ピアノを弾いてみたいと思う作者です。
でも歌も上手くなりたいな……。
二兎追うものは一兎も得ず。
まあどちらも一朝一夕で身につけられるものではないものですから、地道な努力をしないと上手くもなりはしないですよね。
では本編をどうぞ!
朝の練習が終わり、一度荷物を取りに帰ってから登校する四人。
昇降口で別れ、二年生組は一年の教室に向かう。
楯は理事長に朝来てほしいと呼ばれているため、理事長室に向かっていた。
「あのピアノが上手い子に頼めば、曲を作ってくれるよ」
穂乃果は頼めば作ってくれると思っているようだ。
「それはわかりませんよ」
「けど、作ってもらえなかったらどうしよう?」
「その時は…まあなんとかなるよ!」
海未はまたかと溜め息、ことりは苦笑いをする。
一年の教室の前に着き。
「じゃあ行くよ」
ガラガラ。
ドアを開け、教室の中に入っていく三人。
「失礼しまーす!」
三人は教壇の上に立つ。
「皆さん、こんにちは!スクールアイドルの高坂穂乃果です!」
「「「………………………」」」
クラスに居た一年生全員がポカーンとしている。
「あれ?おかしいな、まったく浸透してないよ」
ポスターの宣伝効果がもうすでにあると思っていた穂乃果。
しかしポスターはそれこそ立ち止まって、見てもらわないと効果がない代物なのである。
常にテレビで流れているとか、人目につくほどのデカイポスターとかなら話は別なのだが。
「当たり前ですよ。あれだけでは認知度など、高々知れています」
「それで、穂乃果ちゃんが言ってた、ピアノが上手い子ってどの子なの?」
「ええっと~」
穂乃果はクラスを見渡すが居ない。
「今は居ないのかな?」
するとガラガラとドアが開き、一人の生徒が入ってくる。
「ああ!良かった!貴女を探してたの!」
「ゔぇえ!?な、なに!?」
突然穂乃果に肩を掴まれ、吃驚する真姫。
「貴女にお話があるの、ちょっといいかな?」
「あ、あたしにですか?」
「うん!」
そう言って、真姫と一緒に屋上に行く。
***
所変わり、理事長室。
「それで、何の用でしょう?」
「いえ、彼女達の活動について、楯君の率直な意見を聞きたいと思ってね」
どうやら雛さんは三人の活動を耳にしたのか、今の状況がどうなのかを聞きたいらしい。
「僕としては、今のところの判断では厳しいのが現状です」
これは嘘を言っても仕方がない。
正直な感想を言う。
「そうですか」
「ですが、彼女達はまだ巣立っていない雛鳥です。
これから、辛い事や悲しい事がたくさんあることでしょう。
でも、近くで見ていると、そんなことも吹き飛ばすくらい、彼女達が凄く輝いて見えるんです。
それはこの先、この学院を照らす光だと、俺は信じています」
楯は今の自分では、この学院に人を集めるための手段を持ち得ない。
それがとても悔しく、無力な自分を責めていた。
一人では何もできない、しかし彼女達に出会い、少し希望が見えてきた。
まだまだ生まれたての雛鳥かもしれない。
けど最初から上手く出来る人間なんて、どこを探してもいやしない。
だからこそ、あの三人にこの学院の希望になることを託して、どこまでもサポートしていこうと思っている。
「楯君がそこまで信頼しているのなら、彼女達は何かを成し遂げてくれると私も信じます」
「でも、不可能と感じたら即時終わらせる決断も持ち合わせてますよね…」
「もちろんです。そうならないように頑張ってくださいね」
「出来る限りは尽力しますよ」
「じゃあ、もし途中で終わらせたら罰として、ことりをお嫁にもらっていただきましょうか♪」
「はい。………………………………ん!?」
「契約成立ですね。ふふっ今後が楽しみです」
(は…嵌められたー!!)
