黒狼狐己録 -Life Harboring- 作:ふーか
こんなにグダグダなのに完結です。ごめんなさい。
何方か、私が落とした“文章力„知りませんか?
次話は…お楽しみ、短編でございます。
美鈴は武術に秀でており、その能力で所謂波導弾とか、そんな類いのものが使える(らしい)。全てを総合して私から見れば、決して弱いとは言えない。
とりあえず、まずは様子見だ。能力は何も無し…妖気と技が物を言う。
小さく集めた妖気を足裏で爆発させ急加速、反動と体重を乗せ、妖気を纏った一歯下駄で蹴りつける。妖気の爆発は、正確に言えば圧縮した妖気を一気に解放する、私のオリジナル。勿論そう簡単に当たってくれるはずもなく、私の攻撃は空を蹴る。空って言っても、お空のことじゃないのよ。
「ま、当たってくれないよね。手加減は必要かしら」
「…不要です。本気でかかってこなければ、殺す気でやりますよ」
おお、怖い怖い。
駆け出す美鈴に、構えをとる。掌底を最低限の動きで流し、下段蹴りを強く弾く。幻月と夢月にやられた悔しさから行った藍との特訓は、無駄にならなかったようだ。
私が秀でる所は多々ある。並外れた妖気の量と扱い、動体視力、脚力。後は…料理の腕とか? 動体視力は、素早く走る分、障害物に対処出来るように、自然に会得していったものだと思われる。
さて、お遊びはここまで。手加減は不要…確かに聞いた。
もう確信している。絶対に負けない。
「少し本気でいきましょうか、美鈴。最悪…死んでも知らないわよ」
鴉天狗の翼、九尾の耳と尻尾、そして、妖気の出力を最大まで上げる。
…このまま、全力の一撃を叩き込んで終わらせるのもひとつの手。これでは私が足止めされるし、そうするとしようか。
羽ばたきひとつ、地を蹴る。それと同時に妖気を爆発させる。音速を越えたスピードで、すれ違い様、翼を叩きつける。それでも反応し、攻撃を防ぐ美鈴。だが、やはり完璧に対応しきれなかったのか、大きく吹き飛び、館の塀へ激突した。
「ぐ…っ!!」
「…右腕の骨がイカれたね。まだ…やる?」
「…住人に迫る危険を…見逃す訳にはいきませんので」
うーん…別に、殺すとか、そういうことは一切しないつもりなんだけどなぁ…
左手一本で向かってくる美鈴に、少しの恐怖を感じる。それとまた同時に忠誠心を、優しさを感じた。…私が出来るのはここまで。
「…わかった、もういいよ。やめて」
「…?」
「さっきも言った。誰も殺すつもりはない。ほら、傷見せて」
突然の中断に困惑する美鈴。包帯と固定具の具現化する。無理矢理右腕を引っ張り、青く変色した部分に固定具を当て、包帯を巻いていく。妖怪にとって、正直意味はないだろう。だが、私がこうしたいのだ。
「貴女は何を…」
「…今、中で戦ってる仲間を死なせたくない。誰も死なせない。
まぁ…傷付けないという保証はないけどね。貴女は休んでなさい」
そう言うと、門を飛び越えて中へ向かう。大丈夫、誰も…死なせない。
強い思いを胸に、私は館の扉を蹴破った。弁償? 無理。
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「貴女が…咲夜さんで…?」
「ええ、十六夜 咲夜は私の事よ。何か御用かしら」
強大な力が、己の主の所に居ることを察知しているのだろう。口調こそ安定しているが、少し焦りの色が見える。だが、行かせはしない。
「そうですか。ならば…全力で足止めさせていただきます」
「…成る程。いいわ、かかってらっしゃい。一瞬で潰してあげるから」
相手の武器はナイフ。そして、時を操る。狼戈に聞いた情報はこんなところか。対して小刀。狼戈特性の小刀はグリップに人差し指を通す輪が付いており、完璧にフィットする形状となっている。あの人、万能過ぎて私が辛い。
合図も無しに駆け出す。次の瞬間、ナイフが回りを取り囲む。成る程、これが咲夜の能力。時を止め、ナイフで仕留める。そういう戦い方、ね。
「…無駄ですよ?」
「…!?」
“ナイフの移動„の時を巻き戻す。ナイフは咲夜へと戻っていった。まあ、時を戻すと刃先じゃなくって持ち手部分から戻っていくから…殺傷能力はあんまりないのかな。
…相手が時を止めるなら、私は巻き戻せばいい。あれ? これ意味ないですよね。
