屑を装いながら頑張って生きてます。   作:ロイヤルかに玉

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公安0課・武装検事
職務上の殺人が容認されている、「殺しのライセンス」を持つ闇の公務員。国内最強と評されている。僕の義父が所属しているが、詳しいことは何も教えてもらえない。極秘情報なのか、それとも義父のめんどくさがり屋な性格のせいかわからないが。


第20話 本当にどうかしてるわ、この国

ナイフが胸に突き刺さる。

 

 

血が服を赤く染める。

 

 

だんだん視界が暗くなっていった……。

 

 

 

「いってーなぁ! おい!」

 

怒鳴り声と共にソファーから飛び起きる。

外からは光が差していて、鳥も鳴いている。変な夢のせいか、異常に喉が乾いている。

立ち上がり洗面台で蛇口を捻り水を出す。

あ、そう言えば寝起きの口内は雑菌が繁殖しまくっているらしい。水を飲む前に濯ごう。

水を口の中に含み、うがいをする。口内はすっきりしたし、ささっと水を飲もう。

 

「ぬるいな……。もう夏だからな……。東京って真夏なら蛇口からお湯が出せるんじゃないの? やったね、カップ麺を食べる時に多少手間が省けるよ」

 

「それにしても、嫌な夢だな。なんで似たような夢ばかりみるんだろう……」

 

服は汗で濡れて気持悪い。

武偵とは恨まれる仕事かもしれないが、見ず知らずの他人に夢の中でまで刺されるなんてどうかしている。僕が一体何をしたんだ……。

最近、似たような夢しか見ない。

誰かに刺され、そこで終わる夢。

もう1つは刺した奴を殺した後に雨が降り、雨に打たれながら死ぬ夢、この2つしか見ていない。要するにどっちも死ぬ流石に精神的にくるぞ、これは……。

やだなー、何か不吉な事でも起こるんじゃないのこれ?

 

話は変わるけど最近、一撃でもくらったらオワタの敵多くない?

 

急にどうしたのかと聞かれるかもしれないが、よく考えてみれば僕の人生って結構ハードモードじゃない? いや、この世界が僕を殺しに来ている気がする。

毒を持っている夾竹桃や、氷で敵を凍らせるジャンヌ・ダルク、そしてチート勢筆頭ブラド。

 

何でこうも僕が首を突っ込む戦いは相手がヤバイ奴ばっかりなの?

おかしくね? こっちはただの人間だぞ。あ、首を突っ込むから駄目なんだ。

何もしなければ危険に巻き込まれないし、安全に過ごせるぞ。

よし、今日からは何があっても首を突っ込まないようにしよう。

 

 

「更に話は飛ぶが……もう夏休みに入ったんだよね。つまり暇なんだ」

 

 

こう言う日は散歩に行こう。

 

人はいつものより賑わっている。時期的に夏休みなのでそのせいだろう。

夏休みを満喫している学生もいる。でもカップルとか見かけると自然にイラっと来る。

 

「畜生、見せつけやがって。僕だって顔さえ整っていッ!?」

 

僕は目の前を見て目を見開いた。

そこには、犬の散歩をしながら袋から「茶色の何か」を取り出して食べている女性が居たのだ。

 

 

いや、女性が食べている物は「かりんとう」だ。そうだと信じたい。

そうだよ、公園の砂場で黄粉餅食ってたお兄さんだっていたじゃないか……!

