ハイスクールD×G 《ReBoot》   作:オンタイセウ

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七時台の自分「あれ、なんか忘れているような」
         ↓
八時台の自分「ま、忘れているってことは大したことじゃないな」
         ↓
十時台の自分「最新話の投稿忘れてたぁぁぁぁぁぁ!!!!????」

 若年性痴呆症とかいやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。
 それはともかく今話から見る人によってはしばらくハードモードです。
 しばらくの間おつきあいくださいませ。
 それはともかくなんかルビふり機能がうまく機能していない時があるようです。そういったときはどうか脳内補完でうまく切り抜けてください。


VS81  聖槍(ロンギヌス)+破壊者(デストロイア)

「……なんか見られながらやるっていうのはなんか落ち着かないネー。」

 

「何せ相手はあのオーフィスですからね……。」

 

「まあ、何かしてくるわけじゃない。見るだけならタダだろ。」

 

 オーフィスが駒王町に滞在するようになって数日がすぎた。その間、オーフィスはローテーションでイッセーとダイスケを観察している。

 今日はダイスケが観察される日で、以前ロキと戦った採石場跡で組手などのトレーニング中だ。普段体を動かすときは兵藤家にお邪魔して件のトレーニング空間にジャンプするのだが、今は昇格試験の準備中ということで遠慮してここにきている。それも明日の試験が終わればいらぬ腐心になるだろうが、とにかく今はイッセーたちに配慮することに決めた。

 もちろんオーフィスの移動には細心の注意を払って偽装し、この場も人払いと強化の結界で覆っている。当のオーフィスはというと、同行してきた榛名謹製のおやつを食べてご機嫌だったりする。

 

「これ、おいしい。赤龍帝の家のと比べても、遜色、無し。」

 

「それはどうも。ほら、お菓子だけだと喉が詰まりますから、お茶もどうぞ。」

 

「っていうか、いつも食べてばっかだな。」

 

 一旦休憩を入れるために榛名とオーフィスがいる高台までやってきたダイスケたち。その三人を榛名が迎え入れる。

 

「お疲れ様です。はい、タオルとスポーツドリンク。」

 

「おお、ありがとう。」

 

 エリーとマリーも礼を言って榛名からタオルとドリンクを受け取ると、敷いてあるビニールシートに座る。

 

「うーん、やっぱりダーリンを相手にすると堪えるネー。」

 

「ですね。なにせあの兵藤さんともまともに戦える人ですから。」

 

「あの、ダイスケ君と兵藤君って、そんなに強いんですか?」

 

「それはもう、当然ネ。なにせ二人とも共同とはいえここで神様倒してるし。」

 

「か、神様ですか……。」

 

 ダイスケが裏の世界にかかわった顛末を多少なりとも榛名は聞きかじってはいたが、まだそのすべてを知っているわけではない。時折こうしてダイスケたちがやってきたことを聞いて驚きを通り越して榛名は呆然とする。

 

「私たちも、そんなダイスケさんを支えられるように強く、そう、以前言っていた禁手を目指しているんですけれどね。」

 

「みんなに宿っている力の、もう一段階上でしたっけ。」

 

 今のところのマサノ姉妹の目標は禁手へと至ることだ。前回のゲームでの襲撃で、獣具にも禁手が存在することが確定的事実として認知された。そこから導き出されるのは敵に存在する獣具の禁手はつまり、こちらでも発現できるということだ。

 その為、マサノ姉妹をふくめMMSのメンバーやスルーズも各々の場で禁手に至るための特訓をしている。その中でもマサノ姉妹は近しい存在を宿すダイスケと共に鍛錬することでその覚醒が促進されるのではないかというアザゼルの予測により最近はよくダイスケとマサノ姉妹は組手しているのだ。

 

「イッセーのドラゴンの血に引っ張られたギャスパーや匙って前例があるから、可能性はある。でも、強化だったらルゼに頼んで|深緑獣の貸薔薇槍騎士《ビオランテ・ライエン・ローゼス・ランツェンリッター》の改良版とか頼んでみたらどうだ?」

 

「あいつに頼み事するのだけはぜーったいに嫌! なんか弱み握られたみたいだモン! 意地でも自力で禁手に至るネー!!」

 

「……ということです。私もお姉さまの妹である以上裏切るようなことはできませんので、どうか今後も一つ……。」

 

「ああ、わかったよ。そういうのは尊重するタイプだから、俺。」

 

 そう言ってダイスケはスポーツドリンクを口にする。そんな様子を見て疑問に思ったのがオーフィスだ。

 

