黒狼狐己録 -Life Harboring-   作:ふーか

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これにて、三章完結です。
こんなにグダグダなのに完結です。ごめんなさい。
何方か、私が落とした“文章力„知りませんか?

次話は…お楽しみ、短編でございます。


三十七 死闘と重傷

 美鈴は武術に秀でており、その能力で所謂波導弾とか、そんな類いのものが使える(らしい)。全てを総合して私から見れば、決して弱いとは言えない。

 とりあえず、まずは様子見だ。能力は何も無し…妖気と技が物を言う。

 小さく集めた妖気を足裏で爆発させ急加速、反動と体重を乗せ、妖気を纏った一歯下駄で蹴りつける。妖気の爆発は、正確に言えば圧縮した妖気を一気に解放する、私のオリジナル。勿論そう簡単に当たってくれるはずもなく、私の攻撃は空を蹴る。空って言っても、お空のことじゃないのよ。

 

「ま、当たってくれないよね。手加減は必要かしら」

「…不要です。本気でかかってこなければ、殺す気でやりますよ」

 

 おお、怖い怖い。

 駆け出す美鈴に、構えをとる。掌底を最低限の動きで流し、下段蹴りを強く弾く。幻月と夢月にやられた悔しさから行った藍との特訓は、無駄にならなかったようだ。

 私が秀でる所は多々ある。並外れた妖気の量と扱い、動体視力、脚力。後は…料理の腕とか? 動体視力は、素早く走る分、障害物に対処出来るように、自然に会得していったものだと思われる。

 

 さて、お遊びはここまで。手加減は不要…確かに聞いた。

 もう確信している。絶対に負けない。

 

「少し本気でいきましょうか、美鈴。最悪…死んでも知らないわよ」

 

 鴉天狗の翼、九尾の耳と尻尾、そして、妖気の出力を最大まで上げる。

 …このまま、全力の一撃を叩き込んで終わらせるのもひとつの手。これでは私が足止めされるし、そうするとしようか。

 羽ばたきひとつ、地を蹴る。それと同時に妖気を爆発させる。音速を越えたスピードで、すれ違い様、翼を叩きつける。それでも反応し、攻撃を防ぐ美鈴。だが、やはり完璧に対応しきれなかったのか、大きく吹き飛び、館の塀へ激突した。

 

「ぐ…っ!!」

「…右腕の骨がイカれたね。まだ…やる?」

「…住人に迫る危険を…見逃す訳にはいきませんので」

 

 うーん…別に、殺すとか、そういうことは一切しないつもりなんだけどなぁ…

 左手一本で向かってくる美鈴に、少しの恐怖を感じる。それとまた同時に忠誠心を、優しさを感じた。…私が出来るのはここまで。

 

「…わかった、もういいよ。やめて」

「…?」

「さっきも言った。誰も殺すつもりはない。ほら、傷見せて」

 

 突然の中断に困惑する美鈴。包帯と固定具の具現化する。無理矢理右腕を引っ張り、青く変色した部分に固定具を当て、包帯を巻いていく。妖怪にとって、正直意味はないだろう。だが、私がこうしたいのだ。

 

「貴女は何を…」

「…今、中で戦ってる仲間を死なせたくない。誰も死なせない。

 まぁ…傷付けないという保証はないけどね。貴女は休んでなさい」

 

 そう言うと、門を飛び越えて中へ向かう。大丈夫、誰も…死なせない。

 強い思いを胸に、私は館の扉を蹴破った。弁償? 無理。

 

 

「貴女が…咲夜さんで…?」

「ええ、十六夜 咲夜は私の事よ。何か御用かしら」

 

 強大な力が、己の主の所に居ることを察知しているのだろう。口調こそ安定しているが、少し焦りの色が見える。だが、行かせはしない。

 

「そうですか。ならば…全力で足止めさせていただきます」

「…成る程。いいわ、かかってらっしゃい。一瞬で潰してあげるから」

 

 相手の武器はナイフ。そして、時を操る。狼戈に聞いた情報はこんなところか。対して小刀。狼戈特性の小刀はグリップに人差し指を通す輪が付いており、完璧にフィットする形状となっている。あの人、万能過ぎて私が辛い。

 合図も無しに駆け出す。次の瞬間、ナイフが回りを取り囲む。成る程、これが咲夜の能力。時を止め、ナイフで仕留める。そういう戦い方、ね。

 

「…無駄ですよ?」

「…!?」

 