凄く良い笑顔な雛とやらかしたと頭を抱える楯であった。
***
お昼休み中庭で落ち合うことになっていたので、向かったはいいが穂乃果が落ち込んでいるようだ。
「どうしたんですか?」
「城宮君」
「何があったか、話してくれますか?」
「うん」
俺が理事長室に行っている間に、西木野さんに作曲を頼んだが、「興味ないです」と断られたらしい。
その後に生徒会長が来て、「やってみたけど、やっぱりだめでした。それを皆はどう思うのか。この学校がなくなるのは私も嫌なの。だから貴女達にも簡単に考えてほしくないの」と言われたようだ。
穂乃果は簡単に考えていたのかなと落ち込んでいたのである。
「確かに物事については、簡単に考えすぎな気もしなくはないです」
「城宮さんもそう思うでしょう」
「楯君…」
「でも、僕はそんな考えがあったっていいと思いますよ」
「え?」
穂乃果は俯いてた顔を上げ、楯を見る。
「僕の父さんは厳しい人でした。でもとても甘い人でもありました」
「厳しいのに甘いの?」
「はい。たとえば今のこの状況を父さんが見たら、『自分が決めた道なら最後まで貫き通せ、もしできなくてもその行為を恥じるのではなく、誇りにしろ』と言うでしょうね。
叱るでもなく、応援するでもなく、ただ後ろで見守ってるだけだけど、困ったら手を差し伸べる。
僕は踊りや歌には参加できませんが、困ったらいくらでも手を貸してあげますよ。
最初はどんな事だって、難しいものです。ですが途中から簡単になるわけでもない。
ならどうするか、それを決めるのは高坂先輩です」
いつも後ろで見守ってくれていた父。
自分も困っている人には手を差し伸べてあげられる人になりたい。
今がその時、どんなに困難でも一人でも多く笑顔が溢れていることは素晴らしいんだと誇りに思ってもらいたい。
だから楯は笑顔で穂乃果に手を差し伸べる。
「そうだね。まだ諦めるには早いよね!」
「そうですよ。まだやれることはあるはずです!」
「うん!大変だけど、やれるとこまでやろう!
「やっぱり、皆さん笑顔のほうが似合ってますよ」
楯としてはどんな人も笑顔のほうが素敵だなと思っているのだが、三人は違う意味で勘違いしたのか赤くなる。
「どうしたんですか?」
「な、なんでもないよ!
「ええ!なんでもないです!」
「もう楯君ったら恥ずかしいな~もう!」
頭に?マークが出る楯であった。
***
放課後になり穂乃果は丸投げしたグループ名のアンケートが入っているか見に行っている。
教室で待機している楯、海未、ことり。
「グループ名の案が入っているといいのですが」
「どうだろうね、案外いっぱい入ってるかもよ」
「それは高坂先輩が戻ってくれば、すぐにわかりますよ」
バン!!と思いっきりドアが開かれ、その音に吃驚する三人。
「皆ー!なんと入ってたよ!!一枚だけだけど」
「それでも入ってるなんて思いもしませんでしたよ」
「本当!?それでそれで、どんな名前なの?」
「気になりますね」
穂乃果の周りに集まり、閉じられていた紙を開いていく。
そこには………μ'sと書いてある。
「ユーズ?」
「多分『
「ああ!泡立つあれか!!」
「高坂先輩、違いますよ。
『
この女神達は『音楽』『舞踏』『学術』『文芸』などを司ってるんですよ」
「へぇ~。城宮君物知りだね」
「叔父がこういう仕事に精通してるので」
外国の神話まで詳しいのか知らないけどねと思う楯。
「私は好きだよ!それに凄く良いと思う!」
「
こうしてグループ名が無事に決まり、一つの問題が解決した。
***
「まさかうちの学校にスクールアイドルをする子が現れるとは思ってなかったよね」
「うん、でも凄いよね!いつも屋上で練習してるんだって」
それを聞いている花陽。
自分もアイドルをやってみたいと夢見たことがある。
しかし内気な自分には無理だと心のどこかで、自分を否定してしまう。
「かーよちん。帰るにゃー」
「う、うん」
そこに穂乃果が一年の教室にやってくる。
しかし肝心の探し人は居ない。