「なぜ、力、求める? お前たち、すでに、力、ある。エリザベスと、マリアのゴジラも、ゴジラ封印した、力の一つ。充分、強力。」

 

「へぇ、そうなんだ。てっきり一緒に暴れたんだとばかり。」

 

「なぜ? ゴジラも、そう。ただでさえ、強い。なのに、なぜ、これ以上の力、求める?」

 

 オーフィスの問いに、ダイスケは答える。

 

「それはな、みんな守りたいものがあるからだ。みんな誰でも、大事なものがある。そして必ず、その領域を侵そうとする敵が現れる。それから大事なものを守るために、みんな今よりも強くならなきゃいけないんだ。お前が率いている禍の団が特にそれだ。」

 

「我、ただ、静寂がほしいだけ。グレートレッド、倒す。その為の、禍の団。」

 

「そうだな、お前の望みは純粋だ。ここ数日で、お前自身はひどく純粋な奴だってことも分かった。でも、それを利用しようっていうあくどい輩は大勢いる。そういうやつらと戦うために、俺たちは強くなりたいんだ。」

 

「我、禍の団を終わらせれば、その必要もなくなる? 正直、ゴジラ、昔より強くなるの、危機感覚える。あの時、充分強かった。」

 

「過去に何やったんだよ、ゴジラ……。だけど、お前が禍の団を終わらせても、ほかにこの世の中を引っ掻き回そうっていうやつらは山ほどいる。だから、俺はたとえ禍の団が無くなっても強さを求めることを止めない。――大事なものが、あるからな。」

 

 そう言ってダイスケが見つめるのはエリー、マリー、そして榛名だ。

 

「っていうか、お前は強さを求めないのか? グレートレッドを倒したいんだろ?」

 

「我、無限。元より、強い。」

 

「いや、グレートレッドってお前と同等の存在なんだろ? 同じ一が一を超えようとしても結局泥仕合で終わるんじゃないか? 一から二にならないと、同じ一は倒せないぞ。」

 

 そのダイスケの言葉を聞いて面食らったのはオーフィスだ。手にしたおやつを落としかけているほど驚いているようだ。

 

「……考えたこと、無かった。盲点。」

 

「……禍の団作る前にそこに気づけよ。」

 

「でも、よくよく考えたら我、無限。二になれない。」

 

「ああ、()()だからこれ以上強くなろうにもなれないのか、無限だから一足しても無限、と。」

 

「だから、ヴァーリあたりが、グレートレッド、倒してくれるとありがたい。」

 

「結構他力本願なのな、お前。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダイスケたちの特訓に付き合い、その後帰宅した榛名はすぐにベットに突っ伏した。

 

「……ダイスケくん、あんなこと考えていたなんて。」

 

 大切なものを守るために、戦う。ダイスケはそういった。あの時、ダイスケは間違いなくエリーやマリーだけでなく榛名も見てそう言っていた。ということは榛名もその「大切なもの」の中に入っているのだろう。

 そのことは純粋に嬉しかった。自分も、大切のものの中に入っていたのだから。

 だが、そのダイスケを榛名は支えることができない。何より自分でも十分に分かっていた。自分は、ダイスケとは違う世界の住人である、と。

 自分には異能はない。だから、エリーやマリー、ルゼのようにダイスケの隣に立って戦うなんてことはできない。できることと言ったら、普段の生活を支えることくらいなもの。

 当然、ふつうはそれだけでも十分ありがたいことだ。だが、榛名はそれで満足できない。そんな誰でもできるようなことだけでダイスケを支える気になってはならない。

 8年前、ダイスケが自分を守って悪者になったあの日から、その分彼を支えていこうと心に決めた。なのに、ダイスケは遠くに行ってしまった。自分の手の届かないところに。

 

「……くやしい。」

 

 それが、素直な今の心だった。他の者ができることが、今の自分には出来ない。これほど人間が悔しがることはないだろう。

 しかも、それが――

 

「惚れた男のことだもの、当然ね。」

 

 突然聞こえた、榛名しかいないはずの部屋に響いた声に、榛名は飛び起きる。

 するとそこには、女が一人立っていた。見覚えがある。そう、あれは京都の清明社の裏手で出会ったあの尼だ。だが、今はあの時のような尼の正式な恰好ではない。まるで破戒僧を思わせるぼろぼろの法衣に首からは禍々しい色の数珠を首から下げている。

 

「ど、どうして――」

 

「悩む貴女が気になって、ね。まあ、なんで私がここにいるかなんて野暮なことは聞かないでちょうだいな。」

 

 そう言って女は榛名に歩み寄る。徒然、榛名はベットの上で後ずさった。

 

