ラブライブ!一年男子は俺だけ・・・えっ?   作:飛翔翼刃

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やっと完成しました!
長らくお待たせしてしまい申し訳ないです(´・ω・`)
最近パソコンの前で寝落ちしてしまうことが多くて、困っています…。
睡眠時間は確保しているはずなのに…ノンレム睡眠が深くないということなのかな。
さて自分の近況は置いといて、本編どうぞ!


第九話   これは誰の落し物?

 

 

 

只今の時刻6時20分。

いつも通りに朝練をしている穂乃果、ことり、海未、楯。

先日のライブでの失敗を活かして、自分達に足りない部分の経験値を上げていく。

しかし元々ダンスや歌など本格的に習っていたわけではない三人、もとい四人は基礎の部分と体力作りしか手が出せないのが現状であった。

 

「あーあ、もっと人数がいれば練習のメニューとか増やせるのにな~」

 

穂乃果が愚痴る。

 

「仕方ないではありませんか」

 

海未も人が多いに超したことはないと思っている。

でもないものねだりをしても出ないものは出ないのである。

 

「まあまあ穂乃果ちゃん。

 まだ時間はあるんだし、その内一緒に頑張っていけるメンバーも増えるよ」

 

ことりは気長にメンバーが増えることを祈っている。

 

「メンバー募集のチラシとかは配布したんですから、少なからず今は『急いては事を仕損じる』ですかね」

 

「なにそれ?」

 

穂乃果の頭にハテナマークが浮かぶ。

 

「何事も急いでやっても、失敗しがちになってしまう。

 急ぐ事ほど、冷静になり落ち着いて行動をしなさい。という諺です」

 

「へえ~」

 

「今も昔も穂乃果にぴったりな諺ですね」

 

「な!そんなことないもん!」

 

「あはは…」

 

穂乃果と海未はにらめっこが始まり、ことりは乾いた笑いしか出てこない。

 

(確かに急ぎたくなる気持ちはわからなくはない。

 最低でも半月ぐらいしか新入生を募集するかしないかの判断は下される。

 それまでにこの四人でそこまでの場所に到達できるかといわれれば……不可能だな)

 

楯は冷酷だが、今の現状では最低ラインの位置までは辿り着けないと判断をする。

何かを起こそうとするのなら、それ相応の爆発力が必要になってくる。

人数は多いほうがいいが、今のままということもありえる。

人数が少ないから駄目というわけではない。

A-RISEのように三人で成功しているグループもいる。

しかしあちらは時間と努力という対価を払い、今の現状を手にしたに違いない。

こちらは努力は払えるが、時間という対価は払えない。

ならばどうすればいいのか?

やはり一番早い解決方法は穂乃果、海未、ことりに匹敵する努力と力を惜しみなく発揮でき、人を惹きつける人材が集まることだろう。

出来ることならダンス又は歌を習っている、もしくは習っていた人がグループに入ってくれれば練習のメニューも幅広く増え、チームのレベルが底上げされるのだが…。

 

「楯君」

 

「うん?」

 

「何だか難しい顔してるけど、また考え事?」

 

「いや、今日の夕飯はどうしようかなって思ってね」

 

「本当に夕飯のこと?」

 

「そうだけど」

 

「ならいいけど。

 もう一人で抱え込んじゃ駄目だからね」

 

「わかってるさ。

 本当に困ったり、力を貸してほしい時は言うからさ」

 

「約束だよ」

 

「ああ、約束する」

 

それを聞くとことりは笑顔になる。

 

「じゃあもう一練習頑張ろう!」

 

「うん、頑張ろう」

 

ことりは穂乃果と海未の下へ走っていく。

 

「…約束か。

『三つ子の魂百まで』だよ。ことり姉」

 

性格や性質は変わりはしない。

それは昔も今も、そして塞ぎこんでいたあの時も。

どんなに外面は変えられても、根本…根のほうは変える事は難しい。

 

「どこまでいっても『(むかし)』も『(いま)』も大して変わってない。

 変われないんだよ…あの時から俺は止まりつづけているのかもな」

 

空を見上げる楯。

そこには済んだ青空と煌く太陽が見える。

 

「俺は『μ's』や『A-RISE』の皆を、笑ってくれてる人達を護れるのかな…?」

 

