黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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ネタも性描写もない、シリアス回。
長くなってしまった。申し訳無い。

(次章かその次で、お待ちかねの吸血鬼姉妹登場予定)


幼き心は、いとも容易く壊れるもの。


三十三 情緒と家族

「あ~…昨夜は…すまん。ちょっと…やり過ぎた」

「ぅう…大丈夫」

 

 どう見たら大丈夫なんだこれ。集団レイプじゃん。ああ、でも同性だから…いや、関係ない。

 倦怠感が襲う体を起こす。まだ寝ていろと脳が危険信号を発しているが、知ったことじゃない。私には即刻、知りたいことがある。一度、地霊殿へ帰るのだ。場所は…地霊殿の前でいいだろう。

 

「…私、帰るよ。やらなきゃいけないことがあるんだ」

「そうか、わかった。約束…破るなよ?」

 

 その約束を守る為に…私は帰るのだ。何が呪術は完璧だ…実戦で使えなければ意味などない。

 紫(本人は顔面噴火中)の作った隙間に、ピョンと飛び込む。本当に便利だ。

 

 地霊殿の目の前に降り立った。見れば見るほど豪華な屋敷だ。こんなとこに住んでるのか、私。とりあえず、3時のお菓子を作ってから、だな。やることやらずに、私情を挟むのはやめよう。

 戸を開け、地霊殿へ潜入(!?)する。これで中身も豪華なのだから驚きだ。この館はいつ、誰が建てたのだろう。そんなことは多分調べてもわからないけど。自分の部屋を目指し、カラカラと下駄を鳴らしていく。私的に良い音だと思う(床的に、今はそこまで良い音は鳴らない)。

 

「ただいまっ!?」

「おかえり?」

 

 何故…ヤマメがいるんですか。土蜘蛛がなんでいるんですか。

 今いるのは、以前私が使っていた一人部屋。ちょっと一人でレシピでも練ろうかと入ってみたのだが、何故いるんだ。私が唖然としていても、当の本人はベッド(現在は使われていないが、綺麗に掃除されている)の隅に座り、首をかしげるばかり。

 …今日の予定は、レシピを立て、風呂に入り、お菓子を作り、一度外で色々やってから動物を撫で、燐達と駄弁りながら寝るという、シンプルなものだったはず。いきなり狂いそうだ…普段から狂ってるけど。

 

「…お茶入れてきます」

「いいから、おいで」

 

 …苦笑する土蜘蛛。おいで…とは? 私に何か付いているだろうか? 変なのなら憑いてるかも知れない。主に悪霊とか。

 言われるがままに、ヤマメの隣に座る。すると何故か接近され、ピッタリと体が当たる形となった。女子(?)同士によくあるスキンシップ的なものなら良いのだが、紫のこともあり、少し怖い。

 

「…ふむ、臭うね。卑猥な臭い…」

「あ、私お菓子作って来ますね」

「逃げるのは許さないよ」

 

 その場から即刻離れようとするが、手首を捕まれ何も抵抗出来なくなる。妖気を纏っている訳でもないのに、異常な迄の馬鹿力(勇義には及ばない)。元々、怪力自慢の土蜘蛛に力で勝てるはずもない(妖気は無し)。成す術も無く引き戻され、座らされる。手首には、しっかりと赤い手の痕が残っていた。

 

「痛いよ…私に何がしたいの? 何をさせたいの?」

「…色々と欲求不満でね?」

 

 グッと顔を近付けるヤマメに、小さく後ずさる。私が逃げようとするのを見越してか、扉が蜘蛛の糸で覆われた。私…もう…耐えられないかも知れない。これ以上…こんなことされたら……

 

「嫌、嫌だよ…なんで…なんで皆私なの…!?」

「…別に、嫌なら良いんだよ?」

「…なら扉を開けてよ。無理って言うなら…私も黙ってないよ」

 

 私は…何故怯えているのだろう。以前の藍や紫の時のように…怖いんだ。前は立ち直れたからいいものの…このまま他人不信になれば…私はこの世界で生きていける気がしない。

 

