今回もあまりオリジナルとは変わらない流れですが、一つ二つオリ話を入れてあります。
彼ら、グレモリー眷属とヴァーリ一行の一部とアザゼルは本物の冥界の中級昇格試験の会場の広いフィールドに出ていた。
結果から言えば、彼らは脱出に成功した。
死神たちとジークフリードに加えて最上級死神プルートも加えた大混戦を収めたのはまさにイッセーとリアスの愛の結晶、
正直ここは故人のことがあるので説明は差し控えさせていただくがともかくも目的の一つ、「結界装置の破壊」は成功あと一歩のところまで行った。だが、問題が起きた。
旧魔王派シャルバ・ベルゼブブが英雄派レオナルドを強引に連れ出して乱入し、彼の神滅具、
大きさだけならグレートレッドより頭二つ分は大きい大きさ約200m近くはある巨大な化け物と、それより一回り小さいこれまた大型のモンスターが数体。ジークフリードの言葉ではどうやら無理矢理に引き出された力らしく、それにはハーデスも一枚噛んでいるらしかった。
ともかく怪物たちを止めようとイッセーたちは攻撃を加えたものの全く効かず、そのまま怪物たちは冥界に転移されてしまった。しかも影響はそれにとどまらず、フィールドが突如現れた怪物の影響で悲鳴を上げ始めた。
しかも、その状況下でシャルバはオーフィスを捕えてしまった。この最悪の状況下、すでに英雄派は姿をくらませ、死神たちも遁走していた。この混乱の中、リアスたちにできるのはただ黒歌の力を借りて脱出することのみであった。
しかし、イッセーはただ一人留まった。オーフィスを見捨てられないというのである。
もしこのことが世に明るみに出れば現魔王一派は大王派の追及を受けるだろう。「諸悪の根源たるオーフィスを助けるのを身内に許したのか」と。だが、イッセーにはそんなことを考えられる余裕はなかった。ただ、オーフィスと冥界の子供たちをシャルバの手から守らねばならないと純粋に思ったのだ。
だから、イッセーはあのフィールドに残った。そして脱出した一同は急遽呼んだタンニーンの力を借りて
タンニーンにファーブニルを封じた人工神器を持つアザゼル、そしてサマエルの毒に苦しみながらもヴァーリが
「大丈夫。イッセーは大丈夫よ。何せあのイッセーなのだから。」
「はい、私も……信じています。」
リアスとアーシアがそう言い合う。たとえダイスケが死んだという状況でも、イッセーだけはきっと大丈夫だと信じたいのだ。
何せこれまで素っ頓狂な方法で危機を乗り越えてきた男だ。そこがダイスケとは決定的に違う。信じられる要素だ。そう木場も信じている。
あの
そんな状況であるのに、協力体制にある各神話勢力は動けずにいた。曹操の存在がネックになっているのだ。何せその身に宿すのは神をも殺す槍。その特性は主神や魔王たちには最悪の毒だ。下手に多勢力に助力して討たれれば元も子もないということでどこも主力派遣に二の足を踏んでいる状況だ。
そのため各勢力から天界の
ゼノヴィアとイリナが天界についたという連絡も入った。こちらのも今日はイッセーを除いてはほぼ完遂したといっていい。きっとデュランダルを直し、新たなる戦力を持ってこちらに帰ってきてくれることだろう。
だが、木場が最も期待しているのはイッセーである。何せイッセーはすでに冥界の希望であり、子供たちのヒーローなのだ。そのイッセーが来なければきっと、冥界に真の希望は訪れないだろうと考えているくらいだ。
ダイスケの正確な生死の情報はまだつかめていないが、おそらく絶望的だろう。何せあの曹操が太鼓判を押してきたのだから。だからせめてイッセーだけは――
「よし、ドライグの波動を捕えた!」
「
三人がドラゴンのオーラを門に飛ばしてその扉を広げる――
「イッセー、信じているから……!」
*
霧が晴れきった採石場。すでに時間は彼の一件かなり経過しており、日の光はオレンジ色を帯びてきている。
そんな中、エリーとマリーの二人はただ立ち尽くしていた。そんなに簡単にダイスケの死を受け入れられるわけではない。だが、目の前に突き付けられたいくつもの証拠が二人に現実を受け入れろと二人を責めたてる。
それでもなぜか涙は出なかった。普通なら愛する者を失えば涙の一つも流すだろう。それなのに、涙は流れない。そんな中、マリーは必死になって声を絞り出す。
「お姉さま……これから私たちいったいどうすれば……。」
何もわからなかった。これからの生活、これからの日常。当たり前にあったものが突然音を立てて崩れ去ったいま、それらが突然不透明なものになった。
