黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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ミス多すぎるよ…


十九 クッキーと闘技

「お燐、そこの網取ってー」

「はいよ」

 

 少女料理中…。

 毎日色々作ってはいるが、なんだかんだ言って人気のようだ。カステラ、エクレア、ホットケーキ(ミニサイズ)。甘いものは乙女の栄養分だ。乙女しかいない訳ではないけど栄養分だ。

 また、皆と仲良くなろうと、それぞれ色々とサービスしていたりする。お菓子追加だったり、駄弁ったり、尻尾触らせたり、触らせてもらったり。燐の尻尾はすべすべだった。つやつやすべすべ。

 

 今現在はお燐と一緒にクッキー作り真っ最中。こうも平和だと何か刺激が欲しいものだな…今度ロシアンルーレットでもやってみるとしよう。燐と空、さとりは強制参加で。

 

「…ん、後焼くだけ」

 

 温めたオーブンに、ポイッとクッキーを乗せた鉄板を入れる。後は焼き加減を見つつ待つだけだ。

 

「ふ~…お疲れ様、お燐」

「あたいも楽しかったよ。どうも」

 

 お燐には生地を全てやって貰った。手際もかなり良いし、頼んで正解だったと思う。結果、私の仕事はほぼ消えたが。手の凝った手抜きですね、わかります。

 焼き終わるまで駄弁る。燐や空と話していると話題が尽きない。まあ、灼熱地獄の温度がああだこうだと言われても私にはサッパリだが…ね。

 そんなこんなで、焼き上がりのアラームが鳴る。ハッとして中を覗くが、どうやら焦げてはいないらしい。寧ろ最高のタイミング。私すげぇ。自画自賛悲しいよ。

 

「よし、今日は一気に配っちゃおう。お燐も手伝ってね」

 

 無理矢理お燐を誘い、配っていく。ぶっきらぼうに“どうも„と言う者もおれば、“ありがとう”と満面の笑みで返す者もいる。今のところ、ツンデレには遭遇していない。いや、ぶっきらぼうな子がいきなりデレたり…そんな気持ち悪い私の妄想は置いておく。さあ、さっさと配り切ってしまおう。

 

 

「改めてありがと、お燐。これ、お礼に」

「ありゃ、いいのかい」

「いいよ、別に。助かったから。じゃあ、私はちょっと行ってくるよ」

 

 お燐におまけのクッキー(ミニサイズハート型)を渡し、部屋に戻ろうとする。今日は(普段から)特に用事もない。出掛けるとしよう。ただの運任せだけれど。

 

「そんな唐突に…何処へ?」

「地上」

「にゃ!? な、何故に!?」

 

 何故そんなに驚く。私は元々地上の…ああ、別世界の人間ですね。

 用事としては、ちょっと萃香を探してみるだけだ。鬼は正々堂々と、強者との戦いを楽しむ。そんな萃香が、どんな姿なのかな、と、ふと疑問に思った訳だ。道中、ヤマメにも会っていく。

 

「遅くても明後日か明明後日には帰るさ。それじゃあね」

「あ…!! まったく、元気な子だね」

 

 燐の制止を聞かず、クッキーの入った袋を片手に駆け出した。

 

 

 地上へ続く巨大な穴。以前はゆっくりと降りて来たが、それでは遅過ぎる。立派な下駄があるのだから…やはり、狼は走らねば、ね。

 

「おや、狼戈じゃないか」

「あ、ヤマメ!! 良いところに!! これ、いつぞやのお礼」

「え? でも…いいのかい?」

「いいの。その為に作ったから。じゃあ、私はちょっと用事があるから」

「? でも、そっちは壁だよ?」

 

 壁で良いのさ。

 不敵な笑みをヤマメに向け、岩壁に、片足下駄の歯を掛ける。最悪、浮けばいいから、落ちることはないはずだ。さて、自慢の脚力、お見せしようか。

 

「またね、ヤマメ」

 

 その言葉を最後に、私は妖気と全力を足に込めた。

 

「ッ…!!!」

 