「心配しないで。私はあなたの味方。恋の応援者よ。」

 

「こ、恋って……私にはそんなこと。」

 

「ごまかさなくてもいいわ。見ていてわかるから。あの宝田大助の周囲はずっと見てきたから。」

 

 女は榛名の眼前に迫り、その顔を近づけた。

 

「だからわかるの。あなたがどれだけあの少年を想っているか。見ていてすぐにわかったわ。あなたのその瞳、ずっとあの少年に釘付けですもの。」

 

 女は榛名の顎をくいっとつかみ、自分に目を向けさせる。そして、その瞳を覗き込んだ。

 

「でも、貴女は気付かなかった。いえ、気付かないふりをしていた。自分を救ってくれた王子様は社会的には「教師に暴力をふるった問題児」、そして自分が彼をそうさせてしまった。だから貴女は罪悪感から自分の気持ちをおしこめた。」

 

 榛名は眼をそらそうとするが、女はそれを許さない。

 

「再会した時は嬉しかったでしょうね。贖罪のチャンスと、彼の側にいられる最高のチャンスを手に入れられたのだから。でも、別の女たちが彼にすり寄ってきた。それも、彼と同じ異能の人間。あなたには到底辿り着くことができないステージ。そのステージに、ほかの女たちは立っている。自分のほうが彼と長い時間過ごしていたのに、それを横からかっさらわれたのよ。悔しくないの? いいえ、悔しいでしょうね。だってあなたはさっきはっきりと悔しいって言っていたもの。」

 

「ちが――違います! 私が悔しかったのは情けない自分のことで……お父さん! お母さん! 霧香! だれか!!」

 

「叫んでも無駄よ。私が人払いと防音の結界を張った。認めなさい。貴女は宝田大助を愛している。誰よりも、ええ、誰よりも、ね。でも、愛する彼の力になれない。ひょっとしたら他の誰かに彼を取られるかもしれない。それが怖いのでしょう。」

 

 言い返せなかった。すべて事実である。ダイスケへの想いも、彼の周囲にいる同性への秘めた黒い想いも。事実であるがゆえに、それが榛名に無言の肯定をさせてしまう。

 

「それで……それを知ったうえであなたは私に何をさせるつもりですか。」

 

「言ったでしょう。私は貴女の味方。手助けをしてあげる。」

 

 そう言って女は榛名の胸元にある結晶のネックレスを指で押さえる。

 

「私があげたネックレス、ちゃんとしてくれているのね。偉いわぁ。そう、これよ。これが大切なの。これで貴女に、最高の力を与えられる。」

 

「これが――」

 

「いいこと、他の女たちはいつも彼のそばにいる。だから、私があなたと彼と二人っきりにするチャンスを上げる。だから貴女はその時彼を――」

 

 女は口を榛名の耳元に寄せて言った。

 

「――自分だけのモノにしなさい。」

 

「それって――」

 

「それは貴女の心が知っている。貴女のもう一つの心が。思い出して。忌々しい記憶の奥底に答えはある。」

 

 すると女は榛名の額に手を付ける。その瞬間、過去の記憶が甦ってくる。

 

――私があなたを応援してあげる。

 

――そう、私とあなたが一つになるの。そして、彼も取り込む。そうすればずっと一緒よ。

 

――彼は死んじゃうわね。でもあなたと一つになるということはそういうこと。

 

――彼を一緒にしてあげるわ。

 

 それは、柳星張の体内に囚われていた時の言葉。なぜこの女はこのことを知っているのだろうか。

 

「大丈夫、私にはすべてわかっているわ。なにせあの柳星張は貴女の心を開くための道具に過ぎないもの。でも思い出したようね。そう、あなたが今思っている方法が彼と貴女を結ぶ唯一の方法。」

 

「本当に……これしかないんですか? 他に方法は――」

 

「ないわ。()()が唯一の道。そして――目覚めさせてあげる。貴女の――貴女だけの力を。」

 

 そう言って女は指で押さえていた結晶のネックレスを押し込む。

 すると、不思議なことに、ネックレスの結晶の飾りが榛名の体内に沈んでいく。まるで初めからそうなるために存在していたかのとなったように。

 

「う、あ、――っぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 それは、嬌声にも似た叫び。自分を侵食する力が、これ以上ない悦びと歓喜を与えてくれる。

 

「ああ、馴染む、馴染むわ。それはそうよ、これのために長い間ずっと貴女に慣らしていたのだから。」

 