思えばどこかで油断していたのだろう。自分たちがいつ命を落とすやもしれぬ世界にその身を置きながら、きっと今の関係性や生活は続いていくと思ってしまっていた。
涙も流せぬ今の彼女たちの状態は混乱といったほうが的確なのだろう。当然、これからの未来もも見えなくなる。
そんな中、エリーは一人決心していた。
「――やることなんて、一つだけネ。」
エリーの双眸は、涙を流す代わりに決意の炎に燃えている。
彼女には、故人の喪に服するという選択肢はとうに消えている。ただあるのは、大切なものを奪ったものに対する報復のみ。
「――リベンジ、するだけ。」
その言葉を聞いたマリーは驚いた。その決意に燃えた瞳にも。
「でも――どうするんですか。ダイスケさんだって抵抗はしたはずです。それなのに榛名さんには傷一つありませんでした。そんな人を相手にするなんて、禁手に至れた私たち二人でかかっても勝てるかどうか……。」
マリーの指摘にも、エリーの決意は揺らがなかった。
「私たちで足りないなら、人数を増やせばいいだけネ。」
「そんな! 付き合ってくれる人たちなんて――」
そこまで言いかけて、マリーは思い出した。
いるではないか。金さえ払えば戦う連中が自分たちのすぐそばにいるではないか、と。
「まずは仲間を集める。マリー、手伝ってくれる?」
それは他者を死に誘う行為だ。人として許される行為ではないだろう。だが、彼女たちはあえてその罪も被ると決めた。
「共に逝きます、お姉さま。ええ、どこまでも。」
*
イッセーは崩れゆくフィールドの中、オーフィスを捕えていた魔力製の縄を引きちぎり、オーフィスを自由にする。
シャルバはすでに斃した。真紅の鎧のクリムゾン・ブラスターで消し飛ばしてやったのだ。そんなイッセーに、オーフィスは問う。
「赤龍帝、どうして我助けた?」
「……だって、お前はイリナとアーシアをゲオルグの火球から助けてくれただろう?」
「あれ、我にかまってくれた、あの者たちへの礼。赤龍帝が、我を助ける理由にならない。」
「アーシアとイリナは俺の大切な仲間だ。その仲間を助けてくれたっていうなら、それだけで俺が動くのには十分な理由さ。……それに、俺にはお前がどうしても本当に悪い奴には思えないんだ。なんで、あんな連中と手を組んだんだ。」
「グレートレッド、必ず倒すと約束してくれた。我、次元の狭間に帰って、静寂を得たいから。」
要は単なる口約束のようなものだ。それを信じてしまい、禍の団のトップの座に座ってしまったのだ。
「そんな口約束、あんな連中が守るわけねぇよ……。ずいぶんと利用されてきたんじゃねぇのか?」
「グレートレッド、倒すためなら、我はそれでもいい。だから、蛇、与えた。――赤龍帝と、ゴジラに会いにあったの、一つはゴジラが我の力をどうするか興味があった。もう一つは、赤龍帝がいつも違う成長をしているのに、天龍に秘められた何かがあると思った。その二つに、我が望む夢が果たせられる何か、あるかもと思った。我、なぜ存在するのか、その理由が、あると思った。」
「……ああ、そうか。そうなのか。俺、ようやくわかったよ。」
ここ数日の間のあるとき、ダイスケが言っていたことを思い出す。
『――あいつ、ただ単純に純粋、ってだけじゃねぇのかなぁ……。』
その時は何を言っているのかわからなかった。あいつ、すなわちオーフィスはテロリストの首班である。そんなやつが純粋であるわけがない。グレートレッドを倒すその先に、きっと大いなる野望がほかに何かあるはずだ。そのときはそう思っていた。
だが、実際にこうしてオーフィスと喋ってみて分かった。ダイスケのほんの少しばかりの勘は当たっていた。このオーフィスという存在は、単純に純粋なのだ。
ただ自分がなんなのか知りたくて、自分の居場所がほしかっただけ。だがら、甘言を素直に受け入れてしまったのだ。要は子供と一緒なのだ。それも、無限の力を持ち、これまでの長い時の中で現世に興味がなかったせいで世俗と疑うということを知らぬ子供だ。
もちろん、それがテロリストたちを増長させてしまったという点においては非はある。ただ、子供にそれを判断することができるだろうか。
オーフィスが世俗から離れ、何も知らなかったのは無限であるからだ。無限の力を持つから他者はオーフィスを恐れ、遠ざけ、神聖化し、距離を取った。他者から遠ざけられれば、自然に心と興味は離れていく。なのに、それでもなお他者は自分を恐れる。
だからオーフィスは何もない『静寂』を得ようとしているのではないだろうか。そこに付け込まれたのではないだろうか。
