屑を装いながら頑張って生きてます。   作:ロイヤルかに玉

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着々と最終話に近づいていってる事に気づいた。
時間が経つのは早いものだな~。


第11話 アイエエエエ!

そろそろアドシアードの季節だ。

まあ、一年から代表に選ばれることなどめったにないから殆んどの1年生には関係ない事であるが。まあ、クラスの連中は楽しみだとか言ってるから見るのが楽しみな奴はいるのだろう。

 

「ねえ、勇人君」

「どうしたんだね? 間宮君」

「あー、また名字で呼んだ! あかりって呼んで何度も言ってるのに!」

「あ、済まない。あかり、何用かな?」

 

他人を名前で呼ぶなんて初めてだ。他人と話す機会すらなかったというのもあるが、呼び方にこだわる人なんてそう滅多にいるもんじゃないからその思考の元、ついつい苗字で呼んでしまう。しかし、僕としてはあかりの事は間宮と呼びたい。だって、僕が間宮を名前で呼べば、殺気を向けてくる人が居るんだもん。ほら、今も間宮の後ろに……。

 

「……なんですか?」

「いやさ、愛の形は人それぞれだから……ね?」

 

佐々木と間宮を交互に見ながら言葉を紡ぐ。佐々木はともかく、間宮は首を傾げている。

うん、純情だな。果てしなく。

 

「それより勇人君、アドシアードでアリア先輩がチアやるんだって! 一緒に見に行かない?」

「えっ……ああ、いい……ょ……?」

 

僕の体は硬直した。今までとは比にならない程の殺気や威圧で体が震えている。

元凶は……考えるまでもない。佐々木だ。

 

「一緒……2人……? でーと……? ふふ……」

 

笑っているようにも見えるが、その目には確かな怒り、殺意、嫉妬、威圧と言った感情が含まれている。僕は蛇に睨まれたカエルの如く動けない。僕は震える体を必死に抑えながらガクガクと震える口を精一杯動かす。

 

「え、え、え、えとちょっと用事あ、あ、あるか、ら……無理だね。ごめん」

「そうなんだ……。皆で行けば楽しいのに……。じゃあさ、もし行けるようになったら言ってね?」

「う、うん。分かったよ」

 

僕は佐々木の負の気に当てられ、教室から去った。向かう所は……人のいない場所だ。

いや、そんな場所があるはずないか。じゃあ、せめて人が少ない所にしよう。

この時間帯ならば校庭だな。早速向かうとしよう。

 

校庭のベンチに座って溜息を吐く。

 

「あ、天原。こんなところに居るなんて珍しいな。ってお前どうしたんだ? 顔色悪いぞ?」

「ああ、火野か。実は……」

 

教室に居なかったので今日は欠席かと思ったが違ったらしい。火野は火野で用事があったと言う訳か。折角だし、愚痴を聞いてもらおうと思って、先ほどの事を話した。

 

「そうか。……あたしから言える事は……まあ、がんばれ?」

「同情の余地なしか。それになんで疑問形なのよ?」

「いや、何となくだな。ほらこれ飲んで元気出せよ」

 

火野が缶ジュースを差し出してきた。前から思ったが火野って中々気が利くな。

全く、ののかちゃんや火野といい、男子諸君は何をしているのだ? こんなにいい子が近くにいるのに口説かないとは、腰抜け共め……。あ、自分も男だった。これじゃ人のこと言えないな。

いやほら、アレだよアレ。僕は結果が目に見えているから、あえて口説かないだけだ。

勝てない勝負はしない主義ってやつだな。  

とにかく、ありがたくジュースを受け取る事にした。

 

「そう言えばさ、天原って夾竹桃とやり合ったんだろう?」

 

冷やされた缶に口をつけ、冷たい液体を口に流しこんでいる最中に、火野が突然聞いてきた。

 

「いや、間宮がどう言ったかは知らないけど接近してぶん殴るとかはしてないよ?」

「それでもさ……。あたし、手も足も出なかった……」

 

落ち込む火野に何と声をかけようか迷っていると、急に何かを思い出したのか顔を赤くする。

 

