七色の探索者   作:チャーシューメン

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 一応、最終回となります。
 ご愛読ありがとうございました。
 俺達の戦いはこれからだ!



優雅なる窓辺

 

 細波の音が優しく響く、このコテージ。

 夕焼けの天幕に、浜辺のステージ。観客は穏やかな海とアリス。

 舞台女優は、八雲紫。白いビキニ姿で、少女にしては完璧過ぎるそのプロポーションを惜しげも無く晒し、涼しい顔をしている。正直、見たくもないものを見せつけられても迷惑以外の何者でもないのだが、水平線の向こうに沈み行く赤い太陽を背に、肩越しに微笑むその姿は、悔しいけれど絵になっている。

 藤の蔓を編上げたロッキングチェアに座り、アリスは海を眺めていた。ここはおそらく、八雲紫の別荘だろう。物事の隙間に自分の居場所を作ることが出来る、それが八雲紫の力である。こんな別荘の一つや二つ、隠し持っていてもなんら不思議ではない。

 濡れたブロンドの長い髪を揺らしながら、紫はアリスの方へ足跡も残さず歩いて来ると、向かいの席に座った。曲がりくねったストローに口を付け、いつの間にか、手にしたトロピカルジュースを飲んでいる。トロピカル……何の果実の絞り汁なのかサッパリ分からないが、兎に角トロピカルな色をした怪しげな液体を飲んでいる。

 紫は悪戯子猫のようなそのキラキラした瞳をアリスに向け、この上なく楽しそうに言う。

「退屈ね」

 付き合うのは、馬鹿馬鹿しい。

 アリスは口火を切った。

「魔理沙は?」

 紫は視線を少し落とすと、首を振った。

「間に合わなかったわ」

 アリスは奥歯を噛み締めながら、紫の言葉を待った。

「あの場所はね、私の力も及びにくい場所なのよ。それにあの子、なんだか妙な魔法を使っていたみたいだし……」

 試作のマジックアブソーバーの事だろう。確かに、魔力自体を霧散させるあの魔法は、紫の力にも影響を及ぼすかもしれない。

「もう少し早く、気付いていればね……」

 視線は海の彼方。友人を喪い、流石の紫も笑顔でいられる訳ではないようだ。その瞳は潤んでいた。

 涙である。

 何処かで、ホッとしている自分がいる事に気付いた。友人として、八雲紫に期待をしていたのかもしれない。嘘か誠か、それすらも得意のペテンの内なのかもしれないが、少なくとも、無神経な反応をしなかったことで、アリスは八雲紫という人物に失望せずに済んだ。

「魔理沙……」

 強張った頬からは、呻きにも似た言葉しか出ない。てゐのペンダントを強く、握りしめた。

「止しましょう。覆水盆に返らず。起こった事実に手を加えることは出来ないのよ。過ぎた事を言っても詮無いことだわ」紫は眉を開き、笑顔を作った。「ねえ。何か楽しいお話してくれない?」

「お話?」

「退屈じゃない」

「そう、ね」

 アリスはロッキングチェアに深く坐り直し、紫を見据えた。

「なら、こんな話はどうかしら?」

「何かしら」

「帰るお家を探す、哀れな女の子のお話」

 ふっ、と紫は優しく笑った。

「聞きましょう」

 その瞳は、相変わらず、遠く海を見つめていた。

 アリスは、ロッキングチェアを揺らした。

「昔々、人間が歴史を記憶に刻み始める、その少し前」

 ゆっくり、ゆっくりと。

 軋むその音が、ささくれ立った神経に心地良い。細波の音に、それは似ていた。母のメロディ。生命の音楽。

「一人の女の子が、不思議の国から堕ちて来た。白兎を深追いして、彼の作った大きな穴に、転がり込んでしまったのね」

 今でも思い出す事が出来る。あの白兎の大きな背中。歩く仕草。喋り方。

 現実なのか、妄想なのか。

 嘘なのか、誠なのか。

 善なのか、悪なのか。

 果たして、それは兎だったのか。

「女の子は、哀しくて毎日泣いたわ。此処には大切なお友達もいなければ、大好きなパパとママも居ないんだもの。身勝手な白兎は、何処かに行ってしまった。だあれも居ない世界で、一人ぼっち」

 孤独。

 星の無い夜空を飛ぶ、ひとひらの蝶の様に。

 月も無く、飛び込む炎すら見えない。

 暗黒と絶望の世界を唯一人、彷徨う少女「アリス」。

「女の子は、如何しても帰りたかった。パパとママのいるお家に。大切なお友達がいる場所に」

 孤独は、毒だ。

 人の心を強めもするし、弱めもする。そして、殺す事も。毒は己の奥深くにまで入り込み、心だけでなく、その肉体をも汚してゆく。

「女の子は、帰りたかった。だから、死ぬ訳にはいかなかった。生きる為に奪い、喰らい、殺すうち、女の子はいつしか、こう呼ばれるようになった。妖怪、と」

 絶望の中に堕とされたヒトは、容易く、考えるよりもずっと簡単に、幻想になってしまう。血を吸ったヒトは、容易く、想像するよりもずっと簡単に、日常を捨ててしまう。

「妖怪に成り下がっても、女の子は帰りたかった。いつか、帰る道を見つけ出すために。女の子は、世界に自分の居場所を創り出した。自分が自分として存在出来る場所を」

 それを繋ぎ止めるには、場所が、仲間が、そして力が必要だ。孤独を克服し、己を律し、ヒトとして日常に在る為に。

 古の人々は、その為に宗教を創った。

「その場所の名は、幻想郷。その女の子の名前は」

 アリスは、彼女の顔を見つめた。

 その顔に、動揺は欠片も見られなかった。

「八雲紫、貴女よ」

 紫の横顔には微笑すら浮かんでいた。

 八雲紫が自らと同じ存在であると気付いたのは、魔法の森の地下遺跡で、豊聡耳神子の天井画を見た時だ。

 正確に言えば、八雲紫だけではない。この幻想郷に生きる全ての者が、アリス・マーガトロイドと同じく、不思議の国に迷い込んでしまった存在なのである。何故なら、其処は不思議の国そのものなのだから。