「…狼戈、大丈夫かい?」

「来ないでッ!!」

 

 気付けばヤマメを突き飛ばし、糸で覆われた扉に手を掛けていた。ヤマメは小さく吹き飛び、ベッドに倒れる。この数百年、何があっても情緒は安定していたはず。それでも心の奥底では…嫌だったのかな。

 

「っ…ごめん、ヤマメ…」

「…気にしないでおくれ。私が悪かった」

 

 糸に込められた妖気は消え、扉が開く。ドアノブに手を掛けたまま、私は固まっていた。やるせない気持ちが心を満たす。

 

「…ごめんね。暫く…放っておいて…」

「わかった。色々…すまないね」

 

 私が怯えないようにか、ゆっくりと私の前を通って部屋を出ていった。残された私の襲う静寂。その静寂すら…怖い。一人は嫌…でも、皆怖い。

 

 遂に落ち着く事が出来なかった私は、さとりの部屋に逃げ込んだ。息を荒くして震える私を見て、さとりがいち早く私に近付いて来る。部屋には何かを話していたのか、狐火鴉も一緒に居た。

 

「狼戈!? いったい何が…」

「…怖いよ。もう…」

 

 その言葉に、さとりが私の手を引く。来客用のソファーに座らせ、さとり自身も隣に座る。狐火鴉も何事だといった雰囲気で私の隣に座った。

 

「ごめんなさい…何百年経っても…」

 

 私の言葉に全てを察したのか、さとりの表情が強ばる。心配そうに私の頭を撫でるさとり。狐火鴉は何をすれば良いのかとオロオロし始め、最終的に私の手を握った。わかってる…わかってるんだ。皆が私を大事にしてくれているのは。

 

「…暫く私の部屋にいなさい」

 

 さとりが私を抱き締めた。その温もりと、甘い紅茶の香りに段々と意識が薄れていく。意識が消える寸前、さとりが大丈夫と小さく言ったのを、確かに聞いたのだった。

 

 

 狼戈の年齢は、決して幼い訳ではない。妖怪とて何百年も生きていれば、普通に大人になっていく。だが、狼戈はいくら歳をとっても…心が幼い。まだ子供と大差はない。確かに子供と比べれば頭も良く、大人びている…が、心が子供では意味がない。子供の心は簡単に壊れるのだ。もし、彼女の年齢が、最初に出会った14から変わっていないのであれば。こうなってしまうのも容易に頷ける。

 あの日…あの隙間妖怪が私に狼戈のことを伝えに来た時。私はこういう事がもう起きないようにと、狼戈と関わりの深い燐達に“無闇に襲わない„という約束をして貰った。だが…この地底の外でのことは、私にはどうする事も出来ない。

 

「…どうすればいいの?」

「狼戈さんは…例え嫌でも“何か„を惹き付けます…本人が耐えるしか…」

 

 狐火鴉はそう言うと、眠る狼戈の頭を撫でた。それにすらビクッと体を震わせる狼戈。…狼戈が耐えなければならない、か。この幼き少女に…耐えられる訳がない。

 

 まず、狼戈を地霊殿から出さないようにするべきだと考える。時々干渉する九尾…籃も、恐らく彼女の為なら無理矢理連れ出すような事はしないだろう。後々、話をつけなければ。

 心を安定させるには、幾つか手段がある。“放っておいて„と言われ暫くしたら元通り、という事が出来ればいいが、恐らく…いや、確実に無理だ。やはり、この館の中のみで何時も通りが一番良いのだが…これも無理がある。

 私が見る限りだが、彼女は優し過ぎる。仕事をするなと言っても、恐らく大丈夫だからと勝手にするだろうし、誰かにやってもらうという事も、自ら進んでやってしまう。私は普段から彼女を見ている訳ではないために細かくはわからないが…大方あっているはずだ。

 

「…狐火鴉。お燐達を呼んで来てくれる?」

「…わかりました」

 

 足早に去る狐火鴉の背中を見届け、狼戈をソファーに寝かせる。傍らの毛布を掛け、ふっと息を吐き出した。どうするべきか…彼女の意思を尊重したいが、それをすれば恐らく意味がない。