「何か、御用ですかにゃ?」
「うん、あの子は?」
「あの子?」
凛はあの子と言われてもわかるはずがない。
「西木野さん、ですよね。歌の上手な」
「そうそう!あの子、西木野さんっていうんだね」
ここで頼み事をする相手の名前を知る穂乃果。
「は、はい。西木野真姫さんです」
「用があったんだけど、この様子じゃ帰ってるよね」
穂乃果は遅かったねと言わんばかりに、自分のおでこを叩く。
「音楽室じゃないですかー」
「え?音楽室?」
「あの子、あんまり皆と話さないんです。
休み時間はいつも図書館に居るみたいだし、放課後は音楽室に居ますよ」
「そうなんだ。二人ともありがとう!」
穂乃果は音楽室に向かって走っていこうとするが。
「あ、あの!」
花陽に止められる。
「が、頑張ってください。…アイドル」
花陽は今持てる勇気を振り絞って、応援の言葉を送る。
自分が立つことのない舞台に立つ人へ。
「うん!頑張る!!」
穂乃果はガッツポーズをする。
そこで二人と別れた。
「かよちんも一緒にアイドルやればいいのに」
「わ、私には無理だよ」
「まあ、凛はいつでもかよちんを応援してるからね!」
「あ、ありがとう凛ちゃん」
二人ともアイドルをするとはこのときは思ってもいなかったのであった。
***
(さてと、音楽室に西木野さんはいるかな)
時は穂乃果が一年の教室に向かっているときまで遡る。
楯は一人で音楽室を目指していた。
(彼女、なんだか寂しい感じがして仕方ないんだよな)
楯は両親が亡くなってから、孤独を感じていた。
叔父や猛さんに雛さん、ことり姉に隼や乃愛ちゃんと周りに心配してくれる人達は居たのだが、それでも当時中学生の楯には家に一人でいるのがとても辛かった。
どんなに泣こうが帰ってくるわけでもない、どんなに悲しんでも時は戻りはしない。
だからこそ両親が訓えてくれたことを心の支えに頑張ってきた。
今の学院生活は本当に楽しい、この時がいつまでも続けば良いと思うが…それは許されない。
なら楽しめることは全力で楽しもう、心の底から笑いあえる、信頼の出来る人との繋がりを作ろうと。
でもクラスメイトの彼女には、自分とは違う孤独を抱えているのではないのかと思ってしまった。
あのクッキーを渡そうとしたとき、彼女はいらないと言った。
けれど彼女の眼はどこか悲しげな、辛そうな眼をしていたのが気になって仕方がない。
(『西木野』という名前にはあまり関わりたくない。
でも、逃げても何も始まらない。
俺は前を向いてなくてはならないんだから)
そして音楽室の前に着いた楯。
やはり真姫は居た。
改めて音色を聞くと、とても素晴らしいの一言しか出ないほどの上手さである。
しかし、楯には少しだけ違って聴こえる。
(どこか悲しい音色だな)
孤独を知るからこそ、時折悲しい旋律が聴こえてしまう。
楽器は弾く人の心を表すものと言っても過言ではない。
それだけ繊細なものなのである。
(終わったみたいだな。じゃいくか)
意を決して、音楽室に入っていく楯。
「やっぱり凄いね、西木野さん」
パチパチと拍手をする楯。
「あ、ありがとう」
照れ隠しなのか髪を弄る真姫。
「それで何の用なの?」
「いや、これと言った用事はないかな」
「はぁ?」
「いや、西木野さんがクラスの人とあんまり喋らないから、何かあるのかなって思ってね」
「別になんにもないわよ」
「そうなの?じゃあもっとクラスの人と仲良くすればいいのに」
「それは私の勝手でしょう!」
「それはごもっともで」
「ふん。私もう行くから」
真姫は音楽室から出て行こうとする。
「ちょっと待って」
楯は真姫を引き止める。
「僕にピアノを教えてくれないかな?」
「ピアノを教える?」
「そう、少しでいいんだ。
僕もピアノは好きなんだよ。一曲だけなら本当に少しだけど弾けるんだ」
「それは何の曲なのかしら?」
「じゃあよければ聴いてくれないかな?」
「……す、少しだけなら聴いてあげなくもないわ」
「ありがとう。じゃあ一番前の席に座って」
真姫は一番前の席で、楯の横顔を見る。
