黒狼狐己録 -Life Harboring- 作:ふーか
「くぁぁぁ…」
「狼戈ちゃん、狐みたい」
大きな欠伸をひとつ、ゴロゴロと寝転がる。地霊殿に住みつき、早一年。毎日毎日デザートでは体に悪いと、時々野菜と果物のジュース(ミキサー使用)を作ったりと、色々と試していた。毎日一回お菓子を作るだけで居候するのも申し訳なく、何度かさとりとも相談してみたのだが、私がやれるのはそんなことくらいらしい。
ここ一年の成果と言えば、妖気を完璧に操れるようになった、というところか。また、炎くらいなら操れる。あれだ…確か呪術。藍の影響を受けたのだろうか? どちらにせよ戦闘は基本好まないため、日常的にしか使っていない。スルメ炙ったり。チーズを薫製にしたり。
相変わらずといえば相変わらずだが、空がよく部屋に遊びに来る。燐もよく来るが、空程の頻度で来ることはない。下手をすれば一日に数時間部屋に来る。私は一匹狼って何回か伝えたはずなのだけど…。まあ、楽しいと思っている自分がいるから仕方がない。
「…空」
「んにゃ? なに?」
私がとっておいたマカロンを勝手に頬張る空の名を呼んでみる。この子と一緒に過ごしていると…やはり霊夢達と戦う事になるのだろうか? まだ何百(何千?)年と先に起こるであろう異変。原作では、確か東方地霊殿。それが起こった時…私が止められればいいなぁ。家族のことだからね。
「…ううん、なんでもない」
「んむぅ…」
ところでそのマカロン、返していただけないでしょうか。
「暇だな~…何か面白いことないかなぁ…?」
「トランプやろうよトランプ」
「え~? でも、お燐はいないし、二人だけでやるのも…」
「呼んだかい?」
私としてはあまり嬉しくないタイミングです。
燐を(空が勝手に)誘い込み、何故かトランプ大会となった。またこの三人でトランプ…空が強運過ぎて、かなり辛い。燐も然り気無く強いし。
「…折角だし、もう一人誘って来るね」
燐と空に熱々のお茶を差し出し、部屋を出る。背後から熱さの悲鳴と心配の悲鳴が聞こえたのは、多分幻聴だと思う。ワタシワルクナイヨー。シャンハーイ。
屋敷の中、私達妖怪の部屋がある通路。その中のひとつの扉の前で立ち止まり、数回ノックする。すると、ガサゴソという音の後に、ゆっくりと扉が開いた。
「はーい…あ、狼戈さん。何か御用ですか?」
「お空達がトランプやろうって騒がしくてね。で、いざやるにも一人足りないんだ」
お風呂上がりなのか、裸体にタオルを巻いただけという、相手が男だったらアウトな格好で出てきた。私としてはもう見慣れたもののため、普通に対応するまでだが。
また、実際は三人でも出来るのだが、基本的に四人居た方が良い。大富豪でもババ抜きでも。私の誘いに少し考えた後、笑顔で頷いた。
「よし、じゃあ私の部屋に来てね。多分濡れてるけど」
「…?」
首をかしげる少女に、苦笑しつつ部屋へ戻る。部屋に入ると案の定、吹き出したと思われるお茶と、湯飲みから零れたお茶が無惨に部屋を濡らしていた。溜め息交じりに未だ悶絶している空をチラッと見た後、タオルで拭き始める。燐、看病任せた。
「熱ッ、熱、熱い…!!」
「熱いよって言ったじゃないか…」
二人が繰り広げる真剣なコントを見てニヤニヤしつつ、真ん中に置かれた机と床を拭いていく。全てが終わった頃に、先程の少女が部屋に入って来た。
「お邪魔しまー…え? う、空さん!? ど、どうしたんですか!?」
「ああ、狐火鴉かい。ちょっとお茶が熱かったみたいなんだ」
狐火鴉と呼ばれた少女は、尻尾をブンブンと振りながら空の介護をし始めた。このお茶、そんなに熱くないはずなのだけど…空って猫舌なのだろうか。
性格は天然で、裏表のない、真っ直ぐな子だ。空に似ている所が多い。何故か私に懐いているのだが、思い当たることと言えば、お菓子をあげたり、一緒にお風呂に入ったり、色々教えたり…実際、どう思っているのだろう。私からしたら、仲間想いの優しい子だ。
「…落ち着いた?」
「うにゅぅ…熱い」
「ほら、冷たいお茶」
一気に飲み干す空に苦笑する。まったく、元気な子だ。私より遥かに年上だが。
「さて、早速配ろうか。最初はババ抜き!! 一抜けはビリに命令。OK?」
「ああ」
「わかった!!」
「わかりました」
シャッフルしたカードを配る。皆自信満々といった表情だ。
さて、去年やられた分、お返しさせていただこうか!!
