黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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グダグダ連発で本当に申し訳ない。

ここから二章です。


第二章 地底と黒狼 上
十三 地底と土蜘蛛


 地底の場所を見据え、ただ駆け抜ける。恐らく此方で合っていたはず程度の知識しかないが、合っていなかったらまた戻るだけだ。木から木へと、跳躍しつつ進む。下にいるより奇襲をうけづらいのだ。まあ、このスピードで奇襲できる奴は中々いないと思うけど。

 洞穴を出て二十分。休まず走り続けているが、疲労の色はない。妖気が段々減っている位か。足に纏うのは緊急事態以外…まあいいや。面倒だし。

 

 走り続け、約30分。あまりスピードを出さなかったのと、道がわからなかったこともあるが、まあ早く着いた方だろう。地底の入り口に…到着だ。

 地底へと続く穴は暗闇で、とてもじゃないが奥まで見通す事は出来ない。降りてみる…しかないか。此処まで来たのだ。今更迷いはあるまい。

 深呼吸をひとつ、地底目掛けて飛び降りた。

 

 

 周りは土の壁。明かりはない。ゆっくりと降りてはいるが、やはりかなり不安だ。そこら辺にいるような雑魚妖怪からなら逃げ切れる自信はある。だが、地底の妖怪は訳が違う。うう…今更後悔しても遅いんだよなぁ…。

 ふと上空を見上げる。本当に胡麻粒のような大きさの入り口が見える。かなり下まで降りたのだろう。そう思ってまた下を向こうとした瞬間、背中に何かが貼り付いた。だけではなく取れない離れない動けない。

 

「ッ!? これ…蜘蛛の糸?」

「ご名答だよ、狼ちゃん」

 

 不意に暗闇から現れたのは、土蜘蛛の妖怪。黒谷ヤマメ。病気を操る能力を持ち、人間の天敵である。ま、妖怪である私には効かないだろうけど。

 隣に立ち、マジマジと此方を見るヤマメ。嫌な予感を感じつつ、もがく。

 

「…私は咬音 狼戈」

「わたしゃヤマメさ。黒谷ヤマメ。見ての通り、土蜘蛛さね」

 

 いや、何処が見ての通りだ。初見じゃまず気付かないっての。原作では、確か霊夢が見抜いたのだったか。節足類だと。よく気付くわ、こんなん。

 

「…出来たら開放してくれないですか」

「う~ん…どうしようかねぇ? 私はお前さんが旨そうで仕方がないんだ」

 

 ああ、貴女もか。土蜘蛛だから仕方ないかも知れないが貴女もか。

 血を飲もうが飲まいが、結局関係ないようだ。この調子ではお燐やお空、もしかしたらさとりにまで美味しそうと言われそうで怖い。物凄く怖い。ああ、どうしよう私。帰るか? よし帰ろう。

 

「よく言われる…ああ、もう血で妥協してくれないですかね」

「うー…うん。まあいいだろう」

 

 そういうと、ヤマメは蜘蛛の糸に纏う妖力を、一時的に消した。その糸から離れ、空中で静止する。ここで逃げたらもう地上に帰れなくなるだろうし。…もうどうにでもなれ。

 わくわくといった表情のヤマメにやっぱり止めてくれと頼む訳にもいかず。爪で手首を切り裂く。もう二度目なのだが…痛みには慣れたけども。

 

「んく…んぅ…」

 

 …ゲームで見慣れたキャラクターが目の前におり、且つ血を舐められているという…。精神的に、自分が壊れぬか心配だ。既に藍のこともあるし。

 ある程度舐め(飲み)終えた後、ヤマメが顔を離す。無言で傷に妖気を纏い、溜め息ひとつ。

 

「…やっぱり美味しかった?」

「ああ。いいねぇ、久々に良いものを摂れた。そうだ、お前は何故ここに?」

 

 今、私が一番返答に困ることを、血塗れでサラッと聞くヤマメ。地底に来た以上、しばらく滞在する。出来るなら、地上で私の姿を知っている人間がいなくなるまで。もういっそのこと住んでしまおうか。あれ、私の思考回路が矛盾してる気がする。

 

「…私は人間に追いやられたんだ」

 