 幻想郷は、八雲紫が創った不思議の国だ。白兎に連れられて、帰る道を失くした「アリス」は、いつしか自らも白兎と成り果て、人々を導くのだ。永遠に続く家路へと。

 結局、誰も彼もが同じなのだ。

 在るべき場所を求めて、出口の見えない旅をしている。

 八雲紫が只の白兎でない所以は、彼女は自ら、迷い込む為の不思議の国を創ってしまったところである。其処に自らと同じ「アリス」達を呼び集め、生きる術を与え、力も与えた。

 場所、仲間、そして力。

 その全てを備えた、八雲紫というか弱き存在を繋ぎ止める為の揺籠。それが、幻想郷なのである。

 力の名は、博麗。

 古に忘れ去られた、人造の神の名。

「外界を呼び込み、異変を起こしていたのは、貴女ね。スペルカードルールの原案を創ったのも、貴女」突き付けた人差し指は、微風の様な微笑に流されてしまう。「博麗の巫女、霊夢に異変を解決させる、その為に。博麗の力を、忘れられないようにするためかしら」

「面白いおとぎ話だこと。元ネタはルイス・キャロルかしら?」

 紫はせせら笑う。否定も肯定もしない。

「白兎さんは、私も見た事ありますわ。本当よ? 丸くてフワフワの大きな尻尾に、長〜い耳が可愛いかったわ。でもあいつ、性格がホント最悪なのよねぇ」

 紫は嘯くが、眉唾である。

 実際の所、アリスは自身の予想の全てが当たっているなどとは考えていない。現時点では憶測に過ぎないのだ。情報は断片的過ぎて、推論を成すには足りない。

 また、推論を成す事、それ自体に意味が無い。八雲紫か何処で何を成そうと、アリスには関係の無い事だからだ。その行いの善悪も過去も未来も、アリスには大して重要ではない。

 アリスにとって大切な事は、唯一つ。

 八雲紫が、自らと同種の存在であるという事。それだけなのだ。それだけは、確信がある。

「なるほど」

「え?」

 アリスが言うと、紫は眉を上げた。

「異変を呼び込むのは、博麗を忘れさせないためじゃないのね。考えてみれば、わざわざ創ったあの神を地下の墓に埋めて、博麗を忘れさせたのは、他ならぬ貴女だもの。なら、何の為かしら」

「別に私が作ったんじゃないけどね。埋めたのも私じゃないし」

「異変を起こしているのは、闘争が無ければ、妖怪の力が衰えてしまうからかしら。それとも、兵隊が欲しいからかしら?」

「つまり、軍事力ってわけね。そんな軍隊を創って、私は一体、何をしようって言うのかしら」

「あの月を、侵略したいんでしょう? ……いや」アリスの目は、鋭く紫を捉えている。「取り戻すと言った方が正しいかしら」

 紫の表情から、一瞬、笑みが剥がれ落ちた。

「昔々、一人の少女が、この世界に堕ちてきた。そう。堕ちて来たんだわ。貴女は」アリスの指が、天上を指す。「あの月から来たんでしょう?」

 トロピカルジュースに口を付け、すぐにその顔にまた笑みを貼り付ける紫。

「あんたはあの月から、罪を犯して追放された。あんたの罪がなんなのか、それは分からない。しかしあんたが月から来たと考えれば、辻褄が合う」

「へえ?」

「だからあんたは、月への異常な敵対心を持ち続けているんでしょう? 自分の居場所を取り戻したいから」

 紫は腹を抱えて笑った。

「なるほど、八雲紫は月の姫君だったと? 面白いお話ですわ。実は私が、月の支配者、嫦娥だったとか? だとしたら、もっと面白かったんだけど」髪をかき上げる仕草が雅である。「残念だけど、その論には致命的な穴があります。私は月人じゃないもの」

「最初に月の都に迷い込んだのだったら?」

「故郷でもないのに、あんなところに戻りたいなんて思う人間が、いると思う?」

 天上を見上げて、紫が言う。なまめかしい喉元のラインが露わになり、アリスは鬱陶しく感じた。自己主張が激しいのか、存在自体が煩い。霞のような隙間妖怪のくせに。

「それもそうね。じゃあ、違かったみたいね」

 簡単にアリスが言うと、紫は盛大に吹き出した。

「なら貴女は、実は外の世界の人間なんでしょう? 博麗大結界を守ると見せかけて、実は外界から幻想郷を乗っ取ろうとしている。そのために、異変を起こしているんじゃなくて?」

「支離滅裂だわ。やめましょう。これ以上聞くと、私の腹筋が持たないわ。よくもまあ、口から出まかせを、次から次へと。時間稼ぎがバレバレよ?」

 紫は立ち上がり、砂浜から少し高くなっているコテージの、その手すり部分から手を突き出した。

 その妖艶に濡れる人差し指で、つつつ、と空間をなぞる。途端、空間がぱっくりと割れ、何処か別の場所に繋がった。紫の力、隙間を支配する能力である。紫はそこへ無造作に右手を突っ込んだ。