しかし、一見すれば衝撃の光景だ。

 

「あー流石日本だわ。本当にどうかしてるわ、この国」

 

感心していいのだろうか? いや、でも一々ツッコんでたら体がもたないし、気にしないようにしよう。周りの人だって何くわぬ顔で素通りしてるし。

 

「暑いな……。クーラーが効いてる店にでも入ろうか」

 

近くのスーパーに涼むために入ろうとすると、僕のように駆けてくるおばさんがいた。

 

「ふうー寒い寒い……」

 

おばさんはジャンバーのチャックを閉めて買い物かごを持って行った。

 

「……………………」

 

これが道民と内地の人の違いか……。クーラーが効いて丁度いいのに寒いって……。

人間って慣れだよね、環境とかに限らず。冷静に考えれば人間って凄い。

やってみようと思えば大抵できるし。

 

人間の凄さを改めて痛感し、しばらく涼んだ後にスーパーを後にして散歩に戻る。

 

 

 

 

 

「あ、勇人君」

 

数時間、休んでは歩き、休んでは歩きしていると不意に声が欠けられた。そろそろいきなり話しかけられて狼狽えてもアレなので冷静に振り向く。それに、声で相手は分かる。

 

「間宮じゃん。それにみんなお揃いで」

 

間宮達と遭遇した。皆なぜか浴衣を着ている。そう言えば、周りの人も浴衣を着ている。

今日は何かあっただろうか?

 

「勇人も夏祭りに遊びに来たのか?」

 

「え? 夏祭り? あ、そう言えばあったね」

 

「忘れていましたの?」

 

島が呆れた顔で言ってくる。

僕は大事な話は聞くけど、どうでもいい話は聞かない人間なのだ。

お祭りが大事な話かと聞かれればそうとは言えないが。

 

「折角だから勇人君も一緒に回ろうよ?」 

 

「え?」

 

「ちっ……」

 

 

突然のお誘いに戸惑う。戸惑っている僕を志乃が舌打ちをしながら睨みつける。

当然、彼女からはどす黒いオーラが出ている訳で……。身の危険を感じた僕は断った。

 

「え~、久しぶりに会ったんだから一緒に行こうよ~?」

 

間宮がふくれっ面をしながら言う。

何この子、めっちゃ可愛い。ののかちゃんといい、こいつといい、なんでこんなに可愛いの? そしてこの子たちにときめかない男子諸君は何を考えているのだ? そっちの趣味なのか? そうなのか? 大丈夫、わかっているよ? 愛の形は人それぞれだから。

 

 

「…………守りたい、このふくれっ面」

 

「え?」

 

しまった! 失言だった! 誤魔化さないと!

 

「OK。折角のお誘いだから断るのも失礼だよね? それじゃ、楽しんでいこうか?」

 

「うん!」

 

 

 

そんな訳で夏祭りの会場に来た。

 

 

「こっち、こっちー!」

 

間宮が誰かを呼ぶ。間宮が向いている方向から婦警の恰好をした女子がやってきた。

 

 

「あれ? 桜ちゃんは制服なの?」

 

「祭りの御一緒をさせていただけると聞いたので警邏かと……」

 

「警邏って……」

 

「桜……? 桜ねぇ……。うーん」

 

火野が笑いながらツッコむ。桜ってどこかで聞き覚えがあるような……。

ふと、聞き覚えがある名前に頭を捻る。

 

あ、思い出した。

 

中等部の子だ。確か他組織で研修を受けている架橋生で成績優秀・運動神経抜群・父親は麻布警察署の署長という肩書に加え、戦闘訓練は無敗・無遅刻無欠席・経歴に負けやミスが一切無い完璧さから、「『何でも持ってる』桜さん」と呼ばれている。

 

 

それにしても、なんでそんな子が間宮たちと……?

 

島に耳打ちをして尋ねると……。

 

 

ランク定期外考査の時に間宮と出会い、実戦を意識した挌闘戦をして、間宮に敗北して、彼女に戦姉妹契約を申し出たとの事。

 

流石間宮、人を惹き付ける魅力があるのだろう。

 

「あの、あかり先輩。そちらの人は?」

 

桜が僕を見ながら間宮に問う。

 

「桜ちゃんは勇人君に会うのは初めてだよね? 私たちの友達だよ! 諜報科に所属してるの」

 

「そうなんですか。初めまして乾桜と申します。よろしくお願いします、先輩」

 

