屑を装いながら頑張って生きてます。   作:ロイヤルかに玉

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やっと原作のキャラと絡みます。
やったね主人公! もう1人じゃないよ!


第7話 ただ、前へ前へと進み続ける。それだけだ。

ザアッー……

 

空は雲に覆われ、雨が降る。なんだか、この雨がこれから不吉な事が起こるのを予感させる。いや、漫画じゃないし、そんな訳ないか……。

それにしても、折角の休日なのに何だよ、この天気。

遊びに出かけるには良くない天気だ。なんでいつもいつもこうなるの?

いや、まあ暇だから外歩いてるけどさ。でもやっぱり暇だなー。

そうだ、小夜鳴の変装と声真似して変態ごっこでもするか。あ、身長でばれるから駄目だ。

僕って身長は165cmしかないからね。意外とチビでしょう? 小さい分、速さや回避特化だからいいけどさ。これが長所だ。うん、武偵の道でしか役に立たないね。

雨の中、傘も差さず気ままに歩く僕の前を、黒い服を着た少女が横切った。不吉だな。あ、それは黒猫か。

それにしても、妙な感じだな。彼女からは……何と言うか……ドス黒い何かを感じる。

放っておけば良いのに、どうしても気になってしまう。ある意味、武偵としての性なのかもしれない。そう思った頃には、僕は彼女を尾行していた。

 

クソ、あの女傘をさしてのんびり歩きやがって……。

こっちは傘すら無いんだぞ。早う問題起こせや……。人として思ってはいけない事を思いながら尾行を続けていると、少女は路地裏に入って行った。足音に気を付け、身を隠しながら静かに歩く。

「そうか、ならば目標と接触するのは数日後か?」

「ええ、そろそろ芽が出る筈だしね」

もう1人――女性の声がする。2人居るのか……。むむむ、せめて顔だけでも確認したいものだが……。

「しかしそれ程、間宮の毒とやらは強力なものなのか?」

また間宮か。最近よく耳に聞くな、尽く縁があるらしい。

「私はただ単に、この世に知らない毒が存在することが許せないだけよ」

何その、道を極めます的な……。

 

ぷーん……。

 

んっ!? 蚊か!?

蚊をロックオンし、両手で潰す。

「曲者! あっ……」

パチンッという音と共に声を出し、その直後に後悔した。

完全にばれた……。どうしよう……。とりあえず逃げ――。

「夾竹桃、どうやら邪魔な虫を連れてきたようだな?」

本能に従い、その場から飛び退く。

「くそっ、やっちまった」

距離を取り、狭い路地から通りに出て2人の顔を確認するために向き直る。

暗い路地から現れたのは先程の黒い制服の少女と、目を奪われるような、綺麗な銀色の髪をした美少女だった。

「やべぇ、美少女……!」

参ったな。黒髪も好みだが、銀髪も中々……。

いや、まあ美少女なら何でもいいんだけどね?

「なっ……! お前は何をっ……!」

僕の言葉に反応して銀髪が動揺する。いや、動揺するなよ。

「盗み聞きなんて無粋な事をするのね」

黒い少女の瞳がこちらを捉える。しかし、大して関心がなさそうにも感じる。

「すみませんね。生憎、それが仕事でね……」

さて、ここからどうするかだ。

「とにかく、此処で貴様を排除する」

銀髪の美少女が何処からともなく大きな剣を取り出した。

「えぇ!? ちょ、待て! お前一体何処からそんな粗大ゴミを取り出した!?」

「貴様、我が聖剣、デュランダルを……!」

デュランダル? その言葉に何か引っかかる。どっかで聞いたような……。

少し、考えるとすぐに1つの可能性が浮かび上がった。

まさか、あの大物超偵を狙う誘拐魔で有名なデュランダルか? 

いや、存在そのものがデマじゃ……。いや、だとしたら目の前の彼女は何者だ?

ただデュランダルの名を語っているだけじゃないだろう。見るからに中々の曲者だ。

「デュランダル……。お前があの誘拐魔……」

「夾竹桃、奴は私が仕留める」

「お好きにどうぞ……」

黒髪――夾竹桃の返答と共に、デュランダルは駆け出し、その手に持った大剣を振り降ろす。

「あぶなっ!」

サイドステップで回避し、次の攻撃に備え、構える。

「逃がさぬッ!」

大剣を横に薙ぎ、剣先が迫る。

「ッ!」

姿勢を低くして斬撃を躱し、そのまま水面蹴りを繰り出すが、デュランダルは跳躍で躱し、空中から剣を突き立てる。

「ヤベッ!?」

急いでその場から退避する。

ドスッ!