「あっ」

 すぐに引き上げたその手は、別の腕を掴んでいた。

 その肌は、蜉蝣のような白い色をしている。

「ごめ~ん。見つかっちゃった」

 腕を掴まれて宙吊りにされたまま、てへ、と古明地こいしは舌を出して笑う。

「貴女が探索で私の目を引きつけて、その間、隠密に長けた彼女が、私の調査をする。そういう算段だったんでしょう? だから、時間稼ぎのでまかせ話までした」

「さすがね。察知されているとは」アリスは両手を広げ、降参の意を示した。「でも最初に言ったのは貴女でしょう? 楽しいお話をして、って」

 アリスの調査対象は、最初から八雲紫個人だった。紫が何処で何をしようと、アリスには関係が無い。重要なのは、彼女の持つ情報と、力だった。アリスを幻想郷に引き入れたのが紫なのだとしたら、そこへ帰る方法を知っているはず。よしんば知らなかったとしても、彼女の力と集めた情報を使えば、帰る道が開けるかもしれない。しかし、あの八雲紫がそう簡単に協力してくれるはずもない、交渉の材料が必要である。彼女が負い目と感じ、その弱点となるような材料が。そうして始まったのが、この探索だった。

 そう。紫は負い目を感じている。

 だから紫は、こいしもアリスも、殺さないのだ。

 だから、アリスは今も、紫を友人だと思えている。

「私の屋敷まで見つけ出すとは、大したものだわ」

 八雲紫の本拠には、彼女の忠実な式神である、八雲藍が居る。九尾狐の大妖怪である藍が守る屋敷は、幻想郷と外の世界の狭間に存在し、おいそれとは見つからない。見つけられたとしても、藍の目を掻い潜るのは難しい。そんなことが出来るのは、無意識の死角を突ける古明地こいしをおいて他にはいまい。

 古明地こいしは、天狗の里で見つけた「真実」にショックを受け、この探索に協力してくれている。

「あの狐さんに見つからないようにするの、苦労したわ~。でも油揚げのトラップを仕掛けておいたら、簡単に引っかかってくれたわよ~。かっわい~」

 紫は左手でこいしの頬をはたいた。スパン、と綺麗な音がする。

 ぶらりぶらりと、こいしの小さな体が左右に揺れる。

「いった~い!」

 こいしはケラケラと笑っていた。覚妖怪の証である「第三の目」を閉じてから、彼女には怒りや憎しみといった感情が欠落しているのだ。彼女には喜怒哀楽の楽しか存在しない。それでも、拾った「希望の面」とやらでかなり感情を取り戻してはいるが、まだまだ希薄である。

 こいしはきっと、自分の感情を取り戻そうとして、アリスに協力してくれていたのだろう。天狗の里で見つけた「真実」。それに明確な怒りを覚えられなかったことが、古明地こいしにとって、重大な事態だったのだろう。こいしもアリスと同じだ。在るべきカタチを求めて、探索をしている。そこから未来へ進むために。

「まったく、藍にはお説教が必要ね」

 紫は溜め息を吐いて、こいしをぽいっと放り投げた。

「あ~れ~」

 宙を舞ったこいしは、待ち構えていた隙間に飲み込まれて消えた。

 紫は再びロッキングチェアに座り、ストローを咥えた。

「地霊殿に送り返したの?」

 アリスが問うと、紫は口角を上げ、不気味に笑った。

「いや、地獄に送ってやったわ」

 しかし、アリスには、確信があった。

「あんたは、そういうことはしないわ」

「なんでそう思うのよ」

「その甘さは、あんたの武器だからね」

「甘さ、ねぇ……、へえ、欠点じゃなくて?」

「武器でしょう。それをやっていたら、私を完全に敵に回している。古明地こいしの姉も。胡散臭い割には敵を作れない、そういう性質は、あんたの寿命を確実に伸ばしているでしょう」

 喜怒が混じった複雑な表情をする。

「つまらないわ、からかい甲斐が無くて」

 紫はストローでトロピカルジュースをぐるぐるとかき混ぜ始めた。

 アリスへと瞳を向ける。その表情にいつもの作り笑いは張り付いていない。大きな目を鋭く尖らせて、刺すような視線である。

「史記を、読んだのね」

 アリスは頷いた。

「天狗の里にあったわ」

「そう……」

 天狗の里に隠匿されていた「真実」。

 その研究資料の中に、史記は在った。

 正式名「幻想史記」。八雲紫が編纂した書物である。いわゆる紀伝体の形をとった書物であり、アリスが天狗の里で入手したものは、本紀にあたる巻であった。

 本紀には、幻想郷の成立からの歴史が記述されていた。

 そして、都度起こった異変の記述も。

 魔法の森。

 緋想天。

 神霊廟。

 紅魔館。

 旧地獄。

 全て、幻想史記に異変発生の記述があった場所である。そして、その他にも。

「史記を読まなければ、儀礼刀の存在に気が付くはずがないものね。社の中に刀があれば、普通は御神刀だと思うもの」

「記述が簡素で、内容の読み取りに苦労したわ。おまけに暗号で書いてくれちゃって。まあ、解読は容易かったけど」

「そりゃ、読んでもらうために書いたのだもの。あれは時期尚早に公開されてしまった場合の意思表示ですわ。これは、今は隠すべきものだ、ってね」

「いつかは公開する気があったというわけ?」

「いずれ……遠い未来に。螺旋が直線になってしまうくらい未来に、かしら」

 渦を巻く極彩色の液体。紫はそれを見つめながら、遠い、はるか遠い場所を見つめる。それは、ここではない何処か。

「何故」たまらず、アリスは問うた。「何故あれを放置している」

 真実。

 八雲紫が異変を起こしている。そうアリスが確信したのは、紫がそれを放置していたからだ。存在自体が天道に背き、幻想郷にとって害悪以外の何物にもならないだろう、それ。やがて大きな異変を起こすことは明確である。