 “ナイフの移動„の時を巻き戻す。ナイフは咲夜へと戻っていった。まあ、時を戻すと刃先じゃなくって持ち手部分から戻っていくから…殺傷能力はあんまりないのかな。

 …相手が時を止めるなら、私は巻き戻せばいい。あれ? これ意味ないですよね。

 

「今度は私の番ですね」

「……っ」

 

 堂々と歩み寄る。周囲を囲むナイフは咲夜へと戻るか、私に弾き落とされ地面へと落ちる。咲夜に手が届く距離になった時、咲夜の姿が消えた。背後からまた気配を感じる。

 

「…悪足掻きも程ほどに」

「な…っ!?」

 

 私の目の前で、ナイフを空ぶる咲夜。隙あり…ですね。

 妖気を最大まで集めた小刀の“みね„で、鳩尾を強打する。少し悶絶した後、床に倒れ伏した。息はあるし、気絶しただけだろう。まったく、相手が人間となると手加減が難しい。

 

「狐火鴉!!」

「あ、狼戈さん、終わりましたよ」

「…流石。でも時間がない。その子を此方へ」

 

 唐突に現れた狼戈が、咲夜を抱いて館の外へ出ていった。私も同じように狼戈の背中を追いかけ、館を出る。

 

「美鈴。この子、お願い」

「咲夜さん…!?」

「気絶してるだけだよ。狐火鴉、貴女もここで待機」

「え…?」

 

 その言動に、思わず口を開く。この状況はよくわからないが、看病なら門番にさせればいいのではないか? 何故私が…

 

「…貴女を死なせる訳にはいかないから」

 

 

「…狼戈さん、また無茶しようとしてませんか」

「してないよ~? ほらほら、無傷なんだから看病してて」

「その理屈はおかしいです!」

 

 騒ぎ立てる狐火鴉を宥め、館を…正確には館の地下を見据える。萃香や紫とか、そこら辺なら、正直あの子相手でも遅れはとらないだろうけど…それでも心配だ。思い返せば、彼女の能力と存在を伝えていない…やばいかも知れない。狐火鴉が会っていたら、恐らく確実に殺されていただろう。

 

「…大丈夫、私は死なない」

「…約束ですよ。死んだら食べますからね」

 

 死亡フラグ乱立お疲れ様です♪

 二人を狐火鴉に任せ、館に潜る。地下は…何処?

 

「…お姉さんは誰?」

 

 数分歩き、地下への道を見つけた途端に、背後から声が響く。うーん…地下を見つける必要はなかったというか…

 一言、言わせて貰おう。早い。いきなり出てくるな。ここまだ廊下だぞ。入り口ってだけで廊下だぞ。そして可愛いぞこの子。

 

「通りすがりの狼だよ。良かったらちょっと遊んでくれないかな」

 

 地下へ誘導していく。いきなり襲われたらどうしようかと思ったが、案外すんなり着いて来てくれた。地下室へ誘導したのは他でもない、周りの安全を確保する為だ。紫がレミリアを倒して話がつけば、咲夜や美鈴達は戦闘意欲をなくす。だが…この子はそうはいかないだろう?

 

「お姉さん…壊れない?」

「ん~…どうだろうね。とりあえず、遊びは下に着いてからね」

 

 吸血鬼の少女の手を握り、更に下への階段を降りる。私が突然手を握ったことにより、少女がビクッと体を揺らした。私の手を握る力は弱々しく、冷たい。こう穏便には…済まないだろうな。

 

「…さぁ、遊びましょう。私の名前は狼戈…咬音 狼戈。貴女の名前は?」

「フランドール=スカーレット。お姉さん…壊れないで…私を楽しませてね?」

 

 壊れないなんて保証は何処にもないよ…長期保証なんて受けてません。

 

 不意に、フランが私に手のひらを向ける。絶対必中、即死攻撃。ありとあらゆるものを破壊する…フランの能力。だが…私には効かない。ま、運が悪けりゃ死ぬけどな。

 

「あ…れ……?」

「どうしたの? 私を壊すんじゃないの?」

 

 フランが手を握っても、開いても。私の体が壊れることはない。私としては、少し力が抜ける。“能力„を無理矢理潰されているから、仕方がないといえば仕方がない。だが、こうでもしないと私が勝てる保証がない。はっきり言ってしまえば、私の脚力なら目を潰される前にフランを“壊す„ことはできる。だが…何度でも言う。死なせない。

 

「目が…壊せない…!?」

「一杯あるでしょ? ふふ…」

 

 私が施したマジックの種は簡単なこと。動物の力を宿した、それだけのこと。私の能力は命の能力。フランから見れば、それぞれに目がある。それを多く宿せば宿す程、目はわからなくなる。失敗すれば一瞬で終わる賭け…私は勝った。この賭けに。

 

「さあ、今度は此方から…っ!?」

 

 背筋に悪寒が走る。まさか…この子…

 

 ーーー私自身の目を引いた!?