「顔赤いぞ。夾竹桃にでも惚れたのか?」

「ちげぇよ! そんなんじゃない!」

「お、おう。悪かった、からかいすぎたわ」

 

顔をさらに真っ赤にしながら、怒る火野の鬼気に圧され、謝罪の言葉を紡ぐ。

いやー火野も佐々木の仲間入りを果たしたのかと心配したよ。あんなのが2人になったら確実に僕は死んじゃう。てか、僕ってなんだかんだでちゃんと友人と話せているな。

しかも女子相手に。でも、女友達しかいないってアレだな。

 

「あ、そろそろ授業始まっちゃうよ? 行こうか」

「だな。あ、ジュース代払えよ? 」

 

奢りじゃないんかい……。金欠の奴にジュース渡して飲んだ後に請求って質悪いぞ。

今日から、ジュースを受け取っても奢りかどうか確認してから飲もう。

 

「3日待ってください。それまでに耳をそろえてきっちり返します……」

「いや、本気にするなよ……。安心しろ? 奢りだから」

「それを聞いてほっとしたよ」

(こいつ、金が絡むとすげぇ弱くなるな……)

 

火野は心の中で「こいつ、金が絡むとすげぇ弱くなるな……」って思っているだろうな。

僕は心の中で思いつつ、口に出すことなく、世間話をしながら火野と共に教室へ戻った。

ちなみに、教室に戻った際に2人で戻ってきたもんだからクラスの連中にからかわれて、それに対し、火野が「お前ら、今日の訓練が楽しみだな?」って言ってら皆黙った。

火野さん、怖いっす。

 

昼休み――

 

夾竹桃とのいざこざが終わってから、毎日のように間宮たちが僕を昼食に誘ってくれる。

嬉しいが、恥ずかしくもある。こうやって他人に誘われるのは初めての経験だからだろう。

そのせいで、今まで断っていたが、今日こそはちゃんと同席しよう。

しかし、僕が同席するのを快く思ってない人が居る……。まあ、それについては諦めよう。

ちらっと佐々木を見る。

 

「麒麟、遅いな……」

「いつも火野にベッタリしているぬいぐるみを持った子のことか?」

「ああ、どうしたんだろうな……。いつもならもう来ている筈なのに……」

「ライカは麒麟ちゃんの事大好きだからね」

 

間宮がニコニコしながら言う。それに対し、火野は……。

 

「ち、違う。戦姉妹なんだから心配して当然だろう?」

 

顔を少し赤くしながら慌てて答えた。

 

「え、戦姉妹なの? 」

 

1年生で姉になるってすごいな。かなり珍しいんじゃないだろうか。

 

「勇人君は居ないの?」

「居ないし、組む気もないよ。先輩なんて人種に碌な奴は居ないからね。ソースは中学時代の僕だよ」

 

正直、まともそうなのは遠山先輩や神崎先輩ぐらいしか思いつかない。いや、顔を知っている先輩が2人だけっていうのもあるけど。

 

「そう言えば、勇人君って何処の武偵中の出身なの?」

 

ああ、やっぱり聞かれたよ……僕は武偵中に通ってないのに。

なんで皆、僕が武偵中出身であることを前提に話すのよ?

 

「一応言っておくけど、僕は一般中学出身だからね」

「えっ!?」

「っ!?」

「嘘だろっ!?」

 

火野や間宮は勿論、佐々木までもが驚いた顔をした。そんなに意外なの!? 

こっちはむしろそれにびっくりだよ!

 

「お姉さまっ! お待たせいたしましたわ!」

「うわ!? 急に飛びついてくるなよ……」

 

火野に改造制服を着た女の子が飛び付き、火野にベッタリ甘える。火野も満更ではなさそうな顔をしている。こういうのっていいな、仲の良い姉妹だ。戦姉妹だけど。

 

「あら? そちらの殿方は?」

「初めまして、天原勇人だよ。どうぞよろしく」

「島麒麟です。一応警告しておきますが、お姉さまは麒麟の嫁ですからね? 手を出さないでくださいませ」

「こりゃ手厳し「嫁ぇ!?」」

 