 榛名の嬌声は止まらない。己の体を蝕んでいく力の流れが、快感に変わっていっているのだ。

 それは、己もダイスケと同じステージに立てるという喜び。

 または、己が有象無象を超えた存在へといったったことへの充足感。

 そしてついに、河内榛名という存在は根本から書き換えられた。

 

「さあ、目覚めなさい。――この星と宇宙の力を受け継ぐものよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 冥界における、中級悪魔昇格試験の当日。

 試験内容はいかに冥界を把握しているか測る筆記試験と、中級に値する実力があるかどうか見る実技試験の2つ。

 もちろんイッセーたちはこの日のためにたゆまぬ努力を続けてきた。心身の鍛錬のみならず、筆記試験対策に中間テストの勉強も並行させつつ猛勉強を日夜繰り広げていた。

 だが、イッセーはその内容に困惑していた。ヤマを張っていた冥界の地理歴史や政治に関する問題、そして近々に起きた禍の団に関する問題も出た。これに関しては下手な貴族悪魔よりも知っていることが多いため余裕で解くことができた。

 しかし、問題の中には冥界のエンタメに関する問題もあってこれが解くのに苦労した。自分も関わっているおっぱいドラゴンの問題ならわかったが、流行りの歌手や魔王少女ことセラフォルーが出演する「マジカル☆レヴィアたん」の敵幹部の名前を答えよという問題が出てきた時は本当に頭を抱えた。……もしかしたらセラフォルーが自分の作品の知名度を上げるためにねじ込んだ問題かもしれないが。

 それはさておいて、イッセーが一番困惑したのは実力試験だった。

 内容はランダムで与えられた試験番号が前後した者同士で実際に戦闘するというシンプルなもの。同門対決があるかと思ったが、そこはうまく番号がばらけたので問題はなかった。

 だが、勝負の結果はあまりにも呆気なさ過ぎた。

 禁手のためのカウントが終わって、禁手になった一撃目で勝負がついた。

 相手も神器の持ち主であった。だが、あまりに実力に差がありすぎたのだ。

 それもそうだろう、なにせイッセーたちはここ最近の主だった戦闘のほぼ最前線で戦ってきている。他の下級悪魔たちとはかいくぐってきた死線の数が違いすぎる。その分戦闘能力と経験値にも当然差が出ていたのだ。

 道理で事前にアザゼルから「加減しろ」と言われたわけだ、とイッセーはひとり納得する。下手をしていたら相手を殺しかねないところだった。

 

「ま、実技試験は間違いなく合格ってことでいいじゃないか。ってことで試験お疲れさん、乾杯。」

 

 いまは試験会場近くのホテルのレストランを貸し切っての慰労会。ついてきたオーフィス、黒歌、ルフェイも一緒だ。ただし、フェンリルはルフェイの影の中に隠れて隠密行動中だ。当然ペット禁止のホテル内では目立つからだが、やはり伝説の魔獣、芸が細かい。

 

「我、じーっとドライグ見る。」

 

 かと思ったら最強の龍神が無警戒でパスタをすすっているので何とも言えない。というより、普段から食べてばっかりだ。それ以外はといえばアーシアやイリナとトランプに興じたりと結構自由気ままにやっている。

 ちなみに今日はダイスケたちはこの場にはいない。来るかとアザゼルが誘ってはいたが、マサノ姉妹の特訓を優先したいというダイスケの願いを通した形だ。

 さらに言うと、ギャスパーもこの場にはいない。グリゴリの施設で特訓しに行ったのだ。先日の戦いで思うところがあったのだろうギャスパーは、イッセー達の試験ではなくそちらに向かった。ほかならぬ、自分の意思でだ。

 この慰労会の後は黒歌たちも伴ってサーゼクスにオーフィスを会わせる予定だ。そして、うまくいけば禍の団問題に大きな一石を投じることができる第一歩を踏み出せるかもしれないとアザゼルは考えている。

 

「でも、なんでヴァーリは俺たちにオーフィスを預けたんでしょうね。」

 

「……オーフィスを隠そうとしたのかもな――脅威から。」

 

 イッセーにはアザゼルのその言葉の意味は理解できなかった。だが、次の瞬間、違和感がイッセーたちを襲う。

 それは京都で一度ならず二度も味わったあの感覚。ぬるりとした肌触りの嫌な空気が全身をつつみ、今までいた場所と変わらないのに別の場所に来たかのような違和感。

 

「ありゃりゃ、ヴァーリはまかれたかにゃ。まさか本命がこっちに来ちゃうなんてねー。」

 

 黒歌がそう言った瞬間、見覚えのある霧が周囲を包み込む。

 

「イッセー、これはまさか!?」

 

「ああ、だろうな、ゼノヴィア。この霧は忘れようにも忘れられないぜ!」

 