 

 こんなとこで死ぬ訳にはいかない。まさか…こんな早く目を引くとは…!

 全力で床を蹴る。床が凹み、妖気の爆発音が響く。潰される前に…!!

 

「うぎ…っ」

 

 フランが嫌な声を出し、奥へ吹っ飛ぶ。やり過ぎた…軽く後悔しつつ、壁にめり込むフランへ近付く。が、次の瞬間壁を破り、私に突進して来た。油断していたこともあってか、咄嗟のことに判断出来ずに、モロに直撃する。

 

「が…っはっ…!!」

 

 盛大に血を吹き出す。妖気でも、腕でも防御出来なかった。骨…大丈夫かな。

 

「はは、ははは…ははははは!!」

 

 狂ったように笑い出すフラン。気が触れている? 頭がおかしい? そんなことはないはずだ。それなら…私の手を…あんなに優しく握り返してくれるはずがない。屁理屈なんて言われも、私は信じない。

 

「…フラン、此方においで」

「うん…今すぐ…壊してあげるよ…!!」

 

 うーん…そういう意味で呼んだんじゃないんだけどなぁ…?

 ゆっくりと歩いてくるフラン。悟られぬように後ろ手に妖気を込める。発動したままの鴉天狗の翼が揺れる。この子の為に…負ける訳にはいかない。

 

「ふふ、お姉さん…」

「…なに?」

「バイバイ」

 

 手を開く動作すら見せず、フランが手を握りしめる。次の瞬間、感じる痛みと、爆音、浮遊感。思考が白紙になり、記憶が飛びかける。成る程、絶対必中即死か。いや、確かに必中は必中だ。だが…

 

「即死なんて…勘弁だよ」

「…え?」

 

 片腕で傍らのフランを抱きしめる。自分の手と私を見比べ、ひたすら唖然とするフラン。

 

「…どう? 私は壊せないでしょ?」

「あれ…なんで…あれ…?」

 

 実を言えば、壊されかけた。宿す能力がなければ確実に私は死んでいる。

 

「何故、壊せないのか…わかる?」

「……」

 

 …涙目で私を見るフラン。あまり身長差がない為に、映画みたいに見上げる様にならないのが残念だ。そんな私情は、今はどうでもいいのだが。

 

「…絆、友情、家族…壊しても壊れないものがあるんだよ」

「家族…お姉様…」

 

 人との関係は、案外簡単に壊れる。だが…壊せない絆もあるだろう。

 

「…私も、家族に入れてくれるかな?」

 

 自分でも、先程から何が言いたいのかわかっていない。とりあえず…彼女はまとも。それを彼女自身に伝えたいだけなのだ。その方法が何であろうとも。

 

「…うん」

 

 フランの一言で、戦いは幕を閉じる。一瞬で終わった戦いは、幼い吸血鬼の運命を大きく変える…のかも知れない。

 

「…狼戈、終わっ…狼戈!!」

 

 隙間から現れた藍が悲鳴混じりに私の名前を呼ぶ。フランを刺激しない為にそれを手で制し、フランの顔を見る。

 

「…また、遊びに来てもいいかな?」

「…うん!!」

「よし、いい子だ」

 

 ポンとフランの頭を撫で、隙間の方へ歩き出した…はずが、地面に倒れ伏す。バランスが取れない…?

 

「狼戈、ほら」

 

 藍の肩を借り、隙間へ入る。隙間を抜けた先はいつも通りの、八雲の屋敷の一室だった。

 

 そこで鏡を見て、初めて自分の体に起きる異変に気付く。

 

「…嘘」

 

 左足の膝から下が吹き飛び、右腕は肩から無くなっている。何故気付かないかと言われれば、それほどまでに必死だったということと、その重傷さに痛みを感じなかったことにある。出血がないのは、恐らく勝手に体が妖気を発し、止めているのだろう。

 

「酷い…」

「狼戈さん!? また無茶を…!!」

 

 現れた狐火鴉に苦笑する。約束…破っちゃった。てへっ☆

 

「…狼戈さん。心配させた分…きっちり支払って貰いますからね…!!」

 

 涙目で抱き締められたら、抵抗なんて出来るはずもない。私は小さく頷き、ポンと頭を叩いた。

 

 

 その後、萃香含めた三匹に、看病という名の元にあれこれされたのは、また別の話。

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