物騒な音と共に、大剣がコンクリートに突き刺さる。何とか回避したものの、コンクリートに突き刺さった大剣を見て背中に嫌な汗が浮かぶ。

こりゃ、一撃でもくらったら問答無用で即死だ。余程運が良くねぇと致命傷じゃ済まないぞ。

「ちっ、逃げるが勝ちだ!」

僕は背を向け、走り出す。逃げなければ死ぬ。しかし、目の前には黒い影が立ちふさがった。

夾竹桃がいつの間にか目の前に移動し、左手の指を出し、爪を首に突き立ててきた。

「いてっ!」

焦って夾竹桃から距離を取る。後ろにはデュランダル、前方には夾竹桃、囲まれた。

何とか逃げてこの事を 教務科(マスターズ)に伝え――!?

突然、激しい目眩に襲われ、その場に膝を着く。

視界が歪み、夾竹桃の姿がグニャグニャに曲がる。  

「うっ!?」

吐き気にも襲われ、意識が遠のいていく。胸を掴まれて握り潰されるような痛みを感じる。後ろからはデュランダルが歩いてくる音がして、絶対絶命だという事が分かる。

「ここまでだな。散れ」

冷たい言葉が耳に残る。

散る? 死ぬ? 僕が?

これで、終わりなのか? 

 

「…………断固拒否する」

 

横に転がって、後ろからの斬撃を回避する。

薄れゆく意識の中、ナイフを取り出して、左手の手の甲に突き刺す。

「ッ!」

激痛で、沈みかけた意識を無理やり引き上げる。それでも未だに、ここで意識を手放せば楽になれると頭が訴える。頭からの命令を無視して、次はコンクリートの地面に頭突きをかます。

凄まじい激痛が襲ってくるが、視界が少しばかりはっきりしてきた。

額から何かの液体が流れるが、気にすることなく立ち上がり、2人に向き直る。

「さあ、第2ラウンドを始めようか?」

「無理矢理意識を引き戻したか。大した精神力だ」

「予想外ね。致死性・即効性なのに」

おい、えげつねぇな。即効性で致死性とか殺す気満々じゃねぇか。しかし、こんなボロボロの状態で2人相手はまずい。流石に逃げるしかないか……。

「こんな毒より、ガキの頃に味わった薬漬けパーティーの方がスリル満点だったぜ?」

僕はただ強がる。相手に弱さを見せれば、それだけで相手はつけ上がる。常に強者として振る舞うのが生きるコツだ。

「面白い、ならば耐えてみろ」

デュランダルが踏込み、大剣を振るう。体を反らして斬撃を躱し、すぐにバックステップで距離を取る。デュランダルがこちらに向かって走り出すと同時に、僕も走り出す。

「ッ! 危ないな!」

目の前にワイヤーが張られている事に気づき、ナイフを振ってワイヤーを斬り、大剣を振ってくるデュランダルの攻撃を受け流す。

「くっ」

「不要に突進なんてするもんじゃないぜ?」

「貴様、なぜ得物を使わない!? ふざけているのか!?」

デュランダルが僕の手にあるナイフを見て怒鳴りつけてくる。

「冷静さを欠いちゃだめよ? 落ち着きなさいな」

夾竹桃が冷静にデュランダルをなだめる。こいつら良いペアだな。

「第2ラウンドと言ったが、お前たちを倒すなんて一言も言ってないぞ?」

大体、1対2でどうしろって言うんだ? こっちは紙装甲、 一発直撃貰えば致命傷か死亡だぞ? ここまでリスクが高い戦いなんて今まであっただろうか? 

うだうだ言っていても仕方がない。この状況を何とかするのが最優先事項だ。

「攻撃して欲しけりゃ、もうちょい有能になるこったな」

挑発すると、デュランダルは懐から小さなナイフを取り出し、投擲してくる。

空を切りながら迫る刃をナイフを振って弾く。

キィン!

弾いたナイフは宙へ浮き、浮いたナイフをチャッチして投げ返すと同時に僕は獣の如く駆ける。ナイフに集中していれば、すぐに対応はできない筈。

即興で考えた策を実行に移す。デュランダルは投げ返されたナイフを大剣で器用に弾く。ここまでは策の内、後は奴が反応できない速度で攻撃すれば……!