 壁の出っ張りから出っ張りへ足を掛け、掛け上る。重力等私に関係ない。出っ張りが無ければその分高く跳躍する。壁を全力で走り続けて約3分。私の最高時速がどれ程のものなのか知りたいが、とりあえず地上へは到着した。汚れた服と、下駄の土を払い、深呼吸ひとつ。久々の地上だ。私が地底に入り、今日で二週間が経過する訳だが…やっぱり景色は変わらない。

 鬼がいる場所…都なら恐らくわかるはず。ほんの少しだけなら…バレないよね。そんな軽い気持ちで、私は休憩も無しに駆け出した。

 

 

 都。尻尾と耳を妖気で隠し、顔を隠しながら人混みに紛れる。普段の都を知らないからわからないが、妙に静かだ。落胆している、ともとれる。ふと通り掛かった若い男の人に、質問をしてみる。

 

「…私、旅の者なのですが、この都は、何故こんなに静かなのでしょう?」

「…鬼が決闘を申し込んでは、あっちの山へ強者が挑みに行ってる。だが、一人も帰って来ないんだ。お嬢ちゃんも気を付けなよ、命が大事ならな」

 

 そう言うと、若い男の人は去っていった。お礼を言いつつ、足早に都を去る。もう用はない。こんなところにいられない。あれから全然経っていないのに、人間も災難だな、九尾の襲撃に続き、鬼との決闘なんて。可哀想だが、妖怪の相手は御免被る。私は妖怪側だ。ほとぼりが冷めるまで、私は人間側にはつけないのだ。

 

「…あっちの山、か。行ってみよう」

 

 譫言のように呟き、私は一人駆け出した。そろそろ疲労が怖い。

 

 

「…妖気が尋常じゃない」

 

 山の中。もう探さずとも、その存在は感知出来た。もし行って萃香が居なかったら死亡フラグが立つ気がするが、まぁ大丈夫だろう。きっと居るさ。

 訳のわからない建物の中を進み、妖気の方へ、惹かれるように歩く。ふとたどり着いた場所。そこには、大勢の鬼達が戦いを見下ろす、闘技場があった。なにこれ、どういうこと?

 夢中になるあまり私の存在に気付かない鬼達の間を通り抜け、観客席(?)の最前線に出る。身長も低いし、もう気づかれないのなんの。溜め息混じりに闘技場を見下ろすと、其処には目を疑う光景が広がっていた。

 

「…萃香!?」

 

 人間と戦っていたのは萃香。人間…陰陽師だろうか。変な杖を片手に、必死に戦っている…ようだが、萃香は暇そうだ。余裕過ぎて、といった感じか。人間は恐怖からか怒りからか攻撃を焦っている。こんなの、もう結果は一目瞭然だった。ふと萃香が手をかざすと、そこには巨大な球体が出現する。離れた観客席でも熱気が伝わる程、高温のようだ。

 それが放たれると同時に私は目を逸らし、遅れて響く歓声。やはり…元人間の私と、戦闘好きの鬼では、住むレベルが違うらしい。私では耐えられない。

 

「…狼戈!?」

 

 私が呼ぶより早く、戦いを終えた萃香が私の名を呼ぶ。ハッとして萃香を見ると、驚愕の表情を浮かべていた。まあ、そうなるよね。ふと物凄い視線が降り注がれていることに気付き、たまらず闘技場の萃香の元へ駆け出した。

 

「久しぶり、萃香」

「ああ、久しぶりだね。だが、何故此処に?」

「何してるんだろうって思ってさ。別に何かあった訳じゃないよ?」

 

 その言葉に、萃香は小さくため息を吐いた。まったく面倒の掛かる小娘だ、といったところか。戦闘狂じゃなければとっても優しいのに。

 

「…その子が狼戈かい?」

 

 背後から聞こえる声に、ビクッと体を震わせる。この妖気の強さは…

 

「ああ。どうだい? 可愛いだろう?」

「弱々しいが…まあ悪くない」

 

 盃片手に赤い角、星熊 勇儀の姿が其処にはあった。姐さん、格好良いです。

 

「あ、えっと…咬音 狼戈です」

「星熊 勇儀だ。萃香から話は聞いてるよ」

 