そこにはとても真剣だが、とても悲しい顔をした少年を見ているようだった。
そして楯は弾き始める。
──────『詩的で宗教的な調べ 第3番 [孤独の中の神の祝福]』───────
その曲はとても悲しかった。
いや、弾いている楯の心の音がピアノに伝わって、悲しい音色になっているのだろう。
真姫はその音を聴いて、眼から一筋の水滴が零れた。
本当に3、4分程度しか弾いていないのに悲しみが伝わってくる。
ピアノを弾いているからこそ、彼の音が解ってしまうのだろう。
「本当は長い曲なんだけど、ここしか弾けないんだけど…どうだったかな?」
楯は真姫に笑顔で感想を聞く。
しかし真姫から見たら、その笑顔は痛々しかった。
「そ、そう「うわー!!凄い凄い!!」」
突然ドアのほうから拍手喝采の如く、パチパチと拍手をしている穂乃果。
「うわぁぁ!高坂先輩何時の間に!?」
「うん?ほんの少し前かな」
「そ、そうですか」
「それにしても城宮君、ピアノ弾けたんだね!」
「この一曲だけですよ」
誰にも聞こえないぐらいの小さい声で「大切で大嫌いな思い出だけどね」と呟く。
真姫にはその言葉が聞こえていた。
「そうなんだ。残念だな」
「それで、高坂先輩は何しに来たんですか?」
「もう一度、西木野さんにお願いしようと思ってね」
「またですか。しつこいですね」
呆れ顔の真姫。
「そうなんだよね。だからいつも海未ちゃんに怒られてばっかりなんだよね」
「私、ああいう曲一切聴かないわ。聴くのはクラシックとかジャズとか」
「へえーどうして?」
「軽いからですよ!なんか薄っぺらくて、ただ遊んでるみたいに思えるんです」
「そうだよねぇ」
「え?」
「私もそう思ってたの」
「思ってたんですか…」
「いやーなんかこう、お祭りみたいにパァー!!っと盛り上がって、楽しく歌って踊ってればいいのかなと思ってたんだ」
穂乃果は何か思い始めているのだろう。
それは何が彼女の背中を押したのかはわからない。
「でも本当はとっても大変なんだ」
そう、何事も簡単なものなどない。
大変だからこそ、それを得るために人は頑張れるのだろう。
「で!腕立て伏せできる?」
「はぁ!?」
「あれーもしかしてできないんだー」
挑発していく穂乃果。
「う、腕立て伏せぐらいできますよ!」
挑発に乗る真姫。
(強がっちゃう子なんだな)
楯は真姫を見ていて、そう思う。
上のブレザーを脱いで、腕立ての姿勢を作る。
「いち、に、さん、し…これでいいんでしょ」
「おお!凄い!私より出来てる」
「どんだけ腕力ないんですか、高坂先輩」
「当たり前でしょ!私はこう見えても」
「ねえ、それで笑ってみて」
「え?何で?」
「いいから、ほらほら」
(腕がプルプルしてる。長くはもたないかな)
昨日海未にやらされたことを真姫にやらす穂乃果。
渋々笑顔を作り、腕立てを再開する真姫。
「ね、アイドルって大変でしょ」
「な、何のこと言ってるのよ!まったく」
真姫は立ち上がり、埃を叩き落とす。
「はい。歌詞」
穂乃果は真姫に歌詞が書いてある、紙を渡す。
「一度読んでみてよ」
「だから私はそういうのは…」
「読むだけならいいでしょ。今度聞きにくるからさ」
「西木野さん。一度だけでいいからさ、読んであげて。
これを書いてくれた人の努力を無下に扱わないであげて」
「それに今度聞きに来たときに、ダメって言われたら、きっぱり諦める」
真姫は紙を受け取り。
「答えが変わる事はないと思いますけど」
「それでもいいの。そしたらまた歌を聴かせてよ」
「え…」
「私、西木野さんの歌声大好きなんだ!
あの歌声とピアノを聴いて、とっても感動したから!
だから西木野さんに作曲お願いしたいなぁって思ったんだ!」
「僕も西木野さんの歌声とピアノが好きだよ。
これからも暇があったら聴かせてほしい」
真姫は驚いた顔で二人を見る。
楯を見るときは何故か赤くなっているのは、夕陽のせいだよね。
「高坂先輩!練習の時間に遅れちゃいますよ!」
「うわわ!ほんとだ!急ごう!