「それはこちらの台詞ですわ。何故あれを解放したのかしら」

 初めて、紫は責めるような視線を向けた。

「あれが人里で何をしでかしているか、知らないわけではないでしょう」

 上白沢慧音が頭を抱える、神隠し。

 十中八九、アリスが解放してしまった真実達が関わっているのは間違いない。

「言い訳にしかならないけれど、あれは事故よ。それに、打てる手は打っている」

 協力者達とともに、真実達を捜索している。今もアリスの人形達は捜索を行っているだろう。パチュリー・ノーレッジが提供してくれた、魔力貯蔵を行う「賢者の石」のレプリカは、アリスと人形が一時的に分断されたとしても、自動探索と自動帰還を行える能力を実現してくれている。

「貴女こそ」開き直りだということは自覚していた。「何故、天狗共の行いを放置している。貴女なら簡単に対処できるのではなくて?」

「買いかぶられたものね」

 紫はストローをかき回す手を止めた。極彩色の液体は、慣性に従って、渦を巻き続ける。

「一度放たれた運命の矢は、途中で止めることなど出来はしないわ。事態はとっくの昔に、私の手から飛び立っている。もはや私も、舞台の上の女優の一人でしかない」

「違うわね。あんたは異変を望んでいる。だからこそ、放置しているんだろう。異変を起こし、それを博麗の巫女に解決させる。それこそが、幻想郷を維持存続するために必要なプロセスだからだ。闘争がなければ、人の心は穏やかに死んでゆく。だからあんたは、別の時空から人間を土地ごと呼び寄せて併合を行っている。人為的に異変を起こすために。あんたは神隠しの主犯なんかじゃあない。全ての異変の主犯だ」

 アリスの言葉に、紫は悲しそうに笑った。

 アリスはそれを肯定の意と取った。

「やはり、そうなのね。魔法の森の地下の遺跡は、未来の神霊廟なのね」

 橋姫の語った「併合」。土地の境界すら曖昧にしてしまう、八雲紫のその力。

 そんなことが可能ならば、時空の境界すら曖昧にできてしまうのではないのか。なにせ、八雲紫は「白兎」なのだから。時空を超えて別の世界を旅する、「白兎」なのだから。

「アリス。貴女、根本的に勘違いしているわ」

 八雲紫は、優しく言う。

「私は全能なんかじゃあないのよ。神霊廟の存在に一番驚いたのは、他ならぬこの私自身なんだもの。これだけは本当よ。過去も未来も、たった一人の人間には支配出来やしないの。だから……」

 その哀しい笑顔が、アリスの胸に突き刺さった。

「貴女の望みは、私では叶えられない。残念だけれど、私も貴女のホワイト・ラビットではないのよ」

 可能性の一つとしては、考慮していた。因幡てゐも予想していた。

「そう……」

 紫自身、帰るべきその場所を、未だ見つけられていないのだから。

 パチン。

 紫が指を鳴らすと、浜辺の風景はどろりと溶けて、瞬時に室内の風景に変わる。見覚えのある場所、それもそのはず、アリスの家だ。

 アリスは暖炉の前の安楽椅子に座っていた。

 いつの間にかドレス姿に着替えた紫は、書台の上に置いてあった「幻想史記」を取り上げた。

「これは預からせてもらうわ。今はまだ、公開するべき時ではない」

 机の引き出しを開け、中に在ったパチュリー製の博麗の模造刀を隙間に放り込んでゆく。

「古明地こいしが持つ儀礼刀も預からせてもらう。あれは社に安置しておくべきものなのよ。亡くなった人々の魂の安らぎの為に」

「勝手になさい」

 全ての品物を隙間に放り込んだ後、紫はアリスの方を向いて、言い訳するように言った。

「アリス。私を恨みたいなら、恨みなさい。それが貴女の生きる糧になるというのなら、私は甘んじて受け入れましょう」

 アリスは、首を振った。

「なんであんたを恨む必要があるのよ。これは、私の物語だわ。たまたま、あんたの物語と交差した……それだけのことでしょう。私は必ず、元の世界に戻ってみせる。どんな手を使っても。そうね……そういう意味では、私達、似ているのかもね」

 紫は、溜息を一つ吐いた後、言った。

「貴女みたいな毒舌無鉄砲娘と似てるだなんて、心外だわ」

 それでも、紫は少し、嬉しそうだった。

 紫が去って後。

 アリスは夕食の材料を背負い込んで、魔法の森を歩いていた。

 空は既に暗く、月が照っている。気温差に鈍くなったアリスには分からないが、外気温は震えるほどであろう。魔法の森の起伏は相変わらず厳しかったが、黙々とアリスは進んだ。

 やがて、目的地に着いた。

 魔理沙の家。

 ノブを回すと、鍵は開いている。不用心な魔理沙のことだ。いつも鍵を掛けていないのだろう。もっとも、こんな場所では必要になることなど、ほとんど無いが。

 アリスはまっすぐ台所に向かい、おさんどんを始める。魔理沙の性格を反映したかのように荒れ放題の部屋だが、流石にいつも使う台所周りはわりと綺麗に片付いている。あくまで、割りと、であるが。今朝の朝食の残骸を片付けることから始めるくらい、魔理沙の台所にしては上出来だろう。