「今度は私の番ですね」
「……っ」
堂々と歩み寄る。周囲を囲むナイフは咲夜へと戻るか、私に弾き落とされ地面へと落ちる。咲夜に手が届く距離になった時、咲夜の姿が消えた。背後からまた気配を感じる。
「…悪足掻きも程ほどに」
「な…っ!?」
私の目の前で、ナイフを空ぶる咲夜。隙あり…ですね。
妖気を最大まで集めた小刀の“みね„で、鳩尾を強打する。少し悶絶した後、床に倒れ伏した。息はあるし、気絶しただけだろう。まったく、相手が人間となると手加減が難しい。
「狐火鴉!!」
「あ、狼戈さん、終わりましたよ」
「…流石。でも時間がない。その子を此方へ」
唐突に現れた狼戈が、咲夜を抱いて館の外へ出ていった。私も同じように狼戈の背中を追いかけ、館を出る。
「美鈴。この子、お願い」
「咲夜さん…!?」
「気絶してるだけだよ。狐火鴉、貴女もここで待機」
「え…?」
その言動に、思わず口を開く。この状況はよくわからないが、看病なら門番にさせればいいのではないか? 何故私が…
「…貴女を死なせる訳にはいかないから」
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「…狼戈さん、また無茶しようとしてませんか」
「してないよ~? ほらほら、無傷なんだから看病してて」
「その理屈はおかしいです!」
騒ぎ立てる狐火鴉を宥め、館を…正確には館の地下を見据える。萃香や紫とか、そこら辺なら、正直あの子相手でも遅れはとらないだろうけど…それでも心配だ。思い返せば、彼女の能力と存在を伝えていない…やばいかも知れない。狐火鴉が会っていたら、恐らく確実に殺されていただろう。
「…大丈夫、私は死なない」
「…約束ですよ。死んだら食べますからね」
死亡フラグ乱立お疲れ様です♪
二人を狐火鴉に任せ、館に潜る。地下は…何処?
「…お姉さんは誰?」
数分歩き、地下への道を見つけた途端に、背後から声が響く。うーん…地下を見つける必要はなかったというか…
一言、言わせて貰おう。早い。いきなり出てくるな。ここまだ廊下だぞ。入り口ってだけで廊下だぞ。そして可愛いぞこの子。
「通りすがりの狼だよ。良かったらちょっと遊んでくれないかな」
地下へ誘導していく。いきなり襲われたらどうしようかと思ったが、案外すんなり着いて来てくれた。地下室へ誘導したのは他でもない、周りの安全を確保する為だ。紫がレミリアを倒して話がつけば、咲夜や美鈴達は戦闘意欲をなくす。だが…この子はそうはいかないだろう?
「お姉さん…壊れない?」
「ん~…どうだろうね。とりあえず、遊びは下に着いてからね」
吸血鬼の少女の手を握り、更に下への階段を降りる。私が突然手を握ったことにより、少女がビクッと体を揺らした。私の手を握る力は弱々しく、冷たい。こう穏便には…済まないだろうな。
「…さぁ、遊びましょう。私の名前は狼戈…咬音 狼戈。貴女の名前は?」
「フランドール=スカーレット。お姉さん…壊れないで…私を楽しませてね?」
壊れないなんて保証は何処にもないよ…長期保証なんて受けてません。
不意に、フランが私に手のひらを向ける。絶対必中、即死攻撃。ありとあらゆるものを破壊する…フランの能力。だが…私には効かない。ま、運が悪けりゃ死ぬけどな。
「あ…れ……?」
「どうしたの? 私を壊すんじゃないの?」
フランが手を握っても、開いても。私の体が壊れることはない。私としては、少し力が抜ける。“能力„を無理矢理潰されているから、仕方がないといえば仕方がない。だが、こうでもしないと私が勝てる保証がない。はっきり言ってしまえば、私の脚力なら目を潰される前にフランを“壊す„ことはできる。だが…何度でも言う。死なせない。
「目が…壊せない…!?」
「一杯あるでしょ? ふふ…」
私が施したマジックの種は簡単なこと。動物の力を宿した、それだけのこと。私の能力は命の能力。フランから見れば、それぞれに目がある。それを多く宿せば宿す程、目はわからなくなる。失敗すれば一瞬で終わる賭け…私は勝った。この賭けに。
「さあ、今度は此方から…っ!?」
背筋に悪寒が走る。まさか…この子…
ーーー私自身の目を引いた!?