 いずれにしろ、今この場に留まるのはまずい。全員がレストランから出る。

 走りながらイッセーはすでにカウントを開始していたが、周囲を見渡すと建物内の人気がすべて消えている。

 

「これが絶霧(ディメンション・ロスト)の転移と位相結界なの? さっきと風景が何も変わらない疑似空間なんて本当にとんでもない代物ね。」

 

 そのリアスの言葉は正しいのだろう。これは京都でイッセーたちが体感した疑似京都のような疑似空間結界だ。

 レストランからロビーに移動すると、そこにあった長椅子に二人の男の姿があった。その瞬間、イッセーたちに向けて火球が放たれる。狙われたのはアーシアとイリナだった。

 しかし、その火球はすべてオーフィスによって阻まれる。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「オーフィスちゃん、ありがとう!」

 

「……。」

 

 二人の礼にも、オーフィスは無反応だった。礼はいらないということだろうか。

 ソファに座る人物二人に目をやると、それは以前見た顔であった。その片方が持つ、神をも殺す槍は忘れるはずもない。

 

「やぁ、久しいな。赤龍帝にアザゼル総督。京都以来、だな。さっきの魔法攻撃はデュランダル使いの先制攻撃をお返しさせてもらった分だ。」

 

「……曹操っ!」

 

 イッセーは絞り出すようにその名を口にする。その曹操と一緒にいるのは魔法使いのゲオルグだ。

 その曹操の姿は以前と変わっていない。以前イッセーに目を、ダイスケに左腕を切り落とされたのにもかかわらず、だ。

 

「先日のビルガメス戦は見事だった。彼ら相手にかくも同等によく戦った。手加減はしていたがね。それでも無事に生還できたことは素直に賛辞を贈るよ、リアス・グレモリーとその眷属たち。」

 

「それはどうも、と素直に受け取っておくべきかしら? テロリストの幹部から賛辞を贈られるなんてそんなにないでしょうからね。」

 

「それで? 今回は一体何の目的だ。どうせろくでもないことなんだろうがよ。」

 

 そのアザゼルの言葉を聞いた曹操は、オーフィスに視線を向ける。

 

「やあ、オーフィス。ヴァーリとどこかに行ったと思ったらこんなところにいるなんてね。少々虚を突かれたよ。」

 

 すると、オーフィスを守るように黒歌が前に出る。

 

「にゃはは、こっちも驚いてるにゃ。てっきりあんたはヴァーリのところに行ったと思ったんだけどねー。」

 

「そっちには別動部隊を送った。今頃そっちとやりあってるだろうさ。」

 

 その会話の意味をいまいち理解できないイッセーたちに、ルフェイが説明を入れる。その陰からは彼女を守るようにフェンリルが現れたところだ。

 

「えーとですね、今回の事の発端は二つ。一つはオーフィスさまがおっぱいドラゴンさんとゴジラさんに大変ご興味を持たれたこと。それを知ったヴァーリさまがアザゼルさまのルートで皆様とお引き合わせになられました。ここはご存知ですね。」

 

 もちろんそのことは重々承知だ。問題はもう一つの方だ。

 

「二つ目はオーフィス様を狙う者がいるという情報を得たヴァーリさまは確証を得るために燻り出すことにしたのです。うまくいけばオーフィスさまを囮役にさせてもらい、私たちチームの障害になる方々と直接対決を――とヴァーリさまはお考えになりました。……つまりですね。」

 

 すると、遠慮がちにルフェイは曹操たちに指を突き付け、言った。

 

「そちらの曹操さまたちがオーフィスさまと私たちを狙っているということが分かったので、こちらが行動に移せばそちらも動くでしょうから、狙ってきたところをやっつけちゃおうと。ただオーフィスさまを危険にさらすことはできないので美猴さまが変化された偽物オーフィスさまをヴァーリさまがアジトからお連れして本物のオーフィスさまはおっぱいドラゴンさんのところへ……というわけです。つまり、皆様を利用してました――ごめんなさい。」

 

 それを聞いたリアスたちは驚く。何しろ曹操たち英雄派が自分たちの首魁であるオーフィスを狙っているというのだから。自分たちが利用されたことよりもそちらに驚いた。

 驚いていないのは渦中の者たちとある程度事情を察していたであろうアザゼルのみ。曹操などは感心したかのようにルフェイの話を聞いていた。

 

「ま、ヴァーリのすることだろうからただオーフィスを連れまわしているわけじゃないことは容易に想像できた。俺たちを排するためにオーフィスを囮にするんだろう、くらいにはね。だがヴァーリがオーフィスをうかつに囮にするはずがないと思った。それで二手に分かれてみたら案の定こっちに目的のオーフィスがいるときた。それでこんな形での対面になったんだよ。」