 料理が出来上がり、片付けたダイニングテーブルの上にあらかた盛り付けた後、アリスは魔理沙の家を出た。

 家の前で、腕組みして待つ。

「十、九、八、七、六、五、四、三、ニ、一……」

 目を閉じて数える。

「ゼロ」

 アリスがそう言った瞬間、土の中から、何かが勢い良く飛び出してきた。

 上海である。

 両手に掘削用の魔動ドリルを持ち、胸元に輝く青い「賢者の石」のレプリカをつけている。魔力貯蔵を行うそれは、長時間に渡る上海の自立稼働を実現している。パチュリー・ノーレッジ謹製の魔法具だ。

「えらいわ上海、時間通りね」

 アリスが笑いかけると、上海は嬉しそうにアリスの周りをぐるぐると飛び回った。

「おーい」

 上海の出てきた穴から、手がひらひらと振られる。アリスはその手を引っ張って、声の持ち主を地上に引き上げた。

「うえっ、口ん中、土入っちまった!」

 はしたなく地面に唾を吐き捨てる、白黒の衣を纏った女。

 霧雨魔理沙だ。

「よく無事だったわね」

 アリスがしれっと言うと、魔理沙は口を尖らせた。

「よく言うぜ。全部計算してた癖に。全く、勝手に人にドーピングするの、やめろよな」

 魔理沙に飲ませた桃の濃縮ジュースは、衣玖から提供してもらった、天界の桃を使っていた。天界の桃には、体を頑強にする効果があるという。万一に供え、それを魔理沙に飲ませておいたのだ。

「斬られても平気だった時には驚いたぜ。便利だなこれ、私も使おうかな」

「あ、でも明日、副作用で、死ぬ程筋肉痛が来るらしいわよ」

「マジ? そんなもん無断で人に飲ますなんて、お前頭おかしいんじゃね?」

「そのおかげで助かったんだからいいじゃない」

「そうそう、助かったと言えば。瓦礫に飲まれた時は、流石にもうダメかと思ったけどなぁ、上海が防いでくれたんだよ。ありがとな、上海」

 魔理沙に礼を言われて、えっへん、と上海がふんぞり返った。

 上海には魔理沙を守るように命令していたが、予想以上の活躍だ。流石は究極の人形に最も近い存在である。

「魔理沙、すごいじゃない、あの八雲紫に一杯食わせるなんて。大金星だわ」

「へへ、そうかい」

 魔理沙は泥の付いた手で鼻の頭を擦った。

 今頃は紫も、腹を抱えて笑っている事だろう。

 アリスも、上海が傷つけられた借りを返すことが出来て、溜飲が下がった思いだ。

「ほらよ」

 魔理沙が放り投げてきたものを受け取って、アリスは目を剥いた。

 地下の遺跡で見た紅白の陰陽玉、その内の一つだ。

「なによ、これ」

「お前が言ったんだろうが、なんか盗んで来いって」

 洞窟の前で交わした会話を、魔理沙は覚えていたらしい。魔理沙なら止めれば逆にやるはずと踏んだが、果たして予想通りだった。

「それにしても、何時の間に……」

「それにこれもな」

 アリスが巫女姿の弾幕に突き立てた儀礼刀を受け取る。

「ポシェットの方は流石に無理だったぜ」

「よくも、まあ……。でも、あんたの取り分が無いんじゃないの?」

「んなこたぁない」

 魔理沙は泥だらけの顔でニカッと笑う。

 バッ、と着ていた黒いコートの胸元を開くと、その内ポケットにはぎっしりと金銀、宝石が詰め込まれていた。

「途中で宝物庫らしい場所を通ってきたんでな。ちょいと拝借してきた」

 アリスは声を上げて笑ってしまった。

 流石は魔理沙だ。まったく、こいつには敵わない。

「あんたにはもう、脱帽だわ」

 それ以上の形容のしようがない。

 笑いすぎて涙が出たのは、衣玖との馬鹿話以来だろうか。

 最近、よく笑っている気がする。多くの人々との出会いと交流が、そうさせるのだろうか。

 かつて幻想郷は、八雲紫一人の為の箱庭だったのかもしれない。

 しかし今は、此処を住処とし、此処を愛する人々がいる。

 八雲紫が創った、この美しい世界。

「しかし」

 すとん、と魔理沙が腰を落とす。

「腹減ったぜ……もう一歩も動けねえ」

 はしたなく笑い転げるアリスを見て、魔理沙はキョトンとしていた。

「そんなに面白いかぁ?」

 アリスはハンカチで涙を拭きつつ、魔理沙に手を差し伸べた。

「そう言うだろうと思ったわよ。夕飯、用意してあるわ」

「マジか。なんだよ、気が効くじゃねーか、おい」

 月の光に照らされる、魔理沙の満面の笑み。

 繋いだその手は、あたたかい。

 今更になって、気付いた。

 いつの間にか、アリスも此処を、この幻想郷を愛していたのだ。

 

 

 

