黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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結構無理矢理な感じになりました(白目)
文章力のある方が羨ましいです(緑目)
い、いや、べ、別に羨ましくなんかないんだからねっ//

…前書きで何言ってるんですかねぇ、私…


二十五 私と苛々

「あ~、えっと…その…」

「なんだい、何か文句があるのかい?」

 

 吐息が当たる程の距離にまで顔を近付ける燐。ちょっと待て、こんなの聞いてない。

 

 ちなみに昨晩、酒のせいか自重を知らぬ狐火鴉に散々犯され、弄ばれたのは言うまでもない。薄々予想はしていたため、仕方がないのだとわりきった(お陰さまで精神はボロボロだが)。が、何故こうなる。

 

「燐…食べるって…まさか…?」

 

 燐にだけは。そういうことはされないだろうと思っていたのだ。だが、この状況は何なのだ。それも顔を赤くしているし。ちょっと待ってほしい。皆そろって、イメージ崩壊もいいところだ。私が精神的に壊れるぞ。

 

「…あたいもお空のこと言えないね」

「燐…やめ…」

 

 ベッドへと押し倒される。柔らかい指が横腹を、胸を、首を這い、愛撫してくる。擽られるのとは違い、脳へ伝わるのはむず痒さでもなく、痛みでもない…快楽。

 

 今日一日、燐の機嫌がやたら良かった。常に笑顔だが、やけにテンションが高いのだ。特に疑問も抱かず、普通に過ごしていた…はずなのだが。“夜にあたいの部屋においで„と言われ、いざ来てみればこれだ。ちょっと待て、こんなはずじゃなかった。サッと終わるはずだった。

 

「ん…ぅ…」

 

 スルスルと脱げる衣服。虚ろな目に映る燐は、いったい私を見て何を考えているのだろう。私は何に見えているのだろう。

 

「ぁぅ…!! ダメ…いやぁ…」

 

 譫言のように溢れる言葉。それは誰の耳にも届かない。こんな快楽は…いらないよ…!!

 

「り…ん……?」

「ふふ、どうしてほしい? 犯されたい? 食べられたい?」

 

 流石に様子がおかしい。周りに札を警戒してみても、それといったものはない。だが、燐はこんな欲に任せて襲うような輩じゃない…ちょっと待て。もし燐自身に何か術的なのが掛けられていたら…? 有り得なくはない。姿は見えなかったが、術次第で消すことも出来るはず。ならばやはり…。私を押し倒す燐を、無理矢理逆に押し倒す。一か八か、背中に手を突っ込み、紙らしきものを引き剥がした。

 

「…うにゃあ…?」

「良かった…燐、操られてたよ、ほら」

 

 破れたお札を燐に見せる。恐らく、微かに意識はあったのだろう。視線を合わせてくれない。萃香の時は詮索しなかったが、もういい。あの隙間妖怪を問いただす。彼奴以外に誰がこんなことをするというのだ。勇義? 萃香? 空? 狐火鴉? こいし? そんなバカな。彼奴以外いないだろう? 全て吐いて貰おうか。

 

「その…ごめん…」

「気にしないで。お燐は悪くないよ」

 

 頭をポンポンと撫で、札を破り捨てる。さて、これで一見落着だ。

 

「ねえ、狼戈…もう、せっかくだし、さ…?」

「……え?」

 

 先程とは変わって、優しくベッドへと寝かされた。ああ、よかった。完璧に元に戻って…うん、まぁ、いつも通りかな?

 

 その後、私がどうなったのかは、誰も知らなくていい。

 大雑把にいえば、淫らの一言だった。

 

 

「さて、吐いて貰いましょう。紫」

「あら、私を呼び捨てするのね。珍しい」

 

 返答次第では、即座に噛み付くつもりだ。文字通りに…ね。

 

「あの札は…貴女でしょう? 素敵な隙間妖怪さん?」

「あらあら、言い掛かりにも程があるわね。第一、証拠はあるのかしら?」

「さあ? 貴方が盛った睡眠薬、都合よく私の周りで発見される札とかかしら。第一、鬼を操れるような札、貴女以外に誰が作れる訳? 鬼とは言わせないわよ。そんな手を使う輩、鬼にはいない」

 

 真っ直ぐに紫の目を見詰めて言の葉を吐き続ける。別に、お詫びだの謝罪だのが欲しい訳じゃない。ただやめて欲しいだけだ。長い人生、潰されてたまるか。

 

「…貴女が可愛い反応するからいけないのよ?」

 