 差し出された手を握り、握手を交わす。手がバキッて音を出した気がする。冗談抜きで怪力過ぎないですか。

 ふと辺りを見回すが、四天王の姿はこの二人しか見えない。折角、四天王に会えると思ったのだが…まあ最強格の二人がいるならいいか。此処で手合わせ願いたいなんて言ったら死ぬんだろうな…。

 

「ああ、そうだ。まだ一人残っていたね」

 

 勇儀の視線の先には、目を瞑る人間一人、恐らく、今回挑んだ中で最後の陰陽師だろう。冷や汗や震えは見えるものの、息は整っている。歴戦の陰陽師、か…何か格好悪い。

 

「ちょうどいい。狼戈が相手になりなよ」

「…はい?」

 

 素で聞き返してしまう。今、姐さんは何と言ったのだろうか。私の耳がおかしいのか。

 

「あの人間の相手を頼むよ。今は私達二人しかいないから、私が連戦になるんだ」

 

 私は、戦闘等経験した事がありません。それに押し付けるんですか。そうですか。

 無理矢理押し出され、闘技場に残されるのは私と人間のみ。いきなりの部外者介入に不満を垂れている者もいるが、勇儀自らが望んだことの為、直接文句を言う奴はいないようだ。

 

「…先に言うけど、降参するつもりはないの?」

「我が命、捨てる覚悟は出来ている」

 

 …人間を殺す勇気はない。だが、降参も聞き入れずに命を捨てるというのか。いや、あるいは捨てざるを得ないのかも知れないな。だが、そうまでして強がる必要性は…まあいい。彼がそれを望むのなら、私も全身全霊を持って…消してやろう。

 

「…勇儀さん」

「ああ。始め!!」

 

 勇儀の合図と共に、陰陽師が動き出す。投げられた札をじっと見ていると、私に触れた瞬間爆発した。かなり痛い。ただの紙切れじゃないの、これ。

 私はわざと受けてみたのだが、野次を飛ばす奴等が出てきた。雑魚は俺に代われと。まあ、私より格下に言われる筋合いは…あれ? 私、そこまで強くないよね。まあいいや。

 

「さて…野次馬共々、黙って頂こうか」

 

 私の威圧と発した言葉をものともせず、批判は更に増える。攻撃も止まない。ああ、鬱陶しい。今のは私が悪いけどさ。もういいや。力を出し惜しみする必要はないよね。

 九尾の力を宿し、妖気を最大まで解放する。今まで威嚇にしか使わなかった全力での妖気の解放。野次馬は黙り込み、勇儀と萃香も目を見開いている。萃香の時は解放した訳ではないものね。それに、姿も九尾に変わっている訳だし。

 さて、終わらせようか。この遊びを。

 

「悔い改めろ」

 

 瞬時に背後へ回り込み、妖気を最大限に込めた足を振り上げる。人間が振り返るより早く、私の一撃は脳天を砕いた。飛び散る血と肉片、骨片、脳獎。絶対にしてはいけないことを犯したはずなのに、不思議と私の心は落ち着いていた。静寂の後に、歓声が起こる。こいつら、一瞬で一変しやがって。

 

「…狼戈。お前…九尾だったのか…!?」

「いや、私はただの狼だよ」

 

 能力を解除し、萃香に歩み寄る。全身に付着した血を舐めとり、恐怖に一瞬飛び上がる。美味しい。そう思ってしまう自分がいた。次第に自分がやったことの重大さに気付くが、もう遅い。表情に表れぬよう。萃香と話す。

 

「…想像以上だったよ。どうだい、私とも闘ってみないかい?」

「いや、やめてください。皆が思ってる程、私は強くないです」

 

 縮こまる私の背中を、勇儀が笑いながら叩く。骨が折れそう。

 

「よし、宴といこうか!!」

 

 勇儀の声に、歓声が最高潮と化す。え、まさか私も参加とかないよね。

 

「狼戈、お前もだぞ? ほら、早く早く!!」

「いゃぁ!? ちょっ、待っ」

 

 その日、妖気は解放したが、私がそこから解放されることはなかった。




どうしよう。収拾がつかなくなってきた気がする。

勇義→勇儀
修正し忘れあったら、指摘お願いします<(_ _)>
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