少年は小さい時から願った、お父さんのように笑顔を護れる人になりたい。

それは今でも変わらない…。

変わらないはず……。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

朝練も終わり、荷物を取りに戻り、今は授業を受けている。

 

「はあ、どうしよう…」

 

小さな溜め息と独り言を呟く花陽。

机の上にはノートと教科書が開かれているが、その下にあるチラシを見ては悩んでいた。

それは小さい頃のある日常の情景を思い出す。

 

「ねえねえ!花陽ちゃんは大きくなったら何になりたい?」

 

「え?わ、私?」

 

「凛知ってるよ!」

 

「なになに!?」

 

「り、凛ちゃん!?」

 

「かよちんはアイドルになりたいんだよね!」

 

「ええー!?アイドルなんて凄いね!」

 

「ええっと、それは」

 

「振り付けとか完璧に覚えてるもんね!」

 

「そうなんだ!応援してるから頑張ってね!」

 

「う、うん」

 

小さい頃のこんな約束をしてしまった事を思い出す。

そして今もしかしたら夢だったアイドルになれるかもしれない。

しかしこんな性格で自分がアイドルになっても見向きもされないし、一緒にやってくれる人達に迷惑がかかってしまうと思うと踏み込めずにいる。

 

「それじゃあここの部分を、小泉読んでくれるかしら」

 

「は、はい」

 

先生に英文を読んでくださいと指名され、読み上げるがその声はとても小さく聞き取りづらい。

 

「もう少し声を出せるかしら?」

 

「す、すみません」

 

花陽的にはもう少し大きく出しているつもりだが、結果として先ほどの声量と変わらない。

 

「そこまででいいわ、ありがとう。

 それじゃあ次は伊荻読んでくれるかしら」

 

「はい」

 

次の生徒に交代を頼む。

 

(やっぱりこんなんじゃ無理だよね)

 

声が大きく出せないのではアイドルどころではないと意気消沈してしまう花陽。

どんなに頑張ろうとしても諦めてしまう癖がついているのかもしれない。

しかしその諦めかけている背中を押してくれるのはいつも見守ってくれる友達なのかもしれない。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

時刻はお昼休み。

今居る所は飼育小屋。

 

「はあ~ほへぇ~」

 

凄く良い顔で飼育小屋で飼われている動物を見つめることり。

 

「ことりちゃん、最近毎日此処に来るよね」

 

「急にハマったみたいです」

 

「というか何でこの動物を学院が飼育しているのか不思議で仕方ないです」

 

楯は飼育小屋で飼われている動物に疑問を抱く。

 

「普通アルパカとかを飼育している学校なんて早々ないですよ」

 

そう飼育小屋で飼育されているのはアルパカなのである。

 

「確かに珍しいですね」

 

「そんなに珍しいの?」

 

「珍しいというか、よく買えましたねってレベルですかね」

 

「買えた?アルパカって高いの?」

 

「正直普通の家庭では手は出せないです」

 

「ちなみにどのくらいなの城宮君」

 

穂乃果が小声で聞いてくる。

 

「今のレートは知りませんが、大体250万弱でしたかね」

 

「にっ!!?」

 

あまりの金額に絶句になってしまう穂乃果。

 

「血統書付きのアルパカになると数千万はかかるみたいですけどね」

 

「す、数千万ですか」

 

海未もあまりの金額に気が遠くなる。

 

「それはさておき、少しでもチラシ配りをしなくちゃいけないのでは?」

 

「そ、そうだね!

 ほらことりちゃん!チラシ配りに行くよ!」

 

「あと少しだけ~」

 

ことりはもう少しと言っているが動く気配がない。

 

「もうしょうがないなー」

 

「五人にして、部として認めてもらわないとちゃんとした部活動は出来ないのですよ」

 

「うん~そうだよね~」

 

生返事で返してくることり。

 

「アルパカって可愛い…かな」

 

「うぅう!」

 

穂乃果の一言に反応したのか威嚇をしてくる。

 

「ひぃ!」

 

「ええ!?可愛いと思うけどな~。

 首の辺りとかふさふさでもふもふしてて気持ち良いよ」

 

アルパカの首の辺りを擦り始めることり。

 

「ことりちゃん駄目だよ!」

 

「そ、そうです。

 危ないですよ!」

 