じゃあまたね、西木野さん!」
穂乃果は走っていってしまう。
楯も後についていこうとするが、真姫のところに戻ってくる。
「忘れてた」
「まだ何か?」
「朝と夕方に神社の階段のとこで練習してるからさ、よかったら遊びにきてね」
「い、行かないわよ」
「まあそれは西木野さんの自由だから、強制はしないさ。
でも遊びに来てくれると嬉しいな」
「少しぐらいは考えてあげなくもないけど」
「じゃあ考えてくれる約束ね」
楯は真姫の小指に自分の小指を繋いで指切りをする。
「はい。これで約束したからね」
「しょ、しょうがないわねぇ」
照れ隠しで髪を弄りながら、そっぽを向いてしまう真姫。
その姿は15歳の少女らしい可愛さに夕陽の美しさと相まって、楯は一瞬見惚れてしまう。
楯は鞄から、昨日渡せなかったクッキーを取り出し。
「西木野さん。これは僕からの友達の証。
これから僕と西木野さんは友達だから、気軽に話しかけてきてね。
それに困ったことがあったら、相談とかも聞くからさ」
そう言って、クッキーを渡す楯。
「あ、ありがとう。
私と友達になれるんだから感謝しなさいよ!」
「もちろん!それじゃ、先輩達が待ってるから。
気を付けて帰ってね。また明日」
楯は今度こそ帰っていく。
音楽室には真姫一人。
「友達…か」
この学院に入ってから、初めて出来た友達に少し高揚する真姫。
「城宮楯。まあ、悪くはないわね」
初めての異性の友達もあって、少なからず楯を意識しているようだ。
「城宮?あれ?何か忘れているような…………」
真姫は何かを思い出そうとするが出てこない。
出てこないということは、どうでもいいことなのだとここでは思っていた…しかし…。
知らなければ幸せだったかもしれない……。
しかし知ってしまえば、残酷なほど幸せな時間は奪われていく……。
それをどう乗り越えるかは人それぞれである。
彼と彼女はどんな結末が待っているのかは……神のみぞ知ること…なのかも知れない………。
***
真姫は練習をしているのが気になるのか、建物の影からコソコソと隠れながら覗いている。
姿は小さいが、楯は真姫がいることを見つけるが何も言わない。
(本当に来てくれるとはね。やっぱり優しい子なんだろうな)
真姫は本当に優しいのである。
しかしそれを表に出すのが下手、苦手なのである。
でもそれは裏を返せば、相手を気遣うばかりに突っ張ってしまうのではないだろう。
「もう足が動かないよー」
「私も動かないよー」
「ダメです!あと筋トレと一往復残っています!それとも諦めますか?」
「高坂先輩、南先輩、もう少しですから頑張りましょう」
「うぅ、海未ちゃんの悪代官!」
「それを言うなら、鬼教官のほうがしっくりくるよ穂乃果ちゃん」
「ことり!鬼教官とはなんですか!」
「うわ~ん、楯君助けて~」
「ほらほら、園田先輩をからかってないで、頑張ればすぐ終わるんですから」
そんな他愛もないことで和んでいる四人。
真姫の背後に忍び寄る黒い影。
その黒い影は真姫の胸を鷲掴みする!
「きゃぁぁぁああーーー!!」
境内にまで響く悲鳴が聞こえる。
「何かあったのかな?」
「さあ?騒がしくないから大丈夫なんじゃないかな?」
楯には一瞬だが、今朝会った副会長が居た気がしたので、何か真姫に教えるのではと思って行動に移さなかった。
「それより二人とも、さっさとやりますよ!」
「じゃあどちらか早く終わったほうに、何か奢ってあげますよ」
その言葉を聞き、俄然とやる気を出す穂乃果とことり。
ことりに至ってはなんだか獲物を狙う眼をしている…高坂先輩勝ってください…。
「な、な、なにすんのよ!!」
「ええ形やけど、まだ発展途上と言ったところやな」
「はぁ!?」
「望みを捨てなくても大丈夫や、大きくなる可能性は十分にある」
「何の話をしてるんですか!」
「恥ずかしいんなら、こっそりっていう手もあると思うんや」
希は真姫に遠回しの手段を教えようとしている。
「だから何なのよ」
「これ以上は言わなくてもわかるやろ」
希は階段を上っていってしまう。
「…………………………」
真姫には言いたい事は解っている。
後は行動に移すだけなのだから、難しく考える必要はない。
自分の好きな事を形にすればいいのだから。
***
翌日の朝、高坂家。
「いってきまーす!」
穂乃果は朝の練習も終わり、学院に向かおうとする。
「お姉ちゃーん」
「何、雪穂?」
妹の雪穂に呼び止められる。
「このCDお姉ちゃんのかな?宛名が書いてないんだけど、
