黒狼狐己録 -Life Harboring- 作:ふーか
今回は(も)日常的な感じです。
あ、次回or次々回or次々次回 多分性描写入りますので(え
「ねぇ、お燐、狼戈ちゃん、狐火鴉…ねえってばぁ…起きてよぉ…」
空に揺り起こされて、フラフラと上半身を起こす。空の顔色は正常、昨夜と比べて収まっているようだ。安堵しつつ、時計の針は午後2時を…2時!? 予定時間より4時間もオーバーしている。
「…あ~午前中には出る予定だったのに」
愚痴を溢しながら、隣で寝ている狐火鴉を起こす。名前を呼んでも揺すっても、スースーと寝息をたてて起きる気配がない。仕方がなく放置して燐を起こし、準備した荷物の確認を始める。
「…よし、おっけー。狐火鴉!! 早く起きなさい!!」
「にゃああ!?」
一瞬燐かと思ったが、悲鳴は狐火鴉のようだ。この子の前世は猫だろうか。
食事等は私の能力で何とか出来る為、持っていかない。いざとなれば山菜で生きていた私だからなんとでも出来る。妖怪が来たとしても、この面子に勝てる奴等はいないだろう。鬼とかが出てこない限りは。ピクニック的な認識でいい…はず。いざとなれば狐火鴉の能力を便りに、リンチをかけるまでだ。
「…準備終わりました!」
「もう、お寝坊さん。さぁ、早速行く…お燐、それ置いてって」
「え~」
お燐が押す貨車(?)を却下する。火車だったか…? いや、猫車…まぁいい。とりあえず、いらない。確実にいらない。わざわざ地上に出てまで死体を集めようとするんじゃない。
私の装備(!?)は、相変わらず太股に付けたオカリナ、以上。道具なんて何もいらない訳で。
「ああ、でも…この服装だと露出多すぎるかな、危ないよね」
「あたいの服、貸そうか?」
「いや、いい…あれ?」
服が…光った?
九尾の力を宿し、尾を巻き付けてどうにかしようと考えた訳だが…能力の発動と一緒に、衣服が光り始めた。…このまま段々と消えていったりしたら、恐らく私は発狂する。
しばらく光り、その形を変えていく衣服。髪の色、服の姿形、全てが変わっていく…その先には。
(…これ、どう見ても藍の…だよね)
服や尻尾、髪の色、藍のものと酷似…いや、そのものだ。逆に言えばそれ以外は変わっていない(というか、顔や体型まで変わっていたら流石に泣く)。もしここに藍がいたのなら、暫く離してはくれなかっただろう。
…能力3つ目か。多すぎやしないか? 戦闘に使えるのは記憶を具現化する位だが…。とりあえずこの姿でいるのはアウトなので、元の服装へ戻す。発動は…記憶の具現化と同じようだ。変えられるものは、衣服、尾と髪の色…(私にはわからないが、瞳の色も変わるらしい)。
「んぅ…ま、いいや。行こう」
「…本当に謎だらけな子だね」
一年以上一緒に過ごした感想がそれか。
「あ、あの…私、地霊殿から出たことがないので…」
「ん? 大丈夫よ。代わりにしっかり着いて来てね」
狐火鴉の手を引く。小さくて、とても暖かい。何故か狐火鴉の顔が赤いが、大丈夫だろうか?
一応さとりに挨拶に行き、地霊殿を出る。薄暗い地底を進み、まずは旧都、そして地上への穴、地上に出てからは、地上の状態で行動が左右される。雨とか降ってなけりゃいいけど。
駄弁りつつ、歩いて行くこと数十分。旧都へと到着した。だいぶゆっくりだが、出発自体遅れたため、もうどうでもいいや的な雰囲気になっている。空が急かすのは何時ものことだ。
旧都に入る前に、九尾の力を宿し、姿を変えておく。以前のことがあるため…いや、逆に目立つだろうか。まあいい。雑魚と見られなければ。
「…ここが…旧都?」
「うん。まあ私は一回しか来てないけど。誰かと会いたくないから先行くよ」
足早に抜けようとしたが、狐火鴉だけが着いて来てしまった。燐と空は…旧都でも見ているのだろうか。逆だろ? 普通逆だろ? 常識的に考えて。
「…発情期とかは自重してね」
「ぅぅ…わかってますよぅ…」
地上に出たのに同じ妖怪にまた襲われたとか、たまったもんじゃない。
「おぉ? 狼戈かい?」
「うにゅ? あ、ヤマメ!! 久しぶり!!」
「久しぶりだね。で、その子は?」
互いに見知らぬ者を連れている。いや、ヤマメと一緒にいる妖怪は、私は知っているのだが。
「えっと…狼淵 狐火鴉です」
「私は黒谷 ヤマメ。此方が…」
「水橋パルスィ。宜しくね」
パルスィ、そういえば初めて会ったな。想像と違い、結構大人しくて優しそうな…
「…ヤマメと仲良さそうに…妬ましいわね」
「…嫉妬? 羨ましい? 羨ま嫉妬?」
「う、うるさいわね…」
おお、赤くなった。可愛らしい。想像はブチ壊されたが、これはこれでいいだろう。この嫉妬妖怪に限らず、何故仕草がいちいち可愛い奴が多いのやら。百合? もう気にするな。
「私達はこれから酒でも飲もうかと思ってね。一緒にどうだい?」
「私達今から地上に遊びにいくからさ。それに、私酒飲めない」
「なんでだい?」
「私の決まりに20歳になるまで酒はダメってあるから。まだ15歳」
「…150歳? 1500歳? 15000歳?」
「15歳」
桁が違うだろうといった顔で見つめるヤマメ。毎度毎度、全員に同じ反応をされる為、可笑しいのなんの…。一番面白かったのはさとりの反応だった。ティーカップ片手に固まってた。そんなに驚くものだろうか? 手元にカメラがあれば、即座に盗撮(?)していただろう。
…狐火鴉にまで驚かれる始末。私伝えてなかったか。いや、狐火鴉が年齢の割りに落ち着いているだけだと思うんだ。…何故かブーメランを飛ばした気がする。戻ってこない。ブーメランがっ!!