 顔を背ける紫の言動に、言葉も出なくなる。何処まで本心なんだ…? 可愛いだと? まさか、この妖怪からそんな言葉が出るとは思いもしなかった。

 

「とにかく、やめていただけないかしら」

「そうね、考えて見るわ」

 

 サラッと受け流す紫。この妖怪に萃香も燐も翻弄されたとなると、やはり噛み付いておきたいところだが、とりあえずは我慢だ。さとりに事情は説明したし、一度籃のところにも寄ろうか。ノブに手を掛け、小さく扉を開ける。

 

「…まぁいいわ。一応、ご主人様のご主人様な訳だし」

「あら、式神は憑いていないのでしょう?」

「…知ってると思った。別に、私が誰を主人にしようが勝手でしょう」

 

 バタンと部屋の扉を閉じる。やはりあの隙間妖怪苦手だ。話していると精神的にもたない。胃に穴があきそうだ。もう嫌だ…。

 一人うつ向き、愚痴を溢しつつ、私は籃の部屋へ向かったのだった。

 

 

 

 

「はぁ…」

 

 火照る額に、冷たい手を当てる。何故? とても…美味しそうで…可愛らしくて…

 

「どうすればいいのかしら? 藍」

「…自ら襲う、というのもひとつの手です。ただ、怪我をさせるのは…」

「ええ、わかってるわ」

 

 藍の言葉に、益々思考回路が動かなくなる。襲う、か…。あの少女位ならば、例え攻撃されても難なく対処出来るだろう。だが、その後だ。少女の意識があるにしても、ないにしても、どうすればいい? 知識があっても、経験のない自分にもどかしさを感じる。

 

「…紫様。ひとつ、提案があります」

「…何かしら?」

「私と、紫様で……」

 

 

 

 何かとても嫌な予感がするのだが、気のせいだろうか。妙に寒気を感じる。

 藍の部屋は、無防備にも開け放たれていた。許可がないと入れない云々はどうなったのだろう? 少し失礼かも知れないが、勝手に上がらせてもらう。

 部屋は相変わらずで、変わった様子は見られない。変わったところと言えば、卓上に私を模した人形が置いてある、というところか。わざわざ作ったのか、小さいが可愛らしい。私に似ているかどうかは、正直わからない。自分の姿をいまいちわかっていない。そういえば、自分の姿は水鏡に映ったものしか見たことないっけ。

 

「うー…ひゃう!?」

「改めて久しぶりだな、狼戈」

 

 後ろから抱き締められた。扉の開いた音はしないし、恐らく隙間を通って来たのだろう。あの隙間妖怪、やはりしばき倒しておくべきだったか。

 

「え、ちょっと…何を…?」

「いいから」

 

 藍が私を軽く抱き上げる。確かに私は軽いけど、難なくお姫様だっこというのも…恥ずかしい、かな。

 藍に抱かれ、連れて行かれたのは紫の部屋。顔が少し赤い以外はいつも通りの様子だ。噛みついていいだろうか。引っ掻いてもいいのだけれど。

 

「…何? 私は何をすればいいの? 何をやらせたいの?」

「…紫様の相手をしてくれないか」

 

 絶句。今の私には、その一言が良く似合う。この隙間妖怪を相手しろと…? 私を弄ぶ輩の相手を、進んでしろというのか。本人は目を逸らしているし、藍は普通に真剣に問い掛けてくるし。私に何をさせたいのだ。私は快楽の道具ではないんだぞ。

 

「私は一度、紫のせいで死に掛けた。その妖怪の相手をしろというの?」

「それは…」

 

 藍が言葉を失う。誰だって、形は違えど殺され掛けた犯人を、相手にしたいと思わないだろう。それに、頼むなら自分で頼めばいい。何故藍が頼んでいる? この隙間妖怪、本当に何を考えているのだ。

 

「…貴女の事が頭に浮かぶ度に、思考が錯乱する」

「…少し会話した程度の相手に? ハッタリもいいとこね」

「ハッタリなら…こんなことしてないわよ」

 

 紫が立ち上がる。歩く姿を見るのは…初めてだろうか? どうにも記憶が曖昧だ。

 私の眼前に歩み寄る紫。私の顎に指を当て、顔を上げさせた。視線と視線が交わる。怒りの感情と、よくわからぬ“何か„の感情。そのふたつが、両者の表情からは見てとれる。

 

「…何のつもり? 私を玩具にしたいだけかしら。さっきといい、今といい」

「…ええ、そうね。そうかも知れない」

 