 

 ついに自らオーフィスを狙っていたことを認める発言をする曹操。その早々に、オーフィスは問う。 

 

「曹操、我を狙う?」

 

「ああ、その通り。俺たちには確かにオーフィスという存在は必要だ。だが、今のあなたそのものは必要じゃないんだよ。」

 

「わからない。曹操、我に勝てない。」

 

「だろうな。そもそもあなたは強すぎる。正直、正面からやりあって勝てる気も起きない。試す気も起きないよ。」

 

 そう言って曹操は槍をトントンと肩に置く。

 

「なあ、赤龍帝。なぜオーフィスは俺たちの叛意を知っておきながら何もしないんだと思う?それはね、いつでも俺たちを殺せるからだよ。基本的にグレートレッドに対する敵意しかないんだ。他の有象無象なんて興味ないんだよ。でも、俺たちはそんな無限の存在をどうこうしようとしている。さあ、問題だ。俺たちはオーフィスをどうしようとしてる? ヒントはさっきの会話の中に勿論ある。」

 

 イッセーにはわからない。それどころかリアスもアザゼルもその曹操の意図を読めずにいた。その誰もわからない様子を見て曹操は楽しんでいる。

 だが、そんな問答をしている間に黒歌とルフェイは転移用魔方陣を展開していた。

 

「にゃはは、そっちにしかわからないような問答をしてくれているうちに繋がったにゃ♪ ――やるよ、ルフェイ。」

 

「はい、いつでも! フェンリルちゃん!」

 

 ルフェイの合図に、フェンリルが魔方陣の中心に陣取る。すると、フェンリルの姿は魔方陣が放つ光の中に沈み、その代わりにダークカラーの強い銀髪に碧眼の少年とダイスケに瓜二つの少年がそこにいた――ヴァーリと義人である。

 その様子を見てイッセーは理解した。これは入れ替わるタイプの召喚用魔方陣だ。同等または近しい力量の者同士を入れ替わりさせることで法力と時間を短縮するタイプということだ。

 ヴァーリは腕を組んで曹操を不敵な表情で睨み、義人はさっそくメカゴジラを装着して臨戦態勢に入る。

 

「ご苦労だったな、黒歌、ルフェイ。――面を突き合わすのは久しいな、曹操。」

 

「これはまた派手な演出のご登場だな。」

 

「こちらにはオーフィスを守るという大義名分がある。決着をつけよう、曹操。しかし、ゲオルグと二人だけとは。いささか剛胆が過ぎるのではないか?」

 

「剛胆なわけじゃない。俺たち二人で十分だと踏んだだけさ。」

 

「強気だな。例の『龍喰者(ドラゴン・イーター)』なる者がこちらに来ているということか? 英雄派が作り出した、龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)に特化した神器所有者か、新たな神滅具所有者といったとこか。」

 

 そのヴァーリの言葉に、曹操は首を横に振って否定する。

 

「いいや、違う。違うんだよ。『龍喰者(ドラゴン・イーター)』は俺たちが作り上げたものではない。単なる俺たちの間でのコードネーム。作ったのは聖書の神さ。」

 

「その言い様だと――いいんだな?」

 

「ああ、呼び出してくれ、ゲオルグ。ヴァーリがこの場にそろった今が最高の頃合いだ。」

 

 その曹操の言葉に頷いたゲオルグは、一つの魔方陣を展開する。すると、空間全体が大きく震える。ホテルの建屋全体が、いや、その場の空気までもが震えている。

 魔方陣からはイッセーがこれまで見たこともないようなどす黒いオーラが夥しく溢れ、そしてそれは現れた。

 その巨大な何かは同じく巨大な十字架に張り付けられている。その者は堕天使のようであったが、その姿は異様だった。まるで下半身は蛇か竜の様で全身のいたるところが釘で十字架に打ち付けられており、不気味な文様が描かれる拘束具をつけられていた。

 その姿はまるで罪人――それもよほどの罪を犯した者の磔のされ方だ。裁いた者はよほどの怨恨を込めたに違いない。そうでなければここまでの姿にはならないはずだ。

 

『なんなんだ、これは……!? このドラゴンにだけ向けられた圧倒的な悪意は一体……。』

 

 ドライグですらその異様なオーラに圧倒されていた。誇りと剛毅の塊のような天龍が、である。

 

『おおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおぉぉっぉぉおぉおお……。』

 