「大丈夫だよ」

 

二人の方に顔を向けた瞬間。

顔を舐められる。

 

「うひゃあ~!!」

 

なんかもの凄い悲鳴のような悲鳴じゃないような声を上げながら尻餅をつく。

 

「ど、どうしたら…ハッ!ここは一つ弓で!!」

 

「そんなことしちゃ駄目だよ!?」

 

三人は慌てまくる。

 

「うううぅう!!!」

 

先程よりも強い唸り声を上げるアルパカ。

 

「ほら!変なこと言うから怒っちゃったよ!」

 

「確かに物騒な上に弓がないので、その案は無理ですよね」

 

どうやって怒りを静めるか考えようとしていると一人の女の子がアルパカに近付いていく。

 

「ほらよしよーし」

 

アルパカの首周りを撫でる。

すると怒っていたアルパカが大人しくなっていく。

 

「ことりちゃん大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ。

 私嫌われちゃったかな?」

 

「あ、平気ですよ。

 多分楽しくて遊んでいただけだと思いますので」

 

「そっか~、嫌われてなくてよかった」

 

笑顔でアルパカを見つめることり。

 

「あ、お水がなくなってる」

 

女の子は水が入っていたペットボトルを外していく。

 

「貴女、アルパカ使いだね」

 

「い、いえ私飼育委員なので」

 

「へえ~」

 

(そういえば、小泉さん飼育委員をやっていたんだな)

 

クラスの委員決めで飼育委員なんてあったなと思い返す楯。

花陽は満タンに水が入っているペットボトルを素早く付け直していく。

 

「うん?」

 

「はい?」

 

女の子の顔を覗き込む穂乃果。

顔を覗き込まれ、少し驚く女の子。

 

「おお!貴女、ライブに来てくれた花陽ちゃんじゃない!」

 

「え、いや、あの…」

 

「ああ!駆けつけて来てくれた一年生の!」

 

「は、はい」

 

「ねえ、貴女」

 

穂乃果は花陽の肩を掴む。

 

「は、はい!?」

 

「一緒にアイドルやりませんか!」

 

「穂乃果ちゃん、それはなんでもいきなりすぎだよ~」

 

「君は光っている!輝く宝石だ!大丈夫!悪いようにはしないから!!」

 

もの凄く悪人面の顔で花陽に迫る穂乃果。

 

「何だかもの凄く悪人に見えますね」

 

「右に同じく」

 

「私、悪人面してないよ。

 それに少しぐらい強引に頑張らないと」

 

「あ、あの」

 

「「「「??」」」」

 

「に、西木野さんが…」

 

誰かの名前を言ったのだが、声が小さすぎて聞こえない。

 

「ああごめんね。もう一回良い?」

 

穂乃果は聞き耳を立てて花陽の方を向く。

 

「に、西木野さんが良いと思います。

 歌が凄く上手なんです」

 

「そうだよね!

 私も大好きなんだ!あの子の歌声!」

 

「それならスカウトに行けば良いではないですか」

 

「行ったよ~。

 でもね、絶対に嫌なんだって」

 

「え!?あの、すみません…。

 私、余計なことを言ってしまって」

 

「ううん、ありがとね花陽ちゃん!」

 

(確かに西木野さんが入ってくれれば、歌に関してはかなりのレベルに上がるんだけどな)

 

しかし説得材料もないし、本人が嫌と言っているがネックな部分であるのだが、どうにか説得できないか考えてみる楯。

 

「か~よちん!」

 

遠くから凛が花陽のことを呼んでいる声が聞こえる。

 

「早く行かないと体育の時間に遅れちゃうよ~」

 

「あ…。し、失礼します」

 

花陽は一礼をして凛の方に走っていく。

 

「凛ちゃん、行こっか」

 

「うん!」

 

凛も一礼して二人は運動場に走っていく。

 

「私達もそろそろ戻りましょうか」

 

「そうだね」

 

「うん…」

 

穂乃果は花陽が走っていった方向を見ながら生返事をする。

 

「そういえば、楯君は体育行かなくていいの?」

 

「え?」

 

ことりから質問をされ、しばしの沈黙。

 

「やばい!?」

 

楯は次の授業が体育のことを思い出し慌てる。

 