寂しくてかわいそうなドラゴン。俗世に生きるものの傲慢な見方かもしれないが、ひょっとしたらそれがオーフィスの本当の姿なのではないかと、イッセーは考えてしまう。
だから、その言葉が自然と口に出る。
「――なあ、オーフィス。俺と友達にならないか。いや、俺だけじゃない。みんなとも。」
「……友達? それ、なると、何かお得?」
「そうだな、話し相手くらいにはなってやれるよ。」
「そう、それは楽しそう。」
「ああ、きっと楽しいさ。」
そう言ってイッセーは右腕の激痛に腕を抑える。
右腕はシャルバに攻撃された箇所だ。それも、サマエルの毒で。
シャルバはハーデスにサマエルの血をもらったと言っていた。ハーデスはよほど三大勢力に嫌がらせをしないと気が済まないのだろう。迷惑な話だ、とどこかイッセーは他人事のように思う。
しかし、その毒の痛みは痛みと形容してはならないほどの激痛をイッセーに与えていた。全体がバラバラになりそうなほどの痛みだ。こんな痛みはこれまで生きていた中でも断トツだ。
だが、それも
フィールドが崩壊し、風景が割れ物のように崩れ去って次元の狭間に落ちていく。だが、たとえ次元の狭間に落ちてもオーフィスは無事だろうし、イッセーも鎧を維持したままなら
だから、痛みを押してイッセーはただ、オーフィスとともに前へと進む。ずっと、ずっと。
次第に歩く力も体から抜けていく。途中からオーフィスに肩を貸してもらっているくらいだ。
そのうち、眠くもないのに視界がぼやけていく。サマエルの毒の痛みすら感じなくなってきた。
『相棒! しっかりしろ! もうすぐ、もうすぐだ! アザゼルたちが
わかってる。わかっているのだ。
帰ったらまずは今日の試験の反省会をしなければならない。それに、学校の中間試験の勉強もしなければならない。
特に英語を勉強しなければ。悪魔になってから悪魔としての特性のおかげでリスニングは得意になったが、文法などはいまだに不得意だ。だから、ダイスケに見てもらわなければ。
そのダイスケが――死んだ、というのはきっと曹操のデマだ。あの男がそうそう簡単にくたばるはずがないのだから。きっと無事だ。みんなもきっと無事に本物の冥界にいる。
そう、家に帰ったらまずは――
「――なあ、オーフィス。」
「?」
「お前、家に帰ったらまず何したい……?」
「我、どこにも帰る場所、もうない。次元の狭間にも、この状態じゃ、帰れない。」
「そっか、それなら……俺の家に帰ればいい。」
「赤龍帝の家に、帰る?」
「……ああ、そうさ。アーシアと……イリナとも仲良くなれたんなら……きっと、ほかの、みんな、とも……。」
そう言いながら歩こうとするが、足が前に進まない。それどころか、どうやら倒れたらしく視線が上に横になってめまぐるしく景色が変わる。
そして、そのまま指先さえ動かせなくなった。
「……なあ、オーフィス……おまえって……だれかを……すきに、なったこと、あるか……? おれは、あるぜ……あの、すとろべりー、ぶろんどの……。ほら、めのまえに……。」
ここで見えるはずがない。見えるはずがないのだ。なのに見える。それは、あの一度死んだときに見えた憧れの
『相棒、気をしっかり持て! 皆がお前を待っているんだぞ!!』
それは十分に理解している。
アーシアはいまだに泣き虫なところがあるから早く帰って安心させてやらねばならない。
朱乃は気丈に見えてもろい面がある。
小猫とレイヴェルも仲良くなったとはいえ喧嘩友達のようなもの。喧嘩をまたしているようなら仲裁せねば。
ゼノヴィアもイリナも今は仲がいいとはいえ元は敵だった。それが変われば変わるものだ。
ロスヴァイセとギャスパーが帰ってくるのが楽しみだ。きっと前よりももっと強くなっているだろう。
アザゼルには世話になりっぱなしだ。まあ、迷惑させられることもたまにはあるが……。
木場の視線には時折危ないものを感じる時があるが、それでも至上の友だ。
テストが終わったらまた松田と元浜と一緒にバカをやろう。
「ドライグ、この者は呪いが全身に回っている。――もう、限界。」
『そんなことは先刻承知だ! だがな、オーフィス! この男は死なん! この兵藤一誠はいつだって立ち上がってきたのだ!!』
サイラオーグとヴァーリとはいずれちゃんとした決戦をしたい。その時までに強くならないと。
ダイスケともいつかは――。
そしてリアス。愛する女性。
《イッセー、信じているから……!》
本当に、告白できてよかったとイッセーは思う。そして、必ず彼女のもとへ帰るのだ。