 磔の罪人の口から、唾液と吐血と共にこの世のすべての怨嗟が煮詰められたかのような叫びが響く。

 

「こ、こいつはまさか……なんてことを……! コキュートスの封印を解いたのか!?」

 

 それが何物であるか、アザゼルはわかっているようだった。そして、そのものの正体を知っている曹操は詩を読むように口遊む。

 

「曰く、『神の毒』。曰く『神の悪意』。蛇に化けてアダムとイブを唆し、知恵の実を口にさせ神の怒りを一身に受けた天使、サマエル。その結果、蛇とドラゴンを忌み嫌った神が与えた、本来ありえない『神の呪い』を浴びし者――」

 

 それはイッセーでも理解できた。

 失楽園。蛇に唆され、神から禁じられていた知恵の実を食べてしまったアダムとイブがエデンの園から追放される聖書の一節。その蛇に化けてアダムとイブを唆したのが天使サマエルだ。

 故に、神は蛇とドラゴンを憎んだ。本来ありえない、神聖な神の呪いである。故にそれは、猛毒。故にそれは、最悪の龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)たり得るのである。

 

「どういうことだ。こいつは冥府を司るハーデスが管理していたはず……ま、まさか!?」

 

「その通りだ、アザゼル総督。ハーデス殿と交渉してね。サマエルの呪いを貴方達へ向けるのなら、と何重もの制限をかけたうえで召喚を許してもらったのさ。」

 

「……あの骸骨爺! ゼウスとオリュンポスが他勢力との協調に入ったのがそんなに気に入らないっていうのか!!!!」

 

 アザゼルがハーデスの行いに怒り心頭になるのを脇目に、曹操は聖槍の矛先をイッセーたちに向ける。

 

「いや、それにしても――それを使うにしても使用用途なんてドラゴンを絶滅させるぐらいしか――神の呪いだぞ? ……まさかお前ら、そいつを使ってオーフィスを――」

 

「やれ、サマエル。」

 

 アザゼルが答えに到達しようとした刹那、曹操の指示でサマエルの口から黒い何かがオーフィスに向けて飛び出す。

 誰も反応できなかった。オーフィスですらも。その黒い何かがサマエルの伸びた舌だと理解できた瞬間にはすでにオーフィスはサマエルの舌に呑まれていた。

 

「祐斗、斬って!」

 

 最強の龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)が最強の龍神を呑みこむ。それがどういう意味を為すのかは理解できなくとも最悪の結果を招くことは容易に想像できた。

 しかし、木場が聖魔剣で斬りつけてもサマエルの舌はびくともしない。それどころか斬りつけた聖魔剣の刀身がごっそりと掻き消される。

 

「これは――攻撃を消し去ったのか? 攻撃した武器ごと?」

 

 木場はその可能性を抱きつつももう一振り生み出した聖魔剣でサマエルの舌を再び斬りつける。しかし、結果は同じだった。

 

「なら滅びの魔力で!」

 

 リアスが滅びの魔力を何発もサマエルの舌に向けて放つ。しかし、やはり攻撃は掻き消される。

 

「こいつならどうだ。」

 

『Half Dimension!』

 

 ヴァーリが半減能力で空間ごととサマエルの舌を半減させようとするも、それすら通じない。

 

「だめだ、ヴァーリ。観測した結果あらゆる攻撃に対して亜空間フォースフィールドのようなもの、つまり攻撃手段と攻撃そのものに対して空間ごと消し去る力が働いている。こちら側からの干渉は不可能だ。」

 

 義人がその優れたセンサーによって観測した結果をヴァーリに伝える。

 

「だ、だけど、このままじゃ……。」

 

 見ていられなくなったイッセーが動こうとするが、アザゼルがそれを制止する。

 

「だめだ、お前は動くな! あれはお前にとっちゃ最悪の天敵だ! っていうかな、オーフィスが脱出できない時点で相当にヤバいんだ! それに相手はドラゴンだが、アスカロンは使うな! 最凶の龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)が相手だと何が起こるかわからん!」

 

「で、でも――」

 

「いや、イッセー。考え方を変えるんだ。サマエルに手が出せないのなら操っている方を――」

 

 そう言ってゼノヴィアはデュランダルの聖なる破壊のオーラを無警告かつ不意打ち気味にゲオルグに向けて放つ。しかし、その攻撃は横合いから入った聖槍の放つオーラではじかれる。

 

「相変わらずのいい開幕不意打ちだよ、デュランダルのゼノヴィア。だが、一度君のパターンを知れば対応も考える。」

 

「いいタイミングだと思ったのだが……。しかし、私の脳筋具合は敵に読まれやすいのか?」

 