棘のある返答に「こりゃ手厳しいね」と答えようとしたら、火野の驚いた声にかき消される。僕だけでなく、間宮と佐々木も火野の方を見る。

火野が顔を真っ赤にしながらプルプルと震えている。

火野よ、今日は君の顔がよく赤くなるな。

しかし、島も佐々木の仲間だったのかー。火野も満更じゃなさそうだし、これは火野も多分……。流石日本、顔見知りの半分以上が同性愛者ってすごい偶然である。

 

「とにかくお昼食べよう! 頂きます!」

 

間宮が手を合わせた後に弁当箱を開けると、佐々木たちも弁当箱を開ける。

 

「あかりちゃん、可愛らしいお弁当ですね」

「えへへ、ののかの手作りなの。志乃ちゃん、おかず交換しない?」

「はい! 喜んで!」

「さ、お姉さま。麒麟が食べさてあげますわ。はいあーん」

「お、おい……流石に……」

 

こいつら気ままだな。そう思いながら、僕も鞄から袋を取り出す。

 

「天原ってパンなのか?」

「て思うじゃん? ただの握り飯だよ」

 

袋から取り出したのはラップに包まれた、ただの握り飯。ちなみに僕の手作りだ。

うん、別に誇れる事じゃないね。

 

「勇人君、もしかしてそれだけなの……?」

「何を言う。僕は白米に塩を掛ければ生きて行けるぞ?」

「いつか栄養失調で倒れますね。と言うか倒れてそのまま昇天してください」

 

佐々木は素っ気なくいう。まあ、彼女からすれば僕は邪魔な存在であるから当然の反応と言ったところか。彼女は彼女で中々の毒を吐く。

 

「いただきます」

 

ラップを剥がし、白米を噛る。ほのかに塩の味がしてそれを白米の美味しさを引き立てる。

グルメリポーターの様な感想を心の中で紡ぐ。

 

「御馳走でした。いやー食った食った」

「お前、あれだけで足りるのか?」

 

火野が疑うような目をしながら聞いてくるのに対し、僕は自信満々に……。

「行ける。問題ない」

 

ドヤ顔決める。あ、多分今の顔を鏡で見たらすごい事になっているだろうな。僕の顔が。

しかし、暇だな。まあ、僕が握り飯一個対して皆は弁当だから僕だけ早く食べ終わっただけだけどさ。昼休みもまだまだ続くし、ちょっと校内でも徘徊してこようかな。

僕は席から立ち上がり、そのまま廊下へ出た。

 

「今日、放課後ゲーセンでも行かない?」

 

「バスケやろうぜ! お前のポジションボールな!」

「…………」

 

学生らしく、放課後ゲーセン行こうって日常的な会話してるのに何物騒なこと言ってんだよ……。ホントこの学校終わってんな。

人をボールにするとか非人道的とは思わないのか?

友達はボール、蹴るものだってか? とんでもない連中だな。

 

「じゃあ、うちらはバレーでもしようよ。天原辺りをボールにしてさ」

 

 

アイエエエエ! ボクボール!? ボクボールナンデ!?

 

おい、ちょっと待て! バスケもそうだがバレーとか洒落になんねぇぞ!? スパイクなんてくらったら即アウトじゃねぇか!? いや、スポーツ全般に言えるけどさ!

 

「あ、天原―。ちょっと来てー」

 

しまった! 奴らに見つかった!?

 

「うわぁ! ブス6人衆だぁ! 逃げろぉ!」

 

僕は風の如く走り出し、後ろに迫っている脅威から逃走する。

 

「おい! クソ武偵! 待てや!」

 

女の子がそんな言葉使うなよー。

 

 

 

 

「ファーイアーエー〇ブレム、手ー強いシミュレーション、勝ーって来るーぞといーさましくー。危なくなーったなら、スタコラー逃げろー、おごれーるーもーのは、ドツボにはまるー」

 

某シミュレーションゲームのCMソングを歌いながらスタコラ逃げる。

しかし、僕の行く先にはとんでもない人が立っていた。

僕は彼女を見た瞬間を足を止めてしまった。

もし、足を止めずにスピードアップしていたらそのまま素通りもできたのだろうが……。

 

 

「おう、天原。丁度ええところにに来たな」

 

いやぁぁぁ! 蘭豹が笑顔でお出迎えしてきたぁぁぁ!