「すみません!!先に失礼します!!」

 

楯はまだ着替えを済ましていなかった為、急いで教室に戻る。

 

「城宮さんって、やっぱり足速いですね」

 

「そうだね。

 小学校、中学校の運動会とかでは対抗リレーとかのアンカーとかよく走ってたよ」

 

「やっぱり足が速くなるコツとかあるのかな?」

 

「私も聞いたことあるんだけど、普段から動いてたら自然と速くなったって言ってたよ」

 

「動いてるだけで足って速くなるものなの?」

 

「穂乃果と違って城宮さんは普段から鍛えてる量が違うんですから、違って当然ではないですか」

 

「私だって最近は頑張ってるもん!」

 

「それはわかっていますよ。

 けれど私達がやっているのは体力の基礎を作る練習ばかりなんですから、足が速くなるわけではないんです」

 

「よし!今度の休みに城宮君の練習量を見学させてもらおう!」

 

「参加はしないの?」

 

「それは気分次第かな!」

 

「城宮さんに迷惑は掛けないようにしてくださいよ」

 

「大丈夫大丈夫!」

 

しかしこの練習を見せてもらうと言った穂乃果は後々後悔するのであった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「それじゃあ、皆気をつけて帰ってくださいね」

 

午後の授業も終わり、ホームルームも終わったので生徒達は各々部活に行ったり、帰る準備をしている。

 

「かーよちん」

 

「うん?」

 

凛が花陽に後ろから声を掛ける。

 

「かよちんは部活は決めた?」

 

「ええっと」

 

「今日までに決めるって昨日言ってたよ」

 

「あれ…そうだっけ?

 私は明日までに決めようかな…」

 

「早く決めないと他の皆は部活始めてるよ」

 

「う、うん。わかってるよ。

 そういえば凛ちゃんはどこの部活に入るか決めた?」

 

「凛は陸上部かな~」

 

「陸上、か」

 

活発で走るのが好きな凛にはうってつけの部活だなと花陽は思う。

 

「あ!もしかしてかよちん」

 

「?」

 

「スクールアイドルに入ろうと思ったんじゃないの~」

 

「ええ!?そ、そんなこと…」

 

花陽は手を組み、人差し指だけをもじもじさせる。

凛は幼い頃から花陽を見ていて、一緒にいるから癖を見抜く。

 

「ふう~ん。

 やっぱりそうだったんだね~」

 

「そ、そんなこと!」

 

凛は人差し指で花陽の口を閉じさせる。

 

「駄目だよかよちん。

 かよちんってば嘘吐くときに指を必ず合わせてるんだよ。

 すぐに嘘吐いてるって凛にはわかっちゃうんだも~ん」

 

まさかそんな癖があるとは思っていなかった花陽。

 

「ほら、一緒に行ってあげるから先輩達の所にいこ!」

 

凛は花陽の腕を引っ張る。

 

「え!?わ、私は…ち、違うの!ほんとに私じゃアイドルなんて」

 

「かよちんは可愛いんだよ。

 アイドルになったら絶対に人気出るよ!」

 

「でも待って!」

 

花陽は腕を引っ張る凛に足で踏ん張って静止させる。

 

「あ、あのね我が侭言ってもいい?」

 

「しょうがないな~。何?」

 

「もし、もしね私がアイドルやるって言ったら、凛ちゃんも一緒にやってくれる?」

 

「え?凛がアイドル?」

 

「うん」

 

凛は考えるが少しずつ渋い顔になっていく。

 

「ムリムリ!凛なんかアイドルなんて似合わないよ!

 ほら女の子っぽくないし、髪だってこんなに短いんだもん」

 

「そんなこと」

 

「ほら昔だって」

 

そう言って昔の出来事を思い返す凛と花陽。

それは小学生の低学年ぐらいだろうか。

 

「ふわ~!可愛いよ!凛ちゃんのスカート凄く似合ってるよ!!」

 

「そうかな?えへへ」

 

普段女の子らしい服を着ない凛は思い切ってスカートを穿き、学校に登校してみたのだ。

 

「ああー!!星空がスカートだ!!」

 

「いっつもズボンなのに!」

 

「スカート持ってたんだ!!」

 

「おい!あそこまで競争しようぜ!」

 

「や、やっぱり凛着替えてくるね」

 