「雪穂!それ私の!!」
穂乃果は家の中に戻り、雪穂からCDを受け取る。
「まさか、これって!」
期待を膨らませながら、学院に向かう穂乃果。
途中で海未とことりと合流をし。
「あれ?なんだかご機嫌ですね、穂乃果」
「うん!皆にも良いことだから、後で教えるね!」
「ええー、もったいぶらずに教えてくれてもいいのに」
「ふふふ、ことりちゃん。『果報は寝て待て』と言うじゃない!」
「穂乃果ちゃんから、諺が出てくるとは思わなかったよ」
「ええ!ひどいよことりちゃん!」
地味に馬鹿にされる穂乃果であった。
その頃楯は……。
「城宮君、おはようにゃー」
「城宮さん、おはようございます」
「おはよう、星空さん、小泉さん」
楯の横を通って走っていく凛。
それを追いかける花陽。
「この学院には慣れたかな?」
後ろから声をかけられる。
「おはようございます。副会長。
まだ不慣れな部分もありますが、楽しい毎日ですよ」
「そっか、それはなによりやね。
何か困ったことがあったら、何でも相談に乗ってあげるから言うてね」
「ありがとうございます。
本当に必要なときは頼らせてもらいます」
「じゃあウチ、エリチ待たしてるから」
希は少し早足で歩いていく。
(まさか副会長に話しかけられるとは思わなかったな。
副会長って、なんだか不思議な感じの人だよな)
雰囲気は柔らかいのだが、その中に人を包み込むような不思議な雰囲気を感じるのである。
そんなことを思っていると、少し先に昨日友達になった子がいる。
楯はその子に近付き。
「西木野さん、おはよう」
「お、おはよう」
「今日も良い天気で快適だね」
「そうね」
「そうだ、西木野さん。今日お昼一緒に食べようよ」
「ゔぇえ!?」
「そんなに驚くことかな?」
「い、いや、私は…」
「せっかく友達になったんだから、一緒にお昼ぐらい食べてもおかしくないよ」
「うぅ…わ、わかったわよ」
今日のお昼に真姫と一緒に食べているところをクラスメイトに驚かれる楯であった。
***
放課後に穂乃果達に呼ばれたので、屋上に集合した四人。
「高坂先輩、何か良いことでもあったんですか?」
「あ、やっぱり分かっちゃう?」
穂乃果は顔や行動に感情が出やすいので、とても分かりやすいタイプ。
「その良いこととは?」
「これだよ!」
穂乃果は一枚のCDを取り出す。
「CDですか?」
「うん!早速聴いてみよう!」
ノートパソコンを出し、CDをセットする。
「じゃあ、いくよ」
スタートボタンを押し、CDが再生される。
そのCDから再生されるのは、昨日真姫に渡した歌詞に音が付いて、歌になっていたものだった。
「この歌声は西木野さん…凄い!歌になってるよ!」
「これが私達の歌」
「私達の歌…なんですよね」
(とても綺麗で澄んだ音と声だな)
その歌を歌っている真姫は心から楽しんで、ピアノの旋律と声の音色を奏でていた。
昨日の悲しい音色ではなく、希望に満ち溢れた音色。
これが真姫の心から望む世界なのかもしれない。
今はまだ狭い鳥籠から出れてはいない。
しかし入り口は開きかかっている。
後は一歩、一握りの勇気をふり絞るだけ。
その勇気を奮い立たせる時は近い…。
ピー。ピコン!と音が鳴り、アイドル部μ'sの票が入り、ランクが表示されるようになる。
「票が入りました!」
「応援してくれる人がいるだけで嬉しいね!」
喜んでいることり。
「さあ!はりきって練習しよう!!」
「「うん!!」」
元気に立ち上がり、とてもはりきっている穂乃果、海未、ことり。
(西木野さん。君の音色はとても澄んでいて、聴いた人を魅了するみたいだね。
君にも人を笑顔にする力があるんだ。
まだ心を許せる人がいないのかもしれない、けど必ず君を広い世界に連れて行ってくれる人は現れる。
その時は怖がらず、素直に君が望む世界に飛び出せること祈っているよ)
楯は性質は違えど、孤独を抱える真姫が心配なのである。
この歌作りをきっかけに、真姫がもっと広い世界を知り、心から許せる仲間に出会ってほしい。
それこそ彼女がいつでも笑顔であり、望む世界への道標となっていくことを信じて。
次回 ファーストライブまで後5分!?
如何だったでしょうか?
もっと文章力が欲しい。
でも作者のオツムではこれが限界なのです……。
悲しいけどこれが現実なのよね。
まあくだらないことは置いといて、次はファーストライブが始まる前までを書いていく予定です。
果たしてお客さんを集めることはできるのかな?
では次のお話でまたお会いしましょう!