屑を装いながら頑張って生きてます。   作:ロイヤルかに玉

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何が何だか自分でも分からなくなってきた。

もう1度言います。何が何だか自分でも分からなくなってきた。

念のためもう1度だけ言います。何が何だか自分でも分からなくなってきた。

はい、そんな訳で今回は特に意味不明な回です。
もう、書いてる自分でも混乱してきた。


第23話 殺す気でかかってこいやぁぁぁ!

 

今日は秋葉原に遊びに行くんだ。金はちゃんとクエストで稼いだぞ。

あまり使いすぎないように気をつけなければ……。しかし、休日の電車も混むものだ。

左手で吊り革を掴み、右手で携帯を持って検索をかける。画面には、痴漢冤罪を着せられないようにする方法とある。

 

冤罪かけられたら走って逃げるしかないのか? しかし、僕は両手を使えない状態なので着せられる事はない筈)

 

そういえば、過去には「物理的に触るのは無理っぽいけど、『痴漢をしていない』と言う証拠が無いので有罪にしときますね^^」という事もあったらしい。

人権とは一体……。ホント理不尽な世の中になったなと思う。

 

 

「次は秋葉原です」

 

 

アナウンスが鳴り、僕は降りるために扉の方を向く。

なんとかかき分けながら行かなければ。扉はすぐにしまってしまう故。

扉が開き、何かの間違いで他人のお尻とかに手が当たるの防ぐため、ポケットに手を突っ込んで扉の方へ向かう。

 

「ちょっと通りますよー」

 

扉付近へ着いた瞬間――「きゃあああ! この人痴漢です!」

 

腕を掴まれて引っ張られる。

 

「はあ!?」

 

僕の腕を引っ張っていたのは、僕を遥かに凌駕する顔をした女だった。

しかし、こんなくだらない事で人生をパーにする気はない。何より、こんな僕以上の顔をしている奴の手によってなんて御免だ。

 

言っておくが、僕は指一本触れていないぞ。

掴んでいる手を振り払って、電車を降りる。改札口に切符を入れようとするが、上手く入らずに落ちてしまった。しかし、後ろからは偽善者のじじいとスーツ姿の男性が追ってきているので拾っている暇はない。僕はそのままジャンプをして改札を飛び越える。

 

「へっ、ブスにあげる金なんぞ無いんだよ! ヴァーカァ!」

 

吐き捨てるように言い、駅の出口へ向かう。後ろからいくつもの足音が響き、追われている事を理解する。しかし、結局追いつかれることはなかった。

 

 

 

「はあ……。あのクソアマが……次会ったら名誉棄損で訴えてやる……」

 

結論、「冤罪かけられたら逃げるべし」

信じられるのは己の力のみと聖書にも書いてあった。

正義を信じて戦っても勝ち目など薄い。勝ったとしても、それまでにどれ程の時間が掛かるか分からない。

 

 

 

「よーし、遊ぶぞ」

 

ゲームセンターに入ったら、帽子にサングラス、そしてマスクを付けた男? がクレーンゲームで遊んでいた。とてもシュールな光景だ。

しかし…………僕は彼にどうしても違和感を感じていた。いや、違和感と言って良いのか分からないが。

 

「…………うーん、あれってやっぱり……」

 

僕の予想は当たっていると思う。まず、平日に学校で必ず目にする覚えのある顔。そして金髪。そして中々なバスト、つまり女性である。しかし、身長は僕と同じぐらいの165cm、この条件に当てはまる女性を僕は知っている。

 

「うん、やっぱり火野だよね」

 

見たところ、火野はきれいな服を着た女の子の人形を狙っているようだ。

やはり女の子なんだなと改めて認識させられる。

しかし、一向に取れそうにない。マスクとサングラスで判別不能だが、悔しそうな顔をしているだろう。

 

 

「僕に任せろ。火野」

 

「なっ!? 天原!?」

 

財布を開いて百円を取り出し、ゲーム機に投入する。

 

まずターゲットはぬいぐるみだ。箱ではないので僕の技術では十八番である、「スライド」や「ツバメ返し」を用いても通用しない。

だが、幸いな事にぬいぐるみは落とし口付近にある。しかも落ちかかっていると言ってもいい。ここまで来れば懇切丁寧に掴んでやる必要は無い。未完成だが、秘儀「プッシュゲット」を使わざるを得ない。

 

慎重に操作して人形にクレーンを降ろす。

 

クレーンのアームが落ちかかっている人形を押し、落とし穴へ落とした。

 