目の前に立ちふさがる最凶の脅威、もう逃げる事も出来ない。僕は罠にかかってしまった。切り抜けようにも、そんな愚行をしようとした瞬間、人間バンカーバスターと言われる彼女の力をその身で体験することになってしまう。

この状況は正に、意表をついてラスボスクラスの敵が民家から登場した時の絶望的状況じゃないか!?

 

丁度ええところって絶対厄介事を押し付ける気だろう!? 

そして断ったらS&W M500で脅されると……。もうやだ、こんな人生。

 

「せ、先生、どんな御用で……?」

「なーに、簡単な事や。アドシアードの当日、地下倉庫から指定した弾薬・火薬を運搬して欲しいだけや。簡単やろ?」

「僕ちょっと既に手伝いを頼まれ――「あ?」済みません! 精一杯やらせてもらいます!」

 

駄目だ。この人には逆らえない。僕の本能が言っているんだ。この人には絶対逆らうなってさ……。

 

「いやー、使えそうなもんに声かけようとしたらどいつもこいつも逃げていくんや。助かったで」

 

 

ああ、僕はもう……平凡に生きていく事は出来ないのかな……。

 

 

 

 

アドシアード当日――

 

 

地下倉庫(ジャンクション)にて、僕は携帯を肩で挟みながらせっせと弾薬・火薬を運んでいた。

 

正直言ってめちゃくちゃ怖い。火気が無いから爆発する恐れはないが、それでもこの火薬や弾薬の量を見ると身が縮こまってくる。

もし、爆発したら学園島は跡形もなく吹き飛ぶ。それ程の量が此処にはあるのだ。

 

『あとJ-13や。ある分だけ持ってこいや』

「ひぃ、了解です!」

 

J-13と書いてある棚の弾薬を箱に詰めて倉庫前の輸送トラックに運ぶ。

車両科(ロジ)の人が首を長くして待っている筈だ。

 

プルルルルッ!

 

また携帯が鳴り、通話ボタンを押して方には覚める。

 

「はい、もしもし!」

『おう、天原だっけか?』

「え!? 綴先生!? なんで僕の番号知って『追加でA-2な。遅れたら尋問だぞー』……」

 

畜生! どいつもこいつも扱き使いやがって!

 

今持っている箱を台車に乗せ、次はA-2の棚を探しだし、弾丸を箱にあるだけ詰めて、再び台車に乗せて、台車をエレベーターまで押す。

 

エレベーターが目的の階に着き、扉が開く。急いで台車を押して輸送トラックの停車しているポイントまで運ぶ。

 

「お待たせしました。後はお願いします」

「あいよ、任せな」

 

僕はすぐに先程の場所に戻る。

 

プルルルルッ!

 

「はい、こちら天原」

『天原チャン、T-14オネガイネ。ジカンナイニテハイシテクレタラ、ゴホウビアゲル♪』

「は、はいぃ!」

 

 

プルルルルッ!

 

「はい、こちらあま『D-3、大至急だ』……」

 

南郷先生、あんたまで……。

 

 

プルルルルッ!

 

「は、はい」

『天原、R-5だ。遅れたらな尋問な』

「了解です! 暫しお待ちを!」

 

携帯をしまい、言われた弾薬や火薬が置いてある棚を探している時――。

 

プルルルルッ!

 

また携帯が鳴った。もう、次から次へと!

 

「はい。こちら天原」

『おう、G-24や。遅れたら承知せんで。2分以内や。ええな?』

「ちょ、ちょーと待ってください! チャン先生や綴先生にも頼まれてますからいっぺんには無理です!」

『そうか? なら3分や』

「いや、あの、ちょ……」

 

切りやがった……。1分しか余裕ねぇじゃん……。

 

 

「ああもう! 誰か手伝ってくれーーー!」

 

僕の雄たけびが響き渡った。しかし、誰も来る筈がなく。僕は沈黙して作業に戻った。

 

 

プルルルルッ!

 

 

「はい……。こちら天原……ハア……」




しっこくハウスの餌食になったのは私だけでない筈……。
ネタが分からない人は「しっこくハウス」で検索すれば幸せになれると思います。(なるとは言ってない)
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