 その言葉に、妖気を剥き出しにする。荒れ狂う尻尾、パタパタと忙しい耳。ほぼ無意識だが、苛つきが溜まっている証拠だ。藍がやめろと軽く睨んでくるが、気にしていられないし、気にする気もない。私の主人の命令といえど、これだけは譲る気はない。

 

「例え殺されようとも、大怪我を負わせる事くらい出来るわよ?」

「…狼戈。やめろ。私も容赦は出来ないぞ」

「ええ、どうぞ。殺すならば殺せばいい。私なんてどうせ邪魔でしょう?」

「なっ…!?」

 

 私の言動に、藍が驚愕の表情を浮かべる。真剣な状況で、私が藍に逆らうのは初めてか。だが、彼女に私は殺せない。それは確信している。もし殺すにしても、精神を殺すだろう。式神を憑ければそれで終了なのだし。

 

「邪魔な訳がないだろう!? どれだけ愛しているか…!!」

「愛している相手を、子供を、無闇に、犯して、弄ぶの?」

「くっ…!」

 

 歯を食い縛る藍。言い過ぎなのはわかっている。彼女が私を愛してくれているのも、私が彼女を愛しているのもわかっている。だが、自分を抑えるのは無理だ。ふとした事で苛々とするのは、ストレスでも溜まっている証拠だろうか。

 

「狼戈…!!」

「…ああ、ごめん。言い過ぎた。冗談だから、忘れていいよ」

 

 それでも、妖気は止めない。殺気を、敵意を、止める気はない。

 

「まあ、悪戯好きの箱入り娘に、抱かれてやる筋合いは無いわね」

「…随分と酷い言い様ね? 貴女ごときが私に勝てるのかしら」

「脅してるつもり? 大人気ないわね。たかだか15の小娘相手に」

「紫様、落ち着いてください!! 狼戈、お前も少し落ち着いてくれ」

 

 牙をも剥き出しにしていた私を宥める藍。私の私情に藍を巻き込むのも気の毒に思い、妖気を納め、溜め息ひとつ。

 

「…で、具体的に、私は何をすればいいのかしら、藍」

「…私の時と同じように、だ」

「つまりは無抵抗に犯されろって訳ね」

 

 私の言動に、籃が顔を歪ませる。真実を言ったまでだろう?

 

「…OK、いいわ。でも互いに信頼出来る状況になるまでは断る」

「…つまり?」

「私が貴女を信用するまでは却下よ。他の仕事はこなすけど」

 

 不服そうだが、知ったことではない。決定権は私にあるはずだ。

 

「用件は以上? 私も予定があるのよ」

「…ええ、どうぞ」

 

 ご機嫌斜めの紫をチラと見た後、部屋を出る。背後に藍が着いてきてはいるが、口を開く様子はない。なんでこうなったやら。紫を問い詰めて、藍に菓子を作って帰る予定だったのに。全て狂った。いや、元々、か。

 

「狼戈…」

「…何?」

「……なんでもない」

 

 言い過ぎなのはわかっているさ。だが後悔も反省もしていない。これで改心して頂きたいのだが。会う度に犯されるなんて聞いたことない。体目当てな訳か?

 

「…紫様に悪気はないんだ。許してやってくれ」

「だから、私は、紫に、殺されかけた」

 

 部屋に入った後の、藍の言葉に強く低く怒鳴る。藍も先程からの私の言動に若干苛々しているように見えるが、知ったことではない。私だって苛ついているんだ。それに、ここで藍が怒るのは逆切れだろう。

 

「…お前は紫様にどうして欲しいんだ? 私にどうして欲しいんだ? 狼戈」

「私は…ただ普通に接したいだけ。でも…でも!! 藍は会う度毎回毎回毎回…!! 私を玩具にして弄ぶ!! 紫はもう悪戯レベルじゃないでしょう!? 私がずっと何も抵抗せずにいると思っているの!?」

「っ…!!」

 

 息を荒くし、またも怒鳴る。わかっていても止められない。ベッドに座り込み、無理矢理落ち着かせる。無意識に零れる涙。私は…どうしたらいいのだろう。感情が…安定しない。

 藍が隣に座り、引き寄せるように尾を巻き付けた。それと同時にビクッと体が震え始める。無意識に、藍へ恐怖感でも覚えているのだろうか。

 

「…震えてる」

「・・・・・・」

 

 私を抱き締め、頭を撫でる藍。その温もりは母のようで、とても暖かかった。

 

「…大丈夫。何もしないから」

 

 藍の言葉と共に、意識が段々と薄くなっていく。もう少し…もう少しだけ、この温もりに触れていたい。御人好しは…直せない。

 

「…ごめん、狼戈」

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