 

「ふう、獲れたよ。火野」

 

「あ、ありがとう……」

 

火野は嬉しそうに人形を抱きしめるが、すぐに顔を赤くしながら口を開く。

 

「な、なんで、あ、天原がここにいるんだよ!?」

 

「えー何そのここに居ちゃいけないみたいな……。僕だって遊びたいと思う事があるのさ」

 

「どう言い訳すればいいんだ……」

 

小声でボソッと呟く。彼女の恰好は明らかに変装を意識している格好だ。

まあ、火野は別名「男女」と呼ばれており、人形のような女の子が好きなものには遠い存在だと偏見を持たれるかもしれないが、やっぱり女だろう。

 

「まあ、火野だって女の子なんだからこういうのを好きになる権利はあるよ? まあ、ブスに権利はないけどさ」

 

「…………」

 

「周りの目なんて気にするなよ。ほら、アーサー王なんちゃらで自分の意志を持つことが云々ってあったじゃん? そんな感じだよ。別に言いふらすつもりもないしね。興味ないから」

 

「ほ、ほんとか……?」

 

「ああ、明日にはこの事なんて忘却の彼方だよ。興味がないって事は覚える必要もないからね」

 

「あ、ありがとう。天原」

 

 

そんな訳で、お礼をさせろとのことなんでメイド喫茶で飲み物を頼んで2人で寛ぐ。

 

「そういえば、いつもベッタリな妹分はどうした?」

 

「用事があるから居ない。それに、連れてこねえよ」

 

「まあ居たって敵意を向けられて僕が気まずい思いをするだけだしね」

 

「………………」

 

火野がこちらをじっと見ている。じろじろ見られると落ち着かないので本を読んで気を紛らわせることにした。

バッグから一冊の本を取り出し、読みふける。本の内容は、戦争をしていて主人公の国が不利なのだが、それでも諦めずに主人公とヒロインが力を合わせて戦うものだ。

主人公は不治の病を患っていて何とも詰むことが明らかな内容だが、結局全部うまくいった。

世の中もこの本のように何もかもが上手くいくなら、時には戦争も良いかもしれない。

 

前言撤回、上手くいくと決まっていても死ぬ可能性があるからやっぱり無理。

 

「なあ、天原」

 

「ん?」

 

「お前ってさ……なんて言うか、自由人だよな」

 

「え、マジで?」

 

「ああ」

 

火野が至極真面目に頷く。確かに今までそれなりに自由にやってきた事もある。

相手が気に食わないから地味な嫌がらせをしたことだってあるし。

あ、でも僕が一方的に嫌な事をされたから仕返しをしただけだ。

全く、何が「自分がされて嫌な事は人にもするな」だ。こっちはそのされて嫌な事を今まで一方的にされたんだぞ。

一発は一発って言うし、お返しだ。なのになんで僕だけ怒られないといけないねん。

 

ってまた僕は捻くれた考え方を……。

 

「まあ自由なのは肯定するけど、「勇気と自由と愛が友達さ」みたいな寂しい人間じゃないからな?」

 

「いや、別にそこまで言ってねえよ」

 

「まあ、とりあえずお開きにするか」

 

 

席から立って、レジへ向かう。財布を取り出そうとしたら、火野が割り込んできて「あたしが払う筈だ」と言った。火野に会計を任せて、メイド喫茶を出る。

 

「なあ、天原。ゲーセンで遊んで行こうぜ?」

 

「まあ、構わないけど……」

 

そんな訳で、再びゲームセンターに入り、2人で対戦する。主に太鼓の〇人とマ〇オカートで火野と競ったが、僕は稀にしか此処には来ない。従って、よく遊びに来て、経験がある火野にボロ負けするのであった。太鼓の〇人難しすぎぃ! 

 

「あ~楽しかった」

 

「為すすべなくボロボロにされた僕の気持ちも考えてくれればありがたいかな」

 

「天原はこの後どうするんだ?」

 

「うーん、ちょいと入院している人がいるからその人のお見舞いかな」

 

「そうか、んじゃな。楽しかったぜ」

 

そう言って火野はにっこりと笑いがら手を振って去っていった。

やべえ、超可愛いんですけど……。凛々しくて可愛げもあるって中々だな。

これじゃどんな女性にでも鼻の下を伸ばすだらしない男だな。僕って

 

 

僕は今、義父が入院している病院へ向かっている。

いつも通りの見舞いだ。見舞いの品は持ち合わせていないが、まあいいだろう。

別にそんな細かい事を気にする人でもない。

 

「あら、奇遇ね。こんなところで」

 

良く言えばクール、悪く言えば陰気な雰囲気を漂わせている美少女

黒いセーラー服に、煙管を口に咥えている。

 

「なんで娑婆にいるの? あ、なるほどね。自己解決したよ」

 

夾竹桃への問うと共に答えがすぐに出てきた。彼女は恐らく、司法取引で釈放されたんだ。

何を条件にしたかは予想がつかないが……。しかし何を条件にしたのだろうか……?