 

「私達が引き取りましょうか?」

「…紫さんでしたか。いいえ、大丈夫です。今度は…私達が」

 

 不意に背後から声を掛けられ、少し驚きつつも冷静に返す。紫は上半身を隙間から出しているだけだが、染み出る妖気からその強さが容易に伺える。その強さを持ちながら、こんなか弱い少女を好いて、心配している。何が起きたのか、私に知る由はない。藍が狼戈を尻尾で包む中、燐達が部屋に入って来た。

 

「…お燐、お空。狐火鴉も…少し話が」

「…はい、なんでしょうか」

 

 強大な力を持つ妖怪が二人もいることに驚きを隠せない二人に、此方へ来いと催促する。もう片方のソファーに二人を座らせ、私も狼戈の隣に腰掛けた。すぐ隣では、籃が心配そうに狼戈の顔を見詰めている。

 

「数百年前に、狼戈の身に起きたこと…もうわかるわね?」

「…また、心が?」

 

 無言で頷く。燐達も心底心配そうだ。彼女は無意識に惹き付ける…皆が愛しているのは、体質なのか、自分自身なのか…それが怖くて仕方ないのだろう。

 

「仕事はどうにかするから…狼戈の元を離れないで欲しいの」

「狼戈ちゃんの為なら、喜んで!!」

「私も同じく…です」「あたいも…喜んで」

 

 …狼戈。貴女は…愛されてる。体質なんて壁を越えて…そのことに彼女が本当に気付けるのはいつだろう。この近い内に…気付いてくれることを祈っていよう。

 

「…私の能力を使えば、狼戈の過去を読み取る事も出来るわ」

「彼女の情緒に…頑なに過去を話さない事と関係があると?」

「普通に考えて、狼戈は脆過ぎるのよ。硝子のように…」

 

 …彼女の過去。私達が踏み込んではいけない領域。幾つもした質問や疑問の中で、ひとつだけ話さなかった過去。それを…知る事が出来る…。

 

「…お願いします。彼女の…狼戈の過去をーーー」

「私が…話すよ」

 

 全員の視線が狼戈へと注がれる。いつの間に起きたのか、狼戈は力なくソファーにもたれ掛かっている。目は虚ろで、表情に光はない。まるで心を失った人形のようだ。

 

「…ありがとう、お燐、狐火鴉、お空。それに、さとり様も…藍も紫も」

「いいえ、気にしないで。家族なんだから…心配なのは当然なのよ」

 

 その言葉に、凝視しなければ見逃してしまう程に狼戈が小さく微笑んだ。

 

「家族、か…」

 

 譫言のように、小さく呟く狼戈。次に狼戈の口から出たのは、想像を絶するもの…

 

「私は…家族を殺された。皆殺しにされた。生き残ったのは…私だけ」

 

 その場の全員が絶句する。慰めの言葉など、簡単に掛けられるはずもない。普段はすぐに口を開く空ですら、狼戈の顔を見て言葉を失っていた。

 

「放火だよ。住処に火を点けられたんだ。私だけは…丁度外にいたから。火を点けて去っていく犯人に、一瞬で燃え広がる家…幼い私は、どうする事も出来なかったんだ」

 

 次第に、狼戈の瞳が潤んでいく。それで炎の恐怖症にならなかったのは、皮肉にも、彼女の好きなお菓子作りのせいだろうか。

 

「結局犯人は捕まえられず…結果は“親の謀った心中„扱い…私が幾ら違うと言っても、小さい子供の言う事なんて誰も信じなかった。哀れんで、邪魔者扱いして…彼奴はあの親の子供だからって…!!」

 

 溢れた涙は、狼戈の服を濡らしていく。私なんかが…慰められるレベルではない。いや、誰かが慰めてどうにか出来るものじゃない。これを…彼女が更に幼い時に体験したのか。それでも…ずっと生きて来ているのか。

 この過去を話すのに、どれだけの覚悟がいるのか。私にはわからない。

 