後ろから登校してきた男の子達にからかわれ、居た堪れない気持ちになる凛。

別に可笑しいな部分など一つもない。

しかしその男の子っぽい部分の所為で少しでも女の子らしさを出したら馬鹿にされてしまう。

相手は別に苛めてなどいないと思っているだろう。

しかしそれは凛にとって途轍もないほどの苦しみであり、痛みを感じた言葉であったであろう。

子供は時に大人よりも酷い言葉の暴力を使ってしまう。

それこそ理性という抑制が未発達な所為でもあるが、相手を傷つけていいという道理にはならない。

相手を理解し、自分を理解してもらう。

大人ですら難しいことであるが、それを始めて出来るようになることが大人への第一歩に繋がるのではないだろうか。

 

「昔もこんな感じだったんだから、凛にはアイドルなんて絶対に無理だよ」

 

「凛ちゃん」

 

笑いながら言う凛だが、その笑顔はとても寂しそうな笑顔であった。

 

 

 

 

***

 

 

 

その後凛は陸上部を見たいとの事で教室で別れた花陽。

荷物を纏め、帰ろうと教室を出ようと思ったのだが。

 

(あれ?あれって西木野さんだよね)

 

真姫は机の上に置いてあるプリントを持って歩き去ってしまう。

 

「あのプリントって確か…」

 

花陽はプリントが置いてある机に向かう。

 

「やっぱりこのプリントって先輩達がスクールアイドルのメンバー募集してるチラシだよね」

 

真姫が持っていったのはスクールアイドルメンバー募集のチラシである。

 

「もしかして西木野さんってスクールアイドルに興味あるのかな?」

 

そんなことを考えていると。

 

「小泉さん」

 

「はぁあい!!?」

 

突然後ろから声を掛けられ吃驚してしまう。

 

「だ、大丈夫?」

 

「し、城宮さん?だ、大丈夫です」

 

声を掛けたのは楯であった。

 

「チラシが気になるの?」

 

「い、いえ…さっきこれを見ていた人がいたので」

 

「そっか。その人が少しでも興味を持ってくれると嬉しいんだけどね」

 

「やっぱり中々やりたいって人が集まらないんですか?」

 

「うん、そうだね。

 でもどんな物事にも言えるけど、最初から諦めるかもって姿勢の人だけは勘弁してほしいかな」

 

「まあ、そうですよね」

 

「でも一緒に頑張れる仲間がいて、その仲間を信じあえれば自ずと結果は変わっていくものだと僕は思ってるよ」

 

「わ、私でも頑張れば何かを成せるでしょうか?」

 

「それは小泉さん次第じゃないかな。

 でも頑張らなければ成せるものも成せないよ」

 

「そうですよね…」

 

思い悩む花陽。

 

「あれ?」

 

楯は机の下に何かが落ちてるのを拾う。

 

「これって西木野さんの生徒手帳ですね」

 

「そうだね」

 

住所を確認してもいまいちどの辺りなのかピンとこない楯。

 

「小泉さん、この住所ってわかる?」

 

「ええっと、この住所はここから遠くはないですよ」

 

「それじゃあ、もし都合が大丈夫なら道案内お願いできないかな?」

 

「え?」

 

「まだこっちに越してきて住所も曖昧なんだよね。

 良い機会だから散策がてら、届けに行こうかと」

 

「私で良ければ、一緒に行きます」

 

「ありがとう。

 それじゃあ行こうか」

 

「は、はい」

 

楯と花陽は真姫の家に向かうのであった。

 

(あれ、これってもしかしてデ、デート!?)

 

道案内を受けたは良いが二人っきりではないかと思い、顔を赤くする花陽なのであった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

所変わり、ここは理事長室。

 

「先日のライブでは、生徒はまったく集まりませんでした。

 スクールアイドルの活動は音ノ木坂学院にとってマイナスになると思います」

 

「学校の事情で生徒の活動を制限するのは…ね」

 

「でしたら学院存続の為に生徒会にも独自に活動をさせてください!」

 

「…それは駄目よ」

 

「何故ですか!?」

 

絵里は気持ちが昂ってしまい机を叩いてしまう。

 

「それに全然人気がないわけではないみたいですよ」

 

雛はパソコン画面を絵里と希に見せる。

 