印象としては謎の多い女で定着しているので全く想像がつかない。

 

「それにしてもあなた、随分面倒な事に巻き込まれているわね」

 

「え~そんな憑りつかれる覚えなんてないっすよ~。そんな心霊スポットとか言ってないし……」

 

僕の後ろに冷たい視線を送る夾竹桃に論されて、僕は頭を掻きながら後ろに振り返る。

 

 

 

「やあ、久しぶりだね。天原勇人君」

 

後ろに居たのはそんな非科学的なものではなかった。

あの時の男、僕をボコボコにし、義父と引き分けた奴が立っていた。

 

「おいおい、会いに来るならちゃんと連絡寄越せよ。僕は未熟だから逮捕する準備は急にはできないんだぜ?」

 

バックステップで距離を取って両手を構える。

 

全く、休日だからと言って油断していた。武装なんてしていないもん。

人生何が起こるか分からないとはよく言ったものだ。

 

「落ち着きなさいな、逮捕したって無駄よ。その辺の武偵高生と権力を持つ人間、国がどちらを信用するなんて目に見えているでしょう?」

 

夾竹桃が僕の隣に立ち、煙管で伸一のスーツに着いている光るバッジを指す。

 

あのバッジは……そうだ、テレビでもよく見かける事がある。偉い人がつけているバッジだ。

 

「犯罪者が政治家とか日本大丈夫かよ……」

 

片手で頭を押さえ、空を仰ぎながら愚痴る。

 

「今日は勧誘に来た。まあ、ただ使える駒が欲しいだけなのだが……。しかし、栄一とは違い、私は君を捨てる事は無い。優秀な駒は助ける方針なのでな」

 

「先に言っておく、断る。面倒、後お前が気に食わないし、お前の下で働くとか嫌だ」

 

言葉と共に地を蹴り、渾身の拳を打つ。しかし、あっけなく拳は受け止められ、腕を引いても拳を掴んでいる手は離そうともせず、ビクともしない。

信一は空いた手で拳を握り、僕の顔面目掛けて腕を振る。咄嗟に目を閉じたが、拳は目の前で止まっていた。

 

「何故?」と思うと僕と伸一の拳の間に光が通った。すぐにその正体に気づいた。

目の前にTNKワイヤーが張られていた。信一から距離を取り、横の人物に語りかける。

 

「助かった。でも見返りは何もないよ?」

 

「構わないわ。気まぐれでやったから」

 

「ふっ、そちらのお嬢さんも手際が良いな。流石はイ・ウーのメンバーか。まあ、政治家が此処で女子供暴力を振るっていたらよろしくは無いか。ここは退かせてもらおう」

 

「天原君、レインボーブリッジ付近に廃ビルがあるだろう? そこで待っているよ。良い返事を期待している。あと、そちらのお嬢さんもね」

 

それだけ言うと、伸一は裏路地へと入り、暗闇に消えて行った。

くそ、ナイフがあれば追っかけてブスリとやれるんだがな。

 

「あなた、どうするの?」

 

「どうもしないさ。僕の気が向くままにやるさ」

 

「そう、それじゃあ先に言っておくわ……。さようなら。中々面白かったわよ、あなたと話せて」

 

「そりゃどうも」

 

夾竹桃は煙管を咥えながら僕の向かう方向とは逆の方向に歩く。僕はしばらく、その場で考え事をした。大した事でない、少し考えればすぐに結論が出るちょっとした考え事だ。

とりあえず、先ほどの事を義父には報告しておこう。

 

気を取り直して病院へ歩を進めた。

 

 

 

 

「義父さん、調子はどう?」

 

ノックをして返事が帰って来る前に戸を引き、病室に入る。

義父はだるそうに頭を掻いていた。そして、心底嫌そうな顔をしながら僕に言う。

 

「病院のベッドの上で調子なんて良くなるか。で、何の様だ?」

 