「何? アリスが居ない?」

「ええ。慧音、貴女は見ていませんか?」

 人間の里の守護神、上白沢慧音は首を振る。

「いや、悪いが見ていない。いつものように家に引きこもって、魔法の研究でもしているんじゃあないのか?」

「彼女の家には行ったんですがね。居なかったんですよ。人形たちも半ば埃を被っていまして」

「ふむ……そういえば、夏頃に会ったとき、様子がおかしかったような」

「ほう」

 文花帖を取り出し、射命丸文は万年筆を滑らせる。

「具体的には、どのような?」

「頼みごとをしたんだが、にべもなく断られてしまってな。いつものあいつなら、嫌味一つで引き受けてくれるものだが」

「嫌味一つ、ですか」

 アリスの性格を思い返して、文は苦笑する。

「まさか、頻発する神隠しにやられたのではないか。最近は妖怪にまで広がっているそうだからな」

 慧音は顔を曇らせた。心配なのだろう。妖怪の心配をするなど、この女はお人好しを通り越して、まるで馬鹿である。しかし、愛すべき馬鹿だ。

「あのアリス・マーガトロイドが、神隠しごときにやられるとは、とても思えませんが……」

 文が言うのは、慧音を安心させるためではない。

 あの時。

 虹色の光を放つアリスの力は、文の全力を持ってしても打ち破れたかどうか。

「しかし、珍しいじゃないか。お前がアリスに用だなんて」

「少し、貸しがありまして」

 慧音はやつれたその顔を無理に綻ばせた。

「まあ、見つけたら連絡する。しかし、今は捜索に協力出来そうにない。客が、来ているからな」

 人の気配のしない寺子屋を見上げて、文は溜め息を吐いた。

「そうですか。では、お願いします」

 寺子屋を飛び立つ時、上白沢慧音は大きく手を振っていた。

「困りますねぇ。貸しは、返していただかないと」

 上空で、独り言ちる。

 あの時、アリスが言った「真実」。

 文はまだ、見つけられていない。

 

 

 

 穏やかなる風が、開け放した窓から入ってくる。

 午後の日差しの中、読みかけの魔道書を放り出して、アリスはまどろんでいた。傍らに侍る上海も、うつらうつらと船を漕いでいる。

 窓辺には、地下遺跡で手に入れた陰陽玉が置かれていた。

 探索はこれで終わりだろう。

 八雲紫ですらも、アリスのホワイト・ラビットではなかった。

 今は、待つしかない。新たな白兎が現れる、その時を。

 次の異変は、いつ起こるのだろう?

 その時現れるのは、どんな者なのだろう?

 未来を知る術を持たないアリスには、想像するしかない。

 アリスは、じっと待っている。あの陰陽玉を持って行く者を。

 その者こそが、アリスのホワイト・ラビットなのだろうか。

 その者は、果たして異変を起こすのだろうか。

 異変を呼びこむことで、紫と同じく、アリス自身も誰かの白兎になってしまうのだろうか。

 それは、分からない。

 ただ、決定的な何かが起こる。

 そんな予感がするのだ。

 しかし、今はまだもう少し、その甘い予感に浸って、微睡んでいることにしよう。

 この愛すべき、美しい幻想の中で。

 

 









あとがき


 この小説は、位置づけとしてはサイドストーリーです。
 アリス編で明らかにならなかった伏線は、もしかしたらメインストーリーで回収出来る……かもです。
 まあ大した設定はないのですが。
 ちなみに、僕の書いてる東方ものは全部設定つながってます。いつかばんきっきとアリスの晩酌話を書きたいですな。

 もともと、弾幕アマノジャクで存在した、あまりにも不自然なアイテム「血に飢えた陰陽玉」から妄想をした話となります。
 なんでこんなもんがあるのか?
 どこにあったのか?
 どうして正邪がもってるのか?
 何故弾幕アマノジャクにアリスと地霊殿組は出ていないのか?
 そんなことから妄想して書き始めました。

 題名から、もしかしたら、と思った人がいるかどうかはわかりませんが、ちょこっとだけクトゥルフ神話を意識しています。
 設定をほのめかすことで、なんかすごいことありそう、的な雰囲気を作りあげるというあの感じをちょっと狙ってみました。
 また、アリスの描写も少しだけ意識したり。潜在的な差別意識、身の毛もよだつ、嫌悪感で意識が遠のく、などですね。
 まあ真似ようとしたのは雰囲気だけなので、設定とかは全然クトゥルフじゃないです。
 あ、でもアリスの禁断魔法は「宇宙からの色」に似てますね。意識はしてなかったですが、モチーフにはなってたのかも。
 クトゥルフ以外に影響を受けたものといえば、サークル「ヘルメットが直せません」さんの「Alice in Woundedland」ですね。アリスの設定である、父親が人形職人であることや上海の出自はそれにモロに影響を受けていますね。ぶっちゃけそれ以外にもいろいろ影響受けてます。紫=メリー説採用もそれです。あ、言っちゃった。


 そんなわけで、この小説にはあんまり大きな目的はなかったりします。
 ストーリー的な最終到達点は四つでした。
 ・豊聡耳神子に旧一万円札を見せる。(四話)
 ・博麗の儀礼刀を風見幽香に渡す。(五話)
 ・妖怪の山へ侵入する。(七話)
 ・鬼人正邪に血に飢えた陰陽玉を渡す。(最終話)
 この全てのイベントを終えた時点で終了、というお話です。
 あとの話はもうオマケです。
 でもオマケが本編。どうせならいろんな東方キャラを出そうと、横道にそれまくって、話数を重ねました。
 いつしか目的が「東方キャラをかわいく書く!」に変わってます。……いつしか、てか、一話途中からですが。。。


 では以下、各話の振り返りです。


1.闇の中の二人
 版築っていう言葉を使いたかっただけの回。
 魔理沙は別に好きじゃなかったんですけど、魔理沙の容姿が美しくないと描写した時点で好きになっていました。
 この小説の主題も魔理沙のせいで「東方キャラをかわいく書く」に変わっています。最初はインディ・ジョーンズみたいな話にしようとおもってたのに。魔理沙……恐ろしい子!
 マリアリも別に好きじゃないんですけど、気づけばマリアリに。吸引力の変わらないただ一つのマリアリ。
 最近はシナリオ形式で頑張ってたんですが、これ書いて小説に戻ってきた感じですね。

