屑を装いながら頑張って生きてます。   作:ロイヤルかに玉

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今回は初めて、主人公以外の視点でもやってみました。


第22話 あああぁぁ! もうやだあぁぁぁ!

今、僕は嬉しくも気まずい思いをしている。

 

僕はののかちゃんの手を握って、早歩きであの修羅場から離れている。

ののかちゃんはさっきから黙っちゃってるし、一瞬だけ振り向いて見れば顔を赤くして俯いている。あの場から強引に連れてきたのはいいけど、どうやって話を切り出そうか悩んでいる。

 

「あ、えーと。もう少しでお店に着くから……」

 

「は、はい……」

 

だ、駄目だ……。会話がつながらない……。

 

「あ! ごめんねっ! ずっと手握ってて……」

 

未だにに手を握っている事に気づき、慌てて手を離す。

 

「あっ……。い、いえ……」

 

 

 

 

 

急に手を離されてつい声が出てしまった。

 

うぅ……。どうしよう……すごい緊張する……。

と、とりあえず今は勇人さんについて行こう。

 

 

学校も終わって買い物の帰りで路地裏を覗き込んでいる勇人さんを見つけた。

勇人さんと会うのは久しぶりで、それが嬉しくてつい声を掛けてしまった。

すると勇人さんは慌てているかのように私の手を取った。私は急な事で軽く混乱してそのまま勇人さんに連れて行かれた。

それにしても、お姉ちゃん、急にひかちゃんと遊ぶって……。いつもならメールで遅くなることを伝えてくれるんだけど……。

やっぱり、久しぶりにひかちゃんに会えて嬉しいのかな?

 

「さ、着いたよ。ここが僕のおすすめのお店だよ」

 

勇人さんの声でハッとして目の前を見てみれば、如何にも高級レストランみたいな立派なお店が建っていた。

 

「勇人さん! こんなに高そうなお店じゃなくても……」

 

「いやいや! 高そうに見えるけどちょっと値が張るだけだから! 予約も要らないし、僕もよく食べに来るから!」

 

「で、でも!」

 

「ほらほら、遠慮しないで」

 

そう言って勇人さんは私の手を取ってお店に入って行く。断れない私はそのままお店の中に……。

 

 

「ささ、好きなものを頼んでよ。遠慮しなくていいからね?」

 

「は、はい……」

 

うぅ……。でもやっぱり申し訳ないです……。

遠慮しないでと言われても、結局安いメニューを頼んでしまいました。

 

「あ、そうだ。この前のクッキー美味しかったよ。ありがとね」

 

「い、いえ! お口に合ったなら良かったです」

 

勇人さんは私を助けてくれた上に、買い物帰りで会った時に荷物を運んでくれたりして、お世話になっています。4月の事件の時だって、勇人さんは否定しているけど、きっとお姉ちゃんと一緒に夾竹桃と戦ったんだと思います。何度かお見舞いにも来てくれたり、いくらお礼を言っても足りないくらいです。

だからせめてものお礼でクッキーを焼いて渡しました。本当に口に合ってよかったです。

 

「あの、勇人さん」

 

「ん? 何かな?」

 

「勇人さんはどうして武偵になったんですか?」

 

「んーとね、これ以外に収入がある仕事に付けそうになかったからかな」

 

「そうなんですか? でも、勇人さんて器用だからなんでもできるような気がします」

 

「はは、僕は不器用だよ」

 

勇人さんは困ったように頭を掻き、笑っている。

 

「でも驚いたよね。ののかちゃん達とお隣さんだったとは」

 

そうでした、勇人さんはアパートのお隣さんでした。お姉ちゃんから聞かされて時は驚きました。それからはよくお姉ちゃんと一緒に学校へ行くそうです。少し羨ましいです。

 

「お待たせしました」

 

ウェイターの方が頼んだメニューを運んできてくれました。

 

「それじゃ、冷めないうちに食べよう」

 

「はい、いただきます」

 

それからは楽しくおしゃべりをしながら勇人さんとご飯を食べました。

また、勇人さんと2人でお出かけしたいな……。でもお姉ちゃん、ごはん大丈夫かな?