「いや、ただ見舞いに」

 

素っ気なく言いながらベッドの横の椅子に腰を掛ける。

 

「親思いの息子を持って嬉しいわ―。見舞いの品があればもっと嬉しかったかなー」

 

「その露骨な棒読みやめてくんね? あ、あと伸一に会ってさ、誘われたよ。断ったけど」

 

「…………そうか、ちょいと早いな。仕方ねえ、体に鞭うつか。勇人頼みがあ「そろそろ、詳しく話してくれてもいいんじゃない?」……」

 

体を起こしながら言う義父の言葉を遮り、僕は言った。

義父は肩を揉みながら「ふう……」と一息ついて口を開いた。

 

「伸一の野郎も大したもんだよな。支持率だけはありやがる、だからそこを利用する」

 

「俺に奴は殺せない。怪我や実力ってのもあるが、上からも圧力を掛けられている」

 

「じゃああいつは……」

 

「先に言っとくが、俺たちはただ犯罪者を殺せるってだけの組織だ。戦力じゃ国内最強だとか評されるが立場上、政府には逆らうことが出来ない」

 

「いや、それ以前にあいつと政府の間に何があるのさ。まず異常でしょ? なんであいつが政府に組してるの?」

 

国を脅かす犯罪者と政府、相容れる筈なんてない。

政府だって伸一が何者かなんて知っている筈だ。元・国内最強戦力に数えられている。

それだけで権力者からはマークされるはずだ。

 

「お前、考えたことがあるか? 公安0課や武装検事、これ程の戦力があるにもかかわらず、なぜ国内の膿……。スラムに手を出さないのか」

 

「単純にスラムの連中が手に余るからじゃないの?」

 

「スラムってのは人間の形をした化け物が逃げ込む場所であり、国を回すための、いわば施設の1つでもある」

 

「ますます分からない」

 

僕は貧乏揺すりを始め、頭を掻く。あまり難しい話を聞くと癖でこうしてしまう。

授業中も貧乏揺すりが激しいとよく間宮達から注意されることがある。

それにしても、犯罪者が集う場所が国を回すための施設か……。

刑務所みたいなものなのかな? あんな治安の悪い刑務所なんて外国にでも行かない限り無いと思うけどさ。

 

「ヒントをやろう。政治家、気に食わない、消す。2つ目のヒント、気に食わない奴が居たらどうする? シンキングタイムスタート」

 

政治家、気に食わない、そして『消す』……?

『気に食わない』ってのはどういう事だ? 

僕は気に食わない奴が居たら……そこから追い出す。でも追い出しただけじゃだめだ。

そいつがまた突っかかってくる。それなら……消す。

政治家が……消す? 

 

「政治家が気に食わない奴を消す……。でも法律上殺せない。それなら違う方法で消す。この世から消さなくても、政治の世界から消す事ができるって事?」

 

「イエス。要するにな、邪魔者を葬り去る場所でもあるのさ。スラムにまで落とされたらもう2度と這い上がる事は出来ない」

 

「伸一はどんな邪魔者も消し去る武器、『スラム』を持って政界にきた。国からしても良い条件だろう。手を出さず、その存在を隠して見返りをやるだけでいくらでも政界に穴を空ける危険な邪魔者もスラムが飲み込んで消してくれる。別に自分らが手を出す必要が無いから証拠も完全に残らない。仮にもしもの事があってもだ」

 

「信一は自身が保有する権力、国が持つ権力、そして支持率、この三位一体に鎮座している訳だ。崩そうとも、多勢に無勢だ。権力は敵をも味方にするし、伸一の味方をする奴の方が多くなるだろう。国内で争い事なんてこの犯罪が凶悪化する時代にできない。それこそ犠牲は出るし、勝機も無いに等しい」

 

利害の一致と言うんだっけか? こういうの。

人間とは権力を持てば狂うと聞いた事があるがまさか犯罪者と組むまでとは……。

強引に法を可決したり、気に入らない奴は非難し蹴落とす。

怖い怖い。将来ああいう大人にはなりたくないな。

まだ愛と正義が友達だと言い切る大人の方がマシだな。

 

「伸一が崩さないと、チャンスは来ない」

 

「腐ってやがるこの国に俺は亀裂を入れる。今この瞬間にも罪のない奴は、這い上がれないどん底へ落とされている。阻止するにはスラムの存在を公にすればいい。後は自動で事が運ぶ。そのための準備もしてきた

 

「準備って……?」

 