「いやいや、こちらこそよろしく頼むよ」

 

めっちゃ良い子やん。

なんでもできる人ってそれを鼻にかける人が多いけど、この子は違う。

 

「勇人君なにぼーっとしてるの? 短冊にお願い書こうよ!」

 

「え、ああ……。願い事ね……」

 

さてどうしようかな……。金は……典型的だし、彼女が欲しいとかは……うーん寂しい人間と見られるからパス。宝くじ……は結局金だし。合格祈願は……うん色々と間違ってる。

 

よし、思いついたこれでいこう。

 

 

 

『100歳まで生きれますように』

 

 

 

うん、グッとくるね。何がぐッと来るかは書いた僕自身も分からないけど。

 

「勇人君はなんて書いたの? ……うーん、勇人君長生きしそうだもんね」

 

「え、そうかな?」

 

「まあ、しぶといイメージがあるよな」

 

君たちは僕にそんなイメージを抱いていたのか。まあ、否定はできないけどさ。

 

 

 

 

辺りも暗くなり眠気もやってきたので一足早く帰宅する事にした。

間宮達と挨拶を交わし、1人でアパートへ戻る。ふくれっ面をする間宮を前にやっぱりもうちょっとだけ……と思ったが、僕の理性は振り切った。女の子の顔が可愛いから一緒に行くとかこれじゃあ、僕はただの変質者じゃないか。

 

近道するか、そう思って路地裏に入ると、フードを深くかぶった男と出くわした。

雨も降ってないのにフード被るって何考えてんだろう? 

それに日が暮れたとはいえ、まだ暑い。指名手配犯かと思ったがそんな簡単に危険人物が人が集まる所に来ないし、まず警備をしている警察だっているのだから考えづらい。

兎に角、無視だ。僕は何も見ていない。

 

「待っていたよ。天原君」

 

いやぁ! 声掛けられたぁ!? お、落ち着け! 冷静に振る舞うんだ。

落ち着け……落着け……落ち着け……。クールダウンクールダウン。

 

「人違いですぜ、フードの旦那」

 

「天原栄一は元気かな?」

 

一瞬ドキッとしたがすぐにしらを切る。なんでこいつ義父の名前知ってるの?

もしかして同僚とかそんなのかな? でも怪しいから駄目だ。怪しい奴とは関わるなって義理のパパが言っていた。

 

「聞き覚えのない名前ですね」

 

「嘘はいかんな。それに前はあいさつを交わす前に君たちが帰ってしまったからね」

 

「えっ」と思った瞬間、僕の腹に激痛が走り、壁に叩きつけられた。

人間激痛を味わうと吐き気が起きる事がある。こういう時に限って起きる。

我慢して堪えている間に、頭を掴まれ、壁に顔面から叩きつけられる。

急いでフードの男から離れる。顔を押さえると、手が濡れた。手には鼻血がべったりついていた。

 

「ほお、しぶといな。栄一も良いガキを拾ったものだ」

 

「お、お前……何を……」

 

男を睨みつけるが、男の姿が消えたと思うと脇腹に蹴りが入り、再び激痛が走る。

 

「悪いが死んでもらおう」

 

男がナイフを取り出し、振り降ろす。僕は大きく後ろへ跳ぶ。

しかし、男がナイフを投げ、僕の目の前にナイフが迫っていた。

 

反射的に目を閉じるが、耳をつんざくような音が響き、痛みもやってこない。

目を開ければ、ナイフが地面に落ちていた。

 

 

「おいおい、うちの可愛い飼い犬兼息子に手を出すんじゃねえよ」

 

そう言いながら暗い路地裏から銃を構えた義父が現れた。

 

「早いご到着だな」

 

「勇人、下がれ」

 

「え、いやでも……」

 

「いいから下がれ、そんな状態のお前じゃ消されて終わりだ」

 

義父がこちらを睨みつけた。その目を見た僕は大人しく義父の後ろへ下がる。

 

