

だがその姿が見当たらない。

 

「こっちだよー、兵藤君。」

 

するといつの間にか、のたうつバイサーのすぐ目の前に木場が剣を持って立っている。

 

「き、木場!?いつの間に……っていうかあぶねぇ!」

 

イッセーの言う通り、バイサーが折れた脚を引きずるように木場へ近づいていっている。

 

「大丈夫よイッセー。あの様子だと、もう仕事は済ませたみたいだから。」

 

「部長の言う通りだよ。僕の駒は騎士《ナイト》。瞬足が持ち味で、そこへ僕の剣技を加えれば―――」

 

言いながら、木場はバイサーが眼前に迫っているにもかかわらずにこやかに剣を鞘に収める。

 

カチン

 

「こういう事もできる。」

 

それと同時にバイサーの脚の各所が切り裂かれ、すべての脚がドス黒い血を吹き出しながら解体されていった。

 

「あ、脚がぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」

 

ややあってバイサーは苦悶の絶叫を上げるが、血が吹き出る勢いは変わらない。

その光景の意味を理解しきれていないイッセーとダイスケにリアスはそれとなく教える。

 

「つまり祐斗は小猫がバイサーの相手をしている間に、高速移動しながら『敵の足を削ぐ』という私の命令を実行したの。」

 

そこに加えて木場の剣の妙技である。

相手にも、果ては味方にも気取られない間に命令を全うしたのだ。

 

「小猫とは正反対のテクニカルタイプってことか。」

 

「イケメンで芸達者ってのがまたムカつく……!」

 

イッセーが一方的に木場への嫉妬を募らせるのをよそに本人はイッセー達に微笑みを向ける。

それは木場の実力がバイサーを上回っていたが故の余裕であった。

だが、それは同時に油断へと繋がってしまう。

 

「おのれ……!」

 

初めは絶世の美女然としたバイサーの表情は、その醜い本性を表すかのような怒りの表情に歪んでいる。

すると、バイサーの人間の上半身の下にある獣の胴体がガバリと開いた。

中には鋭い牙がいくつも並んでおり、これで人をくらっていたのだろうと想像させる。

その口が突如閉じた。

そして自身の顎の咬合力で自ら牙を折ってしまった。

 

ビュウ!

 

何かが空を切る。

そして含んだ己が牙を木場に気取られぬうちにリアスへ向けて吹き放ったのだ。

 

「リアス!危ない!!」

 

突然の出来事に普段と違う呼び方をしてしまう朱乃。

だが、彼女の器具は幸運にも杞憂に終わる。

 

「部長!」

 

「フンッ!」

 

傍にいたイッセーとダイスケがそれぞれに神器を展開して牙を弾き、掴んでいたからだ。

ダイスケが掴む牙の先端からは紫色の液体が垂れており、明らかに毒液であろうと見る者に推測させる。

 

「部長、大丈夫ですか!?」

 

「え、ええ……ありがとう。」

 

本来であればリアスだけで十分に対処できる事態ではあった。

別に二人共身を挺して彼女を守る必要は無いし、己を優先して逃げても良かった。

それでも行動し、さらに自分の身を案じてくれたイッセーにリアスは自覚しないまでも心を動かされていた。

 

「……タルカスかテメェは。」

 

一方のダイスケはバイサーの往生際の悪さというか、しぶとさに感心している。

そして手に持った牙を一瞥したあと―――

 

「オラァ!!」

 

持ち主の右目に向けて投げつけた。

 

「ギィヤァァァァアアアアアアア!!!」

 

本日三回目のバイサーの絶叫。

だが、これで終わるとは誰も言っていないわけで。

 

「あらあらあらあら……ウチの部長に手を出そうだなんて。そんな悪い子は―――」

 

バヂバヂバヂバヂバヂバヂ!!!

 

朱乃の両手からおびただしい数の放電。

そしてその圧倒的電力はバイサーに向けらる。

 

「痺れる程度のお仕置きでは済みませんわよ?」

 

ガッシャァアアアアアアアアアアアン!!!!

 

まるでビルが倒壊したかのような雷撃音。

あまりの稲光と雷音で顔を背けるイッセーとダイスケだが、リアスは慣れた様子の飄々とした表情だ。

 

「朱乃の駒は女王《クイーン》。各コマ全ての特性を兼ね備えたスーパーオールラウンダーね。」

 

「そこへ得意技は雷撃ってわけですか。」

 

「そうよ、イッセー。そして見ての通り彼女は―――」

 

朱乃の雷撃を受けて苦痛に呻くこともできないバイサー。

だが朱乃は薄暗い笑みを浮かべ、再び両手を帯電させてにじり寄る。

 

「あらあら、ちょっと刺激が強すぎたようですわね。ならちょっと威力を弱めて……。」

 

バリバリバリバリバリバリ!!

 

「ギィヤァァァァアアアアアアア!!!」

 

「―――真性のSよ。」

 

「知ってた。」

 

聞きなれてしまった悲鳴をバックに、ダイスケが答えた。

出会った始めの頃にその柔和な笑顔にときめいていたイッセーも、今の朱乃の嗜虐的な笑に引き気味である。

 

「さあさあ、もっとあなたの悲鳴を聞かせてぇ……。」

 

バリバリバリバリバリバリ!!