「勇人、お前がスラム出身で良かった。お前が伸一を殺せば、政治家連中は慌てる。その隙に少し話を盛った『真実』と言う爆弾を投下する。『政府は今まで邪魔となる人間をスラムに落とし、隠蔽してきた。政府はスラムと関係を持ち、信一もまた政府とスラムの手によって始末された』ってな。怒った国民は今の政府は認めない。従って、総入れ替えになる。これでスラムも対処できるし、糞な政治家も始末できる。一石二鳥さ」

 

成程、支持率がある伸一をスラムの出身の僕が殺す事によって一気に国民の敵を政治家とスラムに絞らせることができる。要するにとばっちり作戦か。

 

「裏で人を消す『屑野郎』伸一。そして、お前はその伸一を倒した『ヒーロー』。だが、伸一は支持率だけはあるからそうはいかない。スラムを公にするにはお前と伸一の立場を入れ替えればいい」

 

「だから勇人、屑になってくれ。お前も只では済まないだろうな、国は消しに来るだろうぜ。まあ要するに………………死んでくれ」

 

「いいよ。でも完遂はできないよ。死なないから」

 

分かっていたさ。自分が何のために拾われ面倒を見てもらえたのか。

だが、それでもこの人は僕に愛情をくれた。だから、筋は通す。

 

「持ってけ。せめてもの手向けだ。だから、何としてでも伸一を殺れ」

 

そう言って義父、いや……。天原栄一は鞘に桜の花が描かれた短刀投げ渡してきた。

桜は木から離れ、散る。僕は天原と言う木から離れる。いたって普通だ。三度の飯より普通が大好きな僕にぴったりだ。それに散った後どうなるのか、その先を見るのも面白い。食われて終わるか、風に飛ばされ枯れるまで生きるか……賭けてみよう。

 

「親子で一緒の仕事ってのも…………中々悪くねえかもな…………」

 

「じゃあ、早いとこ奥さん見つけてガキ産んでもらえばいいじゃん」

 

「だな……。あばよ……勇人」

 

「さよなら、父さ……栄一さん」

 

 

これだけ言の葉を紡ぎ、僕は病室を後にする。

 

そして病院を出て、伸一が言っていた廃ビルへ向かった。

 

レインボーブリッジ付近の廃ビルはこれしかない。こんな所に廃ビルか……。

見た感じ、まだ老朽化もしていないのになんでだろうか? いや、権力があるならビルの一つ位は好きにできるか……。

 

肩を解してリラックスし、ゆっくりと中に入る。

 

 

「やあやあ、待っていたよ。天原勇人君。考え直してくれたかな?」

 

「ああ、考え直したよ。お前を……逮捕するんじゃなくて、ぶっ殺すってな」

 

伸一を睨みつけ、手を鳴らす。

 

「何故? もし、君の目標が達成できても国は放っておかないだろう。君も消されるぞ? 最早栄一の力でも守れない。だから栄一に死ねと言われたのだろう? 何故栄一に力を貸すんだ?」

 

「そうだな……。僕が……そうしたいからだ。まあ確かに親もいないし、挙句死ねと言われて散々な人生だ。でもな、通さないといけない筋もあるんだよ」

 

理屈なんてどうでもいい。僕の言っている事は的を得ていなくても、僕が思うようにやる。

それが『勇人』の人生だ。

 

「そうか、ならば……」

 

伸一は小さな装置を取り出し、ボタンを押す。

 

「っ!」

 

大きな爆音がすると同時に地面が揺れる。周囲に瓦礫が燃えながら落下してきた。

 

「お前……」

 

「本来なら栄一を消す手段であったが、私はここで潰える訳にはいかんのだよ。だから、念には念を入れる。栄一も何を考えているか分からないからな」

 

「中々面白い展開だ……。それに、あんたを潰すのは今がチャンスだしな。その右足の傷、中々深いだろう?」

 

義父が隙を突いて撃ち抜いた、奴の右足に目を向けながら僕は短刀を抜いて構える。

 

伸一も大きなナイフを取り出して構えた。

 

互いに得物を構え、準備は整った。

 

 

 

楽しい休日かと思ったけど、人生最大の難所だったようだ。

 

さて、装うとしようか。日本の歴史上に残る最低の――

 

 

 

                 『屑』を。

 

 

 

 

 

 

「行くぜぇ! さあ、屑ヒーローさんよお、殺す気でかかってこいやぁぁぁ!」

 




次回、最終決戦。でも最終話じゃないです。
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