ひかちゃんの所で食べてたならいいけど……。

 

 

 

 

食事も終わり、アパートへ帰ってきた。

 

「それじゃ、またね」

 

手を振ってののかちゃんと部屋の前で別れる。

 

「はい、楽しかったです! あの……勇人さん? また一緒に……」

 

ののかちゃんは顔を赤くしながら言葉を紡ぐ。

 

「ああ。ののかちゃんさえよければ、また誘わせてもらうよ。それじゃ」

 

「はい、おやすみなさい!」

 

「おやすみ」

 

戸を開けて部屋に入り、明かりも付けずにそのままソファーに倒れ込む。あ、制服に皴がつくな……。せめて……いや、後でいいや。

改めて思うけど、これって初デートだよな……。

 

「………………」

 

先程までの自分の行動を振り返る。

 

「あああぁ! もうやだあああぁぁぁ死にたいぃぃぃ!」

 

自分の行動を思い出すと急に顔が熱くなった。

頭をソファーに叩きつけながら叫ぶ。ソファーから落ちても尚、床に頭を叩きつける。

 

「うおおおおおぉぉぉ! なんでまともに会話がつながってねぇんだよぉぉぉ!? 繋がっても精々数秒程度じゃねぇかぁ! しかも強引に手を引っ張って来た上に店に入る時だってほぼ無理矢理じゃねぇかよぉ!? ああもう! 僕のバカ! 屑! オタンコナス! 変態糞野郎! ロリコン!」

 

頭を床に打ちつけながら、自分に罵倒を浴びせ、ひたすら気のすむまでヘッドバットを繰り出す。

 

「はあ……はあ……。あ~ののかちゃんはまた一緒にって言ってたけど気を使っているんだろうなぁ……」

 

 

「はあ~めちゃくちゃ疲れたぁ……。デートってこんなにきついんだな。リア充共っていつもこんな事をしてるのか、ちょっと尊敬できるな……」

 

そういえば、あかりの方は大丈夫だろうか? 

いや、そんな事より本日僕が犯した失態・失言の方が大問題だ。

僕は込み上げてくる恥を誤魔化すようにそのまま目を閉じるが、眠りにつけなかった。どうしても寝付けないので、お笑いでも見ながら少しでも先程の事を忘れよう。

 

 

 

翌日

 

小鳥が鳴き、日の光が差しこんでくる。窓には青い清らかな空と純白の雲が浮かんでいる。

テレビは朝のニュースを映し、アナウンサーが笑顔でしゃべっている。

そんなテレビの前で体育座りをする自分が居る。

 

「…………眠い。でも眠れない」

 

結局オールしちまったよ……。ちくしょう、なんで寝れないんだよ。

これもすべて1日前に初デートで恥ずかしい失態を冒した天原勇人って奴の仕業なんだ。

何だって!? それは本当かい!? ああ、本当だとも。だって僕がやらかした本人だもの。

 

「学校、行くか……」

 

まだ顔には熱が残り、多分真っ赤なのだろう。間宮がびっくりするだろう。あはは。

立ち上がって鞄に必要な物を詰め込み、顔を洗い、冷凍していたご飯を温めて頬張る。

なんか、眠いせいか食欲が沸かないな……。

 

ピンポーン

 

「ああ……。今いきますよー」

 

鞄を持って靴を履き、戸を開けると間宮が待っていた。

 

「勇人君おはよってどうしたの!? 顔も眼も真っ赤だよ!?」

 

「ああ、気にしないで。さあ、今日も一日頑張ろう~。お~」

 

「ど、どうしちゃったの……? 今日の勇人君変だよぉ……」

 

 

 

登校途中、間宮が話しかけてくるが何と言っているか上手く聞き取れない。

意識がおぼろげになり、瞼を閉じたらすぐに眠れるだろう。でも、目を閉じれば昨日の出来事を思い出してどうしても寝付けなくなり、負の連鎖に陥っている。

 

「ねえ勇人君、本当に大丈夫? 今日は休んだ方が……」

 

間宮が心配そうな顔をしているので恐らく、僕の体調に気を使っているのだろう。

とりあえず平気だと答えておこう。

 

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう……」

 

「そういえばさ、ののかにご飯を御馳走してくれたんでしょう? ありがとう!」

 

「っ!? う、うん」

 

なぜかは分からないが昨日の事を話されるとはっきり聞こえる。僕はかなり昨日の事が気になっているようだ。

 

「いいな~。ののかも嬉しそうに話してたもん」

 

え? ののかちゃんが? 嬉しそうに? 強引に手を引いて行ったのに?

 

「え? マジで? 冗談抜きで? え、ちょ、ドッキリ大成功って言うなら今の内だよ? あ、やっぱもう言わないで」

 

「どっち!? 言って欲しいのか、そうじゃないのかどっちなの!?」

 

 

勇人は羞恥の呪いから解放された!