「これってこの前のライブの…誰かが撮ってたんやな」

 

希は絵里に目線を移す。

 

「まだ彼女達の活動などを制限するわけにはいかないわ」

 

「それじゃあ!どうしたら生徒会も独自に活動をさせていただけるんですか!?」

 

「その答えに関しては絢瀬さんが見つけてもらわないといけないと私は思っていますよ」

 

「そうですか。今日は失礼します」

 

「気をつけて帰ってくださいね」

 

絵里と希は出て行く。

 

「はぁ。楯君からこの前の結果は聞いていたけど、それを言ってくるであろうと予想する楯君も凄いわね」

 

そう楯は絵里達が来る前に雛の元に尋ねてきていたのである。

この前のライブは散々な結果だったこと。

これからどうしていくことなどを話に来てくれたのである。

 

「絢瀬さんも自分自身の為に動いてくれれば良いのだけれど…。

 それはまだまだ難しいそうね」

 

雛は机の引き出しから小さな包みを出す。

その中身はクッキー。

 

「ふふ。相変わらず楯君は料理が上手いですね」

 

以前クッキーを焼いてくる言われ、持ってきてくれたのである。

 

「さて楯君から元気も貰いましたし、もう一頑張りしましょう」

 

事務処理など残っている仕事に手をつけ始めるのであった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

あれから楯と花陽は生徒手帳に書いてある住所に向かって歩いていた。

 

「ここら辺は高級住宅街なんだね」

 

「そうですね」

 

周りを見渡しても一戸建てにしては大きかったり、外車等が目に付く。

 

「小泉さん、目的地はそろそろかな?」

 

「そこを右に曲がって少し進んだ所だと思います」

 

花陽の言う通りに右に曲がり、少し進むと周りの家よりも大きな家と立派な門が立ちはだかる。

 

「ほへぇえ~!?」

 

「これはまた凄いね」

 

表札を確認。

ちゃんと西木野と書いてあるので間違いはなさそうだ。

 

「す、凄いですね…」

 

「じゃあ呼び鈴鳴らすよ」

 

楯は呼び鈴を鳴らす。

五秒とかからず応対が返ってくる。

 

「はい」

 

「あの、すみません。西木野さんと同じクラスの城宮と申しますが西木野真姫さんはいらっしゃいますか?」

 

「あら、ちょっと待ってね」

 

インターホンが切れ、少し待っていると入り口から真姫に良く似た人が出て来る。

多分真姫のお母さんだろう。

 

「こんにちは。

 真姫はもう少ししたら帰ってくるから、お家の中で待っててもらってもいいかしら?」

 

「でもご迷惑では?」

 

「そんなことないわよ。

 それに君とも久しぶりにお話もしたかったのよ」

 

「僕は構いませんが…。

 小泉さんも大丈夫?」

 

「は、はい。私も大丈夫です」

 

「それじゃあどうぞ」

 

楯と花陽は家の中に通される。

家の中はとても綺麗で、通された部屋には数々のトロフィーや表彰状が数多く飾られている。

 

「お二人とも紅茶で大丈夫だったかしら?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「あ、ありがとうございます」

 

お洒落なカップに紅茶を注いでもらう。

 

「お待たせしてごめんなさいね。

 今、真姫は病院の方に顔を出してるところだから」

 

「病院?」

 

「ああ、うちは病院を経営していてね。

 あの子が病院を継ぐことになっているの」

 

「そうなんですか」

 

花陽は目が点になっている。

まさか真姫が病院の跡取りとは思ってもいなかったのだろう。

 

「それにしても良かったわ。

 高校に入ってから、一人も友達が遊びに来ないものだから、少し心配だったの」

 

真姫がまともに会話をしているのは今のところ楯ぐらいではないだろうか。

質問などをされれば受け答えはするのだが、それ以上の会話が繋がらないのである。

 

「それに久しぶりね。城宮君」

 

「そうですね」

 

「あれから元気だったかしら?」

 

「まあ壊れない程度には」

 

「そう…」

 

壊れないという言葉を聞き、凄く悲しそうな顔をする真姫のお母さん。

身体の方は至って元気だったが、心の方を心配したのだろう。

 

「城宮さんは西木野さんのお母さんとお知り合いだったんですか?」

 