「…それで私は現実を見た。所詮、皆他人事。自分が良ければそれでいい。

 世界を恨んだ。呪った。嫌った。そして……無力な自分を恨んだ」

 

 その言葉に、藍の耳がピクッと動いた気がした。何か…あったのだろうか。

 

「…私にも家族が出来るかなって。大事な人が…出来るかなって…

 独りは嫌で…でも皆怖くて…やっぱり独りしかなくて……」

 

 冷静に、周りの反応を窺う。紫は静かに目を瞑り、藍は歯を食い縛っている。燐と空は完璧に絶句し、下を見て固まっていた。狐火鴉は狼戈から視線を逸らし、目を細めている、それぞれ…言葉を探しているのだろう。彼女を助ける為の言葉を。私が…切り出さなければ。彼女に…何もしてあげられていないのは…私なのだから。

 

「…狼戈。貴女はひとつ…大きな勘違いをしてる」

「……?」

「私達は“家族”なのよ? 同じ場所で、同じものを食べて、同じように過ごして…

 体質? そんなもの、どうでもいい。私は“貴女„という妖怪が…家族が好きなの」

「そう言って、皆私を独りにする」

 

 狼戈の瞳に、光は戻らない。深い深い闇のような瞳に、私は戦慄していた。こんな目…この子がするような目じゃない。この子はもっと…優しくて、元気で、仲間思いで…!!

 

「何度でも言う。貴女は家族。私の宝物」

「嫌だ…よ……怖いよ……!!」

 

 彼女も、きっと心の中では理解している。皆、自分のことを大切にしてくれていると。それを無意識に頭が拒絶しているのだ。また…無くなることを恐れて。

 

「…お前は私を救ってくれた。私なんかを大切にしてくれた。お前は優しいんだ。

 …皆、そんなお前が好きなんだ。自分を偽るのは止めるんだ」

「…少なくとも、私は…狼戈、貴女を邪魔だと思ったことはないわよ」

 

 次々に掛けられる言葉達。その言葉に、心に、偽りはない。

 

「私は狼戈ちゃんのこと、好きだよ?」

「あたいも、ね。美味しい不味いなんて関係無いんだよ?」

「狼戈さんは私の家族です。異論なんて認めません」

 

 うつ向く狼戈を、強く、強く抱き締める。彼女の瞳には…光が宿っていた。

 

「…ありがとう。皆…やっぱり…大好き」

 

 その言葉に私は微笑み、頭をポンと叩いた。心配ばかり掛けるんだから…

 …大丈夫。何度でも言う。貴女は…独りじゃないから。

 

 

 

 

「狼戈の作るお菓子もご飯も、すっごく美味しいんだよ!?」

「そうか。私も今度、作って貰うとするかな」

 

 狼戈を膝枕しながら、興奮気味に口を開く。実際とっても美味しいし、それぞれ量も丁度良いものになってる。全員が食べる量、得手不得手を覚えているらしい。私も、色々教えて貰ったりするけど、何故か狼戈に教えて貰ったものは忘れないんだ。

 羽で寝ている狼戈の頬を擽ってみる。すると、擽ったそうに微笑んだ。まあ、擽っているのだから擽ったいのは当然…擽り…くすぐって…あれ? 訳がわからない。

 

「…まあいいや。藍は何時までいるの?」

「…私はもう帰るかな。信じて狼戈を任せられる者がいるからな」

 

 そう言って、私とお燐、狐火鴉とさとり様を見る藍。えへへ、褒められた…のかな?

 奇妙な空間に消える藍を見送ってから、膝へ視線を移す。相も変わらず、寝息をたてている狼戈。よく考えると、狼戈が寝ている姿を見るのは珍しい。普段一番早く起きるのが狼戈だから…

 

「…やっぱり可愛い…ね? お燐」

「ん~…だね」

 

 燐が狼戈の右手を握った為、私もつられて左の手を握る。するとギュッと手を握られた。まるで赤ちゃんにでも握られているかのよう…柔らかくて、暖かい…

 

「…程々に、ね。狐火鴉、全員分の布団を」

「うぇぇ…わかりました…」

 

 絶対重い、と愚痴を溢す狐火鴉。私も手伝おうかとは思ったけど、狼戈を膝枕してるから無理。頑張ってね、狐火鴉。

 

「そうだ!! お燐! 今日は私達で、狼戈のご飯作ろうよ!!」

「え? なんで急に…いいね。腕の見せどころ…!!」

 

 普段からの恩返し…鴉の恩返しっていうのも変かも知れないけど、ガンバル…!!