2.完璧な天女
 お気に入り回。風景描写が楽しかった回です。
 山がいつのまにか花果山になってて、そんで敵は猿になりました。ほんとに花果山が天界にあるかは知りません。まあ天子も孫悟空モチーフだしいいんじゃね。
 衣玖さんはもちろんいきおくれ。完璧が故の悲劇です。もちろん私がもらいます、ほかの人にはあげません。
 アリスが紅茶好きという設定を採用していたので、その対抗として衣玖さんはコーヒー好きになりました。
 天界には桃しか食い物がないと天子がぼやくその後ろで、衣玖さんがドヤ顔でコーヒーをがぶ飲み、トーストにかぶりついてる。そんな天界が、僕は好きです。
 衣玖さんが言ってる噂の薬とはもちろん、オチンチンハエールX。

3.「私のホワイト・ラビット」
 儚月抄を読んでてゐの語尾がふつうだったので絶望して書いた一品。てか原作もウサ付きじゃないんですね。うさてゐかわいいのになあ。
 イタズラウサギとして書かれるはずが、いつの間にかお母さんキャラに。相変わらず迷走してます。
 でもお母ちゃんてゐもかわいいので許すウサ。
 筆が滑りすぎて叙情的になりすぎちゃって、あんまり良くないですね。僕はドライな感じの文体が好きなんですよね。
 でもやっぱりてゐちゃんがかわいいので許すウサ。
 題名の「」がなんか中二心をくすぐって好きなんですよね。なんか意味ありげじゃないっスか。まあ意味なんてないですけど!

4.美しきもの
 お気に入り回その二。とにかく神霊廟を描写したかった。
 神霊廟は城塞都市をイメージしてます。神子は来るべき戦乱に備えて準備していたのですね。スパロボに出てくる博士みたいです。こんなこともあろうかと!
 とにかくまあ、聖徳王がやらかしまくってくれた話です。自分の筆の滑り具合が怖くなったあの日。パフパフ、寵姫扱い、バイ宣言に乗り物酔いまで。神子ファンに殺されないか不安です。
 神子は割と重要なキャラとして位置付けていますので、こんな変なキャラになっちゃってどうしようとニヤニヤしながら頭を抱えています。
 個人的には最初と最後の霊夢の下りも気に入ってます。マジでミコマン出してくれ、ファミマ!

5.魔女たちのマッド・ティーパーティー
 ギャグ回として書き始めた回です。パチュリーをいかにムカツク感じに描写しようかと苦心しました。
 レミリア、魔理沙、霊夢、咲夜に小悪魔まで出てきますが、まさか幽香が出てくるとは自分でもオドロキ。重要キャラとして、最終回に出そうと思ってたのに……。ギャグ回なんで次から次になんか起こさなきゃならなかったのでそうなったんでしょう。でも幽香が出たおかげで、ギャグ回じゃなくなっちゃいました。
 しかしまあ、パチュリーの図書館がインフレしすぎて、もう僕の手に負えません。全宇宙の知識が集まるってなんだよ、アカシックレコードかよ! ちなみにパチュリーの図書館の名前はヴワル魔法図書館という設定を採用してます。
 大正ロマンこあ、今度描きたいですね。

6.ブービー・トラップ
 最初に書いてたバトルに回帰したいなあと思って書いた回です。最初は一話に一回ぬるいバトル入れる予定でしたんでね!
 当初は水蛇と戦う予定だったんですが(洞窟のシーンで伏線がありますね)、どこをどう間違ったのか、ロリスと戦うことに。
 しかもロリスは脳内設定で考えてた「ぼくのかんがえたさいきょうまほう」を勝手に繰り出してくれました。もうホント、ありえないです、突然出てきてなんなの、ロリスの奴。赤面回だわコレ。でも好き!
 パルちゃんは勇儀にパルパルしてるのが好きなんですけど、今回はあえて、あまり書かれなさそうなクールで静かなお姉さんで描写してみました。でもあまりにも内面的にも容姿的にもアリスと被ってしまったので、もういっそ突き抜けたれ、と元探索者という設定に。ホント、パルスィ登場後に湧いて出てきた設定ですコレ。設定とは文を繋ぐためにあるのじゃよ。
 ボウガンでロリスの頭を撃ち抜くシーン、かっこよくて好きなんですが、なんかの映画にあったような気がしますね。
 題名はマクロスからです。理由はありません、カッコイイからいつか使ってみたかった。

7.愚鈍なる賢者
 過去回です。アップするかどうか最後まで迷った話。あまりに今までの話と離れすぎた伏線で、しかもその伏線が回収されないので。
 でもこいしちゃんを出したかったので恥を忍んで書きました。
 射命丸も重要キャラです。実際は幻想郷最強の力を持つ妖怪ですがブラブラしてる、冴羽遼とか坂田銀時みたいなキャラです。戦闘シーンは割と満足してますが、こいしがいなけりゃ射命丸の勝ちになっちゃったのはアリスさんに失礼だったかな。二次はそういうところが難しいですねえ。どうでもいいけど射命丸って、名前が文章向きじゃなくてマジ困る。
 けねもこは他の話にも出してますね。たまにはアリスを第三者視点で書きたいなあと思って出しました。アリスさん、第三者視点だと異常にかわいいですな。親心からかもしれませんが。
 実はこの話の中、アリスの予言は五言絶句で書くつもりで勉強したんですが、なんだあれ難しすぎ。あきらめて普通にしました。
 ちなみに題名は、筆者の大好きな「悪魔を育てた八雲家」で有名なえなみ博士さんの4コマからパクってます。