「私より強い妖力を持ちながら、遥かに年下…?」
「ふぇぇ!? 私の方が妖力高いんですか!?」
「…妬ましいわね」
「ド直球!!」
この世界に来て何度目かわからぬ茶番劇を繰り広げた直後に、燐と空が合流。燐が団子片手に歩いてきた時はモフ尻尾フルスイングを決めようかと思ったが、隣で両手に団子をもった空がはしゃいでいたため、許すことにした。
「…どういう意味だい」
「ほ、ほら、空はまだ子供っぽいからいいけど、燐はもう」
「む!! 子供っぽい!? 狼戈ちゃんの方が年下でしょ!?」
「あ、あの、皆さん落ち着いて…」
『狐火鴉は黙って!!』
「ごめんなさい」
何故こういう時に息がピッタリ合うのだろう。漫画等でよくあるパターンだが…現実起こると面白いものだな。
傍らでポカーンと見ていたヤマメとパルスィに別れを告げ、地上への穴へ歩く。到着時、出発から既に2時間が経過していた。超スローペース。
「うわぁ…高いですね…」
「高いじゃないよ。今から上るよ。私は走るけど。先着一名、誰か乗る?」
「あの…乗るって…?」
「わかった、狐火鴉ね。貴女飛ぶの遅いもんね。よし、行くよ」
以前のヤマメの様に、(無理矢理)背中にしがみついてもらい、尾で支える(ヤマメの時とは違い、おんぶと同じ体勢)。セクハラ? いえ、百合です。自分で認めるのも何か空しい話だが…
「…ねぇお燐、お空。ここから地上まで競争しようよ」
「狐火鴉背負った状態でかい?」
「ふふ、私が宿せる力が、一つとは限らないのよ?」
動物の力を宿す…重ね掛け。ひとつは支障無しだが、ふたつだと体への負担が出てくる。力を宿すは鴉天狗。元々の脚力と、翼の速さを合わせれば…? 結果、恐ろしい速さとなるだろう。あの幻想郷の伝統ブン屋とも競争したいところだが、恐らく負けるだろう。根本的に、この時代はまだあの鴉天狗いないけど。
鴉の翼を持つ九尾…とな。どこぞの封獣みたい。
「…ああ、受けてたつよ」
「競争!? いいよ!!」
「よし、決まり」
地上への壁から数メートル離れた位置でスタンバイ。助走から一気にスピードを最高速まで上げていくのだ。
「狐火鴉。妖気で全力ガードしてて。しっかり掴まっててね」
「は、はい…」
妖気で狐火鴉自身の体を保護して貰い、落ちないようにと胸辺りに腕を回して貰う。腹だと息に支障が…顔が真っ赤だが、大丈夫か?
「…勝ったら全員の尻尾でOK?」
「OKだよ」
「いいよ!! じゃあ…よーい…」
一歯下駄に力と妖気を込める。直立し、精神統一…急かす狐火鴉を無視して、目を瞑る。
「どん!!」
空の合図と共に、燐と空が飛翔していた。おお、速い速い。もう小さく見える。
ーーーだが、まだ甘い。
一歩一歩と強く地面を踏みしめ、壁に走る。後ろでビクッとする狐火鴉にビクッとしつつ、壁に足を掛ける。ぶつかるとでも思ったのかね。
羽ばたきひとつ、全力疾走。風を抜き、音を置き去りにし、ただ駆ける。ただの遊びだからといって手加減するつもりはまったくとしてない。岩壁をひたすら駆け上がる。
「ッ!? あ、あれ…狼戈!?」
「嘘!? んぅ…私だって…!!!」
衝撃波に少し怯む燐と空。確か音速を越えると衝撃波が発生する…だっけ。え、私音速越えてんの? 嘘だよね? うん。
「とうちゃーく!!」
「は、速すぎですよ…!!」
私が上り終えたのは、岩壁に足を付けてから数十秒後。燐達が来たのはそこから数分後。
「…嘘でしょ」
「あ~、でも私から脚力とったら何も残らないよ」
唖然とする二人に隠すことなくニヤニヤと視線を送る。尻尾は後々、楽しませて貰おうか…♪ 空は羽。
「何はともあれ、やっと地上だね。さて、鬼にでも会わなければいいけど」
わかりやすいフラグをたてつつ。駄弁りつつ。飛翔しつつ。
この時の私は思いもしなかった。まさか…あんなことになるとは…(別の意味で)。