「いや、判断は間違っていない。術者を倒すのは召喚物に対する最良の選択肢。それか、サマエルの舌ではなく本体を狙うか。どちらにしろ、狙う方向は一つだ。」

 

 そう言ってヴァーリは鎧を身に纏う。それに倣い、イッセーもアザゼルも鎧を身に纏った。

 

「レイヴェルは下がってて。客分の君を危険にさらすことはできない。」

 

「は、はい!」

 

 急いでレイヴェルはイッセーたちの邪魔にならないように後方へ下がる。これで戦闘態勢は出来上がった。

 

「これは俺も出し惜しみはできないな。なにせハーデスから得たサマエルの使用許可は一度きり。ここで決めないと。ゲオルグ、君はサマエルの制御に専念してくれ。彼らは俺が防ぐ。」

 

「いけるか? 二天龍に堕天使総督、グレモリー眷属に獣具使いがいるが。」

 

「それくらい相手にできないとこの槍を持つ資格はないさ。それに――俺にも獣具がある。」

 

 すると、聖槍からまばゆい光が放たれる。これまで見せたことのない七色の輝きだ。それに合わせ、曹操の左腕が赤く輝く。

 

「――禁手化(バランス・ブレイク)。」

 

 その言葉の後、曹操の背に後光が差した。その光は輪となって御光輪となる。そして、曹操を囲むようにボウリングボール大の七つの球が現れる。

 その静かで精錬された禁手に対し、左腕は禍々しい赤い光を放ち、籠手の形状をとる。イッセーの籠手が鮮やかな赤のに対し、曹操の左腕の籠手は禍々しい、どす黒さを孕んだ赤であった。

 

「これが俺の『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の禁手、『|極夜なる天輪聖王輝廻槍《ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルティン》』、そして新しい力、獣具の『絶対破壊者の左道(デストロイア・レフト)』だ。」

 

 その曹操の姿を見て、アザゼルは叫ぶ。

 

「――よりにもよって亜種か! 今までの『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』が発現した禁手は『真冥白夜の聖槍(トゥルー・ロンギヌス・ゲッターデメルング)』だったが……そのネーミング、自分は転輪聖王だとでもいうつもりか、テロリストめがっ! くそっ、あの七つの球体も、あの獣具も特性が分からん!?」

 

 転輪聖王とは、地上を(ダルマ)によって統治し、王に求められる全ての条件を備えるという古代インドの思想における理想的な王を指す概念のことだ。それを踏まえたうえで曹操は自慢げに言う。

 

「俺の場合は「転」を「天」に変えさせてもらった。そっちの方が俺っぽいし、かっこいい。」

 

 二人の会話についていけずに混乱するイッセーに、ヴァーリが教える。

 

「気をつけろ、あの禁手は『七宝』という力を有していて、あの七つの球それぞれに能力がある。」

 

「ちょ、ちょっとまて!? 七つ!? 能力が!?」

 

「ああ、しかもそのいずれも強力だ。俺が実際に見て知っているのは三つだけだが、それを有することができるポテンシャルがあるからこそ最強の神滅具なんだ。まぎれもなく、奴は純粋な人間の中では最強の一角だよ。……しかし、奴が獣具まで持っているということは俺も知らなかった。獣具の特性上、まだ能力が二つ三つ増えるのも覚悟しておいた方がいいな……。」

 

 ヴァーリがそう警戒する中、曹操の耳元に小さな魔方陣が現れる。悪魔の通信用連絡魔法陣によく似たそれで、曹操は短く会話をする。

 

「ああ、道満か。今結構いいところ――うん、そうか。彼女は見事にやってくれたか。わかった、いったん切らせてくれ。俺も目の前に敵がいるんでね。彼らにも伝えるよ。じゃあ。」

 

 連絡用魔方陣が消えると、曹操は再びイッセーたちに視線を向ける。そして、聖槍をくるくると回して構えた。

 

「グッドニュース、グッドニュース。いや、君たちにとってはバッドニュースか。さて、これで心置きなく戦えるというもの。さあ、はじめようか。」




 ということでタイトルよりもやばいこと起きていたVS81でした。
 次回はついに無印時代からやりたかったことその①ができます。なので、そのためにいろいろと時間をかけて推敲などをして書くでしょうからたぶんいつもより(さらに)ペースが遅れると思われますがご了承ください。
 ではここでクエッション。榛名が目覚めた力はいったいなんでしょう? それではみなさん、スー○ー仁君人形を準備してください。間違った場合はボッシュートです。
 なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
 それではまた次回。いつになるかは分かりません!!!
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