8.神の城
 問題回。
 最初はただ単に頭足類を倒して終わりにしようと思ってたんですが……。
 えらい引きを思いついてしまって、とにかくそれを書きたい一心で書いたのを覚えてます。
 しかしその引きは、予定していた結末とあんまりつながらないという。なんとか設定的につなげようと、現在鋭意妄想中です。
 魔理沙のマスパはやっぱ使わせたかった。でも洞窟内でどーしよーって思ってた時に、輝針城のボムにあったマジックアブソーバーが浮かんだので、時間的にも輝針城前という設定なのでこりゃいいと、それを使いました。魔理沙が持ってた筒は、当初は閃光手榴弾だったんですが、アリスが使ってしまったので。ホント、キャラに振り回されながら書いてます。まあ結果的には、満足行く描写になったのでヨカッタかな。やっててよかった輝針城。
 版築ってのは、一話で出てきてますね。神子回でも出てます。当初は伏線でもなんでもなかったんですよ? ただ版築って書きたかっただけなのに、いつのまにやら大きな伏線になってました。思いつきで書いてると、どの方向に行くのかわからなくて怖いです。それを体現したような回。
 しかし、マリアリは書いていて楽しいですな。マリアリは炎のさだめ。
 マリアリソムリエにとって、僕の書くマリアリはどの程度なんでしょうか? ちょっと聞いてみたいですね。


9.血
 前回であんまりーな伏線を出してしまったので、追加せざるを得なかった回。
 本文は全部、魔理沙一色。魔理沙魔理沙魔理沙……書いてるうちに魔理沙がゲシュタルト崩壊を起こしかけていましたw やっぱりアリス視点だと魔理沙魔理沙言ってしまいますね。マリアリからは逃れられない。
 魔理沙に「魔理沙魔理沙うるさいなぁ。結局人が居なきゃ何も出来ないのかよ。」って言われてしまいそう。
 探検はおしまいなので、ラスボスが何になるのか、非常に迷いました。悪霊やロリスの大群、ドッペルゲンガーとかも考えたんですが、結局まとまらず、なんとなく書いてるうちに、なんとなく弾幕ってことになりました。すさまじいこじつけ。こんな文書いちゃう自分が怖いです。
 途中で何回も魔理沙を殺そうと試みたんですが、こいつは本当に強くて殺しにくいキャラでした。マジ強い。頑張って死亡フラグ立てても次の行にはマイペース発言でフラグをバッキバキに折ってくれました。もう最後は「かばう」しかなかった。マリアリからは逃れられなかったよ……。
 魔理沙はホント、殺しても死にそうにないキャラです。異能生存体なんじゃないですかねぇ。むせるわぁ。
 最後の地下に居たのは誰なんでしょうね? 一応、脳内設定はあるんですが、みなさんも妄想してくれると嬉しいです。


10.優雅なる窓辺
 くぅ~疲ry。
 一番苦戦した回です。
 なんでかってーと、今まで気分のママに書き連ねてきた設定を、ここでまとめなきゃならなかったから。
 すんげー勢いで風呂敷を広げまくった結果、どうしても「幻想史記」というアイテムが必要になってしまっていたということに、最終回にして気付くという。そして悪びれも無く追加、酷い後付け設定!
 こういうのをある業界ではスパイラル開発っていいますね!
 こいしとかの動きも実は後付け設定です。っていうか、僕の話は大体こいしのせいになりますね。いや、仮面を落としたこころちゃんのせい? いや、こころちゃんを創った神子のせいか……。
 また神子かよ! あいつマジやってくれるわ! 超問題児!
 八雲紫のキャラがすげー書きにくくて苦労しました。なんでかってーと、僕、ゆかりん大好きなんですよね。BBA結婚してくれ! だからどうしても悪いキャラに出来なくて。過激なことができなくって、刺激が足りなかったかな。
 設定を記述しすぎるとつまらなくなるかなと思って、記述を減らそうとしたんですが、なんかそれだと消化不良で。結局、べらべらとあることないことアリスに喋らせることで、どれが本当のアリスの予想なのか分かりづらくなるように記述してみました。わかりにくすぎたでしょうか? わかりやすすぎたでしょうか? 感想くださると嬉しいですね。
 最終回、題名だけは最初から決まってました。窓辺でまどろむアリスの情景、良いですよね。襲いたい。そして返り討ちにされたい。


・アリスについて
 話を作る上で一番苦労したのが、「アリスは正直」という半公式設定です。
 とにかく、嘘がつけないのはキツかった。ささいな嘘から大事件、というのが物語の定石だと思うんですが、それが使えない。
 嘘がつけないとね、動機付けとかにも制限がかかったりするんですよね。
 しかもアリスは「賢い」キャラなんで、記述した以上のことを頭の中で考えて、その考えに基づいて行動しているキャラなんです。だから読者にすら嘘がつけないというのは、非常に足かせになりました。
 対策として、ツンデレキャラになりました。ツンデレなんで、言いたいことが言えないって感じ。
 おかげで今はアリスちゃん大好きですよ! 最初は別に好きじゃなかったんですけどね。
 アリスが魔法使うと主人公無双になるので、魔法を使わないという動機が必要でした。それにもツンデレは役に立ちましたね。意地っ張りだから、一度決めたことを意地でも覆さないという。
 いろいろと動いてくれて、書いていて楽しいキャラでした。
 このキャラじゃなかったら、途中で飽きて書くのやめてたかもですな。
 またいつかぜひ、アリス視点の物語を書きたいです。



 設定その他でご質問あれば、答えられる範囲で答えますんで、お気軽に。
 ……まあ無いと思いますが。



 ショートストーリーとはいえ、久しぶりに話を完結させることができました。
 それはひとえに、推薦文を書いて下すった茶蕎麦さんを始め、感想や評価、お気にいりをしてくださった方々、そして読んでくださった皆様のおかげでございます。
 ありがとうございました。
 次回作も読んでいただければ幸いです。

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