…数回戦の結果は、私の惨敗。全員に散々尻尾を弄ばれた。泣きたい。
▼
浴場。お湯に浸りつつ、天井を眺めつつ。
湯加減最高のお風呂。誰かが沸かしているのか、それとも天然なのかは私は知らない。とりあえず、楽しめれば問題はない。極楽極楽…
「んぅ? 狐火鴉、背中流そうか?」
「あ、いいですか? お願いします」
風呂からザバッと上がる。隣で駄弁っていた燐と空にお湯がかかったが、気にしていない。泡立てたタオルで背中を撫でる。擽ったそうに、小刻みに震えているのがなんとも可愛い。脇腹をガシッと掴むと、可愛らしい悲鳴を上げつつジト目で睨んで来た。なんとも可愛い。ふざけ半分で謝りつつ、背中を洗い、流す。途中、また悪ふざけで同じことをやったら、涙目で威嚇された。なんとも可愛い。新人を見守る後輩的な…何か違う気もするのだが。
「…狼戈さんも、お背中流しましょうか」
「え? い、いや、私は…」
「遠慮せずに~♪」
ほぼ強制的に座らされ、背中を洗ってもらう(勝手に洗われる)。途中で何を仕返しされるかとビクビクしつつ、身を任せる。何故か尻尾まで、かなり念入りに洗われる始末。敏感だからやめて…
「きゃぅぅ…力が抜け…やめ…」
「お返しですよ~?」
満面の笑みで呟く狐火鴉。先程も散々尻尾を弄ばれたのだ。勘弁していただきたい。というか、何故私の弱点を完璧に理解しているんだ、この狐。可愛いから許そう。
「…ねえ狐火鴉。今度一緒に何処か行かない?」
「え…? 何処か、ですか? それなら私なんかより燐さん達の方が…」
「いいの。まだ仕事も少ないでしょう? 私が話をつけるから、ね?」
「…狼戈さんがそれで良いのなら」
交渉成立だ。この子はまだ館から出ていないから、外の世界の名の元に、地上まで出掛ける気だ。
狐火鴉の妖気は刺々しさがなく、とても柔らかい、戦闘には向いていないであろうもの。だが、いざとなれば異常な戦闘力を発揮する。目の前で仲間が死にかけた時等…仲間想いにも程があるが、彼女の強みはそれだ。彼女が狐の時に、実際その現場を見た。まったく違う種を、動物との喧嘩から守ろうとするのだ。その頃から、もう妖怪化は始まっていたのだろう。良い意味で、親の顔が見てみたい。
「じゃあ決定ね。日は私が決めるよ」
「何処か行くの!? 面白そう!!」
「お空。邪魔するのは良くないよ…♪」
物凄いニヤニヤしている燐に報復したい気持ちを押さえ、狐火鴉に一言告げてから湯槽へ戻る。
「…燐達、連れていくべきかな…でも、大勢で仕事を休むのもなぁ…」
天井を見上げながら、私は一匹、溜め息を吐いた。
作者のプレイ済みの原作
:紅魔郷 妖々夢 緋想天 後忘れました。確かこんなもん。
他の知識は、他の方の二次創作 年表 (BGM ボーカル)等、様々なところから探し出しています。
独自解釈、独自設定等も、かなり含んでおります。