拳を握った瞬間。首筋に何かが触れる感触がしてすぐにバックステップで下がる。

僕の目の前には赤い液体が浮かんでいた。いや、正しく言えば、目視できない程細いワイヤーに付いているといった方が正しい。首には薄く傷ができて、血が流れているのだろう。

「ちっ」

舌打ちが出ると共に、もう1人の敵を見る。夾竹桃、いつの間にワイヤーなんぞ張りやがったんだ……。

「っ!」

再び目眩や吐き気が身体に襲いかかる。

「ガハッ!」

口から赤い水滴が飛び散る。毒が身体を蝕んできてる。その事実に恐怖を覚え、足がガクガクと笑い、力が抜ける。

「終わらせてやろう」

たった一言、それだけ言の葉を紡ぐと、デュランダルは先程とは桁違いなスピードで迫る。既に大剣を振る準備は整っており、後は間合いに入ると同時に振るだけだろう。

「……一撃だけ付き合ってやるよ……」

こちらも一言を紡ぎ、ガクガクと震える足に力を込めて立ち上がり、ナイフを懐から取り出す。ナイフを逆手に持ち、デュランダルの動きを観察する。漫画のようにすれ違い様に斬り合う。まさか現実でやる羽目になるとは思わなかった。

「ようやくその気になったか、だが、もう遅い!」

3……2……1……。

1で息を吸い、0と心の中で唱え息を吐くと同時に地面を蹴る。目の前には大剣を横に降ろうとするデュランダル、対するはナイフを片手に無謀な勝負を挑む僕……。

僕はナイフを振らなかった。代わりに、迫りくる刃を躱す事だけに集中した。

姿勢を低くして、命を刈り取りに来た刃を躱し、デュランダルの右側をすり抜けた。

「貴様……斬り合うつもりは……」

デュランダルは僕に向き直り、尚も怒りの籠った眼で僕を見る。やっとこちらがやる気になったと思ったら、攻撃せずに逃げ回るのだから怒りもあるだろう。

「ハア……ハア……ぐぅ」

右肩に痛みが走り、肩を押さえる。どうやら躱し切れていなかったようだ。

「グッ!」

左脇腹に衝撃が襲いかかり、何事かと見れば、左脇腹に夾竹桃の肘が入っていた。衝撃に抗えず、横に倒れる。雨に打たれているというのもあるが、まるで極寒の中にいるように、体が震えて力が入らない。それでも、また立ち上がる。

「呆れた。まだ立ち上がるなんて」

「鋼の精神なんでな……。勝負に負けても、戦いには負けない主義なんだよ」

そう言って、ポケットからスタングレネードを取り出し、地面へ転がした。

「貴様ッ……!」

すぐに2人に背を向け、走り出す。

スタングレネードが音と共に光を放ち、その一瞬の間に裏路地へと飛び込む。

「おのれ……。逃げたか」

「逃げ足だけは速いのね。でも、いくら速くても死からは逃れられないわ……」

その声を記憶し、僕は気配を絶って暗い路地の奥へと向かった。

 

「はあ……。やべぇ、眠ぃ……」

毒のせいか、毎日の疲労か分からないが、体に鉛が付けられたように重く、横になればすぐに寝られるほど眠い。

しかし、雨が降っている中寝たらまずい。何とか雨に当らない場所で……。

「お、丁度いいや……」

ボロボロのブルーシートを見つけ、それを被る。少し、休もう。

ああ、これじゃあホームレスみたいだな……。

目を閉じたら、瞼を上げようと思っても上がらなかった。それ程疲れている……よう……だ。

「zzz……」

 

 

 

「これは……やはり猛毒ですね」

「そうですか」

敗走した僕は、裏路地で力尽き、翌日(多分)太陽が真上に登っている時間に目が覚めた。無駄だと分かっていながらも、ボロボロの体を引きずり、病院へ駆けこんだ。ちなみに、力尽きて眠っている間に数日寝過ごした。学校になんて言い訳しようか……。