「まあ、小さい頃に色々あってね」

 

「真姫は城宮君のこと覚えてたかしら?」

 

「いえまったく」

 

「そうあの子ったら」

 

「別に西木野さんが悪いわけではないですよ。

 恨んでいないと言ったら嘘になるかもしれない。

 けれどももう過去は戻せないし、戻してはいけないものだと思うんですよ。

 どんなに辛くたって明日という時間は訪れる。

 それにこうして、また逢えたことには何かしらの意味があるのだと自分は信じたいです」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけれど、私達は今でも心苦しさが残っているの」

 

「僕は貴女達に救いの手を差し伸べられるほど強くないです」

 

「そんな事はないわ。

 城宮君はとても強くなったわ。見違えるほどに」

 

「強くなどなってないです。

 唯自分を誤魔化して、強がることでしか自分という(もの)を守れないんです」

 

楯は笑顔で言う。

自分を守るために笑う。

今この場ではこれが限界のようだ。

花陽は何を話しているのかまったく理解ができないが、楯にとって辛いことがあったのだと悟る。

沈黙が流れ始めるが、それも直ぐに終わりが訪れる。

 

「ただいま」

 

真姫が帰ってきたのだ。

 

「あら、おかえりなさい」

 

「誰か来てるの?」

 

部屋の中を覗く真姫。

すると驚きと顔が紅潮する。

 

「し、城宮君!?それに小泉さん…」

 

「こ、こんにちは」

 

「お邪魔してます」

 

二人は真姫に挨拶をする。

 

「今、お茶淹れてくるわね」

 

真姫のお母さんは部屋から退出して、お茶を淹れにいく。

 

「急に来ちゃってごめんね」

 

「いや、いいんだけどどうしたの?」

 

「これが落ちてたから届けにね」

 

鞄から生徒手帳を取り出し渡す。

 

「確かに私のだわ。どこで落としたのかしら?」

 

「廊下の机の下かな」

 

「そうなの。ありがとう」

 

「西木野さん」

 

「何?」

 

「μ'sのポスター見てたよね?」

 

「私が?知らないわ。人違いなんじゃないの」

 

つっけんどんな態度な真姫。

 

「でも手帳もそこに落ちてたの」

 

真姫の鞄のサイドポケットにはμ'sのメンバー募集のチラシがある。

 

「ち、違うの!?」

 

真姫は必死に違うと弁明しようといきなり立ち上がる。

しかし立ち上がった瞬間。

 

『ゴン!!』

 

机に膝を思いっきりぶつけてしまう。

その拍子に座っていた椅子に倒れるのだが。

 

「うわぁあ!?」

 

勢いが良すぎたのか、椅子と一緒に倒れてしまうのだった。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「へ、平気よ」

 

「ほら西木野さん」

 

倒れている真姫に手を差し出す楯。

 

「あ、ありがとう」

 

手を掴み立ち上がる真姫。

真姫を立ち上がらせた後に椅子も直す楯。

 

「もう!変な事言うから!」

 

「ふふっ」

 

「笑わないでよ~!」

 

「ほら西木野さん。膝見せて」

 

「え?」

 

「大丈夫だろうけど、一応ね」

 

「大丈夫よ」

 

「はいはい。とりあえず座る」

 

楯は真姫を座らせ、ぶつけた膝を診る。

 

「触っても痛くないみたいだし、大丈夫だろうけど本職のお父さんやお母さんに診てもらいなよ」

 

「うん、そうする。ありがとう」

 

「お茶淹れてきたわよ」

 

真姫のお母さんが戻ってきたので、怪我の有無を診てもらい大丈夫なようなので一安心する三人。

お茶を淹れたカップを置いて、自分の部屋に戻っていく。

 

「ねえ西木野さん」

 

「何?」

 

「西木野さんってスクールアイドルとかやってみませんか?」

 

「私がスクールアイドルに?」

 

「うん」

 

花陽は真姫にスクールアイドルにならないかと話を持ちかける。

 

「私ね、放課後にいつも音楽室の近くに行ってたんだ。

 西木野さんの歌を聴きたくて」

 

「私の?」

 

「うん!西木野さんの歌声って、ずっと聴いていたいぐらい好きなんだ。だから」

 

「私ね…」

 

「ん?」

 