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

もはや最初の威勢の良さは今のバイサーには無く、ガルヴァーニの実験に使われたカエルの足のように全身を痙攣させている。

その死に体のバイサーの眼前にリアスが立つ。

 

「……最後に何か言い残すことは?」

 

「……殺せ。」

 

その願いを受け取ったリアスの右手に、漆黒の闇を押し固めたような流体が生まれる。

 

「なら……消えなさい。」

 

力に溺れた悪魔の肉体と精神に球体が放たれる。

すると闇の中にバイサーの肉体は吸い込まれ、この世から完全に消滅した。

 

「これが……。」

 

「……悪魔の戦い。」

 

拳を交えたり武器を用いる人間の戦いとは全く違う、不可思議な力が支配する戦い。

そしてその異形の戦場へ自身も身を置くことになるであろうことにその手は震えている。

ダイスケが以前経験したチンピラとの喧嘩とは訳が違う、命懸けの戦いだ。

果たして自分の力がどこまで通用するのかと不安になるが、一度足を踏み入れた以上覚悟は決めなければならない。

だが、その前にイッセーには気になることが一つ。

自分以外の眷属が持つ駒の特性はよくわかった。

しかし、一番重要なことをまだ訊いていないのだ。

 

「あの、部長。話は変わりますけど……オレの駒って一体……?」

 

「そうね、その事をまだ話していなかったわね。あなたの持つ駒は―――」

 

パワーファイターの戦車か?

はたまたスピード重視の騎士か?

様々な期待を胸に、イッセーはリアスの言葉の続きを待つ。

そして―――

 

「―――兵士《ポーン》よ。」

 

思わずズッコケそうになった。

兵士といえば、チェスで最前列に並んでいる個性もへったくれもない雑兵。

一度に一マスしか進めない雑魚中の雑魚だ。

あまりの他の眷属との落差に愕然とするイッセー。

その様子を見たダイスケといえば……。

 

「下っ端乙……プッ!」

 

拍子抜けしたイッセーを完全に見下していた。

自分もグレモリー眷属のパシリであるということには変わりないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐれ悪魔退治から数時間後、ダイスケは夜中の公園にいた。

先日破壊した石碑へせめてものお詫びとして日本酒をお供えしに来たのだ。

本来ならば今日もイッセーの仕事の補佐につくはずだったのだが、リアスに無理を言って抜けてきた。

また、昼間に行けばいいだろうとも思われるかもしれないが、お供えしているところを誰かに見られたくなかった。

そしてダイスケは周囲に誰もいないことを確認すると、スーパー袋から灘の生一本を取り出し、封を開けて石碑に供える。

 

「えー……、先日は誠に申し訳ありませんでした。友人の命の危機とはいえ、あのような軽率な行動をとってしまったことに関してはこの通り反省してございます。ですからどうぞ、くれぐれもわたくしを祟りますことのないように……。」

 

確かにこの光景は傍から見れば滑稽だろうし、本人も馬鹿馬鹿しいと思っている。

だが、悪魔だの神だのといったオカルト的存在が実在することを知った今では現実に祟られるとも限らない。

もはやダイスケにとってこれはのっぴきならない問題なのだ。

それこそどこぞのローカルタレントのように、四国八十八箇所を巡ってえらい人数の『目には見えないお客様』を大勢連れてくるような事態も無きにしも非ずだ。

だからこそ人目を偲んでお詫びに来ている。

 

「どうかわたくしめの命をお奪いになりませぬよう、お頼み申します。誠に!申し訳ございませんでした!!!」

 

ひたすら低身低頭、土下座をして物言わぬ石碑に謝罪と命乞いをする様は確かに誰にも見られたくはない。

このド深夜に来て大正解だった。

 

「……ふう、これだけ謝れば許してくれるだろう。」

 

実際、生身の人間相手にやれば許すどころかドン引きものだ。

その事に気づかぬまま、ダイスケは灘の生一本を片付ける。

こういうお供え物は供える気持ちが大事なのであって、そのまま放置するべきではない。

墓に備える落雁や菓子等も、烏や野良の動物に荒らされることを考えれば持ち帰るのがマナーというものだ。

また、墓や石碑などの石でできた碑に酒をかけるのも本当は良くない。

酒をかけることによって石が傷みやすくなるからだ。

そのことを承知しているダイスケは後でこの酒を祖父のところへ持っていくつもりでこの高い酒を買ったのだった。

 

「よし、誰もいない……退散!」

 

周囲に人の気配がないのを確認し、早足で駆け出す。

そう、確かにこの時人の気配はなかった。

しかし―――

 

ガサガサガサッ!!

 

何かが、林の中からダイスケめがけて飛び出したのはその数秒後のことだった。




いつの間にかキスがよく釣れる時期になりました。
私も数は少ないですが、20cmクラスの良型を何匹か釣れました。
あとは鯵とか鰆とか釣れればいいですけど。
それとはじめて本文に擬音を入れてみました。
今ままで地の文だけでやってたのでかなり楽でした。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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