黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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これにて、2章終了でございます。
中々に無理矢理な場面が多かったですかね。反省反省(ーwー)

次回から3章…な訳なんですが…
短編(マルチエンド)、挟むべきでしょうかね?


二十七 回復と家族 (挿絵有)

「ありがとう、藍」

「…行くのか?」

 

 目の前に開かれた紫の隙間を覗き込みながら、藍に礼を告げる。あれから五週間。彼女のおかげで、だいぶ落ち着く事が出来た。逆に言えば、“今の彼女„がいなければ今の私はいないだろう。私にとって大切な人であり、彼女にとって大切な人でありたい。私の願い…我が儘を、自身の身など顧みず叶えてくれた藍。何また、私も恩返ししたい。

 

「仕事を放置するのは悪いもん。皆に心配させたくないしさ」

「…そうか。そうだな。頑張っておいで」

「行ってきます!!」

 

 威勢良く声を出し、隙間の中へ、身を滑らせる。

 

「…狼戈。忘れないで。私以外にも…お前が大切な奴はいるから」

「・・・・・・」

 

 無言で頷く。本当に…感謝しきれない。優しく微笑んだ後、隙間の中へと飛んだ。

 

「っと…」

 

 着地したのは自分の部屋…のはずだった。だが、あるのは完璧に磨かれ、私物は全て無くなった“私の部屋だった„部屋。この時点で、悪い予感が頭をよぎる。

 

「…私、捨てられたのかな」

 

 また涙が出そうになるが、まだ本当にそうなったとわかった訳ではない。さとりに…会いに行かなければ。謝る…しか私に出来る事はない。ここまで時間が掛かるとは思わなかったから…。

 扉のドアノブに手を掛け、廊下へ出る。相変わらず綺麗に掃除されているが…こうも何者の気配がしないのはおかしい。燐達に会いたいところだが、何よりもさとりが優先だ。

 廊下を進み、ひとつの扉の前に到着する。中に…多数の気配を感じる。さとり様は勿論いらっしゃるだろうけど…この気配は一体…?

 覚悟を決め、ドアノブに手を掛ける。

 

「…狼戈……!! 良かった、会いたかったよ…」

「狼戈ちゃん!! 久しぶり!」

「…お久しぶりです。狼戈さん。心配…したんですからね…」

 

 私が口を開くよりも早く、集まる見慣れた家族達。状況が飲み込めず、立ち尽くす私の前に、さとりが近付いた。

 

「お帰りなさい。狼戈」

 

 そう言うと、さとりは私を抱き締めた。唐突な事が連続で起き、私の頭が完全に停止する。これは…一体何が起こったのだろう。何故、こんなことが…

 

「…貴女は独りじゃない。皆…貴女が好きなの。大切なの。勿論私も、ね」

 

 その言葉と、状況の意味を把握した時、さとりの服を私の涙が濡らした。何故さとり達が、この五週間何があったのかを知っているのか。そんなことはどうでもいい。渇れたはずの涙は止まらず、ただ滴り続ける。

 

「わ、私…」

「何も言わなくていい。大丈夫…この屋敷にいる時は…私達が護るから」

 

 誰かを護る。そんなことを考えていても、私は結局、護られてばかりだ。

 私が落ち着いた後、さとりが“良い所に連れていってあげる”と、私の腕を引いた。連れて来られたのは燐の部屋の前。いつもと変わらぬはずだが、何故か空と、その隣の部屋の扉がないことに気付く。

 

「…どうぞ、狼戈」

 

 誘われるがまま入るは見慣れぬ部屋。三つの部屋が繋がっており、ひとつの巨大な一室となっている。見慣れた三人の服に、私の替えの服。そして二人用のベッドがふたつ、並べられている。ということは…

 

「ええ、そう。お燐とお空、狐火鴉、そして、貴女の部屋。

 貴女の部屋は一応残してあるから、一人がいいなら…」

「ううん、ありがとう。ごめんね、私が…弱いばかりに…」

「…貴女は強い。仲間を思うが故の弱み…それを嘲笑う者がいるなら。私も黙ってはいないわ」

 

 …私の思い込みだ。そうか、そうだったんだ。皆…私の事を…大切にしてくれているんだ。私は…愚かだ。ほんの一瞬の思考の乱れでこんなことになったのだから。こんなに…大切な人達がいるのに。

 

「…さあ、お風呂に入ってご飯にしましょう。狼戈も、ね」

「え? あ…はい!!」

 

 さとりに手を引っ張られ、浴場へ向かう。私の物語…これからどう進んで行くのだろう。私次第で…幾らでも塗り変えていけるよね。きっと…

 

 

「…本当に可愛い寝顔だよ。15歳というのも頷ける」

 

 燐の言葉に小さく頷く。狼戈の顔は何処か幼く、それでいて妖艶。だが、時々溢す悲痛な寝言が私の心に刺さる。狼戈の過去に何があったのだろう。ちょっと…知りたい気もする。でも、知ったら戻れないのだろうな。

 

「…こうやると狼戈さん、喜ぶんですよ」

 

 クルッと尻尾を巻き付ける。すると狼戈は、擽ったそうに微笑んだ。

 

「ん~…あたいの尻尾は巻き付けれるもんじゃないからねぇ…」

 

 苦笑する燐。長さは十分だが、大きさ的に無理か。狼戈の手を握り、私自身も目を瞑る。また明日から…狼戈との日常が戻るのか。沸き上がる嬉しさを抑え、私は眠りについた。

 

 

「くぁぁ…」

 

 欠伸をひとつ、視界が開…けば、そこに広がる綺麗な黄金色。それが狐火鴉のものだと気付くのに、数秒ほど掛かった。デジャヴを感じる。私に巻き付く尻尾。ガシッと掴むと、狐火鴉がビクッと体を揺らした。何度もやるのは可哀想故、一回きり。振り返ると、燐と空の姿もあった。悪戯…はやめよう。空の反応は超が付くほど可愛いが…我慢。

 

「起きて、狐火鴉、お燐、お空」

 

 もぞもぞと動き出す燐と空…と、相変わらず起きぬ狐火鴉。殺意をもって、耳元で優しく名前を呼ぶと、跳ねるように跳び起きた。なんだ、名前を呼ぶだけで起きるではないか。

 

「…おはよう、皆」

「んぅ…おはよーございます…」

 

 寝惚けた狐火鴉を撫で回し、擽り倒した後、少し眠そうな二人にダイレクトアタックする。

 

「うぐっ!? 狼戈ぁ…!!」

「ひにゃああ!? や、やめ…ひぅぅ」

 

 結果、尻尾を弄ばれると。空と燐のダブルで触られるものだから、脱力感が否めない。お願いだから離してください。

 

「…いつも通り、だね」

「だね♪ 今日も仕事、頑張ろう!!」

「おー!!」

 

 こうして、私は何等変わらぬ日常へと溶け込んでいく。

 私は独りじゃない。皆が教えてくれたんだ。私は…以前と変われたのかな。

 

 これからの未来への不安、希望、期待…全て受け止めて、歩いて行こう。一歩ずつ…

 

 

【挿絵表示】

 




挿絵は“大地桐弥"様に頂きました!!
この場を借りて感謝を。ありがとうございます。

挿絵は常に募集中です。
心優しい方、お願いします<(_ _)>
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