「猛毒でもう1人、入院しているんですよ」

「もう1人?」

「ええ、あなたとは違う毒の様ですがね……。それに解毒方法が分からないんです。それはあなたにも言える事ですが」

やはり、夾竹桃だけが解毒方法を知っているのか。随分と面倒な事になった。

「とりあえず、入院「必要ないです」しかし……」

「待つは嫌いなんですよ」

どうせなら、この心臓が止まる瞬間までやれる事をやりたい。

ただ、前へ前へと進み続ける。それだけだ。

もしかしたら、僕の肉体が進化して毒無効のスキルがつくかもしれないし、この毒は免疫が作れる毒で僕の体が火事場状態になって免疫が即効で完成して……。

免疫軍『ぶるあああああぁぁぁッ!』

毒軍『うわー! なんだこいつら!? イカれていやがる! 逃げろぉー!』

こんな感じで僕の体内で戦争が起きて、免疫軍の圧倒的武力によって毒軍は撤退するも殲滅されて某RPGの勝利BGMが流れるかもしれないし。可能性は無限大だ。

そんな事を妄想しつつ、僕は診察室を後にした。

ロビーに戻って、診察料を払い終える頃には夕暮れになっていた。

 

「せっかく、病院に来たんだし、ピンポンダッシュならぬノックダッシュでもやってみるかな」

病棟に向かおうとしたら、ロビーのソファーに武偵高校の制服を着た男子生徒が座っていた。制服を着ている人なら沢山いるが、彼は凄く落ち込んでいて、今にも「ドヨーン」とした効果音が聞こえてきそうだ。僕は自販機で飲み物を2つ買い、落ち込んでいる男子生徒の元に向かった。

近くで見れば、先輩だという事がすぐに分かった。僕は先輩の横に座り、缶を先輩の膝の上に乗せた。

「なんだ?」

「いえ、落ち込むくらいだったら誰かに相談すればすっきりしますよ? 別に名前も知らない人の悩みを聞いて言いふらすメリットなんてありませんし」

「…………」

「まあ、話したくないなら別に構いませんがね」

「いや、聞いてくれるならありがたい」

そう言って、先輩は話し始めた。

 

 

 

「そうですか……」

先輩の話を、僕は頷きながら聞いていた。

ちなみに、この人が元強襲科(アサルト)主席の遠山先輩と知り、内心ビビりながら聞いていた。

正直、話してくれないと思ったけど余程堪えていたのかすんなり話してくれた。

今日、事件があってその時にパートナーの女の子が負傷し、先程病室で喧嘩してしまったらしい。しかも、女の子相手に遠山先輩は怒鳴ってしまったらしく、その事を後悔しているようだ。

「まあ、先輩にも、そのパートナーさんにも色々過去があるんでしょうね」

「ああ、自分に時間が無いって、そう言ってた。でも俺だって……」

「先に折れた方が良いと思いますよ? そのパートナーさんも中々難しい性格してるようですし」

「いや、俺も悪いのは分かってんだ。でも――」

「こっちの話も聞かずに、好き勝手にやっていると?」

「ああ……」

「まあ、先輩は謝らないといけませんよ? 男女平等ってよく言いますけど、人は平等じゃないんですから」

まあ、遠山先輩とそのパートナーさん、両方に問題がある。でも、それを何とかできるのは当の本人達だけだ。

「さて、先輩はこのまま行けば目的の通り自由になりますが……先輩は納得できますか?」

「…………」

「自分が納得していなければ、そこに望んだモノがあっても、意味はないんですよ……」

一度っきりの人生、やりたいことはとことんやればいい。でも、自分を否定する事は絶対にしてはいけない。いくら後悔しても、それが選択した道からだ。

「なんだか先輩って、そのパートナーさんとは恋仲になっちゃいそうですね?」

「ねぇよ! それだけは絶対に!」

「凄い勢いで否定しましたね……。余程苦労されているようで……ご苦労様です……」

「そう言うお前も苦労人に見えるが?」

「確かに、そうかもしれません。僕が苦労しているのに他人が楽して遊んでいたら殺意が湧きますしね。学校祭の準備とか特に」

「実際にあっただろう……」

この人鋭いな……。流石、元強襲科(アサルト)主席だな。

「では、そろそろお暇させていただきますね」

そう言って立ち上がり、窓を見れば、空は暗くなっていた。

「ああ、話したら随分楽になった。ありがとな」

そう言って先輩も立ち上がり、窓を見る。そんな先輩をしり目に、僕はノックダッシュをする為に病棟へ向かった。

 

 

 

さーて、どの部屋でやろうかな?

 

『現実では、逃げの手段よ』

 

突然、目の前の病室から名言が聞こえた。

 




今回は少しシリアスだったかな?
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