 真実と嘘を織り混ぜる。事実、私は人間に追われてあの小屋から(形はどうあれ)逃げ出したのに変わりはない。偽りはないはずだ。

 

「…そうかい。着いておいで、案内するよ」

「え? でも…」

 

 旨いものを貰った礼だ。そう笑うヤマメ。ああ、やはり優しい。イメージ通りの妖怪だ。

 でも、私なんかを連れていって大丈夫だろうか。妖気を解放しないと雑魚妖怪にすら笑われるだろうし。ま、多分殴り合いには勝てない。蹴り合い? 余裕。

 ずっと降りていくこと数十分。ゆっくりとはいえここまで時間がかかるとは。この調子だと、帰りは全力飛翔でいいな。

 

「ん~…いないね」

「え?」

「ああ、ちょっと友達をね。まあいないみたいだからこのまま行こう」

 

 ヤマメに連れられ、地底の街、旧都を歩く。あれ…? 地上には都があるのに、地底には旧都? おかしいな。私の時間感覚が狂ってるのかな。切り捨てられた場所だから旧都?

 それにしても、やはり住民の視線が凄い。なんだ、あの貧弱な妖怪は。どうせ卑劣な手でも使ったか、雑魚妖怪みたいに封印されたんだろう、と。こんな陰口を聞き、私のイラつきが段々と増してくる。本来ならここで暴れてやりたいところだが、ヤマメもいるし止めておこう。てか数的に勝てない。

 

「…気にしちゃいけないよ」

「…え? あ、うん。わかってます」

 

 睨む住民を睨み返す私に、ヤマメがフォローを入れる。穏便に済ませようと思ったみたいだが、そうは問屋がおろさない。立ち塞がる妖怪に、溜め息ひとつ吐き出した。

 

「ここはお前みたいな弱者が来る場所じゃねぇぞ」

 

 地底では人気で強い(はずの)ヤマメと、親しそう(?)に歩いている私に、しかも“普段は„雑魚同然の妖気の私に、そんな声が掛かるのは当然と言えば当然なのだろう。

 

「…なんだい。ここに来る妖怪に、弱者強者が関係あるのかい」

「どうせ卑劣な手でも使って、無様に封印されーーー」

 

 そこまで聞いたところで、私の怒りが限界に達する。妖気を全て解放し、目の前の妖怪(魚?)を睨み付ける。目の前の妖怪どころか、ヤマメすら唖然とする妖気。う~ん…私って結局強いのかね。

 

「…お前にはわからないだろうな。全てを捨て、仲間を助け、人間に追われた身の事など」

 

 冷酷な声色で言い放ち、妖怪を押し退け、ヤマメに声を掛けて奥へ進む。弱者を嘲笑う視線は、なくなった。

 

 

「あ~…絶対目立っちゃったよなぁ…」

「あんな強さを見せたら当然だろう」

 

 ましてや、その強さで仲間を助けて追われるとは。強い者は皆、一匹でいることがおおいのに、と。

 …いや、ヤマメさん。紫と籃とかどうするんですか。多分このコンビに勝てる妖怪いないっすよ。というか、さっきの台詞、ちょっと格好付けすぎたかな。「全て捨て」とは言ったけど、捨てたの仮の住居と、時間くらいだし。あ、処女も…なのかな。いや、でも…やめよう。こういうのは深夜テンションで考えることだ。

 

「私としては、ますます食べたくなったってとこだね」

 

 勘弁してください。

 

 旧都から歩いて数十分。遠く遠くに、とある建物が見えてきた。恐らく…恐らくあれが……

 

「見えたね、地霊殿」

 

 さとりに挨拶しなくちゃね、と言ったヤマメの顔は面倒くさそうだ。心を読まれるのは、やはり嫌なのだろう。だか、それがなければお燐やお空はまったく違った存在になっていた気がする。憶測だけど、ね。

 ヤマメの背中を押しながら、地霊殿へと進んでいく。が、どうにもあまり行きたくないらしい。む、そうかそうか。私に乗りたいか。

 

「ヤマメさん、私に乗ってください」

「え? 乗ってってどういう…」

 

 皆様、私を見る度に唖然とするのはお止めください。

 九尾の力を宿し、尻尾と獣耳が九尾のものに変化する。尻尾を巧みに動かし、ヤマメを誘導する。

 