 

「フフ……。安心したよ、ありがとう。あかり」

 

「ほ、本当にどうしちゃったの……?」

 

 

 

学校に着くと、僕はすぐにうつ伏せになって目を閉じた。

 

 

 

「zzz……」

 

 

学校ってのは面倒くさいよな。しかも碌でもない事ばかり起こるし、理不尽が振り降ろされる。

でも、大人は皆口を開いてこう言う。「今思えば、学生の頃は本当に楽しかった」と……。

何故そう言えるのか、僕なりに考えてみた。結果、その人たちは充実していない学生生活と思い込みながらも、充実した学生生活を送っていたのだ。よく講演会なんかで来てくれるおじ様やおば様は友達もいて、満足にやりたい事は何でも出来た学生時代を送ったからだ。

学生時代、ボッチだったって言う人は見たことがない。なぜなら、充実しなかった学生生活を送った人は講演会には出ない。

そうだ、日本中の大人に聞いてみよう。「学生生活はどうでしたか?」と。

殆んどは、楽しかったと答えるだろう。

きっと、充実しなかった学生生活を送った人はこう答える。

 

『まあ……楽しかった』

 

「まあ……」が問題なのだ。普通に楽しけりゃ、ストレートに楽しかったと答えるだろう。

それに「まあ……」と口に出している時、その顔は笑っていないだろう。

なぜなら、押し付けられた不条理に苦しめられる自分の姿が真っ先に思い出されるからだ。

その人を見ると僕は親近感が湧く。ただし、仲間とは思わない。

 

 

 

「夢の中でまで捻くれた考え方をするんだね。僕は」

 

教室を見渡せば、そこには誰も居ない。

夕日が教室を赤く染め上げ、とてもロマンチックだ。ん? 夕日?

 

「ってもう放課後!? 別に学校来る必要無かったじゃん! ああそうだ、今日の番組は見逃せないんだ! ささっと帰ろう」

 

 

あら? 携帯が鳴っている。誰だろうか?

鞄を背負って教室から出てしばらく歩いたら携帯が鳴りだした。

 

 

『間宮あかり』

 

 

 

『どうしたの間宮?』

 

「あ、勇人君起きたんだ」

 

『うん。まさか放課後まで寝過ごすとは思わなかったけどね』

 

「えへへ。勇人君、気持ちよさそうに寝ていたから起こさなくて良かったよ」

 

勇人君は今日1日中ずっと眠っていて、もしかしたら夜まで寝てしまわないだろうかと思って電話を掛けてみたけどちゃんと起きてそうで安心した。

そのあと、勇人君と少し話して携帯を切ると、目の前にひかちゃんがいた。

こっちを鋭い目つきで覗き込んでいる。

 

「わわっ!」

 

な、なんで、こんな近くにいるの!? 気が付かなかったよ!?

 

「あかり、今誰と電話していたんだい?」

 

あれ? ひかちゃん、ちょっと怒っている?

 

「ひかちゃん、もしかして怒って……る?」

 

「そ、そんなことないよ!」

 

図星なのかワタワタと手を振る。

 

「そ、それより! 今誰と連絡してたの?」

 

何でそんなに電話の相手が気になるのかなぁ?

別に、隠すことじゃないと思うけど……。

 

「誰って、勇人君だけど……」

 

というか、ひかちゃんって勇人君としゃべってないよね。

名前は知ってるだろうけど。

 

「勇人……。あの時の……!」

 

急に顔を伏せてワナワナと震え始めたひかちゃん。

そして、唐突に──

 

「あかりはさ……その、勇人と付き合ってるの?」

 

「ええ!? なんでそうなっちゃうの!? 勇人君とはただのお友達だから!」

 

最初は暗い人だなって思ってたけど、本当は優しいし、面白い事も言うし……。

 

「そ、そうだよね! うん。よかった……」

 

「?」

 

「あ、ねえねえひかちゃん。今日は家でご飯を食べない? こだまちゃんとのぞみちゃんも誘ってさ」

 

「いいの?」

 

「うん。ひかちゃん達なら大歓迎だよ!」

 

ひかちゃん達と会えたのは久しぶりだから、もう少し一緒にいたいしね。

 

「あかり……」

 

ひかちゃんも喜んでくれてるみたいでよかった。

 

 

 

 

 

「いらっしゃい! ひかちゃん、上がって上がって!」

 

「お邪魔するよ、あかり」

 

ひかちゃんをリビングに通すと、ののかが雑誌を読んでいた。なんだか真剣な表情で読んでたっぽいけど、ひかちゃんの姿を見たら嬉しそうに微笑んだ。

 

「ひかちゃん! お久しぶりです!」

 

「可愛くなったね、ののか」

 

「そんな、可愛いなんて……」

 

二人は嬉しそうに話す。

あれ? ののかが読んでる雑誌……。

男の子への……プレゼント特集!?