「大学は医学部って決まってるの」

 

「そうなんだ…」

 

「だから私の音楽はもう終わってるってわけなの」

 

真姫は思い詰めた顔で音楽は終わったと言う。

 

「それより貴女、アイドルやりたいんでしょ」

 

「え?」

 

「この前のライブの時、夢中で先輩達のライブ観てたじゃない」

 

「そうだけど…」

 

「やりたいならやればいいじゃない。

 そしたら少しぐらい応援してあげるから」

 

「ありがとう。西木野さん」

 

応援してくれると言ってくれる真姫に笑顔で応える花陽。

その後も楽しく談笑をする三人。

花陽はお手洗いのため少し席を外す。

 

「西木野さん」

 

「どうしたの城宮君」

 

「さっき言ってた事なんだけど」

 

「大学の事?」

 

「ううん、音楽の事」

 

音楽の事と言われ、悲しげな表情を浮かべる。

 

「どうして西木野さんの音楽は終わりなのかなって思ってね」

 

「だって私の未来はもう決まってるのよ。

 大好きな音楽だってやりたくてもやれないもの」

 

「それは詭弁だよ」

 

「詭弁って…。どこが間違っていると言うのよ!」

 

「確かに西木野さんの進む道はある程度決まっているのかもしれない。

 でも音楽が終わった、終わってしまったという言い方は違うと思うよ」

 

「そんなこと言ったってやりたいこともやれない。

 決められた道しか進めない私にどうしたらいいのよ!」

 

「それこそが間違いなんだよ」

 

どうしたらいいのかと怒鳴る真姫は楯を睨む。

 

「どうしてやりたいことがやれない?

 決められた道しか進めない?

 そんなものは親の都合であり、西木野真姫の選択ではない。

 確かに親の期待に応えようとするのは悪い事ではない。

 でも君、西木野真姫という女の子の未来は決して一つではないんだよ。

 今は決められたレールでしか歩けていないのかもしれない。

 でもね、たった一つの部品を手にするだけで、可能性というものは無限に広げる事はできると思うんだ。

 その大切で大事な一つの部品はもう手にしてるんだよ。

 それが君の終わったという『音楽』という部品」

 

「私の大切な部品?」

 

「そうだよ。

 さっき小泉さんも言ってたよね。ずっと聴いていたいと。

 それは僕もいつも思っている事だよ。

 最初に西木野さんの歌とピアノ演奏を聴いた時から。

 これは君だからこそ、為しえる力なんだと思うんだ」

 

「私の力…」

 

「絶対にそれは手放してはいけないものだと思うよ。

 今もこれから先も絶対にね。

 ここから先は僕の独り言だから、聞き流してくれても構わない」

 

楯は自分が思っている事を独り言のように呟く。

 

「今しか出来ないこと、楽しめないことを自分から閉ざすのはもったいない。

 嫌でも勉学をしなくてはいけない日々はいつか訪れる。

 それならば今は誰かと一緒に笑いあえる日々を大切にして、笑っておかなくちゃ。

 それは必ず最高の宝物になるはずだよ。

 時に励まし、時に叱責し合い、時に力となる。

 今必要なのは仲間…笑顔を作れる友達なんだと思う。

 行動を起こさなければ、結果など存在しない。

 失敗を恐れていては成功など有り得はしない。

 でも忘れないで、もう既に君の笑顔を作れる仲間が隣に居ることを」

 

そう言って真姫に笑いかける楯。

それは楯と真姫が顔を合わせた中で一番素晴らしい笑顔であったろう。

その笑顔に惹かれる真姫。

その光景をドア越しから見ていた花陽も心惹かれていた。

でもやはり真姫は少し考えてしまう。

自分は本当に音楽をやり続けてもいいのかと。

自分の葛藤を心の奥底に仕舞い込んで。

 

 

 

 

 

 

 

次回   前門の虎、後門の狼。背中を押してくれるのは最高の友達!

 

 

 

 

 

 

 




次回はやっと一年生組が全員加入します!
頑張って執筆しなくては(`・ω・´)
それにしても今日から艦これのイベントか…まあ次の休みまで遠征とかで資材を確保しつつ、偉大な先駆者さんたちの攻略を待ちましょうかね。
ではでは次のお話でお会いしましょう!
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