「ほらほら、どうです? モッフモフの柔らか尻尾ですよ…?」

 

 どうしよう、藍の性格が移った気がする。唾を飲むヤマメに、フリフリと尻尾を揺らす。ほれほれとこっちにあっちに揺らしてみる。

 やがて誘惑に負けたのか、ヤマメが近付いて来た。

 一本で尻の部分を支え、二本で落ちないようにと腹の部分を支える。背中合わせのヤマメを妖気で保護し、足に力を込める。

 

「掴まっててください…ねッ!!」

 

 闇を疾走する。動揺もしなければ、振り落とされることもないよう。尻尾で支えてるとはいえ、流石だ。尻尾に抱き付かれたり、撫でられたり、かじられたり(!?)する度に私がビクッとするのを面白がっているようで、時折尻尾を弄んでいる。そのまま五分足らずで、地霊殿へ到着した。

 

「はいはい、お終いですよ~。尻尾から…離れてください。お願いします」

 

 離そうとしないヤマメをずるずると引きずり、地霊殿へ入っていく。

 

「はぁ…お邪魔します…」

 

 内装は見事の一言。シャンデリアにステンドグラス。黒や紅のコントラスト。超高級なホテルのようだ。内装に見とれつつ、奥へ進む。勝手に上がっていいのだろうか? そう思った矢先、黒と赤が混じった、一匹の猫が現れた。ええ、ご登場のようです。

 

「き、九尾様…!? い、いらっしゃい」

「ええ、お邪魔しております。あの、出来ればさとり様にお会いしたいのですが」

 

 自分でもよくわからない丁寧過ぎる敬語(?)。イメージは最初が肝心。

 …尻尾に土蜘蛛がかじりついた九尾とか聞いたことないよ?

 

「あ…あ、はい。わかりました」

 

 お燐が敬語か…うーん、やっぱりあの話し方の方が好み、かな。

 さとりに確認に行ったのか、姿を消すお燐。能力を解除して尻尾と耳を元に戻す。相変わらず尻尾にヤマメが食い付いているが…

 

 気にしない。気にしちゃいけない。ヤマメさん。うーん、イマイチな五七五。

 

「…ようこそ、地霊殿へ」

「あ…お邪魔しております。さとり様」

 

 ヤマメを引き剥がしていると、館の主が現れた。ダメだ、この幸せそうな土蜘蛛なんとかしないと。話も出来ないよ。誰か助けておくれ。

 ふと、さとりの顔が一瞬曇ったことに気付く。ああ、ごめんなさい。許してください。

 

「…まあ、立ち話もなんでしょう。どうぞ、此方へ」

 

 階段を上っていくさとりを追いかける。仕方なく尻尾を上に振り上げ、ヤマメを階段に当たらないようにする。ただでさえ身長低いのだから勘弁して欲しい。もし尻尾が短かったら今ごろ傷だらけですよ、ヤマメさん。

 

 階段を上った通路の先では、扉の前でさとりが立っていた。どうぞ、と扉を開けてヤマメをひきずり、中へ入る。言われるがままにソファーに座り、机を挟んだ向かい側にいるさとりを見る。流石にこのままでは失礼だと判断し、ヤマメを尻尾で殴り起こす。好きな尻尾で殴られたのだから本望だろう。殴られた本人は真っ赤に赤面し、ソファーに背筋を完璧に立てて座り込んだ。

 

「まず自己紹介ですね。私は古明地さとり。この館の主です」

 

 はい、知っています。

 上でお燐が九尾九尾と騒いでいたのに関わらず、居たのは狼と土蜘蛛。不思議そうというべきか、怪しんでいるというべきか…。

 

「…まず率直にひとつ、お伺いしたいがあるのですが」

「? ええ、なんでしょうか」

 

 初対面の相手に唐突に質問を掛けられ、少し動揺しつつも答える。

 その内容は、軽く信じられるものではなかった。

 

「貴女の心が読めないのは何故でしょう?」

 

「……え?」




話の区切りが付き次第、短編を投稿します。
え? 内容? では、「マルチエンド」でもうおわかりでしょうか?

詳しくは、短編の前書きに書いておきます。お楽しみに。
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