「懐かしいな。栄一、昔は0課で競い合っていた仲だったな」

 

「伸一……。裏切り者が今更何の用だ。おとなしくスラムで死ねよ。お前の顔を見ると嫌な思い出しか浮かばないんでな」

 

義父が睨みつけながらそう口にし、男も笑みを浮かべる。

義父が深呼吸をし、息を吐き終えた瞬間に地面を蹴る音が響いた。

互いにナイフを取り出し、切り結ぶ。

 

ナイフ同士がぶつかる音と火花が散る。

 

互いに蹴りを放ち、両者とも仰け反る。

男がナイフを振ると、義父は防刃ネクタイを外し、刃を受け止めて蹴りを男の脇腹に放つ。

義父がナイフを突きだすが、男は受け流してナイフを振る。義父の顔に切り傷が作られ、血が流れる。

 

互いに距離を取り、再び一呼吸置いた後に接近と同時にナイフを突きだす。

 

互いのナイフが突き出されると、両者の肩に刃が突き刺さっていた。

 

「……ッ!」

 

「怪我のせいで鈍ったか、栄一?」

 

突然義父が蹲る。

 

「俺が細工をするのは昔からわかっているだろう?」

 

「毒か、おまけに即効性。相変わらずの性格だな……。だが、お前も甘いぜ」

 

銃を取り出し、男の膝を撃ち抜いた。

 

「ガアッ! 貴様……」

 

「流石に足に鉛玉を喰らったらお前もどうにもならないだろう? へへっ、ざまあ見ろ。あの時と逆だな」

 

「ちっ!」

 

 

男がスタングレネードを地面へ転がし、辺りが眩しい光に包まれる。

光が去った後、男の姿はなかった。なんか、かませみたいな奴だったな。

ってそんな奴にボコられた僕が言うのもなんだけど。

そんな事より今は義父だ。毒なら急いで病院に連れて行かなければ。

 

「義父さん、立てる? 今病院に……」

 

「すまんな……。かっこつけて登場しておきながらこの様だ」

 

「もういいから。ほら頑張って」

 

義父に肩を貸し、途中でタクシーを拾い病院へ向かった。

 

 

 

「ふう、間一髪だったな」

 

病衣を着た義父が溜息をつきながら言う。なんだか痛々しく見える。

 

「遅れていたら死んでたらしいよ。それより、あいつは誰?」

 

病室で横になっている義父に尋ねる。まずは情報だ。

 

 

「もっと心配してくれよ。仮にも息子なんだから」

 

「飼い犬兼息子って言ってたよね? ほらほら、武偵は情報戦も大事なんだから」 

 

 

「なに、ただの同僚さ。昔は手柄をどちらが多く立てれるかとか、そんなくだらない事で競ってた」

 

「公安0課って暗いイメージがあるんだけどそんなことしてたの?」

 

「まあな。俺たちが少しアレだっただけさ。話は戻るが、ある日突然のことだ。あいつは急に行方を眩ましたんだ。何があったかは俺も知らない。ただ、昔から狂った奴だなとは思っていたがな」

 

「あ、別に義父さんが恨まれるようなことをしたとかそんじゃないんだね」

 

とりあえずこちら側に非はない。

 

「いいか。あいつはな、正義の為に殺すんじゃねえ。殺すのが好きだから殺すんだよ。俺個人的な意見はこれだな」

 

「それってただのサイコパスじゃ……」

 

「勇人」

 

「ん?」

 

「……いや、なんでもない。ただ気を付けろよ」

 

「分かってるさ。病院抜けだしたりしないでね?」

 




天原 栄一 (あまはら えいいち)

僕の義父の名だ。公安0課に所属している。
昔は同僚の伸一と競い合っていたらしい。信一によって足に傷を負わされ、本人は思うように戦えないと言っているがそれでも他を圧倒する戦闘能力を持っている。
さすがは国内最強の戦力に属しているだけはある。
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