こんなとこで死ぬ訳にはいかない。まさか…こんな早く目を引くとは…!
全力で床を蹴る。床が凹み、妖気の爆発音が響く。潰される前に…!!
「うぎ…っ」
フランが嫌な声を出し、奥へ吹っ飛ぶ。やり過ぎた…軽く後悔しつつ、壁にめり込むフランへ近付く。が、次の瞬間壁を破り、私に突進して来た。油断していたこともあってか、咄嗟のことに判断出来ずに、モロに直撃する。
「が…っはっ…!!」
盛大に血を吹き出す。妖気でも、腕でも防御出来なかった。骨…大丈夫かな。
「はは、ははは…ははははは!!」
狂ったように笑い出すフラン。気が触れている? 頭がおかしい? そんなことはないはずだ。それなら…私の手を…あんなに優しく握り返してくれるはずがない。屁理屈なんて言われも、私は信じない。
「…フラン、此方においで」
「うん…今すぐ…壊してあげるよ…!!」
うーん…そういう意味で呼んだんじゃないんだけどなぁ…?
ゆっくりと歩いてくるフラン。悟られぬように後ろ手に妖気を込める。発動したままの鴉天狗の翼が揺れる。この子の為に…負ける訳にはいかない。
「ふふ、お姉さん…」
「…なに?」
「バイバイ」
手を開く動作すら見せず、フランが手を握りしめる。次の瞬間、感じる痛みと、爆音、浮遊感。思考が白紙になり、記憶が飛びかける。成る程、絶対必中即死か。いや、確かに必中は必中だ。だが…
「即死なんて…勘弁だよ」
「…え?」
片腕で傍らのフランを抱きしめる。自分の手と私を見比べ、ひたすら唖然とするフラン。
「…どう? 私は壊せないでしょ?」
「あれ…なんで…あれ…?」
実を言えば、壊されかけた。宿す能力がなければ確実に私は死んでいる。
「何故、壊せないのか…わかる?」
「……」
…涙目で私を見るフラン。あまり身長差がない為に、映画みたいに見上げる様にならないのが残念だ。そんな私情は、今はどうでもいいのだが。
「…絆、友情、家族…壊しても壊れないものがあるんだよ」
「家族…お姉様…」
人との関係は、案外簡単に壊れる。だが…壊せない絆もあるだろう。
「…私も、家族に入れてくれるかな?」
自分でも、先程から何が言いたいのかわかっていない。とりあえず…彼女はまとも。それを彼女自身に伝えたいだけなのだ。その方法が何であろうとも。
「…うん」
フランの一言で、戦いは幕を閉じる。一瞬で終わった戦いは、幼い吸血鬼の運命を大きく変える…のかも知れない。
「…狼戈、終わっ…狼戈!!」
隙間から現れた藍が悲鳴混じりに私の名前を呼ぶ。フランを刺激しない為にそれを手で制し、フランの顔を見る。
「…また、遊びに来てもいいかな?」
「…うん!!」
「よし、いい子だ」
ポンとフランの頭を撫で、隙間の方へ歩き出した…はずが、地面に倒れ伏す。バランスが取れない…?
「狼戈、ほら」
藍の肩を借り、隙間へ入る。隙間を抜けた先はいつも通りの、八雲の屋敷の一室だった。
そこで鏡を見て、初めて自分の体に起きる異変に気付く。
「…嘘」
左足の膝から下が吹き飛び、右腕は肩から無くなっている。何故気付かないかと言われれば、それほどまでに必死だったということと、その重傷さに痛みを感じなかったことにある。出血がないのは、恐らく勝手に体が妖気を発し、止めているのだろう。
「酷い…」
「狼戈さん!? また無茶を…!!」
現れた狐火鴉に苦笑する。約束…破っちゃった。てへっ☆
「…狼戈さん。心配させた分…きっちり支払って貰いますからね…!!」
涙目で抱き締められたら、抵抗なんて出来るはずもない。私は小さく頷き、ポンと頭を叩いた。
その後、萃香含めた三匹に、看病という名の元にあれこれされたのは、また別の話。