 

「これって……ののか、彼氏ができたの?」

 

「ち、ちがうんです! この前、勇人さんにお夕飯を奢ってもらってそのお返しで……」

 

「そう言えばレストランで御馳走してもらったんだっけ……」

 

それにしても勇人君、見栄張ったな……。

いつも金欠を嘆いている勇人君がレストランか……。

 

「ちょっと待って。ののか、別に彼氏じゃないんだよね?」

 

「そ、そうですけど……」

 

「ま、まさか……!」

 

「あ、あの……ひかちゃん……?」

 

何か怖いよ…?

 

「何か変なことはされなかったかい!?」

 

「へ、変なことって…勇人さんはそんなことしませんよ? あ、でも昨日……」

 

ののかの顔がうっすらと朱に染まった。それを見たひかちゃんは顔を青くした。

って昨日何があったの!? 顔を赤くすることってまさか……。

勇人君とののかが……。

 

「遅かったのか……!? しかも昨日……?」

 

ひかちゃんが膝と手を床につけてうなだれる。

ひかちゃんすごく変だよ!?

 

「あかり、その勇人とか言う馬の骨は何処にいるの!? 早く教えて!」

 

ひかちゃんの迫力に圧されて答えちゃった。なんだか答えちゃいけない気がしたんだけど……。

 

「え、お、お隣さんだけど……」

 

「し、しかもお隣さん!? クソッ……」

 

ひかちゃんが物凄い勢いで部屋から出ると玄関からバタンと音がした。

慌てて追いかけてみるとひかちゃんは勇人君の部屋に入って行った。

 

 

 

「あれ? あかり、こんな所でどうしたの? って……あ、玄関あけっぱだったか!」

 

ある意味良いタイミングで勇人君も帰ってきて、自分の部屋のドアが開いている事に気づいて急いで部屋へ戻る。

 

「あ、勇人君、それはさっき」

 

私の言葉に耳を傾けずに勇人君は部屋に入って行っちゃった。

 

 

 

「ただいまー。まあ僕しかいないけど。朝は寝ぼけてて閉めるの忘れてたかー。まあ、空き巣なんて居る筈……ん!?」

 

僕の目の前に日焼けしてスタイルの良い女の子が立っており、幻覚だと思い目を擦ってもう1度見てみる。

 

ガシッ

 

「は? え? え?」

 

最近の幻覚は凄いな。胸倉掴んでくるんだー。僕は感心した。

あれ? 物理干渉してくるって事はこれって……。

 

(けだもの)ぉぉぉ!」

 

胸倉を掴まれ、僕の目の前に手甲が迫ってきていた。

 

「ぐぼぉ!?」

 

「よくも! ののかを! この(けだもの)め!」

 

「ぐぼぉ!? ちょ、やめ……。マジで痛いって!? あああぁぁぁ! もうやだあああぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

「その、済まない。誤解だった……」

 

「勇人さん、大丈夫ですか?」

 

数発殴られたところであかりが助けに入ってきて、ひかりを止めてくれた。事の経緯は何でも色々あって僕がののかちゃんに手を出したとかで誤解されたらしい。

今はののかちゃんが氷で顔中にできている腫を冷やしてくれている。多分、今の僕の顔は凄まじい事になっているだろう。テレビにでも放送されたらモザイク処理でもかかるんじゃないかと思う程に。

 

 

「勇人君が部屋に入る前に止めていれば良かったのに……」

 

間宮が申しわけなさそうに項垂れる。元々悪いのは昨日みたいに無理矢理ののかちゃんの手を引いていった僕だから仕方ない。ひかりだって従妹を思っての行動だしね。

僕だって兄弟とかいたら報復する自信があるし。

 

「過ぎた事は仕方ないからいいよ……。まあ、ここまで徹底的にぶちのめされたのは初めてだけど……」

 

「う……。ごめんなさい……」

 

「まあ、誤解も解けたし万事OKってことで片付けよう」

 

たんこぶを氷で冷やしながら僕は話を切り上げた。

 




間宮ひかり

名古屋武偵女子校1年。専門科目は多分強襲科。あかりの従姉妹で間宮一族の分家「宵座」の出身。
一人称が「ボク」でボーイッシュである。夏休み明けからクラスに研修生として転入する。間宮あかりとは昔から仲が良いらしく、「ひかちゃん」と呼ばれている。
性格はしっかり者にだと思うけど、ちょっとだけ抜けている所もある。
なお、携帯している手甲で殴られると滅茶苦茶痛い。
僕の顔にモザイク処理が掛かるほどにボコボコにされた。

これからはできるだけ怒らせないように接していきたいと思う。
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