 さとり様に狼戈を任せて、私は元気に部屋を飛び出したのだった。

 

 

「ん…く…」

 

 

 耳に柔らかい感触を感じる。重い瞼を開けば、移るのは壁に置かれた机にティーカップ。向かい側には、ソファーに寝転がる狐火鴉の姿。どうやら横向きに寝ているようで、壁に見えたのは床のようだ。

 

「…ふふっ」

 

 突然聞こえた笑い声と同時に頭を撫でられたことにより、体が大きくビクッと動く。寝たふりなんてしても意味がない、と起き上がると、すぐとなりにはさとりの姿がある。さとりの膝で…寝ていたのか、私は。少し顔が赤くなるのを感じつつ、口を開く。

 

「あの…ごめんなさい。私…迷惑掛けちゃって…」

「気にしたら駄目よ。家族、でしょ?」

「…はい!!」

 

 私の過去…それを話したら、皆はどんな顔で私を見るだろう。私のことをなんと思うのだろう。それが怖くて…言えなかった。思い出すのも嫌だった。だが、箱を開ければどうだ。優しい者しかいないではないか。何度同じ過ちを繰り返すのだろう。相変わらずの自分の愚かさ呆れるばかりだ。

 

「とりあえず、完全に落ち着く迄は私の部屋から出ては駄目。わかった?」

「…でも、御迷惑を」

「迷惑や邪魔という言葉を使うのを禁じます。私からのお願い。断るの?」

 

 ぐうの音も出ない。例えこれが主からペットとしてのお願いでも…家族としてのお願いでも…断る訳にはいかないな。私は家族であり、ペットであり…。

 

「…わかりました。さとり様」

「ご飯出来たよ~♪ あ、狼戈ちゃん良いタイミング!!」

「え、あ、うん。え?」

 

 空が運んで来たのは、小判型のお皿に盛られたもの。グラタン…? 確かに、チーズの香りが漂っている…ん、綺麗に焼けてる。手を火傷しないように妖気で保護して、皿を受けとる。続いて燐が火車に乗せ、人数分を持って来た。折角だからと、住人全員に配ったんだとか。死体を乗せるもので料理を運ぶべきではないと思うのだが…まぁそんなことは、正直気にしても無駄である。

 

「え? これ…お空達が?」

「うん!! どう? どう!?」

「い、いや、まだ食べてないよ…」

 

 料理が余程楽しかったのか、少し興奮しているようだ。私も…負ける訳にはいかないよ。燐に部屋から、私専用のまな板と包丁、電池式の大きいミキサー、果物に氷等、色々持ってきて貰う。

 ミキサーに氷と牛乳、蔕を取った苺を入れておく。林檎を八等分し、兎型に皮を剥く。

 

「兎だ!!」

 

 元気の良い空の声を聞いて微笑みつつ、先程入れた氷と苺、牛乳をミキサーに掛ける。苺のフローズンドリンク完成…てね。

 

「…お空。林檎は最後」

「うにゅ…」

 

 つまみ食いをしようする空を止める。食後のおやつはお楽しみ。

 

「じゃあ…」

「…うん」

『いただきまーす!!』

 

 グラタンを口に運んで満面の笑みを見せる燐に、冷たいドリンクを一気飲みして悶絶する空。それを大慌てで助けようとする狐火鴉。そしてその様子を優しく見守るさとり。私の…家族。皆…みーんな…私の…宝物。かけがえのない、大切なもの。

 

 涙混じりに食べたグラタンは、ちょっぴり塩辛かった。

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