なぜなら兵藤一誠はリアス・グレモリーの
「大好き、だよ。リアス――」
最も口にしたかったことは言えた。それで、十分幸せだった――
「ドライグ、この者、動かない。」
『……ああ。』
「ドライグ、泣いている?」
『……ああ。』
「我、少しだけの付き合いだった。」
『……そうだな。』
「悪い者ではなかった。――我の、最初の友達。」
『……ああ、この者にはさんざん心を痛めつけられた。頭を何度抱えたことか。だが……それでも楽しかった。なあ、オーフィス。いや、この男の最後の友よ。』
「?」
『俺が次の宿主に移るまでの間、その少しの間だけ話を聞いてくれないか?』
「わかった。」
『この男のことをどうか覚えてやってほしい。その話をさせてくれ……。』
「この者、いい赤龍帝だった?」
『ああ。最強じゃないが、
*
「来た! くるぞ、受け止める準備を!!」
どんな状態でイッセーが来るかわからない。全員がイッセーを迎え入れる準備をする。アーシアも治療の態勢を整えている。
そして門から現れたのは――八個の
イッセーの姿はどこにもない。
一瞬、だれもが呆気にとられた。
「……バッカ野郎……本当にバカ野郎だ、お前は……ッ!」
誰よりも早く事態を理解したアザゼルが膝をつき、大理石の床を殴る。その絞り出したかのようなアザゼルの言葉で、一同は徐々に状況を理解していく。
朱乃が力なく床に座り込み、リアスはその真実を受け入れられずに呆然と立ち尽くす。
「え……? イッセー、さん……は……?」
あまりの出来事に脳内がオーバーフローしたアーシアが問う。目を見開き、言葉も口にできなくなるほどのショックを受けた小猫にレイヴェルが縋り付き、嗚咽を吐露する。
「……こんな戻り方……ずるいよ、イッセー君……。」
そういう木場の両目からはとめどなく涙が流れた。
この日、オカルト研究部はダイスケのみならずイッセーまでも失った。
*
「ゲマトリア演算からの神託が下りた。『黒き獣、海へと帰り、赤き龍は無限と夢幻の彼方へ。かの者たち、現世より共へ去らん。』――どうやら宝田大助と兵藤一誠は身罷ったようだ。これは曹操の作戦勝ち、といったところか。それとも運が彼を味方したのか。ビルガメス、これはどうやら彼を見限るのは早かったのではないかな?」
メトフィエスが瞑目し、部屋の中の董でできた椅子に座るビルガメスに問う。
ビルガメスは曹操の一つの失態によって彼を見限った。それは彼の計画から曹操が外れたことを意味する。
そしてメトフィエスはビルガメスの計画を補佐する役目にある。ここでダイスケが死んだということは彼の計画の補正が必要になったということだ。
「そも、英雄を目指す曹操ほど君の計画に沿う人間はいない。やはり、ここは彼を中心に置いたほうがいいのではないか。」
メトフィエスの指摘するところは正鵠を射ているだろう。そして何より現実的だ。ここで死んだ人間を計画の中心に置いても実現は不可能だ。
しかし、それでもビルガメスはこだわりを捨てない。
「いや、それでも余は彼の者を計画の中心とするつもりだ。なにより……
「キングギドラを宿すものとしての直感……いや、そういった感覚か。しかし、死んだ者はよほどの手段を用いない限り生き返ることは――」
メトフィエスがそこまで言った時、手にした黒い水晶体が不規則な明滅を放つ。それを読み取ったメトフィエスはそれを地球の言語に訳してビルガメスに告げる。
「信託の続きのようだ。『なれども黒き獣はその秘めたる心を表し、赤き龍は無限と夢幻の力を伴い現世へ再び舞い戻る。』――これは、まさか。」
メトフィエスがその内容に驚きを覚えるが、ビルガメスは我が意を得たりとばかりに目を見開いて立ち上がる。
「余の感覚はどうやら間違っていなかったようだな。やはり余が彼の者を選んだのは間違いではなかった!」
ビルガメスはそう言うと、、マントを羽織って部屋のドアを豪快に開く。
「少しばかり物見遊山に行ってくる。死者の復活など、そうそう見れるものではないからな! そして死者が集う場所といえば――冥界であろう。」
ということで原作通りイッセーが死んだVS84でした。ここのところはそんなに変えられないんで、本当にすいません。次回からはちゃんとオリジナル要素を継ぎ足していきます。
そして
あとアンケートも募集しております。詳しくは活動報告にて。
なお、感想などもお待ちしております。いつでも待ってますのでどしどし送ってきてくださいね。皆様から頂く感想はオンタイセウの活力となります。
それではまた次回。いつになるかは分かりません!!